JP4584474B2 - ゼオライト成形体、ゼオライト積層中間体及びゼオライト積層複合体の製造方法 - Google Patents

ゼオライト成形体、ゼオライト積層中間体及びゼオライト積層複合体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゼオライト成形体、ゼオライト積層中間体及びゼオライト積層複合体製造方法に関する。さらに詳しくは、クラックを発生させることなくその上にゼオライト膜を形成かつ維持し得るとともに、分子ふるい膜等のガス分離膜や浸透気化膜として用いた場合、圧力損失の減少及び機械的強度の維持向上のいずれをも満足するゼオライト成形体、このゼオライト成形体上に鋳型剤を含有するゼオライト膜を形成したゼオライト積層中間体、このゼオライト積層中間体を仮焼して形成したゼオライト積層複合体効率的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ゼオライトからなる粒子から構成された多孔質のゼオライト成形体は、その上にゼオライト膜を形成したゼオライト膜積層複合体として、分子ふるい膜(ガス分離膜、浸透気化膜)をはじめとして、触媒、触媒担体、吸着剤等に広く用いられるようになっている。このような状況に伴い、種々のゼオライト成形体(基体)、ゼオライト積層中間体、ゼオライト積層複合体及びそれらの製造方法が提案されている。
例えば、ゼオライト膜の基体として、ガラス、ムライト、コーディエライト系セラミックス、アルミナ、シリカ等を用いる方法、また、金属その他の基材に無機質を被覆したもの等を用いる方法が提案されている(特開昭59−213615号公報)。
【0003】
また、かご型ゼオライトの薄膜を金属、無機物又は高分子物質の多孔質支持体の一表面に合体してなる複合体が提案されている(特開昭60−28826号公報)。その中で、支持体としては、特に、ゲル物質と親和性の高いものを用いることが好ましいことが提案され、具体的には、コーニンググラスワークス社製の商品名:No.7930又は一般にバイコールガラスと称されるものを用いることが特に好ましいことが提案されている。
【0004】
また、基体としてのモノリシックセラミック支持体の表面にゼオライトを結晶化する方法に関するもので、45−4質量%シリカ、8−45質量%アルミナ、及び7−20質量%マグネシアからなる酸化物組成を有するモノリシック支持体が提案され(特開平1−148771号公報)、具体的には、きん青石、ガラス、又はガラスセラミックの焼結モノリシック支持体が提案されている。
【0005】
また、A型又はフォージャサイト型ゼオライト膜の製造方法に関するもので、酸化けい素を主成分とする物質からなる基板を用いる方法が提案されている(特開平6−32610号公報)。この方法は、ゼオライト膜の基板への密着性が悪い問題を改善することを目的とするものであり、基板自体としてゼオライト膜の原料を用い、かつその構成上基板表面がゼオライト膜化されることになるため、合成と添着を同時に進行させることができ、工程を簡略化することができる。具体的には、ほうけい酸ガラス、石英ガラス、シリカアルミナ、ムライト等からなる基板が提案されている。
【0006】
また、担持ゼオライト膜の生成方法及び得られた膜に関するもので、担体として、アルミナ、ジルコニア又は酸化チタンをベースとするセラミック物質、金属、炭素、シリカ、ゼオライト、粘土及びポリマーからなる群から選ばれる無機、有機又は混合物質からなるものが提案されている(特開平9−173799号公報)。
【0007】
また、ゼオライト化処理を施される多孔質セラミック基体が、所定寸法の多くの内部孔を備え、5MPa以上の圧縮破壊強度を有するゼオライト多孔質体が提案されている(特開平11−292651号公報)。
【0008】
このように、従来から、基体上にゼオライト膜を積層、形成してなる種々のゼオライト積層複合体が提案されているが、これらの複合体においては、次のような問題がある。
すなわち、図14に示すように、ゼオライトの熱膨張係数は200℃ぐらいまでは非常に小さい値であるが、その後高温になると負の係数を示すという、非常に複雑な挙動をする。このため、ゼオライト膜を200℃を超える温度で使用する場合には、基体、例えば、アルミナ質基体との熱膨張差が極端に大きくなり、ゼオライト膜に熱応力によるクラックを生ぜしめることになる。
【0009】
また、ゼオライト膜の種類によっては、合成時に鋳型剤又は結晶化促進剤を添加する必要があるものがある。鋳型剤入りのゼオライト膜は500℃程度で仮焼して鋳型剤を除去するが、図15のMFI型ゼオライトの熱膨張曲線に示すように、鋳型剤入りのゼオライト膜の熱膨張挙動(図15の仮焼前の熱膨張曲線)は鋳型剤なしのゼオライト膜の熱膨張挙動(図15の仮焼後の熱膨張曲線)とは極端に異なることから、例えば、アルミナ質基体等の基体との熱膨張差が極端に大きくなり、仮焼時においてゼオライト膜に熱応力によるクラックが生じることになる。
【0010】
このような問題に対しては、上述の従来の提案例では十分な対応をすることができなかった。
【0011】
また、基体とゼオライト膜とを二層構造としたものとして、所定厚さの実質的にモレキュラーシーブ結晶のみで形成されたマクロ多孔質層と、所定厚さ及び所定細孔有効径の実質的にマクロ多孔質層の材質と同一種類のモレキュラーシーブ結晶のみで形成された分子分離用の上層とからなる非対称な膜(特表平7−505333号公報)、担体、中間層及び上層の3層からなり、中間層及び上層が所定の結晶性モレキュラーシーブを含有する構造(特表平11−511685号公報)、及び鋳型剤を含有するゼオライト多孔質基体上に鋳型剤を含有するゼオライト膜を被覆した後仮焼して膜と基体から同時に鋳型剤を除去するゼオライト複合膜(国際公開番号WO00/23378)が提案されている。これらの膜や構造は、細孔のサイズを正確に調節することができたり、クラックの発生を有効に防止することができる等の面において、それぞれ優れたものである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの膜や構造(ゼオライト積層複合体)を分子ふるい膜等のガス分離膜や浸透気化膜として用いる場合には、膜や基体内を気液が通過する時の圧力損失を減少させて、その使用効率を向上させる必要があるが、圧力損失を減少させるために圧力損失の増加をもたらす主原因となる基体の粒子寸法を大にすると、ゼオライト膜を支持する基体としての機械的強度が低下することから(基体における圧力損失の減少と機械的強度の向上とは二律背反の関係にあることから)、圧力損失の減少と機械的強度の維持向上のいずれをも満足するものを得るのは極めて困難であり、そのようなものは未だ得られていないのが現状である。
