JP4575187B2 - モルタル組成物 - Google Patents
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Description
従来、抗菌性や抗カビ性を有する物質として、コレマナイト2CaO・3B2O3・5H2Oを焼成した焼成コレマナイトの粉末が知られている(特許文献1参照)。
また、焼成コレマナイトの粉末をセメントに混和することによって、そのセメント硬化体に抗菌性や抗カビ性を付与できることも知られている(非特許文献1参照)。
しかしながら、この焼成コレマナイトは、セメントの凝結を著しく遅延するホウ酸成分を主成分とするため、多量に混和すると硬化不良を起すという課題があった。
したがって、下水処理施設における酸性劣化の対策としては耐酸性の材料を使用することに加えて、抗菌剤の適用が有効とされている。
そして、耐酸性の水硬性材料と抗菌剤とを組合せることによって二重の対策をとることができ、硫酸劣化に抵抗性の高いモルタルやコンクリートの調製が可能になるものと考えられる。
しかしながら、その耐酸性は未だに充分なレベルに到達していない現状にある。
アルミナセメントは、カルシウムアルミネート系化合物を主成分とする水硬性材料である。
カルシウムアルミネート系化合物は、ポルトランドセメントと比較して、初期強度発現性に優れ、塩化物浸透に対する抵抗性や耐酸性にも優れるという特徴がある。
しかしながらその一方で、水和物の転化(コンバージョン)によって長期的に強度が著しく低下するという課題を有するものであった。
カルシウムアルミネート系化合物のコンバージョンを防止する方法としては、高炉水砕スラグ、フライアッシュ、及びシリカフュームなどを併用する方法が提案されている(特許文献3、特許文献4)。
しかしながら、この材料は抗菌性を示さない。
非鉄精錬スラグは、セメント・コンクリート分野で骨材としての利用が検討され、一部はJISも制定されている。
しかしながら、非鉄精錬スラグは、充分普及には至っていない現状にある。
CA化合物を製造する際のCaO原料としては、例えば、石灰石や貝殻等の炭酸カルシウム、消石灰等の水酸化カルシウム、あるいは生石灰等の酸化カルシウムを挙げることができる。
また、Al2O3原料としては、例えば、ボーキサイトやアルミ残灰と呼ばれる産業副産物のほか、アルミニウム粉等が挙げられる。
高炉水砕スラグ微粉末の粉末度は特に限定されるものではないが、通常、ブレーン値で3,000〜9,000cm2/g程度の範囲にある。
ポゾラン物質はCA化合物のコンバージョンによる強度低下を防止する効果や耐酸性を向上させる効果を助長する役割を担うものである。
つまり、潜在水硬性物質におけるカルシウム化合物やアルカリ金属化合物は、刺激剤として振る舞い、触媒的な役割を担うのに対して、ポゾラン物質におけるカルシウム化合物は、反応物として振る舞うため、ポゾラン物質がもつSiO2分に見合う量のカルシウム分が必要となり、カルシウム分が不足するとポゾラン反応は停滞してしまう。
本発明では、潜在水硬性物質とポゾラン物質とを併用することが、耐酸性の面から好ましい。
セメント組成物における各材料の配合割合は特に限定されるものではないが、通常、CA化合物30〜90部で、ポゾラン類70〜10部が好ましく、CA化合物50〜70部で、ポゾラン類50〜30部がより好ましい。CA化合物が30未満で、ポゾラン類が70部を超えると強度発現性が充分でなくなる場合があり、CA化合物が90部を超えたり、ポゾラン類が10部未満では、コンバージョンによる強度低下が発生したり、充分な耐酸性が得られない場合がある。
骨材は非鉄精錬スラグを含有するものであり、骨材の一部あるいは全部が非鉄精錬スラグから構成される。骨材の一部を非鉄精錬スラグで構成する場合に、他の骨材は特に限定されるものではない。その具体例としては、例えば、ケイ砂系、石灰石系、高炉水砕スラグ系、及び再生骨材系等が挙げられる。本発明では、耐酸性等の面からケイ砂系を選定することが好ましい。また、密度3.0g/cm3以上の重量骨材を使用することも可能である。
フェロニッケルスラグは、ニッケル鉱石からフェロニッケルを精錬採取する際に発生するスラグであり、フェロクロムスラグは、クロム鉱石からフェロクロムを精錬採取する際に発生するスラグであり、銅スラグは、銅鉱石等から銅を精錬採取する際に発生するスラグであり、亜鉛スラグは、亜鉛鉱石等から亜鉛を精錬採取する際に発生するスラグであり、鉛スラグは、鉛を精錬採取する際に発生するスラグである。このうち、フェロニッケルスラグと銅スラグとはJISが制定されている(JIS A 5011)。
