JP4564774B2 - 鋼の連続鋳造用ノズル - Google Patents

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Description

本発明は、鋼の連続鋳造用ノズルに関し、特に、溶鋼の偏流を防止し、ノズル内管へのアルミナ付着を防止することを特徴とする鋼の連続鋳造用ノズルに関する。
鋼の連続鋳造用ノズルとしては、浸漬ノズル,ロングノズル,タンディッシュノズル,セミイマージョンノズルなどが知られている。
鋼の連続鋳造用ノズルとして、“浸漬ノズル”を例にあげて説明すると、この浸漬ノズルの使用目的は、タンディッシュ・モールド間をシールし、溶鋼の再酸化を防止すると共に、浸漬ノズルの吐出孔からの溶鋼流を制御し、かつ、モールド内に均一に溶鋼を供給し、操業の安定化,鋳片品質の向上を図ることにある。
浸漬ノズルを介して溶鋼をモールド内に供給する際、その流量制御方法としては、ストッパー方式とスライドプレート方式がある。特に、スライドプレート方式では、2枚組あるいは3枚組の孔の開いたプレート内の一枚を摺動させ、その孔の開度により流量を調節するものであるから、開度が小さいときには、浸漬ノズル内に偏流が発生しやすい。浸漬ノズル内に偏流が発生すると、各吐出孔からの吐出流量が不均一となり、モールド内に偏流が発生し、鋳片品質が低下する。そのため、鋳片品質の向上のためには、浸漬ノズル内の偏流を防止することが重要である。
この浸漬ノズル内の偏流を防止する技術としては、内孔部の形状を改善する方法がある。例えば、「溶融金属の流通路表面に半球状の凹凸部を形成したノズル(特許文献1:特開昭62-89566号公報)」、「ノズル孔の内面に、断面円弧状をなす波形の襞が溶湯を流れる方向へ4山以上連ねて設けられ、該襞は山から山までの間隔が4〜25cmで、山から谷までの深さが0.3〜2cmである連続鋳造用浸漬ノズル(特許文献2:特開平6-269913号公報)」といった“凹凸部を配設すること”が提案されている。
また、「溶鋼流通孔に複数の段差部を設けた浸漬ノズル(特許文献3:実公平7-23091号公報)」や、「溶融金属導入部分に絞りを設け、該絞り部より吐出孔までの間を流速緩和部とした浸漬ノズル(特許文献4:特許第3050101号公報)」といった“環状突起を配設すること”も提案されている。
さらに、「浸漬管の自由横断面に絞り環が配置され、この絞り環が浸漬管の自由横断面を狭くし、絞り環の縦断面が流出口に溶湯の層流が生ずるように形成され、かつ絞り環が浸漬管内に配置されていることを特徴とする浸漬管(特許文献5:特開昭62-207568号公報)」も提案されている。
特開昭62−89566号公報(特許請求の範囲) 特開平6−269913号公報(請求項1) 実公平7−23091号公報(請求項1〜4) 特許第3050101号公報(請求項1〜10) 特開昭62−207568号公報(特許請求の範囲第1項)
ノズル内孔部の形状に着目した前記従来技術では、部分的に乱流を生じさせ、溶鋼流の偏流を防止する効果がある程度は期待できる。
しかし、突起部を設けることで抵抗が増し、所定のスループット(単位時間当りに通過する溶鋼量)を確保できなくなるという問題があった。また、Alキルド鋼などを鋳造する際、突起部の配設方法によっては、浸漬ノズルの溶鋼流通孔部に配設した突起部直上部と直下部に、アルミナを主体とした非金属介在物(以下、本明細書において、単に“アルミナ”という)が付着堆積するという問題もあった。
アルミナが付着し、突起間を埋めてしまうと、突起部を配設した効果が消滅し、偏流防止効果がなくなってしまうと同時に、内孔部の有効断面積を縮小してしまうため、所定のスループットを確保できなくなり、操業不能に陥るといった欠点があった。
本発明は、上記従来技術の欠点,問題点に鑑み成されたものであって、その目的とするところは、流量制御により発生する“ノズル内から吐出孔部までの溶鋼の偏流”を防ぎ、突起部による抵抗も低減し、更に、ノズル内孔部の特に突起間にアルミナが付着することを抑制することができる、鋼の連続鋳造用ノズルを提供することである。
