JP3934482B2 - 通気性多孔体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、集塵機やオイルミストセパレーター等のフィルター材料、吸音、消音材料、触媒担持材料として用いられる通気性多孔体に関する。特に、微細な通気孔が全面に分布した均一構造を有し、機械的強度に優れる通気性多孔体に関する。
【0002】
【従来の技術】
フィルター材料は、濾過能力に優れるとともに、簡易製作ができ、材料費が安く、機械的強度に優れることが望まれている。例えば、特開平8−24536号公報では、架橋ポリマー粉末30〜80質量%と、熱可塑性ポリマー粉末20〜70質量%とを配合した混合粉体を、金型に充填して加熱焼結することにより得られる通気性多孔体が提案されている。
この場合、熱可塑性ポリマー粒子が接着剤の役割を果たして通気性多孔体としての形状を維持すると共に、架橋ポリマー粒子が熱可塑性ポリマー粒子間に入り込んで、空隙形成の役割を果たしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術で、良好な濾過性能および機械的強度を通気性多孔体が有するためには、架橋ポリマーと熱可塑性ポリマーとが流動し合える適度な相溶性があり、しかも、架橋ポリマー粉末と熱可塑性ポリマー粉末を完全に均一に混合させた状態で加熱焼結することが必要である。
しかしながら、架橋ポリマーは、有機過酸化物やシラン化合物などによる化学的方法と電子線照射による方法などで熱可塑性ポリマーの分子同士を結合させた三次元構造の巨大な分子量を持った分子であり、加熱により部分的に溶融することはあっても、全体としては極めて溶融し難いため、流動性に乏しい。
このため、架橋ポリマーは、架橋ポリマー粒子同士は勿論、熱可塑性ポリマー粒子とも融着し難く、形成された通気性多孔体の機械的強度は熱可塑性ポリマー粒子同士の結合によって支えられることになり、強度が不十分なものとなってしまう。
また、架橋ポリマー粉末は超音速ジェット粉砕機等で粉砕するため表面に髭が多く形状が不定形であり、一方、熱可塑性ポリマー粉末はポリマーメーカーで重合直後に取出した比較的表面が平滑な粉末であるため、両者の混合粉末は空気で運ばれたり、衝撃を与えられたりすると分離し易い。更に、架橋ポリマー粉末と熱可塑性ポリマー粉末の比重が異なっていると、一層分離し易い。実際の製造工程においては、混合粉末の貯槽から金型までの配管中を空気輸送し、金型に密に充填するため金型の壁面を木槌で叩いて衝撃を与え、また、振動機により激しく振動させるため、上述のような形状が異なる、あるいは比重の異なる架橋ポリマー粉末と熱可塑性ポリマー粉末との混合粉末は甚だしく分離してしまう。
このため、架橋ポリマー粉末と熱可塑性ポリマー粉末とが均一に分布された状態で加熱焼結されず、架橋ポリマー粉末の多い部分では結合箇所が少ないため機械的強度が低く、熱可塑性ポリマー粉末の多い部分では融着箇所が多いため通気性が不十分となってしまう。
したがって、上記従来の通気性多孔体でも、フィルター材料としては濾過性能も強度も不十分なものと言わざるを得なかった。
【0004】
そこで、本発明は、通気性、機械的強度の双方に優れる通気性多孔体を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、架橋ポリマーに熱可塑性ポリマーを添加して混合物とし、前記熱可塑性ポリマーの溶融温度より低い温度で剪断力によって該混合物を粉砕することによって得られる部分的にポリマーアロイ状の複合体粉末を、加熱焼結してなることを特徴とする通気性多孔体によって解決される。
【0006】
架橋ポリマーと熱可塑性ポリマーとの混合物を、熱可塑性ポリマーの溶融温度以下の温度で、強力な剪断力をかけることによって得られる複合体粉末では、架橋ポリマーが「島」、熱可塑性ポリマーが「海」を構成し、架橋ポリマーと熱可塑性ポリマーとが部分的にポリマーアロイ化していることが認められる。
例えば、架橋ポリマーとして架橋ポリエチレン絶縁電線から導線を取除いて得られた黒色の架橋ポリエチレン粗粒体を、熱可塑性ポリマーとして1質量%の酸化チタンを含有する白色の低密度ポリエチレンペレットを用い、この両者を多段式石臼型混練押出機(KCK EX80×6)に投入し、低密度ポリエチレンの溶融温度114.2℃よりも低い70℃の温度で、強力な剪断力をかけることによって得られた複合体粉末を顕微鏡で観察したところ、架橋ポリエチレンの黒色粒子を白色の低密度ポリエチレンが取り囲んでいるのが認められた。
