JP4581772B2 - 金属板の増厚加工方法及び金属板の増厚加工機 - Google Patents

金属板の増厚加工方法及び金属板の増厚加工機 Download PDF

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Description

本発明は、金属板の増厚加工方法及び金属板の増厚加工機に関するものであり、詳しくは、金属板の板厚を塑性加工によって増加させる金属板の増厚加工方法、及び、この方法に用いられる金属板の増厚加工機に関するものである。
炭素鋼、ステンレス鋼等の適宜の金属材料によって形成された金属板の板厚を塑性加工によって増加させる加工方法としては、種々の加工方法が案出されているが、中には、円板状の金属板を回転させると共に、この金属板の外縁部に適宜形状の据込型を金属板の軸心方向に押圧することで所謂「据込み加工」を行って、外縁部の厚さを金属板の全周に渡って増加させるようにした加工方法がある(例えば、特許文献1参照)。このような加工方法によれば、薄い板厚の金属板において、外縁部の板厚を局部的に厚くすることができ、この板厚が厚くなった部分に、ギアの外歯等、機械的に機能させる適宜形態の機能部を良好に形成することができる。
特許第2826913号公報
しかしながら、従来の加工方法では、金属板の外縁端から内側の僅かな部分において板厚を増加させることしかできないことから、例えば、自動車のクラッチに用いられるドライブプレート等、ギアの外歯等の機能部が軸方向に短い限られた部品の製造方法として適用することしかできなかった。換言すれば、従来の加工方法では、機能部が軸方向に短い限られた部品しか製造することができなかった。
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、金属板の外縁部において、内側の広い範囲に渡って板厚を増加させることができる金属板の増厚加工方法、及び、この増厚加工方法の実施に使用される金属板の増厚加工機、の提供を課題とする。
上記課題を解決するために本発明の採った主要な手段は、まず、金属板の増厚加工方法としては、
「金属板の板厚を塑性加工によって増加させる金属板の増厚加工方法であって、
前記金属板の外縁部を内方に押圧して据え込み加工することで、前記外縁部の厚さを増加させる据込工程と、
前記据込工程にて厚さが増加した外縁部の材料を金属板の内方に向かって伸展させる伸展工程と
を備えることを特徴とする金属板の増厚加工方法」
である。
この増厚加工方法では、据込工程によって厚さが増加した金属板の外縁部の材料が、伸展工程によって、金属板の内方に伸展されるため、金属板の外縁部において、内側の広い範囲に渡って板厚を増加させることができる。
上記増厚加工方法において、
「前記伸展工程は、
前記据込工程にて厚さが増加した外縁部の材料を金属板の内方に向かって伸展させる一次伸展工程と、
該一次伸展工程によって材料が伸展された部分を金属板の内方に向かってさらに伸展させる二次伸展工程と
を有する工程として構成されている
ことを特徴とする金属板の増厚加工方法」
としてもよい。
据込工程によって厚さが増加した金属板の外縁部の材料を内方に伸展させて所望の板厚を得ようとする場合、一度の塑性加工によって多量の材料を伸展させようとすると、材料に亀裂や破断を生じ易い。また、据込工程によって増加した外縁部の厚さは、常時、均一となっているとは限らず、外縁部の厚さのバラツキによって、伸展工程後の板厚にバラツキを生じる可能性もある。
これに対して、上記の増厚加工方法では、伸展工程の全体が、据込工程後の一次伸展工程と、この一次伸展工程後の二次伸展工程とを有する工程として構成されているため、厚さが増加した外縁部の材料を、一次伸展工程及び二次伸展工程にて、金属板の内方に徐々に伸展させることができる。よって、金属板の外縁部において、内側の広い範囲に渡って板厚を良好に増加させることができる。
なお、上記の増厚加工方法では、伸展工程の全体を、少なくとも一次伸展工程及び二次伸展工程を有する工程として構成すればよく、二次伸展工程以降に、さらに三次伸展工程以上の別の伸展工程を有するものとしてもよい。
