図13は、一対の共振器111,112がコムライン結合された構成を示している。また、図14は、一対の共振器111,112がインターディジタル結合された構成を示している。一対の共振器111,112はそれぞれ、一端が開放端とされ、他端が短絡端とされている。コムライン結合とは、図13に示したように、互いの短絡端同士が対向すると共に、互いの開放端同士が対向するように配置された構造となる結合方法である。インターディジタル結合とは、図14に示したように、一方の共振器111の開放端と他方の共振器112の短絡端とが対向すると共に、一方の共振器111の短絡端と他方の共振器112の開放端とが対向するように2つの共振器が対向配置された構造となる結合方法である。ここで、電界による結合係数をke、磁界による結合係数をkmとすると、
コムライン結合による結合係数kは、k=ke−kmとなり、
インターディジタル結合による結合係数kは、k=ke+kmとなることが知られている。また、インターディジタル結合は、コムライン結合のように電界結合と磁界結合が打ち消し合わず、コムライン結合に比べて非常に強い結合が得られることが知られている。
図15は、インターディジタル結合された一対の共振器を用いて構成されたフィルタの基本構成を示している。このフィルタは、互いにインターディジタル結合された一対の共振器111,112を有する第1の共振器101と、互いにインターディジタル結合された他の一対の共振器121,122を有する第2の共振器102と、第1の共振器101に接続された入力端子104と、第2の共振器102に接続された出力端子105とを備えている。
図15のフィルタを具体的に構成する方法として、図16に示したような積層型の誘電体フィルタが考えられる。この誘電体フィルタは、誘電体材料よりなる略直方体形状の誘電体ブロック100を備え、その誘電体ブロックを多層構造としたものである。誘電体ブロックの内部には、導体の線路パターン(ストリップライン)が形成され、その内部の線路パターンにより、一対の共振器111,112および他の一対の共振器121,122と、入力端子104と、出力端子105とが内部層として形成されている。なお、誘電体ブロック100の対向する2つの側面はグランド電極とされている。一対の共振器111,112および他の一対の共振器121,122の短絡端は、側面のグランド電極に接続されている。また、誘電体ブロック100の対向する他の2つの側面には外部端子電極106,107が形成され、それらに入力端子104と出力端子105とが接続されている。
この構成例では、第1の共振器101と第2の共振器102とが全体として平行的(平面的)に並列配置された構造とされている。上記特許文献1および特許文献2に記載のフィルタの構造も基本的な部分はこれと同様である。このような構造の特徴として、第1の共振器101と第2の共振器102との結合を強くすることができる。このような構造の場合、一対の共振器111,112および他の一対の共振器121,122においてそれぞれ、対向する共振器間で電界の大部分が結合する。このため、隣り合う第1の共振器101と第2の共振器102間では、電界による結合はほとんどなく、磁界による結合がなされる。すなわち、第1の共振器101と第2の共振器102との間では、結合係数は、
ke≒0であり、k≒kmとなる。
第1の共振器101と第2の共振器102との結合が強い場合には、広帯域のバンドパスフィルタを構成するのに適している。一方で狭帯域のフィルタを構成するためには、結合を弱くする必要がある。しかしながら、図16のような構造において、結合を弱めるためには、第1の共振器101と第2の共振器102とを物理的に離すか、他の電極を挿入するなどする必要があり、これは小型化に反するので好ましくない。
ところで、上記特許文献2には、インターディジタル結合された一対の共振器を用いて、より小型化されたフィルタを構成できることが説明されている。以下、このことを説明する。以下では、一対の共振器111,112および他の一対の共振器121,122がそれぞれ、一対の1/4波長共振器であるものとして説明する。
まず、インターディジタル結合した一対の1/4波長共振器の共振モードについて説明する。まず、図19および図20を参照して、同じ周波数で共振する共振器を2つ結合させた場合の共振モードを考える。共振器同士の距離が離れているときは、共振器同士は全く結合しないので同じ周波数に共振ピークは重なるが、共振器同士を近づけていくと電波の飛び移りが起こるため、共振器は単独で共振することはなくなり、2つの共振器が混じり合った混成共振モードを形成し、共振ピークが2つに分裂する。ここで、混成共振モードにおける2つの共振モードを、第1の共振モード(モード1)と第2の共振モード(モード2)とすると、共振器同士の結合が弱い場合、分裂の度合いが小さいので、図19に示すように、2つの共振モードでの共振ピークの裾野は重なってしまう。このとき、低い共振モードである第2の共振モードの共振周波数f2では、第1の共振モードの共振ピークが重なっているため、第1の共振モードの成分を少し含んだ状態となっている。しかし、強く結合したときには、共振ピークが離れるので、図20に示すように、第2の共振モードが共振する周波数f2では、第1の共振モードの成分が全く無い状態を作り出すことができる。言い換えると、共振器同士の結合を強くさせることで、共振モードの純度を高めることができることを意味する。
