JP6409664B2 - 高周波共振器及び高周波発振器 - Google Patents
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Description
インターディジタル型に配置された伝送線路の間隔(以下、gapと呼ぶ)を狭くすることで伝送線路は結合が強くなり、インターディジタル型結合共振器の共振周波数は2つになる。一方の共振周波数は、非結合時の共振周波数よりも低い共振周波数であり、他方の共振周波数は、非結合時の共振周波数よりも高い共振周波数である。従来の高周波共振器は、結合線路間の容量が共振モードに依存することを利用して、gapを小さくすることで共振モードに対する容量の変化を大きくし、より低い周波数の共振とより高い周波数の共振が得られるようにしていた。以上のように、従来の高周波共振器は、高い周波数の共振を十分に高くして、低い周波数の共振を用いることで、小型の共振器及び帯域通過フィルタを得ていた。
図1は、実施の形態1に係る高周波共振器の一構成例を示す図である。
図1において、高周波共振器1は、伝送線路103(第1の伝送線路の一例)、伝送線路104(第2の伝送線路の一例)と、キャパシタ105(第1のリアクタンス回路の一例)、キャパシタ106(第2のリアクタンス回路の一例)と、抵抗107(抵抗の一例)とを備える。また、高周波共振器1には、端子101(端子の一例)、端子102(端子の一例)が接続されている。図1において、@は、@以下が周波数であることを意味し、例えば、λ/8@f0は、周波数f0において電気長がλ/8であることを意味する。
端子102は、信号が入力または出力される端子であり、伝送線路104にタップ結合により、伝送線路104の短絡端から電気長αだけ離れた位置に接続される端子である。
キャパシタ106は、一端が伝送線路104の中点に接続され、他端がキャパシタ105と抵抗107とに接続されるキャパシタである。ここで、中点とは、伝送線路104の長さ方向の中心であり、伝送線路104の開放端と短絡端との電気長的中心である。
平行に配置された伝送線路103と伝送線路104との間隔(gap)が狭くなると、伝送線路103と伝送線路104との結合は強くなり、線路間の容量が共振周波数に影響し始め、f0に対して低域側(fL)と高域側(fH)で共振するようになる。このとき、fLは奇モードで動作し、fHは偶モードで動作する。
図2において、縦軸は、Z(インピーダンス)またはY(アドミッタンス)であり、共振の強弱または有無の指標である。横軸は周波数である。点線は、gapが無限大のとき、つまり非結合の場合の共振周波数f0を表す。実線は、伝送線路103と伝送線路104とが結合しているときの共振周波数を表す。gapが小さくなると、伝送線路103と伝送線路104とが電磁界結合し、共振周波数は2つに分離する。f0に対して低域側の共振周波数fLが奇モードの共振周波数であり、f0に対して高域側の共振周波数fHが偶モードの共振周波数である。
図3において、伝送線路103、104内の矢印は、電圧が高くなる方向を示している。図3に示すように、fHは偶モードで動作するため、キャパシタ105及びキャパシタ106を介して抵抗107が見えており、抵抗107に高周波電流が流れて損失が生じる。以下、その理由を説明する。
図4において、縦軸は、伝送線路103及び104の電圧Vであり、横軸は、短絡端からの電気長Lである。αは、伝送線路103及び104のタップ結合されている位置である。短絡端において電圧は0であり、開放端に向けて電圧は大きくなる。
図5において、伝送線路103、104内の矢印は、電圧が高くなる方向を示している。図3に示すように、fLは奇モードで動作するため、伝送線路103と104とは逆相動作となり、キャパシタ105とキャパシタ106との接続点で仮想短絡となる。このため、抵抗107が見えておらず、抵抗100に高周波電流が流れずに損失が生じない。以下、その理由を説明する。
図6において、縦軸は、伝送線路103及び104の電圧Vであり、横軸は、短絡端からの電気長Lである。αは、伝送線路103及び104のタップ結合されている位置である。伝送線路103の短絡端において電圧は0であり、開放端に向けて電圧は大きくなる。一方で、伝送線路104では、短絡端において電圧は0であるが、開放端に向けて電圧は小さくなる。伝送線路103及び伝送線路104は奇モードで動作するからである。
それぞれ伝送線路103及び104において、短絡端から同じ電気長である。したがって、図4及び図6に示されているように、αにおける電圧振幅は、同じ値となるので、端子101と端子102とは、伝送線路103および104に同じ結合度で接続される。したがって、端子101と端子102とを設けても、本高周波共振器は電気的な対称性が維持され、偶モードまたは奇モード以外の不要なモードの共振を抑圧できるとともに、不要なモードの共振による損失を低減できる。
