JP4576519B2 - 抗菌性粉末及び抗菌性積層体並びにそれらの製造方法 - Google Patents

抗菌性粉末及び抗菌性積層体並びにそれらの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体或いは液体中の細菌、ウィルス、動植物細胞等を吸着し、捕捉して、死滅させる作用を有する抗菌性粉末及び抗菌性積層体並びにそれらの製造方法に関する。更に詳しくは、細菌、ウィルス、動植物細胞等を吸着する性能に優れ、且つ銀化合物等の抗菌性が効率的に、且つ十分に発揮される抗菌性粉末及び抗菌性積層体、並びにそれらを容易に、且つ安定して製造する方法に関する。これらの抗菌性粉末は有機樹脂等と混合されて抗菌性材料として利用され、また抗菌性積層体は各種の医療材料、濾過材、及び医療用具等として利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、銀、銅及び亜鉛等の金属、並びにこれらの塩及びイオン等が優れた抗菌性を有することが知られており、これらの金属等と水酸アパタイトとを組み合わせた抗菌性粉末も知られている。例えば、(1)抗菌性を有する金属イオンを含有する溶液に水酸アパタイトを添加し、金属イオンを水酸アパタイトのカルシウムイオンとイオン交換させる方法、(2)水酸アパタイトの優れた吸着性能を利用して、金属イオン等を物理的に担持させる方法、(3)水酸アパタイトと金属等との共沈物を得、この共沈物を焼成し、粉砕する方法(特開平4−163308号公報及び特開平4−142349号公報等)等が提案されている。
【0003】
しかし、(1)では、カルシウムイオンと金属イオンのイオン半径の差により水酸アパタイトの結晶構造が歪んだり破壊されたりするため、水酸アパタイトそのものが変質し吸着性能等が低下する。また、(2)では、担持された金属等が比較的脱落し易く、長期に渡って使用することができない。更に、(3)では、焼成により金属等を安定化させることができるが、この焼結体を均質な粉末にするのは容易なことではない。
【0004】
この他、金属等を抗菌剤として利用した抗菌性材料として、特公昭63−54013号公報には、ゼオライトに金属イオンを担持させ、更にこれを有機ポリマーに担持させたものが記載されている。しかし、この抗菌性材料では特定のゼオライトを使用する必要があり、しかも金属等の担持量にも制限があり、また、このゼオライトを有機ポリマーに多量に担持させることも困難である。
【0005】
更に、このゼオライトよりも多くの金属イオンを担持させることができ、且つその担持量の調整が容易である水酸アパタイトを担体として利用する技術が、特開平3−137298号公報、特開平4−142349号公報及び特開平4−163308号公報等において開示されている。しかし、それらの技術では、金属等を担持させた水酸アパタイト粉末が樹脂等に配合されているため、樹脂等の内部に含有されている、或いはその一部が樹脂等によって覆われている水酸アパタイト粉末に担持されている金属等は抗菌性に寄与せず、表面に存在する金属等のみが抗菌剤として機能する。従って、十分な抗菌性を得るためには多量の粉末を配合する必要があり、樹脂等の本来の物性が低下する傾向にある。また、表面に存在する水酸アパタイト粉末は脱落し易いといった問題もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決するものであり、細菌、ウイルス及び動植物細胞等を吸着し、捕捉する性能が高く、優れた抗菌性を有し、且つその抗菌性が長期に渡って維持され、各種の用途において有用な抗菌性粉末及び抗菌性積層体を提供することを目的とする。また、本発明は、これら優れた抗菌性を有し、多くの用途において使用することができる抗菌性粉末及び抗菌性積層体を容易に、且つ安定して得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1発明の抗菌性粉末は、核と、該核の表面に形成される外層とを備え、該核は第1銀化合物を含み、該外層は、第2銀化合物、金属銀及び水酸アパタイトからなり、該第2銀化合物は、該核に含まれる該第1銀化合物のうちの一部が、該外層を形成させる工程において反応し、生成したものであることを特徴とする。
