JP4576591B2 - ラケットフレーム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、テニスラケット等のラケットフレームに関し、詳しくは、繊維強化プリプレグを積層した繊維強化樹脂からなるラケットフレームにおいて、打球面の面外方向の剛性を上げて、軽量でありながら反発性能を付与しているものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ラケットフレームを軽量化しつつ、面外剛性を高くし、高反発を得るために、フレームの面外方向(打球方向)に厚みを持たせたラケットフレーム、所謂「厚ラケ」が提供されている。この厚ラケを必要とするユーザーは、女性やシニア層といった少ない力で飛び性能を要求する層であり、軽量で、かつ飛び性能の良いラケットが求められている。
【0003】
ところが、ラケットフレームが軽くなった場合、ラケットフレームとボールの二物体が衝突する観点より、エネルギー保存則を考えると、ボールの反発係数が低下する。よって、ラケットフレームの軽量化は反発性能の低下を招くことになる。
【0004】
従来、この種の繊維強化樹脂製のラケットフレームにおいて、反発性能を向上させるために、重量を付加し、スイング方向の慣性モーメントを上げることが考えられているが、重量が増加すると当然の如く振り抜きにくいものとなり、非力な人は扱いにくくなる。
【0005】
また、反発性能を上げるために、フレームの面外方向の厚みを大きくすることが考えられるが、面外方向の厚みが増大するとフレーム断面の周長が大きくなることにより、同一重量のラケットフレームに比べ、肉厚が薄くなり、強度が低下してしまう。逆に、強度を考慮すると、重量が増加し、扱いにくいものとなってしまう。さらに、重量を付加し、スイング方向の慣性モーメントを上げた場合には、当然の如く振り抜きが悪くなり、スイングスピード、操作性が低下し、非力な人には扱いにくいものとなる。
【0006】
さらに、反発性能を上げるために、従来、特許公報第260802号で、ねじれの大きい部分の剛性を上げることが提案されている。具体的には、ヘッド部からスロート部に延びたビーム部分とヨークとの接合部付近を最大厚み、最大幅として剛性を上げている。
また、特開平10−309332号では、低弾性で、強化繊維の配向角度が0度〜20度のカーボン繊維プリプレグを使用し、打球時にフレームをしならせることにより反発性能を向上させることが提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来例では、最大厚みからトップ部分に向かっては、厚みが減少している。よって、トップ部分の厚みの大きいものに比べて、ヘッド部の上部の面外方向の剛性が低下し、反発性能が低下するという問題がある。
後記従来例では、スイングスピードの速いプレーヤーには有効であるが、逆に、女性やシニア層のような、スイングスピードの遅いプレーヤーには不向きであり、少ない力で飛び性能を得ることはできないという問題がある。
【0008】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、ラケットフレームの反発性能を向上させると共に、操作性、耐久性を低下させず、かつ軽量化を実現するラケットフレームを提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、繊維強化プリプレグの積層体からなる中空パイプを連続させて形成してなるラケットフレームであって、
上記ラケットフレームの打球面を囲むヘッド部を時計面と見てトップを12時とすると、1時〜5時、7時〜11時の範囲内の両サイドに、強化繊維の配向角度を上記パイプの長さ方向(軸線方向)に対して35度〜55度とした繊維強化プリプレグを配置し、かつ、上記強化繊維の配向角度を35度〜55度とした繊維強化プリプレグを繊維方向の配向角度を軸線方向に対して0度、10度または30度の一方向繊維強化プリプレグと0度と90度の繊維をクロスさせた二方向繊維強化プリプレグの間に配置し、かつ、該35度〜55度の角度を備えた繊維強化プリプレグの面積を、上記パイプを構成する全繊維強化プリプレグの面積合計に対して5〜95%とし、
