JP4566469B2 - エンジンを整備するための構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、船舶に取り付けたエンジンを機関台から取り外すことなく整備する方法及び整備するための構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
船舶のエンジンは機関台に取り付けられ、エンジンは使用することによって摩耗等による交換の必要性があり、一定稼働期間ごとに定期的に整備を行う必要がある。このエンジンを整備する部品のうち、特に、ピストンリングやコンロッドとクランク軸の間に配置する軸受メタル等を交換する場合、従来は、エンジンを設置する機関台の一部を切断してエンジンを取り出して、別の場所に移動して整備したり、エンジンを機関台から外して一定高さまで持ち上げて、その状態で整備したりしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、エンジンの整備(メンテナンス)を行う際に、機関台を切断すると再びエンジンを期間台に装着した後元に戻す作業が面倒であり、移動したりするためのコストも高くなっていた。また、エンジンを持ち上げるためには、船上に吊上げ装置を設置する必要があり、吊上げ装置の搬入や設置、整備後の解体や搬出等に手間がかかり、コストも高くなっていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
請求項1においては、船舶に取り付けたエンジンを、機関台(10)から外すことなく整備可能とする構造であって、クランク軸(5)を回して位置変換し、オイルパン(2)の側面に開口した整備用窓(8)から整備用工具(14)を挿入し、コンロッド(4)をクランク軸(5)に連結しているコンロッド締結ボルト(7)を着脱し、エンジンを整備するための構造において、該整備用窓(8)はオイルパン(2)の側面において可及的に上方に設け、蓋体(25)により閉鎖し、前記整備用窓(8)の該蓋体(25)より内側の開口上面に、垂直方向のボルト孔(2d)を穿設し、同じく該シリンダブロック(1)にボルト穴を穿設し、前記整備用窓(8)のボルト孔(2d)からオイルパン取付ボルト(12)を螺装して、該オイルパン(2)をシリンダブロック(1)に固定する構成とし、前記整備用窓(8)のボルト孔(2d)の位置は、前記コンロッド締結ボルト(7)が位置する、エンジンのシリンダ中心線(O1〜O6)からズラせて配置し、前記整備用工具(14)がオイルパン取付ボルト(12)に当接しない位置としたものである。
【0006】
請求項2においては、請求項1記載のエンジンを整備するための構造において、前記整備用窓(8)は、6気筒のエンジンにおいて、2本ずつのピストン(3・3)を整備可能とするために、3つの整備用窓(8・8・8)を開口したものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0008】
図1は本発明に係るエンジンの概略側面図、図2はコンロッドが第1位置にある状態のエンジンの一部正面断面図である。
【0009】
図3はコンロッドが第2位置にある状態のエンジンの一部正面断面図、図4はコンロッドとピストンの斜視図、図5はエンジンの一部拡大図、図6が整備用窓の正面図である。
【0010】
まず、本発明に係るエンジンの概略構成について図1、図2を用いて説明する。エンジンのシリンダブロック1の上部に、シリンダヘッド20が取り付けられ、該シリンダヘッド20はシリンダヘッドカバー21で覆われている。また、シリンダブロック1の下方にはオイルパン2が設けられており、該オイルパン2内には潤滑油が貯留されている。
【0011】
シリンダブロック1の一側面には、クランク軸5からカム軸(図示せず)や、燃料噴射ポンプ22や、潤滑油ポンプ等に動力を伝えるためのギア等を収納するギアケース23が貼設されている。該ギアケース23の上部には、オルタネータ24が取り付けられている。
【0012】
図2、図3により、シリンダブロック1の内部構成を詳述する。シリンダブロック1上部内にピストン3がシリンダライナ15を介して挿入され、該ピストン3の上部外周面はリング状のピストンリング溝9・9・9が穿設され、該ピストンリング溝9・9・9にピストンリング16・16・16が嵌合され、ピストン3とシリンダライナ15との間の気密性を確保するとともに潤滑作用等も果たしている。ピストン3上面のピストンヘッド3aの中央には凹部を形成して、該凹部中央に吊上用ネジ孔11を形成して、分解時に吊り上げ用ネジを螺装して、ピストン3を上方へ抜くことを可能としている。ピストン3下部のスカート内にはコンロッド4の上部4aをピン17にて枢支し、該コンロッド4の下部4bはシリンダブロック1下部のクランクケース内において、クランク軸5と連結されている。
【0013】
この連結構成は、コンロッド4の下部4bの大径部が上下に分割されて、コンロッド本体の下方からキャップ4cをかぶせて、コンロッド締結ボルト7・7で固定する構成としている。該コンロッド下部4bとクランク軸5の間には軸受メタル6・6が介装され、該軸受メタル6・6も上下に分割されている。前記クランク軸5の前端からは、歯車等を介してオルタネータ24を駆動し、クランク軸5後部にはフライホィールやカム軸への動力伝達機構や潤滑油ポンプ19への動力伝達機構を配置し、該クランク軸5後端からクラッチや減速機構へ動力を伝達する構成としている。