また、別の金属板の増厚加工方法としては、
「内側部分に比して外縁部が厚く形成された金属板を支持台に支持して回転させ、回転する前記金属板の前記外縁部を、前記金属板の前記外縁部の厚さよりも小さな寸法の間隙が設けられた伸展型の前記間隙に外側から内側に向かって押入して、前記外縁部の全周に渡って材料を金属板の内方に伸展させることを特徴とする金属板の増厚加工方法」
である。
上記増厚加工方法では、金属板を回転させつつ伸展型によって外縁部の材料を内方に進展させるため、金属板の外縁部の材料を、全周に渡って的確に進展させることができる。また、伸展型の間隙に金属板の外縁部を押入して、外縁部の材料を内方に進展させるため、材料を進展させた後の板厚の寸法を的確に管理することができる。
次に、金属板の増厚加工機としては、第一に、
「内側部分に比して外縁部が厚く形成された金属板を支持して回転させる支持台と、
前記金属板の前記外縁部の厚さよりも小さな寸法の間隙が設けられた伸展型を有し、前記支持台に支持されて回転する前記金属板の前記外縁部を外側から内側に向かって前記間隙に押入して、前記外縁部の全周に渡って材料を金属板の内方に伸展させる伸展装置と
を備えることを特徴とする金属板の増厚加工機」
である。
この増厚加工機は、上述した増厚加工方法の実施に用いられる増厚加工機であり、金属板の外縁部の材料を内方に伸展させる伸展装置を備えることで、金属板の外縁部において、内側の広い範囲に渡って、板厚を良好に増加させることができる。また、伸展装置は、間隙に金属板の外縁部を外側から内側に向かって押入することで、外縁部の材料を金属板の内方に伸展させる伸展型を有するものであるため、材料が伸展されて板厚が増加した部分は、その板厚が一定となりやすく、高精度な寸法で板厚を増加させることができる。さらに、金属板を支持台によって支持すると共に回転させて、金属板の全周に渡って、順次、伸展型によって塑性加工を行うため、簡易な構造によって、金属板の外縁部の全周に渡って材料を伸展させることができる。
なお、この増厚加工機は、別途の機械によって上述の据込工程の塑性加工が施された金属板を対象に、伸展工程の塑性加工を施すことができるが、後述するように、増厚加工機自体を、据込工程の塑性加工を施す装置を備えるものとして、単一の機械によって、金属板に据込工程及び伸展工程の一連の塑性加工を施すことができるようにしてもよい。また、この増厚加工機は、上述した据込工程とは異なる手法(例えば、他の塑性加工、切削加工、或いは、鋳造成形等)によって、内側部分に比して外縁部が厚く形成された金属板を対象に、伸展工程の塑性加工を施すこともできるものである。
また、金属板の増厚加工機としては、第二に、
「金属板を支持して回転させる支持台と、
該支持台に支持されて回転する前記金属板の外縁部に据込型を内方に向かって押圧して据え込み加工することで前記外縁部の全周に渡って厚さを増加させる据込装置と、
増加した前記外縁部の厚さよりも小さな寸法の間隙が設けられた伸展型を有し、前記支持台に支持されて回転する金属板の縁部を外側から内側に向かって前記間隙に押入して、前記外縁部の全周に渡って材料を金属板の内方に伸展させる伸展装置と
を備えることを特徴とする金属板の増厚加工機」
である。
この増厚加工機は、上述した増厚加工機と同様な作用効果を奏するものであるに加えて、据込型を有し、この据込型によって金属板の外縁部の厚さを増加させる塑性加工を行う据込装置を備えるため、単一の機械によって、金属板に据込工程及び伸展工程の一連の塑性加工を施すことができる。
上記の各増厚加工機において、
「前記伸展装置は、
前記金属板の前記外縁部の厚さよりも小さな寸法の間隙が設けられた一次伸展型を有し、前記支持台に支持されて回転する金属板の外縁部を外側から内側に向かって前記一次伸展型の前記間隙に押入して、前記外縁部の全周に渡って材料を金属板の内方に伸展させる一次伸展装置と、