【0008】
上記「核」はリン酸銀等の上記「第1銀化合物」を含み、その他、リン酸三カルシウム、水酸アパタイト前駆体及び水酸アパタイト等のリン酸カルシウム化合物を含有している。この核の平均粒径は0.1〜5μm、特に0.5〜2μm程度である。この第1銀化合物の種類は特に限定されないが、核の生成工程においてリン酸イオンを含む溶液が使用されるため、リン酸銀等が含まれることになる。
【0009】
上記「外層」は、塩化銀等の上記「第2銀化合物」を含む上記「水酸アパタイト」により構成されている。この外層の平均厚さは、0.05〜1μm、特に0.1〜0.5μmであることが好ましい。第2銀化合物は、核に含まれる第1銀化合物のうちの一部が、外層を形成させる工程において反応し、生成するものである。この工程において塩素イオンを含む溶液を使用した場合は、第2銀化合物は塩化銀となる。また、第2銀化合物は、通常、経時的に還元され、金属銀が生成する。
【0010】
この外層に含まれる第2銀化合物及びこの第2銀化合物から生成する金属銀の含有量の合計は特に限定されないが、外層を100重量部とした場合に、10〜90重量部、特に20〜80重量部、更には30〜70重量部であることが好ましい。第2銀化合物及び金属銀の含有量の合計がこの範囲であれば、十分な抗菌性を有する粉末とすることができる。また、抗菌性粉末に含まれる第1銀化合物、第2銀化合物及び金属銀の含有量の合計も特に限定されず、抗菌性粉末を100重量部とした場合に、10〜90重量部、特に20〜80重量部、更には30〜70重量部であることが好ましい。これらの含有量の合計がこの範囲であれば十分な抗菌性を有する粉末とすることができる。
【0011】
第2発明の抗菌性粉末の製造方法は、第1発明の抗菌性粉末を製造するための抗菌性粉末の製造方法であって、少なくとも銀イオン及びカルシウムイオンを含み、且つ該銀イオン及び該カルシウムイオンと反応し沈殿を生ずるイオンを実質的に含まない第1溶液と、少なくともリン酸イオンを含み、且つカルシウムイオンを含まないpH8以上の第2溶液とを混合し、その後、この混合溶液中に生成するリン酸銀とリン酸カルシウム化合物とを含む粉末を、飽和濃度乃至過飽和濃度の水酸アパタイト成分を含む第3溶液と接触させることを特徴とする。
【0012】
この第2発明では、第1溶液と第2溶液とを混合することにより、第1発明における核が形成される。また、リン酸銀等を含む粉末と第3溶液とを接触させることにより、第1発明における外層が形成される。
【0013】
上記「第1溶液」は上記「銀イオン」及び上記「カルシウムイオン」を含んでおり、硝酸イオン、水酸イオン等の他のイオンを含んでいてもよい。この第1溶液は、硝酸銀、過塩素酸銀、硝酸カルシウム、過塩素酸カルシウム等を、水に溶解させることにより調製することができる。但し、この第1溶液には、塩素イオン、硫酸イオン及び炭酸イオン等のように、銀イオン又はカルシウムイオンと反応し沈殿を生ずるイオン等が実質的に含まれていてはならない。これらのイオン等が第1溶液に含まれている場合は、難溶性乃至不溶性の沈殿等が生成し、核を形成するために十分な銀イオン及びカルシウムイオンを含む溶液とすることができないからであるが、核の形成に影響を及ぼさない程度の極めて僅かな量であれば含まれていてもよい。
【0014】
