以下、場合により図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
廃棄物の処理システムの一実施形態は、炭素繊維及び樹脂成分を含む廃棄物の粉砕物を、比重差を利用して、炭素繊維を含み比重が上記粉砕物より大きい第一粉砕物と、比重が上記粉砕物より小さい第二粉砕物とに分別する第一分別部、並びに、上記第一粉砕物を、炭素繊維の含有量が上記第一粉砕物より大きい炭素繊維リッチ分と、樹脂成分の含有量が上記第一粉砕物よりも大きい樹脂リッチ分とに分別する第二分別部、を備える。
廃棄物は、例えば、日用品、パソコン、家電、自動車、航空機、スポーツ用品及び建築土木分野等に由来するものであってよい。これらの廃棄物は、自動車及び家電等の廃棄で生じるシュレッダーダストであってよい。廃棄物は、炭素繊維及び樹脂成分の他に、金属、ガラス及びゴム等の異物を含んでもよい。廃棄物は、炭素繊維複合材であってよい。炭素繊維複合材としては、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等が挙げられる。本開示において、「CFRP」は、炭素繊維強化熱硬化性樹脂(熱硬化性CFRP)及び炭素繊維強化熱可塑性樹脂(熱可塑性CFRP)の両方を含む意味で用いる。
廃棄物は、炭素繊維及び樹脂成分を含む。廃棄物に含まれる炭素繊維としては、アクリル繊維又はピッチを原料として高温で炭化して製造されたものが挙げられる。樹脂成分は、例えば、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含んでもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂及びユリア樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレン等が挙げられる。
廃棄物に含まれ得る代表的な成分の比重(参考値)を表1に示す。廃棄物の粉砕物中に含まれる成分の組成比によって比重差が生じ、この比重の差を利用することで、炭素繊維を含み且つ比重が上記粉砕物より大きい第一粉砕物と、比重が上記粉砕物より小さい第二粉砕物とに分別することができる。比重は、JIS Z 8807:2012「固体の密度及び比重の測定方法」に記載の方法(例えば、比重瓶及びルシャトリエ比重瓶等を使用した方法)、又は比重測定計を用いて測定することができる。
廃棄物の粉砕物の最大粒子径は、例えば、100mm以下、80mm以下、50mm以下、30mm以下、20mm以下、又は10mm以下であってよい。廃棄物の粉砕物の最大粒子径は、例えば、1mm以上であってよい。廃棄物の粉砕物の最大粒子径が上記範囲内であると、第一の粉砕物と第二の粉砕物との分離がより良くなるため、その後の処理をより円滑なものとすることができる。また、廃棄物の粉砕物の最大粒子径が上記範囲内であると、粉砕物中の炭素繊維の繊維長も短くすることができる。粉砕物の最大粒子径は、破砕機及び粉砕機等で調整することができ、例えば、ジョークラッシャー、ハンマークラッシャー及びボールミル等を用いて調整することができる。粉砕物の最大粒子径を調整するために、例えば、トロンメル等で分級してもよい。廃棄物の粉砕物の最大粒子径は、JIS Z 8801で規定される呼び寸法の異なる数個の篩を用いて決定することができる。
第一分別部は、粉砕物を、炭素繊維を含み且つ比重が上記粉砕物より大きい第一粉砕物と、比重が上記粉砕物より小さい第二粉砕物とに分別する手段を備える。第一粉砕物における炭素繊維の含有量は、第一粉砕物全量を基準として、例えば、50〜80質量%、60〜80質量%、又は70〜80質量%であってよい。第一粉砕物における樹脂成分の含有量は、第一粉砕物全量を基準として、例えば、40質量%以下、30質量%以下、又は20質量%以下であってよい。