本発明者等は、鋭意研究の結果、アルミナ付着は突起の下部よりも上部から発生すること、および、スループットの確保のためには、突起の上部形状をなだらかにすれば良いこと、整流効果は突起の下部形状によることを見出した。
なわち、ノズル内孔部の偏流を抑制し、所定のスループットを確保し、かつアルミナ付着を防止するため、本発明に係る鋳造用ノズルは、「鋼の鋳造用ノズルの溶鋼流通孔部に、高さが3〜20mmの、溶鋼流通方向に対する垂直な方向において環状に連続していない突起部を配設した鋳造用ノズルであって、該突起部は、溶鋼流通方向に対して平行な方向における“ノズル内管と突起部の上端部の成す角度”が60°以下で、かつ、“ノズル内管と突起部の下端部の成す角度”が“ノズル内管と突起部の上端部の成す角度”よりも大きく、90°以下であることを特徴とする鋼の連続鋳造用ノズル」を要旨とする。
なお、上記「ノズル内管」とは、突起部を配設する前の元々の“ノズル内管の壁面”を指す。この内管壁面と突起部の上端部の成す角度、突起部の下端部の成す角度を、本明細書中で、以下「突起部上端の角度」、「突起部下端の角度」と呼称する。
上記「突起部上端の角度」および「突起部下端の角度」を図示すると、それぞれ図1の(E)〜(G)中の“α”および“β”に相当する。
本発明において、「突起部上端の角度」を60°以下とすることにより、突起部による抵抗を軽減し、所定のスループットを確保でき、突起の直上に流れが遅い領域を作らないことで、突起直上部へのアルミナ付着を防止できる。また、「突起部下端の角度」を「突起部上端の角度」よりも大きく、90°以下にすることにより、突起の直下で効率的に乱流を発生させ、流通孔部内を整流化することが出来る。その結果、実機操業中において、所定のスループットを確保しつつ、整流化を図ることができる。さらに、突起間にアルミナが付着しない突起上部の形状とすることで、鋳造終了まで安定して突起の整流効果を持続することができ、安定操業や鋳片品質の向上に寄与することが出来る。
以下、本発明に係る鋳造用ノズルの実施の形態について詳細に説明する。
本発明に係る鋳造用ノズルは、前記したとおり、鋳造用ノズルの溶鋼流通孔部に、高さが3〜20mmの、溶鋼流通方向に対する垂直な方向において環状に連続していない突起部を配設する場合において、溶鋼流通方向に対して平行な方向(即ち縦断面)における“ノズル内管と突起部の上端部の成す角度”、すなわち「突起部上端の角度」が60°以下で、かつ“ノズル内管と突起部の下端部の成す角度”、すなわち「突起部下端の角度」が「突起部上端の角度」よりも大きく、90°以下であることを特徴とする。
ノズル内孔部に配設する突起の高さは、3mm未満では整流効果が乏しく、また、スループットの確保のために20mm以下であることが望ましい。
また、「突起部上端の角度」が60°以下までの範囲では、突起がスループット確保の妨げになることなく、突起の直上に流れが少ない領域が発生しないので、アルミナが付着することもない。また、「突起部下端の角度」が「突起部上端の角度」よりも大きく、90°以下である範囲では、突起の直下で効率的に乱流が発生し、整流効果に優れる。なお、溶鋼流通方向に対して平行な方向(即ち縦断面)における、「突起部上端の角度」および「突起部下端の角度」は、基本的には接線の角度とする(図1(E)の“α”“β”参照)。
図1の(E),(F),(G)に流体計算結果例を示すが、「突起部上端の角度“α”」が60°よりも大きいと、図1(F)および(G)に示すように、突起の直上に流れが少ない領域(14c)および(14d)が発生する。一般に、アルミナ付着は、溶鋼の流れが少ない部位に発生するため、この領域(14c)や(14d)は、アルミナが付着する部位となり、図1の(F),(G)に示すような“突起(11c),(11d)の上部形状”は、好ましくない。