この第1溶液に含まれる銀イオンのカルシウムイオンに対するモル比は、0.01〜50、特に0.1〜10、更には0.5〜5であることが好ましい。このモル比が0.01未満であると、第1銀化合物が十分に生成せず、優れた抗菌性を有する粉末とすることができず、好ましくない。一方、このモル比が50を超えると、第1銀化合物が過剰に生成し、リン酸カルシウム化合物の生成が不十分となるため好ましくない。
【0015】
上記「第2溶液」は、上記「リン酸イオン」を含み、カルシウムイオンを実質的に含まず、「pHが8以上」の溶液であり、硝酸イオン、硫酸イオン等を含んでいてもよい。この第2溶液は、K2HPO4、(NH4)2HPO4等を水に溶解させることにより調製することができる。但し、この第2溶液には、カルシウムイオン、銀イオンなどのリン酸イオンと反応し沈殿を生ずるイオンなどが実質的に含まれていてはならない。これらのイオン等が第2溶液に含まれている場合は、難溶性乃至不溶性の沈殿等が生成し、核を形成するために十分な銀イオン及びカルシウムイオンを含む溶液とすることができないからであるが、核の形成に影響を及ぼさない程度の極めて僅かな量であれば含まれていてもよい。
【0016】
この第2溶液に含まれるリン酸イオンは、1〜1000ミリモル/リットル、特に10〜100ミリモル/リットル、更には30〜70ミリモル/リットルであることが好ましく、この範囲の含有量であれば、リン酸銀及びリン酸カルシウム化合物が十分に生成する。
【0017】
また、第2溶液のpHは8.5以上、特に9以上であることが好ましい。このように比較的高いpHを有する第2溶液であれば、リン酸銀及びリン酸カルシウム化合物を十分に生成させることができる。尚、この第1溶液と第2溶液は、いずれか一方の溶液を撹拌しながら、他方の溶液を適当な滴下速度で滴下し、穏やかに混合することが好ましい。
【0018】
上記「第3溶液」には、「飽和濃度」乃至「過飽和濃度」の上記「水酸アパタイト成分」が含まれている。この飽和濃度とは、水酸アパタイトが溶解し得る最高の平衡濃度を意味し、過飽和濃度とは、この飽和濃度を超えて更に濃度を高めた場合に溶液中に沈殿が均一に生じ始める濃度を意味する。
【0019】
この第3溶液と粉末とを「接触」させる時間は1〜200時間、特に5〜100時間、更には10〜50時間とすることが好ましい。この範囲の接触時間であれば、十分な吸着性及び抗菌性を有する外層が形成される。また、第3溶液と粉末とを接触させる方法は特に限定されないが、粉末を第3溶液に浸漬する方法が、簡便であり、且つ第3溶液と粉末とを確実に接触させることができるため好ましい。尚、第3溶液において水酸アパタイトが成長する際に、炭酸イオンを取り込んで一部が炭酸アパタイトとなることもあるが、本発明においては何ら問題となることはない。
【0020】
また、この第3溶液には、第3発明のように塩素イオンが含まれていることが好ましい。第1発明における第1銀化合物であるリン酸銀等と、第3溶液とを接触させた場合、塩素イオンを含む第3溶液を使用すれば、この銀イオンは、より結合し易い塩素イオンと反応し、塩化銀が形成され、特に優れた抗菌性を有する粉末とすることができる。この塩素イオンの含有量は1〜500ミリモル/リットル、特に10〜400ミリモル/リットル、更には50〜300ミリモル/リットルであることが好ましい。この含有量が1ミリモル/リットル未満である場合は、塩化銀が十分に形成されず、好ましくない。
【0021】
第4発明の抗菌性積層体は、基体、該基体の表面に形成される第1皮膜及び該第1皮膜の表面に形成される第2皮膜を備え、該第1皮膜は第1銀化合物を含み、該第2皮膜は、第2銀化合物を含む水酸アパタイトからなり、該第2銀化合物は、該第1皮膜に含まれる該第1銀化合物のうちの一部が、該第2皮膜を形成させる工程において反応し、生成したものであることを特徴とする。
【0022】
