JP4582432B2 - インクジェット記録媒体用耐水性向上剤及びそれを用いて製造されるインクジェット記録媒体 - Google Patents

インクジェット記録媒体用耐水性向上剤及びそれを用いて製造されるインクジェット記録媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録媒体用耐水性向上剤及びそれを用いて製造されるインクジェット記録媒体に関する。更に詳細には、紙等のインクジェット記録媒体上に水性インクを用いて印刷されたインクジェット印刷物の耐水性を向上させるインクジェット記録媒体用耐水性向上剤及びそれを用いて製造したインクジェット記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、種々の作動原理による飛翔手段を用いてインク滴を紙等のインクジェット記録媒体上に付着させることにより、画像・文字等を記録する方法である。インクジェット記録方法は、騒音の発生が少なく、高速印字、多色印字が容易であり、記録パターンの融通性が大きく、及び現像定着のプロセスが不要である等の利点を有するので、各種図形及びカラー画像等の記録装置として種々の用途において急速に普及している。
【0003】
インクジェット記録方法は、インクジェット記録媒体として普通紙の使用が可能であるが、良好な記録を得るためには、インクジェット記録媒体自体が次の2つの条件を満たしていることが必要である。第1の条件は、インクジェット記録媒体のインク吸収性がよく、インクジェット記録媒体表面に付着したインク滴が速やかに内部に浸透し、インクジェット記録面を手で触れてもインキで手が汚れず、見かけ上乾いた状態になること、第2の条件は、インクジェット記録媒体がインク滴を必要以上に拡散させず、インク滴によるドット径が必要以上に大きくならないことである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、インクジェット記録方法は、通常、水性インクを使用するので、インクジェット印刷物の耐水性に欠けるという大きな問題を抱えている。例えば、野外に掲示した場合、雨水がインクジェット印刷物にかかることにより、にじみが生じてインクジェット印刷物が色あせたり、印字した文字等が消失してしまうことがある。また、高湿環境下においては長時間保存するだけでにじみが生じ、インクジェット印刷物が色あせてしまうこともある。こうした傾向は、特にカラーインクジェット印刷物に多く見られる。
【0005】
インクジェット印刷物の耐水性を向上させる方法としては、例えば特開昭55−150396号公報に記載の記録シートに水性インクを用いて記録した後、該水性インク中の染料とレーキを形成する耐水化剤を付与するインクジェット記録の耐水化方法、特開昭56−84992号公報に記載のポリカチオン高分子電解質を少なくともその表面に含有する記録媒体を用いる方法、特開昭56−99693号公報に記載の陽イオン性界面活性剤を少なくともその表面に含有する記録媒体を用いる方法、及び特開平10−147057号公報に記載のジメチルアミン及びジエチルアミン等の2級アミンとアンモニアとエピハロヒドリンとを必須成分とする樹脂からなるインクジェット記録紙用添加剤等が提案されているが、いずれも、その耐水性は未だ満足できるものではなかった。
【0006】
また、特開平6−92012号公報には、2級アミンとエピハロヒドリンを反応して得られるカチオン性ポリマーをインクジェット記録用原紙表面に含有させたインクジェット記録用紙が開示されているが、2級アミンとエピハロヒドリンのモル比が適当でなく、重合度も適正な範囲でなかったため、十分な効果が得られなかった。
【0007】
さらに、類似技術として、特開平9−158076号公報に紙パルプの製造工程において、パルプスラリーに水溶性アニオン共重合体を添加し、両者が充分混合された後に、該混合物に水溶性カチオン性共重合体を添加することを特徴とするピッチコントロール方法が開示されている。これは、内添剤に関する発明であり、内添にともなって生ずるピッチ障害を抑制・防止するための方法として提案されたものである。
【0008】
本発明は、インクジェット記録媒体の基質に塗工することで、インクジェット印刷物の耐水性を向上させる耐水性向上剤及び、前記耐水性向上剤を含有する塗工液を塗工して成る耐水性の優れたインクジェット記録媒体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することを目的とする本発明の第1の態様は、2級アミン類(a)及びエピハロヒドリン類(b)のみを100:75〜60のモル比で反応させて得られる重量平均分子量が5000以下であるカチオン性ポリマー[A]を含有することを特徴とするインクジェット記録媒体用耐水性向上剤である。