【0013】
本発明は上述の問題に鑑みてなされたものであり、クラックを発生させることなくその上にゼオライト膜を形成かつ維持し得るとともに、分子ふるい膜等のガス分離膜や浸透気化膜として用いた場合、圧力損失の減少及び機械的強度の維持向上のいずれをも満足するゼオライト成形体、このゼオライト成形体上に鋳型剤を含有するゼオライト膜を形成したゼオライト積層中間体、このゼオライト積層中間体を仮焼して形成したゼオライト積層複合体効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明によって、以下のゼオライト成形体、ゼオライト積層中間体及びゼオライト積層複合体製造方法が提供される。
【0018】
] シリカゾルに、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)溶液及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)を、これらのテトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)の全量、すなわち、(TPAOH+TPABr)、[以下、「(TPA)の全量」を「(TPAOH+TPABr)」と表記することがある]に対するテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)のそれぞれの配合割合[TPAOH/(TPAOH+TPABr)、及びTPABr/(TPAOH+TPABr)]が、0〜99モル%及び100〜1モル%となるように調整し、テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)とシリカゾルとの配合割合(TPA/SiO モル比)が、0.015〜0.08の範囲となるように添加し、得られた調製液を混練して乾燥し、得られた乾燥ゲルを成形、結晶化処理することを特徴とするゼオライト成形体の製造方法。
【0020】
] シリカゾルに、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)溶液及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)を、これらのテトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)の全量に対するテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)のそれぞれの配合割合[TPAOH/(TPAOH+TPABr)、及びTPABr/(TPAOH+TPABr)]が、0〜99モル%及び100〜1モル%となるように調整し、テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)とシリカゾルとの配合割合(TPA/SiOモル比)が、0.015〜0.08の範囲となるように添加し、得られた調製液を混練して乾燥し、得られた乾燥ゲルを成形、結晶化処理して、ゼオライト成形体を得、得られた前記ゼオライト成形体を前記調製液と同一又は類似の組成の溶液に浸漬して、水熱合成して、前記ゼオライト成形体上に鋳型剤を含有するゼオライト膜を形成して、前記ゼオライト成形体と前記鋳型剤を含有するゼオライト膜との積層体を形成することを特徴とするゼオライト積層中間体の製造方法。
【0022】
] シリカゾルに、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)溶液及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)を、これらのテトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)の全量に対するテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)のそれぞれの配合割合[TPAOH/(TPAOH+TPABr)、及びTPABr/(TPAOH+TPABr)]が、0〜99モル%及び100〜1モル%となるように調整し、テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)とシリカゾルとの配合割合(TPA/SiOモル比)が、0.015〜0.08の範囲となるように添加し、得られた調製液を混練して乾燥し、得られた乾燥ゲルを成形、結晶化処理して、ゼオライト成形体を得、得られた前記ゼオライト成形体を前記調製液と同一又は類似の組成の溶液に浸漬して、水熱合成して、前記ゼオライト成形体上に鋳型剤を含有するゼオライト膜を形成して、前記ゼオライト成形体と前記鋳型剤を含有するゼオライト膜との積層体を形成するとともに、この積層体を仮焼して鋳型剤を同時に除去することを特徴とするゼオライト積層複合体の製造方法。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のゼオライト成形体、ゼオライト積層中間体及びゼオライト積層複合体の製造方法の実施の形態を具体的に説明する。
【0025】
本発明の製造方法で得られるゼオライト成形体は、ゼオライトからなる多孔質のゼオライト成形体であって、平均粒子径が1.0μm以上、曲げ強度が1.5MPa以上、かつ、その肉厚を1.8mmとしたときの、ヘリウムガス透過量10ml/cm・minにおける供給側圧力と透過側圧力との差が、1.0気圧以下である。
【0026】
本発明の製造方法で得られるゼオライト成形体は、基体として、その上にゼオライト膜を積層、形成したゼオライト積層複合体として分子ふるい膜等のガス分離膜や浸透気化膜等に有効に用いられるものであるから、その上に積層、形成されるゼオライト膜にクラックが発生するのを防止し得るものである必要がある。このため、本発明の製造方法で得られるゼオライト成形体は、その上にゼオライト膜を積層してゼオライト積層複合体を得るために用いる場合には、その上に積層されるゼオライト膜と同一又は類似の組成のゼオライトからなる粒子から構成された多孔質ゼオライトであることが好ましい。
