以下、本発明に係るアンテナ装置のいくつかの実施の形態例を図1〜図26を参照しながら説明する。説明の便宜のために、これらの図に記載されたアンテナ素子において、図面上、左側の面を左側面、右側の面を右側面、手前側の面を正面、奥行き側の面を背面と記す。
第1の実施の形態に係るアンテナ装置10Aは、図1に示すように、複数枚の板状の誘電体層が積層、焼成されて構成された誘電体基板12内に、2本の両端開放型の1/2波長共振素子14a及び14bがそれぞれ平行に形成された構成を有するフィルタ部16と、誘電体基板12の上面に電極膜により形成されたダイポールアンテナ18からなるアンテナ部20を具備して構成されている。ここで、アンテナ部20を構成するアンテナ18は、各開放端が互いに離間する位置となるように第1の誘電体層S1上に形成されている。
具体的には、前記誘電体基板12は、図1に示すように、上から順に、第1の誘電体層S1〜第9の誘電体層S9が積み重ねられて構成されている。これら第1〜第9の誘電体層S1〜S9は1枚あるいは複数枚の層にて構成される。
前記アンテナ部20とフィルタ部16は、誘電体基板12上、平面的に互いに分離された領域に形成されている。例えば、図1上、左の領域にフィルタ部16が形成され、右の領域にアンテナ部20が形成されている。更に、前記アンテナ部20は、第1の誘電体層S1の上面に形成され、フィルタ部16は、第2の誘電体層S2から第9の誘電体層S9にかけて形成されている。
また、図3に示すように、誘電体基板12の外周面のうち、例えばその左側面に1つの入出力端子22が形成され、該入出力端子22を除く左側面から下面にかけてアース電極24が形成されている。
そして、この第1の実施の形態に係るアンテナ装置10Aのフィルタ部16においては、図1に示すように、第6の誘電体層S6の一主面に2本の共振素子14a及び14b(第1及び第2の共振素子14a及び14b)がそれぞれ平行に形成されている。これら共振器14a及び14bは、各両端が開放とされている。
前記第6の誘電体層S6の上層に位置する第5の誘電体層S5の一主面には、1つの入出力用電極26と、2つの入出力用電極(第1及び第2の入出力用電極28及び30)が形成されている。
入出力用電極26は、一端が入出力端子22(図2参照)に接続され、かつ、前記第1の共振素子14aと容量結合されるように形成されている。第1及び第2の入出力用電極28及び30は、各一端がダイポールアンテナ18における2つの平衡入出力端子(第1及び第2の入出力端子32及び34)にそれぞれスルーホール36及び38を通じて接続され、かつ、第2の共振素子14bと容量結合されるように形成されている。
つまり、このフィルタ部16は、バラン等の付加的な回路部品を介さずに平衡入出力方式で直接アンテナ部20と電気的に接続されることになる。また、反対側の入出力用電極26を通じて図示しない他の回路と非平衡入出力方式で接続されることになる。
一方、第2の誘電体層S2の一主面と、第9の誘電体層S9の他主面(誘電体基板12の下面)には、それぞれ誘電体基板12の左側面から延びる矩形状の比較的面積の大きな内層アース電極40及び42が形成されている。
第4の誘電体層S4の一主面と第8の誘電体層S8の一主面には、前記2本の共振素子14a及び14bの各両端に対応してそれぞれ4つの内層アース電極、即ち、合計8つの内層アース電極(第1〜第8の内層アース電極)44a〜44hが形成されている。
この場合、第1、第3、第5及び第7の内層アース電極44a、44c、44e及び44gが、第1及び第2の共振素子14a及び14bの各一方の開放端に対向するように形成され、第2、第4、第6及び第8の内層アース電極44b、44d、44f及び44hが、第1及び第2の共振素子14a及び14bの各他方の開放端に対向するように形成されている。
更に、第1〜第4の内層アース電極44a〜44dは、第2の誘電体層S2の一主面に形成された内層アース電極40にそれぞれスルーホール46a〜46dを介して電気的に接続され、第5〜第8の内層アース電極44e〜44hは、第9の誘電体層S9の他主面に形成された内層アース電極42にそれぞれスルーホール46e〜46hを介して電気的に接続されている。
第7の誘電体層S7の一主面には、アース電極24、入出力端子22及びアンテナ部20に対して電位的にフローティング状態とされた2つの結合調整電極(第1及び第2の結合調整電極50及び52)が形成されている。
