JP4577969B2 - 油圧モータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧モータに関し、特に、回転摺動部の潤滑および冷却技術並びに摩耗防止技術に係り、例えば、トラッククレーンのウインチに使用される油圧モータに利用して有効なものに関する。
【0002】
【従来の技術】
トラッククレーンのウインチに使用される油圧モータとしては、斜板式アキシャルプランジャ形油圧モータが広く採用されている。すなわち、この斜板式アキシャルプランジャ形油圧モータは略円筒形状に形成されたハウジングを備えており、ハウジングの内部には略円柱形状に形成されたシリンダブロックが同心に配されて回転軸に一体に形成されて回転するように支承されている。シリンダブロックの回転軸周りに形成された複数本のシリンダ室には各ピストンが往復摺動自在にそれぞれ嵌入されており、各ピストンの一端面がハウジングの内部に配置された斜板の上をローラベアリングを介して回転するスラストプレートに突合している。そして、各ピストンは軸心と平行方向に往復摺動するとともに、軸心の周りを円運動するようになっている。そして、ハウジングの斜板と反対側のエンドプレートには第一給排路、第二給排路、第一給排ポートおよび第二給排ポートが開設されており、エンドプレートの端面に当接されたバルブプレートにはシリンダブロックの端面が摺動自在に突合されている。
【0003】
最近、トラッククレーンにおいては、作業能率の向上の観点や騒音対策の観点等からウインチのワイヤの繰り出しおよび巻き上げ速度を高めるために、ウインチを駆動する油圧モータの回転速度を高めることが要求されている。
【0004】
ところが、従来の斜板式アキシャルプランジャ形油圧モータにおいて、回転速度を高めると、遠心力が大きくなるため、シリンダブロックの回転摺動面である端面の周辺部において潤滑油の供給が不足し、潤滑不足や冷却不足が発生するという問題点がある。
【0005】
そこで、この潤滑油不足を解決する手段として、潤滑油供給専用の油圧ポンプを付帯設備して潤滑油を強制的に供給する方法および油圧モータ駆動用の油圧ポンプの吐出油の一部を潤滑油として強制的に供給する方法が考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者の専用油圧ポンプを付帯して潤滑油を強制的に供給する方法においては、専用の油圧ポンプの分だけ油圧ポンプが大形になるばかりでなく、イニシャルコストやランニングコストが増加してしまう。
【0007】
後者の駆動用油圧ポンプを潤滑油の強制供給に兼用する方法においては、駆動用ポンプの出力の一部が潤滑油の供給に使用されることになるため、その分、駆動用ポンプの定格を高める必要があり、結局、大形化やコスト増加を招くことになる。
【0008】
本発明の目的は、大形化やコストの増加を回避しつつ潤滑不足や部品の摩耗を防止することができる油圧モータを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る油圧モータは、ハウジング(1)と、このハウジング(1)内に回転自在に軸架された回転体(3)と、この回転体(3)を回転させるための圧油を供給する第一の給排路(13)と、前記回転体(3)を逆転させるための第二の給排路(14)とを備えている油圧モータにおいて、
前記ハウジング(1)の内部を潤滑する油を前記第一の給排路(13)または第二の給排路(14)のうちの圧力の低い方の給排路から導入する導入路(26)と、この導入路(26)から導入された油を排出するドレン路(25)とを備えており、
前記給排路(13、14)と前記導入路(26)との間に低圧優先弁(30)が介設されており、この低圧優先弁(30)の一方の入口ポート(31)は正転時に入口側となる第一給排ポート(15)に接続され、その他方の入口ポート(32)は正転時に出口側となる第二給排ポート(16)に接続されており、出口ポート(33)は前記導入路(26)に接続されている、ことを特徴とする。
【0010】
