JP4585210B2 - 口腔内速崩壊性錠剤の製造方法 - Google Patents

口腔内速崩壊性錠剤の製造方法 Download PDF

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本発明は口腔内速崩壊性錠剤およびその製法に関する。
WO93/12769号パンフレット WO95/20380号パンフレット 特開平8−291051号公報 特開平9−48726号公報 特開平5−271054号公報 WO93/15724号パンフレット
近年、疾病の治療において、患者のQOL(Quality of Life)の改善を目的に、製剤学的工夫を凝らした製剤開発が盛んであり、口腔内速崩壊性錠剤は最も多く開発されている製剤である。口腔内速崩壊性錠剤は、口腔内の少量の唾液でも瞬時に崩壊することから、服用が容易であり、通常の錠剤では嚥下が困難な高齢者や小児に最適な製剤である。また水なしで服用できるため服用の場所や時間が制限されない利点も有する。
更に口腔内速崩壊性錠剤は、口腔内疾患への局所適用も可能である。また、口腔粘膜から生理活性物質を直接吸収させれば、肝臓での初回通過効果の回避や即効性等も期待されている。
これまで発明された口腔内速崩壊性錠剤の技術には、例えば、生理活性物質と乳糖やマンニトール等の糖類を、寒天水溶液に懸濁し、この懸濁液をPTP(Press Through Package)シートに充填し、ゼリー状に固化させた後、乾燥することで多孔質な錠剤を得る方法[特許文献1]や、崩壊性の良好な糖類と生理活性物質からなる粉体を、成形性の良好な糖類で造粒した後、低圧で圧縮成形する方法[特許文献2]、また糖類を主体とし、水溶性結合剤を添加した粉体を低圧で圧縮成形した後、錠剤を加湿下に置いて湿潤させ、これを乾燥させて錠剤とする製法[特許文献3]や[特許文献4]、更には水を少量含む糖類を主体とした湿潤顆粒を圧縮成形した後、乾燥し錠剤を製する方法[特許文献5]や[特許文献6]が挙げられる。
しかし、前述した従来技術による口腔内速崩壊性錠剤は、いずれも流通過程あるいは患者が取り扱うのに問題のない錠剤強度と、速やかな崩壊性を両立させるために、添加剤を多量に用いる必要があった。従って、その機能性は、各種添加剤の性質に依存するため、配合する生理活性物質の性質によっては相当量の添加を必要とし、製剤中の生理活性物質の含量に制限が生ずる。特に水への溶解性が低く、かつ高用量の生理活性物質については、添加剤も相当量必要となり、錠剤形状が大型化し、服用性が著しく損なわれてしまう。
本発明者らは、前記従来技術の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、遊離酸もしくは遊離塩基(以降、遊離形と略す)として存在する生理活性物質と、その医学的に許容しうる塩を混合或いは造粒し、成形可能な最低圧力で打錠し、加湿湿潤後、乾燥した錠剤は取り扱いに問題がない強度と速やかな崩壊性を両立できるだけでなく、本質的に同一の生理活性物質である遊離形と塩で錠剤を構成することにより、錠剤中の生理活性物質含量を極めて高いものにできることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
1)遊離形として存在するL−カルボシステインと、該L−カルボシステインの医学的に許容しうる塩とを混合或いは造粒し、
この混合物或いは造粒物を、成形可能な最低圧力で打錠し、加湿湿潤後、乾燥することを特徴とする口腔内速崩壊性錠剤の製造方法。;
)遊離形として存在するL−カルボシステイン1〜19重量部該L−カルボシステインの医学的に許容しうる塩1重量部とを混合或いは造粒することを特徴とする(1)記載の口腔内速崩壊性錠剤の製造方法。;に関する。
かかる知見は、遊離形及びその医学的に許容しうる塩が存在する生理活性物質への適用が可能である。
遊離形及びその医学的に許容しうる塩という状態で存在しうる生理活性物質は、一般的に物理化学的性質、安定性及び性状(味)等は異なるが、本質的には同じ生理活性を示す。
本発明における口腔内速崩壊性錠剤は、本質的に同じ生理活性を示す遊離形と医学的に許容しうる塩から構成されることから、錠剤中の生理活性物質含量を極めて高いものにできる。生理活性物質の遊離形が水に対して溶解性が低い場合であっても、その塩が存在すれば、適宜組み合わせることにより、取り扱いに問題がない錠剤強度と速やかな崩壊性を有する。
