以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
まず、本発明の第1の実施の形態に係る共振器について説明する。
図1は、本実施の形態に係る共振器の基本構成を示している。この共振器は、例えばアンテナやフィルタを構成する部品として用いることができる。この共振器は、一端が開放端とされ、他端が共振時に短絡端として機能することにより互いにインターディジタル結合された一対の1/4波長共振器10,20と、一対の1/4波長共振器10,20に接続された一対の平衡端子4A,4Bと、一対の1/4波長共振器10,20の他端(共振時における短絡端)同士を導通する接続導体8と、接続導体8に接続された直流電圧印加端子4Cとを備えている。一対の平衡端子4A,4Bには、図示しないIC等の外部の回路が接続される。
なお、この共振器の主要な構成要素は、後述の具体的な構成例に示すように、TEM(Transverse Electro Magnetic)線路により構成されている。TEM線路は、例えばストリップラインなどの導体パターンや誘電体基板内部に形成された貫通導体などで構成することができる。なお、TEM線路とは、電界および磁界が共に電磁波の進行方向に垂直な断面内にのみ存在する電磁波(TEM波)を伝送する伝送線路である。
一対の1/4波長共振器10,20は、回転対称軸5を有し、全体的に回転対称な構造とされている。一対の1/4波長共振器10,20のうち、一方の1/4波長共振器10には一方の平衡端子4Aが接続され、他方の1/4波長共振器20には他方の平衡端子4Bが接続されている。一対の平衡端子4A,4Bは、回転対称軸5に対して互いに回転対称となる位置において、一対の1/4波長共振器10,20に接続されていることが好ましい。これにより、バランス特性に優れた状態にすることができる。
ここで、図2を参照して、この共振器におけるインターディジタル結合の構造について説明する。通常、インターディジタル結合とは、図2に示したように、一対の1/4波長共振器10,20の一端を開放端、他端を短絡端とし、一方の1/4波長共振器10の開放端と他方の1/4波長共振器20の短絡端とが対向すると共に、一方の1/4波長共振器10の短絡端と他方の1/4波長共振器20の開放端とが対向するように配置して一対の1/4波長共振器10,20を電磁結合させることをいう。このため通常、他端を短絡端とするために、他端をグランド電極に接続し、物理的にグランド電位(0V)に落としている。しかしながら、実使用上、インターディジタル結合させるためには、他端がグランド電位になっている必要はなく、交流的にゼロ電位となっていれば良い。一方、共振時の動作共振周波数においては、一対の1/4波長共振器10,20はグランド電極に接続されていなくとも、他端が交流的にゼロ電位となる(共振時に共振周波数成分がゼロ電位となる)。すなわち、共振時の動作共振周波数においては、自動的に他端が短絡端として機能する。本実施の形態においては、この性質により、一対の1/4波長共振器10,20がインターディジタル結合されている。
なお、本実施の形態において、「他端が共振時に短絡端として機能する」とは、他端がグランド電位に接続されているということではなく、共振時における電界分布をみたときに、他端が少なくとも共振時に交流的にゼロ電位となっていること(すなわち他端において共振時に共振周波数成分がゼロ電位となっていること)を意味する。この場合、直流的なバイアス電圧が印加されていたとしても、交流的にゼロ電位となっていれば短絡端として機能する。また、「インターディジタル結合された一対の1/4波長共振器」とは、一方の1/4波長共振器10の開放端と他方の1/4波長共振器20の共振時における短絡端とが対向すると共に、一方の1/4波長共振器10の共振時における短絡端と他方の1/4波長共振器20の開放端とが対向するように配置されることで、互いに電磁結合された共振器のことをいう。
一対の1/4波長共振器10,20は、後述するように、共振時に強いインターディジタル結合がなされていることで、第1の共振周波数f1で共振する第1の共振モードと第1の共振周波数f1よりも低い第2の共振周波数f2で共振する第2の共振モードとを有している。より詳しくは、インターディジタル結合していないときの各1/4波長共振器10,20の単体での共振周波数をf0としたとき、単体での共振周波数f0よりも高い第1の共振周波数f1で共振する第1の共振モードと単体での共振周波数f0よりも低い第2の共振周波数f2で共振する第2の共振モードとを有している。そして、動作周波数が第2の共振周波数f2となるように構成されている。
次に、本実施の形態に係る共振器の作用を説明する。
この共振器では、一対の1/4波長共振器10,20の短絡端同士が接続導体8により導通され、その接続導体8に直流電圧印加端子4Cが接続されて直流電圧が供給される。ここで、一対の1/4波長共振器10,20をインターディジタル結合させるためには通常、図2に示したように、各1/4波長共振器の一端を開放端、他端を短絡端にするために、他端をグランド電極に接続し、物理的にグランド電位に落としている。しかしながら、物理的にグランド電位に落とすと、直流電圧を供給したときに電力がグランドで消費されてしまい、負荷に電力が伝わらない。一方、上述したように各1/4波長共振器はグランド電極に接続されていなくとも、共振時には一端が開放端、他端が交流的にゼロ電位となる。本実施の形態では、この共振時の性質を利用することで、一対の1/4波長共振器10,20の他端をグランド電極に接続することなく、共振時に等価的にインターディジタル結合がなされる。この場合、他端がグランド電極に接続されていないので、一対の1/4波長共振器10,20の他端(短絡端)間に直流電圧印加端子4Cを接続することで、電力がグランドで消費されず、一対の1/4波長共振器10,20に直流電圧が供給される。これにより、一対の平衡端子4A,4Bに流れる平衡信号に対して直流的にバイアス電圧が印加され、一対の平衡端子4A,4Bを介して図示しない外部の回路に対して電源電圧の供給が可能となる。
また、この共振器では、共振時の動作共振周波数においては、図2に示したように、等価的に、一端が開放端、他端が短絡端とされた一対の1/4波長共振器10,20がインターディジタル結合された1つの共振器が形成される。ここで、一対の1/4波長共振器10,20をインターディジタル型で、かつ強く結合させると、インターディジタル結合させていないときの各共振器単体での共振周波数f0(例えば物理的な1/4波長の長さで決まる共振周波数)に対し周波数が高い第1の共振周波数f1で共振する第1の共振モードと、共振周波数f0よりも低い第2の共振周波数f2で共振する第2の共振モードとの2つのモードが現れ、共振周波数が2つに分離する。この場合において、物理的な長さに対応する共振周波数f0よりも周波数の低い第2の共振周波数f2を、共振器としての動作周波数に設定することで、動作周波数を共振周波数f0に設定した場合よりも小型化が図られる。