本発明では、これらのうち、銅スラグ、亜鉛スラグ、及び鉛スラグの使用が抗菌効果の面から好ましい。
ポリマーは大別すると、水性ポリマーディスパージョン、水溶性ポリマー、液状ポリマー、及び再乳化型粉末樹脂の4種類となる。
その具体例としては、例えば、水性ポリマーディスパージョンとしては、天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックス、樹脂エマルジョン、及び混合ディスパージョンが挙げられる。この中には、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、メタクリル酸メチルブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリアクリル酸エステル、エチレン酢酸ビニル、スチレンアクリル酸エステル、ポリプロピオン酸ビニル、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、アスファルト、パラフィン、混合ラテックス、及び混合エマルジョンなどが挙げられる。
水溶性ポリマーとしては、例えば、メチルセルロースヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アクリル酸カルシウム、及びアクリル酸マグネシウムなどが挙げられる。
液状ポリマーとしては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂等が挙げられる。
再乳化型粉末樹脂としては、例えば、スチレンブタジエンゴム、エチレン酢酸ビニル、酢酸ビニルビニルバーサテート、スチレンアクリル酸エステル、及びポリアクリル酸エステルなどが挙げられる。
表1に示す各種のCA化合物とポゾラン類A50部とを配合してセメント組成物を調製し、JIS R 5201に準じてモルタルを調製した。この際、骨材100部中、50部を非鉄精錬スラグ骨材イで置換した。
モルタルの促進コンバージョンによる圧縮強度の低下率を確認するとともに、耐酸性やカビ抵抗性試験を行った。
なお、比較のために、CA化合物の代わりに普通ポルトランドセメントを用いた場合についても同様に行った。結果を表1に併記する。
CA化合物a:市販のアルミナセメント、電気化学工業社製、主成分CaO・Al2O3、ブレーン値5,000cm2/g
CA化合物b:結晶質12CaO・7Al2O3、試薬1級の炭酸カルシウムと酸化アルミニウムとをモル比で12対7の割合で混合し、1,350℃で3時間焼成する工程を2回繰り返して合成、ブレーン値5,000cm2/g
CA化合物c:非晶質12CaO・7Al2O3、CA化合物bに試薬1級のシリカを3%添加して、1,650℃で溶融後、急冷して合成、ブレーン値5,000cm2/g
CA化合物d:CA化合物aとCA化合物bとの等量混合物、ブレーン値5,000cm2/g
ポゾラン類A:市販の高炉水砕スラグ微粉末、ブレーン値4,000cm2/g
非鉄精錬スラグ骨材イ:市販の銅スラグ骨材、密度3.46g/cm3
普通ポルトランドセメント:3種の市販品の等量混合物
水 :水道水
細骨材 :JIS R 5201で使用する標準砂
カビ抵抗性:縦30cm×横30cm×高さ3cmのモルタル硬化体を作製し、30℃、炭酸ガス濃度5%、及び相対湿度60%の条件で7日間炭酸化させた。このモルタル硬化体表面に、カビ種A(クラドスポリウム・クラドスポリオイデス)とカビ種B(アスペルギルス・ニゲル)との胞子懸濁液を塗布し、4週間にわたってカビ抵抗性試験をJIS Z 2911に準じて行った。カビ抵抗性の不可は1/3を超える面積にわたってカビが発生、可は1/3以下の面積にカビが発生、良はカビの発生なし。
圧縮強度 :モルタルを型枠に詰めて4cm×4cm×16cmの供試体を作成し、材齢28日の圧縮強度をJIS R 5201に準じて測定
強度比 :促進コンバージョン試験、材齢28日まで20℃の水中養生を行った供試体を、50℃の温水中に28日間入れて促進コンバージョンを行った。促進コンバージョンを行う前の圧縮強度に対する促進コンバージョンを行った後の強度の比を相対値で表し評価