本発明において、生理活性物質の遊離形とその医学的に許容しうる塩の配合比率は特に限定はされないが、ナトリウム塩および/またはその他の塩1重量部に対して、遊離形が約99重量部以下含まれていれば良く、特に約1〜19重量部含まれていることが好ましい。その配合比は、錠剤の物理化学的性質、安定性及び味等の服用性のバランスを考慮して適宜設定すればよい。また1種または2種以上の医学的に許容しうる塩の配合にあたっては、塩の水溶液として配合することもできる。
本発明において、「口腔内速崩壊性」とは、水を服用することなく口腔内において2分以内、好ましくは1分以内、更に好ましくは40秒以内に錠剤が崩壊する程度の崩壊性を示すことをいう。
本発明において、成形可能な最低圧力とは、錠剤強度が0.1Kg以上の強度を保持するような、製造工程上問題ない打錠圧力であれば良い。
本発明の錠剤が有する空隙率の高い内部構造は、成形可能な最低圧力で打錠後、加湿湿潤し乾燥することにより形成される。この内部構造により、服用時には錠剤内部へ速やかな唾液の浸透が促され、良好な口腔内速崩壊性が得られる。
本発明の錠剤が取り扱いに問題がない錠剤強度を有するのは、錠剤表層部に形成される緻密な構造に由来する。この緻密な構造は、打錠後の加湿湿潤で、生理活性物質の遊離形とその塩の一部が湿潤溶解し、乾燥で再び結晶化することにより得られる。
具体的に取り扱いに問題がない錠剤強度とは、錠剤の形状にもよるが、PTP包装において、錠剤直径8mm程度であれば1kg以上、錠剤直径10mm程度であれば2kg以上をさす。
かくして得られる本発明の錠剤は、生理活性物質の遊離形とその医学的に許容しうる塩を錠剤の基本構成成分として、錠剤中の生理活性物質含量を極めて高いものにしながら、錠剤内部は高い空隙率を有することで口腔内速崩壊性を有し、錠剤表層部に緻密な構造を形成することで、取り扱いに問題ない錠剤強度が確保される。
本発明における、生理活性物質とは、遊離形とその医学的に許容しうる塩が経口投与可能なものであれば、特に限定はされない。かかる生理活性物質としては、化学療法剤、抗生物質、呼吸促進剤、鎮咳去痰剤、抗悪性腫瘍剤、自律神経用薬剤、精神神経用薬剤、局所麻酔剤、筋弛緩剤、消化器官用薬剤、抗ヒスタミン剤、中毒治療剤、催眠鎮静剤、抗てんかん剤、解熱鎮痛消炎剤、強心剤、不整脈治療剤、利尿剤、血管拡張剤、抗脂血剤、滋養強壮剤、抗凝血剤、肝臓用薬剤、血糖降下剤、血圧降下剤及び脳循環代謝改善剤等が挙げられる。
本発明における医学的に許容し得る塩とは、生理活性物質がアルカリ塩を形成する場合はアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩など)、カルシウム塩、マグネシウム塩又はアルミニウム塩が挙げられる。また生理活性物質が酸付加塩を形成する場合は、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩及び臭化水素酸塩など)又は有機酸塩(例えば、マレイン酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩及びベンゼンスルホン酸など)が挙げられる。
本発明において、生理活性物質の遊離形とその医学的に許容しうる塩以外に、製剤技術の分野で汎用される添加物を、本発明の錠剤における取り扱いに問題がない強度と速やかな崩壊性を損なわない範囲であれば、適宜、添加することができる。かかる添加物として、例えば、賦形剤として乳糖及び結晶セルロースなどを、崩壊剤としてカルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム及び部分アルファー化デンプン等、滑沢剤としてステアリン酸及びその金属塩類、並びにタルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ショ糖脂肪酸エステル等、甘味剤として糖類、糖アルコール類、アスパルテーム、サッカリン及びその塩類、グリチルリチン酸及びその塩類、ステビア、並びにアセスルファムカリウム等、嬌味剤としてクエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、酒石酸及びフマル酸等、着色剤として三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、カラメル、リボフラビン及びアルミニウムレーキ等、香料としてメントール及びオレンジ油等が挙げられる。