打球面の面内方向の剛性に相当する側圧剛性を35kgf/cm〜60kgf/cm、打球面の面外方向の剛性である打球面剛性を130kgf/cm〜180kgf/cmの範囲とし、打球面剛性と側圧剛性の比(打球面剛性/側圧剛性)の値を3.55〜4.52の範囲に設定していることを特徴とするラケットフレームを提供している。
【0010】
上記ラケットフレームは、本発明者の鋭意研究および試打テストを含む実験の結果に基づいてなされたものであり、ラケットフレームの重量・形状を変えずに反発性能を向上させるためには、側圧剛性(打球面の面内方向の剛性)が低く、打球面剛性(打球面の面外方向の剛性)が高いラケットフレームが有効であるという結果を見出したことに基づく。さらに、重量を変えずに、これらの剛性値を変化させるには、繊維強化プリプレグの強化繊維の配向角度を変えることが有効であることを見出したことに基づく。
【0011】
即ち、インパクト時に、打球面を囲むヘッド部は面内方向、面外方向に変形するため、側圧剛性を低くすると、面内方向への変形が大きくなり、高反発を得ることができる。一方、打球面剛性を高くしているのは、打球面剛性を低くした場合に、面外方向の剛性が低くなり、ラケットフレームにねじれが発生し、エネルギーロスを起こすため、反発性能が低下し、かつ、打球面の安定性を損なうという問題が発生するためである。
【0012】
一般に、市販されているラケットフレームの側圧剛性は30kgf/cm〜120kgf/cmであり、打球面剛性は100kgf/cm〜180kgf/cmである。このように、側圧剛性を低くして反発性を高めているが、側圧剛性を低くすると、打球面剛性も低くなり、上記のように、エネルキーロスを発生して、反発性能はさほど向上していない。
これに対して、本発明のラケットフレームは、上記のように強化繊維の配向方向を設定することにより、側圧剛性を35kgf/cm〜60kgf/cmの範囲として、従来よりは低めに設定する一方、打球面剛性を130kgf/cm〜180kgf/cmと高めに設定しているため、打球時において、従来のラケットフレームよりは高反発性能を得ることができる。
【0013】
側圧剛性値は35kgf/cm〜60kgf/cm、好ましくは40kgf/cm〜55kgf/cmとしている。側圧剛性値が35kgf/cmより小さいと、フレーム強度が低下するという問題があり、60kgf/cmより大きいと、面内方向への変形量が小さくなり、面外方向への変形量が多くなり、しなりすぎて反発性能を高めることが出来ない問題がある。
【0014】
打球面剛性値は130kgf/cm〜180kgf/cm、好ましくは135kgf/cm〜175kgf/cmとしている。打球面剛性値が130kgf/cmより小さいと、エネルギーロスが大きくなり、反発性が悪くなるという問題があり、180kgf/cmより大きいと、打球感が悪くなると共に(硬く感じる)、強度が低下するという問題がある。
【0015】
打球面剛性/側圧剛性の比は3.55〜4.52としている。打球面剛性/側圧剛性の比が3.55より小さいと、側圧剛性が高くなりすぎ、反発が悪くなるという問題があり、4.52より大きいと、面内変形と面外変形とのタイミングがずれ、反発が高くならないという問題がある。
【0016】
上記した側圧剛性と打球面剛性とを得るために、本発明では、ラケットフレームを構成する繊維強化樹脂製の中空パイプを、ヘッド部の少なくともサイド部分において、強化繊維の配向角度が、パイプの長さ方向(軸線方向)に対して35度〜55度となるように設定している。
【0017】
