JP4571319B2 - 油圧緩衝器のボトム構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は油圧緩衝器のボトム構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、油圧緩衝器として、実開平7-16043号公報に記載の如く、外筒内に内筒を立設し、内筒の下端部をボトムピースを介して外筒の底部に支持したものがある。ボトムピースは、外筒の底部に着座する複数の脚部を底面に突設するとともに、外筒と内筒の間のリザーバ室を内筒の内部のダンパ室に連絡する押し側流路と引き側流路を設けている。押し側流路は、ディスクバルブを伴って、油圧緩衝器の圧縮時に圧側減衰力を発生可能とする流路であり、複数の丸孔にて形成されている。引き側流路は、チェックバルブを伴って、油圧緩衝器の伸張時に、リザーバ室の油をダンパ室に吸い込み補給する流路であり、吸込み性を良くするために角孔としてその流路面積を大きくしている。
【0003】
また、従来技術では、ボトムピースに別部材のセンタリング部材を共締めする等にて備え、外筒に対する内筒のセンタリング性を確保している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
▲1▼ボトムピースは通常、焼結金属等で作成されるため、金型が必要になり、引き側流路を構成する角孔は金型の角ピンにより形成される。ところが、角ピンは、汎用ピンが用意されず、切削加工して用意する必要があり、金型の作成を困難にし、その修正や破損時の交換性が悪く、メンテナンスに長時間を必要として油圧緩衝器の製造ライン効率を阻害する。
【0005】
▲2▼ボトムピースと別部材のセンタリング部材を用いるため、部品点数が多く、組立工数も多くなり、油圧緩衝器の生産性を阻害する。
【0006】
本発明の課題は、ボトムピースの金型を容易に作成可能にしながら、引き側流路に大きな流路面積を確保することにある。
【0007】
また、本発明の課題は、ボトムピースと別部材のセンタリング部材を廃止することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、外筒内に内筒を立設し、内筒の下端部をボトムピースの底面に突設した脚部を介して外筒の底部に支持した油圧緩衝器のボトム構造において、外筒と内筒の間のリザーバ室を内筒の内部のダンパ室に連絡する引き側流路を、ボトムピースの底面に突設した複数の脚部の間に設けた複数の丸孔にて形成し、ボトムピースの上面の外周側に、内筒の下端部が圧入される環状段差部を備えるとともに、ボトムピースの外周の周方向複数位置に外筒の側に張り出て外筒に対する内筒のセンタリングを行なうセンタリング用突起を備え、ボトムピースのセンタリング用突起をボトムピースの複数の厚肉の脚部の間の薄肉部分の外周に形成したものである。
【0011】
【作用】
請求項1の発明によれば下記(a)〜(d)の作用がある。
(a)ボトムピースに設ける引き側流路を丸孔にしたから、ボトムピースを焼結金属等で作成するための金型において引き側流路を成形する部分を丸ピンにて形成できる。丸ピンは、加工容易で、汎用ピンも用意されており、金型を容易に作成できるし、その修正や破損時の交換性も良く、メンテナンスを短時間にし、油圧緩衝器の製造ライン効率を向上できる。
【0012】
(b)上述(a)の丸孔がボトムピースの脚部にかかると、脚部を削ることになってボトムピースの着座の安定を害することになるから、丸孔の孔径をできるだけ小さ目にせざるを得ない。本発明では、丸孔を脚部と脚部の間に設けたから、脚部を削ることなく大型安定化できる上に、丸孔の孔径を大き目にして引き側流路に大きな流路面積を確保でき、吸込み性の良い引き側流路を形成できる。また、丸ピンも大きくでき、金型の耐久性を向上することもできる。
【0013】
(c)ボトムピースの外周にセンタリング用突起を形成したから、ボトムピースと別部材のセンタリング部材を廃止しながら、外筒に対する内筒のセンタリング性を確保でき、油圧緩衝器の部品点数を少なく、組立工数も少なくし、油圧緩衝器の生産性を向上できる。
【0014】
(d)上述(c)のセンタリング用突起をボトムピースの脚部と脚部の間の薄肉部分の外周に形成したから、厚肉の脚部の外周に形成する場合に比して、焼結粉末等の素材の該突起部分への充填性を良くでき、センタリング用突起の成形品質を向上できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は油圧緩衝器を示す半断面図、図2はピストンバルブ装置を示す拡大断面図、図3はボトムバルブ装置を示す拡大断面図、図4はボトムピース組立体を示す断面図、図5はボトムピースを示し、(A)は断面図、(B)は平面図、(C)は底面図である。
