JP4565461B2 - Cfrpから成る廃材のリサイクル方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素繊維を強化材としたCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)から成る廃材から所望の再生品(例えばCCコンポジット等)を得るためのリサイクル方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
FRP(Fiber Reinforced Plastics)とは、各種繊維(ガラス繊維やカーボン繊維等)で補強された樹脂をいい、耐熱性及び耐圧性に優れ強度の高い素材として、ロケットや航空機等に代表される高付加価値のものの他、各種日用品等に適用されるに至り、汎用的に用いられるようになっている。しかし、かかるFRPから成る製品を製造する過程で発生する端材や屑、及び廃棄の対象とされるFRP製品から成る廃材は、その性質上、リサイクルが困難であり、一般に、破砕又は焼却した後に埋め立て処理されていた。
【0003】
然るに、近年、埋め立て処分場の問題やエポキシ樹脂から発生する環境ホルモン等の問題等が社会問題化されてきているため、そのリサイクル技術の確立が強く求められており、従来、廃材や端材等を焼却し、その焼却の際の熱エネルギを回収したり、廃材を微粉砕して別の製品を製造する際の原材料に一部添加して再利用することによりリサイクル化を図ることが提案されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、焼却後に残る炭素繊維は依然埋め立てなければならず、再利用の際の原材料への添加量も限られており、理想的なリサイクル技術ではなかった。特に、FRPのうち樹脂に炭素繊維を強化材として添加したCFRPについては、樹脂と炭素繊維との分別を図ることができず、また、ガラス繊維等を補強材とした他のFRPに比べ、完全に溶融して成形するのが困難であるという事情から、リサイクル技術の確立が極めて難しいという問題があった。
【0005】
また、CFRPはFRPの中でも強化繊維として炭素繊維が用いられているため、その廃材はそのまま原材料に転用して成形品を得る可能性があるにもかかわらず、従来においては焼却されたり他の原材料の添加剤としか用いられておらず、含有炭素繊維を有効利用するに至っていなかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、樹脂に炭素繊維を強化材として添加したCFRPから成る廃材の完全なリサイクル化を図るとともに、含有炭素繊維を有効利用した再生品を得ることができるCFRPから成る廃材のリサイクル方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、樹脂に炭素繊維を強化材として添加したCFRPから成る廃材から所望の再生品を得るためのリサイクル方法であって、前記廃材を粉砕して所定粒径の粉体を得る粉体生成工程と、該粉体生成工程で得られた粉体を炭素繊維含有率に基づいて分別する分別工程と、該分別工程で分別された粉体のうち、前記再生品に要求される炭素繊維含有率の大小に合致した粉体であって前記再生品の材質として適した炭素繊維含有率の粉体を使用して当該再生品を成形することにより、前記分別工程で分別されたそれぞれの粉体に適した異なる製法で再生品を得る再生加工工程とを備えるとともに、前記再生加工工程は、前記粉体に対し、前記再生品に適したマトリックス樹脂を添加した後、所望形状に加圧成形する加圧成形工程と、該加圧成形工程で得られた成形品を炭化する炭化工程とを備え、当該加圧成形工程及び炭化工程を経ることにより所望の再生品を得ることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、粉体生成工程で得た粉体を、分別工程により炭素繊維含有率毎に分別した後、分別した粉体のうち、再生品の材質として適した炭素繊維含有率の粉体を使用し、当該再生品を成形加工する。ここで、再生品の材質として適した炭素繊維含有率の粉体とは、再生品が要求される性質に合致し得る粉体をいい、高い炭素繊維含有率が必要な再生品を得る場合は、炭素繊維含有率の大きな粉体のことをいう一方、それほど高くない炭素繊維含有率の再生品を得る場合は、炭素繊維含有率の小さな粉体のことをいう。即ち、最終的に成形される再生品に合わせて、再生加工工程にて使用する粉体を炭素繊維含有率に基づいて分け、所望性質の再生品を得るのである。ここで、「炭素繊維含有率に基づいて分別する」とは、直接に元素分析や溶剤不溶物測定などで、炭素繊維含有率を直接測定するものばかりではなく、炭素繊維含有率と相関の高い特性により炭素繊維含有率の高いものと低いものに分別することを含む。たとえば、比重、密度、電気伝導度、熱伝導度、比表面積の相違を利用した分別手段に変えてもよい。尚、再生の対象は、熱硬化性樹脂を母材としたCFRPであっても、熱可塑性樹脂を母材としたCFRPであってもよい。
