JP4585707B2 - 電気二重層キャパシタ用セパレータ及び電気二重層キャパシタ - Google Patents

電気二重層キャパシタ用セパレータ及び電気二重層キャパシタ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気二重層キャパシタ用セパレータ及び電気二重層キャパシタに関する。
【0002】
【従来の技術】
電気二重層キャパシタ(Electric Double Layer Capacitor;EDLC)は、比較的大きな容量をもち、しかも、長寿命且つ急速充放電が可能であることから、電源の平滑化、又はノイズ吸収などの従来の用途以外に、パーソナルコンピューターのメモリーバックアップ電源、あるいは、二次電池の補助又は代替に用いられてきており、近年においては電気自動車用の二次電池としての用途が期待されている。
電気二重層キャパシタは、分極性電極と電解液界面に生じる電気二重層を利用したコンデンサである。つまり、イオン性電解液中に一対の電極を浸漬し、電解液の電気分解電圧より低い電圧を印加すると、電極と反対符号のイオンが電極のごく近傍に分布してイオン層を形成する。一方、電極の内部には、イオン層と反対符号の電荷が蓄積される。このイオン層と電荷層とを電気二重層と呼ぶ。
この電気二重層に蓄積された電荷は、正負電極間に負荷をつなぐと、放電し、同時にイオンは電極から離れ、電解液は中和状態に戻る。電気二重層キャパシタの容量は電極の表面積によって決まるため、電極には表面積の大きい活性炭が使用され、イオン性の電解液には、容量、耐電圧、及びエネルギー密度などの点で有利な有機系のものが使用されている。
【0003】
このような電気二重層キャパシタにおいて、1対の電極が接触してしまうと、電極と電解液との界面においてイオン層及び電荷層を形成することが困難になるため、通常、1対の電極間に、イオン透過性で電気絶縁性を有するセパレータが配置されている。従来の電気二重層キャパシタ用セパレータとして、抄造網により形成された繊維シート2層以上からなる電解紙が公知である。しかしながら、この電解紙によっては充分な短絡防止性が得られない場合があった。この場合、この電解紙を2枚以上重ねて使用すれば、前記問題点を低減することができるが、内部抵抗が高くなるという問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、従来技術の前記の欠点を解消し、短絡が発生しにくく、しかも、内部抵抗を低くすることのできる電気二重層キャパシタ用セパレータ、及びこれを用いた電気二重層キャパシタを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、本発明による、フィブリルを有する合成繊維と繊度が0.45dtex以下の繊維とを含む繊維層2層以上を含む繊維シートからなり、前記繊維層の内、少なくとも2層が、互いに見掛密度の異なる繊維層であることを特徴とする、電気二重層キャパシタ用セパレータにより解決することができる。
また、本発明は、前記電気二重層キャパシタ用セパレータを含む、電気二重層キャパシタに関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の電気二重層キャパシタ用セパレータ(以下、単にセパレータと称することがある)は、フィブリルを有する合成繊維(以下、フィブリル合成繊維と称する)と繊度が0.45dtex以下の繊維とを含む繊維層2層以上を含む繊維シートからなり、前記繊維層の内、少なくとも2層が、互いに見掛密度の異なる繊維層である。
繊維シートの態様は、特に限定されるものではないが、例えば、織物、編物、若しくは不織布、又はこれらの複合体であることができる。これらの中でも、厚さを薄くすることのできる理由で、不織布が好ましく、繊維の均一分散性に優れており、短絡が発生しにくく、信頼性が高い理由で、湿式不織布がより好ましい。
【0007】
本発明のセパレータを調製する際に用いるフィブリル合成繊維は、一本の繊維(すなわち、幹状繊維)から、その一部が枝分かれすることにより無数の微細繊維(すなわち、枝分かれ繊維)が発生した繊維であるか、あるいは、その全部が分割されることにより無数の微細繊維が発生した繊維である限り、特に限定されるものではなく、例えば、微細繊維のみから構成されているフィブリル合成繊維、あるいは、微細繊維部分と幹状繊維部分とを含むフィブリル合成繊維を挙げることができる。なお、微細繊維部分と幹状繊維部分とを含むフィブリル合成繊維においては、微細繊維部分が、フィブリル合成繊維の端部(一端又は両端)及び/又は内部に位置することができる。