以下、本高周波共振器において急峻な周波数特性を得ることができる理由を説明する。一般的に、共振器の無負荷Q(Qu0)は、次式で表わされる。Qu0は、f0における無負荷Qである。
図7は、実施の形態1に係る高周波共振器の他の構成例を示す図である。
図7(a)は、キャパシタ105及びキャパシタ106を可変容量としたときの構成図である。
本構成であっても、上記で述べた効果を奏する。さらに、本構成では、キャパシタ105及びキャパシタ106の容量値を変化させられるので、低域側の共振周波数fLを変化させることができる。これにより、本高周波共振器を発振器に用いた場合、発振器の発振周波数を変化させることができ、発振周波数の異なる複数の発振器を一つの発振器で実現できる。また、本高周波共振器をフィルタとして用いた場合、通過周波数または遮断周波数を可変にでき、周波数帯域の異なる複数のフィルタを一つのフィルタで実現できる。
図7(b)に示すように、伝送線路103及び伝送線路104の開放端に、一端が接地された可変容量105、106をそれぞれ備えても、各伝送線路の容量成分を変化することができるため、共振周波数を変化させることができる。また、キャパシタ105とキャパシタ106を可変容量として図7(a)と図7(b)とを組み合わせた構成としても良い。これは、他の実施例でも同様である。
図8において、縦軸は、Z(インピーダンス)またはY(アドミッタンス)であり、共振の強弱または有無の指標である。横軸は周波数である。点線は、gapが無限大のとき、つまり非結合の場合の共振周波数f0を表す。実線は、伝送線路103と伝送線路104とが結合しているときの共振周波数を表す。キャパシタ105及びキャパシタ106の容量を変化させることで、fHを変化させずに、fLを変化させることができる。
図9は、実施の形態1に係る高周波共振器の構成例を示すレイアウト図である。
図9(a)は、同一の誘電体基板に伝送線路103、伝送線路104を配置した場合のレイアウト図である。
図9(b)は、異なる積層誘電体基板にそれぞれ伝送線路103、伝送線路104を配置した場合のレイアウト図である。
図9(c)は、異なる積層誘電体基板にそれぞれ伝送線路103、伝送線路104を配置し、伝送線路103と伝送線路104とをオーバラップさせた構成のレイアウト図である。
図9(d)は、異なる積層誘電体基板にそれぞれ伝送線路103、伝送線路104を配置し、伝送線路103の一部と伝送線路104の一部とをオーバラップさせた構成のレイアウト図である。
図9(a)に示すように、伝送線路103と伝送線路104は誘電体基板の同一レイヤ層に配置されていても良い。また、図9(b)に示すように、異なるレイヤ層に配置されていても良い。図9(b)に示すように、異なるレイヤ層に伝送線路103及び伝送線路104を設けることにより、レイヤ層間の距離によっても、伝送線路103と伝送線路104との電磁界結合の強度を変化させることができるので、本高周波共振器の設計の自由度を大きくできる。
また、図9(c)、(d)に示すように、異なるレイヤ層に配置してオーバラップを生じていても良い。ここで、オーバラップとは、伝送線路の上下対向に対する重なりをいう。図9(c)、(d)に示すような構造の場合、伝送線路103と伝送線路104とのオーバラップを大きくすることにより、伝送線路103と伝送線路104との電磁界結合の強度を変化させることができるので、本高周波共振器の設計の自由度を大きくできる。図9に示した構成例は、他の実施の形態においても適用できる。
図10は、端子が一つである場合の高周波共振器の構成例を示す図である。
図1と比べて、端子102が削除されている。この構成であっても、伝送線路103と伝送線路104とは、偶モード及び奇モードで電磁界結合するので、上記で説明したように、fLの共振周波数に影響を与えずに、fHの共振周波数を抑圧することができる。図10の場合、信号は端子101から入力されるが、fLにおいて信号は高周波共振器1で反射し、端子101から出力される。fHの信号は、抵抗107で吸収される。
図11は、実施の形態2に係る高周波共振器の一構成例を示す図である。
なお、図11中、図1と同一符号は同一又は相当部分を示し、説明を省略する。
実施の形態2に係る高周波共振器は、高周波共振器1に並列共振回路2が接続された構成とすることにより、低域側の共振周波fL以外の不要共振を抑え、fLの共振周波数を利用できるようにするものである。
高周波共振器1の内部動作は、実施の形態1と同じであるため、説明を省略する。
端子101から信号が高周波共振器1に入力される。fHにおいて高周波共振器1は偶モードで動作するため、fHの信号は、キャパシタ105及びキャパシタ106を介して抵抗107で吸収される。