インターディジタル結合した一対の1/4波長共振器111,112では、共振状態を2つの固有な共振モードに分けることができる。なお、他の一対の1/4波長共振器121,122についても同様である。図17は、インターディジタル結合した一対の1/4波長共振器111,112における第1の共振モードを示し、図18は、その第2の共振モードを示している。なお、図17および図18において、破線で示した曲線は、各共振器における電界Eの分布を示している。また、図17および図18では、一対の1/4波長共振器111,112の共振時の状態を示しており、他端をグランドの状態としているが、これは交流的なゼロ電位であることを意味している。
第1の共振モードでは、一対の1/4波長共振器111,112のそれぞれにおいて開放端側から短絡端側に電流iが流れ、それぞれに流れる電流iの向きが逆方向となる。なお、図17において「+V」で示した部分は開放端側で相対的に電位が高いことを示す。この第1の共振モードでは、一対の1/4波長共振器111,112で電磁波が同相に励振されている。この第1の共振モードでは、一対の1/4波長共振器111,112全体の物理的な回転対称軸に対して互いに回転対称な位置では、電界Eの位相と振幅とが同じになる。すなわち、第1の共振モードはコモンモードに対応する。一対の平衡端子104A,104Bを回転対称な位置に接続すれば、第1の共振モードでは一対の平衡端子104A,104Bからコモンモードの信号が出力される。
一方、第2の共振モードでは、一方の1/4波長共振器111では開放端側から短絡端側に電流iが流れると共に、他方の1/4波長共振器112では短絡端側から開放端側に電流iが流れ、それぞれに流れる電流iの向きが同方向となる。なお、図18において「+V」で示した部分は開放端側で相対的に電位が高いことを示し、「−V」で示した部分は開放端側で相対的に電位が低いことを示す。すなわち、この第2の共振モードでは、電界Eの分布を見ても分かるように、一対の1/4波長共振器111,112で電磁波が逆相に励振されている。この第2の共振モードでは、一対の1/4波長共振器全体の物理的な回転対称軸に対して互いに回転対称な位置で、電界Eの位相が180°異なり、振幅の絶対値は同じとなる。すなわち、第2の共振モードはディファレンシャルモードに対応する。一対の平衡端子104A,104Bを回転対称な位置に接続すれば、第2の共振モードでは一対の平衡端子104A,104Bから、振幅バランスと位相バランスとが共に良好な平衡信号を取り出すことができる。
図21は、インターディジタル結合された一対の1/4波長共振器111,112における共振周波数の分布状態を示している。インターディジタル結合の特徴として、第1の共振周波数f1と第2の共振周波数f2との中間の共振周波数f0は、線路の物理的な長さによって決まる1/4波長で共振した場合の周波数(インターディジタル結合していないときの各1/4波長共振器単体での共振周波数)となる。したがって、周波数の低い第2の共振周波数f2を通過周波数に設定することで、通過周波数を共振周波数f0に設定した場合よりも共振器全体を小型化することができる。例えば2.4GHz帯を通過周波数としたフィルタを設計する場合、物理的な長さを例えば8GHzに対応させた1/4波長共振器を用いることができる。これは、物理的な長さを2.4GHz帯に対応させた1/4波長共振器とした場合よりも小型のものとなる。さらに、第2の共振モードでは、結合を強くした場合、一対の1/4波長共振器111,112を仮想的に1つの導体とみなした状態と同等の磁界分布が得られ、仮想的に導体厚が厚くなり、導体損失を少なくすることができる利点がある。
このように、フィルタとしての通過周波数を第2の共振モードの共振周波数f2に設定すれば、小型で導体損失の少ない良好なバンドパスフィルタを実現することができる。また、インターディジタル結合することで強い結合が得られるので広帯域のバンドパスフィルタを実現することができる。図23は、このようなインターディジタル結合の特徴を利用して構成したフィルタの減衰特性および損失特性を示している。具体的には、図22に示した構成のフィルタの特性を示している。図22に示したフィルタは、図16に示したフィルタの構成に対して第1の共振器101と第2の共振器102との間にさらに第3の共振器103を並列配置したものである。第3の共振器103は、第1の共振器101および第2の共振器102と同様、インターディジタル結合された一対の1/4波長共振器131,132で構成されている。図23の横軸は周波数、縦軸は減衰量を示す。図23において、符号S21を付した曲線は、このフィルタにおける信号の通過損失特性を示す。符号S11を付した曲線は、入力端子側から見た反射損失特性を示す。図23から分かるように、広い帯域において、良好な減衰特性および損失特性が得られている。
しかしながら、このようなインターディジタル結合の特徴を利用して小型化を図るとますます共振器同士が近接することとなり、結合が強く(結合係数が大きく)なってしまう。このような特徴は、小型で広帯域のフィルタを構成するのに適しているものの、結合が強すぎて、小型で狭帯域のフィルタを構成するのが困難である。狭帯域のフィルタを構成するためには、結合を弱くする必要がある。そこで、需要者の様々な要求に応えるためにも、インターディジタル結合による小型化の利点を生かしつつ、共振器間の結合を弱くして狭帯域のフィルタに適した構成が実現できれば便利である。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、インターディジタル結合された共振器を用いて、小型で狭帯域のフィルタ特性を得ることができるフィルタを提供することにある。