【0016】
図1は、ストラット型サスペンションを構成する複筒型式油圧緩衝器10であり、ダンパチューブ11を外筒12と内筒13からなる二重管としている。油圧緩衝器10は、外筒12に内蔵の内筒13にピストンロッド14を挿入し、ピストンロッド14の上端部に車体側取付ブラケット(不図示)を結合し、外筒12の下端部をナックルブラケット15により車輪側に連結して車両の懸架装置を構成する。
【0017】
油圧緩衝器10は、外筒12の外周の下スプリングシート16と、ピストンロッド14の上端部の取付ブラケットに支持される上スプリングシート(不図示)の間に懸架ばね(不図示)を介装し、車両走行時の衝撃力を吸収する。
【0018】
油圧緩衝器10は、外筒12に内筒13を立設して内蔵するに際し、内筒13の下端部をボトムピース17を介して外筒12の底部にセンタリングして支持し、内筒13の上端部をロッドガイド18を介して外筒12の上端開口部にセンタリングして支持する。そして、油圧緩衝器10は、ロッドガイド18の上部にピストンロッド14が貫通するオイルシール等の軸封部19を備え、外筒12の上端かしめ部により、軸封部19、ロッドガイド18、内筒13、ボトムピース17を外筒12の底部との間に挟持する。
【0019】
油圧緩衝器10は、ピストンバルブ装置(伸び側減衰力発生装置)20と、ボトムバルブ装置(圧側減衰力発生装置)40とを有し、懸架ばねによる衝撃力の吸収に伴うダンパチューブ11とピストンロッド14の伸縮振動を制振する。
【0020】
(ピストンバルブ装置20)
ピストンバルブ装置20は、図2に示す如く、ピストンロッド14にバルブストッパ21、バルブシート22、チェックバルブ23、ピストン24、ディスクバルブ25、バルブシート26、バルブストッパ27を装着し、これらをナット28で固定している。ピストン24は、内筒13の内部をピストン側ダンパ室29Aとロッド側ダンパ室29Bに区画し、両ダンパ室29A、29Bを連通する押し側流路30Aと引き側流路30Bを形成し、押し側流路30Aにチェックバルブ23を、引き側流路30Bにディスクバルブ25を設けてある。
【0021】
油圧緩衝器10の圧縮時には、ピストン側ダンパ室29Aの油が押し側流路30Aを通ってチェックバルブ23をたわみ変形させて開き、ロッド側ダンパ室29Bに導かれる。伸張時には、ロッド側ダンパ室29Bの油が引き側流路30Bを通ってディスクバルブ25をたわみ変形させて開き、ピストン側ダンパ室29Aに流れ、伸び側減衰力を発生する。
【0022】
(ボトムバルブ装置40)
油圧緩衝器10は、外筒12と内筒13の間をリザーバ室41とし、このリザーバ室41の内部を油室とガス室で区画している。ボトムバルブ装置40は、図3に示す如く、外筒12の底部と内筒13の下端部の間に設けたボトムピース17によりピストン側ダンパ室29Aとリザーバ室41とを区画し、図4に示す如く、ボトムピース17にボルト42(ナット42A)を挿着し、ボルト42とナット42Aの間にばね43、チェックバルブ44、ボトムピース17、ディスクバルブ45を挟着するとともに、ボトムピース17にピストン側ダンパ室29Aとリザーバ室41とを連通する引き側流路46と押し側流路47を形成し、引き側流路46にチェックバルブ44を、押し側流路47にディスクバルブ45を設けてある。
【0023】
油圧緩衝器10の圧縮時に、内筒13に進入するピストンロッド14の進入容積分の油がピストン側ダンパ室29Aからボトムピース17の押し側流路47を通ってディスクバルブ45をたわみ変形させて開き、リザーバ室41に押出され、圧側減衰力を発生する。
【0024】
油圧緩衝器10の伸長時に、内筒13から退出するピストンロッド14の退出容積分の油が、リザーバ室41からボトムピース17の引き側流路46を通ってチェックバルブ44を押し開き、ピストン側ダンパ室29Aに吸い込まれて補給される。
【0025】
しかるに、油圧緩衝器10にあっては、図4、図5に示す如く、ボトムピース17に設ける押し側流路47を複数の丸孔47Aにて形成し、引き側流路46もまた複数の丸孔46Aにて形成している。引き側流路46はボトムピース17の上面に設けたチェックバルブ44のための内外の環状弁座48A、48Bに挟まれる複数位置に開口し(図5(B))、押し側流路47はボトムピース17の下面に設けたディスクバルブ45のための内外の環状弁座49A、49Bに挟まれる複数位置に開口する(図5(C))。尚、ボトムピース17を中心から押し側流路47までの距離は、ボトムピース17の中心から引き側流路46までの距離より小さく設定され、ディスクバルブ45のたわみ変形に基づく圧側減衰力が大きくなるように設定してある。
【0026】
