JP4459369B2 - 多孔質基体、ゼオライト複合膜及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多孔質基体、ゼオライト複合膜及びゼオライト複合膜の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、基体、基材表面にゼオライト膜を成膜してなるゼオライト複合膜が知られており、その製造方法についても、種々の方法が提案されている。
特開昭59−213615号公報においては、ゼオライト膜の基体として、ガラス、ムライト、及びコーディエライト系セラミックス、アルミナ、シリカ等並びに無機質を金属その他の基材に被覆したもの等を使用したことが記載されている。
【0003】
特開昭60−28826号公報には、かご型ゼオライトの薄膜を金属、無機物又は高分子物質の多孔質支持体の一表面に合体してなる複合膜が記載されている。そして、支持体としては、特にゲル物質と親和性の高いものを用いて良好な結果が得られており、例えばコーニンググラスワークス社製のNo.7930又は一般にバイコールガラスと称されるものが支持体として特に好ましいことが記載されている。
特開平1−148771号公報は、モノリシックセラミック支持体の表面にゼオライトを結晶化する方法に関するもので、45−4wt%シリカ、8−45wt%アルミナ、及び7−20wt%マグネシアからなる酸化物組成を有するモノリシック支持体が記載され、具体的には、きん青石、ガラス、またはガラスセラミックの焼結モノリシック支持体が記載されている。
【0004】
特開平6−32610号公報は、A型またはフォージャサイト型ゼオライト膜の製造方法に関するもので、酸化けい素を主成分とする物質からなる基板を開示している。この方法は、基板への密着性が悪い問題を改善することを目的とし、基板自体がゼオライト膜の原料であり、かつ基板表面がゼオライト膜化されるため、合成と添着を同時に進行させることができ、工程が簡潔化される。具体的にはほうけい酸ガラス、石英ガラス、シリカアルミナ、ムライト等からなる基板が挙げられている。
特開平9−173799号公報は、担持ゼオライト膜の生成方法及び得られた膜に関するもので、担体として、アルミナ、ジルコニアまたは酸化チタンをベースとするセラミック物質、金属、炭素、シリカ、ゼオライト、粘土及びポリマーからなる群から選ばれる無機、有機または混合物質からなるものを開示している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来から、基体表面にゼオライト膜を成膜してなるゼオライト複合膜が知られているが、これらの複合膜においては、次のような問題があることが判明した。
すなわち、図3に示すように、ゼオライトの熱膨張係数は200℃ぐらいまでは非常に小さい値であるが、その後高温になると負の係数を示す、非常に複雑な挙動をする。このため、ゼオライト膜を200℃を超える温度で使用する場合には、基体、例えばアルミナ質基体との熱膨張差が極端に大きくなり、ゼオライト膜に熱応力によりクラックを生ぜしめることになる。
【0006】
また、ゼオライト膜の種類によっては、合成時に鋳型剤あるいは結晶化促進剤を添加する必要があるものがある。鋳型剤入りのゼオライト膜は500℃程度で仮焼して鋳型剤を除去するが、図4のMFI型ゼオライトの熱膨張曲線に示すように、鋳型剤入りのゼオライト膜の熱膨張挙動は鋳型剤なしのゼオライト膜の熱膨張挙動(図3の熱膨張曲線及び図4の仮焼後の熱膨張曲線)とは非常に異なることから、例えばアルミナ質基体などの基体との熱膨張差が極端に大きくなり、仮焼時において熱応力によりゼオライト膜にクラックが生じることになる。
従って、本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基体表面にゼオライト膜を成膜するにあたり、ゼオライト膜と同一もしくは類似組成の機械的強度に優れた多孔質基体を用いて、両者の熱膨張挙動をほぼ同一とすることにより、ゼオライト膜のクラックを防止することができる多孔質基体、ゼオライト複合膜及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、TPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)である鋳型剤(以下、単に鋳型剤と記載する)を含有するゼオライト膜と、該ゼオライト膜と同一組成あるいは類似組成を有し、且つ該ゼオライト膜と同じ鋳型剤を含有するとともに、TPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)/SiO2のモル比が、0.015以上0.08以下であり、且つ完全に結晶化したゼオライトから構成される多孔質基体とからなり、該多孔質基体上に前記ゼオライト膜が成膜されてなることを特徴とするゼオライト複合膜中間体が提供される。
