JP4583007B2 - 新規g−タンパク質及びその利用 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体内のホルモン、オータコイド、神経伝達物質などの生理活性物質が結合することにより受容体が発するシグナルを増幅し、伝達する機能を有する新規G−タンパク質及びそれをコードするポリヌクレオチドに関する。また、本発明は、この新規G−タンパク質を介した細胞シグナル伝達を調節する物質のスクリーニング方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】
G-タンパク質は、シグナル伝達における重要な媒介物である。すなわちG-タンパク質は、7回膜貫通型受容体であるG-タンパク質共役型受容体(以下、「GPCR」という;G-protein coupled receptor)が受けた刺激のシグナルを細胞内に運ぶ伝達器としての役割を果たす。GPCRは広範な種類の組織で発現しており、このシグナル伝達系がホルモン受容、神経伝達、細胞の増殖・分化のような広範な細胞機能の発現に介在することが明らかになってきている(現代化学増刊34、61〜70、1997)。
【0003】
詳述すれば、G-タンパク質は、GTPと結合するαサブユニットおよび、βサブユニットとγサブユニットから構成されるヘテロ三量体である。膜表面にあるGPCRにホルモンや神経伝達物質などのリガンドが結合すると、GPCRが活性化され、そのシグナルがG−タンパク質に伝えられる。シグナルが伝えられたGタンパク質では、αサブユニットにGDPが結合した不活性型からGDPが放出され、これに代えてGTPが結合する活性化型に変換する。
【0004】
活性型G-タンパク質は、GPCRから離れるとともに、GTP結合型αサブユニットとβγサブユニットとに解離する。活性型G-タンパク質は、標的エフェクターであるアデニル酸シクラーゼ、Ca2+チャネル、K+チャネル、ホスホリパーゼCβ等を促進又は抑制することにより、多彩な細胞機能を調節する。哺乳動物のG−タンパク質αサブユニットには、例えばGi、Go、Gq、GsおよびGtなどが含まれる。また、典型的には、G−タンパク質αサブユニットは、アデニル酸シクラーゼの活性を促進するタイプ、アデニル酸シクラーゼの活性を抑制するタイプ、ホスホリパーゼの活性を促進するタイプおよび、Rhoにシグナルを伝達するタイプの4つに分類される。
【0005】
活性型G-タンパク質のαサブユニットに結合したGTPは、αサブユニットが有するGTPaseの作用によりGDPとなり、不活性型に戻る(「シグナル伝達」17〜30頁、2001年11月1日、共立出版社)。
【0006】
GPCR遺伝子及びその遺伝子産物、並びに、GPCRシグナル伝達経路に関する遺伝子及びその遺伝子産物は疾患の潜在的な原因因子である(Spiegelら、J.Clin.Invest.92:1119〜1125(1993);McKusickら、J.Med.Genet.30:1〜26(1993);Laniaら、European J. Endocrinology 145: 543~559 (2001))。例えば、GPCRであるV2バソプレシンレセプターの遺伝子における特定の欠陥は、様々な形態の腎性尿崩症(Holtzmanら、Hum.Mol.Genet.2:1201〜1204(1993))を引き起こすことが明らかにされている。またGαサブユニットにおける変異は、成長ホルモンを分泌する脳下垂体の成長ホルモン分泌細胞の腫瘍、機能亢進甲状腺腫、卵巣及び副腎の腫瘍で見られる(Meij, J.T.A.(1996) Mol. Cell. Biochem. 157:31-38; Aussel, C.他(1988) J. Immunol. 140:215-220)。そのためGPCRシグナルに関連する遺伝子産物は創薬ターゲットとして有用であり、現在上市されている薬の50%以上はGPCRをターゲットにしたものであることが報告されている。(Nature Review Drug Discovery, 1,7 (2002))。
【0007】
一般的に、GPCRに対するリガンド研究を行う上で、GPCRがどのG−タンパク質と共役するかが重要となってくる(Trends in Pharmacological Science, 22, 560~564 (2001))。従って、新規なG-タンパク質及びそれをコードする遺伝子を同定できれば、当該G-タンパク質が関与する細胞シグナル伝達の異常に起因する疾患の治療、診断に有用である。また、細胞シグナル伝達の異常に起因する疾患の改善剤、治療剤又は予防剤として有効な医薬のスクリーニングに用いることができる。または、細胞シグナル伝達を活性化および抑制することにより病状を改善又は予防することが可能な、改善剤、治療剤又は予防剤として有効な医薬のスクリーニングに用いることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、新規G-タンパク質αサブユニット及びそれをコードするポリヌクレオチド、G-タンパク質共役型受容体及びこのG-タンパク質αサブユニットを介した細胞シグナル伝達系を活性化又は抑制できる物質、このような物質のスクリーニング方法及びスクリーニングキット等を提供することを主目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明者は研究を重ね、G-タンパク質αサブユニット間で保存されているGTP結合部位及びGTPase活性化部位と高い相同性を有するアミノ酸配列部分、及び、G-タンパク質αサブユニット間で保存されている3量体形成ドメインと高い相同性を有するアミノ酸配列部分を有するヒトの新規タンパク質を見出し、Gm1タンパク質と命名した。また、本発明者は、アミノ酸配列に関し同様の特徴を有するマウス由来のGm1タンパク質及びラット由来のGm1タンパク質も見出した。
【0010】
また、Gm1発現ベクターを保持する細胞ではG-タンパク質のエフェクター活性が高くなること等を見出した。
【0011】
さらに、Gm1タンパク質が、ヒトの脳、胸腺、精巣、脾臓、小腸、子宮及び心臓において高く発現していることを見出した。
【0012】
これらのことから本発明者は、本タンパク質(Gm1タンパク質)が、ヒトの脳、胸腺、精巣、脾臓、小腸、子宮及び心臓において機能する、GPCR刺激による細胞内シグナル伝達に関与する分子、新規G-タンパク質αサブユニットであるとの確信を得て、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は以下の各項のタンパク質及びポリヌクレオチド等を提供する。
【0014】
項1. 以下の(1)又は(2)のタンパク質。
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1に記載のアミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、G−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質。
【0015】
項2. 配列番号25に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
【0016】
項3. 配列番号26に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
【0017】
項4. 以下の(3)又は(4)のタンパク質。
(3) 配列番号1に記載のアミノ酸番号96〜126のアミノ酸配列を有し、かつ、G−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質
(4) 配列番号1に記載のアミノ酸番号96〜126のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、G−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質
項5. 以下の(5)又は(6)のタンパク質。
(5) 配列番号1に記載のアミノ酸番号1〜126のアミノ酸配列をN末端側に有し、かつ、G−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質
(6) 配列番号1に記載のアミノ酸番号1〜126のアミノ酸配列と65%以上の相同性を有するアミノ酸配列をN末端側に有し、かつ、G−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質
項6. 項1から5のいずれかに記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0018】
項7. 以下の(7)又は(8)の塩基配列を有するポリヌクレオチド。
(7) 配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(8) 配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと85%以上の相同性を有する塩基配列からなり、かつ、G−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
項8. 配列番号27に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【0019】
項9. 配列番号28に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【0020】
項10. 以下の(9)又は(10)のポリヌクレオチド
(9) 配列番号2に記載の塩基番号289〜378の塩基配列を有し、かつ、G−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(10) 配列番号2に記載の塩基番号289〜378の塩基配列からなるポリヌクレオチドと90%以上の相同性を有する塩基配列を有し、かつ、G−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
項11. 以下の(11)又は(12)のポリヌクレオチド
(11) 配列番号2に記載の塩基番号1〜378の塩基配列を5'末端側に有し、かつ、G−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(12) 配列番号2に記載の塩基番号1〜378の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70%以上の相同性を有する塩基配列を5'末端側に有し、かつ、G−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
項12. 項6から11のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む組み換えベクター。
【0021】
項13. 項12に記載の組み換えベクターを保持する形質転換体。
【0022】
項14. 項13に記載の形質転換体を培養し、培養された形質転換体から項1から5のいずれかに記載のタンパク質を回収する項1から5のいずれかに記載のタンパク質の製造方法。
【0023】
項15. 以下の(13)又は(14)のポリヌクレオチドからなるアンチセンスポリヌクレオチド。
(13) 配列番号2に記載の塩基配列の連続する少なくとも15塩基に相補的な塩基配列からなり、かつ、項1から5のいずれかに記載のタンパク質の発現を阻害するポリヌクレオチド
(14) 配列番号2に記載の塩基配列の連続する少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドと細胞内条件下でハイブリダイズし、かつ、項1から5のいずれかに記載のタンパク質の発現を阻害するポリヌクレオチド
項16. 以下の(15)又は(16)のリボザイム。
(15) 配列番号2に記載の塩基配列のうちの二つの領域であって各が連続する少なくとも9塩基からなる二つの領域にそれぞれ相補的な二つのポリヌクレオチド領域を有し、かつ、項6から11のいずれかに記載のポリヌクレオチドを分解する活性を有するリボザイム
(16) 配列番号2に記載の塩基配列のうちの二つの領域であって各が連続する少なくとも9塩基からなる二つの領域にそれぞれ細胞内条件下でハイブリダイズする二つのポリヌクレオチド領域を有し、かつ、項6から11のいずれかに記載のポリヌクレオチドを分解する活性を有するリボザイム
項17. 項1から5のいずれかに記載のタンパク質を特異的に認識する抗体。
【0024】
項18. 項1から5のいずれかに記載のタンパク質を有効成分とする、G-タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達調節剤。
【0025】
項19. 項1から5のいずれかに記載のタンパク質を有効成分とする、G-タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達異常に起因する疾患の治療又は予防剤。
【0026】
項20. 項6から11のいずれかに記載のポリヌクレオチドを有効成分とする、G-タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達調節剤。
【0027】
項21. 項6から11のいずれかに記載のポリヌクレオチドを有効成分とする、G-タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達異常に起因する疾患の治療又は予防剤。
【0028】
項22. 項15に記載のアンチセンスポリヌクレオチドを有効成分とする、G-タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達調節剤。
【0029】
項23. 項15に記載のアンチセンスポリヌクレオチドを有効成分とする、G-タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達異常に起因する疾患の治療又は予防剤。
【0030】
項24. 項16に記載のリボザイムを有効成分とする、G-タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達調節剤。
【0031】
項25. 項16に記載のリボザイムを有効成分とする、G-タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達異常に起因する疾患の治療又は予防剤。
【0032】
項26. 項17に記載の抗体を有効成分とする、G-タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達調節剤。
【0033】
項27. 項17に記載の抗体を有効成分とする、G-タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達異常に起因する疾患の治療又は予防剤。
【0034】
項28. 以下の(17)又は(18)のオリゴヌクレオチド
(17) 配列番号2に記載の塩基配列において連続する少なくとも17塩基からなり、かつ、配列番号2に記載のポリヌクレオチドを特異的に認識できるオリゴヌクレオチド
(18) 配列番号2に記載の塩基配列において連続する少なくとも17塩基と80%以上の相同性を有し、かつ、配列番号2に記載のポリヌクレオチドを特異的に認識できるオリゴヌクレオチド
項29. プローブ又はプライマーとして用いられる項28に記載のオリゴヌクレオチド。
【0035】
項30. (a) 被験物質と、項12に記載の組み換えベクター及びG−タンパク質共役型受容体タンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する試験細胞とを接触させる工程と、
(b) 試験細胞におけるG-タンパク質のエフェクターの活性又はそれと相関する指標値を測定する工程と、
(c) このエフェクター活性又はそれと相関する指標値を、被験物質を接触させていない試験細胞の当該エフェクター活性又はそれと相関する指標値と比較して、試験細胞におけるエフェクター活性又はそれと相関する指標値を変動させる被験物質を選択する工程と
を含むG-タンパク質共役型受容体及び項1から5のいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
【0036】
項31. (a) 被験物質と、項12に記載の組み換えベクター及びG−タンパク質共役型受容体タンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する試験細胞とを接触させる工程と、
(b) 試験細胞のG-タンパク質のエフェクターの活性又はそれと相関する指標値を測定する工程と、
(c) このエフェクター活性を、項12に記載の組み換えベクターを保持せずG−タンパク質共役型受容体タンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する対照細胞に当該被験物質を接触させた場合の当該エフェクター活性又はそれと相関する指標値と比較して、試験細胞と対照細胞との間でエフェクター活性又はそれと相関する指標値に差が生じる被験物質を選択する工程と
を含むG-タンパク質共役型受容体及び項1から5のいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
【0037】
項32. (a) 被験物質と、項12に記載の組み換えベクター及びG−タンパク質共役型受容体タンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する試験細胞とを接触させる工程と、
(b) 試験細胞のG-タンパク質のエフェクターの活性又はそれと相関する指標値を測定する工程と、
(c) このエフェクター活性又はそれと相関する指標値を、G−タンパク質共役型受容体タンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターを保持せず項12に記載の組み換えベクターを保持する対照細胞に当該被験物質を接触させた場合の当該エフェクター活性又はそれと相関する指標値と比較して、試験細胞と対照細胞との間でエフェクター活性又はそれと相関する指標値に差が生じる被験物質を選択する工程と
を含むG-タンパク質共役型受容体及び項1から5のいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
【0038】
項33. (a) 被験物質及びG−タンパク質共役型受容体のリガンドと、項12に記載の組み換えベクター及びG−タンパク質共役型受容体タンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する試験細胞とを接触させる工程と、
(b) 試験細胞におけるG-タンパク質のエフェクター活性又はそれと相関する指標値を測定する工程と、
(c) このエフェクター活性又はそれと相関する指標値を、被験物質を接触させず前記リガンドを接触させた試験細胞の当該エフェクター活性又はそれと相関する指標値と比較して、試験細胞におけるエフェクター活性又はそれと相関する指標値を変動させる被験物質を選択する工程と
を含むG-タンパク質共役型受容体及び項1から5のいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
【0039】
項34. (a) 被験物質及びG−タンパク質共役型受容体のリガンドと、請求項12に記載の組み換えベクター及びG−タンパク質共役型受容体タンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する試験細胞とを接触させる工程と、
(b) 試験細胞におけるG-タンパク質のエフェクター活性又はそれと相関する指標値を測定する工程と、
(c) このエフェクター活性を、被験物質を接触させずに前記リガンドを接触させた試験細胞の当該エフェクター活性と比較して、試験細胞におけるエフェクター活性の変動を見る工程と、
