JP4568998B2 - 誘導電動機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、巻上機の駆動源としての誘導電動機をベクトル制御により可変速制御する誘導電動機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ベクトル制御方式のインバータで給電される誘導電動機が減速機を介して巻上機を駆動するシステムにおいては、通常は巻上機の最大荷重での最高走行速度と、その最大荷重で加減速する際の必要トルク最大値と、減速機のギヤ比から誘導電動機の定格速度と定格出力トルクを選定している。
しかし、このようなシステムを例えばクレーン巻上機などに適用する場合などでは、最大荷重に満たない荷重で昇降させることが多く、上記のような条件を採用した誘導電動機では、システム効率が低くなってしまう。そのため、軽荷重で昇降させるときには、最大荷重のときに比べてより高速に昇降させてシステム効率を改善するようにした誘導電動機の制御装置を、出願人は先に提案している(特願2000−065958号:提案装置ともいう)。
【0003】
図5は、この種の提案装置を示すブロック図である。なお、同図において、1は速度指令器、2は単一積分器、3は速度調節器、4は磁束指令値演算器、5はベクトル演算器、6は速度検出器、7は交流電源、8はインバータ、9は誘導電動機(モータともいう)、10は負荷、21は加速度演算回路、22は加速トルク演算回路、23はトルク設定回路、24は荷重推定回路、25はトルク演算回路、26は速度演算回路、27は速度指令値変換回路を示す。
【0004】
図5において、速度指令器1は、誘導電動機9が運転すべき回転速度の速度指令値N# を指令する。速度指令値変換回路27は、速度指令器1の指令値N# と速度演算回路26の演算値N0 # のいずれか大きいほうの値を、新たな速度指令値N# として単一積分器2に出力する。
単一積分器2は、予め定めた加速勾配(増加値/単位時間)または減速勾配(減少値/単位時間)で、前記速度指令値N# に達する(速度設定値N* =N# )まで増加または減少させる速度設定値N* を出力する。
【0005】
速度調節器3は、上記速度設定値N* と速度検出器6の検出値nとの偏差を調節演算し、その差を零にするトルク指令τ* を出力する。磁束指令値演算回路4は、速度検出値nから磁束指令値Φ* を演算して出力する。
また、ベクトル演算器5では、トルク指令値τ* と磁束指令値Φ* とからインバータ8をベクトル制御する制御信号を出力し、その結果、交流電源7の電力がインバータ8により所望の電圧と周波数の交流電力に変換され、このインバータ8が出力する交流電力が供給される誘導電動機9を、ベクトル制御方式により可変速制御することができる。
【0006】
図6は、速度指令値N# と速度設定値N* と関係を説明するためのタイムチャートである。
図6に示す時刻T0 で、正転方向の速度指令値N# が発せられると、時刻T0 から時刻T1 までの期間は、単一積分器2に予め設定された加速勾配(増加値/単位時間)に基づいて速度設定値N* を正転方向に増加させ、時刻T1 でN* =N# になり、時刻T1 から速度指令値N# が零にされる時刻T2 までの期間は、単一積分器2がN* (=N# )を出力し、時刻T2 から時刻T3 までの期間は、単一積分器2に予め設定された減速勾配(減少値/単位時間)に基づいて速度設定値N* の正転方向の値を減少させ、時刻T3 でN* =0となり、時刻T3 から逆転方向の速度指令値N# が発せられる時刻T4 までの期間は、単一積分器2がN* (=0)を出力し、時刻T4 から時刻T5 までの期間は、上記減速勾配に基づいて速度設定値N* の逆転方向の値を増加させ、時刻T5 でN* =N# になり、時刻T5 から速度指令値N# が零にされる時刻T6 までの期間は、単一積分器2がN* (=N# )を出力し、時刻T6 から時刻T7 までの期間は、上記減速勾配に基づいて速度設定値N* の逆転方向の値を減少させ、時刻T7 でN* =0となる。
【0007】
図7は、図5に示す誘導電動機9の負荷10として、減速機を介して巻上機を駆動するシステムの動作説明図であり、同図(イ)は巻上機の状態を示し、同図(ロ)は巻上機を昇降させる誘導電動機9の速度を示し、同図(ハ)は巻上機の昇降に伴う誘導電動機9の出力トルクを示す。なお、時刻t0 以前の期間では荷重(図示のm)は地上にあり、誘導電動機9は停止しており(速度=0)、かつ図示されないブレーキにより制動が掛けられている。