前記一次伸展型の間隙よりも小さな寸法の間隙が設けられた二次伸展型を有し、前記一次伸展装置によって材料が伸展された部分を外側から内側に向かって前記二次伸展型の前記間隙に押入して、前記外縁部の全周に渡って材料を、前記一次伸展装置によって伸展された部分よりも金属板の内方にさらに伸展させる二次伸展装置と
を有するものとして構成されている
ことを特徴とする金属板の増厚加工機」
としてもよい。
この増厚加工機では、上述した一次伸展工程及び二次伸展工程の夫々の塑性加工を行う一次伸展装置及び二次伸展装置を備えるため、外縁部の材料を、一次伸展装置及び二次伸展装置にて、金属板の内方に徐々に伸展させることができ、金属板の外縁部において、内側の広い範囲に渡って板厚を良好に増加させることができる。
また、上記の各増厚加工機において、
「前記支持台に支持されて回転する前記金属板の外縁部の表裏を挟持して、該挟持した部分において金属板の厚さ方向の移動を拘束する拘束装置を備える
ことを特徴とする金属板の増厚加工機」
としてもよい。
回転する金属板に対して、据込型や伸展型によって、多大な塑性変形応力を加えると、金属板の外縁部において、上記塑性変形応力が加えられていない他の部分にも、この塑性変形応力が影響し、厚さ方向に移動して波打つ、所謂「ブレ」を生じて、据込工程や伸展工程での塑性加工に支障を生じる場合がある。特に、金属板の径寸法に対して板厚寸法が小さい場合には、上記「ブレ」が生じ易い。
これに対して、この増厚加工機では、拘束装置によって金属板の外縁部を挟持して、外縁部の厚さ方向の移動を拘束するため、金属板の外縁部に「ブレ」が生じ難くなる。よって、据込装置や伸展装置による据込工程や伸展工程の塑性加工を良好に行うことができる。
なお、径寸法(金属板が円板でない場合には、板の最大幅寸法)に対して板厚寸法(厚さが最も薄い部分の板厚寸法)が、1/10以下、具体的には1/20以下、より具体的に1/50以下といったように、極めて小さな金属板では、「ブレ」が、顕著に生じ易い。よって、このような金属板を加工対象とする増厚加工機として、上記構成の増厚加工機を採用することは好適である。
上述の通り、本発明によれば、金属板の外縁部において、内側の広い範囲に渡って板厚を増加させることができる金属板の増厚加工方法、及び、この増厚加工方法の実施に使用される金属板の増厚加工機、を提供することができる。
次に、本発明に係る増厚加工方法及び増厚加工機の実施形態の一例を、図面に従って詳細に説明する。なお、以下では、炭素鋼やステンレス鋼等の鋼材によって、均一な板厚の円板状に形成された金属板を加工対象とした例を示すが、これに限らず、アルミニウム、銅、或いは、これらの合金等、塑性加工を良好に行うことができる金属によって形成された金属板や、円板状ではなく、楕円形状や矩形状等の適宜形状に形成された金属板を加工対象とすることもできる。
図1及び図2に、増厚加工機100の一例を示す。この増厚加工機100は、基台部分を構成するベッド10と、ベッド10に回動自在に組付けられ、モータ等の適宜機器を用いた駆動装置(図示し省略)によって回転駆動される支持台20とを備えるものであり、加工対象の金属板Wは、上記支持台20に支持されて回転駆動される。また、ベッド10の上方には、先端に押え金32を有するクランプ軸30が支柱11を介して昇降自在に支持されている。このクランプ軸30は、油圧シリンダ等適宜機器を用いた駆動装置31によって昇降駆動され、下降した状態で、上記支持台20上に載置された金属板Wを、支持台20と押え金32とで挟持することにより、金属板Wを支持台20に堅固に固定するものである。
なお、本例では、金属板Wの中央部分に貫通孔が設けられており、この貫通孔に支持台20に突設されたピン21を挿通することで、金属板Wが支持台20に対して位置決め固定される。また、クランプ軸30の押え金32には、支持台20のピン21を収容する逃がし33が設けられている。
ベッド10の上面には、据込装置40、一次伸展装置50、二次伸展装置60及び拘束装置70が、夫々、支持台20に対して放射状に組付けられている。ここで、これら据込装置40、一次伸展装置50、二次伸展装置60及び拘束装置70は、送りねじ機構を用いた駆動装置や油圧シリンダを用いた駆動装置等、適宜機器を用いた駆動装置(図示し省略)によって、支持台20に対して進退駆動される。
