JP2002507892A - ヒト・アデニル酸シクラーゼのクローニングおよび特性評価 - Google Patents

ヒト・アデニル酸シクラーゼのクローニングおよび特性評価

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トムリンソン,ジェイムズ,エー.
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Abstract

(57)【要約】 ヒトアデニル酸シクラーゼをコードするDNA配列が開示される。また、アデニル酸シクラーゼのアミノ酸配列も開示される。

Description

【発明の詳細な説明】 ヒト・アデニル酸シクラーゼのクローニングおよび特性評価 発明の分野 本発明は、ヒト・アデニル酸シクラーゼをコードするDNAに関する。また、 本発明は、該DNAによりコードされるアデニル酸シクラーゼに関する。本明細 書においてヒトV型アデニル酸シクラーゼ(hAC5)ポリペプチドと称する、 この酵素は、V型アデニル酸シクラーゼ活性を促進、或いは阻害のいずれかしう るアゴニストおよびアンタゴニストを探索するための手段として使用することが できる。このような化合物は、(1)前記酵素の異所性活性に起因する疾病、お よび(2)V型アデニル酸シクラーゼの活性を促進、或いは阻害することによっ てその症状が改善されうる疾病を治療するための治療的用途を有する。 また、本発明は、ヒトV型アデニル酸シクラーゼをコードする、単離された全 ヒト遺伝子、精製されたヒトV型アデニル酸シタラーゼの遺伝子組換え生産のた めの方法、および該方法により生産されたタンパク質、ヒトV型アデニル酸シク ラーゼの全体またはその一部の領域に対する抗体、ベクター、ヌクレオチドプロ ーブ、およびヒトV型アデニル酸シクラーゼ活性を有するポリペプチドをコード する遺伝子により形質転換された宿主細胞、さらにこれらを診断薬および治療薬 等の各種試薬として使用することに関する。 発明の背景 アデニル酸シクラーゼ群は、主として、多種多様なファミリーを形成する膜結 合型Gタンパク結合受容体群が各々に対応する細胞外のホルモンやプロテアーゼ により活性化されることに呼応して、ATPをcAMPへ変換することにより、 主要な第二メッセンジャーである3',5'-環状アデノシン−リン酸(cAMP)の 細胞内合成反応を引き起こす。Gタンパク結合受容体の信号伝達は、アルファ( Gα)およびベータ/ガンマ(Gα)のサブユニットから構成される、結合され たヘテロ3量体Gタンパク複合体を介して起こる。Gαは受容体への刺激を受 けると、GTPをGDPと交換して、Gβγおよび受容体から解離し、そしてア デニル酸シクラーゼを含む、種々のエフェクターを直接的に調節するに至る。複 数のファミリーのGα蛋白が同定されており、このうち2つのファミリーについ ては、アデニル酸シクラーゼ活性調節に関する機能に基づき、全てのアデニル酸 シクラーゼを活性化するGαsファミリー、一方、全てではないが大部分のアデ ニル酸シクラーゼを阻害するGαiファミリーと命名されている。これらGα蛋 白は、それぞれ、独自の組織分布を有し、且つ、アデニル酸シクラーゼの受容体 特異的な調節を可能とする結合受容体のサブセットを有する。 さらなる研究により、アデニル酸シクラーゼ活性が組織内で調節されうる他の 機構が提案されてきた。この概念は、アデニル酸シクラーゼにそれぞれ独自の遺 伝子座を有するいくつかのアイソフォーム(亞型)が存在し、特有の組織分布、 および細胞内信号伝達に対して相異なる一群の反応を示すという知見に由来して いる。現在までに、主として齧歯類において、I〜IX型の9種の別個のアイソ フォームが特性決定されており、それぞれが特有の調節機能および組織特異的分 布を示す。 アデニル酸シクラーゼの構造は詳細に研究されており、想定ドメインについて 標準的な命名法が与えられている。位相幾何学的には、アデニル酸シクラーゼの 各アイソフォームは類似しており、細胞内側N末端に付随する2つの6重膜貫通 領域、大きな細胞質ループ(ICDIII、またはより一般的には「C1」と呼 ばれる)、および大きな細胞内側C末端(より一般的には「C2」と呼ばれる) を有する。前記N末端と前記C1ループとの間の膜貫通領域は、一般的には「M 1」と呼ばれている。M1領域は3つの細胞外ドメイン(ECDI、IIおよびIII )、2つの細胞内ドメイン(ICDIおよびII)、そして6つの膜貫通ドメイン( TMI、II、III、IV、VおよびVI)を有する。前記C1ループと前記C末端 との間の領域は「M2」と呼ばれる。M2領域は3つの細胞外ドメイン(ECD IV、VおよびVI)、2つの細胞内ドメイン(ICDIVおよびV)、そして6 つの膜貫通ドメイン(TMVII、VIII、IX、X、XI、およびXII) を有する。前記N末端は、一般的に「N1」および「N2」と命名される2つの領 域に分割される。前記大きなC1細胞質ループも同様に、長い「C1a」 領域、および短い「C1b」領域の2領域に分割される。最後に、前記C末端は長 い「C2a」領域および短い「C2b」領域に分割される。これらの領域についての 詳しい解説は、BroachらWO95/30012に見出され、これを参考文 献として本明細書に援用する。前記C1aおよびC2a領域のアミノ酸配列は、異な るアイソフォーム間で共通に保存されている。一方、前記N末端、C末端、C1b およびC2b領域は、種々のアイソフォーム間で最も多様性を示す。 配列および機能の類似性に基づいて、これらのアイソフォーム類はアデニル酸 シクラーゼの6つの相異なるクラスに分かれる。V型はVI型と同一のクラスで あり、アイソフォーム間で最大レベルの多様性が見られる膜貫通領域でさえ配列 の類似性を示す。V型は圧倒的に、心臓および脳組織で発現される。VI型はも うすこし広い分布を有するが、その主な発現もまた心臓および脳組織中である。 VI型のようにV型は、C2bを欠くが、他のアイソフォームより比較的長いN末 端と、比較的短いC末端を有する。 アデニル酸シクラーゼのアイソフォーム間で活性に多様性があることにより、 さらにそれらの組織分布および広がりの差異によって、組織特異的なcAMPレ ベルの調節に貢献しているであろう。異なるアデニル酸シクラーゼ間での明瞭な 構造上および生化学的性状の差異を利用して、アイソフォームに特異的な、また は選択的なモジュレーター(調節因子)が発見されうると期待されている。これ は、選択された組織における各アイソフォームの割合と分布についての知識と相 俟って、組織特異的或いは組織選択的な薬剤のいずれかを開発できる手段を提供 する。何故なら、アイソフォーム特異的なモジュレーターは、該アイソフォーム の分布に関して組織特異性を有するであろうと期待されるからである。 組織選択的な薬剤の開発の鍵となるのは、それぞれのアイソフォームの組織特 異的分布および広がりに関わる情報を得ることである。現在までに得られている この情報のほとんどは、ヒトの多くの組織でいくつかの選択されたmRNA(例 えば、V型)が測定されてきたにもかかわらず、ヒト以外の数種の動物種におけ るアイソフォームmRNAレベルについてである。ヒト組織中のタンパク質アイ ソフォームの分布について情報を得ることは、mRNAのデータとの比較により 、すでに存在する標的の情報を強化しするか、或いは異なったアイソフォーム種 へ と目を向けさせることができるので、この領域での薬学的研究の重要な側面と見 なされている。 現在までに、遺伝子の全長がクローニングされているのは以下の3種のヒトア デニル酸シクラーゼみである。すなわち、II型アデニル酸シクラーゼ(Strenge lら、Hum.Genet.90:126-130(1992))、VII型アデニル酸シクラーゼ(Nomura ら、DNA Research 1:27-35(1994))、およびVIII型アデニル酸シクラーゼ(De ferら、FEBS Letters 351:109-113(1994))である。 V型は、イヌ心臓からクローニングされた(Ishikawaら、Jour.Biol.Chem.26 7(19):13553-13557(1992),WO93/05061)。そのヒトアイソフォームは今日までク ローニングされていない。 発明の要約 本発明の一側面は、図1(配列番号2)のアミノ酸配列を含む単離および精製 されたヒトV型アデニル酸シクラーゼ(hAC5)ポリペプチドである。 本発明のもう一つの側面は、前記hAC5ポリペプチドをコードする単離およ び精製された核酸である。 本発明のさらにもう一つの側面は、図1(配列番号1)のヌクレオチド配列を 含み、且つ生物活性hAC5ポリペプチド、またはその断片をコードする単離お よび精製された核酸である。 本発明のさらにもう一つの側面は、図1(配列番号1)のヌクレオチド配列を 含み、可溶性の生物活性hAC5ポリペプチド断片をコードする単離および精製 された核酸である。 本発明の別の側面は、下記の診断および治療の両方の用途を有する、ヒトV型 アデニル酸シクラーゼをコードするヒト遺伝子にも関する。