【0008】
まず、時刻t0 より巻上機は巻き上げ動作を開始するが、図7(イ)の左端図は時刻t0 の巻上機の状態を示し、上記ブレーキは時刻t0 の時点で開放され、時刻t0 より時刻t1 までは上記単一積分器2に設定された加速勾配で、巻上機の巻き上げ速度Vを増加させている期間を示す。時刻t1 において、上記速度指令値N# と速度設定値N* が一致し、時刻t1 より時刻t2 までは巻き上げ速度Vが一定の期間を示している。時刻t2 より時刻t3 までは、単一積分器2に予め設定された減速勾配で、巻上機の巻き上げ速度Vを減少させている期間を示している。また、時刻t3 より時刻t4 までは、誘導電動機9は停止しており(速度=0)、かつ図示されないブレーキにより制動が掛けられ、この期間では図7(イ)の中央図のように、荷重(m)は空中に停止している。
【0009】
次の時刻t4 から時刻t5 までは、単一積分器2に設定された加速勾配で巻上機の巻き下げ速度Vを増加させている期間を示す。時刻t5 において、速度指令値N# と速度設定値N* が一致し、時刻t5 より時刻t6 までは、巻き下げ速度Vが一定の期間を示している。時刻t6 より時刻t7 までは、単一積分器2に予め設定された減速勾配で、巻上機の巻き下げ速度Vを減少させている期間を示している。時刻t7 以降の期間では荷重(m)は地上にあり、誘導電動機9は停止しており(速度=0)、かつ図示されないブレーキによって制動が掛けられている。7(イ)の右端図は時刻t7 での巻上機の状態を示している。このとき、巻上機の一定走行に必要な誘導電動機9の出力トルクτ0 と、巻上機の加速または減速に必要な誘導電動機9の出力トルクτ0 ±τ1 とを図7(ハ)に示す。
【0010】
次に、加速度演算回路21、加算トルク演算回路22、トルク設定回路23、荷重推定回路24、トルク演算回路25、速度演算回路26および速度指令値変換回路27等によりシステムの運転効率を改善すべく、巻上機の荷重に対し運転可能な最大回転速度の演算について説明する。
図8は、誘導電動機9の負荷10としての減速機10aを介した巻上機10bと、巻上機10bの荷重(m)とからなるシステムを示す構成図である。
【0011】
図8において、誘導電動機9が回転速度n〔r/min〕で回転することで、減速機10aを介した巻上機10bが回転し、荷重mは速度V〔m/min〕で上昇,下降する。上記速度設定値N* の増加または減少している期間、すなわち加減速時における速度調節器3の出力であるトルク指令τ* と走行トルクτ0 と加減速必要トルクτ1 の間には次の(1)式の関係がある。
τ* =τ0 +τ1 …(1)
この走行トルクτ0 は、次の(2)式の右辺に示す2つの成分に分解される。
τ0 =τ01+τ02 …(2)
ここに、τ01:荷重mに対する走行トルク
τ02:機械損補償トルク
【0012】
また、加減速必要トルクτ1 は、次の(3)式の右辺に示す2つの成分に分解される。
τ1 =τ11+τ12 …(3)
ここに、τ11:荷重mに対する加減速必要トルク
τ12:荷重m以外、即ち電動機と巻上機に対する加減速必要トルク
上記τ01,τ11,τ12は、システムの機械仕様からそれぞれ(4)〜(6)式のように表わせる。
τ01=mV/2πn〔kgfm〕 …(4)
τ11=m・(V2 /π2 n2 )(1/375)・Δn〔kgfm〕…(5)
τ12=(GD2 /375)・Δn〔kgfm〕 …(6)
ここに、m:荷重質量〔kg〕
V:昇降速度〔m/min〕
n:電動機回転速度〔r/min〕
Δn:電動機回転加速度〔r/min〕
GD2 :電動機軸換算全はずみ車効果〔kgfm2 〕
【0013】
上記システムにおける機械損補償トルクτ02は、減速機10aの効率に基づくものが大勢を占めるので、次の(7)式で得られる値をトルク設定回路23に予めプリセットする。
τ02={減速機定格出力×(1−減速機効率)/電動機定格出力}
×電動機定格トルク〔kgfm〕 …(7)
また、機械損は誘導電動機9が回転方向によりその極性が異なるので、トルク設定回路23には速度検出値nを取り込み、極性を持った機械損補償トルクτ02を出力するようにしている(図11参照)。