(d) このエフェクター活性又はそれと相関する指標値の変動率を、G−タンパク質共役型受容体タンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターを保持せず請求項12に記載の組み換えベクターを保持する対照細胞に当該被験物質及び当該リガンドを接触させた場合の当該エフェクター活性又はそれと相関する指標値の変動率と比較して、試験細胞と対照細胞との間でエフェクター活性又はそれと相関する指標値の変動率に差が生じる被験物質を選択する工程と
を含むG-タンパク質共役型受容体及び請求項1から5のいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
【0040】
項35. (a) 被験物質と、項12に記載の組み換えベクターを保持する細胞の細胞膜画分及びGPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する細胞の細胞膜画分、又は、項12に記載の組み換えベクター及びGPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する細胞の細胞膜画分とを接触させる工程と、
(b) この細胞膜画分へのGTPの結合量を評価する工程と、
(c) このGTP結合の評価量を、被験物質を接触させていない前記細胞膜画分へのGTP結合の評価量と比較して、細胞膜画分へのGTP結合の評価量を変動させる被験物質を選択する工程と
を含むG-タンパク質共役型受容体及び項1から5のいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
【0041】
項36. (a) 被験物質及びG−タンパク質共役型受容体のリガンドと、項12に記載の組み換えベクターを保持する細胞の細胞膜画分及びGPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する細胞の細胞膜画分、又は、項12に記載の組み換えベクター及びGPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する細胞の細胞膜画分とを接触させる工程と、
(b) この細胞膜画分へのGTP結合量を評価する工程と、
(c) このGTP結合の評価量を、被験物質を接触させず前記リガンドを接触させた前記細胞膜画分におけるGTP結合の評価量と比較して、細胞膜画分へのGTP結合の評価量を変動させる被験物質を選択する工程と
を含むG-タンパク質共役型受容体及び項1から5のいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
【0042】
項37. (a) 被験物質と、項1から5のいずれかに記載のタンパク質を発現可能な試験細胞とを接触させる工程と、
(d) 試験細胞における項1から5のいずれかに記載のタンパク質の発現量を測定する工程と、
(e) この発現量を、被験物質を接触させない試験細胞の当該タンパク質の発現量と比較して、試験細胞における当該タンパク質の発現量を変動させる被験物質を選択する工程と
を含むG−タンパク質共役型受容体及び項1から5のいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
【0043】
項38. 項30から37のいずれかに記載のスクリーニング方法により得られるG-タンパク質共役型受容体及び項1から5のいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達の調節物質。
【0044】
項39. 項38に記載の物質を有効成分とする、G-タンパク質共役型受容体及び項1から5のいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達の調節剤。
【0045】
項40. 項38に記載の物質を有効成分とする、G-タンパク質共役型受容体及び項1から5のいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達異常に起因する疾患の治療又は予防剤。
【0046】
項41. 項12に記載の組み換えベクターを保持する試験細胞と;G-タンパク質のエフェクターの活性又はそれと相関する指標値の測定用試薬とを含む、G-タンパク質共役型受容体及び項1から5のいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニングキット。
【0047】
項42. 試験細胞が、さらにG-タンパク質共役型受容体をコードするDNAを有する組換えベクターを保持するものである項41に記載のスクリーニングキット。
【0048】
項43. さらに、G-タンパク質共役型受容体のリガンドを含む項41又は42に記載のスクリーニングキット。
【0049】
項44. さらに、G-タンパク質共役型受容体をコードするDNAを有する組み換えベクターを保持する対照細胞を含む項41、42又は43に記載のスクリーニングキット。
【0050】
項45. さらに、項12に記載の組み換えベクターを保持する対照細胞を含む項41、42又は43に記載のスクリーニングキット。
【0051】
項46. 項12に記載の組み換えベクターを保持する細胞と;項1から5のいずれかに記載のタンパク質に結合できるがGTPaseにより分解されないGTPアナログとを含む、G-タンパク質共役型受容体及び項1から5のいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニングキット。
【0052】
項47. 細胞が、さらにG-タンパク質共役型受容体をコードするDNAを有する組み換えベクターを保持するものである項46に記載のスクリーニングキット。
【0053】
項48. 項12に記載の組み換えベクターを保持する細胞と;及びG-タンパク質共役型受容体をコードするDNAを有する組み換えベクターを保持する細胞と;項1から5のいずれかに記載のタンパク質に結合できるがGTPaseにより分解されないGTPアナログとを含む、G-タンパク質共役型受容体及び項1から5のいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニングキット。
【0054】
項49. さらに、G-タンパク質共役型受容体のリガンドを含む項46、47又は48に記載のスクリーニングキット。
【0055】
項50. 項1から5のいずれかに記載のタンパク質を発現可能な細胞と;項28若しくは29に記載のオリゴヌクレオチド又は項17に記載の抗体とを含む、G-タンパク質共役型受容体及び項1から5のいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニングキット。
【0056】
【発明の実施の形態】
本発明のタンパク質
<第1のタンパク質>
本発明の第1のタンパク質は、以下の(1)又は(2)のタンパク質である。
(1) 配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1に記載のアミノ酸配列と85%以上の相同性を示すアミノ酸配列からなり、かつ、GPCR刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質。
【0057】
配列番号1に示すアミノ酸配列は、G-タンパク質αサブユニット間で保存されているGTP結合部位及びGTPase活性化部位のアミノ酸配列と相同性が高いアミノ酸配列部分を有する。これらの部分は、配列番号1のアミノ酸配列におけるアミノ酸番号126〜133、287〜292、353〜359、428〜435の各領域である。これらのアミノ酸は、既にG-タンパク質αサブユニットとして同定されているGs及びGolfのGTP結合部位及びGTPase活性化部位のアミノ酸配列(NATURE,117-127,1991,vol349)と一致している。
【0058】
また、配列番号1に示すアミノ酸配列は、G-タンパク質αサブユニット間で特にGsファミリーに属するGs及びGolfで高く保存されている特徴的配列と同じ配列(配列番号1のアミノ酸番号119〜126)を有し、しかもG-タンパク質αサブユニット間で保存されているαヘリックス構造をとり得る。
【0059】
これらのことから、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質はG-タンパク質αサブユニットであると考えられる。
【0060】
本発明において、タンパク質には、当該タンパク質の他に生物学的機能を損なわない範囲で、その塩又は誘導体が含まれる。誘導体としては、それには限定されないが、C末端又はその他のカルボキシル基がアミド、エステル等に変換されたもの、N末端又はその他のアミノ基がホルミル基、アシル基等で保護されているもの等が挙げられる。また、塩としては酸付加塩が好ましい。酸付加塩としては、塩酸、リン酸、硫酸等の無機酸との塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸との塩が挙げられる。
【0061】
(2)の改変されたタンパク質において、GPCR刺激による細胞内シグナル伝達に関与する分子として機能することは、後述する本発明のスクリーニング方法により確認できる。
【0062】
(2)の改変されたタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1に示すアミノ酸配列と90%以上、特に95%以上の相同性を有することが好ましい。
【0063】
(2)のタンパク質において、生物学的機能を喪失することなくどのアミノ酸残基を何個置換、欠失又は付加できるかの指標は、後述するGTP結合量の評価などにより見出すことができる。生物学的機能を喪失しない改変は、例えば、既に同定されている各種のG-タンパク質αサブユニットのアミノ酸配列との相同性が低い部分について行うことができる。
【0064】
例えばアミノ酸の置換の場合には、タンパク質の構造保持の観点から、極性、電荷、可溶性、親水性/疎水性、極性等の点で、置換前のアミノ酸と類似した性質を有するアミノ酸に置換することができる。例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリンは非極性アミノ酸に分類され;セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミンは極性アミノ酸に分類され;フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンは芳香族側鎖を有するアミノ酸に分類され;リジン、アルギニン、ヒスチジンは塩基性アミノ酸に分類され;アスパラギン酸、グルタミン酸は酸性アミノ酸に分類される。従って、同じ群のアミノ酸から選択して置換することができる。
【0065】
また、(2)のタンパク質には、例えばヒトのタンパク質に対応する他の生物種のタンパク質が含まれる。このような他生物種の対応タンパク質は、本発明のポリヌクレオチドの全長又は一部を用いた他生物種の遺伝子ライブラリーのスクリーニングや5'−RACE等により同定された塩基配列から演繹的に同定できる。また、後述するNCBIのBlastサーチにより選抜された他の生物種の対応遺伝子から演繹的に同定することもできる。
【0066】
(2)のタンパク質としては、例えば配列番号25に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、及び、配列番号26に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。
<第2のタンパク質>
本発明の第2のタンパク質は以下の(3)又は(4)のタンパク質である。
【0067】
(3) 配列番号1に記載のアミノ酸番号96〜126のアミノ酸配列を有し、かつ、G−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質
(4) 配列番号1に記載のアミノ酸番号96〜126のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、G−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質
(4)の改変されたタンパク質としては、(3)のタンパク質の配列番号1に記載のアミノ酸番号96〜126のアミノ酸配列と96%以上、特に97%以上の相同性を有することが好ましい。
【0068】
(3)及び(4)のタンパク質は、GPCR刺激による細胞内シグナル伝達に関与する分子、例えばG-タンパク質αサブユニットとして機能するために、通常、配列番号1のアミノ酸配列におけるアミノ酸番号75〜133、287〜292、353〜359、428〜435に示すアミノ酸配列を有するか、又は、これらの領域に対して通常80%以上、特に90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有することが好ましい。また、総アミノ酸数は、通常320〜480程度、特に350〜460程度であることが好ましい。
【0069】
(3)のタンパク質の機能を損なうことなく(4)のタンパク質を特定する方法は前述した通りである。
<第3のタンパク質>
本発明の第3のタンパク質は、以下の(5)又は(6)のタンパク質である。
(5) 配列番号1に記載のアミノ酸番号1〜126のアミノ酸配列をN末端側に有し、かつ、GPCR刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質
(6) 配列番号1に記載のアミノ酸番号1〜126のアミノ酸配列と65%以上の相同性を有するアミノ酸配列をN末端側に有し、かつ、GPCR刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質
(6)の改変されたタンパク質としては、(5)のタンパク質のN末端の126個のアミノ酸配列(以下、「特異的N末端アミノ酸配列」という)に対応するアミノ酸配列部分が、(5)の特異的N末端アミノ酸配列と70%以上、特に75%以上の相同性を有することが好ましい。
【0070】
(5)及び(6)のタンパク質は、GPCR刺激による細胞内シグナル伝達に関与する分子、例えばG-タンパク質αサブユニットとして機能するために、通常、配列番号1のアミノ酸配列におけるアミノ酸番号75〜133、287〜292、353〜359、428〜435に示すアミノ酸配列を有するか、又は、これらの領域に対して通常80%以上、特に90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有することが好ましい。また、総アミノ酸数は、通常320〜480程度、特に350〜460程度であることが好ましい。
【0071】
(5)のタンパク質の生物学的機能を損なうことなく(6)のタンパク質を特定する方法は、前述した通りである。
【0072】
従来公知のG-タンパク質αサブユニットには、配列番号1のアミノ酸番号1〜126のアミノ酸配列又はこれに類似した配列を有するものは見出されていない。
<本発明のタンパク質の製造方法>
本発明の(1)〜(6)のタンパク質は、i)ヒト又は他の生物種の細胞ないしは組織から当該タンパク質を含む膜画分を分離した後、公知のタンパク質精製方法により精製する方法、ii)後述する本発明の形質転換体を用いる方法、又はiii)公知のタンパク質の化学合成法等により製造することができる。
【0073】
i)の方法においては、ヒトを含む哺乳動物の細胞ないしは組織を制限なく使用できる。特にヒトの細胞ないしは組織を使用することが好ましく、ヒトの脳、子宮又は心臓由来の細胞又は組織を使用することがより好ましい。
【0074】
本発明のタンパク質を含む膜画分は、細胞ないしは組織を例えばHE/PIバッファー(20mM Hepes, 2mM EDTA,1×Protenase阻害剤カクテル(ナカライテスク社))に懸濁し、超音波処理、ホモジナイザー、26ゲージ程度の針を通過させること等により破砕又は融解し、得られた破砕液又は融解液を100〜150×g程度で5〜10分間程度の遠心分離を行い、得られた上清を18,000〜20,000g程度で20〜30分間程度遠心分離し沈殿を回収することにより得られる。
【0075】
このようにして得られる細胞膜画分に本発明のタンパク質が含まれることは、例えば後述する本発明の抗体を用いたウェスタンブロッティングなどにより確認できる。
【0076】
公知のタンパク質精製方法としては、例えばイオン交換、ゲル濾過、アフィニティ等の各種クロマトグラフィーが挙げられる。
【0077】
iii)の方法としては、例えば「The Peptide」Academic Press, New York(1966)に記載の方法や市販のタンパク質合成用樹脂を用いる方法が挙げられる。
【0078】
また、(2)のタンパク質は、(1)のタンパク質をコードするDNAに対して、Molecular Cloning: A Laboratory Manual第2版第1〜3巻、Cold Spring Harber Laboratory Press(1989)、Methods in Enzymology p448(1989)、PCR A Practical Approach IRL Press p200(1991)等に記載の種々の方法、例えば部位特異的突然変異導入、変異プライマーを用いたPCR等の公知の方法により変異を施し、得られた変異DNAを保持する形質転換体から得ることもできる。(3)のタンパク質を(4)のタンパク質から得る方法及び(6)のタンパク質を(5)のタンパク質から得る方法も同様である。
<本発明のタンパク質の用途>
本発明のタンパク質は、GPCR刺激による細胞内シグナル伝達の調節剤として好適に使用できる。さらにいえば、この細胞内シグナル伝達の異常に起因する疾患の治療又は予防に好適に使用できる。特に、本発明のタンパク質の欠損、発現量低下又は機能低下による細胞内シグナル伝達に起因する疾患の治療又は予防に好適に使用できる。
本発明のポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドは、前述した本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドである。このようなポリヌクレオチドとしては、以下の第1及び第2のポリヌクレオチドが挙げられる。
<第1のポリヌクレオチド>
(7) 配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(8) 配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと85%以上の相同性を有する塩基配列からなり、かつ、G−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
本発明において、ポリヌクレオチド(オリゴヌクレオチドを含む)には、当該塩基配列を有するポリヌクレオチド及びそれに相補的なポリヌクレオチドが含まれる。また、ポリヌクレオチドには、特に言及しない限り、DNA及びRNAの双方が含まれる。また、DNAには、その塩基配列を有する1本鎖DNAの他に、それに相補的な1本鎖DNA、及び2本鎖DNAが含まれる。DNAには、特に言及しない限り、cDNA、ゲノムDNA及び合成DNAが含まれる。RNAには、特に言及しない限り、totalRNA、mRNA、rRNA及び合成RNAが含まれる。
【0079】
(8)のポリヌクレオチドは、(7)のポリヌクレオチドと87%以上、特に90%以上の相同性を有することが好ましい。
【0080】
(8)のポリヌクレオチドは、配列番号2に記載の塩基配列からなる(7)のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするものであることが好ましい。本発明において、ストリンジェントな条件としては、例えば2×SSC、1×デンハルト溶液中で60℃程度の条件が挙げられる。
【0081】