本発明に包含される のは、図1のアミノ酸配列を含むか、または図1のヌクレオチド配列と実質的な ホモロジーを有する遺伝子によってコードされる、タンパク質またはペプチドと 実質的なホモロジーを有するタンパク質またはポリペプチドであって、ヒトV型 アデニル酸シクラーゼと同様の特性を示すものである。 本発明のさらにもう一つの側面は、図1(配列番号1)のヌクレオチド配列を 有する核酸を発現ベクターに組み込むこと、該ベクターで宿主細胞を形質転換す ること、そして該形質転換された宿主細胞を、遺伝子の発現を結果としてもたら す条件下で培養することを含む、hAC5を生産する方法である。 図面の簡単な説明 図1(A〜H)は、ヒトV型アデニル酸シクラーゼのDNA(配列番号1)、 および演繹されたアミノ酸配列(配列番号2)を示す。全コード配列に加えて5 ’側および3’側の非翻訳配列部分が示されている。全配列は、Taqポリメラ ーゼを用いたdideoxyシークエンシング法により双方向に2回づつ決定し た。 発明の詳細な説明定義 本発明の特定の実施の形態をさらに進んで記載する前に、いくつかの用語を定 義する。 本明細書中で「実質的に純粋」および「単離された」という用語は、天然の夾 雑物または天然に付随する成分から分離されたタンパク質を表現するのに用いる 。典型的には、モノマーのタンパク質は、試料の少なくとも約60乃至70%が 単一のポリペプチド骨格を示すとき実質的に純粋である。一部の変異体または化 学的修飾があっても、典型的には、ほぼ同一のポリペプチド配列を共有する。実 質的に純粋なタンパク質は、典型的には、約85乃至90%以上のタンパク質試 料を含み、好ましくは、少なくとも約95%を含み、さらに好ましくは約99% 以上の純度である。純度は、典型的にはポリアクリルアミドゲル上で、染色によ って決定した均質性をもって測定する。ある種の目的のためには、より高い精度 が望まれ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または同様の精製手段を利 用する。しかし、殆どの目的には、単なるクロマトグラフィー・カラム、または ポリアクリルアミドゲルが純度検定に用いられる。可溶性か、膜結合したかにか かわらず、本発明は、実質的に純粋な調製物を提供する。本明細書中の構造およ び機能の記載に部分的に基づき、生体物質からそれらを単離する様々な方法が考 案される。さらに、化学的に合成された、またはそれが天然に由来する細胞と異 な る細胞系で合成されたタンパク質は、実質的に純粋であろう。前記用語は、異種 哺乳動物細胞、大腸菌等のバクテリア細胞、その他の原核細胞生物中で合成され たタンパク質および核酸を表現するのにも用いられる。 本明細書中で用いる、「ハイブリダイゼーション」(ハイブリダイズする)お よび「特異性」(特異的な)の二つの用語は、ヌクレオチド配列に関して、互い に交換的に用いられる。2つのヌクレオチド配列が互いにハイブリダイズしあう 能力は、該2つの配列の相補性の度合いに依存し、これを言い換えれば、ヌクレ オチド対合の符合(マッチ)する割合に依存する。一定の配列中で、別の配列に 相補的なヌクレオチド数が多いほど、相互のハイブリダイゼーションの度合いが 大きくなる。ハイブリダイゼーション度は、温度、溶媒比、塩濃度等を含む条件 の厳格性(ストリンジェンシー)にも依存する。特に「選択的ハイブリダイゼー ション」とは、本発明の1つのポリヌクレオチドの標的へのハイブリダイゼーシ ョン度が完全な、または、ほぼ完全な相補性を要求する条件を意味する。ハイブ リダイゼーション培地中に存在する他の核酸に対しての結合に比較して、本発明 のヌクレオチドが標的に特異的に結合することを保証するためには、前記相補性 が充分に高くなければならない。選択的ハイブリダイゼーションにおいては、相 補性は90〜100%であり、好ましくは95〜100%であり、より好ましく は100%である。 「ストリンジェントな条件」とは、(1)洗浄に低いイオン強度と高温、例え ば、0.015MNaCl/0.0015Mクエン酸ナトリウム(sodiumtitrat e)・0.1%NaDodSO4、50℃、を採用する、或いは(2)ハイブリダ イゼーションにフォルムアミドのような変性試薬、例えば、0.1%ウシ血清ア ルブミン(BSA)/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/7 50mM NaCl、75mMクエン酸ナトリウムを含む50mMリン酸ナトリ ウム緩衝液(pH6.5)を含む50%(容積比)フォルムアミド、42℃、を 採用する。別の例は、50%フォルムアミド、5×0.75MNaCl、0.0 75mMクエン酸ナトリウム(SSC)、50mMリン酸ナトリウム(pH 6. 8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×Denhardt溶液、超音波破処 理したサケ精子DNA(50mg/ml)、0.1%ドデシル硫酸ナ トリウム(SDS)、10%硫酸デキストラン、42℃、ウォッシュに42℃、0 .2xSSCおよび0.1%SDCを使用することである。 「単離された」核酸とは、核酸の原料から他のポリペプチドをコードする、混 在する核酸と分離され、そして同定された核酸である。前記核酸は、診断アッセ イに有用であると当該技術分野で知られ、また記載されているいずれかの標識を 用いて、診断用およびプローブ用に標識されてもよい。 好適な実施の形態 本発明は、本明細書中で「hAC5」と呼ばれる、ヒトV型アデニル酸シクラ ーゼに関する。図1は、hAC5ポリペプチドをコードするクローンのDNA配 列とともに演繹されたアミノ酸配列を示す。本明細書中で用いる、「hAC5ポ リペプチド」または「hAC5酵素」なる用語は、実施例1に記載されたクロー ンに含まれるヒトV型アデニル酸シクラーゼと共通の生物活性を有するすべての アデニル酸シクラーゼを指す。この「共通の生物活性」とは、エフェクター機能 または交差反応を示す抗原性を包含するが、これに限定されない。 前述のように、V型アデニル酸シクラーゼは、VI型と同一のクラスであり、 主に心臓および脳組織で発現される。V型アデニル酸シクラーゼは、他の知られ ているアイソフォームと同様の推定構造を有する。すなわち、6つの細胞外ドメ イン、5つの細胞内ドメイン、4つ小ループと1つの細胞質大ループ、および細 胞内のN末端およびC末端である。 しかしながら、V型アデニル酸シクラーゼは、VI型のように、それはC2b領 域を欠くので、より大きいN末端および比較的短いC末端を有するという点で他 のアデニル酸シクラーゼアイソフォーム類から区別されうる。他の哺乳動物アイ ソフォーム群(I〜IVおよびVI〜IX型)においては、膜関連の二次構造の 多くはよく保存されている。hAC5ポリペプチドの一部は、同様に保存されて いる。 本発明の範囲は、図1(配列番号1)に示すhAC5cDNAの正確な配列、 またはその用途に限定されない。本発明は、前記配列に対する、当業者に周知で あるような欠失、挿入、および置換を含むある種の改変を意図する。例えば、本 発明は、図1のcDNA配列の内、一つまたは複数のコドンを、天然型タンパク 質におけるアミノ酸と化学的に同等であるアミノ酸をコードするコドンによって 置換することを意図する。化学的同等性は、例えば、疎水性または親水性、電荷 、サイズ、残基が環状であるか非環状であるか、芳香族か非芳香族か、などの一 つまたは複数の特徴に基づいて決定される。従って、例えば、中性の極性アミノ 酸をコードするコドンを他の中性の極性アミノ酸をコードするコドンで置き換え ることができ、天然物と同等の生物活性を有する生産物を生産することがかなり 期待できる。 アミノ酸残基は、一般に4つのグループに大別されうる。酸性残基は、親水性 であり生理的pHにおいてH+を失うことにより負の電荷を持つ。塩基性残基も また親水性であるが、生理的pHにおいてH+と会合するため正の電荷を持つ。 中性非極性残基は、疎水性であり生理的pHにおいては荷電されていない。中性 極性残基は、親水性であり生理的pHにおいては荷電されていない。さらに、ア ミノ酸残基は、環状か非環状か、芳香族か非芳香族か、該残基の側鎖の置換基に 関しての自明な分類、および分子の大小としても分類されうる。カルボキシル基 の炭素を含めて、全炭素数4以下であれば、「小型」と見なされる。当然ながら 、小型残基は、常に非芳香族である。 天然に存在するアミノ酸のうち、アスパラギン酸およびグルタミン酸は、酸性 である。アルギニンおよびリジンは、塩基性で非環状である。ヒスチジンは塩基 性で環状である。グリシン、セリンおよびシステインは中性、極性であり、小型 である。アラニンは中性、非極性であり、小型である。スレオニン、アスパラギ ンおよびグルタミンは中性、極性、大型で非芳香族である。チロシンは中性、極 性、大型で芳香族である。バリン、イソロイシン、ロイシンおよびメチオニンは 中性、非極性、大型で非芳香族である。フェニルアラニンおよびトリプトファン は、中性、非極性、大型で芳香族。