【0010】
本発明の第2の態様は、カチオン性ポリマー[A]の重量平均分子量が600〜5000であることを特徴とする第1の態様のインクジェット記録媒体用耐水性向上剤である。
【0011】
本発明の第3の態様は、2級アミン類(a)がジメチルアミン及びジエチルアミンよりなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする第1の態様又は第2の態様のインクジェット記録媒体用耐水性向上剤である。
【0013】
本発明の第の態様は、第1〜第のいずれか一つの態様のインクジェット記録媒体用耐水性向上剤を含有する塗工液を塗工してなることを特徴とするインクジェット記録媒体である。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に本発明を詳細に説明する。本発明のインクジェット記録媒体用耐水性向上剤は、2級アミン類(a)と、エピハロヒドリン類(b)とを特定の比率で反応させて得たカチオン性ポリマー[A]を含有することを特徴とする。
【0015】
まず、本発明に使用するカチオン性ポリマー[A]について説明する。カチオン性ポリマー[A]の重合に使用する2級アミン類(a)は、一つの窒素原子に二つの炭化水素基及び水素が結合した化合物並びにヘテロ環内に窒素原子を有し、該窒素原子が水素を有している化合物である。
【0016】
前記2級アミン類(a)としては、例えば脂肪族2級アミン、芳香族2級アミン、脂環式2級アミン、ヘテロ環式2級アミン等が挙げられ、中でも脂肪族2級アミンを好ましい例として挙げられる。また、これらを2種以上併用することも可能である。
【0017】
脂肪族2級アミンとしては、具体的にはジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、メチルオクチルアミン、メチルラウリルアミン、及びジベンジルアミン等が挙げられる。
【0018】
芳香族2級アミンとしては、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン、N−ブチルアニリン、N−ペンチルアニリン、N−ヘキシルアニリン、N−オクチルアニリン、N−デシルアニリン、N−ラウリルアニリン、及びN−ベンジルアニリン等のN−アルキルアニリン、N−メチルトルイジン、N−エチルトルイジン、N−プロピルトルイジン、N−ブチルトルイジン、N−ペンチルトルイジン、N−ヘキシルトルイジン、N−オクチルトルイジン、N−デシルトルイジン、N−ラウリルトルイジン、及びN−ベンジルトルイジン等のN−アルキルトルイジン、並びに、N−メチルナフチルアミン、N−エチルナフチルアミン、N−プロピルナフチルアミン、N−ブチルナフチルアミン、N−ペンチルナフチルアミン、N−ヘキシルナフチルアミン、N−オクチルナフチルアミン、N−デシルナフチルアミン、N−ラウリルナフチルアミン、及びN−ベンジルナフチルアミン等のN−アルキルナフチルアミン等が挙げられる。
【0019】
その他の芳香族2級アミンとしては、ジフェニルアミン、N−フェニル−o−トルイジン、N−フェニル−m−トルイジン、N−フェニル−p−トルイジン、N−トルイル−o−トルイジン、N−トルイル−m−トルイジン、N−トルイル−p−トルイジン、N−フェニルナフチルアミン、及びN−トルイルナフチルアミン等の芳香環が窒素原子に2個結合してなるアミンが挙げられる。
【0020】
脂環式2級アミンとしては、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミン、N−プロピルシクロヘキシルアミン、N−ブチルシクロヘキシルアミン、N−ヘキシルシクロヘキシルアミン、N−オクチルシクロヘキシルアミン、N−デシルシクロヘキシルアミン、及びN−ラウリルシクロヘキシルアミン等のN−アルキルシクロヘキシルアミン、N−メチルシクロオクチルアミン、N−エチルシクロオクチルアミン、N−プロピルシクロオクチルアミン、N−ブチルシクロオクチルアミン、N−ヘキシルシクロオクチルアミン、N−オクチルシクロオクチルアミン、N−デシルシクロオクチルアミン、及びN−ラウリルシクロオクチルアミン等のN−アルキルシクロオクチルアミン、並びにジシクロヘキシルアミン、及びジシクロオクチルアミン等のジシクロアルキルアミンを挙げられる。