ここで、ボトムピース17は、焼結粉末を金型に充填して成形する等により作成された成形体であり、外筒12の底部に着座するための複数(例えば4個)の脚部51を底面に突設して備え、周方向で相隣る脚部51と脚部51の間に各複数(例えば各3個)の前述した丸孔46Aからなる引き側流路46を設けてある。
【0027】
従って、ボトムピース17を作成する金型にあっては、引き側流路46と押し側流路47の丸孔46A、47Aをそれぞれ適宜外径の丸ピンにて形成するものとなる。
【0028】
また、ボトムピース17は、内筒13の下端部が圧入される環状段差部52を上面の外周側に備えるとともに、外筒12の側に張り出て内筒13を外筒12に対しセンタリングするためのセンタリング用突起53を外周の周方向複数位置(例えば4位置)に形成している。センタリング用突起53は、ボトムピース17の複数の脚部51の間の外周に形成するのが良い。
【0029】
本実施形態によれば、以下の作用がある。
▲1▼ボトムピース17に設ける引き側流路46を丸孔46Aにしたから、ボトムピース17を焼結金属等で作成するための金型において引き側流路46を成形する部分を丸ピンにて形成できる。丸ピンは、加工容易で、汎用ピンも用意されており、金型を容易に作成できるし、その修正や破損時の交換性も良く、メンテナンスを短時間にし、油圧緩衝器の製造ライン効率を向上できる。
【0030】
▲2▼上述▲1▼の丸孔46Aがボトムピース17の脚部51にかかると、脚部51を削ることになってボトムピース17の着座の安定を害することになるから、丸孔46Aの孔径をできるだけ小さ目にせざるを得ない。本発明では、丸孔46Aを脚部51と脚部51の間に設けたから、脚部51を削ることなく大型安定化できる上に、丸孔46Aの孔径を大き目にして引き側流路46に大きな流路面積を確保でき、吸込み性の良い引き側流路46を形成できる。また、丸ピンも大きくでき、金型の耐久性を向上することもできる。
【0031】
▲3▼ボトムピース17の外周にセンタリング用突起53を形成したから、ボトムピース17と別部材のセンタリング部材を廃止しながら、外筒に対する内筒のセンタリング性を確保でき、油圧緩衝器の部品点数を少なく、組立工数も少なくし、油圧緩衝器の生産性を向上できる。
【0032】
▲4▼上述▲3▼のセンタリング用突起53をボトムピース17の脚部51と脚部51の間の薄肉部分の外周に形成したから、厚肉の脚部51の外周に形成する場合に比して、焼結粉末等の素材の該突起部分への充填性を良くでき、センタリング用突起53の成形品質を向上できる。
【0033】
▲5▼ボトムピース17は、引き側流路46と押し側流路47の全ての流路を丸孔46A、47Aにて形成したから、ボトムピース17の成形型を極めて簡易に作成できる。
【0034】
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0035】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ボトムピースの金型を容易に作成可能にしながら、引き側流路に大きな流路面積を確保することができる。また、本発明によれば、ボトムピースと別部材のセンタリング部材を廃止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は油圧緩衝器を示す半断面図である。
【図2】図2はピストンバルブ装置を示す拡大断面図である。
【図3】図3はボトムバルブ装置を示す拡大断面図である。
【図4】図4はボトムピース組立体を示す断面図である。
【図5】図5はボトムピースを示し、(A)は断面図、(B)は平面図、(C)は底面図である。
【符号の説明】
10 油圧緩衝器
12 外筒
13 内筒
17 ボトムピース
29A、29B ダンパ室
41 リザーバ室
46 引き側流路
46A 丸孔
51 脚部
53 センタリング用突起
Claims (1)
- 外筒内に内筒を立設し、内筒の下端部をボトムピースの底面に突設した脚部を介して外筒の底部に支持した油圧緩衝器のボトム構造において、
外筒と内筒の間のリザーバ室を内筒の内部のダンパ室に連絡する引き側流路を、ボトムピースの底面に突設した複数の脚部の間に設けた複数の丸孔にて形成し、
ボトムピースの上面の外周側に、内筒の下端部が圧入される環状段差部を備えるとともに、ボトムピースの外周の周方向複数位置に外筒の側に張り出て外筒に対する内筒のセンタリングを行なうセンタリング用突起を備え、
ボトムピースのセンタリング用突起をボトムピースの複数の厚肉の脚部の間の薄肉部分の外周に形成したことを特徴とする油圧緩衝器のボトム構造。
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