【0009】
例えば、炭素繊維含有率の高いことが必要な再生品として、耐熱タイルや自動車等に使用されるブレーキ材等のように、高密度で且つ強度及び耐熱効果が重視されるものが挙げられ、炭素繊維含有率がそれほど高く必要でない再生品として活性炭、魚礁、触媒フィルタ等のように低密度で且つ強度があまり重視されないものが挙げられる。即ち、粉体の炭素繊維含有率が高ければ、例えば再生加工工程において高温加熱処理されたとしても、炭素繊維は焼失しないので、高密度を維持できるとともに、粉体の炭素繊維含有率が低ければ、高温加熱処理された場合、焼失されるマトリックス樹脂が多くなり、低密度なものとなるのである。
更に、粉体生成工程及び分別工程を経て炭素繊維含有率毎に分別された粉体に対し、再生品に適したマトリックス樹脂を添加し、金型等により所望形状に加圧成形する。その後、成形品を炭化して、最終製品としての再生品を得る。ここで、再生品に適したマトリックス樹脂とは、密度が高く比表面積が小さい再生品を製造する場合、炭化工程の炭化によっても消失しにくい炭素を多く含んだ炭素含有率の高い樹脂をいい、密度が低く比表面積が大きい再生品を製造する場合、炭素をあまり含有しない樹脂をいう。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記分別工程が、前記粉体生成工程で得られた粉体を比重に基づいて分別することを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、粉体生成工程で得た粉体を、分別工程において比重に基づいて炭素繊維含有率毎に分別した後、分別した粉体のうち、再生品の材質として適した炭素繊維含有率の粉体を使用し、当該再生品を成形加工する。ここで、比重に基づく分別は、請求項1記載の炭素繊維含有率に基づいて分別する分別工程に含まれるものとする。
【0014】
請求項記載の発明は、前記分別工程が、前記粉体を炭素繊維含有率の大きいものと小さいものとの2つに分別するものとし、炭素繊維含有率の大きい粉体に対する炭化工程において、炭化とマトリックス樹脂の添加とを所定回数繰り返して行われる再緻密化処理を施すことを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、粉体生成工程及び分別工程を経て炭素繊維含有率毎に分別された粉体に対し、再生品に適したマトリックス樹脂を添加し、金型等により所望形状に加圧成形した後、炭化とマトリックス樹脂の添加とを所定回数繰り返して再緻密化処理を施す。即ち、再緻密化処理により、加熱で消失したマトリックス樹脂を補充しつつ炭化を行うのである。
【0016】
請求項記載の発明は、前記分別工程は、前記粉体を炭素繊維含有率の大きいものと小さいものとの2つに分別するものとし、炭素繊維含有率の小さい粉体に対する加圧成形工程中又は炭化工程の後において、機能材を添加することを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、粉体生成工程及び分別工程を経て炭素繊維含有率毎に分別された粉体は、再生品に適したマトリックス樹脂と機能材を添加して加圧成形が行われ、その後炭化される。また、機能材が炭化で焼失する虞がある場合は、炭化工程の後に機能材を添加する。
【0018】
ここで、機能材とは、最終製品としての再生品に何らかの機能を付加するためのものをいい、例えば排ガス分解用の触媒としての機能を果たすPt(白金)や汚れ分解用の光触媒として機能を果たすTiO(二酸化チタン)、又はホルムアルデヒド等の有害物質を除去するためのカテキン等が挙げられる。
【0019】
請求項記載の発明は、前記炭化工程で得られた成形品に対し、賦活処理を施すことを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るCFRPから成る廃材のリサイクル方法は、熱硬化性樹脂に炭素繊維を強化材として添加したCFRPから成る廃材から所望の再生品(C/Cコンポジット)を得ることによりリサイクル化を図るもので、図1に示すように、破砕・粉砕工程S1と、ふるい分け工程S2と、分別工程S3と、加圧成形工程S4又はS7と、炭化工程S5又はS8とから主に構成される。