【0008】
本発明のセパレータで用いるフィブリル合成繊維は、任意の樹脂からなることができるが、融解温度又は炭化温度が300℃以上の樹脂から構成されていると、以下に詳述するように、電気二重層キャパシタを製造する上で好ましい。なお、本明細書における「融解温度」とは、JIS K 7121に規定されている示差熱分析により得られる示差熱分析曲線(DTA曲線)から得られる温度を意味する。また、本明細書における「炭化温度」とは、JIS K 7120に規定されている熱重量測定により得られる温度を意味する。
【0009】
例えば、有機電解液を使用する電気二重層キャパシタでは、それを構成する個々の材料(例えば、集電極、電極、又はセパレータ等)が水分を含んでいると、耐電圧の高い電気二重層キャパシタやエネルギー密度の高い電気二重層キャパシタを製造することが困難であるため、個々の材料を充分に乾燥しておく必要がある。しかしながら、従来から使用されているようなポリプロピレン繊維からなるセパレータやセルロースパルプからなるセパレータは、集電極や電極等の材料と比較して耐熱温度が低いため、集電極、電極、及びセパレータを組み立てた後に150℃以上の温度で乾燥すると、セパレータが溶融したり、あるいは、炭化するなど、劣化が著しく、これらの材料を組み立てた後に同時に乾燥することは困難であった。一方、個々の材料をそれぞれ別々に乾燥した後に組み立てればセパレータの劣化を防ぐことができるが、手間がかかりすぎるという問題があった。そこで、セパレータを構成するフィブリル合成繊維として、前記のように、融解温度又は炭化温度が300℃以上の樹脂からなるフィブリル合成繊維を使用すると、集電極、電極、及びセパレータを組み立てた後、150℃以上の温度で同時に乾燥することができるため、容易に耐電圧の高い電気二重層キャパシタやエネルギー密度の高い電気二重層キャパシタを製造することができる。
【0010】
融解温度が300℃以上の樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン又はポリフェニレンサルファイドなどを挙げることができる。また、炭化温度が300℃以上の樹脂としては、例えば、メタ系全芳香族ポリアミド、パラ系全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリベンゾイミダゾール、又は全芳香族ポリエステルなどを挙げることができる。これらの中でも、メタ系全芳香族ポリアミド又はパラ系全芳香族ポリアミドが、電解液との親和性にも優れているため、好ましく、また、炭化温度が高い点で、パラ系全芳香族ポリアミドがより好ましい。
【0011】
本発明のセパレータを調製する際に用いる「繊度が0.45dtex以下の繊維」は、繊度が0.45dtex以下の繊維である限り、特に限定されるものではない。なお、本明細書における「繊度」とは、JIS L 1015に規定されているA法により得られる値を意味する。本発明のセパレータで用いる繊度0.45dtex以下の繊維は、任意の樹脂からなることができるが、軟化温度が200℃以上の樹脂から構成されていると、フィブリル合成繊維を融解温度又は炭化温度が300℃以上の樹脂から構成する場合と同様の理由により、電気二重層キャパシタを製造する上で、好ましい。なお、本明細書における「軟化温度」とは、JIS K 7121に規定されている熱流束示差走差熱量測定(DSC,昇温温度=10℃/分)により得られるDSC曲線における融解吸熱曲線の開始点を与える温度を意味する。
【0012】
繊度0.45dtex以下の繊維を構成する樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂(例えば、66ナイロン)、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、又はポリビニルアルコールなどを挙げることができる。これらの中でも、電解液中での安定性に優れ、軟化温度が200℃以上である点で、ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0013】
本発明のセパレータを調製する際に用いる繊度0.45dtex以下の繊維の繊維長は、特に限定されるものではなく、繊維シートの態様によって変化する。例えば、繊維シートが湿式不織布からなる場合には、繊維長1〜25mmであることが好ましく、3〜20mmであることがより好ましい。本発明における「繊維長」とは、JIS L 1015のB法(補正ステープルダイヤグラム法)により得られる長さを意味する。