また、生物学的機能を喪失しない改変は、例えば、既に同定されている各種のG-タンパク質αサブユニットのポリヌクレオチド配列と相同性が低い部分について行うことができる。
【0082】
(7)のポリヌクレオチドにおいて、それがコードするタンパク質の生物学的機能を損なうことなく、どの塩基を何個置換、欠失又は付加できるかの指標は、後述するcAMPアッセイ又はGTP結合量の評価などにより見出すことができる。
【0083】
また、第1のタンパク質について前述したように、翻訳後に得られるアミノ酸が置換前のアミノ酸と、極性、電荷、可溶性、親水性/疎水性、極性などの点で、置換前のアミノ酸と類似した性質を有するような塩基の置換も行うことができる。
【0084】
また、一つのアミノ酸が数個の翻訳コドンを有する場合、この翻訳コドン内での塩基の置換も勿論可能である。例えば、アラニンは、GCA、GCC、GCG、GCTの4つの翻訳コドンを有するところ、当該コドンの3番目の塩基はATGC間で相互に置換可能である。
【0085】
(8)のポリヌクレオチドには、例えばヒトのポリヌクレオチドに対応する他の生物種のポリヌクレオチドが含まれる。このようなポリヌクレオチドは、例えばNCBIのblastサーチ(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)により選抜することができる。具体的には、例えば配列番号2における塩基番号289〜378を含むような塩基配列をNCBIのblastサーチにかけて、他の生物種の塩基配列データベース及びESTデータベースより相同性の高い配列を検索する。検索により選択された配列の塩基番号289〜378に相当する領域の相同性が例えば90%以上の塩基配列を選抜することにより、対応する他の生物種の対応遺伝子を選抜することができる。
【0086】
(8)のポリヌクレオチドは、(7)のポリヌクレオチドの配列番号2における塩基番号1〜222、400〜858、877〜1056、1078〜1281、1306〜1377に対応する塩基配列が、(5)のポリヌクレオチドの当該塩基配列との間で通常75%以上、特に80%以上の相同性を有するものであることが好ましい。
【0087】
(8)のポリヌクレオチドとしては、例えば配列番号27に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、及び、配列番号28に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
<第2のポリヌクレオチド>
(9) 配列番号2に記載の塩基番号289〜378の塩基配列を有し、かつ、G−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(10) 配列番号2に記載の塩基番号289〜378の塩基配列からなるポリヌクレオチドと90%以上の相同性を有する塩基配列を有し、かつ、G−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(10)の改変されたポリヌクレオチドは、(9)のポリヌクレオチドの配列番号2に記載の塩基番号289〜378の塩基配列に対応する塩基配列が、(9)の当該配列と93%以上、特に95%以上の相同性を有することが好ましい。
【0088】
(10)のポリヌクレオチドは、配列番号2に記載の塩基番号289〜378の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドの配列を有することが好ましい。
【0089】
(9)及び(10)のポリヌクレオチドは、それがコードするタンパク質がGPCR刺激による細胞内シグナル伝達に関与する分子、例えばG-タンパク質αサブユニットとして機能するために、通常、配列番号2の塩基配列における塩基番号223〜399、859〜876、1057〜1077、1282〜1305に示すアミノ酸配列を有するか、又は、これらの領域に対して通常85%以上、特に90%以上の相同性を有する塩基配列を有することが好ましい。また、総塩基数は、通常963〜1443程度、特に1053〜1383程度であることが好ましい。
【0090】
(9)のポリヌクレオチドがコードするタンパク質の生物学的機能を損なうことなく(10)のポリヌクレオチドを特定する方法は、前述した通りである。
<第3のポリヌクレオチド>
(11) 配列番号2に記載の塩基番号1〜378の塩基配列を5'末端側に有し、かつ、G−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(12) 配列番号2に記載の塩基番号1〜378の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70%以上の相同性を有する塩基配列を5'末端側に有し、かつ、G−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(12)の改変されたタンパク質は、(11)のタンパク質の5'末端の378個の塩基配列(以下、「特異的5'末端塩基配列」という)に対応する塩基配列部分が、(11)の特異的5'末端アミノ酸配列と75%以上、特に80%以上の相同性を有することが好ましい。
【0091】
(12)のポリヌクレオチドは、配列番号2に記載の塩基番号1〜378の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドの配列を5'末端側に有することが好ましい。
【0092】
(11)及び(12)のポリヌクレオチドは、それがコードするタンパク質がGPCR刺激による細胞内シグナル伝達に関与する分子、例えばG-タンパク質αサブユニットとして機能するために、通常、配列番号2の塩基配列における塩基番号223〜399、859〜876、1057〜1077、1282〜1305に示すアミノ酸配列を有するか、又は、これらの領域に対して通常85%以上、特に90%以上の相同性を有する塩基配列を有することが好ましい。また、総塩基数は、通常963〜1443程度、特に1053〜1383程度であることが好ましい。
【0093】
(11)のポリヌクレオチドがコードするタンパク質の生物学的機能を損なうことなく(12)のポリヌクレオチドを特定する方法は、前述した通りである。
【0094】
従来公知のG-タンパク質αサブユニットタンパク質をコードするポリヌクレオチドには、配列番号2の塩基番号1〜378の塩基配列又はこれに類似した配列を有するものは見出されていない。
<本発明のポリヌクレオチドの製造方法>
(7)〜(12)のポリヌクレオチドは、例えば、配列番号2に示す塩基配列に基づき合成したオリゴヌクレオチド(例えば後述する本発明のオリゴヌクレオチド)をプローブとして用いてヒトcDNAライブラリーをハイブリダイゼーションによりスクリーニングする方法により得ることができる。また例えば、ヒトcDNAライブラリーをPCRの鋳型として用いて、例えば配列番号2の塩基配列を基に適当なプライマー(例えば後述する本発明のオリゴヌクレオチド)を作製し、常法に従いPCRを行うことによっても得ることができる。また、化学合成によっても得ることができる。
【0095】
cDNAライブラリーとしては、脳、胸腺、精巣、脾臓、小腸、子宮又は心臓由来のものを用いることが好ましい。
【0096】
(9)のポリヌクレオチドの変異により(10)のポリヌクレオチドを得る方法及び(11)のポリヌクレオチドの変異により(12)のポリヌクレオチドを得る方法は前述した通りである。
<本発明のポリヌクレオチドの用途>
本発明のポリヌクレオチドは、GPCR刺激による細胞内シグナル伝達の調節剤として好適に使用できる。さらにいえば、この細胞内シグナル伝達の異常に起因する疾患の治療又は予防に好適に使用できる。特に、本発明のタンパク質の欠損、発現量低下又は機能低下による細胞内シグナル伝達に起因する疾患の治療又は予防に好適に使用できる。
【0097】
また、本発明のポリヌクレオチドは、GPCR及び本発明のタンパク質を介した細胞シグナル伝達の調節物質のスクリーニングに好適に使用できる。
本発明の組み換えベクター・形質転換体
本発明の組み換えベクターは、本発明のポリヌクレオチド(ここでは、DNA)を含むベクターである。換言すれば本発明のタンパク質を発現可能なベクターである。
【0098】
発現ベクターは、公知のベクターを宿主に応じて広い範囲から選択することができる。例えば大腸菌を宿主とする場合にはpBR322、pUC12、pUC119、pBluescript等、バチルス属細菌を宿主とする場合にはpUB110、pC194等が挙げられる。酵母を宿主とする場合にはYip5、Yep24等が挙げられる。昆虫細胞を宿主とする場合にはAcNPV等が挙げられる。動物細胞を宿主とする場合にはpUC18、pUC19等が挙げられる。
【0099】
本発明の組み換えベクターは、常法に従い、本発明のポリヌクレオチドを発現ベクターのプロモーターの下流の発現可能な位置に連結することにより作製できる。
【0100】
宿主も公知のものを制限なく使用できる。例えば大腸菌(例えばK12)、バチルス属細菌(例えばMI114)のような細菌、酵母(例えばAH22)、昆虫細胞(例えばSf細胞)、動物細胞(例えばCOS-7細胞、Vero細胞、CHO細胞等)が挙げられる。
【0101】
本発明の組み換えベクターによる宿主の形質転換方法も、公知の方法から、宿主に応じて適した方法を選択すればよい。公知の導入方法としては、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、DEAEデキストラン法等が挙げられる。形質転換体からベクターが有する薬剤耐性マーカーなどを指標にして本発明の形質転換体を選択すればよい。
本発明のタンパク質の製造方法
本発明のタンパク質の製造方法は、本発明の形質転換体を培養し、培養された形質転換体から本発明のタンパク質を回収する方法である。
【0102】
形質転換体の培養条件は、形質転換体の種類に応じた条件を適宜選択すればよい。
【0103】
本発明の形質転換体が微生物である場合は、微生物の培養に通常使用される液体培地又は平板培地を用いて培養すればよい。培養温度は微生物の生育可能温度内であればよく、例えば15〜40℃程度が挙げられる。培地のpHも微生物の生育可能範囲であればよく、例えば6〜8程度が挙げられる。培養時間は、その他の培養条件により異なるが、通常1〜5日間程度、特に1〜2日間程度とすればよい。温度シフト型やIPTG誘導型等の誘導型の発現ベクターを用いる場合には、誘導時間は1日間以内、特に数時間程度とすればよい。
【0104】
本発明の形質転換体が哺乳動物細胞である場合にも、当該細胞に応じて適した条件で培養すればよい。例えばFBSを添加したDMEM培地(ニッスイ社製等)を用い、5%CO2存在下に36〜38℃程度の温度で、数日ごとに新しい培地に交換しながら培養することができる。細胞がコンフルエントになるまで増殖したら、例えばトリプシンPBS溶液を加えて個々の細胞に分散させ、得られた細胞の懸濁液を数倍に希釈して新しいシャーレに播種し継代を続ければよい。培養日数は、通常2〜5日間程度、特に2〜3日間程度とすることが好ましい。
【0105】
形質転換体が昆虫細胞の場合も、細胞の種類に応じて適した培養条件とすればよい。例えばFBS及びYeastlateを含むGrace's medium等の昆虫細胞用培地を用いて、25〜35℃程度で培養することができる。培養時間は1〜5日間程度、特に2〜3日間程度とすることが好ましい。また、ベクターとしてBaculovirus等のウィルスを含む形質転換体の場合は、培養時間は細胞質効果が現れて細胞が死滅する前まで(例えば3〜7日間程度、特に4〜6日間程度)とするのが好ましい。
【0106】
培養終了後、形質転換体の細胞を遠心分離等で集め、必要に応じて、細胞を適当なバッファーに懸濁した後、ポリトロン、超音波処理、ホモジナイザー等で破砕すればよい。得られた破砕液を100〜150g程度で5〜10分間程度遠心分離し、上清を18,000〜20,000g程度で20〜30分間程度遠心分離し、沈殿を回収することにより、細胞膜画分が得られる。
【0107】
得られた膜画分を、公知のタンパク質精製方法、例えばイオン交換、疎水、ゲルろ過、アフィニティ等の各種クロマトグラフィーに供することにより、本発明のタンパク質を精製することができる。
【0108】
本発明のタンパク質は、例えばヒスチジンタグを結合させた状態で発現させたり、グルタチオンSトランスフェラーゼ融合タンパク質として発現させることができる。前者の場合には金属キレートアフィニティカラムを用い、後者の場合にはグルタチオンSトランスフェラーゼモノクローナル抗体カラムを用いることにより、より簡便に本発明のタンパク質を精製することができる。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチド
<構成>
本発明のアンチセンスポリヌクレオチド(以下、「アンチセンス」という)は、以下の(13)又は(14)のポリヌクレオチドである。
(13) 配列番号2に記載の塩基配列の連続する少なくとも15塩基に相補的な塩基配列からなり、かつ、本発明のタンパク質の発現を阻害するポリヌクレオチド
(14) 配列番号2に記載の塩基配列の連続する少なくとも15塩基と細胞内条件下でハイブリダイズし、かつ、本発明のタンパク質の発現を阻害するポリヌクレオチド
本発明のアンチセンスは、本発明のタンパク質をコードするmRNAとハイブリダイズしてmRNAからタンパク質への翻訳を阻害することまたは、mRNAを分解することにより、このタンパク質の発現を阻害する。
【0109】
(13)のアンチセンスは、配列番号2に記載のポリヌクレオチドの、少なくとも30塩基、特に少なくとも50塩基に相補的な塩基配列を有することが好ましい。(14)のアンチセンスも、配列番号2に記載のポリヌクレオチドの、少なくとも30塩基、特に少なくとも50塩基からなるポリヌクレオチドと細胞内条件下でハイブリダイズするものであることが好ましい。
【0110】
アンチセンスの塩基数の上限は特に限定されないが、通常60塩基程度もあれば十分に目的を達成できる。
【0111】
本発明において細胞内条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドとしては、以下のストリンジェントな条件でハイブリダイズするようなポリヌクレオチドが挙げられる。ストリンジェントな条件としては、例えば2×SSC、1×デンハルト溶液中で60℃程度の条件が挙げられる。
【0112】
また、(13)のアンチセンスは、配列番号2の塩基番号1〜378の領域及び塩基番号379〜1377の領域の双方にまたがる連続する少なくとも15塩基に相補的な塩基配列を有することが好ましい。
【0113】
同様に、(14)のアンチセンスも、配列番号2の塩基番号1〜378の領域及び塩基番号379〜1377の領域の双方にまたがる連続する少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドと細胞内条件下でハイブリダイズするものであることが好ましい。
【0114】
また、(13)及び(14)のポリヌクレオチドにおける「配列番号2に記載の塩基配列の連続する少なくとも15塩基」は、配列番号2の5'末端に近いほど好ましい。
【0115】
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、1本鎖DNA、2本鎖DNA、1本鎖RNA、2本鎖RNA又はDNA・RNAハイブリッドのいずれであってもよい。2本鎖RNAを用いる場合は一般的にはRNAiと呼ばれている。また、本発明のタンパク質の発現を阻害する限り、これらのヌクレオチドの誘導体であってもよい。誘導体としては、ホスホロチオエートDNA、H-ホスホネートDNAなどを例示できる。
【0116】
本発明のアンチセンスによる本発明のタンパク質の発現の阻害は、例えば以下の方法で確認できる。ヒトの脳由来の細胞に、5nM〜10μM程度のアンチセンスを、必要に応じてリポフェクション試薬、リポフェクタミン試薬、リポソーム等の公知の細胞内導入試薬とともに加える。次いで、この細胞から細胞抽出液を公知の方法で調製し、後述する本発明の抗体を用いて、ELISAやウェスタンブロット等の公知の方法で本発明のタンパク質の発現量を測定すればよい。この発現量をアンチセンス非添加の場合と比較する。
【0117】
本発明のアンチセンスとしては、本発明のタンパク質の発現量を、アンチセンスを添加しない場合の例えば70%以下、好ましくは50%以下にするものが挙げられる。
【0118】
本発明のアンチセンスは、公知の化学合成法により製造できる。
<アンチセンスの用途>
本発明のアンチセンスは、GPCR刺激による細胞内シグナル伝達の調節剤として好適に使用できる。さらにいえば、この細胞内シグナル伝達の異常に起因する疾患の治療又は予防に好適に使用できる。特に、この細胞内シグナル伝達の異常亢進を抑制する目的に好適に使用できる。
リボザイム
<構成>
本発明のリボザイムは、以下の(15)又は(16)のリボザイムである。
(15) 配列番号2に記載の塩基配列のうちの二つの領域であって各が連続する少なくとも9塩基からなる二つの領域にそれぞれ相補的な二つのポリヌクレオチド領域を有し、かつ、本発明のポリヌクレオチドを分解する活性を有するリボザイム
(16) 配列番号2に記載の塩基配列のうちの二つの領域であって各が連続する少なくとも9塩基からなる二つの領域にそれぞれ細胞内条件下でハイブリダイズする二つのポリヌクレオチド領域を有し、かつ、本発明のポリヌクレオチドを分解する活性を有するリボザイム
(15)のリボザイムは、配列番号2に記載の塩基配列のうちの二つの領域であって各が連続する少なくとも10塩基、特に11塩基からなる二つの領域にそれぞれ相補的な二つのポリヌクレオチド領域を有することが好ましい。
【0119】
(16)のリボザイムは、配列番号2に記載の塩基配列のうちの二つの領域であって各が連続する少なくとも10塩基、特に11塩基からなる二つの領域にそれぞれ細胞内条件下でハイブリダイズする二つのポリヌクレオチド領域を有することが好ましい。
【0120】
(15)及び(16)のリボザイムにおいて、配列番号2に記載の塩基配列のうちの二つの領域は、隣接していても離れていてもよいが、それらの領域間には1〜4塩基程度の塩基が存在することが好ましい。例えばハンマーヘッド型リボザイムでは、1塩基が存在する場合が挙げられ、ヘアピン型リボザイムでは4塩基が存在する場合が挙げられる。
【0121】
リボザイムは、RNAの特定の部位を認識するアンチセンス配列を含むRNA分子であり、かつ、RNA切断酵素活性を有する。これによりリボザイムは、標的RNAを識別し、RNAの特定部位を特異的に切断する。
【0122】
本発明のリボザイムは、ハンマーヘッド型及びヘアピン型のいずれであってもよい。ハンマーヘッド型は、通常NUX(NはG、U、C又はAであり、XはC、U又はAである)を認識し、Xの3'側の位置でmRNAを切断する。
【0123】
本発明のハンマーヘッド型リボザイムとしては、例えば以下の塩基配列を有するリボザイムを例示できる。
TCGCCTCCTTCTGATGAGGCCGAAAGGCCGAAACCGCCTCGCGC(配列番号3)の塩基配列を有するリボザイム。この塩基配列を有するリボザイムは高次構造を採った後に配列番号2の塩基番号273〜295の塩基配列を認識する。
CGGCCGCCCGCTGATGAGGCCGAAAGGCCGAAACTGGGGCCAGC(配列番号4)の塩基配列を有するリボザイム。この塩基配列を有するリボザイムは高次構造を採った後に配列番号2の塩基番号111〜133の塩基配列を認識する。
CAGCGGCCGCCTGATGAGGCCGAAAGGCCGAAACTGTAGCACA(配列番号5)の塩基配列を有するリボザイム。この塩基配列を有するリボザイムは高次構造を採った後に配列番号2の塩基番号8〜30の塩基配列を認識する。
【0124】
また、ヘアピン型は、通常NNNG/CN*GUCNNNNNNNN(NはG、U、C又はA)を認識し、N*G間でmRNAを切断する。
【0125】