上記「基体」としては、合成樹脂等からなる各種の成形体を使用することができる。また、織布、不織布、編物及びフェルト等の天然繊維及び合成繊維等からなる布地、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン等の各種の樹脂からなる発泡体、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂からなる多孔質フィルム及び多孔質中空糸膜等を用いることもできる。これら透過孔を有する基体、或いは少なくとも表面に凹部を有する基体を使用すれば、各種の濾過材等として有用な抗菌性積層体とすることができる。
【0023】
尚、基体の表面は親水性であることが好ましく、表面が疎水性であると第1、第2及び第3溶液が濡れ難く、リン酸カルシウム化合物及び水酸アパタイト等が十分に生成しないことがある。そのため、表面が疎水性である基体を用いる場合は、表面に親水基を導入する、或いは表面を予め粗化しておく等の方法によって親水性を高めることが好ましい。
【0024】
上記「第1皮膜」には、リン酸銀等の第1銀化合物が含まれており、その他、リン酸三カルシウム、水酸アパタイト前駆体及び水酸アパタイト等のリン酸カルシウム化合物が含まれている。この第1皮膜の厚さは0.01〜1μm、特に0.05〜0.1μm程度である。
【0025】
上記「第2皮膜」は、塩化銀等の第2銀化合物を含む水酸アパタイトにより構成されている。第2銀化合物が第1銀化合物から生成するものであること、塩素イオンを含む溶液を用いた場合は、この第2銀化合物が塩化銀であること、及び塩化銀等の第2銀化合物の一部が経時的に還元され、金属銀が生成することは第1発明の場合と同様である。
【0026】
第1皮膜と第2被膜の合計厚さは、第5発明のように、0.1〜30μmであり、この合計厚さは、特に1〜25μm、更には5〜20μmであることが好ましい。合計厚さが0.1μm未満では、十分な抗菌性を有する積層体とすることができず、30μmを超える場合は、第1及び第2皮膜が基体の表面から脱落し易くなるため好ましくない。
【0027】
また、第2皮膜に含まれる第2銀化合物及び金属銀の含有量の合計は特に限定されず、この第2皮膜を100重量部とした場合に、10〜90重量部、特に20〜80重量部、更には30〜70重量部であることが好ましい。第2銀化合物及び金属銀の含有量の合計がこの範囲であれば十分な抗菌性を有する積層体とすることができる。更に、この抗菌性積層体に含まれる第1銀化合物、第2銀化合物及び金属銀の含有量の合計も特に限定されず、抗菌性積層体を100重量部とした場合に、10〜90重量部、特に20〜80重量部、更には30〜70重量部であることが好ましい。これらの含有量の合計がこの範囲であれば十分な抗菌性を有する積層体とすることができる。
【0028】
第6発明の抗菌性積層体の製造方法は、第4発明又は第5発明の抗菌性積層体を製造するための抗菌性積層体の製造方法であって、基体を、少なくとも銀イオン及びカルシウムイオンを含み、且つ該銀イオン及び該カルシウムイオンと反応し沈殿を生ずるイオンを実質的に含まない第1溶液に接触させた後、この基体を乾燥させ、その後、乾燥された基体を、少なくともリン酸イオンを含み、且つカルシウムイオンを含まないpH8以上の第2溶液と接触させ、次いで、この基体を、飽和濃度乃至過飽和濃度の水酸アパタイト成分を含む第3溶液と接触させることを特徴とする。
【0029】
この第6発明では、基体を、第1溶液と第2溶液に接触させることにより、第4発明における第1皮膜が形成される。また、その表面にリン酸銀等を含む第1皮膜が形成された基体と第3溶液とを接触させることにより、第4発明における第2皮膜が形成される。
【0030】