【0007】
この複合体粉末粒子は、顕微鏡下で温度をあげていくと、低密度ポリエチレンの溶融温度114.2℃を越えたところで白色低密度ポリエチレンが溶融し、隣接する粉末粒子の同様に溶融している白色低密度ポリエチレンと融着して結合し、一方、黒色架橋ポリエチレンの部分は架橋ポリエチレンの溶融温度を遥かにこえた240℃でも流動せず、複合体粉末粒子間の空隙を保持していることを、本発明者らは見出だし、本発明を完成させた。この本発明の通気性多孔体は、微細な通気孔が全面に分布した均一構造を有し、機械的強度に優れたものである。
【0008】
さらに、上記複合体粉末として、架橋ポリマーと熱可塑性ポリマーとの比率が50対50質量%〜90対10質量%である混合物を熱可塑性ポリマーの溶融温度以下の温度で剪断力によって粉砕することによって得られるものを用いると、適正な通気性と十分な機械的強度を有する通気性多孔体が形成される。
【0009】
また、上記の架橋ポリマーと熱可塑性ポリマーとの複合体粉末に、熱可塑性ポリマー粉末を添加して混合することによって得られた混合粉末を、加熱焼結することで、さらに大きな機械的強度を有する通気性多孔体を形成することができる。
ここで、上記複合体粉末と、該複合体粉末と混合させる熱可塑性ポリマー粉末との比率を100対0質量%〜40対60質量%とし、混合し加熱焼結すると、通気性を損なうことなく、大きな機械的強度を有する通気性多孔体を得ることができる。
【0010】
なお、10℃/分の昇温速度で測定したDSC測定の溶融挙動で、上記複合体粉末の吸熱ピーク温度が、該複合体粉末を構成する熱可塑性ポリマー単体よりも1℃以上低いと、該複合体粉末が、適正な通気性と十分な機械的強度を有する通気性多孔体を得る上で、架橋ポリマーと熱可塑性ポリマーとが適度にアロイ化したものであると言うことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
本発明に用いられる架橋ポリマーには、架橋ポリオレフィン、架橋ゴム、架橋ポリウレタンなどを挙げることができる。
【0012】
架橋ポリオレフィンとしては、架橋ポリエチレン、架橋エチレン・酢酸ビニル共重合体、架橋エチレン・エチルアクリレート共重合体等が好ましい。これらの架橋ポリオレフィンは、既に架橋されたものを使用してもよいし、有機過酸化物やシラン化合物などによる化学的方法や電子線照射による方法などでポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンを架橋したものでもよい。また、既に架橋されたポリエチレン絶縁電線等を用いると、廃棄物の再利用ができ、製品のコストを抑えるとともに、機械粉砕するだけで簡便に原料を調製することができる。
【0013】
架橋ゴムとしては、一般に加硫ゴムと言われる硫黄架橋ゴムと、炭素−炭素架橋である非硫黄架橋ゴムなどが挙げられる。具体的な架橋ゴムの例としては、ポリイソブレン、ポリブチレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンポリマー、エチレン−プロピレンポリマー、ポリクロロプレンなどの合成ゴム及び天然ゴムの1種あるいは2種以上を硫黄又は炭素架橋したものを挙げることができる。
【0014】
架橋ポリウレタンとしては、例えば、グリコール化合物とジイソシアネート化合物の中に、分子中に3個以上の水酸基を有するポリオール化合物、および/または3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を一部含んでいるモノマーから得られる架橋されたポリウレタン、あるいは側鎖にイソシアネート基が残存するポリウレタンを水などで架橋したものを挙げることができる。
【0015】
架橋ポリマーは、クラッシャー等の破砕機で粗粒体にしたもので、その形状は好ましくはペレット状で、平均粒径は10mm以下、望ましくは5mm以下である。
【0016】