また、繊度0.45dtex以下の繊維の断面形状は、特に限定されるものではなく、例えば、円形であることもできるし、あるいは、非円形、例えば、長円、楕円、星型、各種のアルファベット文字型(例えば、Y字型又はX字型など)、又はプラス(+)型などであることもできる。
【0014】
本発明のセパレータでは、繊維シートを構成する複数の繊維層の内、少なくとも2層が、互いに見掛密度の異なる繊維層である。本明細書において、繊維層の「見掛密度」とは、面密度を厚さで割った値[すなわち、(面密度)/(厚さ)]を意味する。なお、本明細書における「面密度」とは、JIS P 8124(紙及び板紙−坪量測定法)に規定する方法に基づく坪量を意味し、「厚さ」とは、JIS B 7502に規定する方法による測定値、すなわち、5N荷重時の外側マイクロメーターによる測定値を意味する。
本発明のセパレータにおいては、繊維層の見掛密度が異なる限り、見掛密度の差は特に限定されるものではないが、0.05〜0.3g/cm3であることが好ましい。
【0015】
本発明のセパレータにおいて、繊維層の見掛密度に差を生じさせる手段は、特に限定されるものではないが、例えば、線維径の異なる繊維を配合することにより、対象繊維層に見掛密度差を与える方法、あるいは、対象繊維層にかける圧着圧力の違いにより、対象繊維層に見掛密度差を与える方法などを挙げることができ、更にこれらの方法を組み合わせて用いることもできる。
【0016】
本発明のセパレータでは、繊維層の見掛密度の差が、繊維径の異なる繊維を配合することに起因することが好ましい。このような本発明のセパレータとしては、例えば、繊度0.45dtex以下の繊維として、見掛密度が高い繊維層(以下、密繊維層と称することがある)では、相対的に繊度の小さい繊維を用い、見掛密度が低い繊維層(以下、粗繊維層と称することがある)では、前記密繊維層で用いる前記繊維(すなわち、相対的に繊度の小さい繊維)よりも相対的に繊度の大きい繊維を用いるセパレータを挙げることができる。この場合、粗繊維層が、更に、密繊維層で用いる前記繊維(すなわち、相対的に繊度の小さい繊維)を含むこともできるし、あるいは、密繊維層が、更に、粗繊維層で用いる前記繊維(すなわち、相対的に繊度の大きい繊維)を含むこともできる。
【0017】
より具体的には、例えば、(a)フィブリル合成繊維、及び(b)繊度が0.2dtex以下の細繊維(以下、単に「細繊維」と称することがある)から実質的になる密繊維層少なくとも1層と、(a)フィブリル合成繊維、(b)繊度が0.2dtex以下の細繊維、及び(c)繊度が0.2dtexを越え、且つ0.45dtex以下の太繊維(以下、単に「太繊維」と称することがある)から実質的になる粗繊維層少なくとも1層とを含む繊維シートからなるセパレータを挙げることができる。以下、この特定の態様に基づいて、本発明のセパレータを更に説明する。
なお、本明細書において、或る繊維層が特定の繊維から「実質的になる」とは、前記繊維層が、前記の特定繊維以外の繊維を、実質的な量で含まないことを意味し、例えば、前記繊維層における前記の特定繊維の割合が95%以上であることを意味する。
【0018】
前記密繊維層及び粗繊維層を構成することのできる前記細繊維(すなわち、繊度が0.2dtex以下の細繊維)は、繊度が0.2dtex以下であること以外は、「繊度が0.45dtex以下の繊維」に関して先に述べた説明、すなわち、繊維を構成することのできる樹脂の種類、繊維長、及び繊維の断面形状に関する各説明がそのまま当てはまる。また、前記粗繊維層を構成することのできる前記太繊維(すなわち、繊度が0.2dtexを越え、且つ0.45dtex以下の太繊維)も、繊度が0.2dtexを越え、且つ0.45dtex以下であること以外は、「繊度が0.45dtex以下の繊維」に関して先に述べた説明がそのまま当てはまる。
【0019】
すなわち、前記細繊維及び前記太繊維は、それぞれ、任意の樹脂からなることができるが、軟化温度が200℃以上の樹脂から構成されていると、フィブリル合成繊維を融解温度又は炭化温度が300℃以上の樹脂から構成する場合と同様の理由により、電気二重層キャパシタを製造する上で、好ましい。細繊維及び太繊維を構成する樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂(例えば、66ナイロン)、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、又はポリビニルアルコールなどを挙げることができる。これらの中でも、電解液中での安定性に優れ、軟化温度が200℃以上である点で、ポリエステル系樹脂が好ましい。