【0014】
このような構成において、シリンダ内に燃料を供給して爆発させることにより、ピストン3を往復運動させ、この往復運動は前記コンロッド4を介してクランク軸5の回転運動に変えられ、後端より出力される。このピストン3の往復動やクランク軸5の回転により、ピストンリング16や軸受メタル6は摩耗するため、定期的な交換の必要性がある。この交換の際には、コンロッド締結ボルト7を取り外し、大端部キャップ4cを取り外すことで、ピストン3を抜き出すことができ、また、摩耗した軸受メタル6を取り外して交換することができるのであるが、船舶用のエンジンの場合、従来ではエンジンを吊り上げてオイルパンを外して分解するようにしていたので、多大な手間と費用を要していた。
【0015】
そこで本発明は、図1、図2に示すように、シリンダブロック1の下面を覆うオイルパン2の上側面には、整備用窓8を開口して、該整備用窓8は、通常蓋体25によって閉じておき、整備を行う際には蓋体25を外して整備用窓8から、図2に示すように整備用工具14を挿入し、コンロッド4の位置を調節して、コンロッド締結ボルト7・7を外してピストン3や軸受等のメンテナンスを行えるようにしているのである。
【0016】
前記整備用窓8は本実施例のエンジンが6気筒であるため、二つずつのピストンを整備できるように3つの整備用窓8・8・8をオイルパン2の側面に開口し、オイルパン2の側部の開口部が大きくならず剛性も確保している。一つの整備用窓8について説明すると、該整備用窓8はオイルパン2の側面において可及的に上方に設けており、オイルパン2に形成した、該整備用窓8の周囲には蓋体25を取り付けるためのボルト穴2a・2a・・を穿設しており、該ボルト穴2a・2a・・にボルト18が螺装される。該ボルト穴2aの周囲は所定半径のボスを形成して蓋体25を取り付けるための剛性を確保している。該ボス部2bの位置は図6に示すように、前記コンロッド締結ボルト7が位置するシリンダ中心線O1〜O6とズラせて配置し、後述する整備用工具14が当たらないように配設している。
【0017】
また、オイルパン2をシリンダブロック1の底面に取り付けるために、図2に示すように、前記整備用窓8が位置しない部分にはフランジ縁部2cを形成して、シリンダブロック1下部に形成したフランジ縁部1aとの間にボルトを螺装して固定するようにしている。そして、図5に示すように、前記整備用窓8の上面に垂直方向のボルト孔2dを穿設して、シリンダブロック1下面に穿設したボルト穴にボルト12を螺装してオイルパン2を固定する構成としている。このボルト孔2dの位置も前記同様に、コンロッド締結ボルト7が位置するシリンダ中心線O1〜O6とズラせて配置し、後述する整備用工具14が当たらないように配設している。このオイルパン2の上面と整備用窓8の内周上面との間の距離L1は前記ボルト穴2aを開口してもオイルパン2を支持するための強度が低下しない程度とし、更に、整備用窓8が位置するオイルパン8の上部肉厚L2はボルト孔2dを開口してもオイルパン2を支持するための強度が低下しない程度としている。
【0018】
このような構成において、以下整備の手順について詳述する。まず、エンジンを停止させた状態で、オイルパン8内の潤滑油を抜き出して蓋体25を外す。そして、クランク軸5を回転させて、ピストン3を最も高い位置(クランクトップ)に位置させる。次に、クランク軸5を下(反時計廻り)に所定角度回転させて、ピストン3をトップから下げる。このとき図2の状態(第一位置)となり、整備用工具14となるボックスレンチにロング延長補助具13aを装着して、機関台10の開口及び、整備用窓8を通して奥側のボルト7を緩める。更にクランク軸5を所定角度回転させ、図3の状態(第二位置)として、整備用工具14となるボックスレンチにショート延長補助具13bを装着して、機関台10の開口及び、整備用窓8を通して手前側のボルト7を緩めて、コンロッド締結ボルト7を仮止め状態にする。
【0019】
そして、ピストン3の頂部のネジ孔11に吊り下げ用のネジを螺装してピストン3が下がらないように固定する。この状態からクランクを時計廻りで少し下げて、大端部キャップ4cを外す。ピストン吊上用ネジを使いピストン3を引き上げる。ピストンの挿入は前記と逆の操作を行う。
【0020】
以上のように、オイルパン取付ボルト12とコンロッド締結ボルト7のクランク軸長手方向の位置をずらして設けたため、整備用窓8から整備用工具14を突っ込んで、コンロッド締結ボルト7を外す時にオイルパン取付ボルト12とレンチが干渉することなく、整備がやり易くなる。オイルパン取付ボルト12との干渉がないため、整備用工具14をできるだけクランク軸側に近づけることができ、作業がやり易くなる。
【0021】
