JP4567619B2 - ハイブリッド電気自動車の制御装置 - Google Patents
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Description
このようなパラレル型ハイブリッド電気自動車として、エンジンと自動変速機とを機械的に断接するクラッチを設け、このクラッチの出力軸と自動変速機の入力軸との間に電動機の回転軸を連結したハイブリッド電気自動車が、例えば特許文献1によって提案されている。
そして、アクセルペダルの踏み込みが解除され、車両のブレーキが作動していない状態でハイブリッド電気自動車が減速走行しているときには、エンジンのみを動力源とした同程度の車両が同様の減速を行うときに得られる減速度とほぼ同じ減速度を得ることができる減速トルクを要求減速トルクとして設定し、この要求減速トルクが得られるように電動機及びエンジンを制御することによって、車両の減速を違和感なく行うようにすることが考えられる。また、このような要求減速トルクは、適正な車両減速度が得られるようにするため、変速機の入力回転数、即ち電動機の回転数が高いほど大きく設定するのが望ましい。
このように要求減速トルクと上限減速トルクは電動機の回転数の変化と共に変動するため、電動機の回転数がある回転数以下では上限減速トルクが要求減速トルク以上となり、同回転数より高速側では上限減速トルクが要求減速トルクより小さくなる。そこで上限減速トルクが要求減速トルク以上である場合にはクラッチを切断し、電動機の回生制動トルクのみで要求減速トルクを得るようにすることによって車両減速時のエネルギ回収を最大限に行う一方、上限減速トルクが要求減速トルクより小さい場合にはクラッチを接続し、電動機の回生制動トルクとエンジンの減速トルクとを合わせて要求減速トルクを得るようにすることが考えられる。
更に、請求項3のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、電動機の回転数に応じて電動機が発生可能な回生制動トルクを、回転数以外の電動機の運転状態に応じて補正することにより上限減速トルクが設定される。このため、車両が平坦路を走行中にシフトダウンを伴った車両減速を行う際の電動機の回転数変動領域内で上限減速トルクと上記要求減速トルクとの大小関係が逆転する変速段が変わることがあるが、そのような変速段のうちの最も低速側の変速段を所定変速段とし、この所定変速段以上の高速側変速段を使用しているときは、上限減速トルクが要求減速トルク以上のときであってもクラッチが接続されるようにした。これにより、回転数以外の電動機の運転状態に応じて上限減速トルクが補正されても、これに対応して所定変速段を設定し、車両の減速時におけるクラッチの作動頻度を確実に減少させて、運転フィーリングを改善することができる。
図1は本発明の一実施形態であるハイブリッド電気自動車1の制御装置の要部構成図である。ディーゼルエンジン(以下エンジンという)2の出力軸にはクラッチ4の入力軸が連結されており、クラッチ4の出力軸は永久磁石式同期電動機(以下電動機という)6の回転軸を介して前進変速段(以下では単に変速段という)が5段の自動変速機(以下変速機という)8の入力軸が連結されている。また、変速機8の出力軸はプロペラシャフト10、差動装置12及び駆動軸14を介して左右の駆動輪16に接続されている。
電動機6は、バッテリ18に蓄えられた直流電力がインバータ20によって交流電力に変換されて供給されることによりモータとして作動し、その駆動トルクが変速機8によって適切な速度に変速された後に駆動輪16に伝達されるようになっている。また、車両減速時には、電動機6が発電機として作動し、駆動輪16の回転による運動エネルギが変速機8を介し電動機6に伝達されて交流電力に変換されることにより回生制動トルクを発生する。そして、この交流電力はインバータ20によって直流電力に変換された後、バッテリ18に充電され、駆動輪16の回転による運動エネルギが電気エネルギとして回収される。
車両ECU22(制御手段)は、車両やエンジン2の運転状態、及びエンジンECU24、インバータECU26並びにバッテリECU28からの情報などに応じて、クラッチ4の接続・切断制御及び変速機8の変速段切換制御を行うと共に、これらの制御状態や車両の発進、加速、減速など様々な運転状態に合わせてエンジン2や電動機6を適切に運転するための統合制御を行う。