【0021】
本実施形態においては、上記工程を経ることにより、耐熱タイルやブレーキ材等として使用されるC/Cコンポジット、及び活性炭や魚礁又はフィルタ等として使用されるスポンジ状C/Cコンポジットから成る再生品を製造することを前提とし、これらの性質に合致した(例えば、耐熱タイルやブレーキ材の如く強度の他高密度が要求されるもの、魚礁の如く低密度でポーラスが要求されるもの)原材料による製造を図るものとする。
【0022】
まず、一連のリサイクル加工を施す前に、上記CFRPから成る各種廃材を廃棄の対象とされる製品のものと、製品の製造過程で生じた端材としてのプリプレグ(炭素繊維に熱硬化性樹脂から成るマトリックス樹脂を含浸させた素材であって、硬化前のもの)と、加工粉とにより分けておき、プリプレグに対しては加熱硬化処理S10を施しておく。かかる加熱硬化処理S10によって、プリプレグの破砕及び粉砕を容易にすることができる。
【0023】
破砕・粉砕工程S1は、上記廃材のうち廃棄の対象とされるCFRP製品のものと、プリプレグに対して加熱硬化処理S10を施したものとに対して行われるもので、破砕機によって破砕した後、粉砕機によって粉体にする工程である。該破砕機は通常、粒径約100mm程度に破砕するもので、粉砕機は通常、粒径約10〜200μm(好ましくは10〜100μm)の粉体を得ることができる機材である。かかる破砕・粉砕工程S1で得られた粉体に加工粉を混入し、該混入粉体を次工程であるふるい分け工程S2へ送る。尚、廃棄の対象とされるCFRP製品の大きさが、破砕機で破砕された後のものより小さい場合、破砕機による破砕を省略してもよい。
【0024】
ふるい分け工程S2は、気流分級法等により粒径200μm以下(好ましくは100μm以下)の粉体のみをふるい分け、それより大きな粒径の粉体を破砕・粉砕工程S1へ再び送る工程である。これにより、次工程である比較分別工程S3で分別の対象とされる粉体は、粒径が200μm以下のものとなり、後で行われる成形がし易い状態とされている。尚、本工程S2と破砕・粉砕工程S1とによって、廃材を破砕及び粉砕して所定粒径の粉体を得るための粉体生成工程を成す。
【0025】
尚、気流分級法とは、ファン等により下方から一定風圧が付与された雰囲気中に分別対象となる粉体を投入し、粒径の大きなものと小さなものとにふるい分ける方法であり、本実施形態においては、粒径が200μm以上のものと未満のものとを峻別し得る風圧が付与されることとなる。該気流分法に代えて他のふるい分け方法としてもよく、例えば篩い等によりふるい分けるようにしてもよい。
【0026】
分別工程S3は、粉体生成工程(破砕・粉砕工程S1及びふるい分け工程S2)で得られた粉体を比重に基づいて分別する工程であり、具体的には炭素繊維の含有体積率が60%以上のものと60%未満のものとに分別する。即ち、炭素繊維の含有体積率が60%を分別のラインとして、比重の大きいものと小さいものとの2つに分別するのである。
【0027】
例えば、炭素繊維の比重が1.8、樹脂の比重が1.2の場合、分別する比重のラインは1.56となり、これ以上の比重の粉体を加圧成形工程S4へ送る一方、1.56未満の比重の粉体を加圧成形工程S7へ送るようにする。尚、分別のラインは、最終的に製造されるべき再生品に応じて任意に決定できるものとし、3つ以上(比重が大、中、小で分別等)の分別としてもよい。尚、本例示は、炭素繊維の含有体積率が60%を分別のラインとした場合を示したものであって、他の分別ラインに設定した場合は、それに応じて比重の分別ライン値が変動することとなる。
【0028】
比重による分別は、液体を用いた分離方式又は遠心分離方式によるのが好ましいが、他の比重測定方法により分別してもよい。液体を用いた分離方式は、分別のライン(1.56)と略同等の比重の液体を所望の容器に満たしておき、該容器中に粉体を投入することにより行われ、容器底面に沈んだ粉体が大きな比重のもの、液体に浮いた粉体が比重の小さいものとして分別する方法である。ここで所望容器に満たすべき液体としては、目的とする比重に合致する任意の比重の液体を得ることができ、また、分別後水にて簡単に洗浄することができるという観点から、無機化合物の水溶液を用いるのが好ましい。例えば液体比重1.56の液体を得ようとするなら、54%の水酸化ナトリウム水溶液、66%の硫酸水溶液が代表例として挙げられる。
【0029】
