JP4359363B2 - 水酸アパタイト皮膜の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水酸アパタイト皮膜の製造方法に関し、詳しくは、基材表面に水酸アパタイト結晶を析出させて水酸アパタイト皮膜を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
古くより、活性炭、ゼオライト、粘土等の多孔性物質などは固体物質捕捉用フィルタとして知られており、特に活性炭やゼオライトは悪臭成分等の特定気体を吸着する物質として使用されている。また、水酸アパタイト等のリン酸カルシウム系化合物がウィルスや細菌、悪臭成分などを吸着する性質を利用したリン酸カルシウム系フィルタ(特開昭61−235752号公報)が既に知られている。さらに、繊維や紙等の有機高分子基材の表面にリン酸カルシウム系粒子を結合剤を使って担持したもの(特開平3−207414号公報、同5−115572号公報、同6−106012号公報)、あるいは予め繊維パルプとリン酸カルシウム系粒子とを混合したのち抄紙して複合フィルタとしたものも知られている。
【0003】
また最近では、生体内の骨形成反応を模倣して、水酸アパタイト結晶の成長するサイトを導入した有機高分子基材を、細胞を含まず無機イオン濃度だけを人の体液に等しくした擬似体液に浸漬することにより、基材表面に水酸アパタイト結晶を成長させて複合繊維製品としたものが報告されている(特公平7−24686号公報、特開平8−260348号公報)。
このように生体内の骨形成反応を模倣して調製した複合繊維製品は、基材を構成する繊維の表面全体に水酸アパタイトが被覆されているので、水酸アパタイトと樹脂とを混ぜて紡糸した複合繊維製品などに比べてウィルスや細菌、悪臭成分の吸着効率が高く有用であると考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように生体内の骨形成反応を模倣して複合繊維製品を製造するにあたって、基材表面に水酸アパタイトを析出させる際、従来は所定量の水溶液に基材を一枚づつ浸漬する方法が採られてきた。しかし、この方法では手間がかかり量産性が悪いため製品の製造コストが高くなる。
【0005】
そこで、一度に多数枚の複合繊維製品を調製する方法として、多数枚の(例えば10枚の)基材を重ねて水溶液に浸漬することが考えられる。しかしこの方法によると、拡散してきたイオンが内側の基材(例えば上から5枚目、6枚目など)に到達する以前に、このイオンが外側の基材(例えば上から1枚目、2枚目など)で水酸アパタイトの析出を生じてしまうため、内側に位置する基材と外側に位置する基材とでは水酸アパタイトの析出量が大きく異なることとなる。すなわち、この方法によってすべての基材に同様な水酸アパタイト皮膜を形成することは困難であった。
【0006】
また、ある程度の厚みを有する基材に水酸アパタイト皮膜を形成しようとすると、拡散してきたイオンが基材の外形表面に到達した段階で析出してしまう。このため、この外形表面付近では水酸アパタイトが多く析出するが、厚み方向の中心部に向かうにつれて析出量が少なくなり、基材の厚み全体にわたって同様な水酸アパタイト皮膜を形成することは困難であった。
【0007】
本発明の目的は、一度に多数の基材表面に水酸アパタイト皮膜を形成可能であり、また基材の厚み全体にわたって水酸アパタイト皮膜を形成できる水酸アパタイト皮膜の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、水酸アパタイト結晶が成長するサイトが導入された多孔質基材を、水酸アパタイト成分が溶解した水溶液に単に浸漬するのではなく、この多孔質基材に水溶液を強制的に通過させながら水酸アパタイト結晶を析出させることにより、上記課題が解決されることを見出した。
【0009】
請求項1記載の水酸アパタイト皮膜の製造方法は、水酸アパタイト結晶が成長するサイトが導入された多孔質基材に、水酸アパタイト成分が溶解した水溶液を通過させて、上記多孔質基材の表面に水酸アパタイト結晶を析出させることを特徴とする。
