JP4573989B2 - 歩行補助装具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は下肢麻痺等の歩行障害者に自力歩行手段を与えるための歩行補助装具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、脊髄の損傷により両側下肢および体幹下部の感覚麻痺あるいは筋機能を喪失した歩行障害者が自力歩行を行うために装着する装置としては股関節を固定し、松葉杖で自分自身の体重を支持し、両側下肢を同時に振り出す大振り歩行を行うものが主であった。この歩行方法においては歩を進める度に非常に大きなエネルギーの消耗があり、装着者が長時間にわたって歩行することは困難である。
【0003】
そこで、健常者と同様に左右の脚を交互に前方に送って歩行する交互歩行を可能にする装具が提案され、装着者のエネルギーの消耗がより小さくなることが実際にこれを装着して歩行した歩行障害者により確認されている。
【0004】
ところで、歩行障害者がこのような装具を装着して歩行のために前進しようとしたとき、振り出す一方の脚の踵が床に支えないように踵と床との間にあるクリアランスを保持しなければならない。通常、この装具では下肢を固定する一対の支柱の長さが同じであり、振り出す脚の踵を床から浮かせてクリアランスを生じさせるには体躯全体を左または右に傾ける必要がある。この体躯全体を傾けることで、一定のクリアランスを確保し、振り出す脚の踵を床に支えさせないで円滑に振り出すことが可能になる。
【0005】
一般に、体躯全体の傾きを増したとき、クリアランスは大きくなり、脚の振り出しも一層円滑になるが、体躯の傾きが大きくなればなる程、重心の移動が大きくなり、長時間にわたる歩行では極度にエネルギを消耗し、また、転倒事故を引き起こす危険性が高くなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、交互歩行で脚部振り出しを可能にする、装着者の踵と床とのクリアランスは左右両方向への重心の移動がより少ない、エネルギの消耗の小さい方法で確保することを求められている。重心の移動を伴わないでクリアランスを保持できる有力な解決手段には、たとえば下肢を固定する支柱の長さを変えられる、アクチュエータを用いた可変手段がある。
【0007】
しかしながら、このアクチュエータを用いた可変手段は装置が大掛かりで、重量もあり、可能な限り簡易な手段であるべき人体に装着する装具と共に利用することは好ましくない。
【0008】
たとえば、股関節機能が残存する歩行障害者の場合、下肢部だけに装着する、簡易な装具の助けを借りて歩行することが可能で、このような簡易な歩行補助装具に大掛かりで、重さのある装置を組み合せることは好ましくなく、より相応しい手段が求められている。
【0009】
一方、このような簡易な歩行補助装具を著しく複雑化するような手段は、たとえその手段が歩行を助ける望ましいものであっても、使用を控えるのが好ましい。たとえば、股関節周りの筋肉が麻痺し、脚部の振り出しが難しい歩行障害者が左右の脚を交互に正確に動かすために左右脚連動機構を利用することが行われているが、こうした手段も簡易な歩行補助装具に相応しくなく、より簡便な手段が求められている。
【0010】
本発明の目的は大掛かりで、重さのある装置を使用することなく、交互歩行において脚部振り出しを容易に果たすことのできる歩行補助装具を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は装着者の左右の下肢両側部に倣いほぼ下肢全長にわたって装着される脚長下肢装具と、装着者の左右の大腿部内側にあって脚長下肢装具の左右の下肢支柱を互いに連結し、かつ下肢支柱を前後方向に交互に動作させるリンク機構からなる内側股継手とを備え、内側股継手はリンク回転中心が装着者の生理的股関節中心に対して後方に偏心するように配置されるものである。
【0012】
上記構成からなる本発明の歩行補助装具においては、大掛かりで、かつ、重さのある装置を使用することなく、装着者の踵等と床面等との間のクリアランスを確保することが可能で、交互歩行において脚部振り出しを容易に果たすことができる。
【0013】