また、細繊維及び太繊維の繊維長は、特に限定されるものではなく、繊維シートの態様によって変化する。例えば、繊維シートが湿式不織布からなる場合には、繊維長1〜25mmであることが好ましく、3〜20mmであることがより好ましい。
更に、細繊維及び太繊維の断面形状は、特に限定されるものではなく、例えば、円形であることもできるし、あるいは、非円形、例えば、長円、楕円、星型、各種のアルファベット文字型(例えば、Y字型又はX字型など)、又はプラス(+)型などであることもできる。
【0020】
本発明のセパレータにおける密繊維層が、フィブリル合成繊維と0.2dtex以下の細繊維とから実質的になると、電極構成物質の進入を阻止することができるので好ましい。また、フィブリル合成繊維による機械的な絡合によって形態を維持することができ、強度的にすぐれているため、より短絡しにくい。また、フィブリル合成繊維と0.2dtex以下の細繊維とから実質的になると、厚さが薄い状態であることができ、一定体積当たりのエネルギー密度を高くしやすい。更に、細繊維の繊度が0.2dtex以下であると、よりピンホールの発生を防止することができる。
【0021】
本発明のセパレータにおける密繊維層が、フィブリル合成繊維と0.2dtex以下の細繊維とから実質的になる場合には、フィブリル合成繊維と細繊維との割合は、特に限定されるものではないが、35:65〜90:10であることが好ましい。また、密繊維層の見掛密度は、特に限定されるものではないが、0.6〜0.9g/m3であることが好ましい。更に、密繊維層の面密度は、特に限定されるものではないが、10g/m2以上であることが好ましい。
【0022】
本発明のセパレータにおける密繊維層が、フィブリル合成繊維と0.2dtex以下の細繊維とから実質的になる場合には、フィブリル合成繊維1種類のみを含むこともできるし、あるいは、繊維径及び/又は樹脂構成の点で異なるフィブリル合成繊維2種類以上を含むこともできる。また、前記密繊維層では、0.2dtex以下の細繊維を1種類のみ含むこともできるし、あるいは、繊維径及び/又は樹脂構成の点で異なる細繊維2種類以上を含むこともできる。
【0023】
一方、本発明のセパレータにおける粗繊維層が、フィブリル合成繊維と、0.2dtex以下の細繊維と、0.2dtexを越え、且つ0.45dtex以下の太繊維とから実質的になると、太繊維の繊度が0.2dtexを越え、且つ0.45dtex以下であるため、ピンホールを発生させることなく、内部抵抗を下げることができる。
【0024】
本発明のセパレータにおける粗繊維層が、フィブリル合成繊維と、0.2dtex以下の細繊維と、0.2dtexを越え、且つ0.45dtex以下の太繊維とから実質的になる場合には、粗繊維層に含まれる太繊維の割合は、短絡を防止することができる割合である限り、特に限定されるものではないが、粗繊維層を構成する全繊維(すなわち、フィブリル合成繊維、細繊維、及び太繊維)の5〜40mass%であることが好ましい。また、粗繊維層に含まれるフィブリル合成繊維の割合は、特に限定されるものではないが、粗繊維層を構成する全繊維の35〜70mass%であることが好ましい。更に、粗繊維層に含まれる細繊維の割合は、特に限定されるものではないが、粗繊維層を構成する全繊維の25〜60mass%であることが好ましい。
粗繊維層の見掛密度は、特に限定されるものではないが、0.55〜0.7g/m3であることが好ましい。また、密繊維層の見掛密度と粗繊維層の見掛密度との差は、特に限定されるものではないが、0.05〜0.3g/m3であることが好ましい。
更に、本発明のセパレータにおける粗繊維層の面密度は、特に限定されるものではないが、10g/m2以上であることが好ましい。
【0025】
本発明のセパレータにおける粗繊維層が、フィブリル合成繊維と、0.2dtex以下の細繊維と、0.2dtexを越え、且つ0.45dtex以下の太繊維とから実質的になる場合には、フィブリル合成繊維を1種類のみ含むこともできるし、あるいは、繊維径及び/又は樹脂構成の点で異なるフィブリル合成繊維2種類以上を含むこともできる。また、前記粗繊維層では、0.2dtex以下の細繊維を1種類のみ含むこともできるし、あるいは、繊維径及び/又は樹脂構成の点で異なる細繊維2種類以上を含むこともできる。更に、前記粗繊維層では、0.2dtexを越え、且つ0.45dtex以下の太繊維を1種類のみ含むこともできるし、あるいは、繊維径及び/又は樹脂構成の点で異なる太繊維2種類以上を含むこともできる。