上記ラケットフレームを構成する繊維強化樹脂の強化繊維の方向は、ラケットフレーム強度を保持しながら軽量化を図るためには、従来一般に、パイプの長さ方向に平行な0度から30度の範囲に設定されている。これは、0度に近い方が剛性値が増加することに起因する。しかし、0度とすると、打球面剛性(面外剛性)と共に側圧剛性(面内剛性)の両方が増加することとなり、側圧剛性の増加により反発性能を十分に高めることはできない。
【0018】
これに対して、本発明では、少なくともヘッド部のサイド部分では、強化繊維の配向角度をパイプ(ラケットフレーム)の長さ方向に対して35度〜55度に設定している。上記強化繊維の配向角度を35度〜55度に設定しているのは、打球面剛性を所要範囲に維持しながら、側圧剛性を低下できることによる。
即ち、強化繊維の配向角度が35度より小さいと、側圧剛性が高くなりすぎ、反発性能を十分に高めることができないという問題があり、55度より大きいと、面内剛性が低くなりすぎ、ラケット強度も低くなるという問題がある。強化繊維の配向角度は、好ましくはパイプ軸線方向に対して40度〜45度である。
【0019】
上記強化繊維の配向角度を35度〜55度に設定した繊維強化プリプレグを繊維方向の配向角度を軸線方向に対して0度、10度または30度の一方向繊維強化プリプレグと0度と90度の繊維をクロスさせた二方向繊維強化プリプレグの間に配置している。
【0020】
このように、打球時に種として変形する打球面を囲むヘッド部の一部に強化繊維の配向角度35度〜55度とした繊維強化プリプレグ層を配置しておくと、打球時において、ボールの反発性能に直接的に影響を与えるヘッド部の側圧剛性を低く、打球面剛性を高くでき、確実に反発性能を高めることがでる。
【0021】
上記強化繊維の配向角度を35度〜55度とした繊維強化プリプレグは、ヘッド部を時計面と見てトップを12時とすると、1時〜5時、7時〜11度の範囲内に配置している
【0022】
上記強化繊維の配向角度を35度〜55度とした繊維強化プリプレグを、ラケットフレームを構成するパイプの全長にわたって配置し、該角度を備えた繊維強化プリプレグの面積を、上記パイプを構成する全繊維強化プリプレグの面積合計に対して、5〜95%としている。
上記5〜95%(面積%)としているは、5%より小さいと打球面剛性が低くなり、反発が悪くなるという問題があり、95%より大きいと側圧剛性が低く強度が低下するという問題がある。好ましくは10〜90%とし、より好ましくは25〜75%である。
【0023】
上記のように、ラケットフレームの全長にわたって、繊維方向を35度〜55度としたプリプレグを配置すると、ラケットフレーム全体で側圧剛性を低く、打球面剛性を高くでき、打球時における反発性能をより高めることができる。
【0024】
上記繊維強化プリプレグとしては、主として、強化繊維をカーボン繊維とし、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)で含浸した繊維強化プリプレグが好適に用いられる。
なお、強化繊維はカーボン繊維の他、アラミド繊維、ボロン繊維、芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリエステル繊維、超高分子ポリエチレン繊維が用いられる。
【0025】
また、本発明は、繊維強化プリプレグの積層体からなるラケットフレームに限定されず、マンドレルにフィラメントワインデイングで強化繊維を巻き付けてレイアップを形成しておき、これを金型内に配置してリムナイロン等の熱可塑性樹脂を充填して形成したラケットフレームにも適用できる。その場合には、マンドレルへ強化繊維を巻き付ける時に、強化繊維の巻き付け角度を所要部分で軸線方向に35度〜55度の範囲となるようにしている。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は第1実施形態のラケットフレーム1を示し、フレーム本体2により、打球面Fを囲むヘッド部3、スロート部4、シャフト部5、グリップ部6を連続して構成している。上記ヘッド部3は、別部材からなるヨーク7をスロート側でフレーム本体2と連続して打球面Fを囲む環状としている。
