JP3714588B2 - カムスプロケットの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動二輪車用のカムスプロケットを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6は、自動二輪車用のカムスプロケットを示し、(a)は平面図、(b)は(a)のX−X断面図である。
カムスプロケットCの外周には、カムチェーンが掛け回される歯C1が形成されている。また、カムスプロケットCの中心部には、カムシャフトが貫通する基準穴C2が形成され、その周りに軽量穴C3が形成されている。また、カムスプロケットCの一方の端面には、逃げ溝C4が形成されている。そのため、歯C1が形成された外周は、内側に比較して肉厚の状態にある。なお、図6の符号C5で示す部分は、カムシャフトのフランジに取り付けられるためのボルト穴である。
【0003】
自動二輪車用のカムスプロケットの一般的な製造方法について、以下の二通りの場合を例に説明する。
図7は、第1の従来方法を示すフロー図である。第1の従来方法では、板鋼板にブランク加工を施してブランク材を成形し(S31)、このブランク材に基準穴や軽量穴を切削加工する(S32)。さらに、このブランク材の外周に、歯部両側面R旋削(S33)、HOB歯切り加工(S34)を施す。その後、HOB歯切り加工を施したブランク材に、浸炭焼入処理(S35)、ショット処理(S36)、歯面バリ取り処理(S37)、基準穴等の内径仕上げ処理(S38)を施してカムスプロケットC(図6参照)を完成する。
【0004】
図8は、第2の従来方法を示すフロー図である。第2の従来方法では、板鋼板に、精密プレス加工(以下、ファインブランキング加工と称する)を施す(S41)。図9(a)は、ファインブランキング加工を模式的に示す側面図であり、図9(b)は、ファインブランキング加工によって成形されるスプロケット素材を模式的に示す側面図である。
【0005】
ファインブランキング加工では、図9(a)の如く、パンチ台51上に板鋼板Nを送り込む(図9矢印Y参照)。この板鋼板Nは、板拘束Vリンク52によって固定される。すると、この板鋼板Nに上型摺動パンチ53が作用し、円形素材N1を打ち抜く。なお、円形素材N1の外周には、併せて歯が打ち抜かれる。さらに、この円形素材N1には、芯穴パンチ54、小穴パンチ55が作用し、基準穴N2や軽量穴N3が打ち抜かれる。
以上のファインブランキング加工により、図9(b)に示すスプロケット素材Bが形成される。なお、図9(b)中の符号Sで示す部材は、ファインブランキング加工によって生じるスクラップ材である。
【0006】
ファインブランキング加工の後、図8の如く、歯側面R旋削(S42)、内径逃げ旋削(S43)を施す。ちなみに、図10(a)は、歯側面R旋削を行っている状態を示す概略側面図であり、図10(b)は、内径逃げ旋削を行っている状態を示す概略側面図である。
歯側面R旋削では、ファインブランキング加工によって形成された歯の側面に、Rをつける。また、内径逃げ旋削(S43)では、スプロケット素材Bの一方の端面に逃げ溝を形成する。なお、図10の符号51で示す部材は、スプロケット素材Bを保持するチャックであり、符号52で示す部材は、スプロケット素材Bを回転させる主軸である。また、符号53で示す部材は、刃具である。
【0007】
その後、図8の如く、スプロケット素材B(図9参照)に面取り切削(S44)、浸炭焼入処理(S45)、ショット処理(S46)、歯面バリ取り処理(S47)、さらに、内径仕上げ処理(S48)を行ってカムスプロケットC(図6参照)を完成する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記各従来方法では、種々の問題点を有していた。この問題点について、具体的に説明する。
第1の従来方法では、先に、板鋼板にブランク加工を施してブランク材を成形し、その後、このブランク材に切削加工を施して基準穴等を形成する。つまり、第1の従来方法では、ブランク加工によって所定形状、具体的には逃げ溝C4等を形成した円盤状のブランク材を成形する必要があり、工数や時間的な面から効率が悪かった。また、このブランク材に基準穴等を形成する場合、ブランク材にはつかみ代が少なく、切削加工が困難であった。
【0009】
