JP4076516B2 - 鋼の連続鋳造用浸漬ノズル - Google Patents
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Description
この付着厚みが増加すると、吐出孔から吐出する溶鋼流の向きや勢いが変化し、モールド内における溶鋼流動が理想的な状態を保てなくなる。そのため、鋳片品質の悪化や、場合によっては、ブレイクアウト等のトラブルを引き起こすことにつながる。また、更に付着が進行すると、浸漬ノズルの溶鋼流通孔部が狭窄し、所定の溶鋼通過量を確保できなくなり、生産性が低下する。
例えば、「吐出孔から下部の溶湯流通路断面積を真上部の通路断面積より小さくすると共に、吐出孔に対し直角だけずれた位置の通路内径を吐出孔の水平寸法に等しくしたノズル」(特許文献1:特公平7−67602号公報参照)といった、吐出孔から下部の溶鋼流通孔を縮小する提案がある。
更に、「吐出孔より上の内孔内に長円状の2つの内孔変形部を有し、下部の変形部は長円の長手方向の向きが吐出孔方向とほぼ平行に、上部の変形部は長円の長手方向の向きが吐出孔方向とほぼ直角に配置されたノズル」(特許文献4:特開2002−254162号公報参照)といった、楕円状の段差を形成させた提案もされている。
図6の(A),(B)に図示する浸漬ノズル(1)では、溶鋼流通孔部がストレートで何の突起も配設していない状態を示しているが、この図に示すように、溶鋼流通孔部を流下してきた溶鋼流(2)は、ノズル下部まではほぼ垂直に流下し、続いて、吐出孔(4)が開放されているため、この吐出孔(4)の方向に分かれて向きを変え、吐出流(3)として吐出する。このような状態で溶鋼流(2)が流下・吐出するため、吐出流(3)の分岐点である反吐出孔部内孔側壁面では、流れが“淀む領域”となり、ここにアルミナが付着する(図6(A),(B)の「反吐出孔へのアルミナ付着(5)」参照)。
さらに、上記突起は、その一部が“溶鋼流通方向に対して垂直な方向において環状に連続した部分を有するもの”も包含するが、このうち「溶鋼流通方向に対して垂直な方向において環状に連続せず、独立して配設すること(請求項4)」が好ましい。また、上記したように、完全に独立した突起の場合、および、その一部が環状に連続した部分を有する突起の場合も含めて、該突起として、「ノズルの中心軸側からみた該突起の上部形状と下部形状が異なる突起を配設すること(請求項5)」が好ましい。
本発明に係る浸漬ノズルは、前記したとおり、「浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の少なくともメニスカスから吐出孔上端までの間に、高さが2〜15mmの突起を配設した鋼の連続鋳造用浸漬ノズルであって、溶鋼流通方向に対して垂直な方向における前記突起部の少なくとも一部が、ノズルの中心軸と正対しない“側面”を有する独立した突起であり、この突起の独立部は、ノズルの中心軸を通る平面に対してほぼ面対称に配設する」ことを特徴とする。
ここで、メニスカスとは、モールド内の溶鋼の表面位置を指し、そして、メニスカスより上方は“溶鋼が自然落下する非充満域”であり、メニスカスより下方は“溶鋼が溶鋼流通孔部に満たされた充満域”となる。
円筒状の環状突起では、吐出孔側にも反吐出孔側にも同じように流れが導かれるため、“反吐出孔に優先的に溶鋼流を導く”という本発明で意図する効果が生じ難い。
メニスカス(10)より上方の非充満域では、このような突起の側面に引き寄せられるような流れは示さないが、メニスカス(10)より下方の“溶鋼が充満した領域”では、突起の独立部の側面(7)に引き寄せられる流れ方を示す。よって、反吐出孔(9)に流れを導くための突起は、メニスカス(10)より下方の充満領域に配設することが必要である。なお、図1(A)の逆五角形の突起(6)について、溶鋼流通方向に対して垂直な方向におけるc−c断面を図1(B)に示すが、この突起(6)は、円周方向には連続しておらず、独立した突起形状を呈している。