前記した手段において、回転体(3)の回転摺動面である端面の周辺部には油圧モータの回転駆動に用いられた作動油が潤滑油(40)として導入路(26)から導入されるため、回転体(3)の回転摺動面の周辺部はその潤滑油(40)によって潤滑されかつ冷却される。そして、回転体(3)の回転摺動面の周辺部を潤滑しかつ冷却した潤滑油(40)はドレン路(25)に排出される。したがって、前記した手段によれば、潤滑油専用の油圧ポンプを設けたり、駆動用ポンプの出力の一部を潤滑油として使用したりする必要がなく、油圧ポンプの大形化やコストの増加を回避しつつ潤滑不足を防止することができる。潤滑油の導入路(26)に低圧優先弁(30)を設けることにより、油圧モータの正転時および逆転時のいずれにおいても回転体(3)の回転摺動面に排出側の低圧の潤滑油(40)を供給して潤滑しかつ冷却することができる。
【0011】
本発明の請求項2に係る油圧モータは、前記ハウジング(1)の内部を潤滑する油を導入する導入路(26)と、この導入路(26)から導入された油を排出するドレン路(25)とがハウジング(1)のエンドプレート(12)に設けられていることを特徴とする。
【0012】
前記した手段によれば、導入路(26)とドレン路(25)とをハウジング(1)のエンドプレート(12)に設けたので、潤滑装置をコンパクトに形成することができる。
【0015】
本発明の請求項3に係る油圧モータは、前記エンドプレート(12)の端面に前記導入路(26)に連通するエンドプレート側環状溝(22)が形成されており、前記エンドプレート(12)に対向する前記回転体(3)の端面に前記エンドプレート側環状溝(22)に対応するシリンダブロック側環状溝(20)が形成されており、さらに、このシリンダブロック側環状溝(20)には回転体(3)の外周辺に向けて放射状に複数の導出溝(21)が形成されていることを特徴とする。
【0016】
エンドプレート(12)の端面に設けたエンドプレート側環状溝(22)と回転体(3)の端面に設けたシリンダブロック側環状溝(20)とが一つの油通路を形成し、導入路(26)から導入された油はこの通路を通って円周方向に流れるとともに、放射状に設けた導出溝(21)から遠心力により回転体(3)の外部に放出される。この放出された油はドレン穴部(24)、ドレン路(25)を通ってタンク(41)に戻される。
【0017】
本発明の請求項4に係る油圧モータは、前記エンドプレート(12)の端面と前記回転体(3)の端面との間にバルブプレート(18)が介装されており、前記エンドプレート(12)に設けたエンドプレート側環状溝(22)と前記回転体(3)に設けたシリンダブロック側環状溝(20)とを連通する連通孔(23)が開設されていることを特徴とする。
【0018】
導入路(26)から導入された油はバルブプレート(18)と、前記エンドプレート(12)に設けたエンドプレート側環状溝(22)とで形成された油通路に導かれ、さらに、この油はバルブプレート(18)に適正に穿設された連通孔(23)を通して回転体(3)に設けたシリンダブロック側環状溝(20)に略均等に供給される。このシリンダブロック側環状溝(20)には放射状に形成された複数の導出溝(21)が形成されているので、油圧モータ作動中は断えずバルブプレート(18)と回転体(3)の回転摺動面に円周上万遍なく排出側の潤滑油(40)を供給して潤滑し、かつ、冷却することができる。また、エンドプレート(12)がアルミニウム材のような軟質の金属の場合にはバルブプレート(18)を介装することにより磨耗を防止することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図面に即して説明する。
【0020】
本実施の形態において、図1に示されているように、本発明に係る油圧モータは斜板式アキシャルプランジャ形油圧モータ(以下、油圧モータという。)として構成されており、略円筒形状に形成されたハウジング1を備えている。さらに、このハウジング1は有底円筒部1Aとエンドプレート12とから構成されている。ハウジング1の内部の軸心上には回転軸2が架設されており、回転軸2は両端部が有底円筒部1Aおよびエンドプレート12に設置された一対の軸受2A、2Bによって回転自在に支承されている。ハウジング1の内部には略円柱形状に形成された回転体であるシリンダブロック3が同心に配されて収容されており、シリンダブロック3は回転軸2にスプライン4を介して一体に形成され回転するようになっている。