なお、据込装置40、一次伸展装置50、二次伸展装置60及び拘束装置70は、増厚加工機100からワークである金属板Wを着脱するに際して、支持台20に支持された金属板Wから大きく後退する一方で、詳細は後述する加工に際しては、前進して、支持台20に支持された金属板Wに、詳細は後述する据込型41、一次伸展型51や二次伸展型61或いは拘束部材71,72を押し付けるものである。よって、例えば、金属板Wの加工開始時や加工終了時において、金属板Wから大きく離間した位置から接近した位置までの間での進退駆動については、早送りが可能な送りネジ機構を用いた駆動装置によって作動させ、据込型51等を金属板Wに押し付けて実質的な加工を行う際の進退駆動については、一定の作動力が得られる油圧シリンダを用いた駆動装置によって作動させる等、複数の駆動装置によって進退駆動させることとするのがよい。
次に、図3に基づいて、据込装置40、一次伸展装置50、二次伸展装置60及び拘束装置70を、金属板Wの増厚加工方法と共に、詳細に説明する。なお、実際の加工においては、最終的な板厚を当初の板厚の2倍程度に増加させるのであるが、説明の便宜上、図示では、増加させる板厚が誇張して表現されている。
まず、据込装置40は、金属板Wに据込工程の塑性加工を施すものであり、図3(a)に示すように、金属板Wの外縁部を所望の形状に塑性変形させるために適宜形状に形成された据込型41を備えている。そして、この据込型41は、支持台20に支持された金属板Wの外端面に対向するように配置されている。ここで、据込型41は、より具体的には、支持台20の回転軸心と同一方向の回動軸心を有して回転自在に構成されたローラによって形成されている。また、据込型41は、金属板Wの表裏の一方の面(本例では表側の面)において厚さを増加させ、他方の面に塑性変形を生じさせないように構成されている。このように構成された据込装置40の据込型41を、回転する金属板Wの外縁部に当接させて、金属板Wの内方に向かって押圧すると、金属板Wの外縁部に所謂「据え込み加工」が施され、金属板Wの一方の面において、外縁部の材料が膨出し、外縁部全周に渡って厚さが増加する。
次に、一次伸展装置50は、金属板Wに伸展工程、特に、据込工程後の最初の伸展工程である一次伸展工程の塑性加工を施すものであり、図3(b)に示すように、金属板Wの外縁部を所望の形状に塑性変形させるために適宜形状に形成された一次伸展型51を備えている。そして、この一次伸展型51は、支持台20に支持された金属板Wの外端面に対向するように配置されている。ここで、一次伸展型51は、より具体的には、支持台20の回転軸心と同一方向の回動軸心を有して回動自在に構成されたローラによって形成されている。また、一次伸展型51は、据込工程にて厚さが増加した金属板Wの外縁部の厚さ寸法よりも小さな寸法の間隙52を有しており、一次伸展工程では、この一次伸展型51の間隙52に、金属板Wの外縁部を外側から内側に向かって押入することで、外縁部の材料を金属板Wの内方に伸展させる。なお、この一次伸展型51においても、金属板Wの一方の面において材料を伸展させ、他方の面においては塑性変形を生じさせないように構成されている。
次に、二次伸展装置60は、金属板Wに伸展工程、特に、一次伸展工後の伸展工程である二次伸展工程の塑性加工を施すものであり、図3(c)に示すように、金属板Wの外縁部を所望の形状に塑性変形させるために適宜形状に形成された二次伸展型61を備えている。そして、この二次伸展型61は、支持台20に支持された金属板Wの外端面に対向するように配置されている。ここで、二次伸展型61は、ローラを用いて一次伸展型51と同様に構成されているのであるが、その間隙62の寸法は、一次伸展型51の間隙52の寸法よりも小さく設定されている。この二次伸展型61の間隙62に、金属板Wの外縁部を外側から内側に向かって押入することで、一次伸展型51によって金属板Wの内方に伸展された材料を、さらに内方に伸展させ、金属板Wの外縁部において、当初の金属板Wの板厚よりも、内側の広い範囲に渡って(本例では、押し金32の近傍まで)板厚を増加させることができる。