この第6発明において、第1溶液、第2溶液及び第3溶液としては、第2発明におけると同様のものを使用することができる。また、第7発明のように、第3溶液に塩素イオンが含まれていることが好ましい。更に、基体を第1及び第2溶液と接触させる方法としては、これら溶液に基体を攪拌等をせずに穏やかに浸漬する方法が好ましい。基体と第2溶液との接触時、基体の表面に付着している硝酸カルシウム、硝酸銀等からオンが生成し、溶液中に拡散しようとするが、基体表面では局所的にこれらのイオンの濃度が高くなり過飽和状態となっているため、第2溶液に含まれるリン酸イオンと反応してリン酸銀等の第1銀化合物及びリン酸カルシウム化合物が析出する。攪拌等の操作をした場合は、この局所的な過飽和状態が失われ、第1銀化合物及びリン酸カルシウム化合物が析出し難くなり、好ましくない。
【0031】
【作用】
本発明の抗菌性粉末及び抗菌性積層体は、ゼオライト又は水酸アパタイト等に銀化合物を担持させた従来のものとは異なり、粉末及び積層体に水酸アパタイト結晶とともに銀化合物及び金属銀が含まれており、且つこれら銀化合物等と水酸アパタイト結晶とが均一に分散し、混在しているものと考えられる。そのため、銀化合物を担持させた従来のものと比べ、細菌等を吸着し易く、且つ優れた抗菌性を有する。また、水酸アパアタイト結晶とともに銀化合物等が均一に分散されているため、粒径の小さい粉末、或いは極く薄い皮膜であっても、優れた抗菌性が得られる。更に、担持されている場合とは異なり、銀化合物等が容易に脱落することがない。また、抗菌性の粉末とすることもでき、抗菌性の皮膜を有する積層体とすることもできるため、医療材料、濾過材及び医療用具等、各種の用途において有用である。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例によって更に詳しく説明する。
実施例1
▲1▼抗菌性粉末の製造
硝酸銀25ミリモル/リットル及び硝酸カルシウム50ミリモル/リットルを含む第1水溶液に、リン酸水素二カリウム50ミリモル/リットルを含み、pHが8.9である第2水溶液を滴下し、銀化合物とリン酸カルシウム化合物との共沈物を含有する懸濁液を得た。この懸濁液を孔径0.2μmのフィルタによって濾過し、核となる粉末を得た。この粉末を乳鉢で十分に微細化した後、その0.04gを表1の組成を有する水溶液2000ミリリットルに浸漬し、36.5℃の恒温槽に7日間静置した。その後、再び孔径0.2μmのフィルタによって濾過し、得られた粉末を十分に水洗し、60℃の恒温槽によって乾燥した。
【0033】
【表1】
Figure 0004576519
【0034】
▲2▼抗菌性粉末のX線回折
▲1▼において得られた抗菌性粉末のX線回折を測定した。図1は、そのチャートである。このチャートより塩化銀及び水酸アパタイトが含まれていることが分かる。
【0035】
実施例2
▲1▼抗菌性皮膜を有する不織布の製造(十分な硝酸銀を含有する第1溶液を使用した場合)
セルロース繊維からなる不織布0.04gを、硝酸銀50ミリモル/リットル及び硝酸カルシウム50ミリモル/リットルを含有する第1水溶液に1時間浸漬した後、この水溶液より引き上げ、60℃の恒温槽において乾燥させた。その後、リン酸水素二カリウム50ミリモル/リットルを含み、pHが8.9である第2水溶液に1時間浸漬し、この水溶液より引き上げ、水洗した後、60℃の恒温槽において乾燥させた。次いで、表1の組成を有する水溶液150ミリリットルに浸漬し、36.5℃の恒温槽に7日間静置した後、この水溶液から引き上げ、水洗し、60℃の恒温槽において乾燥させた。
【0036】
▲2▼不織布に形成された皮膜のX線回折
▲1▼において得られた抗菌性不織布に形成された皮膜のX線回折を測定した。図2は、そのチャートである。このチャートより皮膜には塩化銀、金属銀及び水酸アパタイトが含まれていることが分かる。
【0037】
▲3▼抗菌性不織布の大腸菌に対する抗菌性の評価
▲1▼において得られた抗菌性不織布0.05gを、初期菌数1.3×106個の大腸菌を含む培養液に浸漬し、35℃で18時間保持した。比較のため、同様の培養液にセルロース繊維0.05gを浸漬し、同じ条件で保持した。所定の時間が経過した後、両培養液の生存菌数を測定したところ、抗菌性不織布を浸漬した培養液の生存菌数は20個以下であった。一方、セルロース繊維を浸漬した培養液の生存菌数は2.0×108個に増加していた。この結果から抗菌性不織布は大腸菌に対して十分な抗菌性を有していることが分かる。