更に、水酸アパタイト成分が溶解した水溶液の多孔質基材に対する通過速度は0.5〜70ml/min・cm 2 であるとともに、水溶液を、複数の多孔質基材に順次通過させ、複数の多孔質基材に順次通過させた水溶液を循環させて、複数の多孔質基材に繰り返し順次通過させることを特徴とする。
【0010】
本発明の製造方法においては、水溶液を透過可能な多孔質基材を使用する。この多孔質基材の例としては、織物、不織布、フェルト、編物などの繊維類、樹脂発泡体、多孔質フィルムおよび多孔質中空糸膜が挙げられる。織物、不織布、編物、フェルトとしては各種の天然繊維、合成繊維または半合成繊維からなるものを使用することができる。また樹脂発泡体としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン等の樹脂からなるものを使用することができ、多孔質フィルムおよび多孔質中空糸膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂からなるものを使用することができる。
【0011】
上記多孔質基材の「表面」とは、上記基材が織物、不織布、フェルトまたは編物等である場合はこれらを構成する繊維の表面であり、上記基材が樹脂発泡体、多孔質フィルムまたは多孔質中空糸膜である場合は各々の基材を構成する発泡体、フィルムまたは中空糸膜等の表面であって、この表面は連通した透過孔および有底の穴等の表面も含むものとする。
【0012】
なお、多孔質基材としては親水性材料からなるものを使用することが好ましい。ポリエチレン、ポリプロピレンなどの親水性に乏しい樹脂などからなる基材を使用する場合には、その表面に親水基を導入する、表面を粗面化するなどの親水性化処理を施すことが好ましい。基材表面が親水性であることにより、水酸アパタイト結晶が成長するサイトを表面全体に均一に形成しやすく、また水酸アパタイト成分が溶解した水溶液と基材表面との馴染みもよいため、基材の表面全体に均一な皮膜を形成しやすくなる。
【0013】
上記多孔質基材には、水酸アパタイト結晶が成長するサイトが導入されている。この「サイト」とは、水酸アパタイト成分の溶解した水溶液と接触したときに水酸アパタイト結晶が析出しやすい反応場である。具体的には、基材表面に付着または結合した水酸アパタイトの核または水酸アパタイトの前駆体などが例示される。
多孔質基材の表面に上記のような核を形成する方法としては、この基材を、▲1▼酸化カルシウム−酸化珪素系のガラスを含む擬似体液中に浸漬する、または▲2▼繊維の表面にリン酸基を導入した後、飽和水酸化カルシウム水溶液中で加水分解させる、▲3▼カルシウム塩を繊維に付着させた後、リン酸の水溶液に浸漬する、などの方法が挙げられる。
【0014】
この多孔質基材に通過させる「水酸アパタイト成分が溶解した水溶液」は、少なくともカルシウムイオンとリン酸イオンとを含む水溶液であって、実質的に飽和または過飽和濃度の水酸アパタイト成分を含有することが好ましい。上記サイトにこの水溶液が接触すると、水溶液中のカルシウムイオンとリン酸イオン、水酸化物イオン、場合によっては炭酸イオンが上記核または前駆体などに取り込まれて水酸アパタイト結晶が成長し皮膜を形成する。なお、炭酸イオンが取り込まれた場合、水酸アパタイトの一部は炭酸アパタイトとなることもあるが、本発明においては何ら問題となることはない。
ここで、上記飽和濃度とは水酸アパタイトが溶解しうる最大濃度をいい、上記過飽和濃度とは飽和濃度を超えてさらに濃度を高めたときに溶液中で均一に沈殿が生じ始める濃度をいう。また、上記水溶液として、無機イオン濃度だけを人の体液に等しくした擬似体液を使用する場合には、カルシウムイオンの好ましい濃度は2.5〜4.0mM(より好ましくは3.0〜3.75mM)であり、リン酸イオンの好ましい濃度は1〜2mM(より好ましくは1.25〜1.75mM)である。
【0015】