また、遠心分離方式は、回転板上に粉体を投入し、所定の遠心力が生じる程度に当該回転板を回転させることにより行われ、回転板から飛散された粉体が大きな比重のもの、回転板上に残留した粉体が小さな比重のものとして分別する方法である。例えばサイクロンによる遠心分離方法を挙げることができる。かかるサイクロンは、気流若しくは液流中の固体粒子を除去するものであるため、本実施形態における固体粒子の分別にも利用可能である。
【0030】
分別工程S3により分別された粉体のうち、比重の大きな粉体は加圧成形工程S4及び炭化工程S5(再緻密化処理S6を含む)を経て高密度なC/Cコンポジットに成形される一方、比重の小さな粉体は加圧成形工程S7及び炭化工程S8(必要な場合は賦活処理S9を含む)を経て低密度でポーラスなスポンジ状C/Cコンポジットに成形される。尚、加圧成形工程(S4又はS)と炭化工程(S5又はS8)とで、分別工程S3で分別された粉体のうち、再生品に適した比重の粉体によって当該再生品を成形する再生加工工程を成す。
【0031】
これは、比重の大きい粉体は、後工程の炭化で焼失しない炭素繊維の含有率が高いため、耐熱タイルや自動車等に使用されるブレーキ材等のような高密度且つ強度及び耐熱効果が重視されたC/Cコンポジットの原材料として最適であるからであり、比重の小さい粉体は、一般には焼失し易く後工程の炭化でマトリックス樹脂の含有率が高いため、活性炭、魚礁、触媒フィルタ等のような強度があまり重視されず、むしろ比表面積が大きく低密度の方が要求されるスポンジ状C/Cコンポジットの原材料として最適だからである。
【0032】
加圧成形工程S4は、比重の大きな粉体に対し、製造対象であるC/Cコンポジットに適したマトリックス樹脂を添加した後、金型等の型に当該粉体を投入して加圧することにより所望形状に加圧成形する工程である。ここで添加されるマトリックス樹脂は、樹脂成形におけるバインダとしての機能をも果たすべく、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂又はフラン樹脂等の如く炭素含有率が高いもの(例えば、炭素含有率が約70%以上のもの)が好ましい。これにより、後工程である炭化工程S5の加熱でマトリックス樹脂が焼失しても多くの炭素が残留し、高強度のC/Cコンポジットを得ることができる。
【0033】
炭化工程S5は、加圧成形工程S4で得られた成形品を炭化する工程である。
かかる炭化工程S5においては、炭化とマトリックス樹脂の添加とを繰り返し行う再緻密化処理S6が施されるので、加熱により焼失してしまったマトリックス樹脂を絶えず補充し、高強度且つ高密度なC/Cコンポジットを得る。
【0034】
即ち、エポキシ樹脂、フェノール樹脂又はフラン樹脂等に代表される樹脂は、焼失しない炭素を多く含有するものの、含有するマトリックス樹脂の一部は焼失して、その部分に空隙を生じさせてしまう。かかる空隙を残留させておくと密度が低下してしまい、高密度化を図れなくなってしまうため、加圧成形工程S4で添加したマトリックス樹脂と同種のものを再度添加することにより当該空隙を補充し、これを再び炭化するという工程を繰り返し行って、内部及び表面に空隙のない高密度なC/Cコンポジットを得るのである。
【0035】
一方、加圧成形工程S7は、比重の小さな粉体に対し、製造対象であるスポンジ状C/Cコンポジットに適したマトリックス樹脂を添加した後、金型等の型に当該粉体を投入して加圧することにより所望形状に加圧成形する工程である。ここで添加されるマトリックス樹脂は、例えばウレタン樹脂やポリビニルアルコール樹脂等の如く炭素含有率が低いもの(例えば、炭素含有率が約50%以下のもの)が好ましい。これにより、後工程である炭化工程S8の加熱で多くのマトリックス樹脂が焼失し、内部や表面に多くの空隙を有して低密度なスポンジ状C/Cコンポジットを得ることができる。尚、かかるマトリックス樹脂は、樹脂成形におけるバインダとしての機能を果たせば足り、水等のように炭化時に全て蒸発してしまうようなものであってもよい。
【0036】
更に、加圧成形工程S7においては、マトリックス樹脂添加時に種々の機能材を添加することもできる。例えば、Pt(白金)を添加して排気ガス用触媒フィルタの触媒として機能させ、又はTiO(二酸化チタン)を添加して汚れ分解用の光触媒として機能させることができる。尚、沸点が低く、後の炭化により焼失してしまうような機能材(例えばカテキン等)は、炭化工程S8の後(賦活処理S9の前後いずれであってもよい)に添加するのが好ましい。
【0037】