第一分別部は、乾式比重分別手段、及び湿式比重分別手段から選ばれる少なくとも一つの分別手段を備えていてもよい。乾式比重分別手段としては、例えば、サイクロン、及び流動床が挙げられる。湿式比重分別手段としては、例えば、液体サイクロン、及び重液等が挙げられる。上記第一分別部が、サイクロン、流動床、及び重液から選ばれる少なくとも一つの分別手段を備えていてもよい。
サイクロンに用いる媒体は、気体であっても液体であってもよい。流動床に用いる媒体は、例えば、ガラスビーズ及び砂等であってもよい。
重液としては、樹脂成分よりも比重が大きく、炭素繊維よりも比重が小さくなるように調整された液体を用いることができる。重液の比重は、粉砕物の組成に応じて調整してもよく、例えば、1.45〜1.7、又は1.5〜1.6であってよい。重液は、一般に比重分離用重液として入手可能な重液を用いることができる。比重分離用重液は、例えば、ポリタングステン酸ナトリウム(最大比重が3.11であり、比重1.0〜3.0に調整できる)等を使用することができる。
第一分別部は、少なくとも2つの分別手段を備えてもよい。第一分別部が2つの分別手段を備える場合、比重の差による分離の精度をより高めることができる。第一分別部が2つの分別手段を備える場合、例えば、1つ目の分別手段と2つ目の分別手段とで、分別する比重の設定値を変えることができる。廃棄物に金属及びガラス等の比重の大きなものが含まれる場合、及び炭素繊維と比重の近い成分が含まれる場合には、上述のように第一分別部が比重の設定値が異なる分別手段を複数備えると好ましい。第一分別部は、3つ以上の分別手段を備えてもよい。分別手段を複数備える場合の分別手段の組合せは特に制限されるものではなく、同じ分別手段を連結してもよく、互いに異なる分別手段を連結してもよい。第一分別部は、上記比重差を利用した分離の前に、上記廃棄物の粉砕物から、最大粒子径が大きい粉砕物を分別する手段(例えば、トロンメル等の分級機)を更に備えてもよい。上記手段によって分別された最大粒子径が大きい粉砕物は、更に細かく粉砕した後、第一分別部に導入することができる。
第二分別部は、炭素繊維の含有量が上記第一粉砕物より大きい炭素繊維リッチ分と、樹脂成分の含有量が上記第一粉砕物よりも大きい樹脂リッチ分とに分別する手段を備える。炭素繊維リッチ分における炭素繊維の含有量は、炭素繊維リッチ分全量を基準として、例えば、70質量%以上、80質量%以上であってよく、90質量%以上、又は95質量%であってよく、100質量%(炭素繊維が単離された場合)であってよい。
第二分別部は、上記第一粉砕物を加熱する加熱部、上記第一粉砕物を亜臨界水又は超臨界水によって分解する分解部、及び上記第一粉砕物を酸処理する酸処理部から選ばれる少なくとも一つを備えていてもよい。廃棄物中に炭素繊維複合材が含まれる場合、及び廃棄物中に炭素繊維との比重差が小さい成分が含まれる場合等であっても、第二分別部が上記構成を備えることによって、強度が高く且つ燃え難い炭素繊維とその他の成分とをより精度よく分別することができる。例えば、第一粉砕物が熱可塑性樹脂等の熱によって溶融するような成分(可溶融成分)を含む場合、加熱部によって可溶融成分を除去することができる。第一粉砕物が比較的高分子量の熱可塑性樹脂、及び熱硬化性樹脂等の樹脂を含む場合、亜臨界水又は超臨界水によって分解する分解部によって樹脂成分を分解して除去することができる。また第一粉砕物が熱硬化性樹脂等の酸によって溶解するような成分(可溶解成分)を含む場合、酸処理部によって可溶解成分を除去することができる。この場合、第二分別部は、加熱部、分解部又は酸処理部の下流側に濾過部を備えていてもよい。