この水溶液のpHは6〜8(より好ましくは7〜8)の範囲にあることが好ましく、調整時から多孔質基材通過後まで上記pHに保たれていることが好ましい。pHをこの範囲に保つために、塩酸とトリスヒドロキシメチルアミノメタンなどの緩衝剤を添加することができる。
また、水溶液の温度は5〜70℃の範囲にあることが好ましく、20〜50℃であることがさらに好ましい。
【0016】
多孔質基材に水溶液を通過させる速度は、0.5〜70ml/min・cm2の範囲であり、1〜70ml/min・cm2の範囲であることが好ましく、1〜50ml/min・cm2の範囲であることがさらに好ましい。この速度は、特に1〜20ml/min・cm2の範囲であることが好ましく、とりわけ、1〜10ml/min・cm2の範囲であることが好ましい。複数の基材の積層物や厚みのある基材などに水溶液を通過させる場合、この通過速度が0.5ml/min・cm2未満、特に1ml/min・cm2未満では各基材へのイオンの供給速度が不足する。その結果、上方の基材(水溶液の流れの上流側に位置する基材)において多くの水酸アパタイトが析出してしまい、各基材に同様の水酸アパタイト皮膜を形成することができなくなる。一方、通過速度が70ml/min・cm2を超える場合には、得られる水酸アパタイトの質に変化は見られないものの、基材表面に析出した水酸アパタイトが剥がれ落ちる恐れがあるため好ましくない。
【0017】
多孔質基材に水溶液を通過させる期間は、6時間〜10日とすることが好ましく、12時間〜7日とすることがより好ましい。この期間が6時間未満では水酸アパタイト皮膜の形成が十分に行われず、10日を超える場合には生産性が低下する。この間、多孔質基材に通過される水溶液は、必要に応じて組成、温度、pHなどを調整しつつ循環利用することができる。
多孔質基材に水溶液を通過させる方向は、この基材の厚み方向と水溶液の通過方向との間のなす角が45度以下となる方向が好ましく、10度以下となる方向がより好ましく、実質的に厚み方向(基材面に対して略垂直方向)に通過させることが最も好ましい。
【0018】
本発明の製造方法のように水溶液を複数の多孔質基材に順次通過させた場合には、各基材の表面にほぼ同量の水酸アパタイトを析出させて皮膜を形成することができる。ここで、上記複数の基材は密着して配置されてもよく、また互いに間隔を開けて配置されてもよい。
【0019】
本発明における好ましい製造方法の一例は、請求項2記載のように、上記多孔質基材はシート状であり、該シート状の多孔質基材の複数枚を重ねた積層物に上記水溶液を通過させるものである。
この方法によると、一度に多数枚の基材表面に水酸アパタイト皮膜を形成することができる。なお、ここで「シート状」とは、フィルム状、シート状、平板状などの形状を指す。基材がこのような形状である場合には、上記積層物の各部に水酸アパタイト成分が溶解した水溶液をほぼ均一な速度で通過させることが容易であるため、各基材に均一な水酸アパタイト皮膜を形成しやすい。
【0020】
このような積層物に水酸アパタイト皮膜を形成させた場合、基材の単位重量当たりに形成された水酸アパタイト皮膜の重量が最も大きい基材の水酸アパタイト皮膜の重量(Hmax)に対する、基材の単位重量当たりに形成された水酸アパタイト皮膜の重量が最も小さい基材の水酸アパタイト皮膜の重量(Hmin)の比は、Hmax/Hminとして表される。Hmax/Hminが小さいほど基材ごとに形成された水酸アパタイト皮膜の重量の差は小さく、従って、ばらつきは小さいと考えられる。本発明の製造方法によると、このHmax/Hminを10以内と小さくすることができ、更に、8以内とすることができ、とりわけ2以内とすることができる。
【0021】
また、通過速度とHmax/Hminの相関においては、通過速度が0.5〜70ml/min・cm2であれば、Hmax/Hminは10以内とすることができ、通過速度が2〜70ml/min・cm2であれば2以内とすることができ、通過速度が2〜10ml/min・cm2であれば1.2以内とすることができる。