これら第1及び第2の結合調整電極50及び52は、第1の共振素子14aに対向する短冊状の第1の電極本体50a及び52aと第2の共振素子14bに対向する短冊状の第2の電極本体50b及び52bとが、その間に形成されたリード電極50c及び52cによって電気的に接続された形状を有する。
更に、この実施の形態では、第1及び第2の結合調整電極50及び52は、図4に示すように、2本の共振素子14a及び14bの長さ方向中心の線mに対して線対称の位置に形成されている。
第1の実施の形態に係るアンテナ装置10Aは、基本的には以上のように構成されるものであるが、ここで、各電極の電気的な結合について図2及び図3を参照しながら説明する。
まず、図2に示すように、第1の共振素子14aの両開放端と第1、第2、第5及び第6の内層アース電極44a、44b、44e及び44fとの間にはそれぞれ静電容量C1及びC2並びにC3及びC4が形成され、第2の共振素子14bの両開放端と第3、第4、第7及び第8の内層アース電極44c、44d、44g及び44hとの間にはそれぞれ静電容量C5及びC6並びにC7及びC8が形成されている。
それぞれ隣接する共振素子14a及び14b同士は互いに誘導結合され、これにより、等価回路上では、隣接する共振素子14a及び14b間にインダクタンスLが挿入されたかたちとなる。
また、図3に示すように、第1の共振素子14aと入出力用電極26との間には静電容量C9が形成され、第2の共振素子14bと第1の入出力用電極28との間、並びに第2の共振素子14bと第2の入出力用電極30との間にはそれぞれ静電容量C10及びC11が形成されている。
更に、第1の共振素子14aと第1の結合調整電極50との間、並びに第1の結合調整電極50と第2の共振素子14bとの間にはそれぞれ静電容量C12及びC13が形成され、第1の共振素子14aと第2の結合調整電極52との間、並びに第2の結合調整電極52と第2の共振素子14bとの間にはそれぞれ静電容量C14及びC15が形成されている。
このように、第1の実施の形態に係るアンテナ装置10Aにおいては、多数の誘電体層を積層して構成し、かつ、その外周面に少なくとも入出力端子22及びアース電極24を形成した誘電体基板12を具備させ、フィルタ部16を、前記誘電体基板12中に第1及び第2の共振素子14a及び14bをそれぞれ平行に配置させて構成し、アンテナ部20を、誘電体基板12の上面に形成するようにしている。
フィルタ部16に使用される第1及び第2の共振素子14a及び14bは、両端が開放されたかたちとなっているため、誘電体基板12の端部にまで第1及び第2の共振素子14a及び14bを延在して形成する必要がなく、製造プロセスによる基板寸法の変動等によっても共振周波数がばらつくということがない。従って、高性能なアンテナ装置10Aを提供することができる。
また、第1及び第2の共振素子14a及び14bのうち、少なくとも第2の共振素子14bの長さ方向中心に対して線対称の位置に配置された2つの入出力用電極28及び30を誘電体基板12内に設け、第1及び第2の入出力用電極28及び30をアンテナ部20の第1及び第2の入出力端子32及び34にそれぞれ接続するようにしたので、アンテナ部20との接続において平衡入力(出力)と非平衡入力(出力)を適宜選択して行うことができ、アンテナ部20として平衡入出力方式のアンテナ(例えばダイポールアンテナ18)を用いることができる。
フィルタ部16は、上述したように、第1及び第2の共振素子14a及び14bの中点に対して対称な位置の2つの電極から出力を得ることで、平衡出力を得ることができ、逆に、第1及び第2の共振素子14a及び14bの中点に対して対称な位置で逆位相の信号を入力すると共振させることができ、これにより平衡入力が可能となる。
従来では、フィルタと平衡入出力方式のアンテナ素子を接続するためには、その間にバランを付加する必要があったが、この実施の形態では、アンテナ部20との接続において平衡入力(出力)と非平衡入力(出力)を適宜選択して行うことができるため、バラン等の余分な回路部品を用いることなしに平衡入出力方式のアンテナ部20との接続を行うことができる。これは、アンテナ装置10Aの小型化及び高性能化に寄与することになり、ひいてはアンテナを有する電子機器(通信機器を含む)の小型化及び高性能化を確実に実現させることができる。