そして、エンジンを機関台10から取り外すことがないために、機関台10を切断したり、エンジンを持ち上げたり、別の場所に移したりすることなく、エンジンを機関台10に取り付けたままで、コンロッド締結ボルト7を取り外して、ピストン3等を分解することが可能となり、メンテナンスやオーバーホール等がやり易くなり、整備用コストを低減することができる。また、該整備用工具14に延長補助具13を取り付けて作業するようにしたので、コンロッド締結ボルト7と工具との足りない距離を補うことできる。
【0022】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0023】
請求項1に示す如く、船舶に取り付けたエンジンを、機関台(10)から外すことなく整備可能とする構造であって、クランク軸(5)を回して位置変換し、オイルパン(2)の側面に開口した整備用窓(8)から整備用工具(14)を挿入し、コンロッド(4)をクランク軸(5)に連結しているコンロッド締結ボルト(7)を着脱し、エンジンを整備するための構造において、該整備用窓(8)はオイルパン(2)の側面において可及的に上方に設け、蓋体(25)により閉鎖し、前記整備用窓(8)の該蓋体(25)より内側の開口上面に、垂直方向のボルト孔(2d)を穿設し、同じく該シリンダブロック(1)にボルト穴を穿設し、前記整備用窓(8)のボルト孔(2d)からオイルパン取付ボルト(12)を螺装して、該オイルパン(2)をシリンダブロック(1)に固定する構成とし、前記整備用窓(8)のボルト孔(2d)の位置は、前記コンロッド締結ボルト(7)が位置する、エンジンのシリンダ中心線(O1〜O6)からズラせて配置し、前記整備用工具(14)がオイルパン取付ボルト(12)に当接しない位置としたので、エンジンを機関台に取り付けたままで、ロッドボルトやピストン等を分解可能となり、メンテナンスやオーバーホール等がやり易くなり、整備用コスト低減することができる。
また、オイルパンの整備用窓を開けて、工具を挿入して、簡単に短時間で整備を行え、オーバーホール等が安価に行える。
また、工具とボルトの嵌合角度はクランク軸の回動で容易に合わせられる。
【0024】
また、前記整備用窓を可及的に上方に設けるとともに、前記整備用窓の上端内面から上方にボルトを螺挿してシリンダブロックに固定したので、オイルパン上面のフランジ縁部をなくすことができて、整備用開口を大きくすることができる。
【0025】
また、オイルパン取付ボルトとコンロッド締結ボルトをクランク軸長手方向に位置をずらしたので、整備用窓からレンチを突っ込んで、コンロッド締結ボルトを外す時に、ボルトと整備用工具が干渉せず、整備がやり易くなる。
【0026】
請求項2においては、請求項1記載のエンジンを整備するための構造において、前記整備用窓(8)は、6気筒のエンジンにおいて、2本ずつのピストン(3・3)を整備可能とするために、3つの整備用窓(8・8・8)を開口したので、6気筒のエンジンを機関台から取り外すために、機関台を切断したり、エンジンを持ち上げたり、別の場所に移したりすることなく、エンジンを機関台に取り付けたままで、ロッドボルトやピストン等を分解可能となり、メンテナンスやオーバーホール等がやり易くなり、整備用コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るエンジンの概略側面図。
【図2】 コンロッドが第1位置にある状態のエンジンの一部正面断面図。
【図3】 コンロッドが第2位置にある状態のエンジンの一部正面断面図。
【図4】 コンロッドとピストンの斜視図。
【図5】 エンジンの一部拡大図。
【図6】 整備用窓の正面図。
【符号の説明】
3 ピストン
4 コンロッド
5 クランク軸
8 整備用窓
10 機関台
12 オイルパン取付ボルト
13 延長補助具
14 整備用工具

Claims (2)

  1. 船舶に取り付けたエンジンを、機関台(10)から外すことなく整備可能とする構造であって、クランク軸(5)を回して位置変換し、オイルパン(2)の側面に開口した整備用窓(8)から整備用工具(14)を挿入し、コンロッド(4)をクランク軸(5)に連結しているコンロッド締結ボルト(7)を着脱し、エンジンを整備するための構造において、該整備用窓(8)はオイルパン(2)の側面において可及的に上方に設け、蓋体(25)により閉鎖し、前記整備用窓(8)の該蓋体(25)より内側の開口上面に、垂直方向のボルト孔(2d)を穿設し、同じく該シリンダブロック(1)にボルト穴を穿設し、前記整備用窓(8)のボルト孔(2d)からオイルパン取付ボルト(12)を螺装して、該オイルパン(2)をシリンダブロック(1)に固定する構成とし、前記整備用窓(8)のボルト孔(2d)の位置は、前記コンロッド締結ボルト(7)が位置する、エンジンのシリンダ中心線(O1〜O6)からズラせて配置し、前記整備用工具(14)がオイルパン取付ボルト(12)に当接しない位置としたことを特徴とするエンジンを整備するための構造。
  2. 請求項1記載のエンジンを整備するための構造において、前記整備用窓(8)は、6気筒のエンジンにおいて、2本ずつのピストン(3・3)を整備可能とするために、3つの整備用窓(8・8・8)を開口したことを特徴とするエンジンを整備するための構造。
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