本発明における口腔内速崩壊性錠剤の製法は、従来使われてきた一般的な製造装置を適宜組み合わせることで十分に製造が可能なものであり、特殊な製造装置を用いる必要はない。
本発明における、生理活性物質の遊離形とその医学的に許容しうる塩は、通常の攪拌造粒法や流動層造粒法により造粒した後、打錠することも可能である。
本発明において、成形される錠剤の形状は、取り扱いに問題がない錠剤強度と速やかな崩壊性を損なうものでなければ特に限定はされない。例えば、中抜き、多角形及び凹型などの特殊な形状にすることができる。また、錠剤の舌の上での接触面積を増やし、口腔内水分を迅速に錠剤内部へ浸透させ、口腔内速崩壊性を高めるために、錠厚を薄く、錠径を大きくした扁平状の錠剤に成形することもできる。
本発明において、加湿条件は特に限定されないが、遊離形として存在する生理活性物質とその医学的に許容しうる塩の混合物、或いは造粒物を、成形可能な最低圧力で打錠し、得られた錠剤の表層部もしくは内部全体が湿潤し、乾燥後充分な錠剤強度が得られるような湿度であれば良い。加湿は、高温多湿な条件ほど処理時間を短縮できる。更に、遊離型として存在する生理活性物質とその塩の混合物、或いは造粒物の水分吸着等温線を求める等すれば、より最適な条件を設定できる。
加湿の手段は特に限定されず、噴霧式加湿機、加温式加湿機(恒温恒湿器、タバイエスペック)等の既存の装置を用いればよい。
乾燥の手段は特に限定されず、打錠・加湿後に錠剤の湿潤した部分から水分を除去、固化させるために行うものであり、常温もしくは加温、減圧もしくは通風などの条件を適宜組み合わせて行うことができる。
本発明は、遊離形として存在する生理活性物質とその医学的に許容しうる塩を混合或いは造粒し、成形可能な最低圧力で打錠し、加湿湿潤後、乾燥することにより、取り扱いに問題がない錠剤強度と速やかな崩壊性を有する、生理活性物質を90%以上の高用量含有する口腔内速崩壊性錠剤であり、咀嚼及び嚥下機能の低い乳幼児及び高齢者或いは水分摂取に制限のある患者に最適な製剤である。また、携帯性に優れ、水なしで服用できるため、服用の時と場所が制限されない。更には、これまで高用量であるがために、口腔内速崩壊性錠剤としての製剤化が困難であった生理活性物質についても製剤化が可能な技術であり、その有用性は非常に高い。
以下、実施例を挙げて、更に本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって何等限定されるものではない。
<実施例1>
L−カルボシステインナトリウム(粒子径:200μm以下)1重量部に対し、L−カルボシステイン4重量部を添加し乳鉢中で混合した。この混合末を、12φ−15Rの杵臼を用い、成形可能な最低圧力で錠剤重量500mgになるように単発打錠機(N−30E型、岡田精工製)で打錠した。40℃−75%RH条件下で1日間加湿湿潤後、25℃−60%RH条件下で3日間乾燥し、口腔内速崩壊性錠剤を製した。
<実施例2>
L−カルボシステインナトリウム(粒子径:200μm以下)1重量部に対し、L−カルボシステイン1.5重量部を添加し乳鉢中で混合した。この混合末を、12φ−15Rの杵臼を用い、成形可能な最低圧力で錠剤重量500mgになるように単発打錠機(N−30E型、岡田精工製)で打錠した。40℃−75%RH条件下で1日間加湿湿潤後、25℃−60%RH条件下で3日間乾燥し、口腔内速崩壊性錠剤を製した。
<実施例3>
L−カルボシステインナトリウム(粒子径:150μm以下)1重量部に対し、L−カルボシステイン9重量部を添加し乳鉢中で混合した。この混合末を、9.5φ−12Rの杵臼を用い、成形可能な最低圧力で錠剤重量273mgになるように単発打錠機(N−30E型、岡田精工製)で打錠した。60℃−90%RH条件下で6分間加湿湿潤後、60℃で15分間乾燥(30C型、通風乾燥機、不二パウダル製)し、口腔内速崩壊性錠剤を製した。
参考例1
L−グルタミン酸ナトリウム(粒子径:150μm以下)1重量部に対し、L−グルタミン酸9重量部を添加し乳鉢中で混合した。この混合末を、9.5φ−12Rの杵臼を用い、成形可能な最低圧力で錠剤重量273mgになるように単発打錠機(N−30E型、岡田精工製)で打錠した。60℃−90%RH条件下で6分間加湿湿潤後、60℃で15分間乾燥(30C型、通風乾燥機、不二パウダル製)し、口腔内速崩壊性錠剤を製した。