本発明に用いられる熱可塑性ポリマーとしては、ポリエチレン,ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン,ABS樹脂などのスチレン樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル樹脂、ナイロン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、変性ポリフェニレンエーテルなどのエンジニアリング樹脂が挙げられ、目的に応じて選択することができる。
【0017】
熱可塑性ポリマーは、通常ポリマーメーカーから提供されるものが使用でき、直径1〜5mm、高さ1〜5mmの円筒状、または、直径1〜5mmの球状のペレットが望ましく、あるいは、クラッシャー等の破砕機で破砕した平均粒径1〜5mmの粗粒体でもよい。
【0018】
本発明で用いる複合体粉末は、架橋ポリマー粒子に熱可塑性ポリマー粒子を添加して混合した後、石臼型混練押出機、または一軸あるいは二軸混練押出機を用いて、熱可塑性ポリマーの溶融温度より好ましくは30〜80℃低い温度に制御し、剪断力によって粉砕することによって得ることができる。
複合体粉末の粒径は、粉末化の条件や方法によって変えることができ、本発明の通気性、機械的強度に優れる通気性多孔体を得るためには、100〜450μm程度であることが好ましい。
【0019】
本発明の通気性多孔体は、上記のようにして得られた複合体粉末を金型に充填し、加熱焼結することにより得られる。金型への複合体粉末の充填は、可能な限り細密な充填が実現されるようにすればよく、この場合、先ず、複合体粉末を貯槽から配管内を空気輸送により金型まで送りこみ、続いて金型に密に充填するため金型の壁面を木槌などにより強い衝撃を与える、また、振動機により金型を激しく振動させるなどすることにより細密に充填させることができる。細密に充填できれば、振動条件などは、金型の大きさ・形状などにより適宜変更可能であり、限定されるものではない。
なお、従来は、この充填する工程時に架橋ポリマーと熱可塑性ポリマーとの分離が問題であったが、本発明の通気性多孔体を製造する際には、そのような工程を経ても、複合体粉末を形成している架橋ポリマーと熱可塑性ポリマーとはアロイを形成して強固に結合しているため、分離することはない。
【0020】
次に、複合体粉末を充填した金型を、熱可塑性ポリマーの溶融温度より50〜100℃高い所定の焼結温度に保ってある電気炉に移し、1〜6時間保持した後、金型を電気炉より取出し、冷却後、金型を分解して目的とする通気性多孔体を得る。本発明の通気性多孔体は、焼結時の焼結温度がある程度変動しても、十分な通気度と機械的強度を有し、焼結時の温度制御は従来に比べ緩やかでよく、製造し易いものである。
また、通気度と機械的強度などが悪化しなければ、焼結時に圧力をかけてもよいし、雰囲気を制御してもよく、圧力・雰囲気等の諸条件は特に限定されるものではない。
【0021】
さらに、通気性多孔体の機械的強度を補強するために、複合体粉末を加熱焼結するのに際し、熱可塑性ポリマー粉末を複合体粉末に添加して混合した後、加熱焼結してもよい。このとき添加する熱可塑性ポリマーとしては、前記の複合体粉末を形成する際に用いる熱可塑性ポリマーの例が挙げられ、両者は、その種類あるいは物性等が、同一であっても、異なっていてもよく、所望の通気性多孔体の性質により適宜選択できる。
【0022】
【実施例】
実施例1
有機過酸化物で架橋した使用済みの6KV架橋ポリエチレン絶縁電線から銅線を取除いて得られたゲル分率が85%の黒色の架橋ポリエチレンを破砕機で破砕した粒径が約3mmの架橋ポリエチレン粗粒子70質量部に、粒径が約3mmの密度0.920(g/cm3)、メルトフローレート1.5g/10分の自然色の低密度ポリエチレンペレット30質量部を加え、ブレンダーを用いて均一に混合して両ポリマーの混合物を得た。多段石臼型押出機(KCK社製:KCK EX80×6,ブレード段数は6段、ブレードクリアランスは3mm、2mm及び1mmの3段階)を、前段は広く後段は狭くなるようにセットし、ブレード前段部の温度は70℃に、後段部は40℃に調整し、また、回転数は60rpmに設定し、この押出機に上記のポリマー混合物を連続投入して剪断粉砕を行なった。ポリマー混合物は固相で剪断粉砕が円滑に行われて、架橋ポリエチレンと低密度ポリエチレンの複合体粉末が得られた。