一方、第2の従来方法では、図10の如く、スプロケット素材Bに対し、歯側面R旋削や内径逃げ旋削を施す必要がある。しかし、このスプロケット素材Bも、前記ブラケット材と同様、つかみ代が少ないため、切削加工が困難である。また、第2の従来方法では、ファインブランキング加工によって、予め基準穴等を形成している。そのため、スプロケット素材Bの端面に逃げ溝を形成する場合、刃具が、基準穴等に当って断続切削になってしまう。そのため、刃先の欠けが生じ易く、刃具の寿命が短くなる。また、ファインブランキング加工を行うために使用される金型は、一般的に高価であり、コストアップにつながり易かった。
【0010】
本発明は、以上の問題点を解決することを課題としており、切削加工を行う工程を極力減少し、効率的なカムスプロケットの製造を可能にする製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は、少なくとも、以下の第1から第6工程を有するカムスプロケットの製造方法であり、第1工程では、プレス成形によって円形板状素材の中心部をインロー半抜きし、第2工程では、前記第1工程で形成された円形板状素材の形状に対応した一対の支柱部で挟み込んだ状態で、前記中心部を基準に、前記円形板状素材の外周を、回転ロール成形によって増肉し、第3工程では、打ち抜き加工によって前記円形板状素材に基準穴、および軽量穴を形成し、第4工程では、前記基準穴の内径を旋削し、第5工程では、前記基準穴にリーマ加工を施し、第6工程では、前記円形板状素材の外周にHOB歯切り加工を施すことを特徴とするカムスプロケットの製造方法とした。
本発明の如く、回転ロール成形によって円形板状素材の外周を増肉するものとすれば、この増肉によって逃げ溝が形成されるため、事後処理において必要となる切削加工処理が減少する。
【0013】
一方、前記回転ロール成形に使用される回転ロール成形装置であって、円形板状素材を挟持し、かつ、この円形板状素材を円周方向に回転させる素材保持部と、前記円形板状素材の外周に当接可能な成形部と、この成形部を、前記円形板状素材の回転に対して従動回転可能に支持するロール部と、前記成形部を、前記円形板状素材の中心方向に向けて押圧する押圧部とを備え、前記成形部を前記円形板状素材の外周に当接させ、かつ押圧することにより、前記外周を増肉することを特徴とする回転ロール成形装置とすることもできる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明を、実施の形態に基づき、適宜図面を参照しつつ具体的に説明する。
図1は、本実施の形態に係る自動二輪車用のカムスプロケットの製造方法であり、具体的な流れを示すフロー図である。また、図2は、円形板状素材が、自動二輪車用のカムスプロケットになるまでの過程において辿った形状を模式的に示す側面図である。さらに、図3は、HOB歯切り加工状態を示す概略側面図、図4は、本実施の形態に係る回転ロール成形装置を示す側面図であり、(a)は成形部が円形板状素材から離れている状態を示し、(b)は成形部が円形板状素材を押圧している状態を示す。
【0015】
本実施の形態に係るカムスプロケットの製造方法では、図4で示す回転ロール成形装置1によって円形板状素材Wに回転ロール成形を施し、円形板状素材Wの外周を増肉する。そして、この外周にHOB加工を施し、歯を形成する。以下、各工程に分け、カムスプロケット製造方法を具体的に説明する。
【0016】
第1工程では、まず、円形板状素材Wの中心部を、プレス成形によってインロー半抜きする(S1)。つまり、図2(a)で示す平板の状態から、(b)で示す如く、円形板状素材Wの中心部に有底のインロー溝W1を形成した状態とする。
第2工程では、インロー半抜きした中心部を基準に、円形板状素材Wの外周に回転ロール成形を施す(S2)。円形板状素材Wの回転ロール成形は、回転ロール成形装置(以下、成形装置と称する)によって行う。なお、この回転ロール成形によって、図2(c)の如く、円形板状素材Wの外周W3が、増肉される。また、この増肉により、円形板状素材Wの内側に逃げ溝C4が形成される。
【0017】
第3工程では、打ち抜き加工により、円形板状素材Wに、基準穴C2、軽量穴C3等を形成する(S3)。この打ち抜き加工された後の円形板状素材Wの状態を、図2(d)で示す。
第4工程では、基準穴内径旋削(S4)を行い、第5工程では、基準穴リーマ(S5)を施す。基準穴内径旋削にて、前記打ち抜き加工によって生じたバリ等を取り除き、基準穴リーマ加工により、基準穴径の精度を担保する。
【0018】
第6工程では、HOB歯切り加工を施す(S6)。このHOB歯切りにより、増肉された円形板状素材Wの外周に、カムチェーンが掛け回される歯C1(図6参照)が形成される。