【0027】
特に、鋳型剤等を用いてゼオライト積層複合体を形成する場合、鋳型剤入りのゼオライト膜の熱膨張挙動が、図15に示すように、鋳型剤なしのゼオライト膜に比して極端に異なることに鑑み、単にその熱膨張係数がゼオライト膜のそれと近似する基体(例えば、石英ガラス等)とするだけでは、鋳型剤を除去するために500℃程度で仮焼する際の熱膨張差を解消することができずに、ゼオライト膜にクラックを生じさせることから、本発明のゼオライト成形体は、鋳型剤を含めた全ての含有組成の面において、ゼオライト膜と同一又は類似の組成の多孔質のゼオライトであることが好ましい。
【0028】
本発明に用いられるゼオライトとしては、例えば、熱膨張が非直線的な異常な挙動を示す、MFI型は、このゼオライトを用いたゼオライト膜と基体であるゼオライト成形体とからゼオライト積層複合体を構成したときに、ゼオライト膜のクラックの発生を防止することは通常困難であることから、本発明において効果的に用いられることになる。
【0029】
また、ゼオライト膜を形成するときに鋳型剤を必要とする場合、その鋳型剤としては、例えば、MFIからなるゼオライト膜に含有させるテトラプロピルアンモニウムの水酸化物(テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH))や臭化物(テトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr))、BEAからなるゼオライト膜に含有させるテトラエチルアンモニウム(TEA)の水酸化物や臭化物等を挙げることができるが、このような鋳型剤を含有させたゼオライト膜と鋳型剤を含有させないゼオライト膜との熱膨張挙動は、図15に示すように大きな相違がある。
【0030】
従って、本発明のゼオライト成形体としては、ゼオライトとしてMFIであって鋳型剤を含有したものを用いて、ゼオライト膜をその上に積層、形成したゼオライト積層複合体用に用いる場合は、ゼオライト膜と同じ鋳型剤を含有することをも含め同一又は類似組成のゼオライトから構成されたものとすることが好ましい。
【0031】
本発明の製造方法で得られるゼオライト成形体は、平均粒子径が1.0μm以上、好ましくは、2.5μm以上、曲げ強度が1.5MPa以上、好ましくは、6.0MPa以上、かつ、その肉厚を1.8mmとしたときの、ヘリウムガス透過量10ml/cm・minにおける供給側圧力と透過側圧力との差(圧力損失)が、1.0気圧以下、好ましくは、0.6気圧以下である。
【0032】
この条件を満たすことによって、本発明の製造方法で得られるゼオライト成形体は、クラックを発生させることなくその上にゼオライト膜を形成かつ維持し得るとともに、分子ふるい膜等のガス分離膜や浸透気化膜として用いた場合、圧力損失の減少及び機械的強度の維持向上のいずれをも満足するものとなる。
【0033】
なお、平均粒子径は、画像解析装置により、各粒子の最大長さを測定し、平均化することによって求めた。すなわち、本発明のゼオライト成形体の破断面(無作為に抽出した部分)を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、SEM写真を撮った(図16)。このSEM写真をベースに白黒に色分けしたレプリカ図を作製した(図17)。この場合、白の部分は粒子、黒の部分は粒子間の空隙及び粒子不明瞭部を示すが、ゼオライト粒子全体が見える粒子を選ぶようにし、ゼオライト粒子全体が見えない場合には、少なくとも粒子最大径が見える粒子を選んだ。また、粒子同士が重なり合って全体が不明瞭な粒子については測定しないようにした。画像解析は、装置として、画像分析装置(東洋紡績(株)製 商品名:イメージアナライザーV10)を用い、レプリカの画像をパソコンに取り込み、測定領域、スケール、及び二値化処理を設定し(レプリカ図の白の部分をゼオライト粒子、黒の部分を粒子間の空隙等の非測定部分として認識させる処理)、図18(a)〜(c)に示す基準で各粒子の最大長さを測定し、平均粒子径を算出した。
【0034】
また、曲げ強度は、JIS R 1601に準拠して測定した。
【0035】
さらに、圧力損失は、図19に示す方法で測定した。
すなわち、本発明のゼオライト成形体(直径18mm、厚さ1.8mm)11と石英ガラス管12とをエポキシ樹脂で接合し、金属(ステンレス)製容器13内に配設した。室温で、供給ガス14としてヘリウムガスを用い、最高8kgf/cm2まで加圧し、供給ガス14の圧力を圧力計16で、透過ガス15の圧力を圧力計17で、また、透過量を流量計18によってそれぞれ測定した。ヘリウムガスの透過量10ml/cm2・minにおける供給側圧力と透過側圧力との差を圧力損失とした。
【0036】
なお、多孔質材料の圧力損失は、測定試料の肉厚に比例して増大する(肉厚が2倍になれば圧力損失も2倍になる)ものであるから、圧力損失の測定では、測定試料の肉厚を常に同一とするか又は肉厚を考慮して計算により補正をする必要がある。本発明においては、試料の肉厚を1.8mmに揃えて、その形状における供給側と透過側との圧力差を測定し、圧力損失とした。
【0037】
本発明のゼオライト成形体の製造方法は、シリカゾルに、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)溶液及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)を、これらのテトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)とシリカゾルとの配合割合(TPA/SiO2)が所定のモル比となるように、かつ、テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)の全量に対するテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)のそれぞれの配合割合[TPAOH/(TPAOH+TPABr)、及びTPABr/(TPAOH+TPABr)]が、0〜99モル%及び100〜1モル%となるように調整して添加し、得られた調製液を混練して乾燥し、得られた乾燥ゲルを成形、結晶化処理することを特徴とする。
【0038】