なお、ゲル分率は、ポリマーを120℃のキシレンに5時間浸漬して未架橋分を抽出し、不抽出分と抽出前のポリマーとの質量比から算出した。
【0023】
この複合体粉末の形態を光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡で観察したところ、低密度ポリエチレンの中に架橋ポリエチレンが包含されている平均粒径が150μmの粉末であった。この複合体粉末を、昇温速度10℃/分の条件でDSC測定を行ったところ、吸熱ピーク温度が106.8℃で、原料として用いて低密度ポリエチレンの吸熱ピーク温度114.2℃よりも7.4℃低く、架橋ポリエチレンと低密度ポリエチレンが部分的にアロイ化していることが認められた。
【0024】
この複合体粉末を、断面が3mm×100mm、深さ150mmの金型に、少量ずつ木槌で叩きながら充填し、最後に、振動機にかけて可能な限り細密に充填した。複合体粉末を充填した金型を190℃の電気炉に1時間保持して焼結し、厚さ3mm、幅100mm、長さ150mmの通気性多孔体を得た。
この通気性多孔体の焼結状態を観察し、更に、JIS L 1004に準拠した通気性試験機(東洋精機製作所製)によって通気度を測定した。また、この通気性多孔体から、幅10mm、長さ150mmの短冊状試験片5本を切取り、23℃において引張速度50mm/分で、引張強さを測定し、結果を表1に示した。
なお、通気性多孔体としては、実用上、通気度は少なくとも1cm3/cm2・秒程度有していることが必要であり、引張強さは0.2kg/mm2以上であることが好ましい。
【0025】
実施例2
ビニルシランで水架橋した使用済みの3KV架橋ポリエチレン絶縁電線から銅線を取除いて得られたゲル分率が75%の架橋ポリエチレンを、破砕機で破砕した粒径が約3mmの黒色の架橋ポリエチレン粗粒子70質量部に、粒径が約3mm、密度0.920(g/cm3)、メルトフローレート1.5g/10分の自然色の低密度ポリエチレンペレット30質量部を加え、ブレンダーを用いて均一に混合して両ポリマーの混合物を得た。この混合物を、多段石臼型混練押出機により剪断し、平均粒径155μmの架橋ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの複合体粉末を得た。混練押出機の設定条件は実施例1と同一である。
【0026】
この複合体粉末を、断面が3mm×100mm、深さ150mmの金型に、少量ずつ木槌で叩きながら充填し、最後に、振動機にかけて可能な限り細密に充填した。複合体粉末を充填した金型を190℃の電気炉に1時間保持して焼結し、厚さ3mm、幅100mm、長さ150mmの通気性多孔体を得た。
この通気性多孔体の焼結状態を観察し、更に、JIS L 1004に準拠した通気性試験機(東洋精機製作所製)によって通気度を測定した。また、この通気性多孔体から、幅10mm、長さ150mmの短冊状試験片5本を切取り、23℃において引張速度50mm/分で、引張強さを測定し、結果を表1に示した。
【0027】
比較例1
有機過酸化物で架橋した使用済みの6KV架橋ポリエチレン絶縁電線から銅線を取除いて得られたゲル分率が85%の黒色の架橋ポリエチレンを破砕機で破砕した粒径が約3mmの架橋ポリエチレン粗粒子を、LABO用超音速ジェット粉砕機(日本ニューマチック)によって粉砕し、平均粒径170μmの架橋ポリエチレン粉末を得た。この架橋ポリエチレン粉末70質量%と平均粒径145μm、密度0.923(g/cm3)、メルトフローレート1.0g/10分の自然色の直鎖状低密度ポリエチレン40質量%の混合粉末3kgを、容量10lのV型ブレンダーにて30分間混合した。
この混合粉末を光学顕微鏡で観察したところ、黒色の架橋ポリエチレン粒子と、自然色の直鎖状低密度ポリエチレン粒子が入り交じっているのが認められた。この混合粉末を、断面が3mm×100mm、深さ150mmの金型に、少量ずつ木槌で叩きながら充填し、最後に、振動機にかけて可能な限り細密に充填した。混合粉末を充填した金型を200℃の電気炉に1時間保持して焼結し、厚さ3mm、幅100mm、長さ150mmの通気性多孔体を得た。
この通気性多孔体の焼結状態を観察し、更に、JIS L 1004に準拠した通気性試験機(東洋精機製作所製)によって通気度を測定した。また、この通気性多孔体から、幅10mm、長さ150mmの短冊状試験片5本を切取り、23℃において引張速度50mm/分で、引張強さを測定し、結果を表1に示した。