次に、本発明によれば、上記多孔質基体上に前記ゼオライト膜が成膜されてなるゼオライト複合膜中間体を仮焼し、鋳型剤を除去してなるゼオライト複合膜が提供される。
【0010】
更に、本発明によれば、成膜するゼオライト膜と同一組成あるいは類似組成のゼオライトで、かつ該ゼオライト膜と同じ鋳型剤を含有するとともに、TPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)/SiO2のモル比が、0.015以上0.08以下であり、且つ完全に結晶化したゼオライトから構成される多孔質基体を用い、該多孔質基体上に該ゼオライト膜を被覆した後仮焼して、該ゼオライト膜と該多孔質基体から同時に鋳型剤を除去することにより、該多孔質基体上に前記ゼオライト膜が成膜されたゼオライト複合膜を得ることを特徴とするゼオライト複合膜の製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、鋳型剤を含有するゼオライト膜と、該ゼオライト膜と同一組成あるいは類似組成を有し、且つ該ゼオライト膜と同じ鋳型剤を含有するとともに、TPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)/SiO2のモル比が、0.02以上0.12以下であり、且つ結晶化途上のゼオライトから構成される多孔質基体とからなり、該多孔質基体上に前記ゼオライト膜が成膜されてなることを特徴とするゼオライト複合膜中間体が提供される。
更に、本発明によれば、前記ゼオライト複合膜中間体を仮焼し、鋳型剤を除去してなるゼオライト複合膜が提供される。
【0013】
更に、本発明によれば、成膜するゼオライト膜と同一組成あるいは類似組成のゼオライトで、かつ該ゼオライト膜と同じ鋳型剤を含有するとともに、TPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)/SiO2のモル比が、0.02以上0.12以下であり、且つ結晶化途上のゼオライトから構成される多孔質基体を用い、該多孔質基体上に該ゼオライト膜を被覆した後仮焼して、該ゼオライト膜と該多孔質基体から同時に鋳型剤を除去することにより、該多孔質基体上に前記ゼオライト膜が成膜されたゼオライト複合膜を得ることを特徴とするゼオライト複合膜の製造方法が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、機械的強度に優れた多孔質基体と、上記多孔質基体上にゼオライト膜を成膜したゼオライト複合膜において、ゼオライトの熱膨張挙動、特に鋳型剤入りのゼオライト膜の熱膨張挙動が、図3〜4に示すように、鋳型剤なしのゼオライト膜に比して非常に異なることを見出したことを基礎として完成したものである。
すなわち、ゼオライト膜の熱膨張係数に近似する熱膨張係数を有する多孔質基体を用いてゼオライト複合膜を製造するだけでは、鋳型剤を除去するために500℃程度で仮焼する際の熱膨張差を解消することはできず、ゼオライト膜にクラックが生じるため、本発明においては、鋳型剤を含有するゼオライト膜と、このゼオライト膜と同一組成あるいは類似組成を有するゼオライトから構成され、かつこのゼオライト膜と同じ鋳型剤を含有する機械的強度に優れた多孔質基体とを用いたものである。
【0015】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の多孔質基体は、TPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)/SiO2のモル比が0.015以上0.08以下であり、且つ完全に結晶化したゼオライト、または、TPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)/SiO2のモル比が0.02以上0.12以下であり、且つ結晶化途上のゼオライトからなることが好ましい。
これにより、本発明の多孔質基体は、その強度を1.5MPa以上に向上させることができるため、水熱環境下でも破壊することなく膜を形成できるだけでなく、膜を形成したのちも膜を破壊することなく、膜の機能を保持することができる。