図3は、HOB歯切り加工状態を示す概略側面図である。本実施の形態に係るHOB歯切り加工では、円形板状素材Wを同芯状に複数積み重ね、この複数の円形板状素材Wの外周に対し、ホブ31が歯C1を形成する。なお、HOB歯切り加工では、ホブ31と複数の円形板状素材Wを治具32に取り付け、相対回転運動によってホブ31に円形板状素材Wの歯切りを行わせる。
【0019】
このHOB歯切り加工の後、本実施の形態では、図1の如く、浸炭焼入処理(S7)、ショット処理(S8)、基準穴内径仕上げ処理(S9)を施す。つまり、浸炭焼入処理(S7)によって素材硬度を高め、ショット処理、基準穴内径仕上げ処理によって、品質を担保する。
以上の各工程により、本実施の形態に係るカムスプロケットCを製造する。なお、前記各工程では、カムスプロケットCのボルト穴C5の形成については言及していない。しかし、このボルト穴C5の形成は、軽量穴C3に雌ねじ溝を切って形成したり、あるいは、軽量穴C3とは独立して別途形成しても良い。
【0020】
つづいて、前記カムスプロケットCの製造方法において使用される回転ロール成形装置について説明する。図4は、本実施の形態に係る回転ロール成形装置を示す側面図であり、(a)は成形部が円形板状素材から離れている状態を示し、(b)は成形部が円形板状素材を押圧している状態を示す。
【0021】
回転ロール成形装置1は、円形板状素材Wを挟持する素材保持部2を備える。この素材保持部2は、上下の支柱部21,22の端部で円形板状素材Wを挟み付けている。また、この支柱部21,22は、軸周りに回転可能に支承され、モータ23の作用によって回転する。
素材保持部2の脇には、ガイド部3が配設されており、ガイド部3上に備え付けられた本体部4は、ガイド部3に案内されながら移動する。なお、ガイド部3による本体部4の案内方向は、素材保持部2の中心に接近、離間する方向である。
【0022】
本体部4の後部には、鉛直線方向の軸線を有するローラ41が取り付けられており、このローラ41に円板カム5が当接する。円板カム5は、鉛直線方向の軸線周りに回転可能であり、ステッピングモータ6が、円板カム5の回転を駆動し、かつ、制動する。本実施の形態では、円板カム5とステッピングモータ6が、押圧部に相当する。
【0023】
本体部4の側面には、押圧解除部材であるコイルスプリング42が備え付けられており、本体部4を後退方向に付勢する。なお、この後退方向とは、本体部4が、円形板状素材Wから離れる方向であり、前進方向とは、円形板状素材Wに接近する方向を意味する。つまり、円板カム5の回転に伴い、本体部4は、コイルスプリング42の付勢力に反しながら前進方向に移動したり、あるいは、コイルスプリング42の付勢力にしたがって後退方向に移動する。
【0024】
本体部4の前部には、上下二段のブラケット43,43が備え付けられており、このブラケット43,43によって軸部44が支承されている。また、軸部44には、円盤状の成形部45が取り付けられている。この成形部45が、本体部4の移動に伴って円形板状素材Wを押圧し、円形板状素材Wの外周を増肉する。つまり、本実施の形態では、軸部44およびブラケット43,43が、ロール部に相当する。
以下、成形部45と円形板状素材Wの関係について、図5を参照して詳述する。ちなみに、図5は、円形板状素材と成形部との当接部分を拡大して示す概略縦断面図であり、(a)は押圧前の状態、(b)は押圧時の状態を示す。
【0025】
素材保持部2における上下の支柱部21,22には、対向する端部に突出部21a,22aが形成されている。また、突出部21aには、インロー溝W1に嵌合して芯出しする突起部21bが形成され、突出部22aには、逃げ溝C4をかたどる突起部22bが形成されている。
突出部21a,22a周りには、くびれができる。このくびれに成形部45の外周が摺動可能に嵌まり込む。成形部45の外周端には、増肉成形溝45aが形成されており、成形部45によって押圧された円形板状素材Wは、増肉成形溝45aの形状、突出部21a,22aの端面形状に倣いながら肉厚な状態となる。なお、増肉するとは、前記肉厚に至るまで、円形板状素材Wの外周W3を塑性変形させることを意味する。また、本実施の形態では、増肉成形溝45aは、湾曲面からなり、増肉された外周には、Rが形成される。
【0026】
以下、成形部45の作用を中心に、回転ロール成形について詳述する。
図4の如く、円形板状素材Wを挟持した素材保持部2は、モータ23の駆動によって回転する。つづいて、ステッピングモータ6が作用して円板カム5が回転する。円板カム5が、半回転すると、図4(b)の如く、本体部4が、素材保持部2側に移動する。すると、本体部4の前部に取り付けられた成形部45が、円形板状素材Wの外周W3に押し付けられる(図5(a)参照)。