【0014】
上記(6)式の荷重m以外、すなわち電動機と巻上機に対する加減速必要トルクは、予め設定できる電動機軸換算全はずみ車効果GD2 と、後述の加速度演算回路21で得られる加速度Δnに基づく乗算演算を、加算トルク演算回路22で行なう。加速度演算回路21は、次式(8)の演算を行なう。
Δn=(nk −n(k-1) )/TS 〔r/min/s〕 …(8)
ここに、nk :今回の電動機速度検出値〔r/min〕
n(k-1) :前回の電動機速度検出値〔r/min〕
TS :速度検出周期〔s〕
なお、速度調節器3により速度設定値N* と速度検出値nとの偏差が零となるように制御されるので、加速度Δnは単一積分器2に設定されている値を用いて行なうこともできる。
【0015】
トルク設定回路23からの出力である機械損補償トルクτ02と、加算トルク演算回路22からの出力である加減速必要トルクτ12とを、上記(1)〜(3)式に代入すると、次の(9)式が得られる。
τ01+τ11=τ* −τ02−τ12 …(9)
すなわち、(4),(5),(9)式の間には(4)+(5)=(9)の関係があるので、この関係式に基づいて荷重推定回路24では荷重mを求める演算を行なっている。
また、トルク演算回路25において、荷重推定回路24で得られた荷重mの推定値と上記(4)式とから、荷重mに対する走行トルクτ01が求まり、同様に上記(5)式とから、荷重mに対する加減速必要トルクτ11が求まる。
【0016】
次に、速度演算回路26での誘導電動機9の運転可能最大速度指令値N0 # の演算について説明する。
まず、加算トルク演算回路22の演算値(加減速必要トルクτ12)と、トルク設定回路23の設定値(機械損補償トルクτ02)と、トルク演算回路25の演算値(τ01,τ11)と、巻上機10bの加減速に必要な誘導電動機9の出力トルクの最大値(τM1)との間には、次の(10)式の関係がある(図7参照)。
τM1=|τ01+τ02|+|τ11+τ12| …(10)
次に、図9に示す誘導電動機9の短時間運転許容トルク−回転速度特性図(第1象限のみを図示している)から、上記τM1に対応する誘導電動機9の速度指令値N01 # を求める。なお、この速度指令値N01 # は次式(11)となる。
N01 # =(τA /τM1)・NB …(11)
ここに、NB :電動機定格速度
τA :電動機定格速度の短時間運転許容トルク
【0017】
また、昇降距離の長いシステムに適用する場合には、定速で昇降させる時間も長くなることから巻上機10bの定速運転に必要な誘導電動機9の出力トルクの最大値(τM2)は、次の(12)式の関係にある。
τM2=|τ01+τ02| …(12)
この場合は、図10に示す誘導電動機9の連続運転許容トルク−回転速度特性図(第1象限のみを図示している)から、上記τM2に対応する誘導電動機9の速度指令値N02 # を求める。その速度指令値N02 # は次の(13)式となる。
N02 # =(τB /τM2)・NB …(13)
ここに、NB :電動機定格速度
τB :電動機定格速度の連続運転許容トルク
【0018】
すなわち、速度演算回路26では、上記N01 # またはN02 # のいずれか小さい方の値を、誘導電動機9の運転可能最大速度指令値N0 # として出力する。または、このシステムの動作モードに合わせN01 # またはN02 # のいずれか一方の値を選択して、誘導電動機9の運転可能最大速度指令値N0 # として出力する。
さらに、速度指令値変換回路27では、速度指令器1の指令値N# または速度演算回路26の演算値N0 # のいずれか大きい方を新たな速度指令値N# として単一積分器2に出力する。そして、荷重推定回路24で推定した荷重m、誘導電動機の短時間および連続の許容トルク−速度特性などから、誘導電動機の運転可能最大速度を算定しこの速度で運転することにより、例えばクレーン巻上機を駆動するシステムなどにこの誘導電動機の制御装置を適用したときに、運転効率を改善できることになる。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような提案装置では、機械伝達効率を機械損補償トルクとして固定量として演算処理しているため、演算精度が悪いという難点がある。