【0026】
本発明のセパレータでは、前記各繊維層を構成する各繊維同士が圧着した状態にあることが好ましい。本明細書において「圧着」とは、加熱しない状態で、あるいは、構成繊維の全繊維が軟化温度未満で加熱した状態で、圧力を加えることにより、各繊維を相互に密着させることを意味する。構成繊維の全繊維が軟化しない前記温度としては、構成繊維を構成する樹脂のうち、最も低い軟化温度を有する樹脂の軟化温度よりも10℃以上低い温度であることが好ましく、20℃以上低い温度であることがより好ましい。また、圧着処理において加える圧力は、特に限定されるものではないが、繊維同士が圧着し、強度を保持することができるように、線圧50N/cm以上であることが好ましい。
本発明のセパレータが、前記各繊維層を構成する各繊維を相互に圧着した状態にあると、強度の高い状態であることができ、従って、厚さの薄い状態にすることができる。また、各繊維を相互に融着させた場合のように、フィルム化してイオンの透過性を妨げることがない。更には、内部抵抗が低く、一定体積当たりのエネルギー密度を高くすることもできる。
【0027】
本発明のセパレータは、密繊維層少なくとも1層と、粗繊維層少なくとも1層とを含む限り、密繊維層及び粗繊維層の数は特に限定されるものではない。また、本発明のセパレータにおいて密繊維層及び粗繊維層を配置する順序も特に限定されるものではないが、本発明のセパレータ2枚を積層した状態で配置する電気二重層キャパシタを製造する場合には、各セパレータにおける密繊維層及び粗繊維層の配置順序としては、一方の表面繊維層から他方の表面繊維層に向かって、見掛密度が、段階的に増加するように、あるいは、段階的に減少するように配置することが好ましい。
【0028】
本発明のセパレータの面密度は、特に限定されるものではないが、例えば、20〜40g/m2であることが好ましい。
また、本発明のセパレータの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、30〜50μmであることが好ましい。
更に、本発明のセパレータの見掛密度は、特に限定されるものではないが、例えば、0.5〜0.8g/cm3であることが好ましい。
面密度、厚さ、及び見掛密度が前記の好適範囲内にあると、強度的に優れ、一定体積当たりのエネルギー密度が高く、内部抵抗が低いセパレータであることができる。
【0029】
本発明の電気二重層キャパシタは、本発明の電気二重層キャパシタ用セパレータを含み、好ましくは、前記セパレータ2枚以上を含む。セパレータを2枚以上重ねて用いることにより、更に確実に短絡を防止することができる。
本発明の電気二重層キャパシタは、セパレータとして、本発明のセパレータを含むこと以外は、従来公知の電気二重層キャパシタと同様の構成をとることができる。例えば、本発明のセパレータを、一対の電極間に配置させることにより、本発明の電気二重層キャパシタを構成することができる。より具体的には、例えば、後述する実施例に示すように、それぞれがシート状の集電極(例えば、アルミニウム薄板)、電極(例えば、粒状活性炭、カーボンブラック、及びポリテトラフルオロエチレンを混ぜて練り上げた電極)、セパレータ、電極、及び集電極をこの順で積み重ねた最上層及び/又は最下層に絶縁シートを重ねてから、この電極群を捲回形に加工することにより、本発明の電気二重層キャパシタを構成することができる。
【0030】
本発明の電気二重層キャパシタでは、セパレータと電極との配置方法は特に限定されるものではないが、セパレータの密繊維層が電極と接触するように、セパレータと電極とを配置することが好ましい。このような配置にすると、電極構成物質の進入を確実に防止することができ、粗繊維層が内部抵抗を下げるのに寄与することができる。
【0031】
本発明のセパレータを製造する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、常法により粗密差のある繊維シートを製造し、その繊維シートを積層一体化してセパレータとして使用することにより、本発明のセパレータを製造することができる。
例えば、密繊維層及び粗繊維層を含む好適な湿式不織布は次のようにして製造することができる。
