JP4554332B2 - セメント組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、主に、土木・建築業界において使用されるセメント組成物に関する。
なお、本発明で言うセメントコンクリートとは、セメントペースト、モルタル、及びコンクリートを総称するものである。
また、本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。
近年、環境問題が大きくクローズアップされている。特に、産業副産物の有効利用について、様々な試みがなされている。
しかしながら、これら副産物の中には、未だに有効利用方法が確立されていないものも多く見受けられる。そのひとつに、廃白土が挙げられる。
石油精製工程で発生する副産物の廃白土は、アスファルトのフィラーとして使用することが提案されているものの、その有効利用方法について充分に検討されてなく、未だにその有効利用方法の確立には至っていない(特許文献1参照)。
一方、ポルトランドセメントと並んで知られているアルミナセメントは、カルシウムアルミネート系化合物を主成分とする水硬性材料である。アルミナセメントはポルトランドセメントと比較して、初期強度発現性に優れ、塩化物浸透に対する抵抗性や耐酸性にも優れるという特徴がある。
しかしながらその一方で、水和物の転化(コンバージョン)によって長期的に強度が著しく低下するという課題を有するものであった。
そして、カルシウムアルミネート系化合物のコンバージョンを防止する方法としては、高炉水砕スラグ、フライアッシュ、及びシリカフュームを併用する方法が提案されている(特許文献2や特許文献3参照)。
高炉水砕スラグ、フライアッシュ、及びシリカフュームは、既に多くの有効利用方法が確立しており、また、ポルトランドセメントに多量に混合して使用することもでき、JISも制定されるまでになっている。これらの副産物以外の未だに有効利用方法が見出されていない副産物について、その有効利用方法を確立することが循環型社会の構築に向けて強く求められている。
そこで、本発明者は、未だに有効利用方法が確立されていない廃白土について、その有効利用方法を検討した結果、カルシウムアルミネート系化合物のコンバージョン防止効果を有すること、また、撥水性や防汚効果も得られるという全く新しい事実を知見し、本発明を完成するに至った。
特開2004−033954号公報 特開昭60−180945号公報 特開平01−141844号公報
本発明は、有効利用方法が見出されていない廃白土を利用し、カルシウムアルミネート系化合物の課題であるコンバージョンを防止すると共に、撥水性や防汚効果も発揮するセメント組成物を提供するものである。
本発明は、セメント組成物100部中、カルシウムアルミネート系化合物30〜80部と廃白土70〜20部とを含有してなるセメント組成物であり、廃白土が油分を含有する該セメント組成物であり、さらに、高炉水砕スラグ、フライアッシュ、及びシリカフュームからなる群より選ばれる一種又は二種以上を含有する該セメント組成物である。
本発明で使用するカルシウムアルミネート系化合物(以下、CAという)は、CaOとAl2O3を主成分とする化合物を総称するものであり特に限定されるものではない。その具体例としては、例えば、CaO・2Al2O3、CaO・Al2O3、12CaO・7Al2O3、11CaO・7Al2O3・CaF2、3CaO・Al2O3、及び3CaO・3Al2O3・CaSO4などと表される結晶性のカルシウムアルミネートや、CaOとAl2O3成分を主成分とする非晶質の化合物が挙げられる。これらの中で、CaO/Al2O3モル比が1〜2にあるものを選定することが、可使時間の確保の面から好ましい。
CAを得る方法としては、CaO原料とAl2O3原料等をロータリーキルンや電気炉等によって熱処理して得る方法が挙げられる。
カルシウムアルミネートを製造する際のCaO原料としては、例えば、石灰石や貝殻等の炭酸カルシウム、消石灰等の水酸化カルシウム、及び生石灰等の酸化カルシウムを挙げることができる。
また、Al2O3原料としては、例えば、ボーキサイトやアルミ残灰と呼ばれる副産物のほか、アルミ粉等が挙げられる。
CAを工業的に得る場合、不純物が含まれることがある。その具体例としては、例えば、SiO2、Fe2O3、MgO、TiO2、MnO、Na2O、K2O、Li2O、S、P2O5、及びFなどが挙げられる。これらの不純物の存在は本発明の目的を実質的に阻害しない範囲、具体的には、これらの不純物の合計が10%以下の範囲では特に問題とはならない。
また、本発明のCAは、化合物として、4CaO・Al2O3・Fe2O3、6CaO・2Al2O3・Fe2O3、及び6CaO・Al2O3・2Fe2O3などのカルシウムアルミノフェライト、2CaO・Fe2O3やCaO・Fe2O3などのカルシウムフェライト、ゲーレナイト2CaO・Al2O3・SiO2やアノーサイトCaO・Al2O3・2SiO2などのカルシウムアルミノシリケート、メルビナイト3CaO・MgO・2SiO2、アケルマナイト2CaO・MgO・2SiO2、及びモンチセライトCaO・MgO・SiO2などのカルシウムマグネシウムシリケート、トライカルシウムシリケート3CaO・SiO2、ダイカルシウムシリケート2CaO・SiO2、ランキナイト3CaO・2SiO2、及びワラストナイトCaO・SiO2などのカルシウムシリケート、カルシウムチタネートCaO・TiO2、遊離石灰、並びに、リューサイト(K2O、Na2O)・Al2O3・SiO2などを含む場合がある。本発明ではこれらの結晶質又は非晶質が混在していても良い。