また、本発明は、望ましくは、上記内側股継手がハウジングと、このハウジング内に一定の間隔を保って配置した固定軸に軸支され、互いに反対方向に回転する一対のピニオンギアと、このピニオンギアの固定軸から一定の離間距離を保って配置される第1枢軸および第2枢軸にそれぞれ軸支された取付け台と、ピニオンギアの固定軸と取付け台の第1枢軸および第2枢軸との間にわたるように設けられ、リンク機構を構成する第1リンク部材および第2リンク部材とを備え、装着者の交互歩行を可能とするように、ピニオンギア、取付け台、第1リンク部材および第2リンク部材が協働して下肢支柱を逆位相をもって動作させるようにする。
【0014】
さらに、本発明は、望ましくは、取付け台が凹溝を備え、内側股継手が凹溝と嵌合するスペーサを介して下肢支柱に装着される。
【0015】
また、第2の発明は装着者の左右の下肢両側部に倣いほぼ下肢全長にわたって装着される脚長下肢装具と、装着者の左右の大腿部内側にあって脚長下肢装具の左右の下肢支柱を互いに連結し、かつ下肢支柱を前後方向に交互に動作させるリンク機構からなる内側股継手と、装着者の腰部に巻装される腰部装具と、腰部装具の前面にあって脚長下肢装具の左右の下肢支柱とそれぞれ連結する弾性要素を有する滑車装置とを備えるものである。
【0016】
上記構成からなる歩行補助装具においては大掛かりで、重さのある装置を使用することなく、僅かな上体筋力の加勢で脚部振り出しを容易に果たすことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1および図2において、本発明の歩行補助装具1は装着者の左右の下肢両側部に固定される脚長下肢装具2を備えている。この脚長下肢装具2は下肢支柱3L、3R、器具支柱4L、4R、下肢支柱3L、3Rと器具支柱4L、4Rとを回動可能に連結する膝関節継手5L、5Rおよび膝関節継手5L、5Rに連結された膝ロック解除レバー6からなる。
【0018】
さらに、脚長下肢装具2には足機構7L、7Rが足継手8L、8Rを介して連結されている。また、下肢支柱3L、3Rは装着者の各脚部に装具を固定するための腿部半月カフ9、10および装着ベルト11を有する。
【0019】
一方、歩行補助装具1は内側股継手12を備えている。この内側股継手12は、図2に示すように、装着者の大腿部の内側において下肢支柱3L、3Rと連結されており、初期設定においては内側股継手12のリンク回転中心が装着者の生理的股関節中心から後方に偏心させて取り付けられている。
【0020】
この内側股継手12の詳細を図3ないし図5に示す。図3および図4に示すように、内側股継手12はハウジング13内に互いに逆方向に回動する一対のピニオンギア14a、14bを有する。それぞれピニオンギア14a、14bはハウジング13に固定した第1軸15aおよび第2軸15bに軸支されている。この第1軸15aおよび第2軸15bはある軸間距離L1を保って配置されている。
【0021】
また、内側股継手12はそれぞれ下肢支柱3L、3Rと連結される取付け台16L、16Rを備えている。この2つの取付け台16L、16Rは第1軸15aおよび第2軸15bから等距離を保って配置される第1枢軸17aおよび第2枢軸17bを有し、取付け台16Lの一対の第1枢軸17aはある軸間距離L2を保って配置され、同様に、取付け台16Rの一対の第2枢軸17bは同じ値の軸間距離L2を保って配置されている。
【0022】
また、内側股継手12は4節からなるリンク構造を構成する4本のリンク部材を備える。これらのリンク部材のうち、第1リンク部材18Lはピニオンギア14aの第1軸15aと取付け台16Lの第1枢軸17aとにわたるように、さらに第2リンク部材19Lはピニオンギア14bの第2軸15bと取付け台16Lの第2枢軸17aとにわたるように設けられている。また、第1リンク部材18Rはピニオンギア14aの第1軸15aと取付け台16Rの第2枢軸17bとにわたるように、さらに第2リンク部材19Rはピニオンギア14bの第2軸15bと取付け台16Rの第2枢軸17bとにわたるように設けられている。
【0023】
ここで、第1リンク部材18Rはピニオンギア14aと止めピン20によって一体に結合しており、一方、第1リンク部材18Lは止めピンを持たず、ピニオンギア14aとの間は分離させている(図4参照)。また、ここには図示は省略しているが、第2リンク部材19Rは止めピンを持たず、ピニオンギア14bとの間は分離させており、一方、第2リンク部材19Lはピニオンギア14bと上記と同様な止めピンによって一体に結合している。
【0024】