また、巻き上げ動作と巻き下げ動作では、異なった運転可能最大速度を演算していた(巻き下げ時の方が、運転可能最大速度が大きくなっていた。)。クレーン巻上機を駆動するシステムなどでは、オペレータが運転操作を行なうため、同一荷重で運転しているにも関わらず、巻き上げ時と巻き下げ時で運転速度が異なり、操作に違和感を生じるという難点もある。
さらには、クレーン巻上機等には、定格荷重時の定格速度は仕様で決まっているが、運転可能最大速度で運転を行なうと定格荷重時には定格速度以上で運転されてしまうという難点もある。
したがって、この発明の課題は、上記諸問題を解決し、システムの使い勝手を改善することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するため、請求項1の発明では、インバータで給電される誘導電動機が減速機を介して巻上機を駆動するシステムであって、
前記誘導電動機に指令される速度指令値N# に基づき、現在の速度設定値N* を所定の加速勾配(増加値/単位時間)または所定の減速勾配(減少値/単位時間)で前記速度指令値N# に達する(N* =N# )まで増加または減少させるように、前記速度設定値N* と誘導電動機の速度検出値nとの偏差を調節演算して得られるトルク指令値τ* と、速度検出値nから所定の演算をして得られる磁束指令値Φ* とによりベクトル演算をし、その演算値に基づき前記インバータを介して誘導電動機をベクトル制御方式で可変速制御する誘導電動機の制御装置において、
前記速度検出値nから前記誘導電動機の加速度Δnを演算する加速度演算回路と、
前記演算値Δnと予め設定された誘導電動機の軸換算の全はずみ車効果として与えられる設定値GD2 とに基づいて、誘導電動機と巻上機に対する加減速必要トルクτ12を演算する加速トルク演算回路と、
前記トルク指令値τ* ,演算値τ12,速度検出値n,前記システムの機械効率ηおよびτ* とτ12との差からトルクが駆動トルクか制動トルクかを判断するとともに、伝達係数kを演算する判別・演算回路と、
前記トルク指令値τ* ,演算値Δn,演算値τ12,速度検出値n,伝達係数kおよび速度検出値n時の巻上機の昇降速度Vから巻上機が昇降させている荷重mを推定する荷重推定回路と、
前記荷重推定値mと速度検出値nと演算値Δnと巻上機の昇降速度Vとから荷重mに対する走行トルクτ01と加減速必要トルクτ11を演算するトルク演算回路と、
巻上機の定格昇降速度Vと定格荷重mと機械効率ηとモータ定格出力Pとから巻上機自身の機械的仕様を実現させるための走行トルクを演算するとともに、この走行トルクと誘導電動機の許容トルクから運転に最適なトルク−回転速度特性を演算するトルク−回転速度演算回路と、
前記τ01,τ11,τ12と、前記誘導電動機の短時間および連続許容トルク−速度特性と、前記トルク−回転速度演算回路からの出力とから誘導電動機の運転可能最大速度指令N0 # を求める速度演算回路と、
前記運転可能最大速度指令N0 # を新たな速度指令N# とする速度指令変換回路とを設けたことを特徴とする。
上記請求項1の発明においては、前記機械効率ηをトルクに関する関数とすることができる(請求項2の発明)。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明の実施の形態を示すブロック図である。
図5に示す提案装置からトルク設定回路23を削除する一方、伝達係数演算回路28および巻上機自身の機械仕様を実現するための走行トルク−速度パターン演算回路29を付加した点が特徴である。また、荷重推定回路および速度演算回路はその演算内容が図5の場合とは異なっているので、荷重推定回路24A,速度演算回路26Aとして図示している。
【0022】
このような構成において、加減速時における速度調節器3の出力であるトルク指令τ* と、走行トルクτ0 と加減速必要トルクτ1 の間には、先の(1)式で示すような関係がある。
τ* =τ0 +τ1 …(1)
この走行トルクτ0 は先の(2)式と同じく2つの成分に分解されるが、そのうちの1つの成分τ01(荷重mに対する走行トルク)を用いて、次の(14)式のように表わすことができる。kは伝達係数(伝達効率)である。
τ0 =τ01×k …(14)
【0023】