【0021】
ヘテロ環式2級アミンとしては、ピペリジン、ピロリジン、2−メチルピペリジン、及び4−メチルピペリジン等が挙げられる。
【0022】
これらの2級アミン類の中でも脂肪族2級アミンが好ましく、その中でもジメチルアミン及びジエチルアミンが好ましく、ジメチルアミンが特に好ましい。さらにはジメチルアミンを単独で用いることが特に好ましい。
【0023】
カチオン性ポリマー[A]の反応に使用するエピハロヒドリン類(b)としては、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、及びメチルエピクロルヒドリン等が挙げられる。また、これらを2種以上混合して用いることもできる。これらのエピハロヒドリン類の中でも、エピクロルヒドリンが特に好ましい。
【0024】
2級アミン類(a)とエピハロヒドリン類(b)との比率は100:75〜60モル%である。2級アミン類(a)100モル%に対するエピハロヒドリン類(b)のモル比が75モル%を越える場合、及び60モル%未満の場合にはインクジェット印刷物の耐水性が不十分となるので好ましくない。
【0025】
カチオン性ポリマー[A]は、2級アミン類(a)、エピハロヒドリン類(b)のみで構成される。
【0035】
次に、本発明のカチオン性ポリマー[A]の合成方法について説明する。
カチオン性ポリマー[A]の合成は、2級アミン類(a)とエピハロヒドリン類(b)とをどのような順序で反応させてもよい。例えば、2級アミン類(a)を予め反応器に仕込んでおき、この中にエピハロヒドリン類(b)を徐々に滴下する方法、2級アミン類(a)の一部を予め反応器に仕込んでおき、この中にエピハロヒドリン類(b)を徐々に滴下し、得られた反応混合物中に2級アミン類(a)を添加する方法、及びエピハロヒドリン類(b)を予め反応器に仕込んでおき、この中に2級アミン類(a)を徐々に滴下する方法等をとることができる。
【0036】
2級アミン類(a)とエピハロヒドリン類(b)との反応温度、反応時間に特に制限は無いが、原料が揮発しない温度が反応温度として好ましく、反応による発熱を制御できる時間が反応時間として好ましい。例えば、反応温度20〜120℃、反応時間2〜20時間で反応を行うことが出来る。反応は、固形分濃度が10〜80重量%、好ましくは20〜60重量%となる水溶液中で行うことが好ましいが、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール等の溶媒中で行うこともできる。
【0037】
反応終了後は、酸やアルカリを用いて得られたカチオン性ポリマー[A]のpHを適宜調整することができる。酸としては、硫酸、塩酸、シュウ酸、リン酸、蟻酸、酢酸、及びプロピオン酸等が使用可能であり、アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウム等が使用可能である。
【0038】
本発明のカチオン性ポリマー[A]の分子量に関係なく本発明の効果を得ることができるが、GPC−LALLS法により測定した重量平均分子量が600〜5000の範囲にある場合、耐水性効果において特に好ましい。
【0039】
本発明における分子量測定は、具体的にはGPC−LALLS法により、
カラム:東ソーTSKgel G4000PWxl+TSKgel G3000PWxl、
溶離液:0.5M CH3COOH+0.5M CH3COONa水溶液、
の条件で行った。
【0040】
本発明のインクジェット記録媒体用耐水性向上剤は、上記カチオン性ポリマー[A]を含有してなるが、取り扱い上、固形分濃度は10〜70重量%、粘度は5〜1000mPa・sであることが好ましい。
【0041】
次に本発明のインクジェット記録媒体の製造方法及びインクジェット記録媒体について説明する。本発明のインクジェット記録媒体は、上記インクジェット記録媒体用耐水性向上剤を含む塗工液を紙等のインクジェット記録媒体の基質に塗工することにより製造することができる。
【0042】
本発明のインクジェット記録媒体の基質としては紙が代表的であるが、布、樹脂、フイルム、及び合成紙等インクジェット印刷できるものであればいずれの材料をも選択することができる。
【0043】
本発明のインクジェット記録媒体用耐水性向上剤を含む塗工液の濃度は固形分として0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%であり、塗工量は固形分で0.02〜4g/m2、好ましくは0.2〜2g/m2である。