【0021】
シリンダブロック3の回転軸2の周りには七本のシリンダ室5が同一半径上において周方向に等間隔に配されて軸心と平行方向に穿設されており、各シリンダ室5は一端面が閉塞し他端面が開口した円柱穴形状にそれぞれ形成されている。図2(a)に示されているように、各シリンダ室5の閉塞端面壁における略中央位置には各連通路6がシリンダブロック3と同心の円弧形状の長孔に形成されてそれぞれ穿設されており、連通路6はシリンダ室5の内外を連通させるようになっている。各シリンダ室5には各ピストン7が往復摺動自在に開口端からそれぞれ嵌入されている。
【0022】
ハウジング1の内部におけるシリンダ室5の閉塞端側には斜板8が、回転軸2に対して所定の角度傾斜するように配されて固定されており、斜板8の斜面にはスラストプレート9が斜板側スラストプレート9Aおよびローラベアリング9Bを介して当接されて回転自在に支承されている。各ピストン7は軸心と平行方向に往復摺動するとともに各ピストン7の一端面がスラストプレート9上を円周方向に回転自在にかつ摺動可能に突合されており、各ピストン7はシリンダ室5内に収納されたボール10およびスプリング11によってスラストプレート9に常時押接されている。これにより、各ピストン7はシリンダブロック3が回転すると、斜板8の斜面に対応して各シリンダ室5に対してそれぞれ往復動するようになっている。
【0023】
図1に示されているように、ハウジング1の斜板8と反対側にはエンドプレート12が、有底円筒部1Aの端面開口を閉塞するように当接されている。図3に示されているように、エンドプレート12には第一給排路13および第二給排路14がそれぞれ開設されており、エンドプレート12の斜板8側の端面(以下、内側端面という。)には第一給排ポート15および第二給排ポート16が、第一給排路13および第二給排路14にそれぞれ連通するように没設されている。第一給排ポート15および第二給排ポート16は略半円形の円弧形状に形成されており、エンドプレート12の同心円上において左右対称形に配置されている。また、第一給排ポート15および第二給排ポート16はシリンダブロック3に開設された連通路6群と、後記するバルブプレート18を挟んで対向された状態になっている。
【0024】
図1に示されているように、エンドプレート12の内側端面には薄い鋼板が使用されて外径がシリンダブロック3の外径と等しい円板形状に形成されたバルブプレート18が当接されており、バルブプレート18のエンドプレート12との当接面と反対側の端面(以下、シリンダブロック側端面という。)にはシリンダブロック3の連通路6側の端面(以下、バルブプレート側端面という。)が、シリンダブロック3と回転軸2との間に蓄力状態で介設された圧縮スプリング17の付勢下において摺動自在に押接されている。
【0025】
図2(b)に示されているように、バルブプレート18には円弧形状に形成された六個の連通孔19aおよび19bが同心円上において左右対称形に配列されて開設されており、一方の片側の三個の連通孔19aは図3に示されているエンドプレート12の第一給排ポート15に対向され、他方の片側の三個の連通孔19bは第二給排ポート16に対向されている。
【0026】
本実施の形態はシリンダブロック3が鋳鉄製でエンドプレート12がアルミ材で形成されている場合である。このような場合には、シリンダブロック3とエンドプレート12とが直接接触するように構成すると、エンドプレート12が摩耗する。このため、バルブプレート18を介装することによってエンドプレート12の摩耗を防止している。バルブプレート18にはエンドプレート12に固定するための固定穴18Aが2個設けられている。一方、エンドプレート12の端面にはバルブプレート18の固定穴18Aに対応した位置に固定用突起12Aが設けられており、バルブプレート18を固定するようになっており、シリンダブロック3の回転によってバルブプレート18が回転するのを防止している。
【0027】
なお、エンドプレート12が鋳鉄によって形成されている場合には、バルブプレート18の介装は省略することができる。
【0028】