次にこのインターディジタル結合することにより得られる作用、効果についてより詳しく説明する。TEM線路からなる2つの共振器を結合させる手法として、一般にコムライン結合とインターディジタル結合との2種類を挙げることができる。このうち、インターディジタル結合は、非常に強い結合が得られることが知られている。
インターディジタル結合した一対の1/4波長共振器10,20では、共振状態を2つの固有な共振モードに分けることができる。図3は、インターディジタル結合した一対の1/4波長共振器10,20における第1の共振モードを示し、図4は、その第2の共振モードを示している。なお、図3および図4において、破線で示した曲線は、各共振器における電界Eの分布を示している。また、図3および図4では、一対の1/4波長共振器10,20の共振時の状態を示しており、他端をグランドの状態としているが、これは上述した交流的なゼロ電位であることを意味している。
第1の共振モードでは、一対の1/4波長共振器10,20のそれぞれにおいて開放端側から短絡端側に電流iが流れ、それぞれに流れる電流iの向きが逆方向となる。この第1の共振モードでは、一対の1/4波長共振器10,20で電磁波が同相に励振されている。
一方、第2の共振モードでは、一方の1/4波長共振器10では開放端側から短絡端側に電流iが流れると共に、他方の1/4波長共振器20では短絡端側から開放端側に電流iが流れ、それぞれに流れる電流iの向きが同方向となる。すなわち、この第2の共振モードでは、電界Eの分布を見ても分かるように、一対の1/4波長共振器10,20で電磁波が逆相に励振されている。この第2の共振モードでは、一対の1/4波長共振器全体の物理的な回転対称軸に対して互いに回転対称な位置で、電界Eの位相が180°異なる。
ここで、回転対称構造の場合、第1の共振モードの共振周波数は、以下の式(1A)のf
1で表され、第2の共振モードの共振周波数は、以下の式(1B)のf
2で表される。式(1A),(1B)において、cは光速、ε
rは実効比誘電率、lは共振器の長さを表す。
また、Zeは偶モードの特性インピーダンス、ZOは奇モードの特性インピーダンスを表す。左右対称型のカップリング伝送線路において、その伝送線路に伝搬する伝送モードは、偶モードと奇モードとの2種類の独立なモード(互いに干渉しない)に分解される。
図5(A)は、そのカップリング伝送線路の奇モードでの電界Eの分布を示し、図5(B)は偶モードでの電界Eの分布を示している。なお、図5(A),図5(B)において、外周部分はグランド層50、内部には左右対称の導体線路51,52が形成されている。図5(A),図5(B)では、カップリング伝送線路の伝送方向に直交する断面内での電界分布を示しており、信号の伝送方向は紙面に対して直交する方向である。
図5(A)に示したように、奇モードでは、導体線路51,52の対称面に対して電界が垂直に交わり、対称面が仮想的な電気壁53Eとなる。図6(A)は、図5(A)と等価な伝送線路を示している。図6(A)に示したように、対称面を実際の電気壁53E(ゼロ電位の壁、グランド)に置き換えることで、1つの導体線路51だけの線路と等価な構造にすることができる。図6(A)に示した線路での特性インピーダンスが、上記式(1A),(1B)での奇モードの特性インピーダンスZOとなる。
一方、偶モードでは、図5(B)に示したように導体線路51,52の対称面に対して電界が平衡になり、磁界が対称面に対して垂直に交わる。偶モードでは、対称面が仮想的な磁気壁53Hとなる。図6(B)は、図5(B)と等価な伝送線路を示している。図6(B)に示したように、対称面を実際の磁気壁53H(インピーダンス無限大の壁)に置き換えることで、1つの導体線路51だけの線路と等価な構造にすることができる。図6(B)に示した線路での特性インピーダンスが、上記式(1A),(1B)での偶モードの特性インピーダンスZeとなる。
ここで、一般的に伝送線路の特性インピーダンスZは、信号ラインの単位長さ当たりのグランドに対する容量Cと、信号ラインの単位長さ当たりのインダクタンス成分Lとの比で表現される。すなわち、
Z=√(L/C) ……(2)
なお、√は、(L/C)全体の平方根を取ることを示す。
奇モードでの特性インピーダンスZOは、図6(A)の線路構造から、対称面がグランド(電気壁53E)となりグランドに対する容量Cが大きくなるので、(2)式から、ZOの値が小さくなる。一方、偶モードでの特性インピーダンスZeは、図6(B)の線路構造から、対称面が磁気壁53Hとなるので容量Cが小さくなり、(2)式から、Zeの値が大きくなる。
このことを踏まえてインターディジタル結合した一対の1/4波長共振器10,20の共振モードの共振周波数である式(1A),(1B)を検討する。アークタンジェントの関数は単調増加の関数であるので、式(1A),(1B)においてtan-1に係る部分が大きくなればなるほど共振周波数は大きくなるし、小さくなればなるほど共振周波数は小さくなる。すなわち、奇モードでの特性インピーダンスZOの値が小さくなり、偶モードでの特性インピーダンスZeの値が大きくなって、それらの差が大きくなればなるほど、式(1A)から第1の共振モードの共振周波数f1は大きくなり、式(1B)から第2の共振モードの共振周波数f2は小さくなる。
従って、結合する伝送路の対称面の比率を大きくしてやれば、第1の共振周波数f1と第2の共振周波数f2は、図7に示したように互いに離れていくことになる。なお、図7は、インターディジタル結合された一対の1/4波長共振器10,20における共振周波数の分布状態を示している。第1の共振周波数f1と第2の共振周波数f2の中間の共振周波数f0は、線路の物理的な長さによって決まる1/4波長で共振した場合の周波数(インターディジタル結合していないときの各1/4波長共振器単体での共振周波数)となる。ここで、伝送路の対称面の比率を大きくするということは、(2)式から奇モードでの容量Cを大きくすることに対応する。容量Cを大きくすることは、線路の結合の度合いを強くすることに対応する。従って、インターディジタル結合された一対の1/4波長共振器10,20において、共振器間の結合を強くすればするほど、第1の共振周波数f1と第2の共振周波数f2とが大きく分離していくことになる。
一対の1/4波長共振器10,20をインターディジタル型で、かつ強く結合させることにより、以下の利点がある。強く結合させることで、物理的な1/4波長の長さで決まる共振周波数f0が2つに分離する。すなわち、共振周波数f0よりも高い第1の共振周波数f1で共振する第1の共振モードと、共振周波数f0よりも低い第2の共振周波数f2で共振する第2の共振モードとの2つのモードが現れる。
この場合において、周波数の低い第2の共振周波数f2を、動作周波数(フィルタとして構成した場合には通過周波数)に設定することで、第1の利点としてまず、動作周波数を共振周波数f0に設定した場合よりも共振器全体を小型化することができる。例えば2.4GHz帯を通過周波数としたフィルタを設計する場合、物理的な長さを例えば8GHzに対応させた1/4波長共振器を用いることができる。これは、物理的な長さを2.4GHz帯に対応させた1/4波長共振器とした場合よりも小型のものとなる。