また、加減速必要トルクτ1 は先の(3)式と同じく2つの成分τ11(荷重mに対する加減速必要トルク)とτ12(電動機と巻上機に対する加減速必要トルク)に分解されるが、ここでは次の(15)式のように表わす。
τ1 =τ11×k+τ12 …(15)
ここに、(τ* ・τ12)のトルクが駆動トルクならばk=1/η
(τ* ・τ12)のトルクが制動トルクならばk=η
であり、ηは機械効率を示す。
伝達係数演算回路28では、上記kを求めている。また、駆動,制動の判別は(τ* −τ12)のトルク極性とモータ速度nの極性の関係から求める。
【0024】
上記(1),(13)式および(14)式より、次の(16)式の関係が成立する。
τ01×k+τ11×k=τ* −τ12 …(16)
先の(4),(5)式と(16)式との間には、{(4)式+(5)式}×k=(16)式の関係があるので、この関係式から荷重推定回路24Aでは荷重mを求める演算をしている。
【0025】
巻上機自身の機械仕様を実現するための、走行トルク−速度パターン演算回路29は、予め装置に設定された巻上機仕様とモータ仕様から、図2に示すような特性を演算する。走行トルク−速度パターン演算回路29には、定格荷重では必ず定格速度が運転可能最大速度として演算でき、かつ、それ以外の荷重ではモータの許容トルクまで増速できるよう、図2の許容トルク−回転速度特性図(実太線参照:第1象限のみ図示)をメモリなどに格納している。
図2の特性図におけるτC は基底速度NB におけるモータ定格トルクであり、τk2は予め装置に設定された巻上機仕様とモータ仕様の関係から、下記(17)式のような演算をしてプリセットされている。
τk2={(m×V)/(6122.4×η)/P}×k1 ・τC …(17)
ここに、m:定格時の荷重〔kg〕,V:定格昇降速度〔m/min〕
η:機械効率,P:モータ定格出力,k1 :安全係数
【0026】
τk3は、τC に対するモータ最高速度NMAX におけるトルクで、次の(18)式で表わされる。
τk3=τC ×NB /NMAX (18)
速度が定格速度NB から最高速度NMAX の間ではモータ許容トルクは、出力一定特性となり、次の(19)式で示される。
許容トルク=τC ×N/NMAX (19)
【0027】
図2に示す許容トルク−回転速度特性図(実太線参照:第1象限のみ図示)は、τk2とτk3を結んだ▲1▼のラインと(19)式で決まる許容トルク▲2▼のラインの低い方をプロットしたものである。こうすることで、定格荷重では必ず定格速度が運転可能最大速度として演算でき、かつ、それ以外の荷重ではモータの許容トルクまで増速できるようにしている。
図2の許容トルク−回転速度特性図(実太線参照:第1象限のみ図示)におけるτ01/ηに対する電動機9の速度指令値N03 * を求める。τ01/ηからトルク量を演算するのは、巻き上げと巻き下げで同一の速度を演算させるためである。
なお、この速度指令値N03 * は、τ01がτ2k以上の場合、τ01と図2の許容トルク−回転速度特性図(実太線部分)が交差する点の速度N03 * となる。
速度演算回路26Aは、従来例で述べたN01 * と上記N03 * の演算を行なっており、いずれか小さい方の値を誘導電動機9の運転可能最大速度指令値N0 * として出力する。
【0028】
図4にこの発明の第2の実施の形態を示す。
同図からも明らかなように、この例は図1に機械効率補正演算回路30を付加して構成したもので、機械効率(伝達効率)ηをトルクの大きさの関数とした点が特徴である。その関数パターンの1例を図3に示す。
図3では、トルクの大きさが予め設定したτT 以上では、機械効率(伝達効率)ηを設計値ηT とし、トルクの大きさが予め設定したτT 以下の場合は、予め設定したτA ,τB ,ηA ,ηB から決まる点を線間補完するパターンとしている。なお、τA ,τB ,ηA ,ηB は実機でマニュアル調整して設定される。
こうすることで、演算で使用する機械効率を実動作に合わせて微調整できるため、巻き上げ時と巻き下げ時の演算値の差をより小さくできるという効果がもたらされる。
【0029】
以上では、誘導電動機の制御装置をPG(パルス発生器)付きベクトル制御方式のものとしているが、速度調節器を有し制御対象のモータをトルク制御可能な制御装置全てに適用することができる。例えば、制御装置がPGレスベクトル制御装置でも良く、モータも直流電動機,同期電動機などでも良い。