まず、フィブリル合成繊維、0.2dtex以下の細繊維、及び0.2dtexを越え、且つ0.45dtex以下の太繊維を、それぞれ用意する。これらのフィブリル合成繊維、細繊維、及び太繊維は、いずれも市販されているため、容易に入手することができる。
次いで、フィブリル合成繊維及び細繊維を使用して、常法の湿式法(例えば、水平長網方式、傾斜ワイヤー型短網方式、円網方式、短網・円網コンビネーション方式、又は長網・円網コンビネーション方式など)により密繊維層用の湿潤繊維ウエブを形成する。一方、フィブリル合成繊維、細繊維、及び太繊維を使用して、常法の湿式法(例えば、水平長網方式、傾斜ワイヤー型短網方式、円網方式、短網・円網コンビネーション方式、又は長網・円網コンビネーション方式など)により粗繊維層用の湿潤繊維ウエブを形成する。
これらの各繊維ウエブを形成する際、繊維の均一な分散状態を維持するために増粘剤を加えたり、水と繊維との親和性を高めるために界面活性剤を加えたり、攪拌等によって生じる気泡を取り除くために消泡剤を加えることができる。
【0032】
次いで、これらの湿潤繊維ウエブを、湿潤状態で積層した後に乾燥することにより、あるいは、個々のウェブ毎に別々に乾燥して水分を除去した後に積層することにより、乾燥湿式不織布を得ることができる。なお、前記乾燥は、繊維ウエブを構成する繊維が融解しない温度で実施する。
得られた乾燥湿式不織布を、所望により、例えば、カレンダーなどを用いて圧力を加えることによって、各繊維を相互に圧着することができる。このように圧力を加えることによって、例えば、厚さを調整したり、厚さを薄くしたり、厚さを均一化したり、フィブリル合成繊維のフィブリル化を進行させてより緻密なものとしたり、フィブリル合成繊維の微細繊維を密着させることにより強度を向上させることができる。
なお、圧力を加える際には、加熱した状態で実施することもできるし、あるいは、加熱しない状態で実施することもできるが、加熱すると前記の厚さ調整効果及び強度向上効果を発揮しやすい。但し、構成繊維が溶融する程度に加熱すると、皮膜が形成されてイオン透過性が悪くなるため、加熱する場合には構成繊維を構成する樹脂のうち、最も低い軟化温度を有する樹脂の軟化温度よりも10℃以上低い温度で加熱することが好ましく、20℃以上低い温度で加熱することがより好ましい。
【0033】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
パラ系全芳香族ポリアミドからなるフィブリル合成繊維[ケブラー(登録商標);デュポン製,炭化温度=500℃以上]と、ポリエチレンテレフタレートからなる細繊維(繊度=0.11dtex,繊維長=3mm,融解温度=260℃,軟化温度=253℃,断面=円形)と、ポリエチレンテレフタレートからなる太繊維(繊度=0.3dtex,繊維長=3mm,融解温度=260℃,軟化温度=253℃,断面=円形)とを用意した。
前記フィブリル合成繊維と前記細繊維とを、50:50の質量比率で混合した第1のスラリーと、前記フィブリル合成繊維と前記細繊維と前記太繊維とを、50:10:40の質量比率で混合した第2のスラリーとを、それぞれ調製した。次いで、傾斜ワイヤー型短網、順流円網、及びヤンキードライヤーを備えた抄紙機において、前記の第1スラリーを前記短網に送り、前記の第2スラリーを前記円網に送り、それぞれの湿潤シートを積層した湿潤シートを形成し、続いて、この積層湿潤シートを温度120℃に設定したヤンキードライヤーにより乾燥した。
得られた乾燥したシートを温度220℃に設定された一対の熱カレンダーにより押圧(線圧力=500N/cm)して、湿式不織布、すなわち、本発明のセパレータ(面密度=30g/m2,厚さ=43μm,見掛密度=0.7g/cm3)を製造した。
このセパレータを構成するフィブリル合成繊維は、微細繊維部分と幹状繊維部分とを含む繊維であった。また、細繊維及び太繊維は、多少圧着されているものの、熱融着していないため、皮膜は形成されていなかった。また、このセパレータは、第1スラリーに由来する繊維層が密面(面密度=15g/m2,見掛密度=0.83g/cm3)を構成し、第2スラリーに由来する繊維層が粗面(面密度=15g/m2,見掛密度=0.6g/cm3)を構成していた。
【0034】
【実施例2】
傾斜ワイヤー型短網及びヤンキードライヤーの第1の組み合わせと、順流円網及びヤンキードライヤーの第2の組み合わせとを両方備えた抄紙機において、前記実施例1と同様の第1スラリーを前記傾斜ワイヤー型短網に供給し、前記実施例1と同様の第2スラリーを前記順流円網に供給することにより、各々湿潤シートを形成した。これらの各湿潤シートを温度120℃に設定したヤンキードライヤーにより乾燥した。得られた各乾燥シートは、短網及び円網双方とも、面密度15g/m2のシートであった。