【0016】
ここで、ゼオライトの結晶相は、X線回折において、20〜30゜(CuKα)の領域にかけてブロードなハローのみで明確なピークを確認できない場合を非晶質とし、わずかでもゼオライトのピークが認められた場合を結晶化途上とし、ゼオライトを示すすべての鋭いピークが明瞭に認められ、ハローがない場合を完全結晶とした。
尚、結晶化途上のゼオライトの場合、X線的に、非晶質を示すハローと、ゼオライトを示す鋭いピークとが重なった複合波形となっている。
【0017】
また、本発明のゼオライト複合膜は、ゼオライト膜と、このゼオライト膜と同一組成あるいは類似組成を有するゼオライトから構成される上記多孔質基体とからなるものである。
ここで、ゼオライトとして、従来から、熱膨張が非直線的な異常な挙動を示すものとして、MFI、DOH、DDR、MTN、AFIなどが知られている(ParkS.H.etal.Stud.Surf.Sci.Catal.1997,105,1989-1994を参照)。
【0018】
また、鋳型剤を必要とするゼオライト膜にはMFI型へのTPA(テトラプロピルアンモニウム)の水酸化物や臭化物、BEA型へのTEA(テトラエチルアンモニウム)の水酸化物や臭化物などがあり、鋳型剤入りのゼオライト膜と鋳型剤なしのゼオライト膜とでは、その熱膨張挙動は、図3〜4のように大きな相違がある。
したがって、本発明のように、鋳型剤入りのゼオライト膜を被覆する場合には、用いる多孔質基体は同じ鋳型剤入りで、同一又は類似組成のゼオライトから構成されたものを使用し、一方、鋳型剤なしのゼオライト膜を被覆する場合には、用いる多孔質基体は同じく鋳型剤なしで、同一又は類似組成のゼオライトから構成されたものを使用する。
【0019】
多孔質基体に被覆するゼオライト膜の製造方法としては、従来公知の方法が採用でき、例えば、水熱合成法、気相輸送法などを用いることができる。
また、多孔質基体の製造方法としては、次の方法が知られており、いずれも用いることができる。すなわち、
(1)ゼオライト粉末をバインダで固める方法
(2)ゼオライト粉末をバインダで固めた後、化学処理でバインダをゼオライトに転化させる方法
(3)ゼオライト前駆体を成形し加熱処理でゼオライトに転化させる方法
である。
【0020】
上記(1)のバインダ添加法においては、ゼオライトにシリカゾルなどのゾルを添加する方法(特開平2−4445号公報参照)や、ゼオライトにアタパルジャイト系粘土及びカルボキシルメチルセルロースを添加する方法(特開平10−81511号公報参照)を挙げることができる。
上記(2)のバインダレス法においては、ゼオライトにカオリンを添加混合後、焼成し、次いでアルカリ水熱処理することにより、カオリンをゼオライトに転移させる方法(特開平10−101326号公報参照)や、ゼオライトとメタカオリンを混合し、アルカリ処理することにより、メタカオリンをゼオライトに転換させる方法(特開昭52−103391号公報参照)等がある。
【0021】
さらに、上記(3)のゼオライト固相合成法においては、カネマイトにテンプレート(鋳型剤)を混合して、無定形珪酸塩粉末を得、これを成形後加熱処理することにより、MFI等のゼオライトを得る方法(特許第2725720号公報参照)や、TEOSにテンプレートを混合したものを加水分解した後乾燥して無定形珪酸塩粉末を得、これを成形し加熱処理することにより、ゼオライトを得る方法(Shimizu,S.,Kiyozumi Y.& Mizukami F.Chem.Lett.,1996,403-404を参照)などを挙げることができる。
【0022】
なお、熱膨張差によりゼオライト膜において生じるクラックは、8〜50オングストローム程度の分子レベルのものであり、SEMでも検出することができない。そこで、本発明においては、上記クラックの測定方法として、下記の方法を用いた。
第一の方法(ローダミン試験)は、ゼオライト膜上にローダミンBを滴下してクラックを可視化し光学顕微鏡で観察する方法である。
第二の方法は浸透気化法で、図5に示すように、トリイソプロピルベンゼン(TIPB)分子10を真空ポンプ12により吸引し、ゼオライト膜11を通過させることにより、真空計13またはガスクロマトグラフでクラックの有無を確認する方法である。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0024】