即ち、Ptの溶融点(約1770℃)及びTiOの溶融点(約1840℃)はいずれも炭化温度の800℃〜1000℃より高いため、炭化工程S8より前に添加しても焼失しないのに対し、カテキンの分解温度は炭化温度より低く、炭化工程S8の加熱で分解してしまうので、当該炭化工程S8の後に添加する必要がある。
【0038】
炭化工程S8は、加圧成形工程S7で得られた成形品を炭化する一方、その一部を焼失させる工程であり、炭化工程S5と同様、例えば不活性ガス雰囲気中で800℃〜1000℃の加熱により行われる。かかる炭化工程S8により、焼失したマトリックス樹脂の部分に空隙が残留し、低密度でポーラスなスポンジ状C/Cコンポジットを得る。
【0039】
更に、炭化工程S8の後に水蒸気賦活等の賦活処理S9を行えば、得られるスポンジ状C/Cコンポジットの表面粗度を更に高めて比表面積を大きくし、活性炭等に好適なように成形することができる。尚、かかる賦活処理S9は、それ程大きい比表面積が要求されないコンポジットでは省略することができる。
【0040】
次に、本発明における他の実施形態について説明する。
本実施形態に係るCFRPから成る廃材のリサイクル方法は、熱可塑性樹脂に炭素繊維を強化材として添加したCFRPから成る廃材から所望の再生品(C/Cコンポジット)を得ることによりリサイクル化を図るもので、図に示すように、破砕・粉砕工程S1と、ふるい分け工程S2と、分別工程S3と、加圧成形工程S4’又はS7’と、炭化工程S5’又はS8’とから主に構成される。尚、先の実施形態と同様の工程については、同一の符号を付すこととし、その詳細を省略する。
【0041】
まず、一連のリサイクル加工を施す前に、上記CFRPから成る各種廃材を廃棄の対象とされる製品のもの及び製品の製造過程で生じた端材としてのプリプレグ(炭素繊維に熱可塑性樹脂から成るマトリックス樹脂を含浸させた素材)と、加工粉とにより分けておく。尚、本実施形態の場合、プリプレグは硬化した状態であるため、先の実施形態における加熱硬化処理S10は不要である。
【0042】
次に、上記廃棄の対象とされる製品のものと製品の製造過程で生じた端材としてのプリプレグとを破砕・粉砕工程S1にて破砕及び粉砕し、所定粒径の粉体を得る。この粉体と先により分けておいた加工粉とを混ぜ、ふるい分け工程S2で粒径200μm以下のもののみを分別工程S3へ送ることとし、比重の大きいものと小さいものとに分別する。かかる分別は先の実施形態と同様である。
【0043】
分別工程S3により分別された粉体のうち、比重の大きな粉体は加圧成形工程S4’及び炭化工程S5(再緻密化処理S6を含む)を経て高密度なC/Cコンポジットに成形される一方、比重の小さな粉体は加圧成形工程S7’及び炭化工程S8’(必要な場合は賦活処理S9を含む)を経て低密度でポーラスなスポンジ状C/Cコンポジットに成形される。
【0044】
ここで、本実施形態で再生の対象とされるCFRPは、熱可塑性樹脂がマトリックス樹脂とされているため、先の実施形態と異なり、炭化工程S5’及びS8’における昇温過程で樹脂が完全に溶融して形状保持ができない。このため、加圧成形工程S4’及びS7’で粉体を加圧する際の型を炭化時の加熱温度に耐え得る材質のもの(例えば鉄製のもの等)とし、その型に入れたまま炭化工程S5’及びS8’による加熱を施す必要がある。
【0045】
尚、加圧成形工程S4’又はS7’において使用した型から成形品を脱型した後、炭化時の加熱温度に耐え得る材質の型に入れ替えて炭化工程S5’又はS8’を施すようにしてもよく、この場合、加圧成形工程S4’又はS7’で使用される型をアルミ製のもの等低溶融点のものとすることができる。本実施形態によれば、マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂から成るCFRPのリサイクルを行うことができる。
【0046】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば加圧成形工程と炭化工程とが成す再生加工工程は、分別工程S3で分別された粉体のうち、再生品に適した比重の粉体によって当該再生品を成形することができれば他の成形方法としてもよい。また、製造されるべき再生品は、上記C/Cコンポジット又はスポンジ状C/Cコンポジットに限定されず、含有する炭素繊維を有効利用し得る種々の再生品とすることができる。更に、本実施形態においては、分別工程において比重で分別しているが、炭素繊維含有率で分別すれば他の分別方法であってもよい。具体的には、代表サンプルの元素分析、液体浮沈法、又はサイクロン等による分別であってもよい。