本発明のCAの粒度は特に限定されるものではないが、通常、ブレーン比表面積値(以下、ブレーン値という)で3,000〜9,000cm2/gが好ましく、4,000〜8,000cm2/gがより好ましい。3,000cm2/g未満では強度発現性が充分でない場合があり、9,000cm2/gを超えると取り扱いが困難になる場合がある。
本発明で使用する廃白土とは、石油精製工程から発生する副産物である。
廃白土の化学成分の平均的な値は、強熱減量が約50%、SiO2が30〜40%、Fe2O3が1〜2%、Al2O3が3〜10%、CaOが1〜2%、MgOが1〜5%、Na2Oが0.1〜0.3%、K2Oが0.1〜1%、及びSO3が0.1〜1%である。約50%の強熱減量のうち、湿分は1〜3%であり、残りが油分や有機分である。
本発明では、油分を含む廃白土をそのまま使用することも可能であり、加熱処理を施し、油分を除去したものを使用することも可能である。初期の強度発現性の面からは、加熱処理を施し、油分を除去したものを使用することが好ましいが、この処理を行うことはコスト高となる。
また、CAのコンバージョンを抑制する面からは、油分を含む廃白土をそのまま利用することがむしろ好ましいので、使用する目的に応じていずれを選択しても差し支えない。
廃白土の粒度は特に限定されるものではないが、ブレーン値で3,000cm2/g以上が好ましく、4,000cm2/g以上がより好ましい。3,000cm2/g未満ではコンバージョンによる強度低下の抑止効果が充分でない場合がある。
本発明で使用する、高炉水砕スラグ、フライアッシュ、及びシリカフュームからなる群より選ばれる一種又は二種以上(以下、ポゾランという)は、CAのコンバージョンによる強度低下を防止する効果やアルカリシリカ反応の防止効果を助長するもので、特に限定されるものではなく、通常、セメント分野で使用されるものが使用可能である。
高炉水砕スラグは製鉄業界から発生する副産物であり、フライアッシュは火力発電所から発生する副産物であり、シリカフュームはフェロシリコン、電融ジルコニア、及び金属シリコン製造時に発生する副産物である。これらはいずれもJIS規格で規定されており、本発明ではいかなるものも使用可能である。
ポゾランの粉末度は特に限定されるものではないが、通常、高炉水砕スラグとフライアッシュはブレーン値で3,000〜9,000cm2/g程度であり、シリカフュームはBET比表面積値で2〜20万m2/g程度である。
本発明のセメント組成物における各材料の配合割合は特に限定されるものではないが、通常、セメント組成物100部中、CA30〜80部で、廃白土70〜20部が好ましく、CA40〜70部で、廃白土60〜30部がより好ましい。CAが30部未満で、廃白土が70部を超えると強度発現性が充分でなくなる場合があり、CAが80部を超え、廃白土が20部未満ではコンバージョンによる強度低下の防止効果が充分でない場合や充分な撥水性や防汚効果が得られない場合がある。
また、ポゾランの使用量は特に限定されるものではないが、セメント組成物100部中、40部以下が好ましく、10〜30部がより好ましい。40部を超えると初期強度発現性が悪化する場合がある。ポゾランは、必要に応じて、廃白土の一部と置換して用いることが可能である。
本発明のセメント組成物の粒度は、使用する目的・用途に依存するため特に限定されるものではないが、通常、ブレーン値で3,000〜8,000cm2/gが好ましく、4,000〜6,000cm2/gがより好ましい。3,000cm2/g未満では強度発現性が充分に得られない場合があり、8,000cm2/gを超えると作業性が悪くなる場合がある。
本発明では、本発明のセメント組成物の他に、公知のセメントを併用することも可能である。
セメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、又はシリカを混合した各種混合セメント、また、石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末を混合したフィラーセメント、廃棄物利用型セメント、いわゆるエコセメントなどが挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が併用可能である。
本発明では、セメント組成物、セメント、及び砂や砂利等の骨材の他に、石灰石微粉末、高炉徐冷スラグ微粉末、下水汚泥焼却灰やその溶融スラグ、都市ゴミ焼却灰やその溶融スラグ、及びパルプスラッジ焼却灰等の混和材料、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、ポリマー、凝結調整剤、スチールファイバー、ビニロンファイバー、及び炭素繊維等の繊維質物質、ベントナイトなどの粘土鉱物、並びに、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体等のうちの一種又は二種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