(実施例1〜5、比較例1〜7:多孔質基体の製造方法1)
200mlテフロンビーカーに、約30wt%シリカゾル(スノーテックスS、日産化学(株)製)と10%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド溶液(和光純薬工業(株)製)を加え、TPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)/SiO2のモル比が表1に示すようにそれぞれ調整し、室温で30分間マグネティックスターラーで攪拌した後、さらに80℃に加熱しながら攪拌混練を継続し、水を蒸発させることにより、水分量が10wt%以下である無色の乾燥ゲルをそれぞれ得た。得られた乾燥ゲルをX線回折で結晶構造を調べたところ、非晶質であった。
得られた乾燥ゲルを、メノウ乳鉢にて粉砕し、目開き355μmメッシュを通過した粉末にした後、全圧1tonで金型一軸プレスを行うことにより、4mm×4mm×50mmの棒状の成形体をそれぞれ得た。
【0025】
得られた成形体を、成形体重量の半分量の蒸留水を入れたテフロン内筒付ステンレス製耐圧容器中に、水と接触しないようにテフロン板の上にセットし、180℃のオーブン中で18時間自生水蒸気圧下で反応させることにより、多孔質基体をそれぞれ得た。
【0026】
得られた多孔質基体(実施例1〜5、比較例1〜7)を、X線回折で結晶相を調べたところ、MFI型ゼオライトの多孔体であり、そのゼオライトがX線的に完全に結晶化していることが判明した。尚、比較例1は、ゼオライトでなかった。
次に、得られた多孔質基体(実施例1〜5、比較例1〜7)を、80℃で十分乾燥させた後、JIS R1601に従って4点曲げ強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
(考察:実施例1〜5、比較例1〜7)
表1の結果から、実施例1〜5のように、完全に結晶化したゼオライトからなる多孔質基体は、TPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)/SiO2のモル比を0.015以上0.08以下に調整することにより、3MPa以上の強度が発現することが判明した。
【0029】
(実施例6〜11、比較例8〜10:多孔質基体の製造方法2)
200mlテフロンビーカーに、約30wt%シリカゾル(スノーテックスS、日産化学(株)製)と10%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド溶液(和光純薬工業(株)製)を加え、TPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)/SiO2のモル比が表2に示すようにそれぞれ調整し、室温で30分間マグネティックスターラーで攪拌した後、さらに80℃に加熱しながら攪拌混練を継続し、水を蒸発させることにより、水分量が10wt%以下である無色の乾燥ゲルをそれぞれ得た。得られた乾燥ゲルをX線回折で結晶構造を調べたところ、非晶質であった。
得られた乾燥ゲルを、メノウ乳鉢にて粉砕し、目開き355μmメッシュを通過した粉末にした後、全圧1tonで金型一軸プレスを行うことにより、4mm×4mm×50mmの棒状の成形体をそれぞれ得た。
【0030】
得られた成形体を、成形体重量の半分量の蒸留水を入れたテフロン内筒付ステンレス製耐圧容器中に、水と接触しないようにテフロン板の上にセットし、130℃のオーブン中で10時間自生水蒸気圧下で反応させることにより、多孔質基体をそれぞれ得た。
【0031】
得られた多孔質基体(実施例6〜11、比較例8〜10)を、X線回折で結晶相を調べたところ、比較例9〜10は、MFI型ゼオライトの多孔体であり、実施例6〜11は、MFI型ゼオライトと非晶質からなる結晶化途上のゼオライト多孔体であった。尚、比較例8は、ゼオライトで無かった。
次に、得られた多孔質基体(実施例6〜11、比較例8〜10)を、80℃で十分乾燥させた後、JIS R1601に従って4点曲げ強度を測定した。その結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
(考察:実施例6〜11、比較例8〜10)
表2の結果から、実施例6〜11のように、結晶化途上のゼオライトからなる多孔質基体は、TPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)/SiO2のモル比を0.02以上0.12以下に調整することにより、1.5MPa以上の強度が発現することが判明した。