また、「突起部下端の角度“β”」が「突起部上端の角度“α”」より大きい場合、図1(E)および(G)に示すように、突起の直下に乱流部(13a)および(13d)が発生する。しかし、図1の(G)では、突起(11d)の上部が60°以上であるため、この上部の領域(14d)にアルミナが付着し、好ましくない。突起の上部にアルミナが付着することなく、突起の下部で乱流が発生するような突起形状、例えば、図1(E)に示すような“突起(11a)の形状”とすることが重要である。
本発明において、「突起部上端の角度」が60°以下で、かつ、「突起部下端の角度」が「突起部上端の角度」よりも大きく、90°以下であると規定したが、後記実施例5(図3参照)に示すように、上端部が2mm未満の高さ(ノズル内管中心方向への高さh)であれば、この範囲を外れていても良く、その際には、その部位の直下の角度が60°以下であれば良い。なお、「突起部上端の角度」は、50°以下が好ましく、より好ましくは40°以下、更に好ましくは30°以下の範囲である。
また、「突起部下端の角度」は30°以上90°以下が好ましく、より好ましくは40°以上90°以下、更に好ましくは50°以上90°以下、最も好ましくは60°以上90°以下の範囲である。
また、本発明での突起部は、前記した通り、溶鋼流通方向に対する垂直な方向において、環状に連続していないことを特徴とする。
ノズル内を流下する溶鋼は、突起部の影響で乱流を発生するが、環状の突起では、ノズル中心方向へ流れの向きを変えるだけで、完全に偏流は解消せず整流効果までは到達し難い。溶鋼流通方向に対して垂直な方向において、環状に連続していない独立突起では、ノズル中心方向へ流れの向きを変え、さらに突起部の左右方向へも流れの向きを変えることができる。その結果、複雑な乱流を発生させることができ、局部的には乱流状態であるが、全体としてみれば整流化される。
本発明において、突起部は、溶鋼流通孔内に4ヶ所以上配設されていることが好ましい。3ヶ所以下では、溶鋼が突起に衝突して“局所的には乱流,全体的には整流化”とする効果に乏しい。より好ましくは6ヶ所以上であり、更に好ましくは8ヶ所以上である。
なお、各突起部の配設については、溶鋼流通方向に対して垂直な一面上において2ヶ所以上あることが好ましく、さらに好ましくは3ヶ所以上である。また、溶鋼流通方向に対して垂直な方向における突起部と突起部の間隔は、5mm以上が好ましく、更に好ましくは10mm以上である。
本発明における突起部は、鋳造用ノズル本体と一体成形されていることを特徴とする。一体成形でない嵌め込み式等の場合は、突起部と本体の隙間に溶鋼や鋼中介在物が入り込み、突起部の脱落につながることが懸念されるため、好ましくない。
また、本発明における突起部は、鋳造用ノズルの溶鋼流通孔部の全面に配置しても良いし、一部に配設しても良く、特に配設部位は限定しないが、少なくとも浸漬部には配設した方が望ましい。
本発明で特徴とする突起部の材質については、本発明で限定されるものではなく、自明の材質を任意に適用することができる。これらを列挙すると、Al−C系,MgO−C系,Al−MgO−C系,Al−SiO−C系,CaO−ZrO−C系,ZrO−C系などのカーボン含有耐火物や、Al系,MgO系,スピネル系などのカーボンレス耐火物を挙げることが出来る。
本発明で特徴とする突起部を配設した浸漬ノズル(本発明に係る浸漬ノズル)に対しては、従来の不活性ガスの吹き込み方式を併用することができ、これによって、突起部間へのアルミナ付着を更に低減することができる。この併用も本発明に包含されるものである。
ここで、前記“背景技術”の項で挙げた先行技術と本発明とを対比することで、本発明を更に詳細に説明する。
本発明に関連する、流量制御により発生する“ノズル内から吐出孔部までの溶鋼の偏流”を防止する技術としては、前掲の特許文献1(特開昭62-89566号公報)には「溶融金属の流通路表面に半球状の凹凸部を形成したノズル」が開示されている。これは、凹凸半径がR=2〜9mmで、凹凸部の耐火物内全流路面積に対する比率は7〜40%程度が好ましいとあり、また、浸漬ノズルの実施例においては、半球状の凹部と凸部を交互に多数形成したものが開示されている。