また、この実施の形態においては、フィルタ部16に、誘電体基板12内において隣接する第1及び第2の共振素子14a及び14bに対して第6の誘電体層S6を挟んで重なり、かつ、これら隣接する第1及び第2の共振素子14a及び14bを容量結合させる第1及び第2の結合調整電極50及び52を設けるようにしたので、第1及び第2の結合調整電極50及び52と第1の共振素子14aとの間、並びに第1及び第2の結合調整電極50及び52と第2の共振素子14bとの間にそれぞれ容量が形成される。等価回路的には、これら容量の合成容量が隣接する第1及び第2の共振素子14a及び14bとの間に形成されるインダクタンスLと並列に接続されたかたちになるため、前記容量によって結合度を調整することができ、所望の帯域幅を有するフィルタを得ることができる。
前記容量の調整は、第1及び第2の共振素子14a及び14bと第1及び第2の結合調整電極50及び52との重なり面積及びこれらの間の距離及び/又はこれらの間の誘電体の比誘電率εrを変化させることによって容易に行うことができる。
また、第1及び第2の結合調整電極50及び52による合成容量が第1及び第2の共振素子14a及び14b間のインダクタンスLと並列に接続されたかたちになることから、隣接する第1及び第2の共振素子14a及び14b間には並列共振回路が挿入接続されたことになる。この容量とインダクタンスとからなる並列共振回路のインピーダンスは並列共振点の前後で誘導性から容量性へと変化するため、隣接する第1及び第2の共振素子14a及び14bと第1及び第2の結合調整電極50及び52間にそれぞれ形成される容量の値を調整することにより、第1及び第2の共振素子14a及び14b間の結合を誘導性にも容量性にもすることができる。
いま、第1及び第2の共振素子14a及び14b間の結合を誘導性にした場合を考えると、通過帯域の高周波側に並列共振点が存在するから、高周波側に減衰極をもったフィルタが得られ、また、第1及び第2の共振素子14a及び14b間の結合を容量性にすると、通過帯域の低周波側に並列共振点が存在することになり、低周波側に減衰極をもったフィルタが得られ、いずれの場合もフィルタの減衰特性を改善することができる。
更に、この実施の形態では、第1及び第2の結合調整電極50及び52を第1及び第2の共振素子14a及び14bの長さ方向中心に対して線対称の位置に形成するようにしたので、製造工程における第1及び第2の共振素子14a及び14bと第1及び第2の結合調整電極50及び52との位置ずれの影響を抑制することができる。具体的には第1及び第2の結合調整電極50及び52の効果は、第1及び第2の共振素子14a及び14bとの相対位置の影響を受けるが、第1及び第2の結合調整電極50及び52を第1及び第2の共振素子14a及び14bの長さ方向中心に対して線対称の位置に形成することで、たとえ第1及び第2の共振素子14a及び14bの長手方向に位置ずれが生じたとしても、第1及び第2の結合調整電極50及び52の効果の変化が互いに相殺するようになり、第1及び第2の共振素子14a及び14bと第1及び第2の結合調整電極50及び52との位置ずれの影響を抑制することができる。
また、本実施の形態では、第1及び第2の共振素子14a及び14bの両開放端に誘電体層を挟んで重なるように配置された内層アース電極44a〜44hを設けるようにしているため、第1及び第2の共振素子14a及び14bの開放端側と内層アース電極44a〜44hとの間に形成される静電容量も第1及び第2の共振素子14a及び14bを等価変換したときの並列共振回路の静電容量に付加されることになるため、共振周波数を同一とすれば、並列共振回路のインダクタンスは小さくて済むことになり、その結果、第1及び第2の共振素子14a及び14bの長さ(共振器長)もより小さくすることができ、フィルタ部16全体の長さを短くすることができる。
この場合に、フィルタ部16を小型化するために、内層アース電極44a〜44hと第1及び第2の共振素子14a及び14bとの対向面積を増加させていくと、第1及び第2の共振素子14a及び14b同士がますます強く誘導結合して、フィルタの特性を広帯域化させすぎるという問題が生じる。