さらに、第1リンク部材18L、18Rはハウジング13および取付け台16L、16Rの内面との間にスラスト軸受21を有し、また、第1および第2枢軸17a、17bの頭部17cとの間にスラスト軸受21を備えている。図示は省略しているが、同様に、第2リンク部材19L、19Rはハウジング13および取付け台16L、16Rの内面との間にスラスト軸受を有し、また、第1および第2枢軸17a、17bの頭部との間にスラスト軸受を備えている。
【0025】
この内側股継手12のリンク回転中心は生理的股関節中心と一致せず、両者の間にあるオフセット量が保たれている。このリンク回転中心と生理的股関節中心との偏心は前進方向に向かってリンク回転中心が生理的股関節中心よりも後方に位置するように決められ、下肢支柱3L、3Rに対する内側股継手12の取付け角度により与えられる。このリンク回転中心と生理的股関節中心との偏心により装着者は体躯全体を傾けないで脚部振り出しに合わせて姿勢を修正することができる。
【0026】
さらに、取付け台16L、16Rは、図5(a)に示すように、内側股継手12の下肢支柱3L、3Rへ連結するための凹溝22を有する。この凹溝22には、図5(b)示すように、スペーサ23が嵌合しており、スペーサ23と下肢支柱3L、3Rとが図示しない締結部材によって連結されている。
【0027】
脚部の振り出しを助ける適切なクリアランスを得るために凹溝22によるリンク傾斜角度は望ましい値を保つようにする。解析によれば、このリンク傾斜角度は8〜16°の範囲が好ましい。最も好ましい値は10〜12°の範囲である。
一方、スペーサ31については予め6〜15mmの範囲で厚さを変えたものを用意し、装着者の身体的特徴に合わせて適切な厚さのものを使用する。
【0028】
本実施の形態は、上記構成からなるもので、歩行にあたり、脚長下肢装具2が装着者の左右の脚部に装着される。装着者が、たとえば、右脚の下肢支柱3Rを振り出すと、内側股継手12の取付け台16Rが前方に動き、第1リンク部材18Rの回動に連れて第1軸15aが半時計方向に回動する。
【0029】
このとき、第1軸15aに固定したピニオンギア14aが半時計方向に回動し、これとかみ合うピニオンギア14bが時計方向に回動し、第2軸15bの回動に従う第2リンク部材19Lが後方に逆に回動し、同時に、第2リンク部材19Rが第2軸15bを中心として前方に遊動し、半時計方向に回動する。
【0030】
さらに、第2リンク部材19Lの回動に倣い取付け台16Lが後方に移動し、この取付け台16Lの移動に従って第1リンク部材18Lが第1軸15aを中心として後方に遊動し、時計方向に回動する。
【0031】
このようにピニオンギア14a、14b、取付け台16L、16R、第1リンク部材18L、18Rおよび第2リンク部材19L、19Rが協働して左右の下肢支柱3L、3Rを逆位相をもって動作させることで、対応する左右の脚部について交互に前方に送って歩行することが可能になる。
【0032】
一般に、交互歩行のために装着者は歩を進める都度、体躯全体を振り出す脚部と反対の脚部側に傾けねばならない。この傾きを保つことにより振り出す脚の踵ないし靴底が歩行する床面あるいは地面から僅かに上がり、このとき、床面等との間に生じるクリアランスで両者の干渉を避けることができる。体躯全体を傾けることは体重の移動を伴い、たとえば杖によって体重を支えるのであれば、1歩毎の体重の移動により大きくエネルギを消耗してしまう。
【0033】
本実施の形態ではリンク回転中心について生理的股関節中心から予め決められたオフセット量だけ後方に偏心させている。このオフセット量を適正に保つことにより体躯全体を左右に大きく傾けることなく、振り出す脚の踵ないし靴底と床面あるいは地面との間に一定のクリアランスを保持することができる。特に、最も困難な歩行始動初期に振り出す脚の踵ないし靴底と床面あるいは地面との間にクリアランスを保つことができ、振り出す脚を容易に前方に送ることが可能になる。
【0034】
図6に歩行時の生理的股関節中心とリンク回転中心との関係を示す。ここで、(a)は脚の開き角度が0°で、初期設定ではこの状態を想定している。(b)は脚の開き角度が約7°であり、脚部振り出しの早い段階を、また、(c)は脚の開き角度が約26°であり、脚部振り出しの最終段階をそれぞれ示している。
(a)の初期設定において内側股継手12のリンク回転中心は生理的股関節中心に対して後方に偏心している。脚部振り出しで脚の開き角度が増し、(b)の約7°に達するが、リンク回転中心は偏心させた当初の位置を保持している。さらに、(c)に示す最大開き角度になったときも、リンク回転中心は偏心位置を保持している。この過程で生理的股関節中心は脚の開き角度が増すに従い少しだけ下方に変位するが、リンク回転中心との関係は基本的に変化しない。