また、前掲の特許文献2(特開平6-269913号公報)には「ノズル孔の内面に、断面円弧状をなす波形の襞が溶湯の流れる方向へ4山以上連ねて設けられ、該襞は山から山までの間隔が4〜25cmで、山から谷までの深さが0.3〜2cmである連続鋳造用浸漬ノズル」が開示されている。
更に、前掲の特許文献3(実公平7-23091号公報)には「溶鋼流通孔に複数の段差部を設けた浸漬ノズル」が、前掲の特許文献4(特許第3050101号公報)には「溶融金属導入部分に絞りを設け、該絞り部より吐出孔までの間を流速緩和部とした浸漬ノズル」が開示されている。
しかしながら、上記特許文献1〜4には、いずれも「突起部上端や突起部下端の角度」についての記載が無く、この角度についての重要性は考慮されていない。
「突起部上端の角度」が60°を超えると、突起部自体の抵抗が大きくなり、所定のスループットの確保が困難になり、更に、流れが少ない領域が発生するため、アルミナ付着の起点になる。また、「突起部下端の角度」が「突起部上端の角度」よりも小さいと、突起直下部で効率的に乱流が発生せず、突起部を配設した効果が消滅すると考えられる。この点で、本発明とは異なるものである。
また、前掲の特許文献5(特開昭62-207568号公報)には、「浸漬管の自由横断面に絞り環が配置され、この絞り環が浸漬管の自由横断面を狭くし、絞り環の縦断面が流出口に溶湯の層流が生ずるように形成され、かつ、絞り環が浸漬管内に配置されている浸漬管」が開示されている。この絞り環の縦断面形状は、上部の半径より下部の半径の方が大きいことを特徴とし、絞り環の配設方法は、内管のテーパによる嵌め込み方式を想定している。また、絞り環の個数は1ヶの場合が記載されている。
この特許文献5には、突起部縦断面において、突起部下部の半径が上部より大きいことについて言及しているものの、具体的な角度についての記載は無く、この点が本発明と異なるものである。また、この絞り環は一種の環状突起の部類に相当し、環状突起では効果が少ないとする本発明と異なる。更に、絞り環の配設方法が、内管および絞り環のテーパを利用した方法を採用しているのに対し、本発明では一体成形であることも異なるものである。
つまり、従来の技術では、鋼の連続鋳造用ノズルの溶鋼流通孔部に、高さが3〜20mmの、溶鋼流通方向に対する垂直な方向において環状に連続していない突起部を配設し、ノズル溶鋼流通孔部を流下する溶鋼を整流化させる場合において、「突起部上端の角度」が60°以下とすることで、所定のスループットを確保し、突起の直上に流れが少ない領域が発生せずアルミナ付着を防止でき、「突起部下端の角度」を「突起部上端の角度」よりも大きく、90°以下とすることで、効率的に乱流を発生させ、整流効果が生じる、という知見は得られておらず、ここに本発明の新規性がある。
次に、本発明の実施例を比較例と共に挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例1〜7によって限定されるものではない。
<実施例1、比較例1〜3(図1参照)>
実施例1及び比較例1〜3について、図1の(A)〜(G)を参照して説明する。なお、図1の(A)は、実施例1の浸漬ノズルを、図1の(B),(C),(D)は、比較例1,2,3の浸漬ノズルを、それぞれ示した図であって、それらは、いずれも溶鋼流通方向に平行な方向に縦割りにした図である。また、図1の(E)は同(A)の浸漬ノズル(実施例1)の、図1の(F)は同(C)の浸漬ノズル(比較例2)の、図1の(G)は同(D)の浸漬ノズル(比較例3)の、溶鋼流通方向に対して平行な方向の突起部の断面をそれぞれ示した図であって、実施例1,比較例2,比較例3の浸漬ノズルの「水モデル実験」の結果を説明するための図である。