しかし、本実施の形態においては、上述した第1及び第2の結合調整電極50及び52を設けるようにしているため、これら第1及び第2の結合調整電極50及び52と第1及び第2の共振素子14a及び14b間に形成される容量によって、第1及び第2の共振素子14a及び14b間の静電容量と、第1及び第2の共振素子14a及び14b間の誘導結合から構成されるトータルのサセプタンスの絶対値が変化することとなる。従って、この容量の値を調整することによって第1の共振素子14aと第2の共振素子14bとの間の結合度を調整することができ、所望の帯域幅を有するフィルタを得ることができる。
また、第1及び第2の共振素子14a及び14bと内層アース電極44a〜44hで、第1及び第2の共振素子14a及び14bの長手方向(軸方向)に積層ずれが生じたとしても、第1及び第2の共振素子14a及び14bの各開放端の容量変化が相殺し合うため、共振周波数のばらつきを小さくすることができる。
次に、第1の実施の形態に係るアンテナ装置10Aについてのいくつかの変形例を図5〜図7を参照しながら説明する。なお、図1と対応するものについては同符号を付してその重複説明を省略する。
まず、第1の変形例に係るアンテナ装置10Aaは、図5に示すように、第1の実施の形態に係るアンテナ装置10A(図1参照)とほぼ同じ構成を有するが、第5の誘電体層S5の一主面に2つの入出力用電極(第1及び第2の入出力用電極26a及び26b)が形成されている点で異なる。
この場合、フィルタ部16は、アンテナ部20側の第1及び第2の入出力用電極28及び30を通じてアンテナ部20と平衡入出力方式で接続され、反対側の第1及び第2の入出力用電極26a及び26bを通じて図示しない他の回路と平衡入出力方式で接続されることになる。
上述した第1の実施の形態に係るアンテナ装置10Aは、フィルタ部16における他の回路との接続端が非平衡入出力方式であり、この第1の変形例に係るアンテナ装置10Aaは、フィルタ部16における他の回路との接続端が平衡入出力方式である。この発明に関する各種実施の形態並びに各種変形例においては、フィルタ部16における他の回路との接続端が平衡入出力方式であっても非平衡入出力方式であっても同様である。従って、これ以降の変形例並びに実施の形態の説明においては、他の回路との接続端を非平衡入出力方式とした例を示し、平衡入出力方式についての説明は割愛する。
次に、第2の変形例に係るアンテナ装置10Abは、図6に示すように、第1の実施の形態に係るアンテナ装置10A(図1参照)とほぼ同じ構成を有するが、第1の誘電体層S1の一主面側に更に第10の誘電体層S10を重ねている点で異なる。
つまり、上述した第1の実施の形態に係るアンテナ装置10Aでは、アンテナ部20が誘電体基板12から露出した形態を有するが、この第2の変形例に係るアンテナ装置10Abでは、アンテナ部20が誘電体基板12内に内装された形態となる。
ここで、アンテナ部20を誘電体基板12の表面に形成した場合と、誘電体基板12の内部に形成した場合での相違点を説明する。
アンテナ部20を誘電体基板12の表面に形成した場合は、誘電体基板12の内部に形成した場合よりも実効誘電率が低くなる。その理由は、アンテナ部20を誘電体基板12の表面に形成すると、放射導体が空気(誘電率=1)にも面しているため、実効誘電率が空気の影響を受けるからである。従って、誘電体基板12の内部にアンテナ部20を形成した方がアンテナ部20を小型化することができる。
但し、一般に誘電率の高い材料で誘電体基板12を構成した場合、アンテナ部20の帯域幅の減少、利得の低下といった問題が発生するため、形状と要求特性のバランスをとりながら、使用する誘電体の誘電率あるいは使用するアンテナの形成位置を決めることとなる。
次に、第3の変形例に係るアンテナ装置10Acは、図7に示すように、第1の実施の形態に係るアンテナ装置10A(図1参照)とほぼ同じ構成を有するが、第1の誘電体層S1の一主面にアンテナ部20を形成せずに、第3の誘電体層S3の一主面にアンテナ部20が形成されている点で異なる。
つまり、上述した第1の実施の形態に係るアンテナ装置10Aでは、アンテナ部20がフィルタ部16よりも上方に位置された形態を有するが、この第3の変形例に係るアンテナ装置10Acでは、アンテナ部20がフィルタ部16とほぼ同じ位置に形成された形態を有する。これは、アンテナ部20が必ずしもフィルタ部16よりも上にある必要はないことに基づくものである。
次に、第2の実施の形態に係るアンテナ装置10Bについて図8及び図9を参照しながら説明する。なお、図1と対応するものについては同符号を付してその重複説明を省略する。