【0035】
リンク傾斜角度を好ましい値に保持した本実施の形態におけるクリアランスは歩行中の脚の開き角度が12°の場合において4.50mm、26°の場合で6.70mmである。いずれも干渉を避けるのに十分な値であり、体躯全体を右あるいは左に傾けることなく、歩行を続けることができる。次の段階で後方の脚を引き寄せ、初期の両脚が揃った状態に持って来る過程において、内側股関節のオフセットは一見不利に働くかに見えるが、この段階においては、体躯全体をある程度前方に傾けることにより、重心の前方移動と共に、接地側の装具足底により体躯が上方に押し上げられ、床と後方の足部のクリアランスは確保される。この状況は多くの実際の歩行実験において確認されている。
【0036】
かくして、上記構成からなる歩行補助装具1においては、歩行に際して体躯全体を大きく傾けることなく、振り出す脚の踵等と床面等との間に一定のクリアランスを保つことが可能になる。これにより、交互歩行において脚部振り出しを容易に果たすことができる。さらに、体躯全体の左右への移動が少なくなり、体重の移動による歩行障害者の連続した歩行を妨げる、エネルギの消耗を減少することが可能になる。
【0037】
本実施の形態においては、内側股継手12のリンク回転中心を生理的股関節中心に対して偏心して配置したので、大掛かりで、かつ、重さのある装置を使用することなく、装着者の踵等と床面等との間のクリアランスを確保することが可能になり、交互歩行において脚部振り出しを容易に果たすことができる。また、体躯全体の左右への移動が少なくなり、エネルギの消耗を減少することができる。
【0038】
さらに、上記と異なる本発明の実施の形態について説明する。図7および図8において、歩行補助装具30は装着者の腰部に装着する腰部装具31を備えている。この腰部装具31はウエストバンド32と、このウエストバンド32を身体背側において腰部に固定するベルト33とからなる。このウエストバンド32は容易にたわみを生じない硬質樹脂で構成されている。ウエストバンド32は前面に後記の滑車装置を支持するリテーナ34を備える。
【0039】
さらに、腰部装具31には前面に滑車装置35が設けられている。この滑車装置35は左右の脚部の間隔に合わせて配置される2個のプーリー36と、この2個のプーリー36と後記の連結ピースとにわたるように引き通す弾性コード37とから構成されている。この弾性コード37は所定の弾性を有する材料、たとえば、ウレタンからなる。
【0040】
また、歩行補助装具30は装着者の装具前側大腿部にそれぞれ装着する逆V字状の2個の連結ピース38を有する。この連結ピース38はその両端が装着者の大腿部両側部において大腿部に延びる下肢支柱3L、3Rと連結されている。この連結ピース38は皮革にて作られている。
【0041】
なお、本実施の形態では下肢装具として脚長下肢装具2を使用している。また、内側股継手はリンク回転中心が生理的股関節中心に対して偏心している内側股継手12を使用している。
【0042】
本実施の形態は上記構成からなるもので、歩行にあたり、脚長下肢装具2が装着者の左右の脚部に装着される。これに加えて、腰部装具31が腰部に装着され、滑車装置35と下肢支柱3L、8Rとがそれぞれ連結ピース38によって結ばれる。腰部装具31及び脚長下肢装具2は弾性コードのみによって連結され、機械的なヒンジ、支柱等は使用しない。
【0043】
コード37は装着者が起立したとき、一定の初期張力で引き延ばされる状態にある。装着者が、たとえば杖で支えられた上体の筋力の加勢で右脚の下肢支柱3Rを振り出す。すると、下肢支柱3Lは左脚と共に相対的に後方に動く、この時のコードの張力は初期とほぼ同一である。重心が右脚に移り、接地していた左脚を浮かせたとき、初期の張力は解放され、後方の左脚を前方に加速する、次に装着者はやや上体を後方に反らせる、このときコードは張力を増し、更に左脚を前方に加速する。蓄えた弾性エネルギー、すなわち復元力によって弾性コード37と結ばれた下肢支柱3Lが前方に動き、左脚が前方に駆動される。このサイクルが左右交互に繰り返され、交互歩行が実現される。
【0044】
このように歩行障害者の残存機能を利用する片方の脚の振り出しと、反対側の後方伸展、及び上体の後方伸展の複合効果により、弾性コード37にエネルギを蓄え、弾性コード37の復元力で後方に置かれた脚を自然に前方に送りながら、残存する上体筋力の加勢で振り出しを容易にすることができる。