【0038】
▲4▼抗菌性不織布の黄色ブドウ球菌に対する抗菌性の評価
▲1▼において得られた抗菌性不織布0.05gを、初期菌数6.1×105個の黄色ブドウ球菌を含む培養液に浸漬し、35℃で18時間保持した。比較のため、同様の培養液にセルロース繊維0.05gを浸漬し、同じ条件で保持した。所定の時間が経過した後、両培養液の生存菌数を測定したところ、抗菌性不織布を浸漬した培養液の生存菌数は20個以下であった。一方、セルロース繊維を浸漬した培養液の生存菌数は2.0×107個に増加していた。この結果から抗菌性不織布は黄色ブドウ球菌に対して十分な抗菌性を有していることが分かる。
【0039】
実施例3
▲1▼抗菌性不織布の製造(硝酸銀が少量である第1溶液を使用した場合)
硝酸銀25ミリモル/リットル及び硝酸カルシウム50ミリモル/リットルを含む第1水溶液を使用した他は実施例2と同様にして抗菌性不織布を製造した。
【0040】
▲2▼抗菌性不織布の大腸菌に対する抗菌性評価
実施例2の▲3▼と同様にして▲1▼において得られた抗菌性不織布の大腸菌に対する抗菌性を評価したところ、培養液の生存菌数は20個以下であった。この結果から銀化合物の含有量が少量であっても、この抗菌性不織布は十分な抗菌性を有していることが分かる。
【0041】
▲3▼抗菌性不織布の黄色ブドウ球菌に対する抗菌性評価
実施例2の▲3▼と同様にして▲1▼において得られた抗菌性不織布の黄色ブドウ球菌に対する抗菌性を評価したところ、培養液の生存菌数は20個以下であった。この結果から銀化合物の含有量が少量であっても、この抗菌性不織布は十分な抗菌性を有していることが分かる。
【0042】
比較例1
▲1▼皮膜を有する不織布の製造(硝酸銀を含有していない第1溶液を使用した場合)
硝酸カルシウム50ミリモル/リットルのみを含む第1溶液を使用した他は実施例2と同様にして皮膜を有する不織布を製造した。
【0043】
▲2▼皮膜を有する不織布のの大腸菌に対する抗菌性評価
実施例2の▲3▼と同様にして▲1▼において得られた皮膜を有する不織布の大腸菌に対する抗菌性を評価したところ、培養液の生存菌数は1.7×108個に増加していた。この結果から銀化合物を含んでいない場合は、大腸菌に対してまったく抗菌性を有さないことが分かる。
【0044】
▲3▼皮膜を有する不織布の黄色ブドウ球菌に対する抗菌性評価
実施例2の▲3▼と同様にして▲1▼において得られた皮膜を有する不織布の黄色ブドウ球菌に対する抗菌性を評価したところ、培養液の生存菌数は2.0×107個に増加していた。この結果から銀化合物を含んでいない場合は、黄色ブドウ球菌に対してもまったく抗菌性を有していないことが分かる。
【0045】
比較例2
▲1▼抗菌性織布の製造(銀化合物が担持された水酸アパタイトを含む繊維からなる織布を用いた場合)
1リットルの蒸留水に、水酸アパタイト粉末100gと硝酸銀3.2gとを添加し、攪拌し、濾過した後、乾燥させて水酸アパタイトに銀を担持させた抗菌性アパタイト粉末を得た。その後、10重量%のメチルアクリレート構成単位、1重量%のアクリル酸スルホン酸ソーダ構成単位及び89重量%のアクリロニトリル構成単位からなる共重合体の25重量%ジメチルホルムアミド溶液に、共重合体100重量部に対して5重量部の銀が担持された水酸アパタイト粉末を配合し、混合した。次いで、常法に従って湿式紡糸し、アクリル系繊維を得、このアクリル系繊維からなる抗菌性織布を製造した。
【0046】
▲2▼抗菌性織布の大腸菌に対する抗菌性評価