更に、通過速度、水酸アパタイト皮膜の形成重量及びHmax/Hminの相関においては、通過速度が0.5〜70ml/min・cm2であれば、基材1g当たりに形成される水酸アパタイト皮膜の重量を0.1〜0.6gとすることができ、そのHmax/Hminを10以内とすることができ、通過速度が2〜70ml/min・cm2であれば、基材1g当たりに形成される水酸アパタイト皮膜の重量を0.1〜0.6gとすることができ、そのHmax/Hminを2以内とすることができ、通過速度が2〜10ml/min・cm2であれば、基材1g当たりに形成される水酸アパタイト皮膜の重量を0.4〜0.6gとすることができ、そのHmax/Hminを1.2以内とすることができる。
【0022】
水溶液を通過させる上記積層物の厚みは特に限定されないが、通常は0.05〜100mmであり、0.05〜70mmの範囲であることが好ましく、0.05〜50mmの範囲であることがさらに好ましい。従来のように単に水溶液に基材を浸漬する方法によると、例えば積層物の厚みが0.05mm以上となると各基材の表面にほぼ同量の水酸アパタイトを析出させることは困難である。すなわち、積層物の厚みが0.05mm以上である場合には本発明の製造方法を用いることによる効果が特に顕著に発揮される。一方、積層物の厚みが大きすぎると水溶液の圧力損失が増加するので好ましくない。
【0023】
また、本発明の製造方法は、厚み0.05mm以上(より好ましくは1mm以上、通常100mm以下)の平板状の多孔質基材の厚み全体にわたって水酸アパタイト皮膜を形成する方法として好適である。従来のように単に水溶液に基材を浸漬する方法では、例えば基材の厚みが0.05mm以上になると、基材の外形表面表面では多くの水酸アパタイトが析出するが、基材の厚み方向に対する中心付近(たとえば外形表面からの深さ0.02mm以上の部分)では水酸アパタイトの析出量が不足する。本発明の製造方法によると、基材の中心部までほぼ同量の水酸アパタイトを析出させることができるので、この基材の厚み全体をフィルタなどとして有効に利用することができる。
【0024】
本発明の製造方法により基材表面に形成する水酸アパタイト皮膜は、その好ましい厚みが0.25〜30μmであり、より好ましくは1〜25μmであり、さらに好ましくは5〜20μmである。皮膜の厚みを0.25μm以上とすることにより、この皮膜が形成された基材を例えばウィルスや細菌、悪臭成分を捕捉するフィルタ材として好適に利用することができる。皮膜の厚みが30μmを超える場合には、この皮膜が基材表面から剥離しやすくなるため好ましくない。
【0025】
(作用)
水酸アパタイト結晶が成長するサイトを導入した基材を、水酸アパタイト成分が溶解した水溶液に浸漬すると、このサイトに水溶液中のイオンが取り込まれて水酸アパタイトの結晶が成長し皮膜が形成される。ここで、上記水溶液に比較的薄い基材を1枚のみ浸漬する場合には、基材へのイオンの拡散はスムーズに起こり、基材の表面全体に均質に水酸アパタイトが被覆される。
【0026】
しかし、複合繊維製品を量産するために基材を何枚か重ねて上記水溶液に浸漬すると、水溶液中のイオンが拡散してきて最も外側の基材に到達した時点で水酸アパタイトの析出が起こるため、内側の基材への水酸アパタイト析出量が不足して同時に何枚もの複合繊維製品を生産することができない。また、比較的厚い多孔質基材を用いると、水溶液中のイオンが拡散してきて基材の外形表面に到達した時点で水酸アパタイトの析出が起こり、外形表面から深い位置の基材表面では水酸アパタイト析出量が不足するため、基材の容積全体にわたってその表面に均一な水酸アパタイト皮膜を形成することができない。
【0027】
そこで本発明の製造方法においては、基材が多孔質であることを利用して、水酸アパタイト成分が溶解した水溶液を基材に強制的に通過させる。これにより、複数枚の基材を重ねて処理する場合にも、内側の基材にまでイオンを供給することができるので、各基材においてほぼ同量の水酸アパタイトが析出する。また基材の外形表面から深い位置にまでイオンを供給することができるので、基材の内部に位置する基材表面にも、基材の外形表面付近に位置する基材表面とほぼ同量の水酸アパタイトが析出する。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下において「溶液」とはいずれも水溶液である。