【0027】
フレーム本体2は、繊維強化樹脂製の中空パイプからなり、カーボン繊維をマトリクス樹脂のエポキシ樹脂で含浸している繊維強化プリプレグの積層体からなる。
【0028】
上記繊維強化プリプレグは、フレーム本体2のヘッド部3の一部分(図中、クロス斜線で示す)には、強化繊維の配向角度が、フレーム(パイプ)の長さ方向に対し、35度〜55度の方向となる強化繊維プリプレグ層を、他の繊維強化プリプレグ層の間に配置している。
【0029】
図2は、上記ラケットフレームを構成する繊維強化プリプレグの配置箇所及び強化繊維の配向角度を示している。
【0030】
図2で示す各プリプレグは、マトリクス樹脂をエポキシ樹脂とし、強化繊維はいずれもカーボン繊維であり、内層側より順に、第1層から第9層のプリプレグ21〜29を積層している。これら9層のプリプレグを積層した積層体20は、図2に示すように、積層体20のセンターがラケットフレームのヘッド部3のトップの位置になるように配置し、ラケットフレーム形状とされる。また、図2において、各プリプレグの横に記載している数値は、ラケットフレームのトップからの距離を示している(単位cm)。
なお、図2では、複数のプリプレグを同一層として配置している場合は、1枚のプリプレグのみで表記している。
【0031】
下記に各プリプレグ21〜29の詳細を記す。
下記の繊維角度とは、ラケットフレームを構成するパイプの長さ方向(軸線方向)に対する角度である。また、面積%とは全プリプレグの表面面積の合計に対する各層のプリプレグの表面面積の割合(%)である。
【0032】
第1層のプリプレグ21は、繊維角度が30度、幅が7.5cm、長さが164.0cm、層数2、面積%が20.4%である。
第2層のプリプレグ22は、繊維角度が0度+90度、幅が2.5cm、長さが90.0cm、層数2、面積%が3.7%である。
第3層のプリプレグ23は、繊維角度が0度+90度(クロス繊維)、幅が7.5cm、長さが166.0cm、層数2、面積%が20.7%である。
第4−1層のプリプレグ24−aは、繊維角度が0度、幅が1.0cm、長さが30.5cm、層数4、面積%が1.0%である。
第4−2層のプリプレグ24−bは、繊維角度が0度、幅が1.0cm、長さが85.0cm、層数4、面積%が2.8%である。
第4−3層のプリプレグ24−cは、繊維角度が0度+90度(クロス繊維)、幅が3.0cm、長さが6.0cm、層数4、面積%が0.6%である。
第5層のプリプレグ25は、繊維角度が30度、幅が7.5cm、長さが151.0cm、層数2、面積%が18.8%である。
第6層のプリプレグ26は、ヘッド部のサイドの位置の繊維角度が45度、他の繊維角度は10度、幅が3.0cm、長さが126.0cm、層数4、面積%が12.5%である。
即ち、プリプレグ26の面積の半分を45度、半分を10度とした。
第7層のプリプレグ27は、繊維角度が30度、幅が9.0cm、長さが120.0cm、層数2、面積%が17.9%である。
第8層のプリプレグ28は、繊維角度が10度、幅が3.0cm、長さが23.0cm、層数2、面積%が1.1%である。
第9層のプリプレグ29は、繊維角度が30度、幅が2.0cm、長さが6.0cm、層数4、面積%が0.4%である。
上記プリプレグ21〜29を積層し、繊維角度が35度〜55度の範囲のプリプレグの面積%を6.2面積%としている。
【0033】
上記プリプレグ21〜29の積層体20を用い、従来のラケットの成形方法と同じ加熱加圧製法によりラケットフレームを作製している。
即ち、カーボン繊維をエポキシで含浸した各プリプレグ21〜29を、ナイロンチューブを被覆したマンドレル上に積層し配置して、積層体20を形成し、この積層体20(レイアップ)を、マンドレルからナイロンチューブと共に抜き取り、金型にセットした後、ナイロンチューブ内を加圧すると共に金型を加熱してプリプレグを硬化して成形している。