なお、この増厚加工機100によって、上述した据込装置40による据込工程、一次伸展装置50による一次伸展工程及び二次伸展装置60による二次伸展工程の各工程を行う場合、以下の手順によればよい。
(1)まず、据込装置40、一次伸展装置50及び二次伸展装置60を支持台20に対して後退させた状態にて、未加工の金属板Wを支持台20に装着する。
(2)次に、据込装置40を前進させて、据込装置40による据込工程の加工を行い、この加工が完了した後、据込装置40を後退させる。
(3)次に、一次伸展装置50を前進させて、一次伸展装置50による一次伸展工程の加工を行い、この加工が完了した後、一次伸展装置50を後退させる。
(4)次に、二次伸展装置60を前進させて、二次伸展装置60による二次伸展工程の加工を行い、この加工が完了した後、二次伸展装置60を後退させる。
(5)最後に、全ての加工が完了した金属板Wを増厚加工機100から取外す。
また、上述の手順に限らず、据込装置40、一次伸展装置50及び二次伸展装置60のうち、適宜の装置を連動させて、据込工程の加工中に、一次伸展工程の加工や、加えて二次伸展工程の加工を行ってもよく、或いは、一次伸展工程の加工中に二次伸展工程の加工を行ってもよい。
ところで、薄い平板状の金属板Wを据込型41、一次伸展型51や二次伸展型52によって塑性変形させると、金属板Wの塑性変形の加工がなされていない部分において、板厚方向に波打つ「ブレ」が生じ、塑性変形の加工に支障を来たす虞がある。そこで、本例の増厚加工機100では、拘束装置70が設けられており、この拘束装置70によって、上記「ブレ」が生じること抑制している。次に、拘束装置70を、図4に基づいて、詳細に説明する。
拘束装置70は、金属板Wの板厚方向に対向する一対の拘束部材71,72を備えており、各拘束部材71,72を金属板Wの表裏に当接させて押圧し、各拘束部材71,72の間にて金属板Wを挟持することで、金属板Wの板厚方向の移動を拘束し、これにより、上記「ブレ」が生じることを抑制するものである。ここで、各拘束部材71,72は、支持台20の回転軸心に直交する回動軸心を有して回動自在に構成されたローラによって形成されている。また、ローラの外周面は湾曲面とされており、金属板Wに円滑に当接するものとなっている。
このような拘束装置70は、増厚加工機100に対して金属板Wを着脱する際には金属板Wから後退させるのであるが、据込装置40による据込工程、一次伸展装置50による一次伸展工程及び二次伸展装置60による二次伸展工程の各工程の加工中には、常時、前進しており、金属板Wの「ブレ」を抑制するように作動する。ここで、一対の拘束部材71,72の少なくとも一方の拘束部材(本例では図示上側の拘束部材72)は、金属板Wの変動する板厚に応じて板厚方向に移動自在に構成されていると共に、油圧シリンダやバネ等、押圧力を付与する押圧装置73によって金属板W方向に付勢されており、一定の押圧力にて金属板Wを押圧するものとして構成されている。なお、本例では、金属板Wの表裏のうち、一方の面について塑性変形の加工が施され、他方の面では塑性変形の加工が施されない平坦面となっている。このため、各拘束部材71,72のうち、塑性変形の加工が施される側の拘束部材72が、上記の如く構成されおり、塑性変形の加工が施されない側の拘束部材71については、板厚方向に移動不能に構成されている。よって、金属板Wは、移動不能な拘束部材71によって、板厚方向において的確に位置決めされる。
以上のような増厚加工機100を用いて増厚加工が施された金属板Wは、外縁部の内側の広い範囲に渡って板厚が増加しているため、ドライブプレートに限らず、多種多様な部品を形成するための素材として用いることができる。