耐酸性 :5%濃度の硫酸溶液に供試体を3ヶ月間浸漬し、供試体の外観の変化や重量減少から耐酸性を評価した。耐酸性の不可は外観の変化が著しく、かつ、重量変化率が±5%以上の場合、可は外観の変化が著しいか、あるいは、重量変化率が±5%以上のいずれか一方を満たす場合、良は外観の変化と重量変化ともに上記条件に該当しない場合。
CA化合物とポゾラン類からなるセメント組成物100部中のポゾラン類の種類と配合割合とを表2に示すように変化してセメント組成物としたこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
ポゾラン類B:市販のフライアッシュ、ブレーン値4,000cm2/g
ポゾラン類C:市販のシリカフューム、BET比表面積15m2/g
ポゾラン類D:市販のパルプスラッジ焼却灰、ブレーン値4,000cm2/g
ポゾラン類E:市販の下水汚泥焼却灰、ブレーン値9,000cm2/g
ポゾラン類F:市販の廃ガラス粉末、ブレーン値4,000cm2/g
ポゾラン類G:ポゾラン類Aとポゾラン類Bとの等量混合物、ブレーン値4,000cm2/g
CA化合物a50部とポゾラン類G50部とからなるセメント組成物100部に対して、非鉄精錬スラグ骨材の種類と骨材100部に対する置換率を表3に示すように変化したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
非鉄精錬スラグ骨材ロ:市販のフェロニッケルスラグ細骨材、密度2.85g/cm3
非鉄精錬スラグ骨材ハ:市販のフェロクロムスラグ細骨材、密度3.20g/cm3
非鉄精錬スラグ骨材ニ:市販の亜鉛スラグ細骨材、密度3.30g/cm3
非鉄精錬スラグ骨材ホ:市販の鉛スラグ細骨材。密度3.35g/cm3
非鉄精錬スラグ骨材ヘ:非鉄精錬スラグ骨材イと非鉄精錬スラグ骨材ニとの等量混合物、密度3.38g/cm3
CA化合物a50部とポゾラン類G50部とを配合し、これらの合計100部に対して、表4に示すようにポリマーを固形分換算で配合してセメント組成物とし、細骨材100部中、非鉄精錬スラグ骨材イを50部配合してモルタルを調製し、カビ抵抗性、圧縮強度、付着強度、強度比、及び耐酸性の実験を行ったこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表4に併記する。
ポリマーα:市販のスチレンブタジエンゴム系
ポリマーβ:市販のポリアクリル酸エステル系
ポリマーγ:市販のエチレン酢酸ビニル系
ポリマーδ:市販の酢酸ビニルビニルバーサテート系
付着試験 :JIS A 1171に準じて、材齢28日の付着強度を測定
CA化合物a50部とポゾラン類G50部とを配合し、これらの合計100部に対して、表5に示すように繊維物質を配合し、カビ抵抗性、圧縮強度、強度比、耐酸性、及びひび割れ状況の実験を行ったこと以外は実験例4と同様に行った。結果を表5に併記する。
繊維物質I :市販のビニロン繊維
繊維物質II :市販のアクリル繊維
繊維物質III :市販のセルロース繊維
繊維物質IV :市販のカーボン繊維
繊維物質V :市販のワラストナイト繊維
ひび割れ状況:ひび割れ抵抗性試験、50cm×50cmのコンクリート板にモルタルを10mmの厚さで塗りつけ、温度20℃、相対湿度40%の環境で1日間放置し、ひび割れの発生具合を観察した。良はひび割れが全くなし、可はひび割れが1本のみ発生、不可はひび割れが複数発生
Claims (4)
- カルシウムアルミネート系化合物30〜90質量部、ポゾラン類70〜10質量部であるセメント組成物100質量部、及び骨材50〜300質量部を含有してなり、骨材100質量部中、銅スラグ、亜鉛スラグ、及び鉛スラグからなる群より選ばれる一種又は二種以上である非鉄精錬スラグ骨材が10〜100質量部であるモルタル組成物。
- ポゾラン類が、フライアッシュ、シリカフューム、パルプスラッジ焼却灰、下水汚泥焼却灰、及び廃ガラス粉末からなる群より選ばれた一種又は二種以上を含有する請求項1に記載のモルタル組成物。
- さらに、ポリマーを含有する請求項1又は請求項2に記載のモルタル組成物。
- さらに、繊維物質を含有する請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載のモルタル組成物。
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