また、第2の利点として、平衡端子を結合させた場合に優れたバランス特性が得られる。図3および図4を参照して説明したように、インターディジタル結合された一対の1/4波長共振器10,20では、第1の共振モードでは同相に励振され、第2の共振モードでは逆相に励振されている。従って、一対の1/4波長共振器10,20をインターディジタル型に強く結合させて第1の共振周波数f1を十分に高く設定し、第2の共振周波数f2とは十分に分離させることで、フィルタ通過周波数(=第2の共振周波数f2)に対しては同相成分を励振させずに逆相成分だけにすることができる。これによりバランス特性を良好なものとすることができる。この観点から、第1の共振周波数f1は、入力信号の周波数帯域よりも十分に高いことが好ましい。例えば、第1の共振周波数f1が第2の共振周波数f2に対し3倍を超える程度であることが好ましい。すなわち、
f1>3f2
の条件を満たすことが好ましい。
周波数の低い第2の共振周波数f2をフィルタとしての通過周波数に設定する場合、入力信号の周波数帯域が第1の共振周波数f1に重なると周波数特性が悪化する。第1の共振周波数f1を入力信号の周波数帯域よりも高く設定することで、これが防止される。
さらに、第3の利点として、導体損失を少なくすることができる。図8(A),図8(B)は、インターディジタル結合された一対の1/4波長共振器10,20における磁界Hの分布を模式的に示している。なお、図8(A),図8(B)では、図4に示した一対の1/4波長共振器10,20における第2の共振モードでの電流iの流れる方向に直交する断面内での磁界分布を示している。電流iの流れる方向は紙面に対して直交する方向である。第2の共振モードでは、図8(A)に示したように、一対の1/4波長共振器10,20において、断面内で同一方向に(例えば反時計回りに)、磁界Hが分布する。この場合、強くインターディジタル結合させると(一対の1/4波長共振器10,20同士を近づけると)、図8(B)に示したように、一対の1/4波長共振器10,20を仮想的に1つの導体とみなした状態と同等の磁界分布となる。すなわち、仮想的に導体厚が厚くなるので、導体損失が少なくなる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、一対の1/4波長共振器10,20の他端をグランド電極に接続することなく共振時に等価的にインターディジタル結合させるようにし、かつ、一対の1/4波長共振器10,20の共振時における短絡端同士を接続導体8により導通し、その接続導体8に直流電圧印加端子4Cを接続するようにしたので、電力がグランドで消費されることもなく、一対の1/4波長共振器10,20に直流電圧を供給することが可能となる。これにより、一対の平衡端子4A,4Bに流れる平衡信号に対して直流的にバイアス電圧を印加し、一対の平衡端子4A,4Bを介して外部の回路に対して電源電圧として直流電圧を供給することができる。また、一対の1/4波長共振器10,20をインターディジタル結合させるようにしたので、小型化が容易となる。また、一対の1/4波長共振器10,20が回転対称軸5を有し全体として回転対称な構造とされ、一対の平衡端子4A,4Bを回転対称軸5に対して互いに回転対称となる位置において一対の1/4波長共振器10,20に接続するようにしたことで、平衡信号をバランス特性に優れた状態で伝送することができる。
[第1の実施の形態の具体的な構成例]
以下、本実施の形態に係る共振器の具体的な構成例を説明する。以下の構成例において、図1に示した基本構成に対応する部分には同一の符号を付す。
<第1の具体的な構成例>
図9および図10は、本実施の形態に係る共振器の第1の具体的な構成例を示している。図10は、図9における内部層を分解して示している。この構成例は、誘電体材料よりなる略直方体形状の誘電体基板60を備え、その誘電体基板60を多層構造としたものである。誘電体基板60の一側面には、直流電圧印加端子4Cとなる直流電圧印加用の外部端子電極が形成されている。また、誘電体基板60の一側面において、直流電圧印加用の外部端子電極の両側には、一対の平衡端子4A,4Bが接続される平衡端子用の外部端子電極62,63が形成されている。誘電体基板60の内部には、導体の線路パターン(ストリップライン)が形成され、その内部の線路パターンにより、一対の1/4波長共振器10,20と、一対の平衡端子4A,4Bとが内部層として形成されている。このような構造は、例えば、シート状の誘電体基板を複数用意し、各線路部分をそのシート状の誘電体基板上に導体の線路パターンで形成して、そのシート状の誘電体基板を重ね合わせた積層構造にすることで実現できる。
この構成例では、一対の1/4波長共振器10,20が平面内で略円形状の導体の線路パターンで形成されている。そして、一方の1/4波長共振器10の一端が開放端とされ、その開放端に一方の平衡端子4Aとなる導体の線路パターンが直線状に形成されている。その直線状の導体の線路パターンが、誘電体基板60の一側面にある一方の外部端子電極62まで延在して導通されている。同様に、他方の1/4波長共振器20の一端が開放端とされ、その開放端に他方の平衡端子4Bとなる導体の線路パターンが直線状に形成されている。その直線状の導体の線路パターンが、誘電体基板60の一側面にある他方の外部端子電極63まで延在して導通されている。
また、一方の1/4波長共振器10の他端が共振時における短絡端とされ、その短絡端に接続導体8の一部となる導体の線路パターン11が直線状に形成されている。その直線状の導体の線路パターン11が、誘電体基板60の一側面にある直流電圧印加用の外部端子電極(直流電圧印加端子4C)にまで延在して導通されている。同様に、他方の1/4波長共振器20の他端が共振時における短絡端とされ、その短絡端に接続導体8の一部となる導体の線路パターン21が直線状に形成されている。その直線状の導体の線路パターン21が、誘電体基板60の一側面にある直流電圧印加用の外部端子電極にまで延在して導通されている。このように、一方の1/4波長共振器10の他端に形成された導体の線路パターン11と他方の1/4波長共振器20の他端に形成された導体の線路パターン21とが直流電圧印加端子4Cに共通接続されることで、一対の1/4波長共振器10,20の短絡端同士が導通されている。すなわち、この構成例では、直流電圧印加端子4Cを形成する外部端子電極が接続導体8の機能を兼ねており、直流電圧印加端子4Cを介して一対の1/4波長共振器10,20の短絡端同士が導通されている。
<第2の具体的な構成例>