【0034】
(実施例12:ゼオライト複合膜の製造方法1)
10%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド溶液(和光純薬工業(株)製)15.26gに蒸留水を49.85g、約30wt%シリカゾル(スノーテックスS、日産化学(株)製)6.00gを加えて、室温で30分間マグネティックスターラーで攪拌した成膜用のゾルを調整した。
【0035】
このゾルを、テフロン内筒付ステンレス製100ml耐圧容器中に入れ、実施例3の多孔質基体に浸漬させ、180℃のオーブン中で18時間反応させた。反応後の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、図1の走査電子顕微鏡(SEM)写真に示すように、多孔質のゼオライト基体上に約17μmの緻密層が形成されており、図2に示す通り、X線回折からこの緻密膜がMFI型ゼオライトの膜であることが確認された。
以上のようにして得たゼオライト複合膜中間体を電気炉中500℃まで昇温し4時間保持してテトラプロピルアンモニウムを除去したところ、表3に示すように、ローダミン試験でクラックが認められず、またトリエチルベンゼンの浸透気化法でも分子の通過がなく、クラックのない緻密なゼオライト複合膜であることが確認できた。
【0036】
(実施例13:ゼオライト複合膜の製造方法2)
実施例7の多孔質基体を、実施例12と同様のゾルに浸漬し、テフロン内筒付ステンレス製100ml耐圧容器中に入れ、180℃のオーブン中で18時間反応させた。反応後の断面をSEMで観察したところ、多孔質基体上に実施例3と同様の緻密層が形成されており、X線回折からMFI型ゼオライトの膜であることが確認された。また、成膜前には非晶質であった基体部分も、成膜処理によりMFI型ゼオライトに転化しており、ゼオライト多孔質基体上にゼオライト膜が成膜されたゼオライト複合膜中間体を得た。
以上のようにして得たゼオライト複合膜中間体を電気炉中500℃まで昇温し4時間保持してテトラプロピルアンモニウムを除去したところ、表3のように、ローダミン試験でクラックが認められず、またトリイソプロピルベンゼン(TIPB)の浸透気化法でも分子の通過がなく、クラックのない緻密なゼオライト複合膜であることが確認された。
【0037】
(比較例11)
実施例12と同様に調整したゾルに多孔質アルミナを浸漬し、実施例12と同じ方法でゼオライト膜を形成した。
この膜を、電気炉中500℃まで昇温し4時間保持してテトラプロピルアンモニウムを除去したところ、表3のように、ローダミン試験でクラックが認められ、またトリイソプロピルベンゼンの浸透気化法でも分子が通過しており、気密膜ではなかった。
【0038】
(比較例12)
実施例12と同様に調整したゾルに多孔質窒化珪素を浸漬し、実施例12と同じ方法でゼオライト膜を形成した。
この膜を、電気炉中500℃まで昇温し4時間保持してテトラプロピルアンモニウムを除去したところ、表3のように、ローダミン試験でクラックが認められ、またトリイソプロピルベンゼンの浸透気化法でも分子が通過しており、気密膜ではなかった。
【0039】
(比較例13)
実施例12と同様に調整したゾルに多孔質ムライトを浸漬し、実施例12と同じ方法でゼオライト膜を形成した。
この膜を、電気炉中500℃まで昇温し4時間保持してテトラプロピルアンモニウムを除去したところ、表3のように、ローダミン試験でクラックが認められ、またトリイソプロピルベンゼンの浸透気化法でも分子が通過しており、気密膜ではなかった。
【0040】
(比較例14)
実施例12と同様に調整したゾルに多孔質シリカガラスを浸漬し、実施例12と同じ方法でゼオライト膜を形成した。
この膜を、電気炉中500℃まで昇温し4時間保持してテトラプロピルアンモニウムを除去したところ、表3のように、ローダミン試験でクラックが認められ、またトリイソプロピルベンゼンの浸透気化法でも分子が通過しており、気密膜ではなかった。
【0041】
(比較例15)
実施例12と同様に調整したゾルに多孔質コーディエライトを浸漬し、実施例12と同じ方法でゼオライト膜を形成した。
この膜を、電気炉中500℃まで昇温し4時間保持してテトラプロピルアンモニウムを除去したところ、表3のように、ローダミン試験でクラックが認められ、またトリイソプロピルベンゼンの浸透気化法でも分子が通過しており、気密膜ではなかった。