【0034】
上記実施形態では、強化繊維の配向角度が35度〜55度のプリプレグとして、強化繊維の配向角度が45度のプリプレグを用いているが、35度〜55度の範囲であればよい。
また、本実施形態では、繊維角度を35度〜55度としたプリプレグの面積を、全プリプレグの面積合計に対して6.2%としているが、5〜95%の範囲であればよい。
【0035】
このように、プリプレグを積層して形成したラケットフレームは、その側圧剛性を35kgf/cm〜60kgf/cm、打球面剛性を130kgf/cm〜180kgf/cmの範囲とし、打球面剛性と側圧剛性の比(打球面剛性/側圧剛性)の値を2.0〜5.0の範囲としている。
【0036】
以下、本発明のラケットフレームの参考実施例1、2、実施例〜5及び比較例1、2について詳述する。
【0037】
参考実施例、実施例、比較例ともに全て、図1に示すフレーム形状であり、全長を710mm、フレーム最大厚みを29mmとした。
積層構造は下記の表1に示す構造をべース構造とした。この表1に示す構造は表2の比較例1に該当し、参考実施例1、2、実施例〜5、比較例2は、後述するように、一部の層の繊維角度の一部を代えると共に、各層の面積%をそれぞれ変更した。
のように、繊維角度のみを変更し、カーボン繊維/エポキシ樹脂からなる同一のプリプレグを用い、プリプレグの目付量は変更せず、フレーム重量・バランスは全て同じとした。
【0038】
カーボン繊維は、東レ(株)製T−700、M30GC、M40Jを用い、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂を用いた。参考実施例、実施例、比較例の各積層構造の繊維強化プリプレグをナイロンチューブを被覆したマンドレル上に積層し、マンドレルを抜き取って金型にセットした後、加熱加圧成形によりラケットフレームを作製した。
【0039】
【表1】
Figure 0004576591
【0040】
下記の表2に参考実施例1、2、実施例〜5及び比較例1、2のラケットフレームのプリプレグの繊維角度別面積比率(%)、及び後述する実験の測定結果を記載する。
【0041】
【表2】
Figure 0004576591
【0042】
参考実施例1)
前記第1実施形態に該当し、表1に示すベース構造において、6層目(10度)のプリプレグは、ヘッド部のサイド部分の繊維角度を45度に置き換えた。45度の繊維強化プリプレグの面積%を全プリプレグ面積の6.2面積%とした。
【0043】
参考実施例2)
表1に示すベース構造において、6層目(10度)の繊維角度を全て45度に変更し、45度の繊維強化プリプレグを12.5面積%とした。
(実施例3)
表1に示すベース構造において、3層目(0+90度)および6層目(10度)の繊維角度を45度に変更し、45度の繊維強化プリプレグを33.2面積%とした。
(実施例4)
表1に示すベース構造において、1層目(30度)、3層目(0+90度)、5層目(30度)および6層目(10度)の繊維角度を45度に変更し、45度の繊維強化プリプレグを72.4面積%とした。
(実施例5)
表1に示すベース構造において、1層目(30度)、3層目(0+90度)、5層目(30度)、6層目(10度)および7層目(30度)の繊維角度を45度に変更し、45度の繊維強化プリプレグを90.3面積%とした。
【0044】
(比較例1)
表1に示すベース構造とし、45度の繊維強化プリプレグを0とした。
(比較例2)
2層目(0度+90度)(3.7%)のうちの約半分(1.8%)の繊維角度を90度、残り(1.9%)の繊維角度を45度とした。
4−3層目(0度+90度)(0.6%)のうちの約半分(0.3%)の繊維角度を90度、残り(0.3%)の繊維角度を45度とした。
8層目は、表1と同様に、繊維角度が10度で1面積%とした。
9層目は、表1と同様に、繊維角度が30度で0.4面積%とした。