図2(a)に示されているように、シリンダブロック3のバルブプレート側端面における連通路6群の外側には環状溝20が同心円に没設されており、その環状溝20の外側には複数条の導出溝21が放射状に没設されている。各導出溝21は内側端が環状溝20に開口されており、外側端がシリンダブロック3の外周に開口されている。したがって、各導出溝21は環状溝20の内部空間をシリンダブロック3の外方空間にそれぞれ連通させた状態になっている。
【0029】
他方、図3に示されているように、エンドプレート12の内側端面における第一給排ポート15および第二給排ポート16の外側の位置には、環状溝22が同心円に没設されており、このエンドプレート12の環状溝(以下、エンドプレート側環状溝という。)22の半径とシリンダブロック3の環状溝(以下、シリンダブロック側環状溝という。)20の半径とは同一に設定されている。したがって、エンドプレート側環状溝22とシリンダブロック側環状溝20とはバルブプレート18を挟んで対向した状態になっている。図2(b)に示されているように、バルブプレート18にはシリンダブロック側環状溝20およびエンドプレート側環状溝22と対応した位置に四個の連通孔23が周方向に等間隔で開設されており、これら連通孔23はシリンダブロック側環状溝20の内部空間とエンドプレート側環状溝22の内部空間とを連通させている。四個の連通孔23を等間隔に配置することにより、エンドプレート側環状溝22に導入された油をシリンダブロック側環状溝20に略均等に供給することができる。なお、連通孔23は四個に限定されるものではなく、油圧モータの使用条件により適宜増減することができる。また、連通孔23の配置も必ずしも等間隔である必要はなく、シリンダブロック側環状溝20に略均等に油を供給できるものであれば、どのような配置でもよい。
【0030】
図1、図3および図4に示されているように、エンドプレート12の内側端面における外周辺の一部(以下、上部とする。)にはドレン穴部24が没設されており、ドレン穴部24にはエンドプレート12に形成されたドレン路25の一端部が接続されている。図1に示されているように、エンドプレート12の下部には潤滑油として作動油を導入するための導入路26が開設されており、図1および図3に示されているように、導入路26の一端はエンドプレート側環状溝22の下端部に接続されている。
【0031】
図1に示されているように、エンドプレート12には導入路26に接続された低圧優先弁30が設けられている。図5に示されているように、低圧優先弁30は3ポート・2位置・パイロット操作式スライドスプール形切換弁として構成されており、第一入口ポート31、第二入口ポート32および出口ポート33を備えている。第一入口ポート31は第一給排路13に、第二入口ポート32は第二給排路14に、出口ポート33は導入路26にそれぞれ接続されている。弁箱34には弁体35が摺動自在に収納されており、弁体35は弁箱34の両端部に介装された第一スプリング36および第二スプリング37によって均衡されている。弁箱34の弁体35の一端には図5(b)に示されているように、第一給排路13の圧油がパイロット通路13Aを介してパイロット圧として印加されており、他端には第二給排路14の圧油がパイロット通路14Aを介してパイロット圧として印加されている。なお、図5(a)は第一給排路13の方の圧力が第二給排路14よりも高いので、弁体35が図の左側に押され、このため、第二給排路14の圧油が出口ポート33を通って導入路26に流れる様子を示したものである。
【0032】
次に、前記構成にかかる油圧モータの作用を説明する。
【0033】
回転軸2が正回転される場合において、ピストン7が上死点から下死点に移行する間にシリンダ室5が連通路6を介して第一給排ポート15と連通するように、斜板8、シリンダブロック3およびバルブプレート18等の相対的な位置関係が設定されていると、高圧の作動油は第一給排路13、第一給排ポート15、連通孔19aおよび連絡路6を通じてシリンダ室5に流入することになる。
【0034】
この高圧の作動油のシリンダ室5への流入によりピストン7は押圧されるため、ピストン7はスラストプレート9を介して斜板8を押圧することになる。この押圧力の周方向についての分力により、ピストン7を支持しているシリンダブロック3を回転させるトルクが発生する。このシリンダブロック3を回転させるトルクはスプライン4を介して回転軸2に伝達されるため、回転軸2は正方向に回転駆動されることになる。