プロリンは、事実上は中性、非極性であり、 大型、環式で非芳香族であるが、ペプチド鎖二次コンフォメーションによる知ら れた効果のため特別なケースであり、したがって上記に定義されたグループには 包含されない。 遺伝子コードによってコードされない普通によく出くわすアミノ酸もある。 以下は、一例として挙げるのであってこれらに限定されない。中性、非極性、小 型のサルコシン、ベータ・アラニン、2,3-ジアミノプロピオン酸およびアルファ ・アミノイソブチル酸;中性、非極性、大型で非芳香族であるt−ブチルアラニ ン、t−ブチルグリシン、N−メチルイソロイシン、ノルロイシンおよびシクロ ヘキシルアラニン;塩基性で非環式のオルニチン;酸性のシステイン酸;中性、 極性の大型で非芳香族であるシトルリン、アセチルリジン、およびメチオニンス ルフオキシド;中性、非極性の大型で芳香族であるフェニルグリシン、2−ナフ チルアラニン、β−2−チェニルアラニンおよび1,2,3,4-テトラヒドロイソキノ リン−3−カルボン酸。 通常、本明細書でクレームされる前記hAC5ポリペプチドは、図1に開示さ れたhAC5配列に対し全体で、少なくとも75%のアミノ酸配列の同一性を有 することが好ましく、少なくとも80%の同一性を有することがより好ましく、 少なくとも90%の同一性を有することがさらに好ましく、少なくとも95%の 同一性を有することが最も好ましい。とりわけ本明細書でクレームされる前記h AC5ポリペプチド、またはポリペプチド断片のN末端、C1bおよびC2b領域は 、図1に開示されたhAC5配列に対し、少なくとも90%のアミノ酸配列の同 一性を有することが好ましく、そして少なくとも95%の同一性を有することが 最も好ましい。配列の「同一性」若しくは「ホモロジー」とは、前記hAC5ポ リペプチドの配列と同一である候補配列中での、配列同一性の一部として、いか なる保存的な置換も考慮に入れず、必要であれば欠失を導入し、%ホモロジー値 が最大となるように両者を整列した上でのアミノ酸残基の比率として本明細書で 定義される。hAC5配列のN末端、C末端若しくは内部の伸張、欠損または挿 入は、ホモロジーに影響を与えると解釈される。 このように、本発明の主題であるクレームされたhAC5ポリペプチドは、次 のものを包含する。すなわち、hAC5アミノ酸配列を有する分子;図1のhA C5配列に由来する、少なくとも10、15、20、25、30若しくは40ア ミノ酸残基の連続する配列を有する前記分子の断片であって、hAC5ポリペプ チドの特徴を示すもの;図1のhAC5配列のアミノ酸配列変異体、またはそれ の上記に定義した断片であって、N末端側、C末端側またはその内部(平行化欠 失(parallel deletion)を含む)に一つのアミノ酸残基を挿入したもの;図1 のhAC5配列のアミノ酸配列変異体、またはそれの上記に定義した断片であっ て、少なくとも一つの残基で置換され、且つhAC5ポリペプチドの特徴を示す ものである。特に、興味があるのは、hAC5ポリペプチドがI〜IVおよびV I〜IX型から多様化している領域に一致するペプチドである。 ヒトV型アデニル酸シクラーゼポリペプチドは、次のものを包含する。すなわ ち、例えば、相同組換え、位置特異的突然変異誘発法、またはPCR突然変異誘 発法による予め定めた変異を含むもの;hAC5ポリペプチドの天然変異体;h AC5ポリペプチド誘導体またはその断片であって、該hAC5またはその断片 について、置換、化学的、酵素的、または天然には存在しない基(例えば、酵素 または放射性同位元素等の検出可能な基)を用いる他の適切な手段により共有結 合で修飾されたもの;hAC5の糖鎖付加変異体(適当なアミノ酸の欠失、挿入 、若しくは置換による、任意の糖鎖付加部位の欠失または挿入);hAC5ポリ ペプチドまたはその断片の可溶化体である。さらに、本発明は、hAC5ポリペ プチドを、例えば診断法での使用のためにタグ(標識分子)することを含む。タ グ化のタイプおよび方法は、当該技術分野において周知であり、例えば6つのヒ スチジンタグを使用することである。 V型アイソフォームのいくつかの領域は、他のアデニル酸シクラーゼアイソフ ォーム類と高度に保存されている。従って、例えば細胞外ドメイン、膜貫通領域 、短い細胞内ドメイン等の高度に保存された領域について、欠失、挿入、とりわ け置換を含む配列変更のほとんどは、他のアイソフォームに同様の変化を加えた ものとは異なって、hAC5ポリペプチドの特性に根本的な変化をもたらすこと は期待できないと考えられる。しかしながら、変更を加えるに先立って前記の配 列変更の正確な影響を予測するのが難しいとき、いかなる配列変更の影響も通常 のスクリーニングアッセイによって評価されるであろうということを当業者は理 解している。 本発明のペプチド化合物を記載するのに用いる命名法は、N末端アミノ基がペ プチド中の各アミノ酸残基の左側で、カルボキシル基が右側であるとする従来の 慣行に従う。本発明の選らばれた特定の実施の形態を表す化学式において、前記 N末端基およびカルボキシ末端基は、しばしば特にそう示されないけれども、特 記されなければ生理的pH値でとるであろう形態にあると理解される。従って、 特定の実施例または一般式のいずれでも、必ずしも特記されたり、明示されては いないが、生理的pHにおいてN末端H+ 2およびC末端O-が存在すると理解さ れる。アミノ酸残基の側鎖上にある遊離の官能基も、アミド化、アシル化若しく は他の置換によって修飾されうる。これによって例えば、活性に影響を及ぼすこ となく化合物の溶解性を変化させることができる。アミノ酸がC末端を形成する とき、本発明の化合物のすべては、薬学的に許容される塩類またはエステル類の 形態である。前記塩類は、例えばNa+、K+、Ca+2、Mg+2等であり、前記エ ステル類は、一般的に炭素1〜6を有するアルコールのエステルである。 本発明のペプチドのすべてにおいて、一つ若しくは複数のアミド結合(−CO −NH)は、例えば、−CH2NH-、−CH2S−、−CH2CH2、−CH=C H−(シスおよびトランス)、−COCH2−、−CH(OH)CH2−、−CH2 SO−等の同配体(isostere)である別の結合で、随意に置換されてよい。この 置換は、当該技術分野で公知の方法によって行いうる。下記の文献は、これらの 代替結合基を含むペプチド類似体の製法を説明している。Spatola,Vega Data 1 (3)“Peptide Backbone Modifications”(一般的総説)(1983年3月);Spatola“ Chemistry and Biochemistry of Amino Acids Peptides and Proteins,”B.Wein stein編,Marcel Dekker,NewYork,p.267(1983)(一般的総説);Morley,J.S.,Tren ds Pharm Sci,pp.463-468(一般的総説)(1980);Hudsonら、Int J PeptProt Res 14:177-185(-CH2NH-,-CH2CH2-)(1979);Spatolaら、Life Sci 38:1243-1249(-CH2 -S)(1986);Hannm J Chem Soc Perkin Trans I 307-314(-CH-CH-,シスおよびト ランス)(1982);Almquistら、J Med Chem 23:1392-1398(-COCH2)(1980);Jenning s-Whiteら、Tetrahedron Lett 23:2533(-COCH2−)(1982);Szelkeら、欧州特許EP 45665(1982)CA:97:39405(1982)(-CH(OH)CH2-);Holladayら、Tetrahedron Lett 4 :4401-4404(-C(OH)CH2-)(1983);およびHruby,Life Sci 31:189-199(-CH2-S−) (1982)。 ヒトV型アデニル酸シクラーゼペプチドは、当該技術分野で周知であるような 古典的な蛋白質化学の手法を用いて精製することができる。例えば、レクチンア フィニティー・クロマトグラフィー工程に、続いて、配位子のシステイン残基を 介してビオチンに結合(コンジュゲート)されている配位子を利用する高度に特 異的なリガンドクロマトグラフィー操作を用いてもよい。別法として、前記6つ のヒスチジンでタグされたhAC5ポリペプチドを、ニッケルカラムクロマトグ ラフィーを用いて精製してもよい。 本の一つの実施の形態は、hAC5ポリペプチドの生産に関連した組換え材料 に関する。hA5を生産する一つの方法は、図1(配列番号1)のヌクレオチド 配列を有する核酸を発現ベクターに組み込むこと、前記ベクターで宿主細胞を形 質転換すること、そして該形質転換された宿主細胞を、遺伝子の発現を結果とし てもたらす条件下で培養することからなる。適当な発現ベクターは、pc3hA C6を含む。宿主細胞の例として、バクテリア、ウイルス、酵母、昆虫、または 哺乳動物細胞株が挙げられる。