【0044】
インクジェット記録媒体の基質に使用されるインクジェット記録用原紙のパルプ原料としては、クラフトパルプ、及びサルファイトパルプ等の化学パルプの晒又は未晒パルプ、砕木パルプ、機械パルプ及びサーモメカニカルパルプ等の高収率パルプの晒又は未晒パルプ、並びに新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙及び脱墨古紙等の古紙パルプ等が挙げられる。
【0045】
填料、染料、酸性抄紙用ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系中性抄紙用サイズ剤、アルケニルコハク酸無水物系中性抄紙用サイズ剤、及び中性抄紙用ロジン系サイズ剤等のサイズ剤、ポリアクリルアミド等の乾燥紙力増強剤、ポリアミドエピクロルヒドリン等の湿潤紙力増強剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、並びに消泡剤等の添加物を、各々紙種に要求される物性を発現するために、必要に応じて使用することができる。
【0046】
填料としては、クレー、タルク、酸化チタン、アルミナ、重質又は軽質炭酸カルシウム、及びシリカ等が挙げられる。これらを併用することもできる。
【0047】
インクジェット記録媒体用耐水性向上剤を含む塗工液をインクジェット記録媒体の基質に塗工する塗工機としては、サイズプレス、フィルムプレス、ゲートロールコーター、ブレードコーター、カレンダー、バーコーター、ナイフコーター、及びエアーナイフコーター等が挙げられる。また、スプレー塗工機により基質表面に塗布することもできる。
【0048】
インクジェット記録媒体用耐水性向上剤を含む塗工液をインクジェット記録媒体の基質に塗工する際には、インクジェット記録媒体用耐水性向上剤を単独で塗工しても良いし、酸化澱粉、燐酸エステル化澱粉、自家変性澱粉、カチオン化澱粉、及び両性澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド類、及びアルギン酸ソーダ等の水溶性高分子、並びに合成高分子ラテックスを塗工液と併用して塗工することもできる。また、表面サイズ剤、防滑剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、粘度調整剤、シリカ等の白色顔料等、並びに特開平6−171207号公報、及び特開昭62−158084号公報に記載のものを塗工液と併用して塗工してもかまわない。併用して塗工する方法は耐水性向上剤と前記併用物とを混合して調製した液を塗工しても良いし、前記併用物をインクジェット記録媒体用耐水性向上剤と別々に順次塗工しても良い。
【0049】
インクジェット記録媒体への印刷は、ドロップオンデマンド方式、及び連続方式等、一般的ないずれのインクジェットプリント方式でも印刷することができる。インクジェットプリンタとしては、家庭用、及び業務用のいずれでも良い。家庭用インクジェットプリンタとしては、キヤノン(株)製のBJシリーズ、セイコーエプソン(株)製のPMシリーズ、及びヒューレットパッカードカンパニー製のHP DeskJetシリーズ等が使用できる。インクジェット印刷に使用するインクは、キヤノン(株)、セイコーエプソン(株)、及びヒューレットパッカードカンパニー等が各自、自社のプリンタ用に販売しているインク、並びにサイテックス社の業務用インクジェットプリンタ用SCITEX1007、1008、1011、1040、4107等が使用できる。
【0050】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、%は特に断わりがない限り重量%を意味する。
【0051】
比較例1
攪拌機、温度計、還流冷却管及び窒素ガス導入管を付した500mlの四つ口フラスコに水80g、50%ジメチルアミン水溶液90.2g(1モル)を仕込み、窒素ガス導入下で40℃を越えないように冷却しながらエピクロルヒドリン83.3g(0.9モル)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃まで昇温させ3時間反応させた。その後、硫酸及び水にて反応液をpH5、固形分濃度50%となるように調整し、粘度18mPa・s、重量平均分子量2500のカチオン性ポリマーからなるインクジェット記録媒体用耐水性向上剤Cを得た。このインクジェット記録媒体用耐水性向上剤Cの物性値を表2に示す。
【0052】
(実施例