図11および図12は、本実施の形態に係る共振器の第2の具体的な構成例を示している。図12は、図11における内部層を分解して示している。図9および図10に示した第1の具体的な構成例では、直流電圧印加端子4Cを介して一対の1/4波長共振器10,20の短絡端同士を導通するようにしたが、この第2の具体的な構成例では、一対の1/4波長共振器10,20の短絡端同士が、導体のスルーホール22により導通されている。そして、一方の1/4波長共振器10の短絡端に形成された直線状の導体の線路パターン11を介して、直流電圧印加用の外部端子電極(直流電圧印加端子4C)に短絡端が導通されている。スルーホール22が追加されている点と他方の1/4波長共振器20における直線状の導体の線路パターン21が省かれている点が、図9および図10の構成例とは異なっている。なお逆に、一方の1/4波長共振器10における直線状の導体の線路パターン11を構成から省き、他方の1/4波長共振器20における直線状の導体の線路パターン21を介して、直流電圧印加用の外部端子電極に短絡端が導通されていても良い。
<第3の具体的な構成例>
図13および図14は、本実施の形態に係る共振器の第3の具体的な構成例を示している。図14は、図13における内部層を分解して示している。図15は、この構成例の等価的な基本構成を示している。まず図15を参照して基本構成について説明する。図9および図10に示した第1の具体的な構成例が、1組の一対の1/4波長共振器10,20を備えた構成であるのに対し、この構成例では、一対の1/4波長共振器10,20と他の一対の1/4波長共振器110,120との2組備えている。一対の1/4波長共振器10,20と他の一対の1/4波長共振器110,120は、互いに対向するように同一方向に積層配置されている。他の一対の1/4波長共振器110,120も、一対の1/4波長共振器10,20と同様、一端が開放端とされ、他端が共振時に短絡端として機能することにより互いにインターディジタル結合されている。なお、一対の1/4波長共振器10,20と他の一対の1/4波長共振器110,120とは互いに電磁結合されているが、この構成例の場合、隣接する1/4波長共振器がそれぞれインターディジタル結合され、その結果、隣接する1/4波長共振器によって一対の1/4波長共振器が3組形成されているとも考えることができる。すなわち、上層側から1/4波長共振器10,20によって第1の一対の1/4波長共振器が形成され、1/4波長共振器20,110によって第2の一対の1/4波長共振器が形成され、1/4波長共振器110,120によって第3の一対の1/4波長共振器が形成されているとも考えることができる。
この構成例では、一対の1/4波長共振器10,20と他の一対の1/4波長共振器110,120とを含めた全体としての構造部分で回転対称軸5を有し、全体として回転対称な構造とされている。この構成例において、一対の平衡端子4A,4Bの一方の端子4Aと他方の端子4Bとが、回転対称軸5に対して互いに回転対称となる位置においていずれか2つの1/4波長共振器に接続されていることが好ましい。例えば最上層の1/4波長共振器10に一方の端子4Aが接続され、最下層の1/4波長共振器120に他方の端子4Bを接続すれば良い。これにより、バランス特性に優れた状態にすることができる。なお、図示した構成例では、一対の平衡端子4A,4Bを2組設けている。この場合にも、各組の一対の平衡端子4A,4Bがそれぞれ回転対称軸5に対して互いに回転対称となる位置において、1/4波長共振器に接続されていることが好ましい。
次に、図13および図14を参照して具体的な構成について説明する。一対の1/4波長共振器10,20に関する構成は図9および図10に示した構成と同様である。他の一対の1/4波長共振器110,120も、一対の1/4波長共振器10,20と同様の構造となっている。他の一対の1/4波長共振器110,120も、誘電体基板60の内部において、平面内で略円形状の導体の線路パターンで形成されている。そして、一方の1/4波長共振器110の一端が開放端とされ、その開放端に一方の平衡端子4Aとなる導体の線路パターンが直線状に形成されている。その直線状の導体の線路パターンが、誘電体基板60の一側面にある一方の外部端子電極62まで延在して導通されている。同様に、他方の1/4波長共振器120の一端が開放端とされ、その開放端に他方の平衡端子4Bとなる導体の線路パターンが直線状に形成されている。その直線状の導体の線路パターンが、誘電体基板60の一側面にある他方の外部端子電極63まで延在して導通されている。
また、一方の1/4波長共振器110の他端が共振時における短絡端とされ、その短絡端に接続導体8の一部となる導体の線路パターン111が直線状に形成されている。その直線状の導体の線路パターン111が、誘電体基板60の一側面にある直流電圧印加用の外部端子電極(直流電圧印加端子4C)にまで延在して導通されている。同様に、他方の1/4波長共振器120の他端が共振時における短絡端とされ、その短絡端に接続導体8の一部となる導体の線路パターン121が直線状に形成されている。その直線状の導体の線路パターン121が、誘電体基板60の一側面にある直流電圧印加用の外部端子電極にまで延在して導通されている。
この構成例では、一対の1/4波長共振器10,20の他端に形成された導体の線路パターン11,21と他の一対の1/4波長共振器110,120の他端に形成された導体の線路パターン111,121とが直流電圧印加端子4Cに共通接続されることで、一対の1/4波長共振器10,20と他の一対の1/4波長共振器110,120とにおける各短絡端同士が導通されている。すなわち、この構成例では、直流電圧印加端子4Cを形成する外部端子電極が接続導体8の機能を兼ねており、直流電圧印加端子4Cを介して各短絡端同士が導通されている。
なお、図11および図12に示した第2の具体的な構成例と同様、導体のスルーホール22により各短絡端同士を導通するような構成も可能である。また、この構成例に限らず、一対の1/4波長共振器を3組以上多段に積層した構成であっても良い。
<第4の具体的な構成例>
図16および図17は、本実施の形態に係る共振器の第4の具体的な構成例を示している。図16は内部層を省略し、外観部分のみを斜視透視して示している。図17は、図16で省略した内部層を分解して示している。この構成例は、図16に示したように、誘電体材料よりなる略直方体形状の誘電体基板60Aを備え、その誘電体基板60Aを多層構造としたものである。誘電体基板60Aの内部には、導体の線路パターン(ストリップライン)が形成され、その内部の線路パターンにより、一対の1/4波長共振器10,20と、一対の平衡端子4A,4Bと、後述のシールド電極71,72とが内部層として形成されている。誘電体基板60Aの第1の側面には、直流電圧印加端子4Cとなる直流電圧印加用の外部端子電極が形成されている。また、誘電体基板60Aの第1の側面において、直流電圧印加用の外部端子電極の両側には、一対の平衡端子4A,4Bが接続される平衡端子用の外部端子電極62,63が形成されている。さらに、誘電体基板60Aの第2および第3の側面にはそれぞれ、接続導体8の一部となる接続用の外部端子電極64,65が形成されている。