本発明のヘアピン型リボザイムとしては、例えば以下の塩基配列を有するリボザイムを例示できる。
TCGCCTCCTTAGAAGCCTACCAGAGAAACACACGTTGTGGTATATTACCTGGTA(配列番号6)の塩基配列を有するリボザイム。この塩基配列を有するリボザイムは高次構造を採った後に配列番号2の塩基番号287〜295の塩基配列を認識する。
CGGCCGCCCGAGAAGGGGACCAGAGAAACACACGTTGTGGTATATTACCTGGTA(配列番号7)の塩基配列を有するリボザイム。この塩基配列を有するリボザイムは高次構造を採った後に配列番号2の塩基番号116〜133の塩基配列を認識する。
CAGCGGCCGCAAGAAGTAGACCAGAGAAACACACGTTGTGGTATATTACCTGGTA(配列番号8)の塩基配列を有するリボザイム。この塩基配列を有するリボザイムは高次構造を採った後に配列番号2の塩基番号12〜30の塩基配列を認識する。
【0126】
本発明のリボザイムは、通常RNAからなるが、デオキシリボヌクレオチドを含むものや、生体内で分解され難いホスホチオエートDNA等の誘導体も本発明のリボザイムに含まれる。
【0127】
本発明のリボザイムは、周知の化学合成法、in vitro又はin vivoでの転写等により作製できる。具体的には、in vitro での転写では、例えばT7、T3又はSP6等のプロモーターをコードするDNAの下流に配列番号3、4、5、6、7又は8の配列に相補的な配列を有するDNAを連結する。このDNAを鋳型に用いてRNAポリメラーゼにより転写反応を行う。得られる転写産物をリボザイム用のRNAとして用いることができる。
【0128】
また、in vivoでの転写では、配列番号3、4、5、6、7又は8の配列に相補的な配列を有するDNAを哺乳動物の発現ベクターに組み込み、この発現ベクターを哺乳動物細胞に導入する。細胞の転写機構により配列番号3、4、5、6、7又は8の配列を有するRNAが合成される。
<リボザイムの用途>
本発明のリボザイムは、GPCR刺激による細胞内シグナル伝達の調節剤として好適に使用できる。さらにいえば、この細胞内シグナル伝達の異常に起因する疾患の治療又は予防に好適に使用できる。特に、この細胞内シグナル伝達の異常亢進を抑制する目的に好適に使用できる。
本発明の抗体
<構成>
本発明の抗体は、本発明のタンパク質を特異的に認識する抗体である。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体でもよく、モノクローナル抗体でもよい。また本発明の抗体には、本発明のタンパク質を構成するアミノ酸配列の連続する5アミノ酸、好ましくは10アミノ酸からなるポリペプチドに対して抗原結合性を有する抗体も含まれる。さらに、これらの抗体の誘導体(キメラ抗体等)やペルオキシダーゼのような酵素で標識したものも本発明の抗体に含まれる。
<本発明の抗体の製造方法>
これらの抗体は、周知の製造方法(例えばCurrent protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al.(1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.12〜11.13)に従って製造することができる。
【0129】
具体的には、本発明の抗体がポリクローナル抗体である場合には、本発明のタンパク質を用いて家兎等の非ヒト動物を免疫し、この免疫動物の血清から常法に従って得ることができる。また本発明の抗体がモノクローナル抗体である場合には、例えば、本発明のタンパク質又はその部分配列を有するポリペプチドを用いてマウス等の非ヒト動物を免疫し、この免疫動物の脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させることにより得られたハイブリドーマから得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al.(1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.4〜11.11)。<抗体の用途>
本発明の抗体は、GPCR刺激による細胞内シグナル伝達の調節剤として好適に使用できる。さらにいえば、この細胞内シグナル伝達の異常に起因する疾患の治療又は予防に好適に使用できる。特に、この細胞内シグナル伝達の異常亢進を抑制する目的に好適に使用できる。
【0130】
また本発明の抗体は、本発明のタンパク質の精製用のアフィニティクロマトグラフィー、本発明のタンパク質の発現に影響を与える物質のスクリーニングにも好適に使用できる。
本発明のオリゴヌクレオチド
本発明のオリゴヌクレオチドは、以下の(17)又は(18)のオリゴヌクレオチドである。
(17) 配列番号2に記載の塩基配列において連続する少なくとも17塩基からなり、かつ、配列番号2に記載のポリヌクレオチドを特異的に認識できるオリゴヌクレオチド
(18) 配列番号2に記載の塩基配列において連続する少なくとも17塩基と80%以上の相同性を有し、かつ、配列番号2に記載のポリヌクレオチドを特異的に認識できるオリゴヌクレオチド
(17)及び(18)のオリゴヌクレオチドの長さは、その用途に応じて適宜設定すればよい。配列番号2の全長配列からなるものであってもよい。
【0131】
(18)のオリゴヌクレオチドは、(17)のオリゴヌクレオチドと85%以上、特に90%以上の相同性を有することが好ましい。
【0132】
(17)及び(18)のオリゴヌクレオチドにおいて「特異的に認識する」とは、このオリゴヌクレオチドを用いて、例えばノーザンブロットやPCR等の公知の塩基配列検出手段により、配列番号2に記載の塩基配列を特異的又は選択的に検出できることをいう。
【0133】
本発明のオリゴヌクレオチドは、本発明のDNAの発現によって生じたRNA又はそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出又は増幅するプローブ又はプライマーとして使用できる。具体的には、ノーザンブロット、in situ ハイブリダイゼーション又はPCRのような、特定塩基配列を検出する公知の方法においてプローブ又はプライマーとして使用できる。
【0134】
これにより本発明のDNAの発現の有無又は発現レベルを評価できる。従って、本発明のオリゴヌクレオチドは、本発明のタンパク質の欠損、発現量の異常増加又は低下によるシグナル伝達異常に起因する疾患の診断に好適に使用できる。被験試料は、被験者の子宮等の一部を採取し、それから常法に従って調製したtotalRNA又はそのRNAから調製される各種のポリヌクレオチドを用いてもよい。
【0135】
本発明のオリゴヌクレオチドとして、例えば5'-ATGGGTCTGTGCTACAGTCTGCGG(配列番号9)の塩基配列を有するもの、5'-ACGATGGTGCTTTTCCCAGACTCACCAGCCCCGAGCA(配列番号10)の塩基配列を有するもの等が挙げられる。このオリゴヌクレオチドセットは本発明のタンパク質を増幅するPCRプライマーとして好適に使用できる。
本発明のスクリーニング方法
本発明のポリヌクレオチドを用いて、GPCR及び本発明のタンパク質を介した細胞シグナル伝達を活性化又は阻害(若しくは抑制)する物質をスクリーニングすることができる。
【0136】
GPCR刺激のシグナルは、G-タンパク質αサブユニット上でのGDP/GTP交換反応によるG-タンパク質の活性化を介してエフェクターに伝達される。従って、このエフェクターの活性の変動を指標に被験物質を探索すれば、GPCR及びG-タンパク質αサブユニットを介したシグナル伝達を活性化又は阻害する物質を得ることができる。また、G-タンパク質を発現している細胞の膜画分へのGTP結合量の変動を指標に被験物質を探索することによっても、GPCR及びG-タンパク質αサブユニットを介したシグナル伝達を活性化又は阻害する物質を得ることができる。
【0137】
この他、本発明のタンパク質の発現量を変動させる被験物質を探索することによっても、GPCR及びG-タンパク質αサブユニットを介したシグナル伝達を活性化又は阻害する物質を得ることができる。
<第 1 の方法>
(a) 被験物質と、本発明のポリヌクレオチド(ここでは本発明のタンパク質をコードするDNA)を含む組み換えベクター及びGPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する試験細胞とを接触させる工程と、
(b) 試験細胞におけるG-タンパク質のエフェクターの活性又はそれと相関する指標値(以下、「エフェクター活性」と略称する)を測定する工程と、
(c) このエフェクター活性を、被験物質を接触させていない試験細胞の当該エフェクター活性と比較して、試験細胞におけるエフェクター活性を変動させる被験物質を選択する工程と
を含むGPCR及び本発明のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
【0138】
第1の方法によると、GPCRのアゴニストを選択することができる。
【0139】
本発明のタンパク質をコードするDNAを有する組換えベクター及びGPCRをコードするDNAを有する組換えベクターを保持させる細胞としては、それには限定されないが、哺乳動物細胞又は昆虫細胞等を用いることができる。哺乳動物細胞としては、例えばVero細胞、Hela細胞、CV1細胞、COS1細胞、CHO細胞等の公知の細胞を制限なく使用できる。昆虫細胞としては、例えばSf細胞、MG1細胞、High FiveTM細胞等の公知の細胞を制限なく使用できる。ベクターの種類も特に制限されず、細胞の種類に応じて公知のベクターの中から選択すればよい。
【0140】
GPCRをコードするDNAは、GPCRデータベース(www.cmbi.kun.nl/7tm/)に記載の塩基配列に基づき設計したプローブを用いてヒトcDNAライブラリーをスクリーニングする方法、前記塩基配列に基づき設計したプライマーを用いてヒトcDNAライブラリーを鋳型にしてPCRを行う方法、又は、化学合成法等により得ることができる。
【0141】
G-タンパク質のエフェクターは、G-タンパク質αサブユニットが標的とするエフェクター及びG-タンパク質βγサブユニットが標的とするエフェクターのいずれでもよい。また、G-タンパク質のエフェクター活性と相関する指標値も測定対象にすることができる。
【0142】
G-タンパク質αサブユニットが標的とするエフェクターとしては、アデニル酸シクラーゼ、Ca2+チャネル、K+チャネル、ホスホリパーゼCβ等が挙げられる。アデニル酸シクラーゼの活性は細胞内cAMP量を測定することにより評価できる。Ca2+チャネルの活性は細胞膜電位を測定することにより評価できる。K+チャネルの活性は細胞膜電位を測定することにより評価できる。ホスホリパーゼCβの活性はCa2+量を測定することにより評価できる。
【0143】
G-タンパク質βγサブユニットが標的とするエフェクターとしては、アデニル酸シクラーゼ、Ca2+チャネル、K+チャネル、ホスホリパーゼCβ、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼβ又はγ等が挙げられる。ホスファチジルイノシトール3-キナーゼβ又はγの活性はCa2+量を測定することにより評価できる。
【0144】
活性を測定するエフェクターとしては、G-タンパク質αサブユニットが標的とするエフェクターが好ましく、アデニル酸シクラーゼがより好ましい。アデニル酸シクラーゼの活性を反映する細胞内cAMP量は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウシ等を免疫して得られた抗cAMP抗体と125I標識cAMPを使用したRIA、抗cAMP抗体と標識cAMPとを組み合わせた他のEIA、抗cAMP抗体をproteinA又は抗cAMP抗体産生に用いた動物のIgG等に対する抗体等を使用して固定したシンチラントを含むビーズと125I標識cAMPとを使用するSPA法、抗cAMP抗体と酵素ドナー結合cAMPと酵素空アクセプターとを組み合わせたEFC法等の公知の方法により測定できる。これらの測定方法は市販のキットを用いて行える。
【0145】
また細胞内cAMP量は、例えば、cAMPに反応するCRE(cAMP response element)を含むDNAをレポーター遺伝子ベクターのレポーター遺伝子の上流に挿入したCRE-レポーター遺伝子ベクターを作製して試験細胞内にこのベクターも導入しておき、レポーター遺伝子の発現量を測定することによっても評価できる。CRE-レポーター遺伝子ベクターを導入した試験細胞において、cAMP量の上昇を伴う刺激は、CREを介したレポーター遺伝子発現とそれに引き続くレポータータンパク質の産生を誘導する。逆にcAMP量の減少は、CREを介したレポータータンパク質の産生を減少させる。CRE-レポーター遺伝子ベクターを用いることにより、cAMP量を簡便かつ高感度に測定することができる。
【0146】
レポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ遺伝子、分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子、β-ガラクトシダーゼ遺伝子等の公知のものを制限なく使用できる。これらの遺伝子の発現量は以下のような市販の測定キットを用いて測定できる。ルシフェラーゼ遺伝子の発現量は、細胞溶解液に発光基質であるルシフェリン(例えば東洋インキ社製)を添加し基質の分解による発光をルミノメーター、液体シンチレーションカウンター又はトップカウンター等を用いて測定すればよい。アルカリフォスファターゼ遺伝子の発現量は、例えばLμMi-Phos530(和光純薬社製)を用いて測定できる。クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子の発現量は、FAST CAT Chrolamphenicol Acetyltransferase Assay Kit(和光純薬社製)を用いて測定できる。β-ガラクトシダーゼ遺伝子の発現量はAurora Gal-XE(和光純薬社製)を用いて測定できる。
【0147】
例えばルシフェラーゼ遺伝子を用いる場合には、CREを含むDNAを、ピッカジーンベイシックベクター又はピッカジーンエンハンサーベクター等(東洋インキ社製)等のルシフェラーゼ遺伝子上流のマルチクローニングサイトに挿入し、これをCRE-レポーター遺伝子ベクターとして使用できる。
【0148】
被験物質の種類は特に限定されない。例えばタンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物(ヌクレオチド、アミン、糖質、脂質等)、有機低分子化合物、無機低分子化合物、醗酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液等が挙げられる。
【0149】
細胞への被検物質の接触は、細胞が死滅せず、かつ、導入したベクターから本発明のタンパク質及びGPCRが発現できる条件(温度、pH、培地成分など)で行えばよい。細胞に接触させる被験物質の濃度は、物質の種類によっても異なるが、例えば0.001〜10μM程度とすることができる。
【0150】
被験物質を接触させた試験細胞のエフェクター活性が、被験物質を接触させない試験細胞のエフェクター活性に比べて、例えば25%程度、好ましくは50%程度、さらに好ましくは100%程度増大するような被験物質をGPCRのアゴニストとして選択することができる。
<第 2 の方法>
(a) 被験物質と、本発明のポリヌクレオチド(ここでは本発明のタンパク質をコードするDNA)を含む組み換えベクター及びGPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する試験細胞とを接触させる工程と、
(b) 試験細胞のG-タンパク質のエフェクターの活性を測定する工程と、
(c) このエフェクター活性を、本発明のタンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターを保持せずGPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する対照細胞に当該被験物質を接触させた場合の当該エフェクター活性と比較して、試験細胞と対照細胞との間でエフェクター活性に差が生じる被験物質を選択する工程と
を含むGPCR及び本発明のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
【0151】
第2の方法では、本発明のタンパク質の発現ベクターを保持する試験細胞のエフェクター活性の方が、このベクターを保持しない対照細胞のエフェクター活性より高くなるような被験物質を探索すればよい。これによりGPCR及び本発明のタンパク質を介したシグナル伝達のいずれかの段階を活性化する物質を候補物質として選択することができる。
【0152】
試験細胞において対照細胞に比べてエフェクター活性が例えば20%程度、好ましくは50%程度、さらに好ましくは100%程度高くなるような被験物質をシグナル伝達活性化物質として選択することができる。
【0153】
その他の構成は前述した第1の方法と同じである。
<第3の方法>
(a) 被験物質と、本発明のポリヌクレオチド(ここでは本発明のタンパク質をコードするDNA)を含む組み換えベクター及びGPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する試験細胞とを接触させる工程と、
(b) 試験細胞のG-タンパク質のエフェクターの活性を測定する工程と、
(c) このエフェクター活性又はそれと相関する指標値を、GPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持せず本発明のタンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する対照細胞に当該被験物質を接触させた場合の当該エフェクター活性と比較して、試験細胞と対照細胞との間でエフェクター活性に差が生じる被験物質を選択する工程と
を含むGPCR及び本発明のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
【0154】
第3の方法では、GPCRの発現ベクターを保持する試験細胞のエフェクター活性の方が、GPCRの発現ベクターを保持しない対照細胞のエフェクター活性より高くなるような被験物質を探索すればよい。これによりGPCRのアゴニストを候補物質として選択することができる。
【0155】
試験細胞において対照細胞に比べてエフェクター活性が例えば20%程度、好ましくは50%程度、さらに好ましくは100%程度高くなるような被験物質をシグナル伝達活性化物質として選択することができる。
【0156】
その他の構成は前述した第1の方法と同じである。
<第4の方法>
(a) 被験物質及びGPCRのリガンドと、本発明のポリヌクレオチド(ここでは本発明のタンパク質をコードするDNA)を含む組換えベクター及びGPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する試験細胞とを接触させる工程と、
(b) 試験細胞におけるG-タンパク質のエフェクター活性を測定する工程と、
(c) このエフェクター活性を、被験物質を接触させず前記リガンドを接触させた試験細胞の当該エフェクター活性と比較して、試験細胞におけるエフェクター活性を変動させる被験物質を選択する工程と
を含むGPCR及び本発明のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
【0157】
第4の方法では、被験物質を接触させた試験細胞のエフェクター活性に比べて被験物質を接触させない対照細胞のエフェクター活性が高くなる被験物質及び低くなる被験物質の双方を選択すればよい。これにより、GPCRのアゴニスト又はアンタゴニストを含めて、GPCRリガンドのGPCRへの結合に始まるシグナル伝達のいずれかの段階を活性化又は阻害する物質を選択することができる。