これら以外は、全て繊維角度を45度とし、45度の繊維強化プリプレグの面積%を96.3面積%とした。
【0045】
上記参考実施例1、2、実施例〜5及び、比較例1、2の各ラケットフレームに対して、下記の方法により、側圧剛性、側圧強度、打球面剛性、反発係数を測定し、かつラケットフレームの実打評価を行った。その結果を上記表2に示す。
【0046】
(側圧剛性の測定)
側圧剛性の測定は、図3に示すように、ラケットフレーム1を横向きで打球面Fを垂直方向として、ラケットフレーム1を保持している。この状態で上方のヘッド部3のサイド3bに対して、平板Pにより、80kgfの荷重を加えて、荷重時の変位から、バネ定数を算出し、側圧剛性を測定した。
【0047】
(側圧強度の測定)
図3に示す状態で、平板Pにより、フレームが破壊するまで荷重をかけ、その時の最大荷重値を測定した。
【0048】
(打球面剛性の測定)
打球面剛性(面外方向の剛性)測定は、図4に示すように、ラケットフレーム1を水平に配置し、そのヘッド部3のトップ3aを受け治具61(R15)で支持すると共に、トップ3aから340cm離れた位置で、スロート部4の両側からヨーク7にかけた位置を受け治具62(R15)で支持した。この状態で、受け治具61より受け治具62の方向へ170cm離れた位置に対して、加圧具63(R10)により上方より80kgfの荷重を加えて、荷重時の変位から、バネ定数を算出し、打球面剛性を測定した。
【0049】
(反発係数の測定)
反発係数は、図5に示すように、参考実施例、実施例及び比較例のラケットフレーム1に、ガットを縦60ポンド、横55ポンドの張力で張架し、各ラケットフレームを垂直状態でフリーとなるようにグリップ部を柔らかく固定し、その打球面Fにボール打出機から一定速度V1(30m/s)でテニスボールを打球面に衝突させ、跳ね返ったボールの速度V2を測定した。反発係数は発射速度V1、反発速度V2の比(V2/V1)であり、反発係数が大きい程、ボールの飛びが良いことを示している。
【0050】
(実打評価)
ラケットの飛び性能について、実打後アンケート調査を行った。アンケート調査は、5点満点(多い程良い)で採点し、中・上級者(テニス歴10年以上、現在も週3日以上プレーする条件を満たす)54名の採点結果の平均値により評価を行った。
【0051】
上記表2に示すように、側圧剛性と打球面剛性の変化を剛性比(打球面剛性/側圧剛性)により表している。剛性比が高いほど打球面剛性が高く、側圧剛性が低いということを示す。剛性比が上記2.0〜5.0の範囲であれば、剛性比が大きいほど反発性能が高い評価結果となることが確認できた。
【0052】
比較例1は、表1のベースとなる積層構造であり、繊維角度を45度とした繊維強化プリプレグを使用していない。繊維角度が30度や10度のプリプレグが多いため、剛性比は小さく、反発性能も良いとは言えない。
また、比較例2のように、繊維角度45度のプリプレグの面積%が96.3面積%と、全プリプレグの大半を占め、繊維角度0度の層が無いため、側圧剛性値が低下し、それに伴いラケットフレーム強度の低下を招くことになり、好ましくない。特に、側圧強度が低く、剛性比が高すぎると、面内の変形と面外の変形のタイミングが合わず、反発が高くならない。
【0053】
参考実施例1は、繊維角度の小さい6層目(10度)において、ヘッド部のサイド部分にプリプレグ面積の半分を、45度の繊維角度のものに置き換えた。その結果、打球面剛性が大きく向上し、剛性比も著しく向上した。
参考実施例2は、6層目の全てを45度の繊維角度のものに置き換えているが、繊維角度45度の部分が、グリップ部からシャフト部の位置となるため、反発係数は、参考実施例1ほど大きくは向上しなかった。
実施例3は、3層目(0+90度)および6層目(10度)の繊維角度を45度に置き換えたところ、大幅に剛性比が向上し、反発性能が向上した。
実施例4、5は、繊維角度を45度に置き換えた量が大きいため、反発性能の向上は非常に大きいことを確認できた。
