JP4586193B2 - フェノールの製造方法 - Google Patents
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Description
(a)Pd(OAc)2/ヘテロポリ化合物触媒(100℃);ベンゼン転化率10%、フェノール選択率20%(非特許文献6)。
(b)VCl3触媒(50℃);ベンゼン転化率0.026%、フェノール選択率86%(非特許文献7)。
しかしながら、上記でみるように、酸素による直接酸化は、フェノールの逐次水酸化物(カテコール、ピロガロールなど)や、ビフェニルなどベンゼンの重合物などが多く副生するため、0.1%以下程度の極端な低転化率の条件でなければフェノールの高い選択率は得られず、到底実用に供されるものではなかった。
即ち、この出願によれば、以下の発明が提供される。
酸素を酸化剤として用い、バナジウム化合物を担持した固体酸化物、パラジウム系物質及び酢酸リチウムからなる触媒の存在下、液相でベンゼンを直接酸化する方法において、酢酸に水及びスルホランを共存させた溶媒を用いることを特徴とするフェノールの製造方法。
金属酸化物としては、たとえば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、セリアなどの通常用いられる金属酸化物が挙げられる。多孔性酸化物としては、ゼオライト化合物などが挙げられる。
ゼオライト化合物としては、Y-型、L-型、モルデナイト、フェリエライト、ベータ型、H-ZSM-5などを挙げることができる。またゼオライト化合物以外の多孔性酸化物としては、TS-1、MCM-41、MCM-22、MCM-48、ガロシリケート、などの結晶性メタロシリケート、大口径シリカ化合物などを挙げることができる。
またこれらの多孔性酸化物にはチタン、アルミニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、ホウ素、ジルコニウムなどの元素を含有するものや非晶質多孔性シリカ化合物も含まれる。
これらの固体酸化物は、塩酸、硝酸などにより表面処理してから用いることもできる。なお、本発明で好ましく使用される固体酸化物はシリカ、ジルコニア、アルミナなどの金属酸化物である。
固体酸化物にバナジウム化合物を含有させる方法としては、物理混合法や,含浸法、沈殿法、混練法、インシピエントウェットネス法等の従来公知の方法を採用することが出来る。バナジウム化合物としては、バナジン酸アンモニウム、バナジン酸ナトリウム、塩化バナジウム、三塩化バナジル、硫酸バナジル、シュウ酸バナジル、アセチルアセトナートバナジル、アセチルアセトナートバナジウム等が挙げられる。
これらのバナジウム化合物は、通常、水溶液として固体酸化物に担持される。またアセトン、イソプロパノール、ベンゼンなどの有機溶媒も用いられる。バナジウム化合物を含有させたジルコニア酸化物等の焼成温度は、300〜900℃,好ましくは500〜700℃程度である。バナジウム化合物の担持量は、バナジウム金属として、担体酸化物100g当たり、0.001〜10g、好ましくは0.01〜5gである。
バラジウム化合物としては、バラジウム塩化パラジウム、酸化パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、硫化パラジウム、シアン化パラジウム、テトラクロロパラジウム酸ナトリウム、ビス(2,4-ペンタジオナト)パラジウム、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム、テトラアンミン硝酸パラジウム、などのバラジウムの塩や錯体などを挙げることができる。
またこの酸化反応は、アルカリ金属化合物を共存させて反応を行うこともでき、この場合の例として、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの硝酸塩、酢酸塩、塩酸塩、蓚酸塩、硫酸塩などが挙げられ、酢酸リチウムが特に好ましい。これらのアルカリ金属化合物の添加量は、ベンゼン1モル当たり0.001〜10モル、好ましくは0.5〜0.05モルの割合である。
アルミナにバナジン酸アンモニウム(バナジウム換算で1wt%)を含浸させ、373Kで一晩乾燥後、973Kで3時間空気焼成した。こうして得られた1%V/Al2O3を0.125g、酢酸パラジウム10.6mg(0.0472mmol、Pdで5mg)、酢酸リチウム0.306g(3mmol)及びベンゼン/酢酸/水=30/120/30mmolをオートクレーブに入れ、酸素とアルゴンの混合ガス(体積比(酸素/Ar=6/1))を全圧3.5Mpaにて導入して、423Kで反応させた。反応後の生成物をガスクロマトグラフにより分析したところ,ベンゼン転化率49.9%,選択率20.9%、生成速度0.523mmol/hにてフェノールが生成した(表1)。副生物として,ビフェニル0.0156mmol/hの他、少量のカテコール、酢酸フェニル、アセトフェノンを検出した。