本発明において、各材料の混合方法は特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、あらかじめ一部を、あるいは全部を混合しておいても差し支えない。
混合装置としては、既存のいかなる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、及びナウタミキサなどの使用が可能である。
本発明のセメント組成物は、CAのコンバージョンによる強度低下を防止でき、また、撥水性や防汚効果も得られるので土木・建築分野で広範に利用でき、副産物の廃白土の有効利用にもつながる。
表1に示すCAと廃白土を配合してセメント組成物を調製した。
調製したセメント組成物を用いて、JIS R 5201に準じてモルタルを調製し、圧縮強度、強度比、撥水性、及び防汚効果を評価した。結果を表1に併記する。
なお、比較のために、CAの代わりに普通ポルトランドセメント(OPC)を用いた場合についても同様に行った。結果を表1に併記する。
<使用材料>
CA(1) :アルミナセメント、市販品、主成分CaO・Al2O3、ブレーン値5,000cm2/g
CA(2) :12CaO・7Al2O3、試薬1級の炭酸カルシウムと酸化アルミニウムを12対7のモル比で混合し、1,350℃で3時間焼成する工程を2回繰り返して合成、ブレーン値5,000cm2/g
CA(3) :非晶質12CaO・7Al2O3、CA(2)に試薬1級のシリカを3%添加して、1,650℃で溶融後、急冷して合成、ブレーン値5,000cm2/g
CA(4) :CA(1)とCA(2)の等量混合物、ブレーン値5,000cm2/g
廃白土A :油分を含むもの、ブレーン値3,000cm2/g、強熱減量50%、SiO2 36%、Fe2O3 1.5%、Al2O3 6%、CaO 1.5%、MgO 3%、Na2O 0.2%、K2O 0.5%、及びSO3 0.4%
廃白土B :廃白土Aを500℃で加熱処理を行って油分を除去したもの、ブレーン値3,000cm2/g、強熱減量0.3%、SiO2 72%、Fe2O3 3%、Al2O3 12%、CaO 3%、MgO 6%、Na2O 0.4%、K2O 1%、及びSO3 0.8%
OPC :普通ポルトランドセメント、市販品の3銘柄の等量混合物
水 :水道水
細骨材 :JIS R 5201で使用する標準砂
<測定方法>
圧縮強度 :モルタルを型枠に詰めて4cm×4cm×16cmの硬化体を作成し、材齢28日の圧縮強度をJIS R 5201に準じて測定
強度比 :促進コンバージョンによる圧縮強度の低下率の確認、材齢28日まで20℃の水中養生を行った硬化体を、50℃の温水中に28日間入れて促進コンバージョンを行った。促進コンバージョンを行う前の圧縮強度に対する促進コンバージョンを行った後の強度の比を相対値で表示
撥水性 :硬化体を水中に24時間浸漬した後、表面の濡れ具合を観察して評価。硬化体表面が均一に濡れている場合は×、水滴がはじかれて明らかな撥水性が見られる場合は○とした。
防汚効果 :硬化体表面に市販のスプレーペイントを吹き付け、硬化体への塗装の状況を確認した。スプレーペイントによる落書きが可能な場合は×、不可能な場合は○とした。
Figure 0004554332
CA(1)60部と、表2に示す廃白土Aとポゾランを配合してセメント組成物としたこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
<使用材料>
ポゾランα:高炉水砕スラグ微粉末、市販品、ブレーン値4,000cm2/g
ポゾランβ:フライアッシュ、市販品、ブレーン値4,000cm2/g
ポゾランγ:シリカフューム、市販品、BET比表面積15万m2/g
ポゾランδ:ポゾランαとポゾランβの等量混合物、ブレーン値4,000cm2/g
Figure 0004554332
表3に示すCA(1)、廃白土A、及びポゾランを配合してセメント組成物を調製し、耐酸性を評価したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
<測定方法>
耐酸性 :硫酸濃度5%の溶液に硬化体を浸漬し、重量変化と硫酸浸透深さを確認して評価した。重量変化が±5%以上で、かつ、硫酸浸透深さが5mm以上の場合は×、重量変化が±5%以上、もしくは、硫酸浸透深さが5mm以上の場合は△、重量変化が±5%未満、かつ、硫酸浸透深さが5mm未満の場合は○、重量変化が±3%未満、かつ、硫酸浸透深さが3mm未満の場合は◎とした。
Figure 0004554332
本発明のセメント組成物は、CAを主体としつつ、そのコンバージョンによる強度低下を効果的に防止し、流動性や耐酸性にも優れ、撥水性や防汚効果も発揮するため、土木および建築用途に適する。

Claims (3)

  1. セメント組成物100質量部中、カルシウムアルミネート系化合物30〜80質量部と廃白土70〜20質量部とを含有してなるセメント組成物。
  2. 廃白土が油分を含有することを特徴とする請求項1に記載のセメント組成物。
  3. さらに、高炉水砕スラグ、フライアッシュ、及びシリカフュームからなる群より選ばれる一種又は二種以上を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセメント組成物。
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