好適な宿主細胞は「HEK-293」と呼ばれる ヒト胎児細胞株である。 また、本発明は、その表面にhAC5を提示するか、または発現するように培 養することができるトランスフエタト細胞を用いることも意図する。かくして、 以下に記載されるように、本発明は、これらの細胞、または重要なhAC5の断 片をスクリーニング手段に用いてインビホで各種の候補化合物をhAC5活性に ついてその効果を評価する、天然型hAC5と化合物の相互作用のためのアッセ イ系を提供する。本発明の別の実施の形態は、可溶性hAC5断片の生産に関連 した組換え材料に関する。これらは、hAC5ポリペプチドの活性部分、特に前 記C1およびC2(C末端)細胞内ループを発現するように培養することができ る、例えば大脳菌等のトランスフェクト細胞を含む。これらの可溶性断片を精製 し、そして再構成して酵素活性をうることができる。このことは他のアイソフォ ームからの類似のドメインを用いて実証された。Whisnantら、Proc.Natl.Acad .Sci.:93:6621-6625(1996)を参照。このような可溶性断片は、スクリーニング手 段として用い、各種の候補化合物のhAC5活性についての効果を評価すること ができる。トランスフェクション用の適当な細胞としてSf−9細胞、酵母細胞 およびほとんどの哺乳動物細胞が挙げられる。 hAC5ポリペプチドの組換え生産は、図1に記載のhAC5をコードするヌ クレオチド配列またはその縮退類似体を用いることを含む。下記のように、天然 型配列を回収するか、或いは既知の天然型配列のかなりの部分をプローブに用い ることによって、核酸を調製することができる。代替的に、当該技術分野で周知 の手順を用いて新規合成することができる。 前記核酸は、所望の宿主に適した発現ベクターに連結され、その後適合性のあ る細胞に形質転換で導入される。バクテリア細胞の形質転換に使用するのに適し たベクターは、当該技術分野において周知である。プラスミドおよび例えば、ラ ムダファージ等のバクテリオファージが大腸菌等のバタテリア宿主用のベクター として一般的に用いられている。ウィルスベクターは、外部性DNAの発現用に 哺乳動物および昆虫細胞中で使用するのに適している。哺乳動物細胞はSV40 またはポリオーマウィルスで容易に形質転換される。培養液中の昆虫細胞は、バ キュロウィルス発現ベクターで形質転換されうる。適当な酵母ベクター系として 酵母セントロメアプラスミド、酵母エピソマルプラスミドおよび酵母インテグレ ーティング(integrating)プラスミドが挙げられる。別法として、当該技術分野 において周知であるような手法を用いて核酸を宿主細胞に直接導入してもよい。 細胞は、hAC5ポリペプチドをコードする遺伝子の発現に好ましい条件下で 培養され、その後hAC5を表面に提示する細胞が集菌される。適当な真核宿主 細胞として、哺乳動物細胞、植物細胞、酵母細胞、および昆虫細胞が挙げられる 。適当な原核宿主細胞として、例えば、大腸菌および枯草菌等のバクテリア細胞 、チャイニーズハムスター卵巣細胞、COS細胞、ラット−2繊維芽細胞株、ヒ ト胎児腎293細胞株、およびSf−9等の昆虫細胞系が挙げられる。 本発明は、1つのhAC5ポリペプチドをコードするか、またはそれに相補的 である核酸にも関する。これらの核酸を用いて、診断用または潜在的な治療用に 、組換え細胞培養物中で前記ポリペプチドを生産することができる。さらに別の 側面では、本発明は、標識された若しくは標識されていない、hAC5をコード する単離された核酸分子、或いはhAC5をコードする核酸配列に相補的である かまたはストリンジェントな条件下ハイブリダイズする核酸配列を提供する。本 発明の単離された核酸分子は、他の既知のアデニル酸シクラーゼアイソフォーム をコードする核酸配列、またはそれに相補的である核酸配列を除外する。 本発明は、次のものを提供する。すなわち、ベクターによって形質転換された 宿主に認識される制御配列に働くように結合された、hAC5をコードする核酸 を含む複製可能なベクター;前記ベクターで形質転換された宿主細胞;細胞表面 に、または可溶性断片としてhAC5の生産を実行するためにhAC5をコード する核酸分子を使用する方法であって、形質転換された宿主細胞の培養物中で該 核酸分子を発現し、そして該細胞から回収することを含む方法である。前記核酸 配列は、hAC5をコードする核酸分子用のハイブリダイゼーションアッセイに も有用である。 本発明のさらに別の実施の形態に従えば、次の方法が記載される。すなわち、 hAC5をコードする核酸配列を含む細胞のDNAに、転写調節因子(例えば、 エンハンサー、またはサイレンサー)を、該hAC5をコードする核酸配列にそ の転写に影響を与えるのに充分に近接し、そして方向性を持って挿入することか らなり、加えて随意に前記転写調節因子およびhAC5をコードする核酸配列を 含む細胞を培養することからなる工程を有する、hAC5を生産する方法である 。 また、本発明は、次のものを包含する。すなわち、hAC5ポリペプチドをコ ードする核酸配列を含む細胞;前記コード配列にその転写に影響を与えるのに充 分に近接し、そして方向性を持った外部性転写調節因子;それによって認識され る制御配列に働くように結合された、hAC5をコードする核酸配列を含む宿主 細胞である。 また、本発明はhAC5ポリペプチドをコードする核酸分子の転写が増強され たか、或いは減少された細胞をうる方法であって、該核酸分子を含む細胞を提供 すること;前記細胞に転写調節因子を導入すること;そして前記細胞を、前記核 酸分子の転写が増強されているか、或いは減少されている細胞を求めてスクリー ニングすることを含む方法を提供する。 本発明で使用されるヒトV型アデニル酸シクラーゼ核酸は、次のようにして製 造できる。hAC5ポリペプチドをコードするか、hAC5ポリペプチドをコー ドする核酸配列に相補的であるか、そのような核酸にハイブリダイズしてストリ ンジェントな条件下、安定して結合されたままでいるか、図1に示す演繹された アミノ酸配列と少なくとも75%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%配 列同一性、より好ましくは85%配列同一性を共有するポリペプチドをコードす るかのいずれかであるRNA、またはDNAをhAC5「核酸」と定義する。そ れは、典型的には少なくとも約10ヌクレオチドの長さであり、そして好ましく はhAC5に関係ある生物学的または免疫学的活性を有する。特に意図するのは 、ゲノムDNA、cDNA、mRNAおよびアンチセンス分子であり、また同様 に天然源に由来するか或いは合成されたかにかかわらず代替的な骨格に基づくか 、または代替的な塩基を含む核酸である。 特に興味あるのは、その天然型のシグナル配列を含むか、必ずしも含まない全 長の分子をコードする1つのhAC5核酸である。本明細書で初めて開示された 、前記演繹されたアミノ酸配列を用いて選ばれたcDNAまたはゲノムライブラ リーをスクリーニングし、そして必要ならばその5’コード末端で完全であるD NAを確保するために従来のプライマー伸張操作を用いることによって全長タン パク質をコードする核酸が得られる。このようなクローンは、元来の配列のリー ディングフレーム中の開始コドンの存在によって容易に特定される。 hAC5ポリペプチドのアミノ酸配列変異体をコードするDNAは、下記のよ うに、または当該技術分野で公知の様々な方法で製造される。これらの方法は、 次のものを含むがそれらに限定されない。すなわち、天然源からの単離(天然ア ミノ酸配列の変異体の場合)、或いはオリゴヌクレオチド媒介(または部位特異 的)突然変異法、PCR突然変異法、および前に調製した変異体またはhAC5 の非変異体版のカセット突然変異法によっての製造である。 核酸類を単離および処理操作する手法は、例えば次の文献に開示されている。 すなわち、米国特許5030576号、米国特許5030576号、および国際 公開WO94/11504およびWO93/03162である。また、Sambrook ら、"Molecular Cloning:A Laboratory Manual",第2版,Cold Spring Harbor Pr ess,Cold Spring Harbor,NY,1989およびAusubelら"Current Protocols in Mol ecular Biology",第2巻,Wiley-Interscience,New York,1987を参照。 hAC5ポリペプチドの単離、組換え生産法および特性決定によってhAC5 を用いるアッセイ系の設計が可能になる。hAC5をその表面に提供する単離細 胞が入手可能になり、宿主細胞の表面に該酵素を提示し発現を可能とする、hA C5をコードする組換えDNAが入手可能になると、hAC5の活性に影響を及 ぼす候補薬剤(アゴニスト−作動薬およびアンタゴニスト−拮抗薬の両方)の能 力を評価する貴重な手段としてこれらの細胞が利用可能になる。