【0028】
【表1】
【0029】
表1より、比較例1の架橋ポリエチレン粉末と直鎖状低密度ポリエチレン粉末の単なる混合粉末を加熱焼結して得られた通気性多孔体は、表面の所々が溶解し、微細孔の分布が不均一であり、通気度、引張り強さが不足しているのに対し、実施例1及び実施例2の架橋ポリエチレンと低密度ポリエチレンの複合体粉末を加熱焼結して得られた通気性多孔体の表面は、微細孔が全面に均一に分布しており、通気度、引張り強さを充分保持していることが分かる。
【0030】
実施例3
有機過酸化物で架橋した使用済みの6KV架橋ポリエチレン絶縁電線から銅線を取除いて得られたゲル分率が85%の黒色の架橋ポリエチレンを破砕機で破砕した粒径が約3mmの架橋ポリエチレン粗粒子と、粒径が約3mmの密度0.920(g/cm3)、メルトフローレート1.5g/10分の自然色の低密度ポリエチレンペレットを、質量比で50対50、90対10、40対60、95対5に組合せ、それぞれをブレンダーを用いて均一に混合して両ポリマーの混合物を得た。
これらの混合物を、多段石臼型混練押出機により剪断し、平均粒径150μmの架橋ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの複合体粉末を得た。混練押出機の設定条件は実施例1と同一である。
【0031】
これらの複合体粉末を、断面が3mm×100mm、深さ150mmの金型に、少量ずつ木槌で叩きながら充填し、最後に、振動機にかけて可能な限り細密に充填した。複合体粉末を充填した金型を190℃の電気炉に1時間保持して焼結し、厚さ3mm、幅100mm、長さ150mmの通気性多孔体を得た。
これらの通気性多孔体の焼結状態を観察し、更に、JIS L 1004に準拠した通気性試験機(東洋精機製作所製)によって通気度を測定した。また、この通気性多孔体から、幅10mm、長さ150mmの短冊状試験片5本を切取り、23℃において引張速度50mm/分で、引張強さを測定し、結果を表2に示した。
【0032】
【表2】
【0033】
表2より、架橋ポリエチレンと低密度ポリエチレンの複合比率が40対60質量%の場合は、微細孔の数が不十分のため、通気度が低く、架橋ポリエチレンと低密度ポリエチレンの複合比率が95対5質量%の場合は、引張り強さが不足していることが認められ、架橋ポリエチレンと低密度ポリエチレンの適正な複合比率は50対50質量%〜90対10質量%の範囲であることが分かる。
【0034】
実施例4
有機過酸化物で架橋した使用済みの6KV架橋ポリエチレン絶縁電線から銅線を取除いて得られたゲル分率が85%の黒色の架橋ポリエチレンを破砕機で破砕した粒径が約3mmの架橋ポリエチレン粗粒子70質量部に、粒径が約3mmの密度0.920(g/cm3)、メルトフローレート1.5g/10分の自然色の低密度ポリエチレンペレットを30質量部加え、ブレンダーを用いて均一に混合して両ポリマーの混合物を得た。この混合物を、多段石臼型混練押出機により剪断し、平均粒径150μmの架橋ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの複合体粉末を得た。混練押出機の設定条件は実施例1と同一である。
【0035】
この複合体粉末と、平均粒径170μm、密度0.955(g/cm3)、メルトフローレート1.1g/10分の自然色の高密度ポリエチレン粉末を質量比で100対20、60対40、40対60、20対80に組合せ、それぞれをブレンダーを用いて均一に混合した。
次にそれぞれの混合物を、断面が3mm×100mm、深さ150mmの金型に、少量ずつ木槌で叩きながら充填し、最後に、振動機にかけて可能な限り細密に充填した。複合体粉末を充填した金型を190℃の電気炉に1時間保持して焼結し、厚さ3mm、幅100mm、長さ150mmの通気性多孔体を得た。
これらの通気性多孔体の焼結状態を観察し、更に、JIS L 1004に準拠した通気性試験機(東洋精機製作所製)によって通気度を測定した。また、この通気性多孔体から、幅10mm、長さ150mmの短冊状試験片5本を切取り、23℃において引張速度50mm/分で、引張強さを測定し、結果を表3に示した。
【0036】
【表3】