▲1▼において得られた抗菌性織布0.05gを使用し、実施例2の▲3▼と同様にして大腸菌に対する抗菌性を評価したところ、培養液の生存菌数は3.4×102個に減少していたが、この結果は実施例2及び3の結果に比べて大きく劣っている。このような差異は、銀を有していても、この銀がどのような状態で担持、或いは含有されているかによって生ずるものであり、本発明の方法によれば、より優れた抗菌性を有する抗菌性粉末及び抗菌性積層体が得られることが分かる。
【0047】
尚、本発明においては、上記の具体的な実施例に記載されたものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。例えば、実施例に記載された抗菌性粉末及び抗菌性積層体は、緑膿菌等、大腸菌及び黄色ブドウ球菌以外の細菌或いはカンジダ、黒麹カビ等のカビ等に対しても有効である。
【0048】
【発明の効果】
第1発明によれば、優れた抗菌性を有し、各種の用途において利用することができる抗菌性粉末を得ることができる。また、第4発明によれば、その表面に、優れた抗菌性が長期に渡って維持される抗菌性皮膜が形成された積層体とすることができ、医療用具、濾過材等として有用な抗菌性積層体を得ることができる。
更に、第2及び第6発明によれば、それぞれ第1発明の抗菌性粉末、或いは第4発明の抗菌性積層体を、容易に、且つ安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の抗菌性粉末のX線回折チャートである。
【図2】実施例2の抗菌性積層体のX線回折チャートである。

Claims (7)

  1. 核と、該核の表面に形成される外層とを備え、該核は第1銀化合物を含み、該外層は、第2銀化合物を含む水酸アパタイトからなり、
    該第2銀化合物は、該核に含まれる該第1銀化合物のうちの一部が、該外層を形成させる工程において反応し、生成したものであることを特徴とする抗菌性粉末。
  2. 請求項1に記載の抗菌性粉末を製造するための抗菌性粉末の製造方法であって、
    少なくとも銀イオン及びカルシウムイオンを含み、且つ該銀イオン及び該カルシウムイオンと反応し沈殿を生ずるイオンを実質的に含まない第1溶液と、少なくともリン酸イオンを含み、且つカルシウムイオンを実質的に含まないpH8以上の第2溶液とを混合し、その後、この混合溶液中に生成するリン酸銀及びリン酸カルシウム化合物を含む粉末を、飽和濃度乃至過飽和濃度の水酸アパタイト成分を含む第3溶液と接触させることを特徴とする抗菌性粉末の製造方法。
  3. 上記第3溶液に塩素イオンが含まれている請求項2記載の抗菌性粉末の製造方法。
  4. 基体、該基体の表面に形成される第1皮膜及び該第1皮膜の表面に形成される第2皮膜を備え、該第1皮膜は第1銀化合物を含み、該第2皮膜は、第2銀化合物を含む水酸アパタイトからなり、
    該第2銀化合物は、該第1皮膜に含まれる該第1銀化合物のうちの一部が、該第2皮膜を形成させる工程において反応し、生成したものであることを特徴とする抗菌性積層体。
  5. 上記第1皮膜及び上記第2皮膜の合計厚さが0.1〜30μmである請求項4記載の抗菌性積層体。
  6. 請求項4又は5に記載の抗菌性積層体を製造するための抗菌性積層体の製造方法であって、
    基体を、少なくとも銀イオン及びカルシウムイオンを含み、且つ該銀イオン及び該カルシウムイオンと反応し沈殿を生ずるイオンを実質的に含まない第1溶液に接触させた後、この基体を乾燥させ、その後、乾燥された基体を、少なくともリン酸イオンを含み、且つカルシウムイオンを実質的に含まないpH8以上の第2溶液と接触させ、次いで、この基体を、飽和濃度乃至過飽和濃度の水酸アパタイト成分を含む第3溶液と接触させることを特徴とする抗菌性積層体の製造方法。
  7. 上記第3溶液に塩素イオンが含まれている請求項6記載の抗菌性積層体の製造方法。
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