実施例1について、図1の(A),(E)を参照して説明すると、本実施例1は、内径φ80mmの透明なアクリル製浸漬ノズル(10a)に高さH=13mm,突起部上端の角度α=45°,突起部下端の角度β=80°の突起部(11a)を配設した例である。また、比較例1は、図1の(B)に示すように、突起部を配設しない浸漬ノズル(ストレートノズル)(10b)であり、比較例2は、図1の(C),(F)に示すように、高さH=13mm,突起部上端の角度α=85°,突起部下端の角度β=50°の突起部(11c)を配設した浸漬ノズル(10c)であり、比較例3は、図1の(D),(G)に示すように、高さH=13mm,突起部上端の角度α=80°,突起部下端の角度β=85°の突起部(11d)を配設した浸漬ノズル(10d)である。
なお、実施例1の突起部(11a)、比較例2の突起部(11c)および比較例3の突起部(11d)は、いずれも環状に連続しておらず、溶鋼流通方向に対して垂直な一面上に4ヶ、溶鋼流通方向に対して平行な方向に3段の合計12ヶ配設した。
実施例1及び比較例1〜3の各浸漬ノズルに対して「水モデル実験」を行った。まず、スループット:5steel T/min相当で内孔部の水の流れを目視で確認した結果、実施例1の浸漬ノズル(10a)は、突起部(11a)直下で乱流が発生している部分(13a)が認められる[図1(E)の“水の流れ(12a)”参照]。一方、比較例3の浸漬ノズル(10d)は、突起部(11d)直下で乱流が発生している部分(13d)は認められるものの、実施例1とは異なり、突起部(11d)直上で流れが遅い領域(14d)が認められ、実機では、ここにアルミナが付着するものと考えられる[図1(G)の“水の流れ(12d)”参照]。
これに対して、比較例2の浸漬ノズル(10c)は、突起部(11c)直下に乱流は見られず、整流効果は期待できない。更に、突起部(11c)の直上では、流れが遅い領域(14c)が確認され、比較例3と同様、実機では、ここにアルミナが付着するものと考えられる[図1(F)の“水の流れ(12c)”参照]。
続いて、実施例1及び比較例1〜3の各浸漬ノズルにおける最大スループットを測定した。これは、浸漬ノズル上部に取り付けているスライドバルブを全開にし、水を循環させるポンプ近傍にある流量調整バルブを調整することで、モールド内の水面を所定の高さ(吐出孔上端から上に250mmの位置)に安定させ、この時の流量をフロート式流量計にて測定したものである。
測定結果は、比較例1の浸漬ノズル(ストレートノズル)(10b)では、最大スループット:1200L/minまで流れ、比較例2の浸漬ノズル(10c)では、1130L/min流れたのに対し、比較例3の浸漬ノズル(10d)では、1070L/minしか流れなかった。
一方、実施例1の浸漬ノズル(10a)では、1180L/minと、突起部(11a)を配設した影響が認められるが、実機操業上影響が無い程度にとどめることができた。これは、実施例1では、突起部上端の角度“α”が45°であって、突起部自体の抵抗が少なく、突起の直上に流れが少ない領域が発生せず、突起部直下で乱流が発生しても、スループットが確保できたのに対し、比較例2では、突起部上端の角度“α”が85°と抵抗が大きく、更に、比較例3は、突起部上端の角度“α”が大きいことに加え、突起部下端の角度“β”も85°と大きいため、水がスムーズに流れない状態になってしまったと考えられる。この比較例2,3のように、突起部直上で流体がスムーズに流れないと、流れが少ない領域(14c),(14d)ができ、実機では、ここがアルミナ付着の起点になっていることが経験的に判明している。
更に、実施例1と比較例2の実機形状ノズルを試作して、実機テストを行った。テスト条件は、鋼種:低炭素鋼,モールドサイズ:230×1500mm,スループット4T/minで、上ノズルからアルゴンガスを7L/minで吹き込んだ。
結果は、比較例2では、モールド(24)左右の狭面の冷却水温度差が5.8℃であったのに対し、実施例1では、0.5℃であり、モールド(24)内の偏流防止効果が認められた。また、スライドプレート(23)の開度も、比較例2では、82%であったのに対し、実施例1のノズルでは77%であって、突起が抵抗になっていないことを示した。さらに、使用後のノズルを回収して切断してみたところ、比較例2では、突起間にアルミナが最大12mmも付着して内管を狭窄していたのに対し、実施例1では、アルミナ付着量が最大でも1.5mmとほとんど無く良好であった。