【0029】
(実験例1)
セルロース繊維からなる不織布試験片(旭化成株式会社製、商品名「ベンリーゼ」、目付;13.5g/m2、厚み;0.05mm、重さ;約11mg、大きさ;直径約33mmφ)10枚を、塩化カルシウム50mMを含む第1溶液に1時間ほど浸漬した後、引き上げて余剰の水溶液を切って60℃で乾燥した。次に、この不織布をK2HPO450mMを含む第2溶液(pH約8.9)に1時問ほど浸漬し、引き上げ後水洗して60℃で乾燥し、水酸アパタイトの核を導入した基材を得た。
【0030】
次に、図1に示す構成を有する水酸アパタイト皮膜製造装置に、上記基材10枚を重ねてセットした。この装置は、水酸アパタイト成分を含む水溶液が一端から供給され他端から流出する基材支持部1と、基材支持部1から排出された水溶液が導入される液溜め2と、液溜め2中の水溶液を再度基材支持部1に供給する循環路3とからなる。基材支持部1の内部には、上記基材10枚を重ねた積層物11(厚み約0.5mm)が、ここを通過する水溶液の流れ方向と基材の厚み方向とがほぼ一致するように(基材面に対して垂直に水溶液を流すように)配設され、支持されている。尚、この積層物は基材支持部の内径が小さくなる部分の直上に配置されたガラスフィルターにより支持されている。また、この基材支持部の内側径は不織布試験片とほぼ同じ大きさ(内径;35mm)である。
【0031】
この装置を用いて、表1に示すイオン組成および濃度の水溶液(塩酸とトリスヒドロキシアミノメタンでpH7.4に調整、温度;約25℃)330mlを、約2.3ml/min・cm2の速度で、循環させながら4日間基材に通過させた。その後、各基材を水洗し、60℃で乾燥して、水酸アパタイト皮膜が形成された10枚の複合繊維製品を得た。
【0032】
【表1】
【0033】
得られた各複合繊維製品の重量(表2における「皮膜形成後重量」)を測定し、水溶液を通過させる前の各基材の重量(表2における「基材重量」)と比較した。更に、基材1g当たりに形成された水酸アパタイト皮膜の重量(表2における「皮膜重量/基材重量」)を算出した。その結果を表2に示す。なお、表2において「試料No.(枚目)」とは、積層物11中における各基材の位置を示すもので、水溶液流れの上流側(図1における上側)から順に1枚目、2枚目・・・とする。
表2に示すように、この実験例1では、積層物中の位置によらず各基材には5.4〜6.6mgと多くの水酸アパタイト皮膜が形成されており、皮膜重量/基材重量の最大値Hmaxと最小値Hminの差は0.1(mg/mg)と小さい。
また、Hmax及びHminからHmax/Hminを算出し、図2に示した。そのHmax/Hminは約1.2以内であった。
【0034】
【表2】
【0035】
(実験例2)
水溶液の通過速度を約7ml/min・cm2とし、通過させる期間を3日間とした点以外は、実験例1と同様にして10枚の複合繊維製品を得た。
実験例1と同様に、得られた各複合繊維製品より基材重量及び皮膜形成後重量を測定し、これらより皮膜重量/基材重量を算出し、表3に示した。この結果、各基材には5.0〜5.7mgの水酸アパタイト皮膜が形成されており、HmaxとHminの差は0.8(mg/mg)と小さく、ほぼ同量の水酸アパタイト皮膜が形成されていることが分かる。従って、Hmax/Hminは約1.1以内と極めて小さかった。
【0036】
【表3】
【0037】
(実験例3)
水溶液の通過速度を約0.5ml/min・cm2とし、通過させる期間を3日間とした点以外は、実験例1と同様にして10枚の複合繊維製品を得た。
実験例1と同様に、得られた各複合繊維製品より基材重量及び皮膜形成後重量を測定し、これらより皮膜重量/基材重量を算出し、表4に示した。この結果、各基材には1.1〜5.4mgの水酸アパタイト皮膜が形成されており、実験例1および2に比べてHmaxとHminの差は大きかったが、Hmax/Hminは7.8以内、即ち10以内に抑えられていた。