<実施例5>
水490.5gに水酸化ナトリウム34.5gを加え、冷却しながら溶解した。、更にL−カルボシステイン150gを加え、冷却しながら溶解し、L−カルボシステイン水酸化ナトリウム溶液を作製した。流動層造粒装置(フローコーター、FBG−1型、フロイント産業製)を用いて、L−カルボシステイン900gにL−カルボシステイン水酸化ナトリウム溶液450gを噴霧し造粒した(造粒物)。別に、含水二酸化ケイ素2.55g、香料0.47g及びアスパルテーム25.50gを乳鉢中で混合し、香料及びアスパルテーム分散末を作製した。造粒物409.2gに、香料及びアスパルテーム分散末26.84gを添加し、V型混合機(15L型、日本薬業機械製)で10分間混合した。更にステアリン酸マグネシウム4.4gを添加し、V型混合機(15L型、日本薬業機械)で10分間混合し打錠用顆粒を作製した。この打錠用顆粒を、9.5φ−12Rの杵臼を用い、成形可能な最低圧力で錠剤重量275mgになるように単発打錠機(N−30E型、岡田精工製)で打錠した。60℃−90%RH条件下で6分間加湿湿潤後、60℃で20分間乾燥(30C型、通風乾燥機、不二パウダル製)し、口腔内速崩壊性錠剤を製した。
<比較例1>
L−カルボシステインナトリウム(粒子径:200μm以下)4重量部に対し、白糖1重量部を添加し乳鉢中で混合した。この混合末を、12φ−15Rの杵臼を用い、成形可能な最低圧力で錠剤重量500mgになるように単発打錠機(N−30E型、岡田精工製)で打錠した。40℃−75%RH条件下で1日間加湿湿潤後、25℃−60%RH条件下で3日間乾燥し、口腔内速崩壊性錠剤を製した。
<比較例2>
L−カルボシステインナトリウム(粒子径:200μm以下)4重量部に対し、D−マンニトール1重量部を添加し乳鉢中で混合した。この混合末を、12φ−15Rの杵臼を用い、成形可能な最低圧力で錠剤重量500mgになるように単発打錠機(N−30E型、岡田精工製)で打錠した。40℃−75%RH条件下で1日間加湿湿潤後、25℃−60%RH条件下で3日間乾燥し、口腔内速崩壊性錠剤を製した。
<比較例3>
L−カルボシステインナトリウム(粒子径:200μm以下)4重量部に対し、乳糖1重量部を添加し乳鉢中で混合した。この混合末を、12φ−15Rの杵臼を用い、成形可能な最低圧力で錠剤重量500mgになるように単発打錠機(N−30E型、岡田精工製)で打錠した。40℃−75%RH条件下で1日間加湿湿潤後、25℃−60%RH条件下で3日間乾燥し、口腔内速崩壊性錠剤を製した。
(錠剤硬度の測定)
錠剤硬度計(TS−50N型、岡田精工製)を用いて測定した。
(口腔内崩壊時間の測定)
健康成人男性の口腔内で錠剤が完全に崩解するまでの時間を測定した。
(生理活性物質含量)
1錠あたりの生理活性物質含量を次式により求めた。
Figure 0004585210
実施例1から3及び5、比較例1から3、及び参考例1の口腔内速崩壊性錠剤の各々について、硬度、口腔内崩壊時間及び生理活性物質含量を測定した。その結果を表1に示した。
Figure 0004585210
表1に示すように、L−カルボシステインやL−グルタミン酸に代表されるような遊離型の生理活性物質と、そのナトリウム塩を混合或いは造粒し、成形可能な最低圧力で打錠し、加湿湿潤後、乾燥することにより、取り扱いに問題がない錠剤強度と良好な口腔内速崩壊性を有する、生理活性物質含量90%以上の口腔内速崩壊性錠剤を得ることができた。一方、L−カルボシステインのナトリウム塩の代わりに、一般的な添加剤である糖類を用いて製した比較例1から3で得られた錠剤は、取り扱いに問題の無い錠剤強度が得られなかった。

Claims (2)

  1. 遊離形として存在するL−カルボシステインと、該L−カルボシステインの医学的に許容しうる塩とを混合或いは造粒し、
    この混合物或いは造粒物を、成形可能な最低圧力で打錠し、加湿湿潤後、乾燥することを特徴とする口腔内速崩壊性錠剤の製造方法
  2. 遊離形として存在するL−カルボシステイン1〜19重量部該L−カルボシステインの医学的に許容しうる塩1重量部とを混合或いは造粒することを特徴とする請求項1記載の口腔内速崩壊性錠剤の製造方法。
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