この構成例では、図17に示したように、一対の1/4波長共振器10,20が略直線状の導体の線路パターンで形成されている。そして、一方の1/4波長共振器10の一端が開放端とされ、その開放端に一方の平衡端子4Aとなる導体の線路パターンが略直角方向に直線状に形成されている。これにより全体としてL字状の線路パターンが形成されている。その一方の平衡端子4Aとなる直線状の導体の線路パターンが、誘電体基板60Aの第1の側面にある一方の外部端子電極62まで延在して導通されている。同様に、他方の1/4波長共振器20の一端が開放端とされ、その開放端に他方の平衡端子4Bとなる導体の線路パターンが略直角方向に直線状に形成されている。これにより全体としてL字状の線路パターンが形成されている。その平衡端子4Bとなる直線状の導体の線路パターンが、誘電体基板60Aの第1の側面にある他方の外部端子電極63まで延在して導通されている。
また、一方の1/4波長共振器10の他端が共振時における短絡端とされ、その短絡端が、誘電体基板60Aの第3の側面部分の接続用の外部端子電極65まで延在して導通されている。同様に、他方の1/4波長共振器20の他端が共振時における短絡端とされ、その短絡端が、誘電体基板60Aの第2の側面部分の接続用の外部端子電極64まで延在して導通されている。
この構成例に係る共振器はさらに、一対の1/4波長共振器10,20からの電磁波の外部への伝搬を防止するシールド電極71,72を備えている。シールド電極71は、一対の1/4波長共振器10,20に対して上層側に積層され、シールド電極72は下層側に積層されている。上層側のシールド電極71には、第1の引き出し電極71A、第2の引き出し電極71Bおよび第3の引き出し電極71Cが設けられている。同様に、下層側のシールド電極72にも、第1の引き出し電極72A、第2の引き出し電極72Bおよび第3の引き出し電極72Cが設けられている。シールド電極71,72の第1の引き出し電極71A,72Aは、誘電体基板60Aの第2の側面部分の接続用の外部端子電極64まで延在して導通されている。第2の引き出し電極71B,72Bは、誘電体基板60Aの第3の側面部分の接続用の外部端子電極65まで延在して導通されている。第3の引き出し電極71C,72Cは、誘電体基板60Aの第1の側面部分の直流電圧印加用の外部端子電極(直流電圧印加端子4C)にまで延在して導通されている。
この構成例では、一方の1/4波長共振器10の他端(共振時における短絡端)が、第3の側面部分の接続用の外部端子電極65を介してシールド電極71,72に導通される。また、他方の1/4波長共振器20の他端(共振時における短絡端)が、第2の側面部分の接続用の外部端子電極65を介してシールド電極71,72に導通される。これにより、接続用の外部端子電極64,65およびシールド電極71,72を介して一対の1/4波長共振器10,20の短絡端同士が導通される。すなわち、この構成例では、シールド電極71,72が接続導体8の機能を兼ねている。そして、さらにシールド電極71,72が第3の引き出し電極71C,72Cを介して直流電圧印加端子4Cに導通されることで、直流電圧が印加される。
なお、この構成例ではシールド電極71,72の双方を介して一対の1/4波長共振器10,20の短絡端同士を導通するようにしたが、どちらか一方のみを介して短絡端同士を導通するようにしても良い。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態では、上記第1の実施の形態に係る共振器を用いたフィルタについて説明する。なお、上記第1の実施の形態に係る共振器と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
図18は、本実施の形態に係るフィルタの基本構成を示している。本実施の形態では、入力端側に不平衡端子を備えると共に、出力端側に平衡端子を備えた不平衡入力−平衡出力型のフィルタを例に説明する。このフィルタは、第1の共振器1と、第2の共振器2と、第1の共振器1に接続された不平衡端子3と、第2の共振器2に接続された一対の平衡端子4A,4Bと、第2の共振器2に接続された直流電圧印加端子4Cとを備えている。一対の平衡端子4A,4Bには、図示しないIC等の外部の回路が接続される。このフィルタは、不平衡端子3を入力端子とし一対の平衡端子4A,4Bを出力端子とすることで、全体として不平衡入力−平衡出力型のフィルタが構成される。
第2の共振器2の構成は、上記第1の実施の形態に係る共振器と同様であり、一端が開放端とされ、他端が共振時に短絡端として機能することにより互いにインターディジタル結合された一対の1/4波長共振器10,20で構成され、その一対の1/4波長共振器10,20に上記第1の実施の形態と同様に一対の平衡端子4A,4Bが接続されている。また、一対の1/4波長共振器10,20の他端(共振時における短絡端)同士が接続導体8により導通されると共に、その接続導体8に直流電圧印加端子4Cが接続されている。
第1の共振器1は他の一対の1/4波長共振器30,40で構成され、他の一対の1/4波長共振器30,40のうちの1つに不平衡端子3が接続されている。なお、不平衡端子3を複数設け、他の一対の1/4波長共振器30,40の双方に不平衡端子3を接続するようにしても良い。他の一対の1/4波長共振器30,40も一対の1/4波長共振器10,20と同様、回転対称軸6を有し、全体的に回転対称な構造とされていても良い。
ここで、このフィルタにおけるインターディジタル結合の構造について説明する。まず第2の共振器2における一対の1/4波長共振器10,20の構造について説明する。通常、インターディジタル結合させるためには、図19に示したように、一対の1/4波長共振器10,20の一端を開放端、他端を短絡端とするために、他端をグランド電極に接続し、物理的にグランド電位(0V)に落とす必要があるが、共振時の動作共振周波数においては、一対の1/4波長共振器10,20はグランド電極に接続されていなくとも、他端が交流的にゼロ電位となる。本実施の形態においては、この性質により、グランド電極に接続することなく一対の1/4波長共振器10,20がインターディジタル結合されている。これにより、第2の共振器2に直流電圧印加端子4Cを接続したときに直流電圧を供給可能にしている。これは、上記第1の実施の形態と同様である。一方、第1の共振器1における他の一対の1/4波長共振器30,40もインターディジタル結合しているが、第1の共振器1には直流電圧印加端子4Cは接続されないので、他の一対の1/4波長共振器30,40は通常どおり、グランド電極に接続されていても良い。なお、図20に示したように、他の一対の1/4波長共振器30,40も、第2の共振器2における一対の1/4波長共振器10,20と同様、他端(共振時における短絡端)同士を接続導体9により導通して、他端をグランド電極に接続することなくインターディジタル結合させるような構造であっても良い。この場合には、他の一対の1/4波長共振器30,40は一対の1/4波長共振器10,20と同様、一端が開放端とされ、他端が共振時に短絡端として機能することにより互いにインターディジタル結合される。