この乾燥した短網シートと乾燥した円網シートとを重ね、温度220℃に設定された一対の熱カレンダーにより押圧(線圧力=500N/cm)して、湿式不織布、すなわち、本発明のセパレータ(面密度=30g/m2,厚さ=43μm,見掛密度=0.7g/cm3)を製造した。
このセパレータを構成するフィブリル合成繊維は、微細繊維部分と幹状繊維部分とを含む繊維であった。また、細繊維及び太繊維は、多少圧着されているものの、熱融着していないため、皮膜は形成されていなかった。また、このセパレータは、第1スラリーに由来する繊維層が密面(面密度=15g/m2,見掛密度=0.83g/cm3)を構成し、第2スラリーに由来する繊維層が粗面(面密度=15g/m2,見掛密度=0.6g/cm3)を構成していた。
【0035】
【実施例3】
第2スラリーとして、フィブリル合成繊維と細繊維と太繊維とを、50:40:10の質量比率で混合したスラリーを用いたこと、そして、抄紙機として、順流円網2台とヤンキードライヤーとを備えた抄紙機を用いたこと以外は、前記実施例1の操作を繰り返すことにより、湿式不織布、すなわち、本発明のセパレータ(面密度=30g/m2,厚さ=43μm,見掛密度=0.7g/cm3)を製造した。
このセパレータを構成するフィブリル合成繊維は、微細繊維部分と幹状繊維部分とを含む繊維であった。また、細繊維及び太繊維は、多少圧着されているものの、熱融着していないため、皮膜は形成されていなかった。また、このセパレータは、第1スラリーに由来する繊維層が密面(面密度=15g/m2,見掛密度=0.75g/cm3)を構成し、第2スラリーに由来する繊維層が粗面(面密度=15g/m2,見掛密度=0.65g/cm3)を構成していた。
【0036】
【実施例4】
前記実施例1と同様の第1スラリーを、傾斜ワイヤー型短網とヤンキードライヤーとを備えた抄紙機に供給することにより、湿潤シートを形成し、この湿潤シートを温度120℃に設定したヤンキードライヤーにより乾燥した。また、これとは別に、前記実施例1と同様の第2スラリーを、傾斜ワイヤー型短網とヤンキードライヤーとを備えた抄紙機に供給することにより、湿潤シートを形成し、この湿潤シートを温度120℃に設定したヤンキードライヤーにより乾燥した。得られた各乾燥シートは、いずれも面密度15g/m2のシートであった。
これらの乾燥シート2枚を重ね、温度220℃に設定された一対の熱カレンダーにより押圧(線圧力=500N/cm)して、湿式不織布、すなわち、本発明のセパレータ(面密度=30g/m2,厚さ=43μm,見掛密度=0.7g/cm3)を製造した。
このセパレータを構成するフィブリル合成繊維は、微細繊維部分と幹状繊維部分とを含む繊維であった。また、細繊維及び太繊維は、多少圧着されているものの、熱融着していないため、皮膜は形成されていなかった。また、このセパレータは、第1スラリーに由来する繊維層が密面(面密度=15g/m2,見掛密度=0.81g/cm3)を構成し、第2スラリーに由来する繊維層が粗面(面密度=15g/m2,見掛密度=0.61g/cm3)を構成していた。
【0037】
【比較例1】
前記実施例1と同様の第1スラリーを、順流円網2台とヤンキードライヤーとを備えた抄紙機に供給して、各円網のそれぞれの湿潤シートを積層した積層湿潤シートを形成した。この積層湿潤シートを温度120℃に設定したヤンキードライヤーにより乾燥した。
得られた乾燥シートを、温度220℃に設定された一対の熱カレンダーにより押圧(線圧力=500N/cm)して、湿式不織布、すなわち、比較用セパレータ(面密度=30g/m2,厚さ=43μm,見掛密度=0.7g/cm3)を製造した。
このセパレータを構成するフィブリル合成繊維は、微細繊維部分と幹状繊維部分とを含む繊維であった。また、セパレータを構成する細繊維は、多少圧着されているものの、熱融着していないため、皮膜は形成されていなかった。更に、このセパレータは、見掛密度差のない一層構造を有するものであった。
【0038】
【物性評価】
(1)キャパシタの製造
集電極としてアルミニウム薄板を用意した。また、電極として、粒状活性炭、カーボンブラック、及びポリテトラフルオロエチレンを混ぜて練り上げた電極(圧延法により作製)を用意した。更に、セパレータとして、前記実施例1〜4で製造した本発明のセパレータ、並びに前記比較例1で製造した比較用セパレータに加え、市販のキャパシタ用セルロース製セパレータ(比較例2;面密度=20g/m2,厚さ=48μm,見掛密度=0.4g/cm3)を用意した。