ここで、テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)とシリカゾルとの配合割合(TPA/SiO2モル比)については、モル比0.015〜0.08の範囲でゼオライト成形体の平均粒子径は変化せず、また、曲げ強度はゼオライト積層複合体を形成し得る基体として必要な1.5MPa以上(ゼオライト膜の水熱合成環境下で破壊せず、かつ、膜を形成した後も破壊しない強度)を有することから、いずれの範囲で調整してもよい。本発明の実施においては、曲げ強度が最大となるTPA/SiO2モル比0.04に調整した。
【0039】
また、調製液のTPA/SiO2モル比、及び全量TPAに対するTPAOH、TPABrのそれぞれの配合割合が所定量に保たれていれば、必要に応じpHを調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ源を加えてもよい。
【0040】
次に、調製液を乾燥させるために、調製液をテフロンビーカーに入れマグネティクスターラーで撹拌した後、所定温度に設定した恒温槽で加熱しながらテフロン棒を用いて手動で撹拌混練を継続して、水分を蒸発させて乾燥ゲルを得る。この時の撹拌混練は、加熱ニーダー等で実施してもよい。
【0041】
次に、乾燥ゲルの成形は、金型一軸プレス成形(全圧1000kgf)で所定の形状に整えた後、さらに冷間静水圧成形を行って、乾燥ゲル成形体を得る。この時、冷間静水圧成形の圧力は、所望の乾燥ゲル成形体密度となるように700〜7000kgf/cm2の範囲で調整することが好ましい。
【0042】
次に、前述のようにして得た乾燥ゲル成形体を、成形体重量と同重量の蒸留水を入れたテフロン内筒付ステンレス製耐圧容器中に、水と接触しないようにテフロン板の上に配置し、180℃のオーブン中で10時間自生水蒸気圧下で反応させて、結晶化処理し、ゼオライト成形体を得る。この時の蒸留水の量は、使用する耐圧容器容積にて飽和水蒸気圧に達する量の最少量であり、それ以上であれば成形体と蒸留水との関係からの制約はない。また、反応温度及び時間については、130℃以上及び2時間以上で結晶化が進むことからそれ以上の温度及び時間であれば特に制約はない。
【0050】
本発明の製造方法で得られるゼオライト積層中間体は、前述のゼオライト成形体が鋳型剤を含有するものであり、その上に同一又は類似の組成の鋳型剤を含有するゼオライト膜が積層されてなることを特徴とする。
【0051】
鋳型剤を含有するゼオライト膜の形成方法としては水熱合成法を挙げることができる。
【0052】
また、本発明の製造方法で得られるゼオライト積層複合体は、前述のゼオライト積層中間体を仮焼してゼオライト成形体及び鋳型剤を含有するゼオライト膜から鋳型剤を除去することにより形成された、ゼオライト成形体上にゼオライト膜が積層されてなることを特徴とする。
【0053】
ここで、ゼオライト積層複合体は、分子ふるい膜等のガス分離膜や浸透気化膜等に有効に用いられるものであるから、ゼオライト成形体上に積層される鋳型剤を含有するゼオライト膜や鋳型剤が除去されたゼオライト膜は、ゼオライト成形体が露出することのないよう十分な厚さを必要とし、かつ、緻密な膜でなければならない。また、ゼオライト成形体として鋳型剤を含有するものを用いる場合は、積層される鋳型剤を含有するゼオライト膜は、同じ鋳型剤を含有することを含め同一又は類似組成のゼオライトから構成されたものである必要がある。
【0054】
本発明のゼオライト積層中間体の製造方法は、シリカゾルに、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)溶液及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)を、これらのテトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)とシリカゾルとの配合割合(TPA/SiO2)が所定のモル比となるように、かつ、テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)の全量に対するテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)のそれぞれの配合割合[TPAOH/(TPAOH+TPABr)、及びTPABr/(TPAOH+TPABr)]が、0〜99モル%及び100〜1モル%となるように調整して添加し、得られた調製液を混練して乾燥し、得られた乾燥ゲルを成形、結晶化処理して、ゼオライト成形体を得、得られたゼオライト成形体を調製液と同一又は類似の組成の溶液に浸漬して、水熱合成して、ゼオライト成形体上に鋳型剤を含有するゼオライト膜を形成して、ゼオライト成形体と鋳型剤を含有するゼオライト膜との積層体を形成することを特徴とする。具体的には、本発明のゼオライト積層複合体の製造方法のところで説明する。
【0056】
本発明のゼオライト積層複合体の製造方法は、シリカゾルに、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)溶液及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)を、これらのテトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)と前記シリカゾルとの配合割合(TPA/SiO2)が所定のモル比となるように、かつ、テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)の全量に対するテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)のそれぞれの配合割合[TPAOH/(TPAOH+TPABr)、及びTPABr/(TPAOH+TPABr)]が、0〜99モル%及び100〜1モル%となるように調整して添加し、得られた調製液を混練して乾燥し、得られた乾燥ゲルを成形、結晶化処理して、ゼオライト成形体を得、得られたゼオライト成形体を調製液と同一又は類似の組成の溶液に浸漬して、水熱合成して、ゼオライト成形体上に鋳型剤を含有するゼオライト膜を形成して、ゼオライト成形体と鋳型剤を含有するゼオライト膜との積層体を形成するとともに、この積層体を仮焼して鋳型剤を同時に除去することを特徴とする。
【0057】