【0037】
表3により、架橋ポリエチレンと低密度ポリエチレンの複合体粉末に高密度ポリエチレン粉末を混合した粉末が質量比で20対80の場合は、全般的に通気孔の数が少なく、そのため、通気度が不十分であり、従って、架橋ポリエチレンと低密度ポリエチレンの複合体粉末に高密度ポリエチレン粉末を添加した混合粉末の適正な比率は質量比で、100対0〜40対60の範囲であることが分かる。
【0038】
実施例5
試料番号:5−1(実施例)
有機過酸化物で架橋した使用済みの6KV架橋ポリエチレン絶縁電線から銅線を取除いて得られたゲル分率が85%の黒色の架橋ポリエチレンを破砕機で破砕した粒径が約3mmの架橋ポリエチレン粗粒子70質量部に、粒径が約3mmの密度0.920(g/cm3)、メルトフローレート1.5g/10分の自然色の低密度ポリエチレンペレット30質量部を加え、ブレンダーを用いて均一に混合して両ポリマーの混合物を得た。この混合物を、多段石臼型混練押出機により剪断し、平均粒径155μmの架橋ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの複合体粉末を得た。混練押出機の設定条件は実施例1と同一である。得られた複合体粉末を光学顕微鏡で観察したところ架橋ポリエチレンの黒色粒子を自然色の低密度ポリエチレンが取り囲んでいるのが認められた。
【0039】
本複合体粉末を、断面が3mm×100mm、深さ150mmの金型に、上部より粉末を少量ずつ加えながら金型の壁を木槌で20回叩いて充填し、更に、振動機に60秒かけて充填を完了させた。次に、本金型を190℃の電気炉に2時間保持することにより、厚さ3mm、幅100mm、長さ150mmの板状の通気性多孔体を得た。
【0040】
試料番号:5−2(比較例)
有機過酸化物で架橋した使用済みの6KV架橋ポリエチレン絶縁電線から銅線を取除いて得られたゲル分率が85%の黒色の架橋ポリエチレンを破砕機で破砕した粒径が約3mmの架橋ポリエチレン粗粒子を、LABO用超音速ジェット粉砕機(日本ニューマチック)によって粉砕し、平均粒径170μmの架橋ポリエチレン粉末を得た。この架橋ポリエチレン粉末70質量%と平均粒径145μm、密度0.923(g/cm3)、メルトフローレート1.0g/10分の自然色の直鎖状低密度ポリエチレン30質量%の混合粉末3kgを、容量10lのV型ブレンダーにて30分混合し、混合粉末を得た。得られた混合粉末を光学顕微鏡で観察したところ黒色の架橋ポリエチレンの粒子と自然色の低密度ポリエチレン粒子が入り交じっているのが認められた。
【0041】
本混合粉末を、断面が3mm×100mm、深さ150mmの金型に、上部より粉末を少量ずつ加えながら金型の壁を木槌で20回叩いて充填し、更に、振動機に60秒かけて充填を完了させた。次に、本金型を200℃の電気炉に2時間保存することにより、厚さ3mm、幅100mm、長さ150mmの板状の通気性多孔体を得た。
得られた通気性多孔体について外観を観察した結果は、表4の通りである。
【0042】
【表4】
【0043】
表4より以下のことが分かる。
即ち、架橋ポリエチレンと低密度ポリエチレンの単なる混合粉末は、配管内の空気輸送や金型への充填の際の衝撃や振動によって両者が分離し、そのため、部分的な溶解や通気孔の偏在を生じるのに対し、架橋ポリエチレンと熱可塑性ポリエチレンの複合体粉末は、配管内の空気輸送や金型への充填の際の衝撃や振動によっても分離することがない。
【0044】
実施例6
試料番号:6−1(実施例)
有機過酸化物で架橋した使用済みの6KV架橋ポリエチレン絶縁電線から銅線を取除いて得られたゲル分率が85%の黒色の架橋ポリエチレンを破砕機で破砕した粒径が約3mmの架橋ポリエチレン粗粒子70質量部に、粒径が約3mmの密度0.920(g/cm3)、メルトフローレート1.0g/10分の自然色の低密度ポリエチレンペレット30質量部を加え、ブレンダーを用いて均一に混合して両ポリマーの混合物を得た。この混合物を、多段石臼型混練押出機により剪断し、平均粒径165μmの架橋ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの複合体粉末を得た。混練押出機の設定条件は実施例1と同一である。
【0045】
試料番号:6−2(比較例)