この第2の実施の形態に係るアンテナ装置10Bは、図8に示すように、第1の実施の形態に係るアンテナ装置10A(図1参照)とほぼ同じ構成を有するが、第1の誘電体層S1の一主面に形成されるアンテナ部20がループアンテナ60である点と、第4の誘電体層S4及び第8の誘電体層S8の各一主面に形成された内層アース電極44a〜44hが、図9に示すように、誘電体基板12の正面及び背面に形成されたアース電極24に直接接続されている点と、第2の誘電体層S2の一主面及び第9の誘電体層S9の他主面に形成された内層アース電極40及び42が、誘電体基板12の正面及び背面にまで拡大して形成されている点で異なる。
この第2の実施の形態に係るアンテナ装置10Bにおいても、前記第1の実施の形態に係るアンテナ装置10Aと同様に、フィルタ部16に使用される第1及び第2の共振素子14a及び14bが、両端が開放されたかたちとなっているため、誘電体基板12の端部にまで共振器を延在して形成する必要がなく、製造プロセスによる基板寸法の変動等によっても共振周波数がばらつくということがない。従って、高性能なアンテナ装置10Bを提供することができる。
また、第1及び第2の共振素子14a及び14bのうち、少なくとも第2の共振素子14bの長さ方向中心に対して線対称の位置に配置された第1及び第2の入出力用電極28及び30を誘電体基板12内に設け、第1及び第2の入出力用電極28及び30をアンテナ部20の第1及び第2の入出力端子32及び34にそれぞれ接続するようにしたので、アンテナ部20との接続において平衡入力(出力)と非平衡入力(出力)を適宜選択して行うことができ、バラン等の余分な回路部品を用いることなしに平衡入出力方式のアンテナ部20との接続を行うことができる。
これは、アンテナ装置10Bの小型化及び高性能化に寄与することになり、ひいてはアンテナを有する電子機器(通信機器を含む)の小型化及び高性能化を確実に実現させることができる。
また、この実施の形態においても、第1及び第2の結合調整電極50及び52を設けるようにしたので、所望の帯域幅を有するフィルタを得ることができる。
次に、第2の実施の形態に係るアンテナ装置10Bについてのいくつかの変形例を図10〜図16を参照しながら説明する。なお、図8と対応するものについては同符号を付してその重複説明を省略する。
まず、第1の変形例に係るアンテナ装置10Baは、図10に示すように、第2の実施の形態に係るアンテナ装置10B(図8参照)とほぼ同じ構成を有するが、第1の誘電体層S1の一主面に形成された電極膜による第1の蛇行パターン60aと、第9の誘電体層S9の一主面に形成された電極膜による第2の蛇行パターン60bと、図11に示すように、誘電体基板12の右側面に形成され、かつ、第1の蛇行パターン60aの一端部と第2の蛇行パターン60bの一端部とを電気的に接続する導体パターン60cとでループアンテナ60(アンテナ部20)が構成されている点で異なる。
この場合、第1の蛇行パターン60aの他端部(第1の入出力端子32)と第1の入出力用電極28とがスルーホール36で電気的に接続され、第2の蛇行パターン60bの他端部(第2の入出力端子34)と第2の入出力用電極30とがスルーホール38で電気的に接続される。
この第1の変形例においては、ループアンテナ60(アンテナ部20)に蛇行パターン60a及び60bを含めるようにしたため、実効アンテナ長を長くすることができ、その分、アンテナ部20の小型化を実現させることができる。
次に、第2の変形例に係るアンテナ装置10Bbは、図12に示すように、第2の実施の形態に係るアンテナ装置10B(図8参照)とほぼ同じ構成を有するが、第1の誘電体層S1の一主面側に更に第10の誘電体層S10を重ねている点で異なる。
つまり、上述した第2の実施の形態に係るアンテナ装置10Bでは、アンテナ部20が誘電体基板12から露出した形態を有するが、この第2の変形例に係るアンテナ装置10Bbでは、アンテナ部20が誘電体基板12内に内装された形態となる。
この場合、誘電体基板12の表面にアンテナ部20を形成した場合よりも、アンテナ部20の実効誘電率が高くなるため、アンテナ部20を小型化することができる。