【0158】
GPCRのリガンドとしては、例えばアミン類が挙げられる。特にドーパミンを用いることが好ましい。また、細胞に接触させるリガンドと被験物質との比率は、リガンド:被験物質がモル比で、例えば1:0.1〜1:100程度、好ましくは1:1〜1:50程度とすることができる。
【0159】
GPCRリガンドのみ接触させた場合の試験細胞のエフェクター活性を100%とし、GPCRリガンド及び被験物質のいずれも接触させない試験細胞のエフェクター活性を0%として、GPCRリガンド及び被験物質の双方を接触させた試験細胞のエフェクター活性のパーセンテージを算出する。GPCRリガンド及び被験物質の双方を接触させた試験細胞のエフェクター活性のパーセンテージが例えば85%以下、好ましくは70%以下、さらに好ましくは50%以下になる被験物質を細胞シグナル伝達の阻害又は抑制の候補物質として選択できる。また、このパーセンテージが例えば125%以上、好ましくは150%以上、さらに好ましくは200%以上になる被験物質を細胞シグナル伝達の活性化の候補物質として選択できる。
【0160】
その他の構成は前述した第1の方法と同じである。
<第5の方法>
(a) 被験物質及びGPCRのリガンドと、本発明のヌクレオチド(ここでは本発明のタンパク質をコードするDNA)を含む組み換えベクター及びGPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する試験細胞とを接触させる工程と、
(b) 試験細胞におけるG-タンパク質のエフェクター活性を測定する工程と、
(c) このエフェクター活性を、被験物質を接触させずに前記リガンドを接触させた試験細胞の当該エフェクター活性と比較して、試験細胞におけるエフェクター活性の変動を見る工程と、
(d) このエフェクター活性の変動率を、GPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持せず本発明のタンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する対照細胞に当該被験物質及び当該リガンドを接触させた場合の当該エフェクター活性変動率と比較して、試験細胞と対照細胞との間でエフェクター活性変動率に差が生じる被験物質を選択する工程とを含むGPCR及び本発明のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
【0161】
第5の方法では、GPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する試験細胞のエフェクター活性変動率の方が、このベクターを保持しない対照細胞のエフェクター活性変動率に比べて高くなるような被験物質を探索すればよい。この方法によれば、外来性のGPCRに対するアンタゴニストとなる物質を選択できる。前述した第4の方法によれば、内在性のGPCRに対するアンタゴニストも選択されるところ、第4の方法により得られた物質を第5の方法でスクリーニングすれば、内在性のGPCRに対するアンタゴニストとなる物質を選択的に除去できる。
【0162】
試験細胞において対照細胞に比べてエフェクター活性変動率が例えば15%程度、好ましくは30%程度、さらに好ましくは50%程度高くなるような試験物質を外来性のGPCRに対するアンタゴニストの候補物質として選択することができる。
【0163】
その他の構成は前述した第1の方法と同じである。
<第6の方法>
(a) 被験物質と、本発明のポリヌクレオチド(ここでは本発明のタンパク質をコードするDNA)を含む組み換えベクターを保持する細胞の細胞膜画分及びGPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する細胞の細胞膜画分、又は、本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチド(ここでは本発明のタンパク質をコードするDNA)を含む組み換えベクター及びGPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する細胞の細胞膜画分とを接触させる工程と、
(b) この細胞膜画分へのGTPの結合量を評価する工程と、
(c) このGTP結合の評価量を、被験物質を接触させていない前記細胞膜画分へのGTP結合の評価量と比較して、細胞膜画分へのGTP結合の評価量を変動させる被験物質を選択する工程と
を含むGPCR及び本発明のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
【0164】
GPCR及びG-タンパク質を発現する細胞がGPCRリガンドにより刺激されると、G-タンパク質αサブユニットにGTPが結合する。この現象はGPCR及びG-タンパク質を発現する細胞の膜画分でも観察される。従って、第5の方法では、この細胞膜画分へのGTP結合量を増大させる物質をGPCRのアゴニストとして選択することができる。
【0165】
通常G-タンパク質αサブユニットに結合したGTPはGDPに分解される。従って、本発明のタンパク質への結合能はあるがGTPアーゼにより分解されないようなGTPアナログを用いて、このGTPアナログの本発明のタンパク質への結合量を測定することにより、本発明のタンパク質へのGTP結合量を評価することができる。このようなGTPアナログとしては、例えばGTPγS、GppNHp等が挙げられる。
【0166】
GTPアナログの細胞膜画分への結合量を測定するにあたっては、例えばGTPアナログを例えば放射標識しておき、細胞膜画分に標識GTPアナログを添加して一定時間インキュベートした後、細胞膜画分の放射活性を液体シンチレーションカウンター等で測定すればよい。
【0167】
細胞膜画分の調製方法及び確認方法は前述したとおりである。
【0168】
被験物質を接触させた試験細胞において、被験物質を接触させていない試験細胞に比べて、細胞膜画分へのGTP結合量が例えば25%程度、好ましくは50%程度、さらに好ましくは100%程度高くなるような被験物質をGPCRのアゴニストの候補物質として選択できる。
【0169】
その他の構成は前述した第1の方法と同じである。
<第7の方法>
(a) 被験物質及びGPCRのリガンドと、本発明のポリヌクレオチド(ここでは本発明のタンパク質をコードするDNA)を含む組み換えベクターを保持する細胞の細胞膜画分及びGPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する細胞の細胞膜画分、又は、本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチド(ここでは本発明のタンパク質をコードするDNA)を含む組み換えベクター及びGPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する細胞の細胞膜画分とを接触させる工程と、
(b) この細胞膜画分へのGTP結合量を評価する工程と、
(c) このGTP結合の評価量を、被験物質を接触させず前記リガンドを接触させ た細胞膜画分におけるGTP結合の評価量と比較して、細胞膜画分へのGTP結合 の評価量を変動させる被験物質を選択する工程と
を含むGPCR及び本発明のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
【0170】
第7の方法によれば、GPCRレセプターのアゴニスト及びアンタゴニストを含めて、細胞シグナル伝達のいずれかの段階(G-タンパク質αサブユニットへのGTPの結合まで)を活性化又は阻害(若しくは抑制)する物質を探索できる。
【0171】
GPCRリガンドのみ接触させた膜画分の放射活性を100%とし、GPCRリガンド及び被検物質のいずれも接触させない膜画分の放射活性を0%として、GPCRリガンド及び被検物質の双方を接触させた膜画分の放射活性のパーセンテージを算出する。GPCRリガンドと被検物質の双方を接触させた場合の放射活性パーセンテージが例えば75%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは25%以下になる被検物質を、シグナル伝達を阻害又は抑制する候補物質として選択できる。また、GPCRリガンドと被検物質の双方を接触させた場合の放射活性パーセンテージが例えば125%以上、好ましくは150%以上、さらに好ましくは200%以上になる被検物質を、シグナル伝達を活性化する候補物質として選択できる。
【0172】
その他の構成は前述した第6の方法と同じである。また、使用可能なリガンド及びリガンドと被験物質との比率については、第4の方法と同じである。
<第8の方法>
(a) 被験物質と、本発明のタンパク質を発現可能な試験細胞とを接触させる工程と、
(b) 試験細胞における本発明のタンパク質の発現量を測定する工程と、
(c) この発現量を、被験物質を接触させない試験細胞の当該タンパク質の発現量と比較して、試験細胞における本発明のタンパク質の発現量を変動させる被
験物質を選択する工程と
を含むGPCR及び本発明のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
【0173】
この方法によれば、本発明のタンパク質の発現を増大又は減少させることにより、本発明のタンパク質を介したシグナル伝達を活性化又は抑制する物質を選択できる。
【0174】
本発明のタンパク質の発現量は、対応するmRNA量を測定することにより測定できる。このmRNA量は、前述した本発明のプローブを用いたノーザンブロット又は前述した本発明のプライマーを用いたPCR等の公知の方法で測定できる。
【0175】
具体的には、ノーザンブロット法を利用する場合には、試験細胞から常法に従いRNAを調製し、ナイロンメンブレン等にトランスファーし、放射性同位元素や蛍光物質等で標識したプローブとハイブリダイズさせた後、プローブとRNAとの2重鎖を標識に応じた方法で検出すればよい。PCRを利用する場合には、試験細胞のmRNAから常法に従いcDNAを調製し、これを鋳型として、本発明のオリゴヌクレオチドセットをプライマーとして常法に従いPCRを行えばよい。
【0176】
また、本発明のタンパク質の発現量は、タンパク質を直接定量することによっても測定できる。このタンパク質の量は、例えば本発明の抗体を用いたウェスタンブロット法等の公知の方法により測定できる。
【0177】
本発明のタンパク質を発現している細胞としては、通常、哺乳動物細胞、好ましくはヒトの細胞を使用できる。特に、ヒトの脳、胸腺、精巣、脾臓、小腸、子宮又は心臓由来の細胞を用いることが好ましい。
本発明のスクリーニングキット
本発明の第1のG-タンパク質共役型受容体及び本発明のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニングキットは、本発明のポリヌクレオチド(ここではDNA)を有する組み換えベクターを保持する試験細胞と;G-タンパク質のエフェクターの活性の測定用試薬とを含むキットである。
【0178】
このキットは、前述した本発明の第1のスクリーニング方法に使用できる。試験細胞及びG-タンパク質のエフェクター活性の測定用試薬については、前述したとおりである。このキットを用いて第1のスクリーニング方法を行うに当たっては、試験細胞に、別途GPCRをコードするDNAを有する組み換えベクターを導入すればよい。又は、試験細胞は、本発明のポリヌクレオチドを有する組み換えベクターに加えてGPCR発現ベクターを保持するものであってもよい。
【0179】
本発明の第1のスクリーニングキットは、さらに、本発明のポリヌクレオチド(ここではDNA)を有する組み換えベクターを保持せず、GPCRをコードするDNAを有する組み換えベクターを保持する対照細胞を含んでいてよい。この場合は、本発明の第2のスクリーニング方法に使用できる。
【0180】
本発明の第1のスクリーニングキットは、さらに、GPCRをコードするDNAを有する組み換えベクターを保持せず、本発明のポリヌクレオチド(ここではDNA)を有する組み換えベクターを保持する対照細胞を含んでいてよい。この場合は、本発明の第3のスクリーニング方法に使用できる。
【0181】
本発明の第1のスクリーニングキットは、さらにGPCRのリガンドを含んでいてよい。この場合は、本発明の第4のスクリーニング方法に使用できる。リガンドも前述した通りである。
【0182】
本発明の第1のスクリーニングキットは、さらに、GPCRのリガンド、及び、GPCRをコードするDNAを有する組み換えベクターを保持せず本発明のポリヌクレオチド(ここではDNA)を有する組み換えベクターを保持する対照細胞を含んでいてよい。この場合は、本発明の第5のスクリーニング方法に使用できる。
【0183】
また、本発明の第2のGPCR及び本発明のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニングキットは、本発明のポリヌクレオチド(ここではDNA)を有する組み換えベクターを保持する細胞と;本発明のタンパク質に結合できるがGTPaseにより分解されないようなGTPアナログとを含むキットである。このキットは、本発明の第6のスクリーニング方法に使用できる。GTPアナログについては前述したとおりである。
【0184】
このキットを用いて第6のスクリーニング方法を行うに当たっては、細胞に別途GPCRをコードするDNAを有する組み換えベクターを導入して使用すればよい。又は、前記細胞は、本発明のDNAを有する組み換えベクターの他にGPCR発現ベクターを保持するものであってもよい。
【0185】
本発明の本発明の第3のGPCR及び本発明のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニングキットは、本発明のポリヌクレオチド(ここではDNA)を有する組み換えベクター及びGPCR発現ベクターを保持する細胞と;本発明のタンパク質に結合できるがGTPaseにより分解されないようなGTPアナログとを含むキットである。このキットは、本発明の第6のスクリーニング方法に使用できる。
【0186】
本発明の第2及び第3のスクリーニングキットは、さらに、GPCRのリガンドを含んでいてよい。この場合には、本発明の第7のスクリーニング方法に使用できる。
【0187】
また、本発明の第4のGPCR及び本発明のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニングキットは、本発明のタンパク質を発現可能な細胞と;本発明のプローブ、本発明のプライマー又は本発明の抗体とを含むキットである。このキットは、本発明の第8のスクリーニング方法に使用できる。
医薬
本発明のタンパク質及び抗体は、以下の形態で医薬として使用できる。
【0188】
本発明のタンパク質及び抗体は、そのまま又は薬学的に許容される担体(賦形剤、増量剤、結合剤、潤沢剤等が含まれる)や慣用の添加剤などと混合して医薬組成物として調製できる。この医薬組成物は、調製する形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤等の経口投与剤;注射剤、点滴剤、外用剤、座剤等の非経口投与剤)等に応じて経口投与又は非経口投与することができる。また投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象又は患者の年齢、体重、症状等によって異なり一概に規定できないが、1日投与量として、0.01〜100mg程度を1日1回又は数回に分けて投与できる。
【0189】
また、本発明のポリヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド及びリボザイムは、前述した医薬組成物の形態で医薬として投与できる。その他、例えばリポソーム内に封入して送達するリポソームデリバリーシステム、マイクロインジェクション、直接注射法、遺伝子銃等を利用して細胞内に導入することもできる。これらの場合も、投与量、投与方法は、患者の年齢、体重、症状等によって異なり一概に規定できないが、当業者であれば適宜選択することができる。
【0190】
さらに、本発明のポリヌクレオチドは、遺伝子治療用のウィルスベクター等に組み込んで、目的細胞に導入することもできる。
【0191】
また、本発明のスクリーニング方法により得られたシグナル伝達調節物質は、前述した医薬組成物の形態で投与することができる。また、この物質がDNAによりコードされるものである場合には、遺伝子治療用のウィルスベクターに組み込んで、目的細胞に導入することもできる。
【0192】
【発明の効果】
本発明により、細胞シグナル伝達に関与する新規なG-タンパク質と考えられるタンパク質及びそれをコードするポリヌクレオチドが提供された。
【0193】
さらにいえば、GPCR及び本発明のタンパク質をそれぞれ発現するベクターを保持する細胞におけるG-タンパク質エフェクター活性が、本発明のタンパク質を発現するベクターを有さない細胞における当該エフェクター活性に比べて高いことから、本発明のタンパク質は、細胞の分化又は増殖に関与する、GPCR及びG-タンパク質を介したシグナル伝達に関与するタンパク質であると考えられる。
【0194】
また、本発明のタンパク質は、G-タンパク質間でGTP結合部位及びGTPase活性化部位として保存されているアミノ酸配列、及び、G-タンパク質間で保存されている3量体形成ドメインのアミノ酸配列とそれぞれ高い相同性を有する領域を有することから、G-タンパク質の1種であると考えられる。
【0195】
従って、本発明のタンパク質及びこれをコードするポリヌクレオチドは、GPCR及び本発明のタンパク質を介した細胞内シグナル伝達の調節剤として好適に使用できる。さらにいえば、この細胞内シグナル伝達の異常に起因する疾患の治療又は予防に好適に使用できる。特に、本発明のタンパク質の欠損、発現量の低下又は機能低下によるシグナル伝達異常に起因する疾患の治療に好適に使用できる。
【0196】
さらに、本発明のポリヌクレオチドは、GPCR刺激による細胞シグナル伝達調節物質のスクリーニングに好適に使用できる。
【0197】
また、本発明の抗体、アンチセンス及びリボザイムは、GPCR及び本発明のタンパク質を介した細胞内のシグナル伝達の調節剤として好適に使用できる。さらにいえば、この細胞内シグナル伝達の異常に起因する疾患の治療又は予防に好適に使用できる。特に、この細胞内シグナル伝達の異常亢進を抑制する目的に好適に使用できる。
【0198】
さらに、本発明の抗体は、本発明のタンパク質の精製用のアフィニティクロマトグラフィー、本発明のタンパク質の発現に影響を与える物質のスクリーニングに好適に使用できる。
【0199】
また、本発明のスクリーニング方法により得られた物質は、GPCR及び本発明のタンパク質を介した細胞内のシグナル伝達の調節剤として好適に使用できる。さらにいえば、この細胞内シグナル伝達の異常に起因する疾患の治療又は予防に好適に使用できる。
【0200】
また、本発明のオリゴヌクレオチドは、本発明のタンパク質の欠損、その発現量の異常増加又は異常低下に起因する疾患の診断に好適に使用できる。
【0201】
本発明のタンパク質は、大脳などの脳組織で発現が認められることから、本発明のタンパク質、ポリヌクレオチド、抗体、アンチセンス、リボザイム、本発明のスクリーニング方法により得られる物質は、神経疾患等の予防又は治療に有用であると考えられる。また、本発明のオリゴヌクレオチドは神経疾患の診断に有用であると考えられる。
【0202】
また本発明のタンパク質は、心臓で発現が認められることから、本発明のタンパク質、ポリヌクレオチド、抗体、アンチセンス、リボザイム、本発明のスクリーニング方法により得られる物質は、心臓疾患等の予防又は治療に有用であると考えられる(Targets, 2002, vol.1 p206-213)。
【0203】