次に、増厚加工が施された金属板Wを素材として用いて適宜の部品とすべく、金属板Wをさらに塑性変形させて、適宜形状の部材を形成することについて、図5に基づいて、詳細に説明する。なお、以下で説明する手法は、金属板Wを塑性変形させて、直径に対して25%以上、具体的には50%以上、より具体的には100%以上の長さの筒部を有するカップ状の部材を形成する際して、金属板Wとして、内側部分に比して外縁部が厚く形成された金属板Wを用いる点において、新規な着想に基づくものである。よって、以下に説明するカップ状の部材の形成方法は、例えば、他の塑性加工、切削加工、或いは、鋳造成形等、上述した増厚加工方法以外の手法にて、内側部分に比して外縁部が厚く形成されてなる金属板Wを素材として用いることもできる。
まず、図5(a)に示すように、金属板Wの中央部分を堅固に固定した状態にて、成形ローラ等を用いた成形型80によって、金属板Wの周縁部分を金属板Wの軸方向(図5(a)の矢印A)に押圧して、金属板Wの周縁部分を全周に渡って湾曲変形させる。すると、図5(b)に示すように、金属板Wは、カップ状の部材となる。このように形成されたカップ状の部材では、底部の肉厚は薄いのであるが、筒部については、十分な肉厚を有している。よって、図5(b)に示すように、カップ状の部材の筒部を、成形ローラ等を用いた成形型90によって、例えば径方向(図5(b)の矢印B)等に押圧することで、成形ローラに倣った外面のプロファイル加工や、支持台20を、その外面に成形型を有する所謂「マンドレル」として、この支持台20の外面に倣った内面のプロファイル加工を行い、ギアやスプロケットの外歯や内歯、或いは、キー溝やネジ等、機械的に機能する適宜形態の機能部を、良好に形成することができる。なお、筒部は、肉厚が十分に厚いため、成形型90による塑性変形の加工に限らず、切削等、他の手法によって、その外面や内面にプロファイル加工を施すこともできる。
特に、本例では、一方の面において、中央部分よりも周縁部分の板厚が厚く、他方の面においては、中央部分から外縁端まで平坦面となった金属板Wを、平坦面側が内面となるように、カップ状に塑性変形させるため、内面における底部と筒部との境界部分である隅部にシワや亀裂が生じ難く、隅部が円滑な湾曲面となる。よって、カップ状の部材とした状態にて、隅部の十分な強度を確保することができる。また、金属材料のファイバーが切断されないため、この点からも、隅部の十分な強度を確保することができる。ここで、筒部に機能部を形成するために筒部の肉厚を十分に厚いものとすべく、板厚の厚い金属板を用いてカップ状の部材とした場合には、底部の肉厚が無用に厚くなるため、切削によって、底部の内側の肉や外側の肉を除去しなければならない。しかしながら、この場合には、カップ状の部材において、内側の隅部や外側の角部の金属材料のファイバーが切断されてしまい、隅部や角部の強度が低下してしまう。よって、底部の肉厚が薄く、筒部の肉厚が厚いカップ状の部材を形成するに際して、上述したように、内側部分に比して外縁部が厚く形成された金属板Wを塑性変形させる、といった手法を採用することは、非常に有効である。
ところで、金属板Wをカップ状の部材とする塑性変形の加工や、カップ状の部材の外面や内面に塑性変形によるプロファイル加工を行う機械としては、上述の増厚加工機100とは別途の機械を用いてもよいが、上述の増厚加工機100を、さらに、金属板Wをカップ状に塑性変形させる成形型80を有した成形装置や、カップ状の部材の筒部にプロファイル加工を行う成形型90を有したプロファイル加工装置を具備するものとして、均一な板厚の金属板Wから、カップ状の部材を形成するまでの一連の加工を行う機械としてもよい。この場合には、図5に示すように、支持台20と押え金32とで金属板Wを支持してままの状態で、増厚加工以降の加工を行うこととすればよい。
本発明に係る増厚加工機の一例の概略を示す平面図である。 本発明に係る増厚加工機の一例の概略を示す正面図である。 据込装置、一次伸展装置及び二次伸展装置の概略、及び、増厚加工方法における一連の工程を示す説明図である。 拘束装置の概略を示す説明図である。 金属板を素材としてカップ状の部材を形成する手法を示す説明図である。
符号の説明
W 金属板
10 ベッド
11 支柱
20 支持台
21 ピン
30 クランプ軸
31 駆動装置