次に、第3の変形例に係るアンテナ装置10Bcは、図13に示すように、第1の変形例に係るアンテナ装置10Ba(図10参照)とほぼ同じ構成を有するが、第1の誘電体層S1の一主面側に更に第10の誘電体層S10が積層され、第9の誘電体層S9の他主面側に更に第11の誘電体層S11が積層されている点と、第1の蛇行パターン60aの一端部と第2の蛇行パターン60bの一端部とが誘電体基板12の内部においてスルーホール62で電気的に接続されている点で異なる。
つまり、上述した第1の変形例に係るアンテナ装置10Baでは、アンテナ部20が誘電体基板12から露出した形態を有するが、この第3の変形例に係るアンテナ装置10Bcでは、アンテナ部20が誘電体基板12内に内装された形態となる。
この場合、誘電体基板12の表面にアンテナ部20を形成した場合よりも、アンテナ部20の実効誘電率が高くなり、しかも、蛇行パターン60a及び60bにより実効アンテナ長が長くなるため、アンテナ部20を更に小型化することができる。
次に、第4の変形例に係るアンテナ装置10Bdは、図14に示すように、第2の実施の形態に係るアンテナ装置10B(図9参照)とほぼ同じ構成を有するが、アンテナ部20を構成するループアンテナ60が誘電体基板12の上面、正面、右側面及び背面にかけて形成されている点で異なる。
この場合も、実効アンテナ長を長くとることができるため、アンテナ部20の小型化を達成させることができる。
上述の第2の実施の形態に係るアンテナ装置20B並びにその第1〜第4の変形例に係るアンテナ装置10Ba〜10Bdにおいては、アンテナ部20として、ループアンテナ60を用いた例を示したが、図15に示すように、第1の蛇行パターン60aと第2の蛇行パターン60bとで構成されたダイポールアンテナ70を用いるようにしてもよい。
また、第1及び第3の変形例に係るアンテナ装置10Ba及び10Bcにおいては、第1の蛇行パターン60aと第2の蛇行パターン60bをそれぞれ別の誘電体層に形成した例を示したが、その他、図16に示すように、同一の誘電体層(例えば第1の誘電体層S1の一主面)に形成するようにしてもよい。
ところで、電子部品を小型化する方法の1つとして、高誘電率材料を使用することが挙げられる。
この場合に、フィルタ部16は、比較的問題なく高誘電率材料を使用することができるが、アンテナ部20においては、材料の誘電率が高くなるに従って、アンテナの帯域幅の減少、低利得化といった問題が生じる。
以下に示す第3の実施の形態に係るアンテナ装置10Cはこのような問題を解決したものである。
第3の実施の形態に係るアンテナ装置10Cについて図17を参照しながら説明する。なお、図1と対応するものについては同符号を付してその重複説明を省略する。
この第3の実施の形態に係るアンテナ装置10Cは、図17に示すように、第1の実施の形態に係るアンテナ装置10A(図1参照)とほぼ同じ構成を有するが、アンテナ部20が形成される第1の誘電体層S1に代えて、第1〜第9の誘電体層S1〜S9よりも低誘電率の第12の誘電体層S12を用い、該第12の誘電体層S12の一主面にアンテナ部20を形成している点と、第12の誘電体層S12と第2の誘電体層S2との間に低誘電率の第13及び第14の誘電体層S13及びS14を積層している点で異なる。もちろん、これら第12〜第14の誘電体層S12〜S14は、第1〜第11の誘電体層S1〜S11と同様に、それぞれ1枚あるいは複数枚の層にて構成される。
このように、第3の実施の形態に係るアンテナ装置10Cにおいては、フィルタ部16に高誘電率の誘電体層S2〜S9を用いることができ、アンテナ部20に低誘電率の誘電体層S12〜S14を用いることができるため、フィルタ部16を小型化できると同時に、アンテナ部20における帯域幅の減少、低利得化を有効に抑えることが可能となる。
次に、第3の実施の形態に係るアンテナ装置10Cの変形例について図18を参照しながら説明する。なお、図17と対応するものについては同符号を付してその重複説明を省略する。
この変形例に係るアンテナ装置10Caは、図18に示すように、第3の実施の形態に係るアンテナ装置10C(図17参照)とほぼ同じ構成を有するが、第13の誘電体層S13の一主面にアンテナ部20が形成されている点で異なる。
つまり、上述した第3の実施の形態に係るアンテナ装置10Cでは、アンテナ部20が誘電体基板12から露出した形態を有するが、この変形例に係るアンテナ装置10Caでは、アンテナ部20が誘電体基板12に内装された形態となる。