また本発明のタンパク質は、胸腺および脾臓で発現が認められることから、本発明のタンパク質、ポリヌクレオチド、抗体、アンチセンス、リボザイム、本発明のスクリーニング方法により得られる物質は、免疫疾患等の予防又は治療に有用であると考えられる。
【0204】
【実施例】
以下、本発明を実施例を示してより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0205】
以下の実施例において、本発明のタンパク質を「Gm1」と略称する。
(実施例1)ヒトGm1蛋白質をコードするcDNAのクローニング
ヒトGm1の全長をコードするDNAを有するプラスミドであるpCR−Gm1を以下のようにして作製した。
【0206】
ヒト脳由来cDNAライブラリー(宝酒造社製)のプラスミド(pAP3neo)20ngを鋳型に用い、10μMのフォワードプライマーprGm1ATG(5’−ATGGGTCTGTGCTACAGTCTGCGG;配列番号11)、10μMのリバースプライマーprGNAL3’(5’−TCACAAGAGCTCATACTGCTT;配列番号12)およびTAKARALATaqポリメラーゼ(TAKARALATaq with GC Buffer,宝酒造社製)を用いてPCRを行うことにより増幅DNAを得た。
【0207】
PCR条件は、95℃で30秒間、次いで60℃で30秒間、次いで72℃で2分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。
【0208】
得られたDNAをアガロースゲル電気泳動後、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、回収した。
この精製、回収されたDNAをインサートDNAとした。
【0209】
次にTOPOTAC1oning Kit(Invitorogen社製)を用い、その添付プロトコールにしたがって、インサートDNA(50ng)をpCR2.1−TOPOベクター(10ng)のクローニング部位に挿入することにより、pCR−Gm1を作製した。
【0210】
このようにして得られたDNAについてABI377DNAシークエンサーを用いて塩基配列を決定した結果、配列番号2に記載の塩基配列の塩基番号1〜1377の塩基配列を含み、配列番号1に記載のアミノ酸配列の全長をコードしていた。
(実施例2)Gm1をコードする核酸の発現分布の検出
Gm1をコードする核酸を特異的に増幅できるようにフォワードプライマーprGmlrt‐5’(5’−ATGGGGTGTTTGGGCGGCAACA;配列番号13)及びリバースプライマーprGm1rt−3’(5’−ACGATGGTGCTTTTCCCAGACTCACCAGCCCCGAGCA;配列番号14)を作製した。それぞれ1μgのヒト骨髄由来トータルRNA(Ambion社製)、ヒト脳由来トータルRNA(Ambion社製)、ヒト脾臓由来トータルRNA(Ambion社製)、ヒト胸腺由来トータルRNA(Ambion社製)、ヒト小腸由来トータルRNA(Ambion社製)、ヒト肝臓由来トータルRNA(Ambion社製)、ヒト胎盤由来トータルRNA(Ambion社製)、ヒト子宮頸部由来トータルRNA(Ambion社製)、ヒト子宮由来トータルRNA(Ambion社製)、ヒト心臓由来トータルRNA(Ambion社製)、ヒト骨格筋由来トータルRNA(Ambion社製)、ヒト精巣由来トータルRNA(Ambion社製)およびヒト腎臓由来トータルRNA(Ambion社製)を鋳型に用い、それぞれ10μMの上記のプライマーセットおよびスーパースクリプトワンステップRT−PCRシステム(インビトロジェン社製)を用いて添付のプロトコールに従いRT−PCRを行うことによりmRNAを増幅した。RT−PCRの条件は、55℃で30分間保持し逆転写反応を行った後、94℃で20秒間、次いで60℃で30秒間、次いで72℃で1分間の保温を1サイクルとし、これを35サイクル行った。
【0211】
次にRT−PCR産物20ulをアガロースゲル電気泳動に供し、エチジウムブロマイドを用いて染色し、UV照射により特異的に増幅されたシグナルを確認した。ゲルの写真を図1に示す。図1から、Gm1は脳、胸腺、精巣、脾臓、小腸、子宮及び心臓で強く発現していることが分かる。
(実施例3)脳組織における In situ hybridization (本発明蛋白質をコードする核酸の脳組織における詳細な発現分布の検出)
実施例2により得られた本発明蛋白質をコードする核酸の脳組織での発現分布を以下の方法で検討した。
【0212】
マウス脳組織においてIn situ hybridizationを行うために以下に示す手順によってマウスGm1遺伝子の5'末端側領域のcDNAのクローニングを行った。
【0213】
マウス脳由来cDNA(クローンテック社製)20ngを鋳型に用い、10μMのフォワードプライマーprmGm1−1(5’−ATGGGCCTATGCTACAGCCTGCGGCCGCT;配列番号15)、10μMのリバースプライマーprmGm1−2(5’−GCTGCAGGTCCCGCTTCTGCTCGCGCAGCATGCGGT;配列番号16)およびTAKARALATaqポリメラーゼ(TAKARALATaq with GC Buffer、宝酒造社製)を用いてPCRを行うことにより増幅DNAを得た。
【0214】
PCR条件は、95℃で30秒間、次いで60℃で30秒間、次いで72℃で2分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。得られたDNAをアガロースゲル電気泳動後、QIAquick Gel Extractionkit(QIAGEN社製)を用い精製、回収した。この精製、回収されたDNAをインサートDNAとした。
【0215】
次いで、QIAGEN PCR Cloning kit(QlAGEN社製)を用い、それの添付プロトコールに従って、インサートDNA(50ng)をpDriveベクター(10ng)のクローニング部位に挿入することにより、pDrmGm1を作製した。
【0216】
次いで、QIAGEN PCR Cloning kit(QlAGEN社製)を用い、それの添付プロトコールに従って、インサートDNA(50ng)をpDriveベクター(10ng)のクローニング部位に挿入することにより、pDrmGolfを作製した。
In situ hybridization 用プローブの作製)
1μgのpDrmGm1プラスミドを制限酵素HindIIIまたはBamHIで切断することにより直鎖状プラスミドpDrmGm1/HindIIIおよびpDrmGm1/BamHIを得た。lμgのpDrmGm1/HindIII、2μlのDlGRNALabelingMix(ロッシュ、ダイアゴノスティック社製)および1μlのSP6RNAポリメラーゼ(ロシュ、ダイアゴノステイック社製)を混ぜ添付バッファー存在下で37℃で3時間保温した。次いで、1μ1のDNaseI(ロッシュ、ダイアゴノスティック社製)を加え37℃で30分問保温しcRNAを得た。このcRNAをエタノール沈殿し、20μlTEバッファーに懸濁し、これをmGm1センスcRNAとした。
【0217】
同様に1μgのPDrmGm1/BamHI、2μ1のDIGRNALabelingMix(ロシュ、ダイアゴノスティツク製)および1μ1のSP6RNAポリメラーゼ(ロシュ、ダイアゴノスティック製)を混ぜ、添付バッファーの存在下で37℃で3時間保温した。次いで、1μ1のDNaseI(ロッシュ、ダイアゴノスティック製)を加え37℃で30分間保温しcRNAを得た。このcRNAをエタノール沈殿し、20μlTEバッファーに懸濁し、これをmGm1アンチセンスcRNAとした。
In situ hybridization よる検出)
脳におけるGm1のmRNAの発現分布の詳細な解析を、ラベルされたcRNAを用いてIn situハイブリダイゼーション法[サイモンズら(Simmons et al.)、J.Histotechnol. 12:169-181(1989)]により行う。すなわち、公知の方法でパラホルムアルデヒド及びグルタルアルデヒドを用いて固定したマウス脳から脳切片作成装置(sliding microtome)を用いて厚さ50μmの脳切片を作成し、スライド・ガラス上に吸着させ乾燥させる。脳切片を脱パラフィン後、ターゲット溶液(ダコ社製)中でオートクレーブ処理し(105℃、10分)、脱水、風乾する。プローブ(100ng cRNA)とのハイブリダイゼーションを、ハイブリダイゼーション緩衝液(40%ホルムアミド、4×SSC、1mMEDTA、250μg/ml酵母tRNA、1×Denhardt’s溶液、10%デキストランサルフェート)中で、60℃で一晩行う。その後、脳切片を65℃の2×SSC、0.1%SDSの溶液で洗浄し、RNaseA処理(10μg/ml、37℃、30分)し、2×SSC、50%ホルムアミドの溶液で洗浄し、脱水し、風乾後、DlG標識抗体検出キット(ダコ製)でmRNAを検出する。
(実施例4)ヒトGm1蛋白質の大腸菌中での発現プラスミドの構築
ヒトGm1蛋白質を大腸菌中で大量に発現させるために、まずヒトGm1蛋白質をグルタチオンSトランスフェラーゼとの融合蛋白質の形で発現させ、次にヒトGm1蛋白質の部分のみを切り出す。
【0218】
すなわち、実施例2により得たヒトcDNA断片を含むプラスミドpCR−Gm1をEcoRVおよびSpeIで二重消化した後、Blunting Kit(宝酒造社製)を用いて末端を平滑化する。このDNAをアガロースゲル電気泳動後、QIAquick GelExtraction Kit(QIAGEN社製)を用い精製し、回収する。この精製、回収されたDNAをインサートDNAとする。pGEX−5X−1をEcoRVで切断後、BAP処理したものをベクターとして用い、当該ベクター50ngとインサートDNA10ngとをT4ライゲースを用いて連結し、発現プラスミドpGEX−Gm1を作製する。
(実施例5)グルタチオンSトランスフェラーゼ−ヒト融合蛋白質を発現している大腸菌からの組換え体ヒトGm1蛋白質の精製
実施例4により得たグルタチオンSトランスフェラーゼ−ヒト融合蛋白発現プラスミドpGEX−Gm1を用いて大腸菌(Escherichia coli)JM109株をカルシウム法で形質転換する。この形質転換体を50μg/mlのアンピシリン(シグマ社製)を含むLB培地中で37℃で培養し、O.D.600が約0.6となった時点で、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)1mM(最終濃度)を加えてタンパク質の発現を誘導し、さらに6時間培養を続けた後、菌体を集菌する。
【0219】
この菌体を超音波で破砕した後、10,000gで5分間超遠心を行い、可溶性画分を得る。この可溶性画分を抗グルタチオンSトランスフェラーゼモノクローナル抗体カラム(アマシャムバイオサイエンス社)にアプライし、グルタチオンSトランスフェラーゼ−ヒト融合蛋白質を精製する。次に、精製したグルタチオンSトランスフェラーゼ−ヒト融合蛋白質を活性型血液凝固因子X(ニューイングランドバイオラボ製)で処理して、ヒトGm1蛋白質を切り出す。
【0220】
切り出されたヒトGm1蛋白質を、順次、陽イオン交換カラム(S-sepharose FF;ファルマシア)、疎水性カラム(Phenyl-superose;ファルマシア社)、ハイドロキシアパタイトカラム(三井東圧化学)、陽イオン交換カラム(MONOS;ファルマシア社)を用いて、SDS-PAGE/クマシーブリリアントブルー染色でほぼ単一になるまで精製する。
(実施例6)ヒトGm1蛋白質の部分ペプチド作製およびそのペプチドを用いた抗体ヒトGm1ペプチド抗体の作製
ヒトGm1蛋白質に特異的な抗体を以下に示す手順で作製した。配列番号1に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号7〜20の14アミノ酸よりなるペプチドを合成した。
【0221】
このペプチドにキャリアー蛋白質KMLを結合し免疫源として用いた。ここで得られたKML融合ペプチドptGm1をニュージーランドホワイトラビットに免疫して、抗ヒトGm1ペプチド血清を作製した。免疫は計5回行った。このウサギから抗血清を採取し、抗血清をプロテインGカラム(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いて精製し、抗原特異的な抗ヒトGm1蛋白質抗体を精製した。
【0222】
次いで、精製された抗ヒトGm1蛋白質抗体について、2種類のウェスタンブロット法を用いて、そのGm1特異的認識能力を確認した。その結果を図8及び図9に示した。
【0223】
図8から明らかなように、精製された抗ヒトGm1蛋白質抗体が有する力価として、5000倍希釈時において、バックグランドと比較して20平方mm(バンド面積)当たり約1.6×106カウントの差異を生じるシグナル強度(LAS(Fuji film)使用)が認められた。即ち、当該抗体は、少なくとも5000倍希釈時において、バックグランドと比較して充分な優位さが確保できるような抗原認識能力を有することが判明した。
【0224】
また図9から明らかなように、Gm1を発現しているマウス脳では強いシグナルが確認された。一方、Golfを発現しているGH3細胞では全くシグナルが確認されなかった。これら結果は、当該抗ヒトGm1蛋白質抗体はGm1のみを特異的に認識する抗体であることを示している。尚、Gm1を発現しているCHO細胞はポジティブコントロールとして使用された。
(実施例7)ヒトGm1蛋白質の動物細胞中での発現ベクターの構築
ヒトGm1蛋白質を動物細胞中で一過性で発現させるための発現ベクターを構築する。すなわち、先ず、実施例2により得たヒトcDNA断片を含むpCR−Gm1を制限酵素XbaI及びKpnIで二重消化し、得られたDNA断片をpcDNA3.1のXbaI部位及びKpnI部位に導入し、動物細胞中の一過性発現ベクターpcDNA−Gm1を得る。
(実施例8) ヒトドーパミン D1 レセプターおよびヒトドーパミン D2 レセプター蛋白質の動物細胞中での発現ベクターの構築
ヒトドーパミンD1レセプターおよびヒトドーパミンD2レセプター蛋白質を動物細胞中で一過性で発現させるための発現ベクターを以下の手順で構築した。
【0225】
ヒトドーパミンD1レセプターをコードするDNAを増幅するために、ヒト脳由来cDNAライブラリー(宝酒造製)のプラスミド(pAP3neo)20ngを鋳型に用い10μMのフォワードプライマーprDopaminD1−5’(5’−agctcggatccATGAGGACTCTGAACACCTCTGCCA;(配列番号17)、10μMのリバースプライマーprDopaminD1−3’(5’−gtgcagaattcTCATCTGCGAGTTCAGGTTGGGT;配列番号18)およびTAKARA LA Taqポリメラーゼ(TAKARA LA Taq with GC Buffer,宝酒造製)を用いてPCRを行った。
【0226】
ヒトドーパミンD2レセプターをコードするDNAを増幅するために、ヒト脳由来cDNAライブラリー(宝酒造製)のプラスミド(pAP3neo)20ngを鋳型に用い10μMのフォワードプライマーprDopaminD2−5’(5’−agctcggatccATGGATCCACTGAATCTGTCCTGGTATGA;配列番号19)、10μMのリバースプライマーprDopaminD2−3’(5’−gtgcagaattcTCAGCAGTGAAGGATCTTCTGGAAGGCCTT;配列番号20)およびTAKARA LA Taqポリメラーゼ(TAKARA LA Taq with GC Buffer、宝酒造製)を用いてPCRを行った。
【0227】
PCR条件は、95℃で30秒間次いで60℃で30秒間次いで72℃で2分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。得られたDNAはアガロースゲル電気泳動後、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN製)を用い精製、回収された。この精製、回収されたDNAをインサートDNAとした。
【0228】
それぞれのインサートDNAをBamHIおよびEcoRIで二重消化しpcDNA3.1(+)のBamHIおよびEcoRI部位に導入し、動物細胞発現ベクターpcDNA−D1RおよびpcDNA−D2Rを得た。
(実施例9)ヒトGm1蛋白質をコードするバキュロウィルスベクターの構築
先ず、ヒトGm1蛋白質を昆虫細胞中で過剰発現させるための移行ベクターを構築した。実施例2で得たヒトcDNA断片を含むpCR−Gm1を制限酵素XbaI、SpeIで二重消化し、得られたDNA断片をpAcMP2(ファーミンゲン社)のXbaI部位に導入し、移行ベクターpAcMP−Gm1を得た。次いで、この移行ベクター5μgとバキュロウィルスDNA、BaculoGold DNA(ファーミンゲン社)1μgを2×106細胞のSf21細胞にコトランスフェクションし、27℃で5日間培養後、培養上清を回収し、ウィルス液とした。
(実施例10)ヒト G β蛋白質およびヒト G γ蛋白質をコードするバキュロウイルスベクターの構築
ヒトGβ蛋白質およびヒトGγ蛋白質を昆虫細胞で過剰発現させるための移行ベクターを以下の手順で構築した。
【0229】
ヒトGβ蛋白質をコードするDNAを増幅するために、ヒト脳由来cDNAライブラリー(宝酒造製)のプラスミド(pAP3neo)20ngを鋳型に用い10μMのフォワードプライマーprGb1−5’(5’−ATGAGTGAGCTTGACCAGTTACGGCA;配列番号21)、10μMのリバースプライマーprGb1−3’(5’−TTAGTTCCAGATCTTGAGGAAGCTAT;配列番号22)およびTAKARA LA Taqポリメラーゼ(TAKARA LA Taq with GC Buffer、宝酒造製)を用いてPCRを行った。PCR条件は、95℃で30秒間次いで60℃で30秒間次いで72℃で2分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。得られたDNAはアガロースゲル電気泳動後、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN製)を用い精製、回収された。この精製、回収されたDNAをインサートDNAとした。次にTOPO TA Cloning Kit(Invitorogen製)を用い添付プロトコールにしたがって、それぞれの得られたインサートDNA(50ng)pCR2.1−TOPOベクター(10ng)のクローニンク部位に挿入することにより、pCR−Gβを作製した。
【0230】
次にpCR−Gβを制限酵素BamHIおよびNotIで二重消化し、得られたDNA断片をpAcMP3(ファーミンゲン製)のBamHIおよびNotI部位に導入し、移行ベクター動物細胞発現ベクターpAcMP−Gβを得た。
【0231】
つぎにこの移行ベクター5μgとバキュロウイルスDNA,BaculoGold DNA(ファーミンゲン製)1μgを2×106細胞のSf21細胞にコトランスフェクションし、27℃で5日間培養後、培養上清を回収し、ウイルスを得た。
(実施例11)ヒト G γ蛋白質をコードするバキュロウイルスベクターの構築
ヒトGγ蛋白質を昆虫細胞で過剰発現させるための移行ベクターを以下の手順で構築した。
【0232】
ヒトGγ蛋白質をコードするDNAを増幅するために、ヒト脳由来cDNAライブラリー(宝酒造製)のプラスミド(pAP3neo)20ngを鋳型に用い10μMのフォワードプライマーprGg3−5’(5’−ATGAAAGGTGAGACCCCGGTGAACA;配列番号23)、10μMのリバースプライマーprGg3−3’(5’−TCAGAGGAGAGCACAGAAGAACTT;配列番号24)およびTAKARA LA Taqポリメラーゼ(TAKARA LA Taq with GC Buffer、宝酒造製)を用いてPCRを行った。PCR条件は、95℃で30秒間次いで60℃で30秒間次いで72℃で2分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。得られたDNAはアガロースゲル電気泳動後、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN製)を用い精製、回収された。この精製、回収されたDNAをインサートDNAとした。次にTOPO TA Cloning Kit(Invitorogen製)を用い添付プロトコールにしたがって、それぞれの得られたインサートDNA(50ng)をpCR2.1−TOPOベクター(10ng)のクローニンク部位に挿入することにより、pCR−Gγを作製した。