<実施例2,比較例4(図2参照)>
実施例2および比較例4を、図2の(A)〜(D)を参照して説明する。なお、図2の(A)は、実施例2の浸漬ノズルを、図2の(B)は、比較例4の浸漬ノズルを、それぞれ示した図であって、それらは、いずれも溶鋼流通方向に平行な方向に縦割りにした図である。また、図2の(C)は、同(A)の浸漬ノズル(実施例2)の、図2の(D)は、同(B)の浸漬ノズル(比較例4)の、吐出流を説明するための概略図である。
実施例2は、図2の(A)に示すように、内径φ70mmの透明なアクリル製浸漬ノズル(20a)に、高さ12mm,突起部上端の角度:30°,突起部下端の角度:65°の突起部(21a)を、溶鋼流通方向に対して垂直な一面上に4ヶずつ3段、合計12ヶ配設した例である。一方、比較例4は、図2の(B)に示すように、実施例2と同じ縦断面形状を有する突起部ではあるが、溶鋼流通方向に対して垂直な一面上では連続した環状の突起部(21b)であり、これを3段配設した浸漬ノズル(20b)である。
実施例2および比較例4の各浸漬ノズルに対して「水モデル実験」を行った。水モデル実験の条件としては、図2の(C),(D)に示すように、スライドプレート(23)は3枚式で、中プレートをモールド(24)の長辺と平行に摺動させて流量を制御し、スループット4steelT/min相当で行った。また、モールド(24)内の水(26)の流れが観察しやすいように、スライドプレート(23)の直上に設置した上ノズル(22)から、空気を5L/minで吹き込んだ。
実施例2の結果を図2の(C)に、比較例4の結果を図2の(D)に示す。これは、吐出孔から吐出されたモールド(24)内での水の流れ、すなわち、吐出流(25a),(25b)を簡易的に図示したものである。
突起部が独立突起である実施例2の浸漬ノズル(20a)では、モールド(24)内の水の流れ[吐出流(25a)]がほぼ左右均等で安定していたのに対し、突起部が環状突起である比較例4の浸漬ノズル(20b)では、右側の吐出流(25b)が左側より深く潜りこんでおり、偏流を解決できていないことが判ることから、溶鋼流通方向に対して垂直な一面上において連続した環状突起より、独立した突起の方が整流効果に関して好ましいことがわかる。
<実施例3〜7,比較例5〜9(図3参照)>
図3に、実施例3〜7,比較例5〜9の浸漬ノズルに配設した「突起部の断面形状(溶鋼流通方向に対して平行に切断した断面形状)」を示した。このうち、実施例5の突起部は、その上端部高さ(ノズル内管中心方向への高さ“h”)を1.5mmとした例である。なお、実施例3〜7,比較例5〜9の浸漬ノズルは、いずれも内径φ80mmの透明なアクリル製浸漬ノズルであり、また、最大高さ9mmの突起部を配設した例である。
実施例3〜7,比較例5〜9の浸漬ノズルに対して、「水モデル実験」を行った。その結果を図3に表示した。図3から明らかなように、本発明で特定する「突起部上端の角度α=60°以下で、かつ、突起部下端の角度“β”が突起部上端の角度“α”よりも大きく、90°以下」の範囲内の実施例3,4,6,7の浸漬ノズルでは、いずれも、突起部直上に流れの遅い領域は認められず、突起部直下には乱流が発生しているのが認められ、かつ、良好な整流効果が得られていた。また、実施例5のように、突起部上端部の高さ(ノズル内管中心方向への高さ“h”)を“1.5mm”としても、この高さが2mm未満であって、かつ「突起部上端の角度“α”」が本発明で特定する範囲内とすることで、突起部直上に流れの遅い領域は認められず、かつ良好な整流効果が得られることが判った。