一方、インバータECU26は、車両ECU22によって設定された電動機6が発生すべきトルクに基づきインバータ20を制御することにより、電動機6をモータ作動または発電機作動させて運転制御する。また、電動機6の温度を検出する温度センサ(図示せず)からの出力信号を受けて、電動機6の温度を車両ECU22に送っている。
このように構成されたハイブリッド電気自動車1において、車両を走行させるために車両ECU22を中心として行われる制御の概要は以下の通りである。
このようにしてエンジン2を始動した後、車両が停止状態にあるときには、クラッチ4が切断されており、エンジン2はアイドル運転状態にある。そして、運転者がアクセルペダル30を踏み込むと、アクセル開度センサ32によって検出されたアクセルペダル30の踏込量に応じ、車両を発進させるために必要な電動機6の駆動トルクを車両ECU22が設定する。
車両が発進加速して電動機6の回転数がエンジン2のアイドル回転数の近傍まで上昇すると、クラッチ4を接続してエンジン2の駆動力を駆動輪に伝達することが可能となり、車両ECU22は更なる車両の加速及びその後の走行のために、変速機8に伝達すべき駆動トルクを車両の運転状態に応じてエンジン2側と電動機6側に適切に振り分け、エンジンECU24やインバータECU26に指示すると共に、必要に応じて変速機8やクラッチ4を制御する。
アクセルペダル30の踏み込みが解除されると、車両ECU22は図2に示すフローチャートに従い、所定の制御周期で減速走行時の制御ルーチンを実行する。
最初のステップS1では、回転数センサ36が検出した電動機6の回転数Nmを読み込み、次のステップS2では、変速機8から送られる情報に基づき現在使用中の変速段Gpを読み込む(変速段検出手段)。
この要求減速トルクTrは、図3の上段のグラフに実線で示すように変速機8の変速段毎に個別に設定され、それぞれの変速段に対応する要求減速トルクTrは、電動機6の回転数の上昇と共に増大する特性を有している。また、図3に示すように、高速側の変速段であるほど大きい要求減速トルクTrが設定されるようになっている。
車両ECU22はこのような要求減速トルクTrを予め記憶しており、電動機6の回転数Nmと現在使用中の変速段Gpとに対応する要求減速トルクTrを読み出して設定している。
なお、バッテリ18のSOCが上昇してバッテリ18が過充電となる可能性がある場合や、電動機6或いはバッテリ18がオーバヒートする可能性がある場合などにおいては、電動機6の回生制動が制限されることにより、図3に示すような上限減速トルクTuを発生することができない場合がある。
ステップS5に進むと、ステップS3で要求減速トルクTrを設定する際に使用した要求減速トルクTrの特性曲線と、ステップS4で上限減速トルクTuを設定する際に使用した上限減速トルクTuの特性曲線とに基づいて基準変速段(所定変速段)Gsを設定する。この基準変速段Gsは、車両が実質的な平坦路を減速走行する場合の電動機6の回転数変動域内において上限減速トルクTuと要求減速度Trとの大小関係が逆転する変速段のうち、最も低速側にある変速段であって、その詳細について以下に説明する。
図3の下段のグラフには、車両が実質的な平坦路を走行しているときに、このようにして減速走行を行った場合の車両の走行速度の変化と、それに伴う電動機6の回転数の変化が実線で示されている。なお、図3の下段のグラフにおいて、一点鎖線の直線は変速機8の各変速段における走行速度と電動機6の回転数との関係を示すものであり、以下ではこれらの直線を変速線という。また、シフトダウン用の変速マップにおいて、変速機8の変速段は、車速センサ34によって検出された走行速度が、V4に低下したときに5速から4速に、V3に低下したときに4速から3速に、V2に低下したときに3速から2速に、またV1に低下したときに2速から1速に、それぞれシフトダウンされるようになっている。
一般的に、車両が実質的な平坦路を走行する頻度は、平坦ではない路面を走行する頻度に比べて高いため、この回転数Nr以下の領域が車両の減速走行における常用回転域ということになり、降坂時などのように比較的高回転で減速しながら走行する必要がある場合に限り電動機6の回転数はこのNrを上回ることになる。