この場合、誘電体基板12の表面にアンテナ部20を形成した場合よりも、アンテナ部20の実効誘電率が高くなるため、アンテナ部20を小型化することができる。
次に、第4の実施の形態に係るアンテナ装置10Dについて図19を参照しながら説明する。なお、図8と対応するものについては同符号を付してその重複説明を省略する。
この第4の実施の形態に係るアンテナ装置10Dは、図19に示すように、第2の実施の形態に係るアンテナ装置10B(図8参照)とほぼ同じ構成を有するが、第6の誘電体層S6の一主面に形成された第1の共振素子14aに直接入出力用電極26が接続され、第2の共振素子14bに直接第1及び第2の入出力用電極28及び30が形成されている点と、第5の誘電体層S5の一主面に第7の誘電体層S7に形成された第1及び第2の結合調整電極50及び52と同じ構成を有する第3及び第4の結合調整電極80及び82が形成されている点で異なる。
つまり、この第4の実施の形態に係るアンテナ装置10Dは、誘電体基板12の左側面に形成された入出力端子22と誘電体基板12内の第1の共振素子14aとが入出力用電極26を介して直接接続され、アンテナ部20の第1及び第2の入出力端子32及び34と第2の共振素子14bとがそれぞれ第1及び第2の入出力用電極28及び30を介して直接接続されている。
この第4の実施の形態に係るアンテナ装置10Dにおいても、前記第1の実施の形態に係るアンテナ装置10Aと同様に、フィルタ部16に使用される第1及び第2の共振素子14a及び14bが、両端が開放されたかたちとなっているため、誘電体基板12の端部にまで第1及び第2の共振素子14a及び14bを延在して形成する必要がなく、製造プロセスによる基板寸法の変動等によっても共振周波数がばらつくということがない。従って、高性能なアンテナ装置10Dを提供することができる。
また、第1及び第2の共振素子14a及び14bのうち、少なくとも第2の共振素子14bの長さ方向中心に対して線対称の位置に配置された第1及び第2の入出力用電極28及び30を誘電体基板12内に設け、第1及び第2の入出力用電極28及び30をアンテナ部20の第1及び第2の入出力端子32及び34にそれぞれ接続するようにしたので、アンテナ部20との接続において平衡入力(出力)と非平衡入力(出力)を適宜選択して行うことができ、バラン等の余分な回路部品を用いることなしに平衡入出力方式のアンテナ部20との接続を行うことができる。
これは、アンテナ装置10Dの小型化及び高性能化に寄与することになり、ひいてはアンテナを有する電子機器(通信機器を含む)の小型化及び高性能化を確実に実現させることができる。
また、この実施の形態においても、第1〜第4の結合調整電極50、52、80及び82を設けるようにしたので、所望の帯域幅を有するフィルタを得ることができる。
もちろん、図20に示す変形例に係るアンテナ装置10Daのように、第3及び第4の結合調整電極80及び82が形成された第5の誘電体層S5を除去するようにしてもよい。
ところで、ダイポールアンテナやループアンテナ等の平衡入力アンテナは、例えば携帯電話等で広く使われているモノポールや逆Fアンテナが1/4波長相当の大きさで十分であるのに対して、1/2波長から1波長の長さが必要となり、アンテナ形状が大きくなる。その結果、アンテナ装置10Aの小型化を十分に果たせなくなるおそれがある。
そこで、以下に示す第5〜第7の実施の形態に係るアンテナ装置10E〜10Gは、上述のような不都合を解決したものである。
まず、第5の実施の形態に係るアンテナ装置10Eについて図21及び図22を参照しながら説明する。
この第5の実施の形態に係るアンテナ装置10Eは、図21に示すように、上述した第1の実施の形態に係るアンテナ装置10Aとほぼ同じ構成を有するが、内層アース電極40の両側からアンテナ18の各開放端に向かって張り出す第2の内層アース電極90が一体に形成され、これら第2の内層アース電極90の各端部とアンテナ18の各開放端とが第1の誘電体層S1を間に挟んで重なるようになっている点で異なる。
そのため、図22に示すように、アンテナ部20を構成する各アンテナ18の開放端と第2の内層アース電極90との間に、それぞれ静電容量C20が形成されたかたちとなる。