また、この発明は、カウンタウエイト(釣り合い重り)を含む昇降機システムにも適用可能である。
【0030】
【発明の効果】
この発明によれば、定格荷重では必ず定格速度が運転可能最大速度として演算でき、かつ、それ以外の荷重ではモータの許容トルクまで増速できるという利点が得られる。また、機械効率をトルクの大きさによる関数とすることで、実動作に合わせて微調整できるため、巻き上げ時と巻き下げ時の演算値の差をより小さくできるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】許容トルクと回転速度との関係を説明する特性図である。
【図3】機械効率とトルクとの関係を説明する特性図である。
【図4】この発明の第2の実施の形態を示すブロック図である。
【図5】提案装置を示すブロック図である。
【図6】図5の動作を説明するタイムチャートである。
【図7】提案装置で巻上機を駆動するシステムの動作説明図である。
【図8】提案装置から減速機を介して巻上機を駆動するシステムを示す構成図である。
【図9】短時間運転許容トルク−回転速度特性図である。
【図10】連続運転許容トルク−回転速度特性図である。
【図11】機械損補償トルクの説明図である。
【符号の説明】
1…速度指令器、2…単一積分器、3…速度調節器、4…磁束指令値演算器、5…ベクトル演算器、6…速度検出器、7…交流電源、8…インバータ、9…誘導電動機(モータ)、10…負荷、21…加速度演算回路、22…加速トルク演算回路、23…トルク設定回路、24,24A…荷重推定回路、25…トルク演算回路、26,26A…速度演算回路、27…速度指令値変換回路、28…伝達係数演算回路、29…トルク−速度パターン演算回路、30…機械効率補正演算回路。
Claims (2)
- インバータで給電される誘導電動機が減速機を介して巻上機を駆動するシステムであって、
前記誘導電動機に指令される速度指令値N# に基づき、現在の速度設定値N* を所定の加速勾配(増加値/単位時間)または所定の減速勾配(減少値/単位時間)で前記速度指令値N# に達する(N* =N# )まで増加または減少させるように、前記速度設定値N* と誘導電動機の速度検出値nとの偏差を調節演算して得られるトルク指令値τ* と、速度検出値nから所定の演算をして得られる磁束指令値Φ* とによりベクトル演算をし、その演算値に基づき前記インバータを介して誘導電動機をベクトル制御方式で可変速制御する誘導電動機の制御装置において、
前記速度検出値nから前記誘導電動機の加速度Δnを演算する加速度演算回路と、
前記演算値Δnと予め設定された誘導電動機の軸換算の全はずみ車効果として与えられる設定値GD2 とに基づいて、誘導電動機と巻上機に対する加減速必要トルクτ12を演算する加速トルク演算回路と、
前記トルク指令値τ* ,演算値τ12,速度検出値n,前記システムの機械効率ηおよびτ* とτ12との差からトルクが駆動トルクか制動トルクかを判断するとともに、伝達係数kを演算する判別・演算回路と、
前記トルク指令値τ* ,演算値Δn,演算値τ12,速度検出値n,伝達係数kおよび速度検出値n時の巻上機の昇降速度Vから巻上機が昇降させている荷重mを推定する荷重推定回路と、
前記荷重推定値mと速度検出値nと演算値Δnと巻上機の昇降速度Vとから荷重mに対する走行トルクτ01と加減速必要トルクτ11を演算するトルク演算回路と、
巻上機の定格昇降速度Vと定格荷重mと機械効率ηとモータ定格出力Pとから巻上機自身の機械的仕様を実現させるための走行トルクを演算するとともに、この走行トルクと誘導電動機の許容トルクから運転に最適なトルク−回転速度特性を演算するトルク−回転速度演算回路と、
前記τ01,τ11,τ12と、前記誘導電動機の短時間および連続許容トルク−速度特性と、前記トルク−回転速度演算回路からの出力とから誘導電動機の運転可能最大速度指令N0 # を求める速度演算回路と、
前記運転可能最大速度指令N0 # を新たな速度指令N# とする速度指令変換回路とを設けたことを特徴とする誘導電動機の制御装置。 - 前記機械効率ηをトルクに関する関数とすることを特徴とする請求項1に記載の誘導電動機の制御装置。
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