【0035】
そして、シリンダブロック3の回転に伴って、ピストン7が下死点から上死点に移行する間に、シリンダ室5が第二給排ポート16と連通する状態になる。このとき、ピストン7は斜板8により押し戻されるため、シリンダ室5の作動油をシリンダ室5から第二給排路14に連絡路6、連通孔19bおよび第二給排ポート16を通じて排出させることになる。
【0036】
以上の作動油のシリンダ室5への流入およびシリンダ室5からの排出が繰り返されるモータ作用の正転時には、図示しない油圧ポンプから第一給排路13に圧油が供給され、第二給排路14から排出される。このとき、低圧優先弁30は図5(b)に示された回路図の状態になるため、第二給排路14の作動油すなわち油圧モータの回転駆動に用いられた後の作動油が潤滑油40として、第二入口ポート32および出口ポート33を経由して導入路26に導入される。
【0037】
図3に矢印で示されているように、導入路26に導入された潤滑油40はエンドプレート側環状溝22に導入され、エンドプレート側環状溝22を左右に分かれて上部へと流れて行く。エンドプレート側環状溝22を流通する途中において潤滑油40はバルブプレート18の四個の連通孔23を通ってシリンダブロック側環状溝20に流れ込む。図2(a)に矢印で示されているように、シリンダブロック側環状溝20に流れ込んだ潤滑油40はシリンダブロック側環状溝20を環状に流れる間に放射状に敷設された各導出溝21を径方向外向きに流れてシリンダブロック3の外側にそれぞれ流出する。
【0038】
図2(a)に示されているように、シリンダブロック3の外周部に放射状に敷設された各導出溝21を放射状に潤滑油40がそれぞれ流出して行く際に、シリンダブロック3はバルブプレート18のシリンダブロック側端面を摺動しながら回転しているため、各導出溝21を放射状に流出して行く潤滑油40はシリンダブロック3とバルブプレート18との摺動面を万遍なく潤滑、かつ冷却する状態になる。そして、シリンダブロック3とバルブプレート18との摺動面を効果的に潤滑しかつ冷却して、シリンダブロック3の外側に流出した潤滑油40はドレン穴部24からドレン路25を経由してタンク41にドレンされる。
【0039】
油圧モータの逆転時には、図示しない油圧ポンプから第二給排路14に圧油が供給され、第一給排路13から排出される。このとき、低圧優先弁30の弁体35は図5(b)に示された状態から反対側に切り換えられる。すなわち、油圧モータの回転駆動に用いられた作動油が流れる第一給排路13側の第一入口ポート31が出口ポート33に接続された状態となり、油圧モータの回転駆動に用いられた作動油が潤滑油として第一入口ポート31および出口ポート33を介して導入路26に導入されることになる。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態においては、シリンダブロック3の回転摺動面には油圧モータの回転駆動に用いられた作動油が潤滑油として供給され、周辺部を潤滑しかつ冷却した潤滑油はドレン路から排出されるので、潤滑油専用の油圧ポンプを設けたり、駆動用ポンプの出力の一部を潤滑油として使用したりする必要がなく、大形化やコストの増加を回避しつつ潤滑不足を防止することができる。
【0041】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0042】
例えば、油圧モータは斜板式アキシャルプランジャ形油圧モータに限らず、その他の回転形油圧モータ全般に適用することができる。
【0043】
また、前記実施の形態においては、導入路26およびドレン路25をエンドプレート12に設けた例について説明したが、導入路26およびドレン路25はエンドプレート12に設けた場合に限定されるものではなく、ハウジング1のいずれの場所に取り付けてもよい。
【0044】