このように、本 発明は、候補薬剤のアゴニストおよびアンタゴニストとしての活性をスクリーニ ングするために単離または遺伝子組換えで生産されたhAC5を利用するアッセ イ系に関する。このアッセイは、特にこれらの候補治療剤がhAC5に対して所 望の効果を有することを確認するのに有用である。これらの性状の判定は、他の アデニル酸シクラーゼアイソフォームに対する薬剤の特異性を評価するのに必須 である。 前記宿主細胞は、典型的には動物細胞、さらに典型的には哺乳動物細胞である 。前記アッセイで有用であるためには、該細胞はhAC5が細胞表面に提示され るか、または可溶性の断片として発現されることを可能にする細胞内メカニズム をもたなければならない。(1)細胞表面にhAC5の提示を作り、候補薬剤が 酵素に結合するか、またはさもなければ酵素の活性に影響を及ぼすかを評価する アッセイに直接、該細胞を使用できるようにするか、或いは(2)精製し、そし て再構成してスクリーニングアッセイに有用な酵素的に活性な化合物をうること ができる可溶性断片としてhAC5を生産するかのいずれかするために、hAC 5ポリペプチドまたはその断片をコードするDNAを発現する動物宿主細胞を培 養してコードする核酸の発現を実行する。 hAC5活性に影響を及ぼす化合物を同定するのにいくつかの可能な戦略があ る。hAC5cDNAの過剰発現は、安定した細胞株から多量の膜粗調製物を単 離する手段を提供することができる。HEK−293細胞がこの目的のために特 に有用であることが見出されている。この系では測定可能な酵素活性は、圧倒的 に組換えhAC5の発現からであろう。生成物(cAMP)の形成を測るための 96ウエルのシンチレーション近接型アッセイで酵素活性を検出する高感度、再 現性よい、高スループットのスクリーニング系が望ましい。利用できる多数のス クリーニングアッセイがある。例えば、hAC5の基底(刺激されていない)活 性は、hAC5酵素のアゴニストとアンタゴニストの両方を検出する方法として 測定することができる。さらに、最も関連ある生理学的な活性化因子であるヘテ ロ3量体G蛋白サブユニット(Gas)による前記酵素の刺激は、活性化した(G TPgS結合)組換えウシGas(バクテリアから発現され精製された)を用いて 、hAC5ポリペプチドのGas刺激を阻害する他の化合物が同定されるかもしれ ないという期待のもとにアッセイできる。フォルスコリンまたはフォルスコリン 類似体等のその他の刺激因子も用いることができる。「ヒット」すなわち、これ らのスクリーニングのいずれかでhAC5に影響を及ぼす化合物は、標的アイソ フォームに関連する化合物に焦点をあてるのを助けるために他のアッセイにおい てさらに評価されことになる。 潜在的治療剤としての候補化合物を評価する別の方法は、典型的には結合アッ セイのようなスクリーニングを基本とするアプローチを含み、そこで該候補化合 物(例えば、ペプチドまたは小さい有機化合物)がhAC5酵素の触媒サブユニ ットに結合するかどうか、或いはどの程度結合するか測定するために試験される 。好ましくは、組換えhAC5を発現する哺乳動物細胞株またはその形質膜調製 物が前記アッセイで用いられることになる。例えば、候補アンタゴニストは、h AC5への結合に関して標識されたアゴニストまたはアンタゴニストのいずれか 、例えば標識フォルスコリンまたは標識フォルスコリン類似体と競合する。候補 化合物の濃度を変化させて、一定濃度の標識アゴニストまたはアンタゴニストと ともに供給する。それから確立された手法を用いて標識物質の結合の阻害を測定 することができる。この測定は、さらに関連付けられhAC5に結合する候補化 合物の量および力価を決定する。 hAC5活性に影響を及ぼす化合物を同定する別の方法は、hAC5酵素上の 2つの特徴ある部位のいずれか一方を標的とした、ヌクレオチド骨格に基づく合 成化合物のラショナルデザインである。これらのうちの1つが活性部位(ATP が基質であり、cAMPが生成物である)であり、そして他の1つが別のP部位 である。純粋な或いは粗酵素調製物のいずれとでもアデニンヌクレオシド−3’ −ポリフォスフェートが最大の阻害活性を示すことが報告されている。関連する アプローチとして、アイソフォーム特異的効果を示すフォルスコリン類似体の設 計を試みることができるであろう。 さらに、上記のアッセイを用いて候補薬剤のhAC5活性を促進するか、また は阻害する能力を直接試験できる。 一旦リード候補化合物が同定されと、アイソフォーム特異性が小分子モジュレ ーターで達成されることを実証する目的で、ほとんどの、そして好ましくはすべ てのヒト・アデニル酸シクラーゼアイソフォームをモニターするアッセイ系を開 発するのが望ましい。これらのアッセイを用いて存在するか(例えば、フォルス コリン類似体またはP部位阻害剤)、或いは新たに発見された小分子モジュレー ターを評価し、そして異なるアデニル酸シクラーゼアイソフォームについて構造 活性相関(SAR)を決定する。また、このようなアッセイは、他のアデニル酸 標的の特異的または選択的モジュレーターを評価するのにも用いることができ、 そして全細胞アッセイを使用すれば、リード候補化合物のバイオアベイラビリテ ィを設計し、そして生物活性を問題にするのに有用な洞察を提供する。 また、hAC5は、組織検体中の前記hAC5酵素の異常発現を検出すること による疾病および疾患の診断用のアッセイで用途がある。 本発明の別の側面は、hAC5の天然に存在する形態を模倣するhAC5アゴ ニストに関する。これらのアゴニストは、前記アッセイ系の実行可能性を立証す るために上記アッセイにおいて対照試薬として有用である。さらに、hAC5の アゴニストは、インビホで疾病を治療するのに有用な効果を示す。 本発明の別の側面は、hAC5ポリペプチドの改変された形態であるhAC5 アンタゴニストに関する。このようなアンタゴニストは、hAC5に結合し、そ して酵素―基質相互作用を、それらのhAC5への結合をブロックすることによ り阻害する。本発明の範囲内にある別グループの化合物は、hAC5基質のアン タゴニストである。すなわち、これらは基質阻害剤である。これら両タイプのア ンタゴニストは、ともにcAMP生成のような酵素―基質相互作用に基づく事象 を減少させるか、または仲介するのに有用性がある。さらに別の第2のグループ のアンタゴニストは、hAC5の特定の部分に結合するように設計された抗体を 含む。ポリクロナール抗体も本発明によって意図されるけれども、一般的に、こ れらはhAC5のある所望の領域に高度に特異的なモノクロナール抗体の調製物 である。以下、さらに詳しく説明されるが、前記抗体はhAC5酵素のイムノア ッセイにおいて、例えば遺伝子組換え系で遺伝子がうまく発現するか評価するの に有用でもある。 前記アゴニストおよびアンタゴニストの両方において、好ましい実施の形態は 、hAC5遺伝子によってコードされるアミノ酸配列を有するクラスの化合物で ある。また、本発明は1、2、3またはそれ以上のアミノ酸残基が遺伝的にコー ドされないものによって置換されている化合物を包含する。また、本発明に包含 されるのは、これら特定のペプチドをコードする単離されたDNA分子である。 酵素の細胞外ドメインが細胞外活動、例えば酵素調節に鍵となる役割を果たす と考えられている。従って、その配列が図1アミノ酸配列および図4のヒドロパ シー分析から近似されうる前記hAC5の細胞外ドメインに、全体または一部が 対応するアミノ酸配列を有するアゴニストおよびアンタゴニストを本発明は包含 する。hAC5のN末端、またはC末端、またはその配列が図1のアミノ酸配列 および前記ヒドロパシー分析から近似されうるhAC5の細胞内ドメイン(IC D)の1つに、結合することによって前記酵素の機能に影響を及ぼすアゴニスト およびアンタゴニストをも本発明は包含する。 他のアデニル酸シクラーゼ類において、前記TCDIVおよびカルボキシ末端 領域は、酵素活性、或いはGαまたはフォルスコリン相互作用で役割を果たすこ とが示されている。例えば、Whisnantら、前出を参照。従って、hAC5のIC DIVおよびカルボキシ末端領域のアミノ酸配列の全体または一部は、前記酵素 に結合し、酵素活性またはGas相互作用を阻害できる抗体或いはペプチドを設計 するのに特に有用であろうと期待される。 アデニル酸シクラーゼ類およびアイソフォーム活性に影響を及ぼすその因子の 理解が増すにつれて、ラショナルな医薬品設計が薬学研究の実行可能な代替法に なりつつある。アデニル酸シクラーゼの2つの保存された細胞内ドメイン(前記 C1およびC2ドメイン)が会合し活性な酵素を形成すると考えられている。これ は発現された組換えC1およびC2ドメインの両方を組合せた研究で実証された。 C1およびC2ドメインのいずれか単独では実質的な活性を持たないので、両方が 酵素活性を再構成するのに必要である。フォルスコリンとGasをたすと、前記2 つのドメインの会合を増加させることによって、前記系を刺激する。2つの別々 のドメインの会合に依存する酵素活性をモニターするアッセイを設計する ことによって、アンタゴニストに対してより高い感度が付与されることが期待さ れる。