ここで、ゼオライト成形体の製造における、テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)とシリカゾルとの配合割合(TPA/SiO2モル比)については、モル比0.015〜0.08の範囲でゼオライト成形体の平均粒子径は変化せず、また、曲げ強度はゼオライト積層複合体を形成し得る基体として必要な1.5MPa以上を有することから、いずれの範囲で調整してもよい。本発明の実施例においては、曲げ強度が最大となるTPA/SiO2モル比0.04に調整した。
【0058】
また、調製液のTPA/SiO2モル比、及び全量TPAに対するTPAOH、TPABrのそれぞれの配合割合が所定量に保たれていれば、必要に応じpHを調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ源を加えてもよい。
【0059】
次に、調製液を乾燥させるために、調製液をテフロンビーカーに入れマグネティクスターラーで撹拌した後、所定温度に設定した恒温槽で加熱しながらテフロン棒を用いて手動で撹拌混練を継続して、水分を蒸発させて乾燥ゲルを得る。この時の撹拌混練は、加熱ニーダー等で実施してもよい。
【0060】
次に、乾燥ゲルの成形は、金型一軸プレス成形(全圧1000kgf)で所定の形状に整えた後、さらに冷間静水圧成形を行って、乾燥ゲル成形体を得る。この時、冷間静水圧成形の圧力は、所望の乾燥ゲル成形体密度となるように700〜7000kgf/cm2の範囲で調整することが好ましい。
【0061】
次に、前述のようにして得た乾燥ゲル成形体を、成形体重量と同重量の蒸留水を入れたテフロン内筒付ステンレス製耐圧容器中に、水と接触しないようにテフロン板の上に配置し、180℃のオーブン中で10時間自生水蒸気圧下で反応させて、結晶化処理し、ゼオライト成形体を得る。この時の蒸留水の量は、使用する耐圧容器容積にて飽和水蒸気圧に達する量の最少量であり、それ以上であれば成形体と蒸留水との関係からの制約はない。また、反応温度及び時間については、130℃以上及び2時間以上で結晶化が進むことからそれ以上の温度及び時間であれば特に制約はない。
【0062】
こうして得たゼオライト成形体上への、鋳型剤を含有するゼオライト膜の積層は、シリカゾルに、TPAOH溶液及びTPABr、並びに蒸留水を、所定のSiO2/TPAOH/TPABr/水のモル比となるように添加して、調整し、耐圧容器中に入れ、調製液にゼオライト成形体を浸漬し、100℃以上のオーブン中で1時間以上反応させ、ゼオライト成形体上に十分な厚さを有し、かつ、緻密な層からなる鋳型剤を含有するゼオライト膜を形成し、ゼオライト積層中間体を得、このゼオライト積層中間体を仮焼し、ゼオライト積層複合体を得る。本発明の実施例においては、180℃のオーブン中で18時間反応させて、ゼオライト成形体上に20μm以上の厚さで、かつ、緻密な層からなるゼオライト膜を形成させた。
【0063】
なお、調製液のSiO2/テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)/水のモル比が所定量に保たれていれば、必要に応じpHを調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ源を加えてもよい。
【0064】
また、ゼオライト膜の形成方法としては、水熱合成法を挙げることができる。
【0071】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0072】
(実施例1〜5)
200mlテフロンビーカーに、約30質量%シリカゾル(日産化学(株)製商品名:スノーテックスS)と、10%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)溶液(和光純薬工業(株)製)及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)(和光純薬工業(株)製)を、これらのテトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)とシリカゾルとの配合割合(TPA/SiO2)がモル比で0.04となるように、かつ、テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)の全量に対するテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)のそれぞれの配合割合[TPAOH/(TPAOH+TPABr)、及びTPABr/(TPAOH+TPABr)]がモル%で表1に示すものとなるよう調整して添加し、さらに、テトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)の添加量(モル)と同量(モル)の水酸化ナトリウムを約2質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い添加して、室温で30分間マグネティックスターラーで撹拌した後、さらに80℃に加熱しながらテフロン棒を用いて手動で撹拌混練を継続し、水分を蒸発させることにより無色の乾燥ゲルを得た。得られた乾燥ゲルをX線回折で結晶構造を調べたところ、非晶質であった。
【0073】
この乾燥ゲルをメノウ乳鉢にて粉砕し、目開き355μmメッシュを通過した粉末を、金型一軸プレス成形(全圧1000kgf)で5×4×40mmの棒状及び直径18mmφ、厚さ1.8mmのディスク状にし、さらに冷間静水圧成形(1000kgf/cm2)を行い、成形体を得た。この成形体を、成形体重量と同重量の蒸留水を入れたテフロン内筒付ステンレス製100ml耐圧容器中に、水と接触しないようにテフロン板の上に配置し、180℃のオーブン中で10時間自生水蒸気圧下で反応させた。反応後の成形体をX線回折で調べたところ、全ての組成でMFI型ゼオライトであった。この成形体を80℃で十分乾燥させ、ゼオライト成形体とした。
【0074】
このようにして得たゼオライト成形体の破断面の微構造を、前述のように、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、その写真により、平均粒子径を算出したところ、表1、図1に示すように、テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)の全量に対するテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)の配合割合[TPABr/(TPAOH+TPABr)]が、5、12.5、25、37.5、50モル%と増加するに従い、平均粒子径が、1.5、2.7、6.4、8.8、13.9μmと大きくなることがわかった。