図12は、実施の形態2に係る高周波共振器の他の構成例を示す図である。
並列共振回路2は、λ/4の伝送線路203と、直列共振回路204とを備える。伝送線路203は、fLにおいてλ/4の長さをもつ伝送線路である。直列共振回路204は、fLにおいて共振する一端が接地された直列共振回路である。直列共振回路204と伝送線路203とが直列に接続され、伝送線路203が端子102に接続されている。なお、伝送線路203は、例えば、マイクロストリップ線路、ストリップ線路、スロット線路、コプレナ線路などで構成される。
以上のように、伝送線路203と、直列共振回路204とを直列接続した構成でも、並列共振回路として動作する。これは、他の実施の形態においても同様である。
実施の形態1及び実施の形態2では、高周波共振器について説明したが、以下実施の形態3から5では、その共振器を用いた発振器について説明する。
図13は、実施の形態3に係る高周波発振器の構成例を示す図である。
なお、図13中、図1と同一符号は同一又は相当部分を示し、説明を省略する。
本高周波発振器は、高周波共振器1と、能動回路3とを備える。高周波共振器1は、能動回路3に並列に接続される。
回路内に存在する共振周波数fL近傍の高周波雑音が、能動回路3の端子301に入力される。次に、能動回路3は、その電力を増幅し、高周波共振器1の端子101に出力する。高周波共振器1の端子101に入力された電力は、共振周波数fLにおいて、他の周波数よりも低損失で通過する。高周波共振器1を通過した電力は、端子102を介して、再び能動回路3の端子301に入力される。能動回路3と高周波共振器1とは正帰還となるように構成されているため、元の高周波雑音は益々増幅し、最終的に発振に至る。
図14は、実施の形態4に係る高周波発振器の一構成例を示す図である。
なお、図14中、図1と同一符号は同一又は相当部分を示し、説明を省略する。
本高周波発振器は、高周波共振器1と、能動回路4と、能動回路5とを備える。
共振周波数fL近傍の高周波雑音が、高周波共振器1の端子101が接続された能動回路4の端子401に入力され、その反射電力が増幅されて高周波共振器1の端子101に入力される。その電力は、高周波共振器1を通過して端子102に接続された能動回路5の端子501に入力され、能動回路5で増幅されて反射し、高周波共振器1の端子102に入力されて再び高周波共振器1を通過し、端子101から能動回路4の端子401に入力される。このループにおいて正帰還となるように構成されているため、元の高周波雑音は益々増幅し、最終的に発振に至る。このとき、高周波共振器1は、共振周波数fLにおいて、奇モードで動作しているため、能動回路4と能動回路5とは逆相で動作し、能動回路4の端子402と能動回路5の端子502とから、互いに逆相の発振波が得られる。
図15は、実施の形態4に係る高周波発振器の他の構成例を示す図である。
図15に示すように、能動回路4の端子402と合成回路6の端子601とが接続され、能動回路5の端子502と合成回路6の端子602とが接続され、合成回路6は、能動回路4の発振出力と能動回路5の発振出力とを等電気長で電力合成する。これにより、逆相であるfLの信号は相殺されるが、fLの偶数次高調波は同相合成となるため、fLの偶数次高調波が合成回路6の端子603から出力される。このような発振器をPush−Push発振器という。これにより、fLで発振させつつ、偶数次高調波を出力できるので、高い周波数で低位相雑音の発振波を得ることができる。
図16は、実施の形態5に係る高周波発振器の構成例を示す図である。
なお、図16中、図1と同一符号は同一又は相当部分を示し、説明を省略する。
図16において、高周波発振器は、共振周波数fLにおいて反射利得を有する能動回路4と、高周波共振器1とを備える。能動回路4の反射位相と高周波共振器1の反射位相との和(ループ位相)が共振周波数fLにおいて360°の整数倍(0を含む)であり、能動回路4の反射利得と高周波共振器1の反射損失との和(ループ利得)が0dB以上である。つまり、能動回路4と高周波共振器1とは、発振条件を満足する正帰還を形成している。
共振周波数fL近傍の高周波雑音が、高周波共振器1の端子101が接続された能動回路4の端子401に入力され、その反射電力が増幅されて高周波共振器1の端子101に入力される。その電力は高周波共振器1で反射されて、再び端子101から能動回路4の端子401に入力される。このループは正帰還となるように構成されているため、元の高周波雑音は益々増幅し、最終的に発振に至る。発振により生じた電力は、能動回路4の端子402から負荷に出力される。
図17は、実施の形態5に係る高周波発振器の他の構成例である。
図17(a)は、高周波共振器1に並列共振回路2及び能動回路4が接続された高周波発振器である。