本発明によるフィルタは、互いにインターディジタル結合された一対の1/4波長共振器を有する第1の共振器と、互いにインターディジタル結合された他の一対の1/4波長共振器を有し、第1の共振器に対して並列的に配置された第2の共振器と、第1の共振器および第2の共振器のそれぞれにおいて少なくとも1つの1/4波長共振器の開放端側に設けられ、第1の共振器と第2の共振器との間で互いに重なり合うように対向配置された電界結合用電極とを備えたものである。
本発明によるフィルタでは、第1の共振器と第2の共振器とがそれぞれ、インターディジタル結合された1/4波長共振器で構成されていることで、小型化が容易となる。また、第1の共振器と第2の共振器との間で互いに重なり合うように対向配置された電界結合用電極を設けたことで、第1の共振器と第2の共振器との間で電界結合の要素が加わり、単純にインターディジタル型の共振器を並列配置した従来の構造に比べて第1および第2の共振器間の結合が弱められる。単純にインターディジタル型の共振器を並列配置した場合には、ほぼ磁界結合のみによる強い結合がなされるが、電界結合の要素が加わることで、磁界結合と電界結合とが打ち消し合う要素が加わるため、共振器間の結合が弱められる。また、例えば電界結合用電極の対向面積を調整することで、共振器間の結合を所望の状態に調整することが可能となる。これにより、所望の狭帯域のフィルタ特性が得られる。
本発明によるフィルタにおいて、電界結合用電極は、第1の共振器および第2の共振器のそれぞれにおいて、一対の1/4波長共振器のそれぞれの開放端側に設けられていても良い。
本発明によるフィルタにおいて、第1の共振器における一方の1/4波長共振器と第2の共振器における一方の1/4波長共振器とが第1の平面内で並列的に配置されると共に、第1の共振器における他方の1/4波長共振器と第2の共振器における他方の1/4波長共振器とが第2の平面内で並列的に配置されていても良い。そして、第1の共振器の一方の1/4波長共振器に設けられた電界結合用電極と第2の共振器の他方の1/4波長共振器に設けられた電界結合用電極とが互いに対向配置され、第2の共振器の一方の1/4波長共振器に設けられた電界結合用電極と第1の共振器の他方の1/4波長共振器に設けられた電界結合用電極とが互いに対向配置されていても良い。
また、本発明によるフィルタにおいて、互いにインターディジタル結合されたさらに他の一対の1/4波長共振器を有し、第2の共振器に対して並列的に配置された第3の共振器をさらに備えていても良い。そして、電界結合用電極が、第1ないし第3の共振器のそれぞれにおいて少なくとも1つの1/4波長共振器の開放端側に設けられ、第1の共振器と第2の共振器との間、および第2の共振器と第3の共振器との間で互いに重なり合うように対向配置されていても良い。
ここで、第2の共振器を第1の共振器と第3の共振器との間に配置した場合、第2の共振器は電界結合用電極によって、第1の共振器と第3の共振器との双方に対して電界結合の要素が加わる。このため、第2の共振器では容量成分が増えすぎて共振周波数がフィルタとしての所望の共振周波数よりも低くなるおそれがある。その場合、以下のような構成にすることで、第2の共振器での容量成分を減少させて共振周波数を調整することができる。
例えば、第2の共振器が第1の共振器と第3の共振器との間に配置された場合において、第2の共振器における一対の1/4波長共振器の電極幅を、第1の共振器および第3の共振器における一対の1/4波長共振器の電極幅よりも小さく形成することで、第2の共振器での容量成分が減少する。
また、第2の共振器が第1の共振器と第3の共振器との間に配置された場合において、第2の共振器における一対の1/4波長共振器間の間隔が、第1の共振器および第3の共振器における一対の1/4波長共振器間の間隔よりも長い部分を有する構成にすることで、第2の共振器での容量成分が減少する。
この場合例えば、第2の共振器における一対の1/4波長共振器の厚みが長手方向において部分的に異なる部分を有し、相対的に厚みが薄い部分で一対の1/4波長共振器間の間隔が長くされていても良い。
本発明のフィルタによれば、インターディジタル型の第1の共振器と第2の共振器との間で互いに重なり合うように対向配置された電界結合用電極を設けるようにしたので、単純にインターディジタル型の共振器を並列配置した場合に比べて電界結合の要素が加わり、磁界結合と電界結合とが打ち消し合うことで、共振器間の結合を弱めることができる。これにより、例えば電界結合用電極の対向面積を調整することで、所望の狭帯域のフィルタ特性を得ることができる。また、第1の共振器と第2の共振器とをそれぞれ、インターディジタル結合された一対の1/4波長共振器を用いて構成するようにしたので、小型化が容易となる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
まず、本発明の第1の実施の形態に係るフィルタについて説明する。
図1(A),(B)は、本発明の第1の実施の形態に係るフィルタの基本構成を示している。図2は、図1(A),(B)に示したフィルタの構成要素を積層構造にした積層型フィルタの具体的な構成例を示している。なお、図1(A)は図2に示した積層型フィルタの上層(第2の平面内)の面内の構造、図1(B)は下層の面内(第1の平面内)の構造を示す。