【0075】
実施例1〜5の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図2〜図6にそれぞれ示す。
【0076】
また、棒状のゼオライト成形体をJIS R 1601に準拠して四点曲げ強度を測定したところ、表1及び図7に示すように、テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)の全量に対するテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)の配合割合[TPABr/(TPAOH+TPABr)]が、5、12.5、25、37.5、50モル%と増加するに従い、曲げ強度が低下し、また、図8に示すように、平均粒子径が増加すると曲げ強度が低下することがわかった。
【0077】
また、ディスク状のゼオライト成形体の圧力損失を測定したところ、表1に示すように、テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)の全量に対するテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)の配合割合[TPABr/(TPAOH+TPABr)]が、5、12.5、25、37.5、50モル%と増加するに従い、圧力損失が低下し、また、図9に示すように、平均粒子径が増加すると圧力損失が低下することがわかった。
【0078】
(実施例6)
200mlテフロンビーカーに、約30質量%シリカゾル(日産化学(株)製商品名:スノーテックスS)と、テトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)(和光純薬工業(株)製)とを、このTPABrのテトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)とシリカゾルとの配合割合(TPA/SiO2)がモル比で0.04となるように調整して添加し、さらに、テトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)の添加量(モル)と同量(モル)の水酸化ナトリウムを約2質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い添加して、室温で30分間マグネティックスターラーで撹拌した後、さらに80℃に加熱しながらテフロン棒を用いて手動で撹拌混練を継続し、水分を蒸発させることにより無色の乾燥ゲルを得た。得られた乾燥ゲルをX線回折で結晶構造を調べたところ、非晶質であった。
この乾燥ゲルを、実施例1〜5と同様にしてゼオライト成形体を得た。
【0079】
このゼオライト成形体の破断面の微構造を、実施例1〜5と同様にして走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、その写真により、平均粒子径を算出したところ、平均粒子径は、24μmであった(図1参照)。走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図10に示す。
また、棒状のゼオライト成形体の四点曲げ強度を実施例1〜5と同様にして測定したところ、表1、図7及び図8に示すように、2MPaであった。
【0080】
また、表1、図9に示すように、ディスク状のゼオライト成形体の圧力損失を実施例1〜5と同様にして測定したところ、0.3×10-3気圧であった。
【0081】
参考実施例7)
200mlテフロンビーカーに、約30質量%シリカゾル(日産化学(株)製商品名:スノーテックスS)と、10%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)溶液(和光純薬工業(株)製)とを、このTPAOH溶液のテトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)とシリカゾルとの配合割合(TPA/SiO2)がモル比で0.04となるように調整して添加し、室温で30分間マグネティックスターラーで撹拌して、スプレードライヤー用のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)とシリカゾルとの混合溶液を調製した。この混合溶液をスプレードライヤー装置(ヤマト科学(株)製 商品名:バルビスミニスプレーGA32型)で、噴霧空気圧1kgf/cm2、乾燥空気流量0.4m3/min、送液量3ml/min、吹きこみ温度180℃の条件で乾燥させ、乾燥ゲルを得た。得られた乾燥ゲルをX線回折で結晶構造を調べたところ、非晶質であった。
【0082】
この乾燥ゲルを、実施例1〜5と同様にしてゼオライト成形体を得た。
【0083】
この成形体の破断面の微構造を、実施例1〜5と同様にして走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、欠陥がなく、かつ粒子の粗密のない均質な構造であった。また、その写真により、平均粒子径を算出したところ、平均粒子径は、7.5μmであった。走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図11に示す。
【0084】
また、棒状のゼオライト成形体の四点曲げ強度を実施例1〜5と同様にして測定したところ、表1に示すように、6MPaであった。また、表1、図9に示すように、ディスク状のゼオライト成形体の圧力損失を実施例1〜5と同様にして測定したところ、0.6×10-3気圧であった。
【0085】
(比較例1)
200mlテフロンビーカーに、約30質量%シリカゾル(日産化学(株)製商品名:スノーテックスS)と、10%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)溶液(和光純薬工業(株)製)とを、このTPAOH溶液のテトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)とシリカゾルとの配合割合(TPA/SiO2)がモル比で0.04となるように調整して添加し、室温で30分間マグネティックスターラーで撹拌した後、さらに80℃に加熱しながらテフロン棒で手動で撹拌混練を継続し、水分を蒸発させることにより無色の乾燥ゲルを得た。得られた乾燥ゲルをX線回折で結晶構造を調べたところ、非晶質であった。