そして、アンテナ部20を構成するアンテナ18は、誘電体基板12に形成されたストリップラインにて構成するようにしている。このストリップラインは、フィルタ部16に形成される共振器14a、14bと等価とみることができ、並列共振回路として等価変換することが可能である。
従って、アンテナ18の各開放端と第2の内層アース電極90との間に形成される静電容量C20がアンテナ18を等価変換したときの並列共振回路の静電容量に付加されることになるため、共振周波数を同一とすれば、該並列共振回路のインダクタンスは小さくて済むことになり、その結果、アンテナ18の長さ(アンテナ長)もより小さくすることができ、アンテナ部20全体の長さを短くすることができる。
このように、この第5の実施の形態においては、部品点数の削減化、アンテナ特性が電子機器の筐体の影響を受け難い等の利点に加えて、アンテナ装置10Eの小型化を有効に図ることができるという利点を兼ね備えることになる。
次に、第6の実施の形態に係るアンテナ装置10Fについて図23及び図24を参照しながら説明する。
この第6の実施の形態に係るアンテナ装置10Fは、図23に示すように、上述した第2の実施の形態に係るアンテナ装置10B(図8参照)とほぼ同様の構成を有するが、以下の点で異なる。
まず、アンテナ部20を構成するアンテナ60が、各開放端が互いに近接する位置となるように第1の誘電体層S1上に形成され、各開放端の間に僅かな隙間が形成されている。
第2の誘電体層S2上に、内層アース電極40のほか、前記アンテナ60の各開放端に対応する位置に第2の内層アース電極92が形成され、各アンテナ60の開放端と第2の内層アース電極92との間に静電容量(図示せず)を形成するようにしている。
この第2の内層アース電極92は、例えば図24に示すように、誘電体基板12のフィルタ部16側の表面に形成されたアース電極24とは別の位置(図示の例では右側面)に形成された第2のアース電極94と接続されている。
この第6の実施の形態においても、アンテナ60の各開放端に対応する位置に第2の内層アース電極92を形成することによって、アンテナ60の各開放端と第2の内層アース電極92との間に静電容量を形成するようにしたので、部品点数の削減化、アンテナ特性が電子機器の筐体の影響を受け難い等の利点に加えて、アンテナ装置10Fの小型化を有効に図ることができるという利点を兼ね備えることになる。
次に、第7の実施の形態に係るアンテナ装置10Gについて図25及び図26を参照しながら説明する。
この第7の実施の形態に係るアンテナ装置10Gは、図25に示すように、第2の実施の形態に係るアンテナ装置10Bの第1の変形例10Ba(図10参照)とほぼ同様の構成を有するが、以下の点で異なる。
まず、アンテナ部20は、第1の誘電体層S1の一主面に形成された電極膜による第1の蛇行パターン60aと、第9の誘電体層S9の一主面に形成された電極膜による第2の蛇行パターン60bとで構成されている。
そして、第2の誘電体層S2上のうち、前記第1の蛇行パターン60aの開放端と第1の誘電体層S1を間に挟んで重なる位置に第2の内層アース電極96が形成され、第8の誘電体層S8上のうち、前記第2の蛇行パターン60bの開放端と第9の誘電体層S9を間に挟んで重なる位置に第3の内層アース電極98が形成されている。これら第2及び第3の内層アース電極96及び98は、例えば図26に示すように、誘電体基板12のフィルタ部16側の表面に形成されたアース電極24とは別の位置(図示の例では右側面)に形成された第2のアース電極94と接続されている。
更に、この実施の形態においては、第1の蛇行パターン60aの他端部(第1の入出力端子32)と第1の入出力用電極28とがスルーホール36で電気的に接続され、第2の蛇行パターン60bの他端部(第2の入出力端子34)と第2の入出力用電極30とがスルーホール38で電気的に接続される。
この第7の実施の形態においても、アンテナ部20を構成する第1の蛇行パターン60aの開放端と第2の内層アース電極96との間に静電容量が形成され、第2の蛇行パターン60bの開放端と第3の内層アース電極98との間に静電容量が形成されることになるため、部品点数の削減化、アンテナ特性が電子機器の筐体の影響を受け難い等の利点に加えて、アンテナ装置10Gの小型化を有効に図ることができるという利点を兼ね備えることになる。
なお、この発明に係るアンテナ装置は、上述の実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。