【0233】
次にpCR−Gγを制限酵素XbaIおよびPstIで二重消化し、得られたDNA断片をpAcMP3(ファーミンゲン製)のXbaIおよびPstI部位に導入し、移行ベクターpAcMP−Gγを得た。
【0234】
つぎにこの移行ベクター5μgとベキュロウイルスDNA,BaculoGold DNA(ファーミンゲン製)1μgを2×106細胞のSf21細胞にコトランスフェクションし、27℃で5日間培養後、培養上清を回収し、ウイルス液を得た。
(実施例12)ヒトドーパミン D1 レセプターおよびヒトドーパミン D2 レセプターをコードするバキュロウイルスペクターの構築
ヒトドーパミンD1レセプター蛋白質およびヒトドーパミンD2レセプター蛋白質を昆虫細胞で過剰発現させるための移行ベクターを以下の手順で構築した。
【0235】
実施例8により得たヒトドーパミンD1レセプター発現ベクターpcDNA−D1RおよびヒトドーパミンD2レセプター発現ベクターpcDNA−D2RをBamHIおよびEcoRIで二重消化し、pAcMP3のBamHIおよびEcoRI部位に導入し、移行ベクターpAcMP−D1RおよびpAcMP−D2Rを得た。
【0236】
つぎにそれぞれにつき移行ベクター5μgとバキュロウイルスDNA,BaculoGold DNA(ファーミンゲン製)1μgを2×106細胞のSf21細胞にコトランスフェクションし、27℃で5日間培養後、培養上清を回収し、ウイルス液を得た。
(実施例13)バキュロウイルスベクターによるヒト Gm1 蛋白質の大量発現および精製
実施例9で得たヒトGm1蛋白質バキュロウイルスを含むウイルス液を2×107細胞のSf21細胞にMOI5で感染させ27℃で培養する。感染5日後、細胞を回収し、HE/PIバッファー(20mM HEPSE、2mM EDTAに1XProtenase阻害剤カクテル(ナカライテスク)を加えたもの)に懸濁した。懸濁した細胞を26G針を15回通過させることにより細胞膜を破壊した。この細胞を4℃、110gで5分間遠心後、上清を4℃下で20000gで30分間遠心し、ヒトGm1蛋白質を含む細胞膜画分を回収した。
(実施例14)バキュロウイルスベクターによるヒト G β蛋白質およびヒト G γ蛋白質の大量発現および精製
実施例9で得たヒトGβ蛋白質バキュロウイルスおよび実施例10で得たヒトGγ蛋白質バキュロウイルスを含むウイルス液を2×107細胞のSf21細胞にMOI5で感染させ27℃で培養する。感染5日後、細胞を回収し、HE/PIバッファー(20mM HEPSE、2mM EDTAに1XProtenase阻害剤カクテル(ナカライテスク)を加えたもの)に懸濁した。懸濁した細胞を26G針を15回通過させることにより細胞膜を破壊した。この細胞を4℃、110gで5分間遠心後、上清を4℃、20000gで30分間遠心し、ヒトGβ蛋白質およびヒトGγ蛋白質を含む細胞膜画分を回収した。
(実施例15)バキュロウイルスベクターによるヒトドーパミン D1 レセプター蛋白質およびヒトドーパミン D2 レセプター G γ蛋白質の大量発現および精製
実施例12で得たヒトドーパミンD1レセプター蛋白質発現バキュロウイルスおよびヒトドーパミンD2レセプター蛋白質発現バキュロウイルスのいずれかを含むウイルス液を2×107細胞のSf21細胞にMOI5で感染させ27℃で培養する。感染5日後、細胞を回収し、HE/PIバッファー(20mM HEPSE、2mM EDTAに1XProtenase阻害剤カクテル(ナカライテスク)を加えたもの)に懸濁した。懸濁した細胞を26G針を15回通過させることにより細胞膜を破壊した。この細胞を4℃、110gで5分間遠心後、上清を4℃、20000gで30分間遠心し、ヒトドーパミンD1レセプター蛋白質又はヒトドーパミンD2レセプター蛋白質を含む細胞膜画分を回収した。
(実施例16)バキュロウイルスベクター発現ヒト Gm1 蛋白質を用いた GTP 結合アッセイ
実施例13で精製されたGm1蛋白質を含む膜画分を用いGTP結合アッセイを行う。
【0237】
実施例13で作製した2μgのGm1蛋白質を含む膜画分および実施例14で作製した2μgのGβ蛋白質とGγ蛋白質を含む細胞膜画分および実施例15で作製した2μgのドーパミンD1レセプター蛋白質を含む膜画分を55μlの結合バッファー(59mM Tris,4.8mM MgC12,2mMEDTA,100mM NaCl,1μM GDP)に懸濁する。1μMのドーパミンを加え、30℃で10分間保温する。その後、200pMの〔35S〕GTPγSを加え30℃で30分間保温する。
【0238】
次いで、洗浄用緩衝液(氷冷した50mM Tris,5mM MgC12,150mM NaCl,0.1%BSA,0.05%CHAPS(pH7.4))を1.5ml加えて、ガラス繊維濾紙GF/Fを用いて濾過する。続いてこの濾紙を1mlのTris(pH7.4)で3回洗浄し、65℃で30分間保温した後、液体シンチレーションカウンターで濾紙上に付着した膜画分に結合した〔35S〕GTPγSの放射性活性を測定する。
(実施例17) cAMP 量の変動を指標としたドーパミン D1 レセプターアンタゴニストのスクリーニング
CHO細胞の2×105個に、実施例8により得たドーパミンD1レセプター発現ベクター1μg及び実施例7により得たGm1発現ベクター(pcDNA‐Gm1;3μg)をリポフェクション法でトランスフェクションして試験細胞を調製した。
【0239】
次いで、この細胞を96穴プレートの各ウェル内に3×104cells/well播種し、約24時間培養した。次いで、培養液を除き、新たに1mM IBMXを含むOPTI-MEN(インビトロジェン社) 80μlを細胞に加えて37℃で10分間保温した。
【0240】
次いで、GPCRリガンドとして10μMのドーパミン及び10μMの被験物質(ブタクラモル(Butaclamol)、クロルプロマジン(chlorpromazine)、フルフェナジン(fluphenazine)、ハロペリドール(haloperidol)、SCH-23390)を添加し、37℃で30分間反応させた。
【0241】
次いで、反応バッファーを除きcAMP量をHitHunter ECF cyclic AMP化学発光アッセイキット(アプライドバイオシステムズ)を用いて測定した。対照として、同濃度のGPCRリガンドのみ接触させた試験細胞、及び、何も接触させない試験細胞について、同様にしてcAMP量を測定した。
【0242】
何も接触させない場合のcAMP量を0%とし、リガンドのみ接触させた場合のcAMP量を100%として、リガンドと被験物質とを接触させた場合のcAMP量のパーセンテージが85%以下になる物質をシグナル伝達抑制剤(アンタゴニスト)として選択した(図2)。
(実施例18) cAMP 量の変動を指標としたドーパミン D1 レセプターアゴニストのスクリーニング
CHO細胞の2×105個に、実施例8により得たドーパミンD1レセプター発現ベクター(1μg)及び実施例7により得たGm1発現ベクター(pcDNA‐Gm1;3μg)をリポフェクション法でトランスフェクションして試験細胞を調製した。
【0243】
次いで、この細胞を96穴プレートの各ウェル内に3×104cells/well播種し、約24時間培養した。次いで、培養液を除き、新たに1mM IBMXを含むOPTI-MEN(インビトロジェン社) 80μlを細胞に加えて37℃で10分間保温した。
【0244】
次いで、GPCRリガンドとして10μMのドーパミン又は、10μMの被験物質(アポモルフィン、CY208-248、SKF-38393、SKF-81297)を添加し37℃で30分間反応させた。
【0245】
次いで、反応バッファーを除きcAMP量をHitHunter ECF cyclic AMP化学発光アッセイキット(アプライドバイオシステムズ)を用いて測定した。対照として、何も接触させない試験細胞について、同様にしてcAMP量を測定した。
【0246】
試験細胞に何も接触させない場合のcAMP量を100%とし、試験細胞に各被験物質を接触させた場合のcAMP量のパーセンテージが125%以上になる物質をシグナル伝達活性化剤(アゴニスト)として選択した(図3)。
(実施例19) cAMP 量の変動を指標としたスクリーニング
CHO細胞の1×106個に、実施例8により得たドーパミンD1レセプター発現ベクター(100ng)、CRE‐レポータープラスミド(pCRE‐1uc;20ng;Stratagene社製)、実施例7により得たGm1発現ベクター(pcDNA‐Gm1;30ng)をリポフェクション法でトランスフェクションして試験細胞を調製する。
【0247】
次いで、この細胞を24穴プレートの各ウェル内に5×103cells/well播種し、約48時間培養する。次いで、細胞を0.2mMの緩衝液(3−イソブチル−メチルキサンチン、0.05% BSA、20mM HEPESを含むハンクスバッファー(pH7.4);以下、「反応用バッファー」という)で洗浄する。次いで、反応用バッファーを細胞に加えて37℃で30分間保温する。
【0248】
次いで、反応用バッファーを除き、新たに0.25mlの反応用バッファーを細胞に加えた後、GPCRリガンドとして1nMのドーパミン及び0.1nM〜10nMの被験物質を添加し、37℃で30分間保温する。さらに、細胞を細胞溶解液(ピッカジーンルシフェラーゼキット、東洋インキ製造社製)で溶解し、発光基質(ピッカジーンルシフェラーゼキット、東洋インキ製造社製)を添加して、ルミノメーターで蛍光強度を測定する。対照として、同濃度のGPCRリガンドのみ接触させた試験細胞、及び、何も接触させない試験細胞について、同様にして蛍光強度を測定する。
【0249】
何も接触させない場合の蛍光強度を0%とし、リガンドのみ接触させた場合の蛍光強度を100%として、リガンドと被験物質とを接触させた場合の蛍光強度のパーセンテージが50%以下になる物質又は150%以上になる物質をシグナル伝達調節剤として選択する。
(実施例20)ヒトアデノシン A2a レセプター蛋白質の動物細胞中での発現ベクターの構築
ヒトアデノシンA2aレセプター蛋白質を動物細胞中で一過性で発現させるための発現ベクターを以下の手順で構築した。
【0250】
ヒトアデノシンA2aレセプターをコードするDNAを増幅するために、ヒト脳由来cDNAライブラリー(宝酒造製)のプラスミド(pAP3neo)20ngを鋳型に用い10μMのフォワードプライマーprAdenosineA2A-5'(5’−agctcggatccATGCCCATCATGGGCTCCTCGGTGTA; 配列番号33)、10μMのリバースプライマーprAdenosineA2A-3'(5’−gtgcagaattcTCAGGACACTCCTGCTCCATCCT;配列番号34)およびTAKARA LA Taqポリメラーゼ(TAKARA LA Taq with GC Buffer,宝酒造製)を用いてPCRを行った。
【0251】
PCR条件は、95℃で30秒間次いで60℃で30秒間次いで72℃で2分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。得られたDNAはアガロースゲル電気泳動後、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN製)を用い精製、回収された。この精製、回収されたDNAをインサートDNAとした。
【0252】
それぞれのインサートDNAをBamHIおよびEcoRIで二重消化しpcDNA3.1(+)のBamHIおよびEcoRI部位に導入し、動物細胞発現ベクターpcDNA−A2aを得た。
(実施例21) cAMP 量の変動を指標としたアデノシン A2a レセプターアンタゴニストのスクリーニング
CHO細胞の2×105個に、実施例20により得たアデノシンA2aレセプター発現ベクター(1μg)及び実施例7により得たGm1発現ベクター(pcDNA‐Gm1;3μg)をリポフェクション法でトランスフェクションして試験細胞を調製した。
【0253】
次いで、この細胞を96穴プレートの各ウェル内に3×104cells/well播種し、約24時間培養した。次いで、培養液を除き、新たに1mM IBMXを含むOPTI-MEN(インビトロジェン社) 80μlを細胞に加えて37℃で10分間保温した。
【0254】
次いで、GPCRリガンドとして10μMのアデノシン及び10μMの被験物質(DMPX)を添加し、37℃で30分間反応させた。
【0255】
次いで、反応バッファーを除きcAMP量をHitHunter ECF cyclic AMP化学発光アッセイキット(アプライドバイオシステムズ)を用いて測定した。対照として、同濃度のGPCRリガンドのみ接触させた試験細胞、及び、何も接触させない試験細胞について、同様にしてcAMP量を測定した。
【0256】
何も接触させない場合のcAMP量を0%とし、試験細胞にリガンドのみ接触させた場合のcAMP量を100%として、試験細胞にリガンドと被験物質とを接触させた場合のcAMP量のパーセンテージが85%以下になる物質をシグナル伝達抑制剤(アンタゴニスト)として選択した(図4)。
(実施例22) cAMP 量の変動を指標としたアデノシン A2a レセプターアゴニストのスクリーニング
CHO細胞の2×105個に、実施例20により得たアデノシンA2aレセプター発現ベクター(1μg)及び実施例7により得たGm1発現ベクター(pcDNA‐Gm1;3μg)をリポフェクション法でトランスフェクションして試験細胞を調製した。
【0257】
次いで、この細胞を96穴プレートの各ウェル内に3×104cells/well播種し、約24時間培養した。次いで、培養液を除き、新たに1mM IBMXを含むOPTI-MEN(インビトロジェン社) 80μlを細胞に加えて37℃で10分間保温した。
【0258】
次いで、GPCRリガンドとして10μMのアデノシン又は、10μMの被験物質(CGS‐21680)を添加し37℃で30分間反応させた。
【0259】
次いで、反応バッファーを除きcAMP量をHitHunter ECF cyclic AMP化学発光アッセイキット(アプライドバイオシステムズ)を用いて測定した。対照として、何も接触させない試験細胞について、同様にしてcAMP量を測定した。
【0260】
何も接触させない場合のcAMP量を100%とし被験物質とを接触させた場合のcAMP量のパーセンテージが125%以上になる物質をシグナル伝達活性化剤(アゴニスト)として選択した(図5)。
(実施例23)GTP結合アッセイによるスクリーニング
実施例13で作製した2μgのGm1蛋白質を含む膜画分および実施例14で作製した2μgのGβ蛋白質とGγ蛋白質を含む細胞膜画分および実施例15で作製した2μgのドーパミンD1レセプター蛋白質を含む膜画分を55μlの結合バッファー(59mM Tris,4.8mM MgC12,2mMEDTA,100mM NaCl,1μM GDP)に懸濁する。1μMのドーパミンおよび0.1nM−10nMの被験物質(例えば1nMのSCH−23390)を添加し、30℃で10分間保温する。その後、200pMの〔35S〕GTPγSを加え30℃で30分間保温する。
【0261】
次いで、洗浄用緩衝液(氷冷した50mM Tris,5mM MgC12,150mMNaCl,0.1%BSA,0.05%CHAPS(pH7.4))を1.5ml加えて、ガラス繊維濾紙GF/Fを用いて濾過する。続いてこの濾紙を1mlのTris(pH7.4)で3回洗浄し、65℃で30分間保温した後、液体シンチレーションカウンターで濾紙上に付着した膜画分に結合した〔35S〕GTPγSの放射性活性を測定する。
【0262】
GPCRのリガンドのみを加えた場合の放射活性を100%、リガンドおよび被験物質のいずれもを加えなかった場合の放射活性を0%とし、リガンドと被験物質との双方を加えた場合の放射活性のパーセンテージを算出し、50%以下になるような被験物質または、150%以上になるような被験物質をシグナル伝達調節物質として選択する。
(実施例24) cAMP 量の変動を指標とした Gm1 を介するシグナル伝達経路の活性化測定
CHO細胞の2×105個に、実施例8により得たドーパミンD1レセプター発現ベクター(1μg)及び実施例7により得たGm1発現ベクター(pcDNA‐Gm1;3μg)をリポフェクション法でトランスフェクションして試験細胞を調製した。
【0263】
次いで、この細胞を96穴プレートの各ウェル内に3×104cells/well播種し、約24時間培養した。次いで、培養液を除き、新たに1mM IBMXを含むOPTI-MEN(インビトロジェン社) 80μlを細胞に加えて37℃で10分間保温した。
【0264】
次いで、GPCRリガンドとして10μMのドーパミンを添加し37℃で30分間反応させた。
【0265】
次いで、反応バッファーを除きcAMP量をHitHunter ECF cyclic AMP化学発光アッセイキット(アプライドバイオシステムズ)を用いて測定した。対照として、何も接触させない試験細胞について、同様にしてcAMP量を測定した。
【0266】
何も接触させない細胞のcAMP量を0%とし、ドーパミンD1レセプターのみを発現させた対照細胞のcAMP量を100%として、Gm1およびドーパミンD1レセプターを発現させた試験細胞のcAMP量を測定した結果、127%であった。このことより、Gm1を介するシグナル伝達系が存在することが証明された(図6)。
(実施例25) cAMP 量の変動を指標とした Gm1 を介するシグナル伝達経路の活性化測定
CHO細胞の2×105個に、実施例8により得たアデノシンA2aレセプター発現ベクター(1μg)及び実施例7により得たGm1発現ベクター(pcDNA‐Gm1;3μg)をリポフェクション法でトランスフェクションして試験細胞を調製した。
【0267】
次いで、この細胞を96穴プレートの各ウェル内に3×104cells/well播種し、約24時間培養した。次いで、培養液を除き、新たに1mM IBMXを含むOPTI-MEN(インビトロジェン社) 80ulを細胞に加えて37℃で10分間保温した。
【0268】
次いで、GPCRリガンドとして10μMのアデノシンを添加し37℃で30分間反応させた。
【0269】
次いで、反応バッファーを除きcAMP量をHitHunter ECF cyclic AMP化学発光アッセイキット(アプライドバイオシステムズ)を用いて測定した。対照として、何も接触させない試験細胞について、同様にしてcAMP量を測定した。
【0270】
何も接触させない細胞のcAMP量を0%とし、アデノシンA2aレセプターのみを発現させた細胞のcAMP量を100%として、Gm1およびアデノシンA2aレセプターを発現させた場合のcAMP量を測定した結果、134%であった。このことより、Gm1を介するシグナル伝達系が存在することが証明された(図7)。
(実施例26)マウス Gm1 蛋白質をコードするc DNA のクローニング
マウスGm1の全長をコードするDNAを有するプラスミドであるpDr-mGm1を以下のようにして作製した。
【0271】
マウス脳由来cDNAライブラリー(Clontech社製)20ngを鋳型に用い、10μMのフォワードプライマー(5'-ATGGGCCTATGCTACAGCCTGCGGCCGCT;配列番号29)、10μMのリバースプライマーprmGm1STOP(5'-TCACAAGAGTTCGTACTGCTTGAGATGCATTCT;配列番号30)およびTAKARA LA Taqポリメラーゼ(TAKARA LA Taq with GC Buffer, 宝酒造社製)を用いてPCRを行うことにより増幅DNAを得た。
【0272】