廃棄物の処理システムは、第二粉砕物を後処理する後処理部を更に備えてもよい。第二粉砕物中に炭素繊維が含まれる場合には、そのままキルン窯前バーナーの燃料として供給するとセメントの品質に影響を及ぼすことも懸念されることから、第二粉砕物を後処理することが好ましい。第一分別部で得られる第二粉砕物は、第二粉砕物中の炭素繊維の含有量に応じて、例えば、そのままキルン窯前バーナーから供給する燃料として用いてもよく、また、後処理を行った後にセメント原燃料として用いてもよい。
上記後処理部は、例えば、第二粉砕物を加熱処理する加熱処理部であってよい。加熱処理部は、例えば、廃棄物を処理するキルンであってもよく、還元雰囲気に調整された炭化炉であってもよく、また酸化雰囲気に調整された加熱炉であってもよい。第二粉砕物を加熱炉で処理する際には、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属等の塩を添加してもよい。アルカリ金属及びアルカリ土類金属等の塩を添加することによって、第二粉砕物の酸化開始温度を低下させることができる。第二粉砕物が炭素繊維を含む場合には上記塩の添加によって加熱処理をより効率化することができる。アルカリ金属及びアルカリ土類金属等の塩は、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩及び炭酸塩等であってよい。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウム等であってよい。
図1は、本実施形態の廃棄物の処理システムの一例を示す模式図である。処理システム200は、廃棄物の粉砕装置80と、第一分別部100と、第一粉砕物を炭素繊維リッチ分と樹脂リッチ分とに分別する第二分別部70と、第二粉砕物を加熱処理する加熱処理部72と、を備える。第一分別部100は、第一分別手段51、第二分別手段52、第一収容部61及び第二収容部62を備える。第二分別部70は、酸処理部71及び濾過部75を備える。以下、CFRPを含む廃棄物を処理する例で説明する。
粉砕装置80は、炭素繊維及び樹脂成分を含有する廃棄物を所定のサイズ以下となるように粉砕する。本例では粉砕装置80を備えているが、変形例では粉砕装置80を備えていなくてもよく、別の変形例では粉砕装置80の上流側に破砕装置を備えてもよい。
粉砕装置80で廃棄物を粉砕して得られる粉砕物は、第一分別部100に導入される。第一分別部100に導入された粉砕物は、第一分別手段51及び第二分別手段52によって、炭素繊維を含み比重が上記粉砕物より大きい第一粉砕物(重比重物)と、比重が上記粉砕物より小さい第二粉砕物(軽比重物)とに分別される。
廃棄物が熱硬化性CFRPを含む場合、粉砕装置80において熱硬化性CFRPから分離された炭素繊維、及び炭素繊維と熱硬化性樹脂との複合物が、第一収容部61に重比重物として回収される。また、粉砕装置80において熱硬化性CFRPから分離された熱硬化性樹脂が、第二収容部62に軽比重物として回収される。このとき、細かく裁断された炭素繊維が樹脂成分に付着して軽比重物として第二収容部62に回収されてもよい。本例では第一分別部100が2つの分別手段を備えているが、変形例では分別手段は1つであってもよい。また別の変形例では3つ以上の分別手段を備えていてもよい。
第一分別手段51において、第一分別部100に導入された粉砕物中の所定サイズ以上であって重いものは粉砕装置80に戻され、更に細かく粉砕された後に、第一分別手段51に再度導入される。粉砕装置80及び第一分別手段51の間における粉砕物の循環は、粉砕物の流出をより確実に防止するために、密閉環境下で行ってもよい。