本実施の形態に係るフィルタは、対向配置された一対の1/4波長共振器11,12を有する第1の共振器1と、対向配置された他の一対の1/4波長共振器21,22を有する第2の共振器2とを備えている。このフィルタは、図2に示したように、誘電体材料よりなる全体として略直方体形状の誘電体ブロック10を備え、その誘電体ブロックを多層構造としたものである。誘電体ブロックの内部には、TEM線路を構成する導体の線路パターン(ストリップライン)が形成され、その内部の線路パターンにより、一対の1/4波長共振器11,12および他の一対の1/4波長共振器21,22が内部層として形成されている。このような構造は、例えば、シート状の誘電体基板を複数用意し、各線路部分をそのシート状の誘電体基板上に導体の線路パターンで形成して、そのシート状の誘電体基板を重ね合わせた積層構造にすることで実現できる。なお、誘電体ブロック10の互いに対向する「第1の面」および「第2の面」(図1のX方向の2つの側面)にはグランド電極が形成されている。
一対の1/4波長共振器11,12は、互いにインターディジタル結合されている。他の1/4波長共振器21,22も同様に、互いにインターディジタル結合されている。既に図17〜図21を用いて説明したように、インターディジタル結合された一対の1/4波長共振器は、第1の共振周波数f1で共振する第1の共振モードと第1の共振周波数f1よりも低い第2の共振周波数f2で共振する第2の共振モードとを有している。一対の1/4波長共振器11,12と他の一対の1/4波長共振器21,22は、動作周波数(フィルタとしての通過周波数)が第2の共振周波数f2となるように構成されている。そして、このフィルタは、第1の共振器1と第2の共振器2とが、周波数の低い第2の共振周波数f2で共振し、電磁結合するように構成されている。これにより、第2の共振周波数f2を通過帯域とした、バンドパスフィルタが構成されている。
第1の共振器1を構成する一対の1/4波長共振器11,12は、水平方向(図1のX方向)に延在する直線状の導体の線路パターンで形成されている。一対の1/4波長共振器11,12のうち、一方の1/4波長共振器11は誘電体ブロック10の下層に形成され、その一端は開放端とされ、他端は誘電体ブロック10の一側面(上述の第1の面)のグランド電極に接続され、短絡端とされている。また、他方の1/4波長共振器12は誘電体ブロック10の上層に形成され、その一端は開放端とされ、他端は誘電体ブロック10の他の一側面(上述の第2の面)のグランド電極に接続され、短絡端とされている。また、一対の1/4波長共振器11,12の開放端側にはそれぞれ、電界結合用電極11A,12Aが設けられている。
第2の共振器2を構成する他の一対の1/4波長共振器21,22も同様に、水平方向(図1のX方向)に延在する直線状の導体の線路パターンで形成されている。他の一対の1/4波長共振器21,22のうち、一方の1/4波長共振器21は誘電体ブロック10の下層に形成され、その一端は開放端とされ、他端は誘電体ブロック10の他の一側面(上述の第2の面)のグランド電極に接続され、短絡端とされている。また、他方の1/4波長共振器22は誘電体ブロック10の上層に形成され、その一端は開放端とされ、他端は誘電体ブロック10の一側面(上述の第1の面)のグランド電極に接続され、短絡端とされている。また、他の一対の1/4波長共振器21,22の開放端側にはそれぞれ、電界結合用電極21A,22Aが設けられている。
このように誘電体ブロック10内部において、図1(B)および図2に示したように、第1の共振器1における一方の1/4波長共振器11と第2の共振器2における一方の1/4波長共振器21とが第1の平面内(下層)で並列的に配置されている。そして、第1の共振器1における一方の1/4波長共振器11の短絡端(および開放端)と第2の共振器2における一方の1/4波長共振器21の短絡端(および開放端)とが第1の平面内において互いに逆方向に位置している。
また、図1(A)および図2に示したように、第1の共振器1における他方の1/4波長共振器12と第2の共振器2における他方の1/4波長共振器22とが第2の平面内(上層)で並列的に配置されている。そして、第1の共振器1における他方の1/4波長共振器12の短絡端(および開放端)と第2の共振器2における他方の1/4波長共振器22の短絡端(および開放端)とが第2の平面内において互いに逆方向に位置している。
第1の共振器1の一方の1/4波長共振器11に設けられた電界結合用電極11Aと第2の共振器2の他方の1/4波長共振器22に設けられた電界結合用電極22Aは、積層方向(上下方向)から見て、少なくとも一部分が互いに重なり合うようにして対向配置されている。これにより、電界結合用電極11Aと電界結合用電極22Aとで、電界結合(容量結合)がなされるようになっている。
また、第2の共振器2の一方の1/4波長共振器21に設けられた電界結合用電極21Aと第1の共振器1の他方の1/4波長共振器12に設けられた電界結合用電極12Aは、積層方向(上下方向)から見て、少なくとも一部分が互いに重なり合うようにして対向配置されている。これにより、電界結合用電極21Aと電界結合用電極12Aとで、電界結合(容量結合)がなされるようになっている。
なお、このフィルタにおいて、入出力端子を設ける場合、例えば図3に示したような構成が考えられる。図3の構成例では、誘電体ブロック10の対向する第3の面および第4の面(図1のZ方向の2つの側面)に外部端子電極6A,6Bおよび外部端子電極7A,7Bが形成されている。そして、第1の共振器1および第2の共振器2の一端から、それら外部端子電極6A,6Bおよび外部端子電極7A,7Bにまで延在するように、平衡入力端子4A,4Bおよび平衡出力端子5A,5Bが形成されている。より詳しくは、第1の共振器1における一方の1/4波長共振器11の開放端側に一方の平衡入力端子4Aの一端が接続され、他端が外部端子電極6Aに接続されている。また、第1の共振器1における他方の1/4波長共振器12の開放端側に他方の平衡入力端子4Bの一端が接続され、他端が外部端子電極6Bに接続されている。また、第2の共振器2における一方の1/4波長共振器21の開放端側に一方の平衡出力端子5Aの一端が接続され、他端が外部端子電極7Aに接続されている。また、第2の共振器2における他方の1/4波長共振器22の開放端側に他方の平衡出力端子5Bの一端が接続され、他端が外部端子電極7Bに接続されている。