32 押え金
33 逃がし
40 据込装置
41 据込型
50 一次伸展装置(伸展装置)
51 一次伸展型(伸展型)
52 間隙
60 二次伸展装置(伸展装置)
61 二次伸展型(伸展型)
62 間隙
70 拘束装置
71 拘束部材
72 拘束部材
73 押圧装置
100 増厚加工機

Claims (7)

  1. 金属板の板厚を塑性加工によって増加させる金属板の増厚加工方法であって、
    前記金属板の外縁部を内方に押圧して据え込み加工することで、前記外縁部の厚さを増加させる据込工程と、
    前記据込工程にて厚さが増加した外縁部の厚さよりも小さな寸法の間隙が設けられた伸展型の前記間隙に前記金属板の前記外縁部を外側から内側に向かって押入して、外縁部の材料を金属板の内方に向かって伸展させる伸展工程と
    を備えることを特徴とする金属板の増厚加工方法。
  2. 前記伸展工程は、
    前記据込工程にて厚さが増加した外縁部の材料を、間隙が大きな一次伸展型によって金属板の内方に向かって伸展させる一次伸展工程と、
    該一次伸展工程によって材料が伸展された部分を、間隙が小さな二次伸展型によって金属板の内方に向かってさらに伸展させる二次伸展工程と
    を有する工程として構成されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の金属板の増厚加工方法。
  3. 内側部分に比して外縁部が厚く形成された金属板を支持台に支持して回転させ、回転する前記金属板の前記外縁部を、前記金属板の前記外縁部の厚さよりも小さな寸法の間隙が設けられた伸展型の前記間隙に外側から内側に向かって押入して、前記外縁部の全周に渡って材料を金属板の内方に伸展させることを特徴とする金属板の増厚加工方法。
  4. 内側部分に比して外縁部が厚く形成された金属板を支持して回転させる支持台と、
    前記金属板の前記外縁部の厚さよりも小さな寸法の間隙が設けられた伸展型を有し、前記支持台に支持されて回転する前記金属板の前記外縁部を外側から内側に向かって前記間隙に押入して、前記外縁部の全周に渡って材料を金属板の内方に伸展させる伸展装置と
    を備えることを特徴とする金属板の増厚加工機。
  5. 金属板を支持して回転させる支持台と、
    該支持台に支持されて回転する前記金属板の外縁部に据込型を内方に向かって押圧して据え込み加工することで前記外縁部の全周に渡って厚さを増加させる据込装置と、
    増加した前記外縁部の厚さよりも小さな寸法の間隙が設けられた伸展型を有し、前記支持台に支持されて回転する金属板の縁部を外側から内側に向かって前記間隙に押入して、前記外縁部の全周に渡って材料を金属板の内方に伸展させる伸展装置と
    を備えることを特徴とする金属板の増厚加工機。
  6. 前記伸展装置は、
    前記金属板の前記外縁部の厚さよりも小さな寸法の間隙が設けられた一次伸展型を有し、前記支持台に支持されて回転する金属板の外縁部を外側から内側に向かって前記一次伸展型の前記間隙に押入して、前記外縁部の全周に渡って材料を金属板の内方に伸展させる一次伸展装置と、
    前記一次伸展型の間隙よりも小さな寸法の間隙が設けられた二次伸展型を有し、前記一次伸展装置によって材料が伸展された部分を外側から内側に向かって前記二次伸展型の前記間隙に押入して、前記外縁部の全周に渡って材料を、前記一次伸展装置によって伸展された部分よりも金属板の内方にさらに伸展させる二次伸展装置と
    を有するものとして構成されている
    ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の金属板の増厚加工機。
  7. 前記支持台に支持されて回転する前記金属板の外縁部の表裏を挟持して、該挟持した部分において金属板の厚さ方向の移動を拘束する拘束装置を備える
    ことを特徴とする請求項4から請求項6までの何れか一つに記載の金属板の増厚加工機。
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