既に上記第1の実施の形態において説明したように、第2の共振器2における一対の1/4波長共振器10,20は、共振時に強いインターディジタル結合がなされていることで、第1の共振周波数f1で共振する第1の共振モードと第1の共振周波数f1よりも低い第2の共振周波数f2で共振する第2の共振モードとを有し、動作周波数が第2の共振周波数f2となるように構成されている。第1の共振器1における他の一対の1/4波長共振器30,40も同様に、2つの共振モードとを有し、周波数の低い第2の共振周波数f2で動作するように構成されている。そして、このフィルタは、第1の共振器1と第2の共振器2とが、周波数の低い第2の共振周波数f2で共振し、電磁結合するように構成されている。これにより、第2の共振周波数f2を通過帯域とした、不平衡入力−平衡出力型のバンドパスフィルタが構成されている。
次に、本実施の形態に係るフィルタの作用を説明する。
このフィルタでは、不平衡端子3から入力された不平衡信号が、入力端と出力端との間の各共振器の作用により、第2の共振周波数f2を通過帯域としてフィルタリングされ、平衡信号として一対の平衡端子4A,4Bから出力される。
ここで、このフィルタでは、第2の共振器2が上記第1の実施の形態と同様のインターディジタル結合構造を有する一対の1/4波長共振器10,20で構成されているので、一対の1/4波長共振器10,20の他端(短絡端)間に直流電圧印加端子4Cを接続することで、電力がグランドで消費されることもなく、一対の1/4波長共振器10,20に直流電圧が供給される。これにより、一対の平衡端子4A,4Bに流れる平衡信号に対して直流的にバイアス電圧が印加され、一対の平衡端子4A,4Bを介して図示しない外部の回路に対して電源電圧の供給が可能となる。
また、このフィルタでは、インターディジタル結合した一対の1/4波長共振器における周波数の低い第2の共振周波数f2を通過帯域としていることで、従来のフィルタに比べて小型化が容易となり、平衡信号をバランス特性に優れた状態で伝送することができる。インターディジタル結合することにより得られる作用、効果については、上記第1の実施の形態において説明したとおりである。
[第2の実施の形態の具体的な構成例]
以下、本実施の形態に係るフィルタの具体的な構成例を説明する。以下の構成例において、図18または図20に示した基本構成に対応する部分には同一の符号を付す。
<第1の具体的な構成例>
図21および図22は、本実施の形態に係るフィルタの第1の具体的な構成例を示している。図21は内部層を省略し、外観部分のみを斜視透視して示している。図22は、図21で省略した内部層を分解して示している。この構成例は図18の基本構成に対応している。このフィルタは、図21に示したように、誘電体材料よりなる略直方体形状の誘電体基板61を備え、その誘電体基板61を多層構造としたものである。誘電体基板61の内部には、導体の線路パターン(ストリップライン)が形成され、その内部の線路パターンにより、第1の共振器1を構成する他の一対の1/4波長共振器30,40と、不平衡端子3と、第2の共振器2を構成する一対の1/4波長共振器10,20と、一対の平衡端子4A,4Bと、後述のシールド電極71,72および73,74とが内部層として形成されている。誘電体基板61の第1の側面には、直流電圧印加端子4Cとなる直流電圧印加用の外部端子電極が形成されている。また、誘電体基板61の第1の側面において、直流電圧印加用の外部端子電極の両側には、一対の平衡端子4A,4Bが接続される平衡端子用の外部端子電極62,63が形成されている。さらに、誘電体基板61の第2および第3の側面にはそれぞれ、接続導体8の一部となる接続用の外部端子電極64,65が形成されている。誘電体基板61の第2および第3の側面にはまた、他の一対の1/4波長共振器30,40の短絡端を基準電圧(グランド電圧)に保つための「基準電圧印加端子」となる基準電圧印加用の外部端子電極82,83が形成されている。さらに、誘電体基板61の第4の側面には、不平衡端子3が接続される不平衡端子用の外部端子電極81が形成されている。
この構成例では、図22に示したように、一対の1/4波長共振器10,20が略直線状の導体の線路パターンで形成されている。そして、一方の1/4波長共振器10の一端が開放端とされ、その開放端に一方の平衡端子4Aとなる導体の線路パターンが略直角方向に直線状に形成されている。これにより全体としてL字状の線路パターンが形成されている。その一方の平衡端子4Aとなる直線状の導体の線路パターンが、誘電体基板61の第1の側面にある一方の外部端子電極62まで延在して導通されている。同様に、他方の1/4波長共振器20の一端が開放端とされ、その開放端に他方の平衡端子4Bとなる導体の線路パターンが略直角方向に直線状に形成されている。これにより全体としてL字状の線路パターンが形成されている。その平衡端子4Bとなる直線状の導体の線路パターンが、誘電体基板61の第1の側面にある他方の外部端子電極63まで延在して導通されている。
また、一方の1/4波長共振器10の他端が共振時における短絡端とされ、その短絡端が、誘電体基板61の第3の側面部分の接続用の外部端子電極65まで延在して導通されている。同様に、他方の1/4波長共振器20の他端が共振時における短絡端とされ、その短絡端が、誘電体基板61の第2の側面部分の接続用の外部端子電極64まで延在して導通されている。
また、他の一対の1/4波長共振器30,40も略直線状の導体の線路パターンで形成されている。一対の1/4波長共振器10,20における一方の1/4波長共振器10と他の一対の1/4波長共振器30,40における他方の1/4波長共振器40とが、同一平面内で並列的に配置されている。また、一対の1/4波長共振器10,20における他方の1/4波長共振器20と他の一対の1/4波長共振器30,40における一方の1/4波長共振器30とが、同一平面内で並列的に配置されている。
他の一対の1/4波長共振器30,40における他方の1/4波長共振器40の一端は開放端とされ、その開放端に不平衡端子3となる導体の線路パターンが略直角方向に直線状に形成されている。これにより全体としてL字状の線路パターンが形成されている。その不平衡端子3となる直線状の導体の線路パターンが、誘電体基板61の第4の側面にある不平衡端子用の外部端子電極81まで延在して導通されている。また、他方の1/4波長共振器40の他端が短絡端とされ、その短絡端が、誘電体基板61の第3の側面部分の基準電圧印加用の外部端子電極83まで延在して導通されている。同様に、一方の1/4波長共振器30の一端が開放端、他端が短絡端とされ、その短絡端が、誘電体基板61の第2の側面部分の基準電圧印加用の外部端子電極82まで延在して導通されている。