なお、このフィルタは、平衡入出力の構成に限らず、不平衡入力または不平衡出力の構成であっても良い。例えば不平衡入力とする場合、第1の共振器1に設ける入力端子を一方の1/4波長共振器11側にのみ設けるようにすれば良い。
次に、本実施の形態に係るフィルタの作用を説明する。
このフィルタでは、第1の共振器1と第2の共振器2とがそれぞれ、インターディジタル結合された一対の1/4波長共振器を有する構成とされ、そのインターディジタル結合した一対の1/4波長共振器における周波数の低い第2の共振周波数f2を通過帯域としていることで、図17〜図21を用いて上述した原理により、小型化が図られる。
また、このフィルタでは、第1の共振器1と第2の共振器2との間で互いに重なり合うように対向配置された電界結合用電極11A,12A,21A,22Aを設けたことで、第1の共振器1と第2の共振器2との間で電界結合の要素が加わり、単純にインターディジタル型の共振器を並列配置した従来の構造(例えば図16参照)に比べて第1および第2の共振器間の結合が弱められる。単純にインターディジタル型の共振器を並列配置した場合には、ほぼ磁界結合のみによる強い結合がなされるが、電界結合の要素が加わることで、磁界結合と電界結合とが打ち消し合う要素が加わるため、共振器間の結合が弱められる。また、例えば電界結合用電極11A,12A,21A,22Aの対向面積を調整することで、共振器間の結合を所望の状態に調整することが可能となる。これにより、所望の狭帯域のフィルタ特性が得られる。以下、第1の共振器1と第2の共振器2との間の結合についてより詳しく説明する。
第1の共振器1と第2の共振器2との間の結合について説明する前に、まず、一般的なコムライン結合とインターディジタル結合について説明する。図4(A),(B)は、コムライン結合された一対の1/4波長共振器111,112間の結合状態について示しており、図4(A)は励振状態が偶モード、図4(B)は励振状態が奇モードでの結合状態を示す。なお、図中に付した「+」の符号はその共振器部分において電荷がプラスにチャージされることを示し、「−」の符号は電荷がマイナスにチャージされることを示す。図4(A)に示したようにコムライン結合の偶モードでは、一対の1/4波長共振器111,112のそれぞれにおいて短絡端側から開放端側に電流iが流れ、それぞれに流れる電流iの向きが同方向となる。このため、相互インダクタンスLが大きくなる(磁界結合が強い)。また、一対の1/4波長共振器111,112のそれぞれにおいて電荷がプラスにチャージされる。このため、相互容量Cは小さい(電界結合が弱い)。一方、図4(B)に示したようにコムライン結合の奇モードでは、一対の1/4波長共振器111,112間で互いに逆方向に電流iが流れる。このため、相互インダクタンスLは小さくなる(磁界結合が弱い)。また、一対の1/4波長共振器111,112間で電荷がプラスとマイナスにチャージされる。このため、相互容量Cは大きい(電界結合が強い)。
また、図5(A),(B)は、インターディジタル結合された一対の1/4波長共振器111,112間の結合状態について示しており、図5(A)は励振状態が偶モード、図5(B)は励振状態が奇モードでの結合状態を示す。なお、ここでは、電流の向きに着目し、電流の向きが同じモードを偶モード、電流の向きが逆向きのモードを奇モードとして定義している。また、図中に付した「+」の符号はその共振器部分において電荷がプラスにチャージされることを示し、「−」の符号は電荷がマイナスにチャージされることを示す。図5(A)に示したようにインターディジタル結合の偶モードでは、一対の1/4波長共振器111,112のそれぞれに流れる電流iの向きが同方向となる。このため、相互インダクタンスLが大きくなる(磁界結合が強い)。また、一対の1/4波長共振器111,112間で電荷がプラスとマイナスにチャージされる。このため、相互容量Cは大きい(電界結合が強い)。一方、図5(B)に示したようにインターディジタル結合の奇モードでは、一対の1/4波長共振器111,112間で互いに逆方向に電流iが流れる。このため、相互インダクタンスLは小さくなる(磁界結合が弱い)。また、一対の1/4波長共振器111,112のそれぞれにおいて電荷がプラスにチャージされる。このため、相互容量Cは小さい(電界結合が弱い)。
次に、図6(A),(B)および図7(A),(B)を参照して、本実施の形態における第1の共振器1と第2の共振器2との間の結合状態について説明する。なお、図6(A),(B)は励振状態が偶モード、図7(A),(B)は励振状態が奇モードである場合を示す。また、図6(A)および図7(A)は、図1(A)と同様、積層型フィルタにおける上層(第2の平面内)の面内の構造に対応し、図6(B)および図7(B)は、図1(B)と同様、下層の面内(第1の平面内)の構造に対応する。