有機過酸化物で架橋した使用済みの6KV架橋ポリエチレン絶縁電線から銅線を取除いて得られたゲル分率が85%の黒色の架橋ポリエチレンを破砕機で破砕した粒径が約3mmの架橋ポリエチレン粗粒子を、LABO用超音速ジェット粉砕機(日本ニューマチック)によって粉砕し、平均粒径170μmの架橋ポリエチレン粉末を得た。この架橋ポリエチレン粉末70質量%と平均粒径180μm、密度0.920(g/cm3)、メルトフローレート1.0g/10分の自然色の直鎖状低密度ポリエチレン30質量%の混合粉末3kgを、容量10lのV型ブレンダーにて30分間混合し、混合粉末を得た。(試料番号:実施例6−2)
【0046】
上述の各試料を、断面が3mm×100mm、深さ150mmの金型に、上部より粉末を少量ずつ加えながら金型の壁を木槌で軽く5回叩いて充填し、更に、振動機に10秒かけて充填を完了させた。次に、試料番号6−1の複合体粉末を充填した金型については電気炉の温度を180、210、240℃の3水準として焼結し、一方、試料番号6−2の混合粉末については電気炉の温度を185、190、195℃の3水準で焼結させた。但し、いずれの場合も、焼結時間は2時間とした。
【0047】
焼結によって得られた厚さ3mm、幅100mm、長さ150mmの板状の通気性多孔体について、外観と引張強さ、通気度を測定した。結果を表5に示す。
【0048】
【表5】
【0049】
表5より以下のことが分かる。
即ち、架橋ポリエチレンと低密度ポリエチレンの単なる混合粉末は、適正な焼結温度範囲が著しく狭く、温度が5℃下回ると通気度は低密度ポリエチレン同士の結合が不十分のため通気度は大きいが、充分な機械的強度が得られず、また、5℃上回ると低密度ポリエチレン同士の融着が過大となって機械的強度は上昇するが、通気度が著しく低下する。一方、架橋ポリエチレンと低密度ポリエチレンの複合体粉末は、広い温度範囲に亙って充分且つ適正な通気度と機械的強度が得られるので、製造し易くなったと言える。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、架橋ポリマーと熱可塑性ポリマーとの混合物を剪断力をかけて粉砕することで得られる部分的にポリマーアロイ化した複合体粉末を用い、加熱焼結することにより、空気輸送や金型充填の際に架橋ポリマーと熱可塑性ポリマーが分離してしまう問題もなく、微細な通気孔が全面に均一に分布した均一構造を有し、機械的強度の大きい通気性多孔体を得ることができる。また、焼結時の適性温度も幅があるため、通気性多孔体の製造条件を緩和し、製造し易くすることができる。
また、上述の複合体粉末に熱可塑性ポリマーを添加して加熱焼結すれば、更に機械的強度の大きな通気性多孔体を得ることができる。
更に、架橋ポリマーとして、廃棄処分される架橋ポリエチレン絶縁電線から回収した架橋ポリエチレンの活用により、原料コストの低減を図ることができると共に、資源の再利用の観点からも望ましい。
Claims (5)
- 架橋ポリマーに熱可塑性ポリマーを添加して混合物とし、前記熱可塑性ポリマーの溶融温度より低い温度で剪断力によって該混合物を粉砕することによって得られる部分的にポリマーアロイ状の複合体粉末を、加熱焼結してなることを特徴とする通気性多孔体。
- 前記架橋ポリマーと熱可塑性ポリマーの混合物中の前記架橋ポリマーと前記熱可塑性ポリマーとの比率が、50対50質量%〜90対10質量%であることを特徴とする請求項1に記載の通気性多孔体。
- 前記部分的にポリマーアロイ状の複合体粉末に、熱可塑性ポリマー粉末を添加して混合し、加熱焼結してなることを特徴とする請求項1または2に記載の通気性多孔体。
- 前記部分的にポリマーアロイ状の複合体粉末と、該複合体粉末に添加して混合する前記熱可塑性ポリマー粉末との比率が、100対0質量%〜40対60質量%であることを特徴とする請求項3に記載の通気性多孔体。
- 10℃/分の昇温速度で測定したDSC測定の溶融挙動で、前記部分的にポリマーアロイ状の複合体粉末の吸熱ピーク温度が、該複合体粉末を構成する前記熱可塑性ポリマー単体よりも1℃以上低いことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の通気性多孔体。
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