攪拌機、温度計、還流冷却管及び窒素ガス導入管を付した500mlの四つ口フラスコに水70g、エピクロルヒドリン69.4g(0.75モル)を仕込み、窒素ガス導入下で40℃を越えないように冷却しながら50%ジメチルアミン水溶液90.2g(1モル)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃まで昇温させ3時間反応させた。その後、硫酸及び水にて反応液をpH5、固形分濃度50%となるように調整し、粘度15mPa・s、重量平均分子量1300のカチオン性ポリマーからなるインクジェット記録媒体用耐水性向上剤Dを得た。このインクジェット記録媒体用耐水性向上剤Dの物性値を表2に示す。
【0053】
比較例2
攪拌機、温度計、還流冷却管及び窒素ガス導入管を付した500mlの四つ口フラスコに水80g、50%ジメチルアミン水溶液90.2g(1モル)及びジエチレントリアミン2.1g(0.02モル)を仕込み、窒素ガス導入下で40℃を越えないように冷却しながらエピクロルヒドリン83.3g(0.9モル)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、70℃まで昇温させ3時間反応させた。その後、硫酸及び水にて反応液をpH5、固形分濃度50%となるように調整し、粘度18mPa・s、重量平均分子量4100のカチオン性ポリマーからなるインクジェット記録媒体用耐水性向上剤Eを得た。このインクジェット記録媒体用耐水性向上剤Eの物性値を表2に示す。
【0054】
(実施例
攪拌機、温度計、還流冷却管及び窒素ガス導入管を付した500mlの四つ口フラスコに水60g、50%ジメチルアミン水溶液85.6g(0.95モル)及びジエチルアミン3.7g(0.05モル)を仕込み、窒素ガス導入下で30℃を越えないように冷却しながらエピクロルヒドリン60.1g(0.65モル)を3時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃まで昇温させ2時間反応させ次いで、80℃まで昇温させ更に1.5時間反応させた。その後、硫酸及び水にて反応液をpH5、固形分濃度50%となるように調整し、粘度12mPa・s、重量平均分子量700のカチオン性ポリマーからなるインクジェット記録媒体用耐水性向上剤Fを得た。このインクジェット記録媒体用耐水性向上剤Fの物性値を表2に示す。
【0055】
比較例3
攪拌機、温度計、還流冷却管及び窒素ガス導入管を付した500mlの四つ口フラスコに水60g、50%ジメチルアミン水溶液90.2g(1モル)及び90%モノエタノールアミン水溶液6.8g(0.1モル)を仕込み、窒素ガス導入下で40℃を越えないように冷却しながらエピクロルヒドリン74.0g(0.8モル)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃まで昇温させ5時間反応させた。その後、硫酸及び水にて反応液をpH5、固形分濃度50%となるように調整し、粘度13mPa・s、重量平均分子量1300のカチオン性ポリマーからなるインクジェット記録媒体用耐水性向上剤Gを得た。このインクジェット記録媒体用耐水性向上剤Gの物性値を表2に示す。
【0056】
(比較例
攪拌機、温度計、還流冷却管及び窒素ガス導入管を付した500mlの四つ口フラスコに水80g、50%ジメチルアミン水溶液90.2g(1モル)を仕込み、窒素ガス導入下で40℃を越えないように冷却しながらエピクロルヒドリン92.5g(1モル)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃まで昇温させ3時間反応させた。その後、硫酸及び水にて反応液をpH5、固形分濃度50%となるように調整し、粘度30mPa・s、重量平均分子量6600のカチオン性ポリマーからなるインクジェット記録媒体用耐水性向上剤hを得た。このインクジェット記録媒体用耐水性向上剤hの物性値を表2に示す。
【0057】
(比較例
攪拌機、温度計、還流冷却管及び窒素ガス導入管を付した500mlの四つ口フラスコに水70g、50%ジメチルアミン水溶液90.2g(1モル)及び28%アンモニア水6.1g(0.1モル)を仕込み、窒素ガス導入下で40℃を越えないように冷却しながらエピクロルヒドリン101.8g(1.1モル)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃まで昇温させ5時間反応させた。その後、硫酸及び水にて反応液をpH5、固形分濃度50%となるように調整し、粘度200mPa・s、重量平均分子量12000のカチオン性ポリマーからなるインクジェット記録媒体用耐水性向上剤iを得た。このインクジェット記録媒体用耐水性向上剤iの物性値を表2に示す。