図17(a)に示すように、本構成では、高周波共振器1の端子102に一端を接地した並列共振回路2を備え、端子108のタップ結合位置βに能動回路4の端子401をタップ結合している。ここで、α≠βである。並列共振回路2はfLで並列共振しているため、高インピーダンスであり、fLにおいて図17(a)と図16とは等価であると見なせるので、本構成では、不要発振を抑えつつ、タップ結合位置を、端子102のタップ結合位置と独立に選択することができる。これにより、本構成では、端子に対する設計の自由度を大きくできる。ここで、並列共振回路2は、図12において説明したように、伝送線路203及び直列共振回路204からなる並列共振回路を用いても良い。
図17(b)に示すように、高周波共振器1の端子101、102に一端を接地した並列共振回路2、7をそれぞれ備え、能動回路4を伝送線路103に別途タップ結合した構成としても良い。並列共振回路2は、高周波共振器1の端子102に接続され、並列共振回路7は、高周波共振器1の端子101に接続されている。能動回路4の端子401は、高周波共振器1の端子108に接続されている。このとき、並列共振回路2及び7は、fLにおいて並列共振しているため、高インピーダンスである。したがって、fLにおいて、図17(b)と図16とは等価である。よって、端子101及び102のタップ結合位置αと、能動回路4の端子401のタップ結合位置βとは独立して設定しても、図16と同様に動作することが分かる。図17(a)のときよりも、並列共振回路2及び7が電気的に対称に配置され、回路の電気的な対称性が維持できるため、共振周波数を変化させるとき、広帯域に変化させることができる。高周波共振器の共振周波数は、並列共振回路2、7のリアクタンスを可変とすることで、変化させることができる。並列共振回路2、7は、図12において説明した、伝送線路203及び直列共振回路204からなる並列共振回路を用いても良い。
Claims (7)
- 一端が短絡された第1の伝送線路と、
前記第1の伝送線路に対して平行に配置され、前記第1の伝送線路と電磁界結合し、前記第1の伝送線路の短絡端に対して逆側の一端が短絡された第2の伝送線路と、
前記第1の伝送線路の中点に一端が接続された第1のリアクタンス回路と、
前記第2の伝送線路の中点に一端が接続され、他端が前記第1のリアクタンス回路の他端と接続された第2のリアクタンス回路と、
前記第1のリアクタンス回路と前記第2のリアクタンス回路との接続点に一端が接続され、他端が接地された抵抗と
を備えた高周波共振器。 - 信号が入力または出力される端子を備え、
前記第1の伝送線路または前記第2の伝送線路の少なくとも一方に、前記端子がタップ結合した請求項1記載の高周波共振器。 - 前記端子を2つ備え、
前記端子の一方から前記第1の伝送線路の短絡端までの電気長と、前記端子の他方から前記第2の伝送線路の短絡端までの電気長とが同じである請求項2記載の高周波共振器。 - 前記第1の伝送線路または前記第2の伝送線路の少なくとも一方にタップ結合した並列共振回路とを備えた請求項1または請求項2に記載の高周波共振器。
- 一端が短絡された第1の伝送線路と、
前記第1の伝送線路に対して平行に配置され、前記第1の伝送線路と電磁界結合し、前記第1の伝送線路の短絡端に対して逆側の一端が短絡された第2の伝送線路と、
前記第1の伝送線路の中点に一端が接続された第1のリアクタンス回路と、
前記第2の伝送線路の中点に一端が接続され、他端が前記第1のリアクタンス回路の他端と接続された第2のリアクタンス回路と、
前記第1のリアクタンス回路と前記第2のリアクタンス回路との接続点に一端が接続され、他端が接地された抵抗と、
通過利得を有し、前記第1の伝送線路及び前記第2の伝送線路にタップ結合した能動回路と
を備えた高周波発振器。 - 一端が短絡された第1の伝送線路と、
前記第1の伝送線路に対して平行に配置され、前記第1の伝送線路と電磁界結合し、前記第1の伝送線路の短絡端に対して逆側の一端が短絡された第2の伝送線路と、
前記第1の伝送線路の中点に一端が接続された第1のリアクタンス回路と、
前記第2の伝送線路の中点に一端が接続され、他端が前記第1のリアクタンス回路の他端と接続された第2のリアクタンス回路と、
前記第1のリアクタンス回路と前記第2のリアクタンス回路との接続点に一端が接続され、他端が接地された抵抗と、
反射利得を有し、前記第1の伝送線路または前記第2の伝送線路の少なくとも一方にタップ結合した能動回路と
を備えた高周波発振器。 - 前記第1の伝送線路または前記第2の伝送線路の少なくとも一方にタップ結合した並列共振回路と
を備えた請求項5または請求項6に記載の高周波発振器。
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