この構成例に係るフィルタはさらに、一対の1/4波長共振器10,20からの電磁波の外部への伝搬を防止するシールド電極71,72を備えている。シールド電極71は、一対の1/4波長共振器10,20に対して上層側に積層され、シールド電極72は下層側に積層されている。上層側のシールド電極71には、第1の引き出し電極71A、第2の引き出し電極71Bおよび第3の引き出し電極71Cが設けられている。同様に、下層側のシールド電極72にも、第1の引き出し電極72A、第2の引き出し電極72Bおよび第3の引き出し電極72Cが設けられている。シールド電極71,72の第1の引き出し電極71A,72Aは、誘電体基板61の第2の側面部分の接続用の外部端子電極64まで延在して導通されている。第2の引き出し電極71B,72Bは、誘電体基板61の第3の側面部分の接続用の外部端子電極65まで延在して導通されている。第3の引き出し電極71C,72Cは、誘電体基板61の第1の側面部分の直流電圧印加用の外部端子電極(直流電圧印加端子4C)にまで延在して導通されている。
このフィルタはまた、他の一対の1/4波長共振器30,40からの電磁波の外部への伝搬を防止するシールド電極73,74を備えている。シールド電極73は、他の一対の1/4波長共振器30,40に対して上層側に積層され、シールド電極74は下層側に積層されている。一対の1/4波長共振器10,20の上層側のシールド電極71と他の一対の1/4波長共振器30,40の上層側のシールド電極73とが、同一平面内で並列的に配置されている。また、一対の1/4波長共振器10,20の下層側のシールド電極72と他の一対の1/4波長共振器30,40の下層側のシールド電極74とが、同一平面内で並列的に配置されている。
他の一対の1/4波長共振器30,40の上層側のシールド電極73には、第1の引き出し電極73A、および第2の引き出し電極73Bが設けられている。同様に、下層側のシールド電極74にも、第1の引き出し電極74A、および第2の引き出し電極72Bが設けられている。シールド電極73,74の第1の引き出し電極73A,74Aは、誘電体基板61の第2の側面部分の基準電圧印加用の外部端子電極82まで延在して導通されている。第2の引き出し電極73B,74Bは、誘電体基板61の第3の側面部分の基準電圧印加用の外部端子電極83まで延在して導通されている。
この構成例では、第2の共振器2において、一方の1/4波長共振器10の他端(共振時における短絡端)が、第3の側面部分の接続用の外部端子電極65を介してシールド電極71,72に導通される。また、他方の1/4波長共振器20の他端(共振時における短絡端)が、第2の側面部分の接続用の外部端子電極64を介してシールド電極71,72に導通される。これにより、接続用の外部端子電極64,65およびシールド電極71,72を介して一対の1/4波長共振器10,20の短絡端同士が導通される。すなわち、この構成例では、シールド電極71,72が接続導体8の機能を兼ねている。そして、さらにシールド電極71,72が第3の引き出し電極71C,72Cを介して直流電圧印加端子4Cに導通されることで、直流電圧が印加される。
また、この構成例では、第1の共振器1において、一方の1/4波長共振器30の他端(短絡端)が、第2の側面部分の基準電圧印加用の外部端子電極82を介してシールド電極73,74に導通される。また、他方の1/4波長共振器40の他端(短絡端)が、第3の側面部分の基準電圧印加用の外部端子電極83を介してシールド電極73,74に導通される。これにより、基準電圧印加用の外部端子電極82,83およびシールド電極73,74を介して他の一対の1/4波長共振器30,40の短絡端同士が導通される。すなわち、この構成例では、外部端子電極82,83、およびシールド電極73,74が、他の一対の1/4波長共振器30,40の短絡端同士を接続する接続導体9(図20)の機能を兼ねている。そして、基準電圧印加用の外部端子電極82,83が図示しないグランド電極に接続されることで、他の一対の1/4波長共振器30,40の他端がグランド電位となる。
なお、この構成例では、第2の共振器2において上下のシールド電極71,72の双方を介して一対の1/4波長共振器10,20の短絡端同士を導通するようにしたが、どちらか一方のみを介して短絡端同士を導通するようにしても良い。第1の共振器1についても同様である。
<第2の具体的な構成例>
図23および図24は、本実施の形態に係るフィルタの第2の具体的な構成例を示している。図23は内部層を省略し、外観部分のみを斜視透視して示している。図24は、図23で省略した内部層を分解して示している。この構成例は図20の基本構成に対応している。図21および図22に示した第1の具体的な構成例では、一対の1/4波長共振器10,20のシールド電極71,72と他の一対の1/4波長共振器30,40のシールド電極73,74とが別々に形成され、それら別々のシールド電極を介して一対の1/4波長共振器10,20の短絡端同士と他の一対の1/4波長共振器30,40の短絡端同士とを別々に導通していた。これに対し、本構成例では、一対の1/4波長共振器10,20と他の一対の1/4波長共振器30,40とでシールド電極を共通化し、その共通のシールド電極を介して各1/4波長共振器の短絡端同士を共通接続したものである。すなわち、このフィルタは、図24に示したように、上層側に共通のシールド電極91を備え、下層側に共通のシールド電極92を備えている。また、図23に示したように、図21の構成例における誘電体基板61の第2の側面の外部端子電極64,82が共通化され、第2の側面に単一の外部端子電極93が形成されている。同様に、図21の構成例における誘電体基板61の第3の側面の外部端子電極65,83が共通化され、第3の側面に単一の外部端子電極94が形成されている。
上層側のシールド電極91には、第1の引き出し電極91A、第2の引き出し電極91Bおよび第3の引き出し電極91C、ならびに第4の引き出し電極91Dおよび第5の引き出し電極91Eが設けられている。同様に、下層側のシールド電極92にも、第1の引き出し電極92A、第2の引き出し電極92Bおよび第3の引き出し電極92C、ならびに第4の引き出し電極92Dおよび第5の引き出し電極92Eが設けられている。シールド電極91,92の第1の引き出し電極91A,92Aおよび第4の引き出し電極91D,92Dは、誘電体基板61の第2の側面部分の外部端子電極93まで延在して導通されている。第2の引き出し電極91B,92Bおよび第5の引き出し電極91E,92Eは、誘電体基板61の第3の側面部分の外部端子電極94まで延在して導通されている。第3の引き出し電極91C,92Cは、誘電体基板61の第1の側面部分の直流電圧印加用の外部端子電極(直流電圧印加端子4C)にまで延在して導通されている。
この構成例では、第2の共振器2における一方の1/4波長共振器10の他端(共振時における短絡端)が、第3の側面部分の外部端子電極94を介してシールド電極91,92に導通される。同様に、第1の共振器1における他方の1/4波長共振器40の他端(共振時における短絡端)が、第3の側面部分の外部端子電極94を介してシールド電極91,92に導通される。また、第2の共振器2における他方の1/4波長共振器20の他端(共振時における短絡端)が、第2の側面部分の外部端子電極93を介してシールド電極91,92に導通される。同様に、第1の共振器1における一方の1/4波長共振器30の他端(共振時における短絡端)が、第2の側面部分の外部端子電極93を介してシールド電極91,92に導通される。