これらの集電極、電極、及びセパレータを、それぞれ100℃で5時間、180℃で5時間、及び100℃で5時間乾燥した。次に、グローボックス内で集電極、電極、セパレータ2枚、電極、及び集電極と積み重ねた最下層に絶縁シートを重ねてから、この電極群を、500g荷重で捲回形に加工した。電解液としてテトラエチルアンモニウム・テトラフルオロボーレイトをプロピレンカーボネートに溶解させた溶液を減圧含浸した後、封緘して本発明のキャパシタ4種及び比較用キャパシタ2種を製造した。実施例1〜4で製造した本発明のセパレータについては、2枚のセパレータの密層が、それぞれ外側に配置され、両側の電極と接触するように挿入した。
【0039】
(2)キャパシタの性能評価
以下の各測定は、以下に示す充放電条件で、充放電試験機により測定した充放電カーブから求めた。すなわち、内部抵抗は、1Aの定電流で2分間、2.5Vまで充電した後、2分間で放電する操作により得られた充放電カーブから求めた。静電容量は、0.02Aの定電流で10分間、2.5Vまで充電した後、10分間で放電する操作により得られた充放電カーブから求めた。また、漏れ電流は、0.9Vに印加したキャパシタの72時間後における電圧の降下量を基に、式(1):
i=C×(dV/dt) (1)
[式中、iは漏れ電流を意味し、Cは静電容量を意味し、dVは電圧降下量を意味し、dtは時間を意味する]
から算出した。
結果を表1に示す。
【0040】
Figure 0004585707
【0041】
表1から明らかなように、本発明のセパレータは、内部抵抗に関して、従来のセルロース製セパレータ(比較例2)と比べても遜色のない値を示した。また、従来のセルロース製セパレータは、使用枚数が3枚以下では、巻回加工の際に、部分的な破断等の発生により安定して製作することができなかった。このため、セパレータの占める体積が多くなるので、キャパシタの体積中の電極材料が減少し、静電容量が低下した。
比較例1との比較から明らかなように、本発明のセパレータは、微小短絡も発生しにくく、電気絶縁性に優れたものであった。本発明のセパレータは薄く、2枚を前述のような配置で装填することによって短絡防止効果もあり、内部抵抗も低減する。この結果、エネルギー密度を向上させることができ、電気二重層キャパシタを作製する際に最適なセパレータである。
【0042】
【発明の効果】
本発明のセパレータによれば、密繊維層を有するため、電極構成物質の進入を阻止することができ、粗繊維層を有するため、内部抵抗を低くすることができる。また、密繊維層少なくとも1層及び粗繊維層少なくとも1層を含み、2層以上であるため、ピンホールの発生を防止することができ、短絡を防止することができる。

Claims (5)

  1. フィブリルを有する合成繊維(少なくとも高圧ホモジナイザーを用いて処理され、主に繊維軸と平行な方向に非常に細かく分割された部分を持つ繊維形状を有する、フィブリル化された有機繊維を除く)と繊度が0.45dtex以下の繊維とを含む繊維層2層以上を含む繊維シートからなり、前記繊維層の内、少なくとも2層が、互いに見掛密度の異なる繊維層であり、見掛密度の高い繊維層が、フィブリルを有する合成繊維と、繊度が0.2dtex以下の細繊維とから実質的になる密繊維層であり、そして、見掛密度の低い繊維層が、フィブリルを有する合成繊維と、繊度が0.2dtex以下の細繊維と、繊度が0.2dtexを越え、且つ0.45dtex以下の太繊維とから実質的になる粗繊維層であることを特徴とする、電気二重層キャパシタ用セパレータ。
  2. 各繊維層を構成する繊維が圧着されている、請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータ。
  3. 請求項1又は2に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータを含む、電気二重層キャパシタ。
  4. 一対の電極間に、電気二重層キャパシタ用セパレータ2枚以上が配置されている、請求項に記載の電気二重層キャパシタ。
  5. 電極との接触面が、いずれも、見掛密度の高い繊維層である、前記請求項に記載の電気二重層キャパシタ。
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