【0045】
さらに、この滑車装置35を主体に構成した簡便な手段により、従来の機械的な左右脚連動機構を省略することが可能になる。たとえば、左右脚連動機構は身体背部に装着するものが多いが、これは車椅子等に座位を取るとき、左右脚連動機構が邪魔になり、その都度、装具を取り外すなどの面倒な作業を強いられる。
本実施の形態の簡便な手段においては座位を取った場合に、弾性コード37が弛緩状態になり、しかも、滑車装置35が身体前部にあることから、邪魔にならず歩行補助装具の取り扱いを簡単にすることができる。なお腰部装具31は、体幹に独立して装着され、脚長下肢装具2との間は、何ら機械的なヒンジ等を使用していない。この点でも座位において邪魔にならず、そのまま車椅子等に搭乗可能で、簡便に使用可能である。
【0046】
また、脊髄損傷者は、体幹部無しの脚長下肢装具2の着用下で直立した姿勢では、股関節周りの筋肉の麻痺により、股関節の正常な角度を筋力で保つことができず、関節包および靭帯が伸びるだけ伸びた状態でバランスする。このため、立位においては股関節が過度伸展状態となり、この状態を長く続けると、脊椎の骨盤に近い腰椎部が大きく前に反り(過度前湾)、骨盤前傾状態でバランスを保つようになる。この(過度前湾)バランスは、年月の経過と共に悪化の傾向が強い。このような脊髄損傷者に対して、受傷後の早い段階で、本実施の形態の腰部装具31および滑車装置35を装着することで、弾性コード37の初期張力によって、股関節を過伸展より正常位置に近づけ、腰椎の過度前湾変形を予防することが可能になる。
【0047】
本実施の形態においては下肢支柱3L、3Rと連結する簡便な滑車装置35を設けているので、大掛かりで、重さのある装置を使用することなく、僅かな上体筋力の加勢で脚部振り出しを容易に果たすことができる。
【0048】
また、この簡便な滑車装置35を用いることにより、複雑な左右脚連動機構の機能を代用することが可能で、左右脚連動機能付き装具の、着脱に伴う面倒な作業が不要となり、歩行補助装具の取り扱いを簡単にすることができる。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、内側股継手のリンク回転中心を生理的股関節中心に対して偏心して配置したので、装着者の踵等と床面等との間のクリアランスを確保することが可能となり、交互歩行において脚部振り出しを容易に果たすことができる。
また、本発明によれば、下肢支柱と連結する簡易な滑車装置を設けているので、僅かな上体筋力の加勢で脚部振り出しを容易に果たすことができる。さらに脊髄損傷者の腰椎過度前湾等の2次的障害を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による歩行補助装具の実施の形態を示す側面図。
【図2】図1に示す歩行補助装具の正面図。
【図3】図1に示す歩行補助装具に組み込まれる内側股継手を示す構成図。
【図4】図3に示す内側股継手の縦断面図。
【図5】図3に示す内側股継手の取付け台の詳細を示すもので、(a)は取付け台の正面図、(b)はスペーサと組み合せた取付け台の縦断面図。
【図6】本発明に係る歩行補助装具による歩行時の生理的股関節中心とリンク回転中心との関係を示す図。
【図7】本発明に係る歩行補助装具の他の実施の形態を示す側面図。
【図8】図7に示す歩行補助装具の正面図。
【符号の説明】
1、30 歩行補助装具
2 脚長下肢装具
3L、3R 下肢支柱
12 内側股継手
14a、14b ピニオンギア
16L、16R 取付け台
18L、18R 第1リンク部材
19L、19R 第2リンク部材
31 腰部装具
32 ウエストバンド
35 滑車装置
36 プーリー
37 弾性コード
Claims (1)
- 装着者の左右の下肢両側部に倣いほぼ下肢全長にわたって装着される脚長下肢装具と、装着者の左右の大腿部内側にあって前記脚長下肢装具の左右の下肢支柱を互いに連結し、かつ、該下肢支柱を前後方向に交互に動作させるリンク機構からなり、リンク回転中心が装着者の生理的股関節中心に対して後方に偏心するように配置されてなる内側股継手と、装着者の腰部に巻装される腰部装具と、該腰部装具の前面に設けられて前記脚長下肢装具の左右の前記下肢支柱とそれぞれ連結する一対のプーリーにわたるように設けられた弾性要素を有する滑車装置と、を備えてなる歩行補助装具。
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