図6(A),(B)に示したように偶モードでは、第1の共振器1を構成する一対の1/4波長共振器11,12と第2の共振器2を構成する他の一対の1/4波長共振器21,22とのそれぞれに流れる電流iの向きが各面内で同方向となる。このため、相互インダクタンスLが大きくなる(磁界結合が強い)。また、互いに対向する電界結合用電極11Aと電界結合用電極22Aとではそれぞれ、電荷がマイナスにチャージされる。また、もう1つの互いに対向する電界結合用電極21Aと電界結合用電極12Aとではそれぞれ、電荷がプラスにチャージされる。このため偶モードでは、第1の共振器1と第2の共振器2との間で相互容量Cは小さい(電界結合が弱い)。これは、図4(A)に示したコムライン結合での偶モードに類似している。
図7(A),(B)に示したように奇モードでは、第1の共振器1を構成する一対の1/4波長共振器11,12と第2の共振器2を構成する他の一対の1/4波長共振器21,22とのそれぞれに流れる電流iの向きが各面内で逆方向となる。このため、第1の共振器1と第2の共振器2との間で相互インダクタンスLが小さくなる(磁界結合が弱い)。また、互いに対向する電界結合用電極11Aと電界結合用電極22Aとではそれぞれ、電荷がマイナスとプラスとにチャージされる。また、もう1つの互いに対向する電界結合用電極21Aと電界結合用電極12Aとにおいてもそれぞれ、電荷がマイナスとプラスとにチャージされる。このため奇モードでは、第1の共振器1と第2の共振器2との間で相互容量Cは大きい(電界結合が強い)。これは、図4(B)に示したコムライン結合での奇モードに類似している。
なお、ここでの説明において、相互容量Cについては構成要素として、電界結合用電極11A,12A,21A,22Aのみを考慮した説明としているが、これは、電界結合用電極11A,12A,21A,22Aを除いた電極部分では、実質的に相互容量は無視できるほど小さいためである。
このように、本実施の形態における第1の共振器1と第2の共振器2との間の結合は、電界結合用電極11A,12A,21A,22Aを設けたことによって、コムライン結合に類似したものとなる。既に図13および図14等を参照して説明したように、コムライン結合はインターディジタル結合に比べて弱い結合であることが知られている。すなわち、本実施の形態では、第1の共振器1と第2の共振器2との間がコムライン結合に類似した結合になることで、互いの結合が弱められる。
実際に従来の構造(図16の構造)と本実施の形態に係るフィルタの構造とで、シミュレーションを行った結果、第1の共振器1と第2の共振器2との間の結合係数kに差が得られた。従来の構造(図16の構造)において、上述の第1の共振周波数f1を約2.8GHz、第2の共振周波数f2を約2.2GHzとした場合、第1の共振器1と第2の共振器2との間の結合係数kは、
k=約0.24であった。
これに対し、本実施の形態に係るフィルタの構造では、第1の共振周波数f1を約2.5GHz、第2の共振周波数f2を約2.0GHzとした場合、第1の共振器1と第2の共振器2との間の結合係数kは、
k=約0.21となり、結合係数を小さく(結合を弱く)することができた。
また、図8は、本実施の形態に係るフィルタの減衰特性および損失特性を示している。横軸は周波数、縦軸は減衰量を示す。図8において、符号S21を付した曲線は、このフィルタにおける信号の通過損失特性を示す。符号S11を付した曲線は、入力側から見た反射損失特性を示す。図8から分かるように、従来の構成における特性(図23参照)に比べて、狭帯域化され、かつ低域側に減衰極を持った特性が得られている。
以上説明したように、本実施の形態によれば、インターディジタル型の第1の共振器1と第2の共振器2との間で互いに重なり合うように対向配置された電界結合用電極11A,12A,21A,22Aを設けるようにしたので、単純にインターディジタル型の共振器を並列配置した場合に比べて電界結合の要素が加わり、磁界結合と電界結合とが打ち消し合うことで、共振器間の結合を弱めることができる。これにより、例えば電界結合用電極の対向面積を調整することで、所望の狭帯域のフィルタ特性を得ることができる。また、第1の共振器1と第2の共振器2とをそれぞれ、インターディジタル結合された一対の1/4波長共振器を用いて構成するようにしたので、小型化が容易となる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。なお、上記第1の実施の形態に係るフィルタと実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
図9(A),(B)は、本発明の第2の実施の形態に係るフィルタの基本構成を示している。なお、図9(A)は、図1(A)と同様、積層型フィルタにおける上層(第2の平面内)の面内の構造に対応し、図9(B)は、図1(B)と同様、下層の面内(第1の平面内)の構造に対応する。なお、本実施の形態では、積層構造の具体例の図示を省略するが、基本的には図2と同様に誘電体ブロック10の内部に各共振器に対応する導体の線路パターンを形成した積層型誘電体フィルタの構成にすることができる。
本実施の形態に係るフィルタは、上記第1の実施の形態に係るフィルタ(図1(A),(B)および図2)の構成に対してさらに、第3の共振器3を備えている。第3の共振器3の構成は、基本的に第1の共振器1と同様であり、互いにインターディジタル結合された、さらに他の一対の1/4波長共振器31,32を有している。第3の共振器3は、第2の共振器2に対して並列的に配置されている。本実施の形態では、第2の共振器2は、第1の共振器1と第3の共振器3との間に配置されている。