PCR条件は、95℃で30秒間、次いで60℃で30秒間、次いで72℃で2分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。得られたDNAをアガロース電気泳動後、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、回収した。この精製、回収されたDNAをインサートDNAとした。
【0273】
次にQIAGEN PCR Cloning Kit(QIAGEN社製)を用い、その添付プロトコールにしたがって、インサートDNA(50ng)をpDriveベクター(25ng)のクローニング部位に挿入することにより、pDr-mGm1を作製した。
【0274】
このようにして得られたDNAについてABI377DNAシークエンサーを用いて塩基配列を決定した結果、配列番号27に記載の塩基配列の塩基番号1〜1347を含み、配列番号25に記載のアミノ酸配列の全長をコードしていた。
(実施例27)ラット Gm1 蛋白質をコードするc DNA のクローニング
ラットGm1の全長をコードするDNAを有するプラスミドであるpDr-rGm1を以下のようにして作製した。
【0275】
ラット脳由来cDNAライブラリー(Clontech社製)20ngを鋳型に用い、10μMのフォワードプライマーprrGm1ATG(5'-ATGGGCCTGTGCTACAGCCTACGGCCGCTG;配列番号31)、10μMのリバースプライマーprrGm1'STOP(5'-TCACAAGAGTTCGTACTGCTTGAGGTGCATTCT;配列番号32)およびTAKARA LA Taqポリメラーゼ(TAKARA LA Taq with GC Buffer, 宝酒造社製)を用いてPCRを行うことにより増幅DNAを得た。
【0276】
PCR条件は、95℃で30秒間、次いで60℃で30秒間、次いで72℃で2分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。得られたDNAをアガロース電気泳動後、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、回収した。この精製、回収されたDNAをインサートDNAとした。
【0277】
次にQIAGEN PCR Cloning Kit(QIAGEN社製)を用い、その添付プロトコールにしたがって、インサートDNA(50ng)をpDriveベクター(25ng)のクローニング部位に挿入することにより、pDr-rGm1を作製した。
【0278】
このようにして得られたDNAについてABI377DNAシークエンサーを用いて塩基配列を決定した結果、配列番号28に記載の塩基配列の塩基番号1〜1353を含み、配列番号26に記載のアミノ酸配列の全長をコードしていた。
【0279】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタンパク質のヒト組織における発現分布を示す図面代用写真である。
【図2】種々の被験物質のドーパミンD1レセプターアンタゴニストとしての効果を示す図である(実施例17)。
【図3】種々の被験物質のドーパミンD1レセプターアゴニストとしての効果を示す図である(実施例18)。
【図4】DMPXのアデノシンA2aレセプターアンタゴニストとしての効果を示す図である(実施例21)。
【図5】CGS-21680のアデノシンA2aレセプターアゴニストとしての効果を示す図である(実施例22)。
【図6】ドーパミンによりドーパミンD1レセプター及びGm1を介したシグナル伝達が行われたことを示す図である(実施例24)。
【図7】アデノシンによりアデノシンA2aレセプター及びGm1を介したシグナル伝達が行われたことを示す図である(実施例25)。
【図8】精製された抗ヒトGm1蛋白質抗体が有するGm1特異的認識能力のウェスタンブロット法を用いた確認試験(その1)の結果を示す図である(実施例6)。
【図9】精製された抗ヒトGm1蛋白質抗体が有するGm1特異的認識能力のウェスタンブロット法を用いた確認試験(その2)の結果を示す図である(実施例6)。

Claims (29)

  1. 以下の(1)又は(2)のタンパク質。
    (1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
    (2) 配列番号1に記載のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、配列番号1に記載のアミノ酸配列におけるアミノ酸番号119−133、287−292、353−359及び428−435で示されるアミノ酸配列を保持し、かつ、G−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達に関与し、ドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターからアデニル酸シクラーゼへのシグナル伝達を媒介する能力を有するタンパク質。
  2. 配列番号25に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
  3. 配列番号26に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
  4. 請求項1からのいずれかに記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  5. 列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
  6. 配列番号27に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
  7. 配列番号28に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
  8. 請求項からのいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む組み換えベクター。
  9. 請求項に記載の組み換えベクターを保持する形質転換体。
  10. 請求項記載の形質転換体を培養し、培養された形質転換体から請求項1からのいずれかに記載のタンパク質を回収する請求項1からのいずれかに記載のタンパク質の製造方法。
  11. 請求項1からのいずれかに記載のタンパク質を有効成分とする、ドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達調節剤。
  12. 請求項からのいずれかに記載のポリヌクレオチドを有効成分とする、ドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達調節剤。
  13. (a) 被験物質と、請求項に記載の組み換えベクター及びドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体タンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する試験細胞とを接触させる工程と、
    (b) 試験細胞におけるG−タンパク質のエフェクターの活性又はそれと相関する指標値を測定する工程と、
    (c) このエフェクター活性又はそれと相関する指標値を、被験物質を接触させていない試験細胞の当該エフェクター活性又はそれと相関する指標値と比較して、試験細胞におけるエフェクター活性又はそれと相関する指標値を変動させる被験物質を選択する工程とを含むドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体及び請求項1からのいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
  14. (a) 被験物質と、請求項に記載の組み換えベクター及びドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体タンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する試験細胞とを接触させる工程と、
    (b) 試験細胞のG−タンパク質のエフェクターの活性又はそれと相関する指標値を測定する工程と、
    (c) このエフェクター活性を、請求項に記載の組み換えベクターを保持せずドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体タンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する対照細胞に当該被験物質を接触させた場合の当該エフェクター活性又はそれと相関する指標値と比較して、試験細胞と対照細胞との間でエフェクター活性又はそれと相関する指標値に差が生じる被験物質を選択する工程と
    を含むドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体及び請求項1からのいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
  15. (a) 被験物質と、請求項に記載の組み換えベクター及びドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体タンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する試験細胞とを接触させる工程と、
    (b) 試験細胞のG−タンパク質のエフェクターの活性又はそれと相関する指標値を測定する工程と、
    (c) このエフェクター活性又はそれと相関する指標値を、ドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体タンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターを保持せず請求項に記載の組み換えベクターを保持する対照細胞に当該被験物質を接触させた場合の当該エフェクター活性又はそれと相関する指標値と比較して、試験細胞と対照細胞との間でエフェクター活性又はそれと相関する指標値に差が生じる被験物質を選択する工程と
    を含むドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体及び請求項1からのいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
  16. (a) 被験物質及びドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体のリガンドと、請求項に記載の組み換えベクター及びドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体タンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する試験細胞とを接触させる工程と、
    (b) 試験細胞におけるG−タンパク質のエフェクター活性又はそれと相関する指標値を測定する工程と、
    (c) このエフェクター活性又はそれと相関する指標値を、被験物質を接触させず前記リガンドを接触させた試験細胞の当該エフェクター活性又はそれと相関する指標値と比較して、試験細胞におけるエフェクター活性又はそれと相関する指標値を変動させる被験物質を選択する工程と
    を含むドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体及び請求項1からのいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
  17. (a) 被験物質及びドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体のリガンドと、請求項に記載の組み換えベクター及びドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体タンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する試験細胞とを接触させる工程と、
    (b) 試験細胞におけるG−タンパク質のエフェクター活性又はそれと相関する指標値を測定する工程と、
    (c) このエフェクター活性を、被験物質を接触させずに前記リガンドを接触させた試験細胞の当該エフェクター活性と比較して、試験細胞におけるエフェクター活性の変動を見る工程と、
    (d) このエフェクター活性又はそれと相関する指標値の変動率を、ドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体タンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターを保持せず請求項に記載の組み換えベクターを保持する対照細胞に当該被験物質及び当該リガンドを接触させた場合の当該エフェクター活性又はそれと相関する指標値の変動率と比較して、試験細胞と対照細胞との間でエフェクター活性又はそれと相関する指標値の変動率に差が生じる被験物質を選択する工程と
    を含むドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体及び請求項1からのいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
  18. (a) 被験物質と、請求項に記載の組み換えベクターを保持する細胞の細胞膜画分及びドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるGPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する細胞の細胞膜画分、又は、請求項に記載の組み換えベクター及びドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるGPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する細胞の細胞膜画分とを接触させる工程と、
    (b) この細胞膜画分へのGTPの結合量を評価する工程と、
    (c) このGTP結合の評価量を、被験物質を接触させていない前記細胞膜画分へのGTP結合の評価量と比較して、細胞膜画分へのGTP結合の評価量を変動させる被験物質を選択する工程と
    を含むドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体及び請求項1からのいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
  19. (a) 被験物質及びドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体のリガンドと、請求項に記載の組み換えベクターを保持する細胞の細胞膜画分及びドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるGPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する細胞の細胞膜画分、又は、請求項に記載の組み換えベクター及びドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるGPCRをコードするDNAを含む組み換えベクターを保持する細胞の細胞膜画分とを接触させる工程と、
    (b) この細胞膜画分へのGTP結合量を評価する工程と、
    (c) このGTP結合の評価量を、被験物質を接触させず前記リガンドを接触させた前記細胞膜画分におけるGTP結合の評価量と比較して、細胞膜画分へのGTP 結合の評価量を変動させる被験物質を選択する工程と
    を含むドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体及び請求項1からのいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
  20. (a) 被験物質と、請求項1からのいずれかに記載のタンパク質を発現可能な試験細胞とを接触させる工程と、
    (b) 試験細胞における請求項1からのいずれかに記載のタンパク質の発現量を測定する工程と、
    (c) この発現量を、被験物質を接触させない試験細胞の当該タンパク質の発現量と比較して、試験細胞における当該タンパク質の発現量を変動させる被験物質を選択する工程と
    を含むドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体及び請求項1からのいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニング方法。
  21. 請求項に記載の組み換えベクターを保持する試験細胞と;G−タンパク質のエフェクターの活性又はそれと相関する指標値の測定用試薬とを含む、ドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体及び請求項1からのいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニングキット。
  22. 試験細胞が、さらにドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体をコードするDNAを有する組換えベクターを保持するものである請求項21に記載のスクリーニングキット。
  23. さらに、ドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体のリガンドを含む請求項21又は22に記載のスクリーニングキット。
  24. さらに、ドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体をコードするDNAを有する組み換えベクターを保持する対照細胞を含む請求項2122又は23に記載のスクリーニングキット。
  25. さらに、請求項に記載の組み換えベクターを保持する対照細胞を含む請求項2122又は23に記載のスクリーニングキット。
  26. 請求項に記載の組み換えベクターを保持する細胞と;請求項1からのいずれかに記載のタンパク質に結合できるがGTPaseにより分解されないGTPアナログとを含む、ドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体及び請求項1からのいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニングキット。
  27. 細胞が、さらにドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体をコードするDNAを有する組み換えベクターを保持するものである請求項26に記載のスクリーニングキット。
  28. 請求項に記載の組み換えベクターを保持する細胞と;及びドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体をコードするDNAを有する組み換えベクターを保持する細胞と;請求項1からのいずれかに記載のタンパク質に結合できるがGTPaseにより分解されないGTPアナログとを含む、ドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体及び請求項1からのいずれかに記載のタンパク質を介したシグナル伝達調節物質のスクリーニングキット。
  29. さらに、ドーパミンレセプター又はアデノシンA2レセプターであるG−タンパク質共役型受容体のリガンドを含む請求項2627又は28に記載のスクリーニングキット。
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