(1) ベンゼン転化率 = (Bi-Bu)/Bi*100
(ここでBi及びBuはベンゼンの初期導入量及び未反応量)。
(2) フェノール選択率 = Pp/(Bi-Bu)*100 (ここでPpはフェノール生成量)。
(3) フェノール生成速度 = Pp/h (h:反応時間)
バナジウムを使用せず、Al2O3のみを用いた以外、参考例1と同様にして反応させたところ、ベンゼン転化率80.1%,選択率7.18%、生成速度0.0784mmol/hにてフェノールが生成し、ベンゼン転化率は高いが、フェノール選択率は1/3、生成速度は1/6以下であった。
V/Al2O3を用いない以外、参考例1と同様にして反応させたところ、ベンゼン転化率75.6%,選択率8.99%、生成速度0.127mmol/hにてフェノールが生成し、酢酸パラジウム単独では、ベンゼン転化率は高いが、フェノール選択率は1/2.5、生成速度は1/4であった。
バナジン酸アンモニウムの代わりに硝酸鉄を用いて調製した1wt%Fe/Al2O3を用いた以外、参考例1と同様に反応させたところ、ベンゼン転化率66.7%、選択率6.89%、生成速度0.0574mmol/hにてフェノールが生成し、参考比較例2の酢酸パラジウム単独よりもむしろ低い性能であった。
Al2O3の代わりにZrO2を用い、バナジン酸アンモニウムをバナジウム換算で0.5wt%担持/焼成した0.5wt%V/ZrO2を0.125g用いた以外は参考例1と同様にして反応させたところ、ベンゼン転化率50.5%、選択率21.6%、生成速度0.656mmol/hにてフェノールが生成し、参考例1の場合よりフェノール生成速度は高い結果となった。
バナジウムを使用せず、ZrO2のみを用いた以外、参考例2と同様にして反応させたところ、ベンゼン転化率69.9%,選択率0.93%、生成速度0.0081mmol/hにてフェノールが生成し、ベンゼン転化率は高いが、フェノール選択率と生成速度は著しく低い結果となった。
Al2O3の代わりにSiO 2 を用い、バナジン酸アンモニウムをバナジウム換算で0.1wt%担持/焼成した0.1wt%V/SiO 2 を0.125g用いた以外は参考例1と同様にして反応させたところ、ベンゼン転化率34.0%、選択率26%、生成速度0.265mmol/hにてフェノールが生成し、実施例1の場合よりフェノール選択率が高い結果となった。
バナジウムを使用せず、SiO2のみを用いた以外、参考例3と同様にして反応させたところ、ベンゼン転化率74.4%、選択率5.14%、生成速度0.0521mmol/hにてフェノールが生成し、ベンゼン転化率は高いが、フェノール選択率と生成速度は実施例3の1/5以下であった。
バナジン酸アンモニウムの代わりに、シュウ酸バナジル及びアセチルアセトナートバナジルをそれぞれバナジウム換算で0.5wt%用いた以外は参考例2と同様にしてV/ZrO2を含浸/焼成し、同様に反応させたところ、シュウ酸バナジルの場合で、ベンゼン転化率54.5%、選択率20.7%、生成速度0.676mmol/h、またアセチルアセトナートバナジルの場合で、ベンゼン転化率42.6%、選択率26.3%、生成速度0.672mmol/h、にてフェノールが生成し、参考例2の場合と同等以上の結果であった。
酢酸120mmol(7.2g)の代わりに酢酸/スルホラン=51.9/48.1(モル比、合計で7.2g)を用いた以外は参考例2と同様にして反応させたところ、ベンゼン転化率4.23%、選択率74.9%、生成速度0.0666mmol/hにてフェノールが生成し、余分な副反応が激減し、フェノールの選択率が70-80%まで高められることが分かった。これは同程度のフェノール選択率で、ベンゼン転化率が従来法の100倍程度であった(非特許文献7参照)。
以上の結果を下記の表1にまとめて示す。
表から明らかなように、スルホランを共存させた実施例と比較して、参考例1〜5及び参考比較例1〜5ではいずれもフェノールの選択率がかなり低く、特に、酢酸/スルホラン=51.9/48.1(モル比、合計で7.2g)の代わりに酢酸120mmolを用いた以外は実施例と同様に反応させた参考例2では、ベンゼン転化率50.5%、フェノール生成速度0.656mmol/hと高いものの、フェノール選択率21.6%と極めて低く、いずれも実用的ではない。
Claims (1)
- 酸素を酸化剤として用い、バナジウム化合物を担持した固体酸化物、パラジウム系物質及び酢酸リチウムからなる触媒の存在下、液相でベンゼンを直接酸化する方法において、酢酸に水及びスルホランを共存させた溶媒を用いることを特徴とするフェノールの製造方法。
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