【0038】
【表4】
【0039】
(実験例4)
水溶液の通過速度を約50ml/min・cm2とし、通過させる期間を3日間とした点以外は、実験例1と同様にして10枚の複合繊維製品を得た。
実験例1と同様に、得られた各複合繊維製品より基材重量及び皮膜形成後重量を測定し、これらより皮膜重量/基材重量を算出し、表5に示した。この結果、各基材には1.4〜2.2mgの水酸アパタイト皮膜が形成されており、HmaxとHminの差は0.08(mg/mg)と極めて小さく、Hmax/Hminは約1.6以内と極めて小さく抑えられている。
【0040】
【表5】
【0041】
(実験例5)
実験例1と同じ基材を用いて同様に水酸アパタイトの核を導入し、表1に示す水溶液330mlに沈めて、実質的に水溶液が移動しない条件(0ml/min・cm2)で3日間放置した。その後、各基材を水洗し、60℃で乾燥して、水酸アパタイト皮膜が形成された10枚の複合繊維製品を得た。
実験例1と同様に、得られた各複合繊維製品より基材重量及び皮膜形成後重量を測定し、これらより皮膜重量/基材重量を算出し、表6に示した。この結果、積層物中の基材の位置により水酸アパタイトの析出量に著しい差が見られ、Hmax/Hminは約19倍と、同質の複合繊維製品を得ることはできなかった。
【0042】
【表6】
【0043】
尚、本発明においては、上記の具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、通過速度を所定のものとするために加圧してもよい。また、図1に示される基材支持部の内壁面に基材を1枚ずつ支持することのできる凸部を設けること、及び基材1枚ずつを挟持することのできる部位を設けること等により基材を支持させることもできる。
【0044】
【発明の効果】
本発明の製造方法によると、多数の基材に同量かつ同質の水酸アパタイトを析出させることができる。これにより、水酸アパタイト皮膜の製造コストが大幅に低減される。また本発明の方法によると、多孔質基材の外形表面付近に位置する基材表面にも、厚みの中心付近に位置する基材表面にも、同程度の厚みの水酸アパタイト皮膜を形成することができる。
本発明の方法により製造された水酸アパタイト皮膜を有する多孔質基材は、気体あるいは液体中の細菌、ウィルス、動植物細胞、悪臭成分等を捕捉するフィルタ材などとして有用である。さらに、この水酸アパタイト皮膜に二酸化チタンまたは銀、銅、亜鉛などの金属を担持させれば、抗菌性繊維または抗菌性フィルタ材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験例で使用した水酸アパタイト皮膜製造装置を示す概略図である。
【図2】通過速度とHmax/Hminの相関を示すグラフである。
【符号の説明】
1;基材支持部、2;液溜め、3;循環路、11;積層物。
Claims (2)
- 基材表面に水酸アパタイト皮膜を製造する方法であって、
水酸アパタイト結晶が成長するサイトが導入された多孔質基材に、水酸アパタイト成分が溶解した水溶液を通過させて、上記多孔質基材の表面に水酸アパタイト結晶を析出させる水酸アパタイト皮膜の製造方法であって、
上記水酸アパタイト成分が溶解した水溶液の上記多孔質基材に対する通過速度は0.5〜70ml/min・cm 2 であるとともに、
上記水溶液を、複数の上記多孔質基材に順次通過させ、
複数の上記多孔質基材に順次通過させた上記水溶液を循環させて、複数の上記多孔質基材に繰り返し順次通過させることを特徴とする水酸アパタイト皮膜の製造方法。 - 上記多孔質基材はシート状であり、該シート状の多孔質基材の複数枚を重ねた積層物に上記水溶液を通過させることを特徴とする請求項1記載の水酸アパタイト皮膜の製造方法。
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