第3の共振器3を構成する一対の1/4波長共振器31,32のうち、一方の1/4波長共振器31は、図2における第1の共振器1の一方の1/4波長共振器11と同様、誘電体ブロック10の下層に形成され、その一端は開放端とされ、他端は誘電体ブロック10の一側面(上述の第1の面)のグランド電極に接続され、短絡端とされている。また、他方の1/4波長共振器32は、図2における第1の共振器1の他方の1/4波長共振器12と同様、誘電体ブロック10の上層に形成され、その一端は開放端とされ、他端は誘電体ブロック10の他の一側面(上述の第2の面)のグランド電極に接続され、短絡端とされている。また、一対の1/4波長共振器31,32の開放端側にはそれぞれ、電界結合用電極31A,32Aが設けられている。
本実施の形態において、第2の共振器2を構成する他の一対の1/4波長共振器21,22の開放端側には、電界結合用電極21A,22Aのほかに、他の電界結合用電極21B,22Bが、第3の共振器3との電界結合のために設けられている。
本実施の形態では、誘電体ブロック10内部において、図9(B)に示したように、第1の共振器1における一方の1/4波長共振器11と第2の共振器2における一方の1/4波長共振器21と第3の共振器3における一方の1/4波長共振器31とが、第1の平面内(下層)で並列的に配置されている。そして、第1の共振器1における一方の1/4波長共振器11の短絡端(および開放端)と第2の共振器2における一方の1/4波長共振器21の短絡端(および開放端)とが第1の平面内において互いに逆方向に位置している。また、第3の共振器3における一方の1/4波長共振器31の短絡端(および開放端)と第2の共振器2における一方の1/4波長共振器21の短絡端(および開放端)とが第1の平面内において互いに逆方向に位置している。
また、図9(A)に示したように、第1の共振器1における他方の1/4波長共振器12と第2の共振器2における他方の1/4波長共振器22と第3の共振器3における他方の1/4波長共振器32とが、第2の平面内(上層)で並列的に配置されている。そして、第1の共振器1における他方の1/4波長共振器12の短絡端(および開放端)と第2の共振器2における他方の1/4波長共振器22の短絡端(および開放端)とが第2の平面内において互いに逆方向に位置している。また、第3の共振器3における他方の1/4波長共振器32の短絡端(および開放端)と第2の共振器2における他方の1/4波長共振器22の短絡端(および開放端)とが第2の平面内において互いに逆方向に位置している。
第3の共振器3の一方の1/4波長共振器31に設けられた電界結合用電極31Aと第2の共振器2の他方の1/4波長共振器22に設けられた他の電界結合用電極22Bは、積層方向(上下方向)から見て、少なくとも一部分が互いに重なり合うようにして対向配置されている。これにより、電界結合用電極31Aと電界結合用電極22Bとで、第3の共振器3と第2の共振器2との間が、電界結合(容量結合)されるようになっている。
また、第2の共振器2の一方の1/4波長共振器21に設けられた他の電界結合用電極21Bと第3の共振器3の他方の1/4波長共振器32に設けられた電界結合用電極32Aは、積層方向(上下方向)から見て、少なくとも一部分が互いに重なり合うようにして対向配置されている。これにより、電界結合用電極21Bと電界結合用電極32Aとで、第2の共振器2と第3の共振器3との間が、電界結合(容量結合)されるようになっている。
なお、本実施の形態において、第1の共振器1と第2の共振器2との間の電界結合については上記第1の実施の形態と同様である。
本実施の形態では、第2の共振器2が第1の共振器1と第3の共振器3との間に配置され、電界結合用電極11A,12A,21A,21B,22A,22B,31A,32Aによって、第1の共振器1と第3の共振器3との双方に対して電界結合がなされる。これにより、第1の共振器1と第2の共振器2との間、および第2の共振器2と第3の共振器3との間で電界結合の要素が加わり、単純にインターディジタル型の共振器を3つ並列配置した従来の構造に比べて第1および第2の共振器間の結合と、第2および第3の共振器間の結合が弱められる。単純にインターディジタル型の共振器を3つ並列配置した場合には、ほぼ磁界結合のみによる強い結合がなされるが、電界結合の要素が加わることで、磁界結合と電界結合とが打ち消し合う要素が加わるため、3つの共振器間の結合が弱められる。また、例えば電界結合用電極11A,12A,21A,21B,22A,22B,31A,32Aの対向面積を調整することで、共振器間の結合を所望の状態に調整することが可能となる。これにより、所望の狭帯域のフィルタ特性が得られる。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。なお、上記第1または第2の実施の形態に係るフィルタと実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
図10(A),(B)は、本発明の第3の実施の形態に係るフィルタの基本構成を示している。なお、図10(A)は、図1(A)と同様、積層型フィルタにおける上層(第2の平面内)の面内の構造に対応し、図10(B)は、図1(B)と同様、下層の面内(第1の平面内)の構造に対応する。なお、本実施の形態では、積層構造の具体例の図示を省略するが、基本的には図2と同様に誘電体ブロック10の内部に各共振器に対応する導体の線路パターンを形成した積層型誘電体フィルタの構成にすることができる。