【0047】
【発明の効果】
請求項1及び請求項2の発明によれば、最終的に成形される再生品に合わせて、再生加工工程にて使用する粉体をその炭素繊維含有率(比重)に基づいて分け、所望性質の再生品を得るので、樹脂に炭素繊維を強化材として添加したCFRPから成る廃材の完全なリサイクル化を図るとともに、含有炭素繊維を有効利用した再生品を得ることができる。
【0048】
更に、加圧成形した後炭化しているので、所望形状で且つ高強度の再生品を得ることができるとともに、含有炭素繊維を有効利用した再生品を得ることができる。
【0049】
請求項の発明によれば、炭素繊維含有率の大きい粉体に対する炭化工程において、炭化とマトリックス樹脂の添加とを所定回数繰り返して行われる再緻密化処理を施すので、加熱で消失したマトリックス樹脂を補充しつつ炭化を行うことができ、高密度な再生品を得ることができる。
【0050】
請求項の発明によれば、炭素繊維含有率の小さい粉体に対する加圧成形工程において、前記マトリックス樹脂とともに機能材を添加するので、各種機能が付加された再生品を得ることができる。
【0051】
請求項の発明によれば、賦活処理により炭化工程で得られた成形品の表面の粗度を高くすることができるので、例えば活性炭や触媒フィルタ等表面の粗い方が好ましい再生品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るCFRP(マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂のもの)から成る廃材のリサイクル方法を示すフローチャート
【図2】本発明の他の実施形態に係るCFRP(マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂のもの)から成る廃材のリサイクル方法を示すフローチャート
【符号の説明】
S1…破砕・粉砕工程
S2…ふるい分け工程
S3…分別工程
S4、S7、S4’、S7’…加圧成形工程
S5、S8、S5’、S8’…炭化工程
S6…再緻密化処理
S9…賦活処理

Claims (5)

  1. 樹脂に炭素繊維を強化材として添加したCFRPから成る廃材から所望の再生品を得るためのリサイクル方法であって、
    前記廃材を粉砕して所定粒径の粉体を得る粉体生成工程と、
    該粉体生成工程で得られた粉体を炭素繊維含有率に基づいて分別する分別工程と、
    該分別工程で分別された粉体のうち、前記再生品に要求される炭素繊維含有率の大小に合致した粉体であって前記再生品の材質として適した炭素繊維含有率の粉体を使用して当該再生品を成形することにより、前記分別工程で分別されたそれぞれの粉体に適した異なる製法で再生品を得る再生加工工程と、
    を備えるとともに、
    前記再生加工工程は、
    前記粉体に対し、前記再生品に適したマトリックス樹脂を添加した後、所望形状に加圧成形する加圧成形工程と、
    該加圧成形工程で得られた成形品を炭化する炭化工程と、
    を備え、当該加圧成形工程及び炭化工程を経ることにより所望の再生品を得ることを特徴とするCFRPから成る廃材のリサイクル方法。
  2. 前記分別工程は、前記粉体生成工程で得られた粉体を比重に基づいて分別することを特徴とする請求項1記載のCFRPから成る廃材のリサイクル方法。
  3. 前記分別工程は、前記粉体を炭素繊維含有率の大きいものと小さいものとの2つに分別するものとし、
    炭素繊維含有率の大きい粉体に対する炭化工程において、炭化とマトリックス樹脂の添加とを所定回数繰り返して行われる再緻密化処理を施すことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のCFRPから成る廃材のリサイクル方法。
  4. 前記分別工程は、前記粉体を炭素繊維含有率の大きいものと小さいものとの2つに分別するものとし、
    炭素繊維含有率の小さい粉体に対する加圧成形工程中又は炭化工程の後において、機能材を添加することを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載のCFRPから成る廃材のリサイクル方法。
  5. 前記炭化工程で得られた成形品に対し、賦活処理を施すことを特徴とする請求項記載のCFRPから成る廃材のリサイクル方法。
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