ステップS5からステップS6に進むと、ステップS2で読み込んだ現在使用中の変速段Gpが、ステップS5で設定された基準変速段Gs以上の高速側変速段であるか否かを判定する。今回ステップS5で設定された基準変速段Gsは4速であるので、現在使用中の変速段が1乃至3速であればステップS7に進み、4速又は5速であればステップS10に進むことになる。
そして、上限減速トルクTuが要求減速トルクTr以上であると判定した場合には電動機6のみで要求減速トルクTrを発生可能であることから、ステップS8に進んでクラッチ4を切断した後、ステップS9で電動機6から要求減速トルクTrに等しい回生制動トルクを発生させるようインバータECU26に指示し、今回の制御周期を終了する。
こうしてその制御周期を終えると、次の制御周期では再びステップS1から処理が行われ、ステップS1で回転数センサ36が検出した電動機6の回転数Nmを読み込み、ステップS2で現在使用中の変速段Gpを読み込んだ後、ステップS3及びS4において、電動機の回転数Nmに対応した要求減速トルクTrと上限減速トルクTuとを設定する。
従って、使用中の変速段Gpが基準変速段Gsより低速側の変速段の状態で、上限減速トルクTuが要求減速トルクTr以上である限りは、クラッチ4が切断状態に維持されると共に、電動機6が要求減速トルクTrに等しい回生制動トルクを発生するように制御され、車両の減速が行われる。
ステップS11では、車両ECU22がエンジン2への燃料供給を停止するようエンジンECU24に指示し、エンジンECU24はこれに従ってエンジン2への燃料供給を停止する。
ステップS13では、ステップS12において上述のようにして設定された回生制動トルクTmを電動機6が発生するよう、車両ECU22からインバータECU26に対して指示が出され、インバータECU26はこれに従って電動機6を制御し、その制御周期を終了する。
次の制御周期でも、上述のようにして要求減速トルクTr及び上限減速トルクTuを設定し、ステップS5で基準変速段Gsを設定した後、ステップS6で使用中の変速段Gpが依然として基準変速段Gsより低速側変速段であると判定した場合には、ステップS7に進んで上限減速トルクTuが要求減速トルクTr以上であるか否かを判定する。
また、上限減速トルクTuが要求減速トルクTr以上となった場合には、前述のようにステップS8に進んでクラッチ4が切断され、電動機6の回生制動力のみが変速機8に伝達されて車両の減速が行われる。
このとき、図3に示すように、上限減速トルクTuが要求減速トルクTrより小さくなる回転数N1、N2或いはN3が、この減速走行における電動機6の常用回転域よりも高いため、車両が実質的な平坦路で減速走行するような場合にはクラッチ4が切断されたままの状態となり、電動機6の回生制動トルクのみが減速トルクとして変速機8に伝達されて車両の減速が行われる。そして、降坂路を減速走行する場合のように変速段が低速側に保持されて電動機6の回転数が常用回転域よりも上昇する場合に限り、上限減速トルクTuが要求減速トルクTrより小さくなってクラッチ4が接続状態となることがある。
一方、ステップS2で読み込んだ現在使用中の変速段GpがステップS5で設定された基準変速段Gs以上の高速側変速段である場合、即ち使用中の変速段が4速又は5速である場合には、ステップS6からステップS7には進まずに、ステップS6から直接ステップS10に進んでクラッチ4を接続すると共にステップS11でエンジン2への燃料供給を停止し、上述したようにしてステップS12及びS13でエンジン2の減速トルク及び電動機6の回生制動トルクの合計が要求減速トルクTrに等しくなるように制御が行われる。
即ち、上述したように上限減速トルクTuの特性曲線を低減補正することなく用いて上限減速トルクTuを設定した場合には、基準変速段Gsが4速となっており、使用中の変速段が4速又は5速である場合に、上限減速トルクTuと要求減速トルクTrとの大小関係にかかわらずクラッチ4が接続状態となる。
なお、このような車両減速時において、上記制御とは別に、車両ECU22は必要に応じて変速機8の変速段を切り換える制御を行い、このときに必要に応じてクラッチ4の断接制御を行うが、変速段の切り換えに伴って行われるクラッチ4の断接制御は上記制御とは独立して行われる。
このような場合、前述したようにステップS4では、電動機6の温度やバッテリ18のSOC或いは温度などの情報に基づいて上限減速トルクTuの特性曲線を低減補正した特性曲線を用いて上限減速トルクTu’を設定する。なお、図3には、このように低減補正された上限減速トルクTu’の特性曲線の一例を二点鎖線で示しているが、低減補正量は固定とせずに電動機6やバッテリ18の状態に応じて適宜変更するようにしても良い。