即ち、参考実施例1、2より実施例3〜5は、反発性能が大きかった。
【0054】
従って、側圧剛性が35kgf/cm〜60kgf/cm好ましくは40kgf/cm〜55kgf/cm、打球面剛性が130kgf/cm〜180kgf/cm、好ましくは135kgf/cm〜175kgf/cmの範囲にあり、打球面剛性/側圧剛性の値が実施例3〜実施例5の範囲である3.55〜4.52の範囲にある時、ラケットフレームの反発性能が向上することが確認できた。
【0055】
さらに、同じ重量・バランスで、これらの剛性比を向上させるには、繊維角度を35度〜55度、好ましくは40度〜50度の範囲で、ヘッド部の少なくとも一部に、5〜95面積%使用することにより、効率よく反発性能を向上させることが出来ることも確認できた。
【0056】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明は、側圧剛性(打球面の面内方向の剛性)が低く、打球面剛性(打球面の面外方向の剛性)が高いラケットフレームを提供することで、ラケットフレームの重量・形状を変えずに反発性能を向上させることができる。さらに、重量を変えずに、これらの剛性値を調整するには、強化繊維の配向角度を変えることが有効であり、これにより、重量を増加させずに、高反発性を有するラケットフレームを得ることができる。
【0057】
具体的には、ラケットフレームのヘッド部の一部分に、強化繊維の配向角度が、ヘッド部の周方向に対し、35度〜55度の方向になるように、強化繊維を配置した繊維強化プリプレグを積層し、上記繊維強化プリプレグが全ての繊維強化プリプレグに対して、5〜95面積%とする。この時、側圧剛性は35kgf/cm〜60kgf/cm、打球面剛性は130kgf/cm〜180kgf/cm、打球面剛性と側圧剛性の比(打球面剛性/側圧剛性)の値は3.55〜4.52の範囲とすることで、ラケットフレームの反発性能を向上させると共に、操作性、耐久性を低下させず、かつラケットフレームの軽量化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態のラケットフレームを示す平面図である。
【図2】プリプレグの積層配置及び繊維方向を示す概略図である。
【図3】ラケットフレームの側圧剛性の測定方法を示す概略図である。
【図4】ラケットフレームの打球面剛性の測定方法を示す概略図である。
【図5】ラケットフレームの反発係数の測定方法を示す概略図である。
【符号の説明】
1 ラケットフレーム
2 フレーム本体
3 ヘッド部
21〜29 プリプレグ

Claims (1)

  1. 繊維強化プリプレグの積層体からなる中空パイプを連続させて形成してなるラケットフレームであって、
    上記ラケットフレームの打球面を囲むヘッド部を時計面と見てトップを12時とすると、1時〜5時、7時〜11時の範囲内の両サイドに、強化繊維の配向角度を上記パイプの長さ方向(軸線方向)に対して35度〜55度とした繊維強化プリプレグを配置し、かつ、上記強化繊維の配向角度を35度〜55度とした繊維強化プリプレグを繊維方向の配向角度を軸線方向に対して0度、10度または30度の一方向繊維強化プリプレグと0度と90度の繊維をクロスさせた二方向繊維強化プリプレグの間に配置し、かつ、該35度〜55度の角度を備えた繊維強化プリプレグの面積を、上記パイプを構成する全繊維強化プリプレグの面積合計に対して5〜95%とし、
    打球面の面内方向の剛性に相当する側圧剛性を35kgf/cm〜60kgf/cm、打球面の面外方向の剛性である打球面剛性を130kgf/cm〜180kgf/cmの範囲とし、打球面剛性と側圧剛性の比(打球面剛性/側圧剛性)の値を3.55〜4.52の範囲に設定していることを特徴とするラケットフレーム。
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