【0027】
円形板状素材Wの外周W3に押し付けられた成形部45は、図5(b)の如く、円形板状素材Wの回転に従動した回転をする。成形部45の押し付け状態をある程度維持することにより、円形板状素材Wの外周W3は増肉され、逃げ溝C4が形成される。円形板状素材Wの外周W3の増肉が完了すると、ステッピングモータ6が作用し、円板カム5が半回転する。すると、図4(a)の如く、本体部4は、後退し、成形部45が、円形板状素材Wから離間する。
【0028】
以上、本実施の形態に係る回転ロール成形装置1について説明した。しかし、回転ロール成形装置は、前記実施の形態のみに限定されず、結果的に、円形板状素材の外周を増肉可能であれば足りる。したがって、例えば、押圧部としてシリンダ機構を利用することもでき、また、成形部の移動を、リンク機構を利用したものとすることもできる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、回転ロール成形によってカムスプロケットの歯を形成する外周を増肉し、この増肉によって逃げ溝を形成するため、旋削加工による逃げ溝の形成が必要ない。そのため、カムスプロケット製造における切削処理工程が減少でき、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る自動二輪車用のカムスプロケットを製造する場合の方法の流れを示すフロー図である。。
【図2】円形板状素材が、自動二輪車用のカムスプロケットになるまでの過程において辿った形状を模式的に示す側面図である。
【図3】HOB歯切り加工状態を示す概略側面図である。。
【図4】本実施の形態に係る回転ロール成形装置を示す側面図であり、(a)は成形部が円形板状素材から離れている状態を示し、(b)は成形部が円形板状素材を押圧している状態を示す。
【図5】円形板状素材と成形部との当接部分を拡大して示す概略縦断面図であり、(a)押圧前の状態、(b)は押圧時の状態を示す。
【図6】自動二輪車用のカムスプロケットを示し、(a)は平面図、(b)は(a)のX−X断面図である。
【図7】第1の従来方法を示すフロー図である。
【図8】第2の従来方法を示すフロー図である。
【図9】(a)は、ファインブランキング加工を模式的に示す側面図であり、(b)は、ファインブランキング加工によって成形されるスプロケット素材を模式的に示す側面図である。
【図10】(a)は、歯側面R旋削を行っている状態を示す概略側面図であり、(b)は、内径逃げ旋削を行っている状態を示す概略側面図である。
【符号の説明】
1:回転ロール成形装置
2:素材保持部
43:ブラケット
44:軸部
45:成形部
5:円板カム
6:ステッピングモータ
C:カムスプロケット
C1:歯
C2:基準穴
C3:軽量穴
W:円形板状素材
W3:外周
Claims (1)
- 少なくとも、以下の第1から第6工程を有するカムスプロケットの製造方法であって、
第1工程では、プレス成形によって円形板状素材の中心部をインロー半抜きし、
第2工程では、前記第1工程で形成された円形板状素材の形状に対応した一対の支柱部で挟み込んだ状態で、前記中心部を基準に、前記円形板状素材の外周を、回転ロール成形によって増肉し、
第3工程では、打ち抜き加工によって前記円形板状素材に基準穴、および軽量穴を形成し、
第4工程では、前記基準穴の内径を旋削し、
第5工程では、前記基準穴にリーマ加工を施し、
第6工程では、前記円形板状素材の外周にHOB歯切り加工を施すことを特徴とするカムスプロケットの製造方法。
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JP23742699A JP3714588B2 (ja) | 1999-08-24 | 1999-08-24 | カムスプロケットの製造方法 |
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JP5223895B2 (ja) | 2010-08-06 | 2013-06-26 | トヨタ自動車株式会社 | カムスプロケットおよびその製造方法 |
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1999
- 1999-08-24 JP JP23742699A patent/JP3714588B2/ja not_active Expired - Fee Related
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