何故なら、多分より容易に乱されるであろうからである。他の研究によっ て、前記細胞内ドメインの保存された領域からの配列からなるペプチドは、洗浄 性の可溶化酵素調製物の阻害剤として作用することが実証されている。本発明は 、活性に関与するかもしれないモジュレーターの領域の範囲を定めるために小分 子阻害剤の設計に導くペプチドウオーキング(配列彷徨)戦略を用いることを意 図する。最後に、特性決定されていない、生理学的アデニル酸シクラーゼ、特に アイソフォーム特異性を示すものについての知識は、新規ACモジユレーターの 同定用の新しいアッセイを提供する。これらモジュレーターの多くはタンパク質 であり、そしてそのあるものは、酵母の2ハイブリッド系で「餌」としてアデニ ル酸シクラーゼ配列を用いながら同定できるかもしれないと期待される。別法と して、アデニル酸シクラーゼ抗体に捕まるとアデニル酸シクラーゼと共沈殿する タンパク質を同定できる。 本発明のペプチドアゴニストおよびアンタゴニストは、好ましくは長さ約10 〜100アミノ酸であり、さらに好ましくは長さ25〜75アミノ酸である。こ れらのペプチドは、当該技術分野で周知の標準的な固相または液相ペプチド合成 を用いて容易に調製することができる。さらに、前記ペプチドをコードするDN Aは、商業的に入手可能なオリゴヌクレオチド合成機器を用いて合成することが でき、そして標準的な組換え生産系を用いて遺伝子操作的に製造される。前記ペ プチドに遺伝子でコードされないアミノ酸が含まれることになるとき、固相ペプ チド合成を用いる製造が必要である。 本発明の別の側面は、診断および治療の双方の用途を持つ抗体に属する。抗体 はhAC5ポリペプチドの特定の領域に結合することにより、アゴニストまたは アンタゴニストとして作用しうる。これらの抗体は、また、例えば遺伝子の発現 を測定するイムノアッセイ等、hAC5の存在量を検出するイムノアッセイでの 用途も考えられる。一般に、アデニル酸シクラーゼに対する抗体、また、さらに 重要である、アデニル酸シクラーゼの特定のアイソフォームを認識しうる抗体は 、アデニル酸シクラーゼ蛋白の組織分布および広がりを評価するための有用な手 段である。アデニル酸シクラーゼアイソフォーム間の相違点である領域およびこ れ らの領域の抗原としての可能性を同定することにより、免疫処置に利用するため に、これらの配列に対する合成ペプチド或いは組換えタンパク質を創造すること が可能である。得られる抗体群は、前記免疫原のユニークな性質および他の発現 されたアイソフォームとの反応性に基づく特異性について特性決定されることに なろう。種々の組織中のアイソフォーム蛋白の検出は、Westernブロット 法により容易にモニターすることができる。しかしながら、免疫組織化学分析も また有用であろう。この情報は、興味あるアデニル酸シタラーゼ標的を特定する のに有用であり、例えば、心臓血管系の疾病、喘息、肥満症における標的等対す る有用な治療戦略について貴重な洞察を提供する。 本発明の抗体は、当該技術分野で周知である手法によって調製することができ る。該抗体はモノクローナルであってもよいし、ポリクローナルであってもよい が、hAC5に対して高度に特異的であり、そしてhAC5ポリペプチドの全体 またはその一部領域に対しこしらえることができるモノクローナル抗体であるこ とが好ましい。抗体は、ポリペプチドが十分な長さを持つ場合は、ペプチドのハ プテン(免疫原)単体を、或いは、所望ならばまたは必要に応じて、免疫原性を 増強するために適当なキャリアに結合させて、適合する哺乳類宿主(典型的には ウサキ、ラット、マウス、ヤギ、ヒト等)に適切な免疫化プロトコルに則り免疫 処置することにより調製される。典型的には、免疫原はhAC5ポリペプチドの うち抗体の標的となるべく意図する一部分を含む。重要な領域は、hAC5酵素 の細胞外ドメインに相当する領域、任意のタンパク分解切断領域、および活性化 に必須である細胞外ドメインセグメントのうちの任意のものを含む。例えば、ウ シ血清アルブミン、スカシガイ・ヘモシアニン(KLH)等のキャリア、または その他のキャリア・タンパク質との免疫原抱合体(コンジュゲート)を調製する 方法は、当該技術分野で周知である。ある場合には、例えばカルボジイミド試薬 を用いる直接コンジュゲーションが効果的であるが、他の場合には、ハプテンへ の接近性を提供するためにPierce Chemicald社(イリノイ州Ro ckford)によって供給されるもの等、結合試薬を用いることが望ましい。 ハプテンは、例えば、キャリアへの結合を容易にするためにシステイン残基でN 末端またはC末端を延長するか、或いはシステイン残基をさしいれることができ る。所望の免疫原を宿主に、適当な期間にわたり適当なアジュバントを用いて注 射により投与し、続いて、血清を採取する。免疫処置の期間中、抗体価を測定し 、抗体形成の適否を判定する。 ポリクローナル抗体は、多くの診断および研究目的に適しており、そして容易 に調製される。モノクローナル抗体が治療用途にはしばしば好まれ、そして維持 したハイブリッド細胞系でさらに分泌されたタンパク質を回収することにより調 製される。一般に知られているように、Kohle,Milstein Nature 256:495-497(1 975)に記載された方法またはその改変法によってリンパ球または牌臓細胞を不死 化し、所望のモノクローナル抗体を分泌する不死化細胞株を作成できる。その後 、抗原が感作免疫原またはhAC5をその表面に発現する細胞であるイムノアッ セイ法で不死化細胞株をスクリーニングする。所望の抗体を分泌することが確認 された細胞は、インビトロまで培養するか、または腹水中で生産することが可能 である。抗体は、それから培養上清または腹水液の上清から回収する。 別法として、抗体を組換え技術によって調製することができる。すなわち、天 然の抗体の特異的結合に必要なアミノ酸配列を最小限コードするヌクレオチド配 列またはその変異体版のクローニングおよび発現である。hAC5の所望の領域 に特異的に結合する抗体の領域は、複数の種に由来する領域を有するキメラ体と して生産することもできる。 抗体は完全なイムノブロブリンまたはその断片を含んでいてもよいし、IgA 、IgD、IgE、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3およびIgM 等の種々のクラスおよびアイソタイプを含む。断片とは、Fab。FV、F(a b’)2、Fab’その他を含む。自然本来の抗体と同様、免疫学的に有意な部分 を含む前記モノクローナル断片または前記ポリクローナル抗血清は、アンタゴニ ストとして使用できる。Fab、Fab'、F(ab')2断片等の免疫学的に活性な断片を使 用することは、これらの断片がイムノグロブリン全体とは異なる免疫原性を有し 、且つ、イムノグロブリンの定常ドメインから生じる生物活性を帯びていないた め、特に治療目的の用途において、好ましいことがある。 このようにして生産された抗体は、単にhAC5ポリペプチドに対しての潜在 的アゴニストまたはアンタゴニストとして、本発明のアッセイにおいてアゴニス トまたはアンタゴニストとしての役割を果たす意味で有用であるばかりでなく、 hAC5酵素を検出するイムノアッセイにも有用である。このようにして、これ らの抗体は、イメージング試薬とカップリング反応させて被検者に投与すること ができ、対象とする組織におけるhAC5の発現が過少であるか過剰であるかを 確かめるために局在する抗体の検出を可能にする。さらに、これらの試薬はイン ビトロで、例えば組換え宿主細胞表面上でのhAC5の生産が好結果であること を検出するのに有用である。 本発明のさらに別の側面は、本発明の化合物および抗体を含む薬学的組成物に 関する。本発明のアゴニストおよびアンタゴニストは、次の分野で治療的用途を 有する。すなわち、(1)例えば、副腎、心臓または脳に通常、見出されるが、 組織中のhAC5酵素の異所性活性に起因する疾病を治療すること、(2)症状 がhAC5の活性を促進するか、或いは阻害することによって改善されうる疾病 を治療することである。 本発明のペプチドアゴニストおよびアンタゴニストは、当該技術分野で周知で あるような全身投与用の従来の製剤で投与することができる。典型的な製剤は、 例えば、Remington's Pharmaceutical Science,Mack Publishing Co.,Easton PA ,最新版で見つかるであろう。 全身投与の好ましい形態は、典型的には静脈経由による注射を含む。皮下、筋 肉、または腹腔内等の他の注射経路もまた使用することができる。ごく最近、ペ プチドの全身投与用の別の手段が考案され、それは胆汁酸塩、フシジン酸または 他の洗剤等の透過剤を用いる経粘膜投与および経皮投与を含む。さらに、腸溶製 剤またはカプセル化製剤に適切に配合されると、経口投与もまた可能である。ま た、これらの化合物の投与は、軟膏、泥膏、ゲル等の形状で局所そして/または 局在化投与であってよい。 要求される用量の範囲は、ペプチドの選択、投与経路、製剤の性質、患者の状 態および担当医の判断による。