これにより、外部端子電極93,94およびシールド電極91,92を介して一対の1/4波長共振器10,20の短絡端同士が導通されると共に、他の一対の1/4波長共振器30,40の短絡端同士が導通される。すなわち、この構成例では、シールド電極91,92が、一対の1/4波長共振器10,20の短絡端同士を導通する接続導体8の機能を兼ねていると共に、他の一対の1/4波長共振器30,40の短絡端同士を導通する他の接続導体9の機能を兼ねている。そして、さらにシールド電極91,92が第3の引き出し電極91C,92Cを介して直流電圧印加端子4Cに導通されることで、直流電圧が印加される。
なお、この構成例では、上下のシールド電極91,92の双方を介して各1/4波長共振器の短絡端同士を導通するようにしたが、どちらか一方のみを介して短絡端同士を導通するようにしても良い。
<第3の具体的な構成例>
図25および図26は、本実施の形態に係るフィルタの第3の具体的な構成例を示している。図25は内部層を省略し、外観部分のみを斜視透視して示している。図26は、図25で省略した内部層を分解して示している。この構成例は図18の基本構成に対応している。図21および図22に示した第1の具体的な構成例では、一対の1/4波長共振器10,20のシールド電極71,72と他の一対の1/4波長共振器30,40のシールド電極73,74とが別々に形成されていたが、本構成例では、一対の1/4波長共振器10,20と他の一対の1/4波長共振器30,40とでシールド電極を共通化したものである。また、第1の具体的な構成例では、一対の1/4波長共振器10,20の短絡端同士をシールド電極71,72を介して導通するようにしたが、本構成例では、シールド電極71,72ではなく接続導体8となる接続層を別途設けて一対の1/4波長共振器10,20の短絡端同士を導通するようにしたものである。
すなわち、このフィルタは、図26に示したように、一対の1/4波長共振器10,20と他の一対の1/4波長共振器30,40との上層側に共通のシールド電極91を備え、下層側に共通のシールド電極92を備えている。また、上層側の共通のシールド電極91のさらに上層に接続層95を備え、下層側の共通のシールド電極92のさらに下層に接続層96を備えている。また、図25に示したように、図21の構成例において誘電体基板61の第1の側面に形成されていた直流電圧印加用の外部端子電極(直流電圧印加端子4C)が省かれている。このフィルタでは、誘電体基板61の第2および第3の側面に形成された外部端子電極64,65が、直流電圧印加端子4Cとしての機能を有している。
上層側のシールド電極91には、引き出し電極91Dおよび引き出し電極91Eが設けられている。同様に、下層側のシールド電極92にも、引き出し電極92Dおよび引き出し電極92Eが設けられている。シールド電極91,92の一方の引き出し電極91D,92Dは、誘電体基板61の第2の側面部分の基準電圧印加用の外部端子電極82まで延在して導通されている。他方の引き出し電極91E,92Eは、誘電体基板61の第3の側面部分の基準電圧印加用の外部端子電極83まで延在して導通されている。また、接続層95,96の一端は、誘電体基板61の第2の側面部分の直流電圧印加端子4Cとしての機能を有する外部端子電極64にまで延在して導通されている。接続層95,96の他端は、誘電体基板61の第3の側面部分の直流電圧印加端子4Cとしての機能を有する外部端子電極65にまで延在して導通されている。
この構成例では、第2の共振器2において、一方の1/4波長共振器10の他端(共振時における短絡端)が、第3の側面部分の外部端子電極65を介して接続層95,96に導通される。また、他方の1/4波長共振器20の他端(共振時における短絡端)が、第2の側面部分の外部端子電極64を介して接続層95,96に導通される。これにより、外部端子電極64,65および接続層95,96を介して一対の1/4波長共振器10,20の短絡端同士が導通される。そして、外部端子電極64,65が直流電圧印加端子4Cとして機能して、直流電圧が印加される。すなわち、この構成例では、外部端子電極64,65が接続導体8の機能と直流電圧印加端子4Cの機能とを兼ねている。
また、この構成例では、第1の共振器1において、一方の1/4波長共振器30の他端(短絡端)が、第2の側面部分の基準電圧印加用の外部端子電極82を介してシールド電極91,92に導通される。また、他方の1/4波長共振器40の他端(短絡端)が、第3の側面部分の基準電圧印加用の外部端子電極83を介してシールド電極91,92に導通される。これにより、基準電圧印加用の外部端子電極82,83およびシールド電極91,92を介して他の一対の1/4波長共振器30,40の短絡端同士が導通される。すなわち、この構成例では、外部端子電極82,83、およびシールド電極91,92が、他の一対の1/4波長共振器30,40の短絡端同士を接続する接続導体9(図20)の機能を兼ねている。そして、基準電圧印加用の外部端子電極82,83が図示しないグランド電極に接続されることで、他の一対の1/4波長共振器30,40の他端がグランド電位となる。
なお、この構成例では、第2の共振器2において上下の接続層95,96の双方を介して一対の1/4波長共振器10,20の短絡端同士を導通するようにしたが、どちらか一方のみを介して短絡端同士を導通するようにしても良い。
[その他の実施の形態]
本発明は、上記各実施の形態に限定されず種々の変形実施が可能である。例えば、上記第2の実施の形態では、不平衡入力−平衡出力型のフィルタを例に説明したが、本発明は、入出力端双方を平衡端子にした平衡入力−平衡出力型のフィルタにも適用可能である。
図27は、平衡入力−平衡出力型のフィルタの基本構成を示している。この構成例は第1の共振器1に一対の平衡端子3A,3Bが接続されている点を除いて、図18に示したフィルタと同様の構成となっている。このフィルタも図18に示したフィルタと同様、第1の共振器1と第2の共振器2とが、インターディジタル結合された共振器における周波数の低い第2の共振周波数f2で共振し、電磁結合するように構成されている。これにより、第2の共振周波数f2を通過帯域とした、平衡入力−平衡出力型のバンドパスフィルタが構成されている。
また、第2の実施の形態における第1の共振器1と第2の共振器2とをそれぞれ、図15に示した構成例と同様に、複数組の一対の1/4波長共振器で構成するようにしても良い。
1…第1の共振器、2…第2の共振器、3…不平衡端子、4A,4B…平衡端子、4C…直流電圧印加端子、5,6…回転対称軸、8,9…接続導体、10,20,30,40…1/4波長共振器、22…スルーホール22、71,72,73,74,91,92…シールド電極、93,94…接続層。