【0042】
【表3】
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、基体表面にゼオライト膜を成膜するにあたり、ゼオライト膜と同一もしくは類似組成の機械的強度に優れた多孔質基体を用いることにより、両者の熱膨張挙動をほぼ同一としたので、ゼオライト膜にクラックが生じないゼオライト複合膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例12で得られたゼオライト複合膜の断面における粒子構造を示すSEM写真である。
【図2】 MFI型ゼオライト膜であることを示すX線回折結果を示すグラフである。
【図3】 MFI型ゼオライトの熱膨張曲線を示すグラフである。
【図4】 MFI型ゼオライト及びアルミナの熱膨張曲線を示すグラフである。
【図5】 浸透気化法によるクラック測定方法を示す概要図である。
【符号の説明】
10…トリイソプロピルベンゼン(TIPB)溶液、11…ゼオライト膜、12…真空ポンプ、13…真空計。
Claims (6)
- TPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)である鋳型剤を含有するゼオライト膜と、該ゼオライト膜と同一組成あるいは類似組成を有し、且つ該ゼオライト膜と同じ鋳型剤を含有するとともに、TPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)/SiO2のモル比が、0.015以上0.08以下であり、且つ完全に結晶化したゼオライトから構成される多孔質基体とからなり、該多孔質基体上に前記ゼオライト膜が成膜されてなることを特徴とするゼオライト複合膜中間体。
- 請求項1に記載のゼオライト複合膜中間体を仮焼し、TPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)である鋳型剤を除去してなるゼオライト複合膜。
- 成膜するゼオライト膜と同一組成あるいは類似組成のゼオライトで、且つ該ゼオライト膜と同じTPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)である鋳型剤を含有するとともに、TPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)/SiO2のモル比が、0.015以上0.08以下であり、且つ完全に結晶化したゼオライトから構成される多孔質基体を用い、該多孔質基体上に該ゼオライト膜を被覆した後仮焼して、該ゼオライト膜と該多孔質基体から同時に鋳型剤を除去することにより、該多孔質基体上に前記ゼオライト膜が成膜されたゼオライト複合膜を得ることを特徴とするゼオライト複合膜の製造方法。
- TPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)である鋳型剤を含有するゼオライト膜と、該ゼオライト膜と同一組成あるいは類似組成を有し、且つ該ゼオライト膜と同じ鋳型剤を含有するとともに、TPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)/SiO2のモル比が、0.02以上0.12以下であり、且つ結晶化途上のゼオライトから構成される多孔質基体とからなり、該多孔質基体上に前記ゼオライト膜が成膜されてなることを特徴とするゼオライト複合膜中間体。
- 請求項4に記載のゼオライト複合膜中間体を仮焼し、TPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)である鋳型剤を除去してなるゼオライト複合膜。
- 成膜するゼオライト膜と同一組成あるいは類似組成のゼオライトで、且つ該ゼオライト膜と同じTPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)である鋳型剤を含有するとともに、TPA(テトラプロピルアンモニウムイオン)/SiO2のモル比が、0.02以上0.12以下であり、且つ結晶化途上のゼオライトから構成される多孔質基体を用い、該多孔質基体上に該ゼオライト膜を被覆した後仮焼して、該ゼオライト膜と該多孔質基体から同時に鋳型剤を除去することにより、該多孔質基体上に前記ゼオライト膜が成膜されたゼオライト複合膜を得ることを特徴とするゼオライト複合膜の製造方法。
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