しかしながら、適当な用量の範囲は患者の体重あ たり0.1〜100μg/kgの範囲である。しかし、使用可能なペプチドの種 類および各種投与経路の異なる効率を考慮して、必要な用量における広範囲な変 化が予期されるべきである。例えば、経口投与は、静脈注射による投与より高い 用量が必要であると予期されるであろう。これらの用量レベルでの変化は、当該 技術分野でよく理解されているように、最適化のための標準の経験的な作業を用 いて調整できる。 また、本発明はhAC5をコードするDNAまたはRNA分子の翻訳の転写に 干渉することによりhAC5の発現をブロックするか、または調節するための各 種の手法を治療、予防および研究に使用することにも関する。これは、細胞中で hAC5の発現を阻害若しくは制御する方法であって、hAC5をコードするD NAに対して、またはhAC5をコードするDNAの発現を制御するDNAに対 してアンチセンスである、或いはそれらと3本鎖ヘリックスを形成するオリゴヌ クレオチドを、hAC5の発現を阻害若しくは制御するのに充分な量で前記細胞 に提供し、それによって該発現を阻害若しくは制御することからなる方法を含む 。次の方法もまたこれに含まれている。被検者中でhAC5の発現を阻害若しく は制御する方法であって、hAC5をコードするDNAに対して、またはhAC 5をコードするDNAの発現を制御するDNAに対してアンチセンスである、或 いはそれらと3本鎖ヘリックスを形成するオリゴヌクレオチドを、hAC5の発 現を阻害若しくは制御するのに充分な量で前記被検者に投与し、それによって該 発現を阻害若しくは制御することからなる方法である。上記の方法でのアンチセ ンス分子または3本鎖ヘリックス形成分子は、好ましくはDNAまたはRNAオ リゴヌクレオチドである。以下、これらの用途をさらに詳しく説明する。 細胞におけるアンチセンスRNAの構造的発現は、哺乳動物および植物で約2 0の異なる遺伝子の発現を阻害することが示されてきた。そのリストは引き続き 増加している。Hamborら、J.Exp.Med.168:1237-1245(1988);Holtら、Proc.N atl.Acad.Sci.83:4794-4798(1986);Izantら、Cell 36:1007-1015(1984);Izan tら、Science 229:345-352(1985)およびDe Benedettiら、Proc.Natl.Acad.Sc i.84:658-662(1987)。アンチセンス効果の可能な機構は、翻訳の阻害またはス プライシングの防止であり、それらの両方ともインビトロで観察されてきた。ス プライシングの干渉はイントロン配列の使用を可能にする(Hunroe,EMBO.J. 7:2523-2532(1988))。該配列はより少なく保存されているはずであり、その為 1つの種のタンパク質の発現を阻害するが、別の種においてその同族 体を阻害しない、より高度の特異性を結果としてもたらす。 治療的遺伝子の制御は「アンチセンス」アプローチを用いて達成されるが、そ こで細胞または生物体中の標的遺伝子の機能が、好ましくはオリゴヌクレオチド であり、該特定の標的遺伝子の発現を阻害するために特異的に作用するアンチセ ンスRNAをコードするDNAのトランスフェクションによってブロックされる 。前記アンチセンスRNAの配列は、それが阻害しようともくろむ前記遺伝子ま たはmRNAのセグメントに実質的に相補性がある、完全なまたは好ましくは部 分アンチセンスRNA転写体となるように設計されている。その作用がスプライ シング、転写、または翻訳のどのレベルにあるかにかかわらず、アンチセンスR NAが前記標的遺伝子(またはmRNA)にハイブリダイズでき、そして該標的 遺伝子の機能を阻害できるように相補性は充分でなければならない。過剰な実験 をすることなく当業者によって容易に識別可能であるが、阻害の程度は、阻害す るのに、或いは前記細胞を、標的遺伝子を発現不可能にするほど充分でなくては ならない。アンチセンスアプローチが特定の遺伝子発現をブロックするのに採用 されうるいくつかの知られた機構の1つにすぎないことを当業者は認識するであ ろう。 「アンチセンス」という用語は、RNA配列と同様にそれをコードするDNA 配列を意図する。前記RNA配列は、該アンチセンスRNAが、mRNAの翻訳 が阻害されるようにアンチセンスRNAと該mRNAとの間に分子ハイブリダイ ゼーションを起こすためにそれに対して特異的である特定のmRNA分子に充分 に相補性がある。このようなハイブリダイゼーションは、インビボ条件下、すな わち細胞の内部でおこらねばならない。アンチセンスRNAの作用は、細胞中で 遺伝子発現の特異的な阻害を結果としてもたらす。Alberら、“Molecular Biolo gy OF The Cell”,第2編,Garland Publishing,Inc.,New York,NY(1989)、 特に195〜196頁を参照。 本発明のアンチセンスRNAは、コード配列、3’若しくは5’非翻訳領域、 またはその他のイントロン配列を含む、標的mRNAのいくつかの部分のどこに ハイブリダイゼーション可能であってよい。好ましいアンチセンスRNAは、h mRNAに相補的であるものである。当業者にとって容易に認識できるように、 本発明で要求されるホモロジーの最小量は、他のmRNA分子の機能および他の 遺伝子の発現に影響を及ぼすことなく、特定の標的mRNAへのハイブリダイゼ ーションとその翻訳または機能の阻害を結果としてもたらすのに充分なものであ る。 アンチセンスRNAは、プロモーターを含む適当な制御配列とともに該アンチ センスRNAをコードするDNAが配置されたベクターとの形質転換、またはト ランスフェクションによって細胞に運搬される。 「3本鎖ヘリックス」または「トリプレックス」アプローチは、2本鎖DNA の主溝に結合し、共直線状トリプレックスを形成する合成オリゴヌクレオチドの 製造を含む。このようなトリプレックス形成は、細胞増殖を制御そして阻害する ことができる。例えば、Hoganら、米国特許5176996号;Cohenら、Sci.Amer.Dec 1994,p.76-82;Helene,Anticancer Drug 6:565-584(1991);Maher IIIら,Anti sense Res.Devel.1:227-281(Fall 1991);およびCrookら編"Antisensereserach and Applications",CRC Press,1993を参照。前記すべては、参考文献として 援用される。DNAオリゴヌクレオチドがトリプレックス形成によって2本鎖D NA標的に、遺伝子制御領域内で結合でき、それによって転写開始を抑制すると いう発見に、前記アプローチは部分的に基づいている(Cooneyら,Science 241:4 56(1988))。本発明は、例えばHoganら(前出)の方法を利用して、強固に そして特異的に、hAC5をコードするDNAの一部、またはその制御配列から なる2本鎖DNA標的に結合するオリゴヌクレオチドを設計する。従って、この ようなトリプレックスオリゴヌクレオチドは、この遺伝子の発現を選択的に操作 するための1つのクラスの薬剤として使用することができる。 そこで本発明は、細胞取りこみと標的hAC5コーディングDNA配列または その制御配列の2本鎖DNAへの結合に充分な量で、オリゴヌクレオチドが前記 2本鎖DNAに結合し共直線状トリプレックスを形成するように細胞に、オリゴ ヌクレオチドを提供するか、或いは被検者に合成オリゴヌクレオチドを投与する ことに向けられている。本方法は、インビトロまたはインビボにおいて細胞上で hAC5酵素の発現を阻害するのに使用される。好ましくは、標的配列がRNA 転写出発点に近接してDNAドメイン内に配置される。本方法は、この酵素の発 現に依存する細胞の増殖を阻害するのにも使用できる。また、本方法はこのよう なトリプレックス形成合成オリゴヌクレオチドを投与することによって細胞上で 発現するhAC5の相対的な量または割合を変化させるのに使用してもよい。 以下の実施例は、例示のためであり、本発明を制限することを意図しない。 実施例1 ヒト心臓cDNAライブラリーの構築とスクリーニング ヒト心臓全体をmRNAのソースとして使用した。ライブラリーはCLONE TECH社(カタログ番号HL3026a)の市販品を購入した。ライブラリー はラムダgt10ファージに加えて、オリゴdTプライマーおよびランダムプラ イマーの両方を使用して調製した。ラムダgt10ライブラリーの一次スクリー ニングはジェントル・ウォッシュ(あまりストリンジェントでない条件)で行っ た。プレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションを標準的な条件 で行った。適当なPCRAC断片をプローブとして使用した。 前記プローブを32P−dCTPを用いランダムプライマー法により放射標識し た。