この乾燥ゲルを、実施例1〜5と同様にしてゼオライト成形体を得た。
【0086】
このゼオライト成形体の破断面の微構造を、実施例1〜5と同様にして走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、その写真により、平均粒子径を算出したところ、平均粒子径は、0.8μmであった(図1参照)。走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図12に示す。
【0087】
また、棒状のゼオライト成形体の四点曲げ強度を実施例1〜5と同様にして測定したところ、表1、図7及び図8に示すように、26MPaであった。
【0088】
また、図9に示すように、ディスク状のゼオライト成形体の圧力損失を実施例1〜5と同様にして測定したところ、1.8気圧であった。
【0089】
実施例1〜6、参考実施例7及び比較例1で得られたゼオライト成形体の破断面の微構造の平均粒子径(μm)、並びに実施例1〜6、参考実施例7及び比較例1で得られたゼオライト成形体の四点曲げ強度(MPa)及び圧力損失(atm)を測定した結果をまとめて表1に示す。表1から、実施例1〜6、参考実施例7で得られたゼオライト成形体は、比較例で得られたゼオライト成形体に比べ、その平均粒子径及び四点曲げ強度も実用上十分に大きく、さらに、その圧力損失が極めて小さいことがわかる。従って、実施例1〜6、参考実施例7で得られたゼオライト成形体のような圧力損失が極めて小さい成形体(基体)の上にクラック等の欠陥のないゼオライト膜を積層、形成したゼオライト積層複合体を、分子ふるい膜等のガス分離膜や浸透気化膜として用いれば、ガス等の透過量の大きな、高機能なものとして使用することができることがわかる。
【0090】
【表1】
Figure 0004584474
【0091】
(実施例8) 10%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)溶液(和光純薬工業(株)製)15.26gとテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)(和光純薬工業(株)製)2.00gを混合し、さらに蒸留水を49.85g、約30質量%シリカゾル(日産化学(株)製 商品名:スノーテックスS)6.00gを、これらのSiO2/TPAOH/TPABr/水のモル比が1/0.25/0.25/125となるように加え、室温で30分間マグネティックスターラーで撹拌してゼオライト膜の成膜用ゾルを調整した。
このゾルをテフロン内筒付ステンレス製100ml耐圧容器中に入れ、実施例6のゼオライト成形体を浸漬させ、180℃のオーブン中で18時間反応させた。反応後の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、図20のSEM写真に示すように、ゼオライト成形体上に約25μmの緻密層が形成されており、X線回折からこの緻密膜がMFI型ゼオライト膜であることが確認された。
以上のようにして得たゼオライト積層中間体を電気炉中500℃まで昇温し4時間保持してテトラプロピルアンモニウム(TPA)を除去したところ、ローダミン試験でクラックが認められず、また、トリエチルベンゼンの浸透気化法でも分子の通過がなく、クラックのない緻密なゼオライト積層複合体であることが確認された。
【0092】
参考実施例9)
参考実施例7のゼオライト成形体上に、実施例8と同様にしてゼオライト積層中間体を得た。
以上のようにして得たゼオライト積層中間体を電気炉中500℃まで昇温し4時間保持してテトラプロピルアンモニウム(TPA)を除去したところ、ローダミン試験でクラックが認められず、また、トリエチルベンゼンの浸透気化法でも分子の通過がなく、クラックのない緻密なゼオライト積層複合体であることが確認された。
【0093】
なお、熱膨張差によりゼオライト膜において生じるクラックは、8〜50オングストローム程度の分子レベルのものであり、SEMでも検出することができない。そこで、本発明においては、上記クラックの測定方法として、下記の方法を用いた。
第一の方法(ローダミン試験)は、ゼオライト膜上にローダミンBを滴下してクラックを可視化し、光学顕微鏡で観察する方法である。
第二の方法(浸透気化法)は、図13に示すように、トリイソプロピルベンゼン(TIPB)分子20を真空ポンプ22により吸引し、ゼオライト膜21を通過させることにより、真空計23又はガスクロマトグラフでクラックの有無を確認する方法である。
【0094】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によって、クラックを発生させることなくその上にゼオライト膜を形成かつ維持し得るとともに、分子ふるい膜等のガス分離膜や浸透気化膜として用いた場合、圧力損失の減少及び機械的強度の維持向上のいずれをも満足するゼオライト成形体、このゼオライト成形体上に鋳型剤を含有するゼオライト膜を形成したゼオライト積層中間体、このゼオライト積層中間体を仮焼して形成したゼオライト積層複合体製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1〜6で得られたゼオライト成形体におけるテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)のテトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)の全量、すなわち(TPAOH+TPABr)に対する配合割合[TPABr/(TPAOH+TPABr)]と平均粒子径との関係を示すグラフである。
【図2】 本発明の実施例1で得られたゼオライト成形体の破断面の微構造を示すSEM写真である。
【図3】 本発明の実施例2で得られたゼオライト成形体の破断面の微構造を示すSEM写真である。
【図4】 本発明の実施例3で得られたゼオライト成形体の破断面の微構造を示すSEM写真である。