第一収容部61に収容された第一粉砕物は、第二分別部70に導入される。第二分別部70に導入された第一粉砕物は、酸処理部71に導入される。酸処理部71はタンクを備え、第一粉砕物と酸とを接触させ、第一粉砕物に含まれる樹脂成分等を溶解させる。廃棄物が熱硬化性CFRPを含む場合、第一粉砕物として回収された、炭素繊維と熱硬化性樹脂との複合体における熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂等)が、酸との接触によって加水分解され炭素繊維から樹脂成分が脱離する。酸としては、硫酸等を用いることができる。酸処理時には必要に応じて電気分解処理を行って樹脂成分の分解を促進してもよい。
本例では第二分別部70が酸処理部71を備えているが、変形例では、廃棄物の組成に応じて、酸処理部71に代えて加熱部を備えてもよく、酸処理部71の下流に更に加熱部を備えてもよい。例えば、廃棄物が熱硬化性CFRPに加えて炭素繊維との比重差が小さい熱可塑性樹脂等を含む場合には、変形例のように第二分別部70が加熱部を備えることによって、比重分離で分別されず第一粉砕物として回収された熱可塑性樹脂を、加熱部において溶融、燃焼又はガス化等することで炭素繊維と分別することができる。加熱部は、例えば、加熱炉、及び炭化炉等であってよい。
酸処理部71では、樹脂成分が溶解し、主として炭素繊維を固形分とするスラリーが得られる。このスラリーは例えばフィルターを備える濾過部75に導入される。濾過部75はフィルタープレスであってよい。スラリーは、濾過部75において、炭素繊維の含有量が第一粉砕物より大きい炭素繊維リッチ分(炭素繊維残渣)と、樹脂成分の含有量が第一粉砕物リッチ分よりも大きい樹脂リッチ分とに分別される。
炭素繊維残渣は、炭素繊維として再利用してもよいし、炭化炉に導入し還元雰囲気下で蒸し焼きにして炭化燃料としてもよい。炭化燃料は、例えば、セメント原燃料としてもよいし、バーナー燃料又は仮焼炉用の燃料としてもよい。樹脂リッチ分は、例えば、セメントクリンカ製造装置の仮焼炉又はキルン窯前で燃焼してもよい。
第二収容部62に収容された第二粉砕物は、加熱処理部72に導入される。加熱処理部72は、例えば、加熱炉、炭化炉及びキルンの少なくとも一つを備えてよい。加熱炉では、酸化雰囲気下で第二粉砕物を燃焼して炭化残渣にしてもよい。炭化炉では、還元雰囲気下で第二粉砕物を蒸し焼きにして炭化燃料としてもよい。このようにして得られる炭化残渣及び炭化燃料は、セメント原燃料としてもよいし、バーナー燃焼用又は仮焼炉用の燃料としてもよい。加熱炉の排熱はセメントクリンカ製造装置のキルンにて排熱回収してもよい。第二粉砕物は、キルンの窯前で燃焼してもよい。
図2は、本実施形態の廃棄物の処理システムの別の例を示す模式図である。処理システム201は、廃棄物の破砕装置81と、粉砕装置80と、第一分別部100と、第一粉砕物を炭素繊維リッチ分と樹脂リッチ分とに分別する第二分別部70と、第二粉砕物を加熱処理する加熱処理部72と、を備える。第一分別部100は、第一分別手段51、第一収容部61及び第二収容部62を備える。第二分別部70は、酸処理部71、濾過部75及び加熱部76を備える。
処理システム201は、破砕装置81及び加熱部76を備え、且つ第二分別手段52を備えていない点で、処理システム200とは異なる。処理システム200と異なる部分を中心に以下に説明する。その他、処理システム200と共通する部分の説明は省略する。以下、熱硬化性CFRP及び熱可塑性CFRPを含む廃棄物を処理する例で説明する。
処理システム201では、粉砕装置80の上流に破砕装置81を備える。破砕装置81は大型の廃棄物から粉砕物を得ることを可能とする。破砕装置81に導入された大型廃棄物は、破砕装置81において粗破砕物に調製され、該粗破砕物が粉砕装置80に導入される。破砕装置81及び粉砕装置80を経て得られる粉砕物は、最大粒子径のばらつきを抑えて粒子径をより高度に均一性に優れたものとすることができ、第一分別手段51における比重分離をより円滑に行うことができる。本例では、第一分別部100が分別手段を1つ備えるものとなっているが、変形例では複数の分別手段を備えてもよい。