上限減速トルクTu’の特性曲線は図3に示すように上限減速トルクTuの特性曲線よりも下方にあるため、4速及び5速の変速段に対応した要求減速トルクTrの場合だけでなく、3速の変速段においても上限減速トルクTu’と要求減速トルクTrとの大小関係が逆転する電動機6の回転数がN3’となって常用回転域内となる。従って、ここでは3速乃至5速の変速段において上限減速トルクTu’と要求減速トルクTrとの大小関係が逆転する電動機6の回転数が常用回転域内に存在することになり、その中で最も低速側の3速が基準変速段Gsとなる。
ステップS6で使用中の変速段Gpが基準変速段Gs以上の高速側変速段であると判定した場合に、ステップS10乃至S13で行われる制御は前述したとおりであって、基準変速段Gsが3速となっていることから、使用中の変速段が3速乃至5速のいずれかである場合に、上限減速トルクTuと要求減速トルクTrとの大小関係にかかわらずクラッチ4が接続状態となる。
例えば、上記実施形態ではエンジン2の減速トルクを併用する際にエンジン2への燃料供給を停止するようにしたが、これに加えてエンジン2の排気通路に排気ブレーキ装置を設け、この排気ブレーキ装置を作動させることによって、より大きな減速トルクが得られるようにしても良い。
なお、上記実施形態ではエンジン2をディーゼルエンジンとしたが、エンジン形式はこれに限られるものではなく、ガソリンエンジンなどでも良い。
更に、上記実施形態では変速機8を5段の前進変速段を有する自動変速機としたが、前進変速段の数や変速機の形式はこれに限られるものではなく、無段変速機や手動式の変速機などであっても良い。
2 エンジン
4 クラッチ
6 電動機
8 変速機
16 駆動輪
22 車両ECU(制御手段)
Claims (3)
- エンジンの駆動力と電動機の駆動力とが複数の前進変速段を有する変速機を介して車両の駆動輪に伝達可能であると共に、上記エンジンと上記変速機との機械的な接続がクラッチによって切断可能なハイブリッド電気自動車の制御装置において、
上記電動機の回転数を検出する回転数検出手段と、
上記変速機で使用中の前進変速段を検出する変速段検出手段と、
上記車両の減速時に、上記回転数検出手段によって検出された回転数に応じ、上記電動機が発生可能な回生制動トルクとして上限減速トルクを設定すると共に、上記変速段検出手段で検出された使用中の変速段に応じ、上記車両の減速に必要な減速トルクとして上記変速機に伝達すべき要求減速トルクを設定し、上記上限減速トルクが上記要求減速トルク以上であるときには上記クラッチを切断して上記要求減速トルクを発生するように上記電動機を制御する一方、上記上限減速トルクが上記要求減速トルクより小さいときには上記クラッチを接続して上記エンジンの減速トルクと上記電動機の回生制動トルクとの合計が上記要求減速トルクとなるように上記エンジン及び上記電動機を制御し、上記変速段検出手段で検出された使用中の変速段が所定変速段以上の高速側変速段であるときには上記上限減速トルクが上記要求減速トルク以上のときであっても上記クラッチを接続する制御手段と
を備えたことを特徴とするハイブリッド電気自動車の制御装置。 - 上記変速機は、上記車両の減速時に上記車両の走行速度に応じてシフトダウンが行われる自動変速機であって、
上記所定変速段は、上記車両が平坦路を走行中に減速を行う際の上記電動機の回転数の変動領域内で上記上限減速トルクと上記要求減速トルクとの大小関係が逆転する変速段のうちの最も低速側の変速段であることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。 - 上記制御手段は、上記電動機の回転数に応じて上記電動機が発生可能な回生制動トルクを、上記回転数以外の上記電動機の運転条件に応じて補正することにより上記上限減速トルクを設定し、上記変動領域内で補正後の上記上限減速トルクと上記要求減速トルクとの大小関係が逆転する変速段のうちの最も低速側の変速段を上記所定変速段とすることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
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