【図5】 本発明の実施例4で得られたゼオライト成形体の破断面の微構造を示すSEM写真である。
【図6】 本発明の実施例5で得られたゼオライト成形体の破断面の微構造を示すSEM写真である。
【図7】 本発明の実施例1〜6で得られたゼオライト成形体におけるテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)のテトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)の全量に対する配合割合(TPABr/TPA)と曲げ強度との関係を示すグラフである。
【図8】 本発明の実施例1〜6及び比較例1で得られたゼオライト成形体における平均粒子径と四点曲げ強度との関係を示すグラフである。
【図9】 本発明の実施例1〜6、参考実施例7及び比較例1で得られたゼオライト成形体における平均粒子径と圧力損失との関係を示すグラフである。
【図10】 本発明の実施例6で得られたゼオライト成形体の破断面の微構造を示すSEM写真である。
【図11】 本発明の参考実施例7で得られたゼオライト成形体の破断面の微構造を示すSEM写真である。
【図12】 本発明の比較例1で得られたゼオライト成形体の破断面の微構造を示すSEM写真である。
【図13】 本発明の実施例8における浸透気化法によるクラック測定方法を示す説明図である。
【図14】 MFI型ゼオライトの熱膨張曲線を示すグラフである。
【図15】 MFI型ゼオライト(仮焼前及び仮焼後)及びアルミナの熱膨張曲線を示すグラフである。
【図16】 平均粒子径の測定方法を示すSEM写真である。
【図17】 平均粒子径の測定方法を示すSEM写真のレプリカ図である。
【図18】 平均粒子径の測定方法を示す説明図である。
【図19】 圧力損失の測定方法を示す説明図である。
【図20】 本発明の実施例8で得られたゼオライト積層中間体の破断面の微構造を示すSEM写真である。
【符号の説明】
11…ゼオライト成形体、12…石英ガラス管、13…ステンレス容器、14…供給ガス(ヘリウムガス)、15…透過ガス、16…圧力計、17…圧力計、18…流量計、19…O−リング、20…トリイソプロピルベンゼン(TIPB)溶液、21…ゼオライト膜、22…真空ポンプ、23…真空計。

Claims (3)

  1. シリカゾルに、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)溶液及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)を、これらのテトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)の全量に対するテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)のそれぞれの配合割合[TPAOH/(TPAOH+TPABr)、及びTPABr/(TPAOH+TPABr)]が、0〜99モル%及び100〜1モル%となるように調整し、テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)とシリカゾルとの配合割合(TPA/SiOモル比)が、0.015〜0.08の範囲となるように添加し、得られた調製液を混練して乾燥し、得られた乾燥ゲルを成形、結晶化処理することを特徴とするゼオライト成形体の製造方法。
  2. シリカゾルに、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)溶液及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)を、これらのテトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)の全量に対するテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)のそれぞれの配合割合[TPAOH/(TPAOH+TPABr)、及びTPABr/(TPAOH+TPABr)]が、0〜99モル%及び100〜1モル%となるように調整し、テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)とシリカゾルとの配合割合(TPA/SiO モル比)が、0.015〜0.08の範囲となるように添加し、得られた調製液を混練して乾燥し、得られた乾燥ゲルを成形、結晶化処理して、ゼオライト成形体を得、得られた前記ゼオライト成形体を前記調製液と同一又は類似の組成の溶液に浸漬して、水熱合成して、前記ゼオライト成形体上に鋳型剤を含有するゼオライト膜を形成して、前記ゼオライト成形体と前記鋳型剤を含有するゼオライト膜との積層体を形成することを特徴とするゼオライト積層中間体の製造方法
  3. シリカゾルに、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)溶液及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)を、これらのテトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)の全量に対するテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)のそれぞれの配合割合[TPAOH/(TPAOH+TPABr)、及びTPABr/(TPAOH+TPABr)]が、0〜99モル%及び100〜1モル%となるように調整し、テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)とシリカゾルとの配合割合(TPA/SiO モル比)が、0.015〜0.08の範囲となるように添加し、得られた調製液を混練して乾燥し、得られた乾燥ゲルを成形、結晶化処理して、ゼオライト成形体を得、得られた前記ゼオライト成形体を前記調製液と同一又は類似の組成の溶液に浸漬して、水熱合成して、前記ゼオライト成形体上に鋳型剤を含有するゼオライト膜を形成して、前記ゼオライト成形体と前記鋳型剤を含有するゼオライト膜との積層体を形成するとともに、この積層体を仮焼して鋳型剤を同時に除去することを特徴とするゼオライト積層複合体の製造方法
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