ハイブリダイゼーション後、ブロットをストリンジェントな条件を増しつつ ウォッシュし、それからオートラジオグラフィーを行った。1個の陽性クローン を得た。 次ぎの工程は、前記クローン中のインサートに全長cDNAが含まれることを 確認することであった。ヒト心臓ライブラリーから得られたすべての陽性クロー ンを適当なプラスミドにサブクローニングした。制限酵素マップを作成後、これ らをさらにサブクローニングし、ユニバーサルプライマーまたは合成オリゴマー を用いてシークェンシングした。シークェンシングはSeaquenase(Tab orら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:4767-4771(1987))を用い、双方向に2回 行った。 クローンをそれら自身で用いるか、またはシークェンシングした。そこでPC Rプライマーを生成するのに用いた。前記PCRプライマーを用いてRACE・ PCR法(cDNA末端の迅速増幅)(Frohman,M.A.,Methods Enzymol.218:3 40-362(1991))により、ヒト心臓mRNAから対象となるさらなるクローンを得 た。特に興味のある1つのクローンをプローブとして用い、別の ヒト心臓ライブラリーをスクリーニングした。さらに数個のクローンを得た。シ ークェンシングした結果、3783塩基のオープンリーディングフレームが翻訳 終結コドンであるTGAまで一続き(リードスルー)である(図1)ことが判明 した。このようにして、前記クローンは、1261アミノ酸のタンパク質をコー ドする。前記cDNAの全コーディング部分およびその演繹されたアミノ酸配列 を図1(それぞれ配列番号1および2)に示す。 これらのクローンからの1つ以上の断片をInvitrogen社から購入し たpcDNA3にサブクローニングした。全長cDNAを含む発現ベクターを命 名した。「SURE」と命名した適当な大腸菌株に挿入したこの発現ベクターの 試料を「特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約」に基 づき、ATCC(American Type Culture Collection,12301 Parklawn Drive, Rockvill,Md.20852)に1997年 日付で、寄託し、寄託番号ATCC 番を付与された。 実施例2 ヒトV型アデニル酸シクラーゼのクローニングと発現 当該技術分野において周知であるような組換えDNA技術を用いる適当な発現 システム中、心臓V型アデニル酸シクラーゼcDNAをクローニングし、発現す ることによってヒトV型アデニル酸シクラーゼを生産した。 精製したプラスミドをHEK-293細胞に電気穿孔法を用いてトランスフェクシ ョンした。前記細胞を適当な増殖媒地中で増殖し、それから洗浄した。トリプシ ン溶液を加えた後、細胞を保温し、回収し、そして増殖培地に再懸濁した。精製 したプラスミドを電気穿孔キュベットに加えた。細胞を前記DNAに加え、混合 液にパルス電圧を印加した。細胞−DNA混合液を適当な増殖培地中にプレーテ ィングした。プレートを保温した後、細胞を選択培地に置いた。 1261アミノ酸を有するhAC5をその二次構造についてKyteらの方法 (J.Mol.Biol.157:105-132(1982))で解析した。GeneWork2.45 版ソフトウェア(IntelliGenetics,Inc.、Mountain View;California)を用い てハイドロパシー・プロットを得、このアデニル酸シクラーゼアイソフォームの 膜関連構造を同定した。Kyteら方法(前出)をウィンドウサイズを5と設定 して用いた。 前記ハイドロパシー・プロット(図示せず)では膜貫通スパン領域を表す13 個のピークが出現した。ピーク1〜12が膜貫通スパン領域を表す。この結果か ら前記アデニル酸シクラーゼアイソフォームが12個の膜貫通スパン領域、並び に中央部分および末端に位置する大きい細胞質ループを持つ構造をしており、こ れは既に同定されたアイソフォームの構造一致することが指摘される。膜貫通部 のうち5番目(9番目と10番目の膜貫通スパン領域との間)の細胞外ループが 最大である。「−1」と命名したピークは、N末端に対応する。他のすべてのア イソフォームでは、N末端は細胞内である。ハイドロパシー・プロット上のピー ク「−1」の出現は、このアイソフォームのN末端が細胞外である可能性を提示 する。 実施例3 ヒトV型アデニル酸シクラーゼの評価 HEK-293細胞を用いた安定発現系においてhAC5の生化学的特性を決定し た。全コード配列を含むアデニル酸シクラーゼcDNA断片を適当なプラスミド 中に挿入した。 アッセイを行い、cAMP生成物の形成を測定した。前記DNAによって発現 されたhAC5酵素は活性であることが分かった。 実施例4 ヒトV型アデニル酸シクラーゼの組織分布 hAC5の組織分布を測定するため、各組織からのmRNAを用いてNort hernブロッティングを行った。グアニジユウムナトリウム(guanidium sodi um)およびオリゴdTカラムを用いて各ヒト組織からメッセンジャーRNAを精 製した。 ブロットはプローブを加える前に、適当な溶液中で、プレハイブリダイゼーシ ョンを行った。ハイブリダイゼーションを行い、続いてストリンジェントな条件 を漸増させながらウォッシュを行った。ブロットは、それからオートラジオグラ フィーにかけた。 Northernブロット解析の結果から、hAC5は心臓および脳組織で圧 倒的に発現していることが示された。脳が心臓よりいくらか少ない発現を示す。 特許、学会誌の論文、および教科書を含む上記で引用および言及された全ての 文献は、「援用する」と明言されているか否かにかかわらず本明細書の記載に参 考文献として援用される。 今、本発明を充分に記述し終わって、本発明の精神および範囲から逸脱するこ となく、そして過剰な実験をすることなしに、広範囲の等価なパラメーター、濃 度、および条件の中で同じことが実施できることを当業者は認識するであろう。 本発明は、特定の実施の形態に関連付けて説明されてきたが、さらなる変更が 可能であることが理解されるであろう。この応用は、本発明の原則に一般的に従 い、そして本発明が属する技術分野の中で公知または慣用的である実施の範囲内 に入り、添付された請求の範囲の範囲内に次のように以下記載された必須の特徴 に応用できるような、本開示からの逸脱を含む本発明のいかなる変形、使用、ま たは改変をも包含することを意図する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR, NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,L S,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL ,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR, BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,E E,ES,FI,GB,GE,GH,GM,GW,HR ,HU,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP, KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,L V,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI, SK,SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,U S,UZ,VN,YU,ZW

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1. 図1(配列番号2)のアミノ酸配列を含むことを特徴とする単離および精 製されたヒトV型アデニル酸シクラーゼポリペプチド。 2. ヒトV型アデニル酸シタラーゼをコードすることを特徴とする単離および 精製された核酸。 3. 図1(配列番号1)のヌクレオチド配列を含み、且つ生物活性ヒトV型ア デニル酸シクラーゼをコードすることを特徴とする単離および精製された核酸。 4. 可溶性の生物活性ヒトV型アデニル酸シクラーゼペプチド断片をコードす ることを特徴とする、請求項3に記載の核酸。 5. 請求項2に記載の核酸を発現ベクターに組み込むこと、前記ベクターで宿 主細胞を形質転換すること、そして該形質転換された宿主細胞を、遺伝子の発現 を結果としてもたらす条件下で培養することを含むことを特徴とするヒトV型ア デニル酸シクラーゼの生産方法。 6. 前記宿主細胞がバクテリア、ウイルス、酵母、昆虫、または哺乳動物細胞 株からなることを特徴とする、請求項5に記載の方法。 7. 前記宿主細胞HEK-293細胞であることを特徴とする、請求項6に記 載の方法。
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