【0058】
比較例6)
比較例1で得たインクジェット記録媒体用耐水性向上剤C80gをMS−3800(日本食品化工(株)製の酸化澱粉)の6%水溶液920gに加え、インクジェット記録媒体用耐水性向上剤の固形分濃度が4%となる塗工液を調整した。この塗工液を、坪量80g/m2の中性紙に固形分塗工量が2g/m2となるようサイズプレスを用いて両面塗工し、ドラムドライヤーを用いて80℃、50秒の条件で乾燥させた。乾燥後、20℃、相対湿度65%の恒温恒湿室中で24時間調湿し、インクジェット記録媒体Jを得た。その後、耐水性評価試験に供した。耐水性評価試験の結果を表3に示す。
【0059】
(実施例3、4、比較例6〜10
実施例1、2、及び比較例2〜5で得たインクジェット記録媒体用耐水性向上剤D〜G、及びh、iについても比較例6と同様にしてインクジェット記録媒体K〜N、及びo、pを得た。その後、耐水性評価試験に供した。耐水性評価試験の結果を表3に示す。
【0060】
(比較例11
インクジェット記録媒体用耐水性向上剤Cの代わりに水を用いて比較例6と同様にしてインクジェット記録媒体qを得た。その後、耐水性評価試験に供した。耐水性評価試験の結果を表3に示す。
【0061】
評価試験方法
実施例3、4、比較例6〜11で得た用いたインクジェット記録媒体の評価試験は得られた各インクジェット記録媒体J〜N、o〜qにインクジェットプリンタで印刷した後、以下の測定方法に準じて行った。インクジェットプリンターはキヤノン(株)製のBJC−455Jを、インクはサイテックス社のインク(黒インク:SCITEX1007、青インク:SCITEX4107)を使用した。
【0062】
耐水性評価試験
黒インク又は青インクによる印刷がされたインクジェット記録媒体を25℃のイオン交換水に1分間浸漬し、印刷の滲み発生の有無、及び発生した滲みの状態を肉眼で観察し、優5〜劣1に到る等級により段階的に評価した。
【0063】
評価基準は以下の通りである。
優5 印刷の滲みが全く発生しない。
良4 印刷の滲みがわずかに発生する。
並3 印刷の滲みが発生するが文字の判別に問題はない。
可2 印刷の滲みがひどく、文字の判別が困難となる。
劣1 印刷の滲みがひどく、文字が判別出来ない。
【0064】
インクジェット記録媒体が耐水性に優れると判定するには、耐水性の評価値が4以上必要であると考える。
【0065】
同じ条件で作製した印刷がされたインクジェット記録媒体3枚について耐水性評価試験を行い、評価の平均値を表3に示した。
【0066】
【表1】
耐水性向上剤の組成
Figure 0004582432
【0067】
表中の略号の説明
DMA :ジメチルアミン
EpiCl:エピクロルヒドリン
DETA :ジエチレントリアミン
DEA :ジエチルアミン
MEA :モノエタノールアミン
【0068】
【表2】
耐水性向上剤の物性
Figure 0004582432
【0069】
【表3】
インクジェット記録媒体の耐水性評価
Figure 0004582432
【0070】
【発明の効果】
本発明の耐水性向上剤は、インクジェット記録媒体の基質に塗工することで、インクジェット印刷物の耐水性を向上させた。また、本発明のインクジェット記録媒体は、水性インクを用いて印刷した際に、優れた耐水性が得られた。

Claims (4)

  1. 2級アミン類(a)及びエピハロヒドリン類(b)のみを100:75〜60のモル比で反応させて得られる重量平均分子量が5000以下であるカチオン性ポリマー[A]を含有することを特徴とするインクジェット記録媒体用耐水性向上剤。
  2. カチオン性ポリマー[A]の重量平均分子量が600〜5000であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体用耐水性向上剤。
  3. 2級アミン類(a)がジメチルアミン及びジエチルアミンよりなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録媒体用耐水性向上剤。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体用耐水性向上剤を含有する塗工液を塗工して成ることを特徴とするインクジェット記録媒体。
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