廃棄物が熱硬化性CFRP及び熱可塑性CFRPを含む場合、粉砕装置80においてCFRPから分離された炭素繊維、炭素繊維と熱硬化性樹脂との複合物、及び炭素繊維と熱可塑性樹脂との複合物が、第一収容部61に重比重物として回収される。また、粉砕装置80においてCFRPから分離された熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂が第二収容部62に軽比重物として回収される。この際、細かく裁断されたような炭素繊維が樹脂成分に付着して軽比重物として第二収容部62に回収されてもよい。
第二分別部70に導入された第一粉砕物は、酸処理部71に導入される。酸処理部71はタンクを備えており、当該タンク内において第一粉砕物と酸とを接触させ、第一粉砕物に含まれる熱硬化性樹脂等を溶解させる。廃棄物がCFRP及び熱可塑性CFRPを含むため、第一粉砕物には、少なくとも炭素繊維、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の3成分が含まれる。酸処理部71において、上記3成分のうち、まず酸との接触により加水分解可能な成分(主に熱硬化性樹脂)が、炭素繊維から脱離する。酸処理時には必要に応じて電気分解処理を行って樹脂成分の分解を促進してもよい。
酸処理部71において、熱硬化性樹脂が溶解し、炭素繊維及び熱可塑性樹脂を主たる固形分とするスラリーが得られる。このスラリーを濾過部75に導入し、炭素繊維及び熱可塑性樹脂の含有量が第一粉砕物よりも大きい固形分と、熱硬化性樹脂の含有量(熱硬化性樹脂由来の成分を含む含有量)が第一粉砕物よりも大きい部分(樹脂リッチ分)とに分別される。上記炭素繊維及び熱可塑性樹脂の含有量が第一粉砕物よりも大きい固形分は、更に加熱部76に導入され、熱可塑性樹脂が溶融する温度に加熱することで、熱可塑性樹脂を炭素繊維から脱離させる。このようにして、第一粉砕物が、炭素繊維残渣と、炭素繊維から脱離した熱可塑性樹脂(樹脂リッチ分)とに分別される。
上述のとおり、処理システム201は、酸処理部71及び加熱部76を備えるため、廃棄物が熱硬化性CFRP及び熱可塑性CFRPを含む場合であっても、強度が高く且つ燃え難い炭素繊維と、強度が比較的低く燃え易い樹脂成分とを分別し、その後の処理を円滑にすることが可能となる。
図3は、処理システム201に備えられる加熱部76の一例を示す模式図である。加熱部76は、シリンダ95と、螺送子96とを備える。シリンダ95は、濾過部75で得られた炭素繊維及び熱可塑性樹脂を含む固形分をシリンダ内へ投入する投入口97、炭素繊維残渣を排出する排出口98、及びガス化させた樹脂成分(気化ガス)を回収する回収口99を有する。本例では、加熱部76は回収口99を一つ備える例となっているが、変形例では、回収口99を複数備えてもよい。処理システム201は、加熱部76の下流側に別途濾過部を備えてもよく、この場合、排出口98は濾過部と接続してよい。
上述のとおり、酸処理部71で熱硬化性樹脂を溶解し、炭素繊維及び熱可塑性樹脂を主たる固形分とするスラリーが得られ、続く濾過部75で溶解した熱可塑性樹脂をスラリーから分別し、炭素繊維及び熱可塑性樹脂を含む固形分が得られる。当該固形分は、濾過部75に接続された加熱部76の投入口97からシリンダ95の内部へ投入される。シリンダ95内部は、例えば、ヒーター(不図示)等によって加熱(例えば、100〜450℃)されており、シリンダ95内に投入された上記固形分中の熱可塑性樹脂部分が溶融する。一方、炭素繊維は溶融せず、螺送子96によってシリンダ95の排出口98側に送られ、炭素繊維残渣として排出口98から回収される。上記熱可塑性樹脂の一部又は全部が、シリンダ95内の熱によって熱分解されガス化されることで、回収口99から回収される。回収された熱可塑性樹脂由来の成分は、例えば、冷却等によって液化又は固化してもよい。上記熱可塑性樹脂の一部又は全部は、溶融状態のまま加熱部76の下流側に備えられた濾過部に導入されてもよく、この場合、濾過部において、炭素繊維残渣と熱可塑性樹脂とに分別される。