さらに、シリンダブロック3の端面に設けた導出溝21については、放射状に設けた例について説明したが、導出溝21の形状は図2(a)に示すような半径方向に放射状に配置されている場合に限定されるものではなく、シリンダブロック側環状溝20に導入された油を外部に放出するものであれば、どのような形状の溝でもよい。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、大形化やコストの増加を回避しつつ回転摺動面の潤滑不足を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態である斜板式アキシャルプランジャ形油圧モータを示す縦断面図である。
【図2】(a)は図1のa−a矢視図に相当するシリンダブロックのバルブプレート側端面を示す側面図、(b)は図1のb−b矢視図に相当するバルブプレートを示す側面図である。
【図3】図1のc−c矢視図に相当するエンドプレートの内側端面を示す側面図である。
【図4】図1のd−d矢視図に相当する側面図である。
【図5】(a)は低圧優先弁を示す平面断面図、(b)は低圧優先弁の接続を示す回路図である。
【符号の説明】
1…ハウジング、1A…有底円筒部、2…回転軸、2A、2B…軸受、3…シリンダブロック(回転体)、4…スプライン、5…シリンダ室、6…連絡路、7…ピストン、8…斜板、9…スラストプレート、9A…斜板側スラストプレート、9B…ローラベアリング、10…ボール、11…スプリング、12…エンドプレート、12A…固定用突起、13…第一給排路、13A…第一パイロット通路、14…第二給排路、14A…第二パイロット通路、15…第一給排ポート、16…第二給排ポート、17…圧縮スプリング、18…バルブプレート、18A…固定用穴、19a、19b…連通孔、20…シリンダブロック側環状溝、21…導出溝、22…エンドプレート側環状溝、23…連通孔、24…ドレン穴部、25…ドレン路、26…導入路、30…低圧優先弁、31…第一入口ポート、32…第二入口ポート、33…出口ポート、34…弁箱、35…弁体、36、37…スプリング、40…潤滑油(作動油)、41…タンク。
Claims (4)
- ハウジング(1)と、このハウジング(1)内に回転自在に軸架された回転体(3)と、この回転体(3)を回転させるための圧油を供給する第一の給排路(13)と、前記回転体(3)を逆転させるための第二の給排路(14)とを備えている油圧モータにおいて、
前記ハウジング(1)の内部を潤滑する油を前記第一の給排路(13)または第二の給排路(14)のうちの圧力の低い方の給排路から導入する導入路(26)と、この導入路(26)から導入された油を排出するドレン路(25)とを備えており、
前記給排路(13、14)と前記導入路(26)との間に低圧優先弁(30)が介設されており、この低圧優先弁(30)の一方の入口ポート(31)は正転時に入口側となる第一給排ポート(15)に接続され、その他方の入口ポート(32)は正転時に出口側となる第二給排ポート(16)に接続されており、出口ポート(33)は前記導入路(26)に接続されている、ことを特徴とする油圧モータ。 - 前記ハウジング(1)の内部を潤滑する油を導入する前記導入路(26)と、この導入路(26)から導入された油を排出する前記ドレン路(25)とが前記ハウジング(1)のエンドプレート(12)に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の油圧モータ。
- 前記エンドプレート(12)の端面に前記導入路(26)に連通するエンドプレート側環状溝(22)が形成されており、前記エンドプレート(12)に対向する前記回転体(3)の端面には前記エンドプレート側環状溝(22)に対応するシリンダブロック側環状溝(20)が形成されており、さらに、このシリンダブロック側環状溝(20)には回転体(3)の外周辺に向けて放射状に複数の導出溝(21)が形成されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の油圧モータ。
- 前記エンドプレート(12)の端面と前記回転体(3)の端面との間にバルブプレート(18)が介装されており、このバルブプレート(18)には前記エンドプレート(12)に設けられたエンドプレート側環状溝(22)と前記回転体(3)に設けられたシリンダブロック側環状溝(20)とを連通する連通孔(23)が開設されている、ことを特徴とする請求項3に記載の油圧モータ。
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