本実施の形態に係るフィルタは、上記第2の実施の形態に係るフィルタ(図9(A),(B))の構成に対して、第2の共振器2における一対の1/4波長共振器21,22の電極幅W1を、第1の共振器1および第3の共振器3における一対の1/4波長共振器11,12および31,32の電極幅よりも小さく形成したものである。これにより、第2の共振器2での容量成分を減少させている(図9(A),(B)の構成例での第2の共振器2の電極幅をW0とすると、それよりも電極幅をも小さく形成している)。
以下、図11(A),(B)を参照して、第2の共振器2での容量成分を減少させる理由について説明する。図1(A),(B)の構成では、第2の共振器2は電界結合用電極11A,12A,21A,22Aによって、第1の共振器1に対してのみ電界結合している。図11(A)は、図1(A),(B)の構成でのインダクタンス成分L0と、容量成分C0(グランドに対する容量成分)とを等価的に示している。これに対し、図9(A),(B)の構成では、第2の共振器2は、さらに電界結合用電極21B,22B,31A,32Aが加えられたことで、第1の共振器1と第3の共振器3との双方に対して電界結合の要素が加わる。このため、図11(B)に示したように、他の容量成分C1(グランドに対する容量成分)が等価的に追加される。このため、容量成分が増えすぎて共振周波数がフィルタとしての所望の共振周波数よりも低くなるおそれがある。本実施の形態では、第2の共振器2における一対の1/4波長共振器21,22の電極幅W1を小さく形成することで、第2の共振器2での容量成分を減少させて共振周波数が所望の値となるように調整することができる。
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。なお、上記第1または第2の実施の形態に係るフィルタと実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
図12(A)〜(C)は、本発明の第4の実施の形態に係るフィルタの基本構成を示している。なお、図12(A)は、図1(A)と同様、積層型フィルタにおける上層(第2の平面内)の面内の構造に対応し、図12(B)は、図1(B)と同様、下層の面内(第1の平面内)の構造に対応する。図12(C)は、第2の共振器2の部分を側面方向から見た構成を示している。なお、本実施の形態では、積層構造の具体例の図示を省略するが、基本的には図2と同様に誘電体ブロック10の内部に各共振器に対応する導体の線路パターンを形成した積層型誘電体フィルタの構成にすることができる。
本実施の形態に係るフィルタも、上記第3の実施の形態に係るフィルタ(図10(A),(B))と同様、共振周波数が所望の値から変化しないよう、上記第2の実施の形態に係るフィルタ(図9(A),(B))の構成に対して、第2の共振器2での容量成分を減少させたものである。
本実施の形態に係るフィルタの平面構成(図12(A),(B))は、上記第2の実施の形態に係るフィルタ(図9(A),(B))と同様であるが、図12(C)に示したように、第2の共振器2における一対の1/4波長共振器21,22間の上下方向の間隔(対向間隔)を異ならせている。図9(A),(B)における構成では、各共振器において一対の1/4波長共振器間の上下方向の間隔は同一とされている。
これに対して、本実施の形態では、第2の共振器2における一対の1/4波長共振器21,22間の間隔が、第1の共振器1および第3の共振器3における一対の1/4波長共振器間の間隔よりも長い部分を有している。例えば、第1の共振器1および第3の共振器3における一対の1/4波長共振器間の間隔をt0とすると、それよりも長い間隔t1となる部分を有している。このような構造は、例えば、第2の共振器2における一対の1/4波長共振器21,22の厚みを長手方向において部分的に異ならせることで可能である。相対的に厚みが薄い部分で一対の1/4波長共振器21,22間の間隔を長くすることができる。例えば図12(C)に示したように、相対的に厚みが厚い部分の長さをW10とすると、この厚い部分の長さW10を短くすればするほど、第2の共振器2での容量成分を減少させることができる。
[その他の実施の形態]
本発明は、上記各実施の形態に限定されず種々の変形実施が可能である。例えば上記第1の実施の形態では、第1の共振器1および第2の共振器2を構成する一対の/4波長共振器のすべての開放端に電界結合用電極を設けるようにしたが、第1の共振器1および第2の共振器2のそれぞれにおいて、一対の/4波長共振器の一方の開放端側にのみ電界結合用電極を設けるようにしても良い。例えば、第1の共振器1の一方の1/4波長共振器11の開放端と第2の共振器2の他方の1/4波長共振器22の開放端とにのみ、電界結合用電極を設けるようにしても良い。
また、例えば上記第1の実施の形態において、第1の共振器1および第2の共振器2のそれぞれにおいて、一対の1/4波長共振器を複数組有していても良い。すなわち第1の共振器1および第2の共振器2のそれぞれにおいて、上下方向に3以上の1/4波長共振器が積層された構造であっても良い。その場合、電界結合用電極は、例えば最も下層の1/4波長共振器と最も上層の1/4波長共振器とに設け、最も下層と最も上層との間でそれらに設けた電界結合用電極が互いに重なり合うように対向配置すれば良い。
1…第1の共振器、2…第2の共振器、3…第3の共振器、4A,4B…平衡入力端子、5A,5B…平衡出力端子、6A,6B,7A,7B…外部端子電極、10…誘電体ブロック、11,12,21,22,31,32…1/4波長共振器、11A,12A,21A,21B,22A,22B,31A,32A…電界結合用電極。