これに対して、本発明で特定する「突起部上端の角度“α”と下端の角度“β”」の少なくとも片方が範囲外の比較例5〜9の浸漬ノズルは、突起部直上に流れの遅い領域が認められるものや、突起部直下に乱流が発生していないものであり、良好な整流効果が得られなかったものや、良好な整流効果は得られたものの、スループットが確保できないものであった。
以上詳記したとおり、本発明に係る鋳造用ノズルは、鋳造用ノズルの溶鋼流通孔部に突起部を配設する場合、該突起部間にアルミナが付着・堆積して突起部の整流効果を減ずることを防止するため、高さ:3〜20mmの、溶鋼流通方向に対する垂直な方向において環状に連続していない突起部を配設する浸漬ノズルであって、溶鋼流通方向に対して平行な方向、すなわち、縦断面における“ノズル内管と突起部の上端部の成す角度”が60°以下で、かつ、“ノズル内管と突起部の下端部の成す角度”が“ノズル内管と突起部の上端部の成す角度”よりも大きく、90°以下であることを特徴とする。これにより、突起部の配設による整流効果を維持しながら、突起部の抵抗を軽減することで所定のスループットを確保できるので、操業の安定化や鋼の鋳片品質の向上に寄与するものである。
実施例1及び比較例1〜3の浸漬ノズルを説明する図である。そのうち、(A)は、実施例1の浸漬ノズルを、(B),(C),(D)は、比較例1,2,3の浸漬ノズルを示す図であって、溶鋼流通方向に平行な方向に縦割りにした断面図である。また、(E)は、(A)の浸漬ノズル(実施例1)の、(F)は、(C)の浸漬ノズル(比較例2)の、(G)は、(D)の浸漬ノズル(比較例2)の、溶鋼流通方向に対して平行な方向の突起部の断面を示す図であって、実施例1、比較例2及び3の浸漬ノズルの「水モデル実験」の結果を説明する図である。 実施例2及び比較例4の浸漬ノズルを説明する図である。そのうち、(A)は、実施例2の浸漬ノズルを、(B)は、比較例4の浸漬ノズルを示す図であって、溶鋼流通方向に平行な方向に縦割りにした図である。また、(C)は、(A)の浸漬ノズル(実施例2)の、(D)は、(B)の浸漬ノズル(比較例4)の、吐出流を説明するための概略図である。 実施例3〜7及び比較例5〜9の浸漬ノズルに配設した「突起部の断面形状(溶鋼流通方向に対して平行に切断した断面形状)」を示し、さらに、「突起直上の流れの遅い流域」、「突起直下の乱流」、「整流効果」および「スループットの確保」を表す図である。
符号の説明
(10a),(10b),(10c),(10d),(20a),(20b) ・・・・・・ 浸漬ノズル
(11a), − (11c),(11d),(21a),(21b) ・・・・・・ 突起部
(12a), − (12c),(12d) ・・・・・・ 水の流れ
(22) ・・・・・・ 上ノズル
(23) ・・・・・・ スライドプレート
(24) ・・・・・・ モールド
(25a),(25b) ・・・・・・ 吐出流
(26) ・・・・・・ 水
α ・・・・・・ 突起部上端の角度
β ・・・・・・ 突起部下端の角度
H ・・・・・・ 突起部の高さ
h ・・・・・・ 突起部上端の高さ(ノズル内管中心方向への高さ)

Claims (3)

  1. 鋼の鋳造用ノズルの溶鋼流通孔部に、高さが3〜20mmの、溶鋼流通方向に対する垂直な方向において環状に連続していない突起部を配設した鋳造用ノズルであって、該突起部は、溶鋼流通方向に対して平行な方向における“ノズル内管と突起部の上端部の成す角度”が60°以下で、かつ、“ノズル内管と突起部の下端部の成す角度”が“ノズル内管と突起部の上端部の成す角度”よりも大きく、90°以下であることを特徴とする鋼の連続鋳造用ノズル。
  2. 前記突起部が溶鋼流通孔部に4ヶ以上配設されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼の連続鋳造用ノズル。
  3. 前記突起部は、鋳造用ノズル本体と一体成形されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の連続鋳造用ノズル。
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