図4は、処理システム200及び201に備えられる熱処理部の一例を示す模式図である。加熱処理部72は、検出器90と、加熱炉91と、炭化炉92とを備える。検出器90は、第二粉砕物中の炭素繊維の有無、及び含有量を検出し、炭素繊維の含有量に応じて、第二粉砕物の後処理の方法を決定することができるように構成される。
第二粉砕物中に炭素繊維が含まれていない、又は僅かである場合(例えば、第二粉砕物中の炭素繊維の含有量が、第二粉砕物全量を基準として5質量%以下)、セメントの品質への影響が少ないことから、そのままキルン窯前バーナーの燃料として供給してもよい。第二粉砕物中に炭素繊維が含まれており、その含有量が第二粉砕物全量を基準として5質量%超である場合には、セメントの品質に影響を及ぼすことも懸念されることから、第二粉砕物は加熱炉91又は炭化炉92に導入される。
加熱炉91では、酸化雰囲気下で第二粉砕物を燃焼させ炭化残渣としてもよい。加熱炉91における燃焼を調整するために、必要に応じて、加熱炉91内に、アルカリ金属及びアルカリ土類金属等の無機塩を添加してもよい。加熱炉の排熱はセメントクリンカ製造装置のキルンにて排熱回収してもよい。
炭化炉92では、還元雰囲気下で第二粉砕物を蒸し焼きにし、炭化させて炭化燃料としてもよい。樹脂成分は炭化によって脆化するため、燃料として用いる際の粉砕等による粒度調整等が容易となる。
加熱炉91及び炭化炉92において得られる炭化残渣及び炭化燃料は、セメント原燃料として用いることができる。当該セメント原燃料は仮焼炉に供給してもよい。
上述の廃棄物の処理システム200及び201によって得られる第二粉砕物及び樹脂リッチ分は炭素繊維が低減されている。したがって、キルンへ燃料として導入しても、炭素繊維由来の粉塵が電気集塵機に侵入し、電気集塵機の荷電減少及び集塵性能の低下の問題が生じ難い。
廃棄物の処理方法の一実施形態は、炭素繊維及び樹脂成分を含む廃棄物の粉砕物を、比重差を利用して、炭素繊維を含み比重が上記粉砕物より大きい第一粉砕物と、比重が上記粉砕物より小さい第二粉砕物とに分別する第一の工程、及び、上記第一粉砕物を、炭素繊維の含有量が上記第一粉砕物より大きい炭素繊維リッチ分と、樹脂成分の含有量が上記第一粉砕物よりも大きい樹脂リッチ分とに分別する第二の工程を含む。
廃棄物の処理方法の一例は、上述の廃棄物の処理システム200を用いて実施することができる。したがって、本例の廃棄物処理方法は、上記の廃棄物の処理システム200についての説明内容を適用することができる。
第一の工程は、サイクロン、流動床、及び重液から選ばれる少なくとも一つの分別手段を用いて行われてもよい。第一の工程は、少なくとも2つの分別手段を用いて行われてもよい。複数の分別手段を組み合わせて第一の工程を行うことによって、第一の工程で得られる第一の粉砕物における炭素繊維の含有量をより高めることができるため、後の工程をより円滑なものとすることができる。
第二の工程は、第一粉砕物を加熱する加熱処理、第一粉砕物を亜臨界水又は超臨界水によって分解する分解処理、及び第一粉砕物を酸処理する酸処理から選ばれる少なくとも一つの処理によって行われてもよい。第二の工程がこのような処理によって行われることで、炭素繊維と樹脂成分との複合体、及び炭素繊維と比重が近い樹脂成分等が第一粉砕物中に含まれた場合であっても、強度が高く且つ燃え難い炭素繊維と、強度が比較的低く燃え易い樹脂成分とを容易に分別することが可能であり、その後の処理を円滑にすることが可能となる。
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。