この例では、図3の(B)に示すように、逆三角形の突起(6)の上流側が一部溶鋼流通方向に対して垂直な方向に連続している。しかし、図3の(C)では、この突起(6)は、連続しておらず独立した突起である。このように、突起部の一部が連続していても、適正な独立部が形成されていれば、反吐出孔側へ溶鋼流(2)が導かれ(図3(A)の「突起の独立部により反吐出孔部へ導かれた溶鋼流(8)」参照)、所望の効果を発揮するものである。
また、突起の形状は、流線形のような曲面に囲まれた形状でもよい。
突起部分を除くノズル本体部の形状は、溶鋼流通方向に対して垂直な断面で円形であるのが一般的であるが、モールドの形状によっては、断面が長円形や矩形のタイプも使用されており、本発明で特定する突起は、いずれのタイプにも適用可能である。
本発明に関連する、少なくとも溶鋼流通孔部のメニスカスから吐出孔上端までの間に突起部を形成する技術としては、前掲の特許文献1(特公平7−67602号公報)には、「吐出孔から下部の溶湯流通路断面積を真上部の通路断面積より小さくすると共に、吐出孔に対し直角だけずれた位置の通路内径を吐出孔の水平寸法に等しくしたノズル」が開示されている。これは、吐出孔から下部の溶鋼流通孔を縮小する提案であり、反吐出孔部のアルミナ付着に関しては、ある程度の効果が発揮されるものの、溶鋼通過量に重要な影響を及ぼす吐出孔内孔側を縮小するため、所望の溶鋼通過量を確保することができない。
本発明のうち、反吐出孔側に本発明で特定する突起を配設する場合の“該突起の下端の位置”は、基本的には、吐出孔上端位置より上方になるよう配設するものである。但し、溶鋼通過量に余裕がある場合や、溶鋼流通孔部全体のテーパーが殆どないか小さい場合には、吐出孔形状との関係で、吐出孔上端位置より幾分下方にまで突起下端位置を延長しても差し支えない。
実施例1として、図1(A),(B)に示す形状の透明なアクリル製浸漬ノズル(逆五角形の突起(6)を配設した浸漬ノズル)を用い、上ノズルから空気を5L/minで吹き込んで水モデル実験を行った。
この突起(6)付近の様子を観察した結果、図1(A)に示すように、符号(8)のような“突起に引き寄せられる流れ”が発生し、反吐出孔(9)部に流れが導かれている様子が確認された。
比較試験は、鋼種:極低炭素鋼、溶鋼通過量:6t/min、モールドサイズ:250×1600mm、連々数:5chでストランド比較を行った。結果は、比較例1は、図6(A),(B)中の符号(5)に示すように、反吐出孔部にアルミナが付着した(最大付着厚み:23mm)。これに対して、実施例1では、全く付着がなかった。さらに、比較例1では、パウダースラグを吸い込んで、吐出孔(4)が上方に逆U字型に溶損・拡大していたのに対し、実施例1では、全く溶損していなかった。
実施例2として、図2(A),(B)に示す形状の透明なアクリル製浸漬ノズル(略三角形の突起(6)を配設した浸漬ノズル)を用い、実施例1と同様の水モデル実験を行った。結果は、図2(A)中の符号(8)で示すように、突起の独立部の側面(7)を伝って、反吐出孔(9)へ流れが導かれている様子が確認された。
比較試験は、鋼種:低炭素鋼、溶鋼通過量:4t/min、モールドサイズ:230×1400mm、連々数:3chでストランド比較試験を行った。結果は、比較例1では、前記比較試験結果とほぼ同様のアルミナ付着(最大付着厚み:19mm)があったのに対し、実施例2では、最大付着厚みが1.5mmと、アルミナ付着が殆ど認められなかった。
実験は、スライドプレートを全開にした時に流れる水の量を測定した。結果は、比較例1では、1140L/minであったのに対し、実施例1では1135L/min,実施例2では1130L/minと、ほぼ同等であり、実機使用時にも問題ない範囲であり、本発明で特定する突起を配設したことが抵抗となっていないことを示した。
(2)・・・・溶鋼流
(3)・・・・吐出流
(4)・・・・吐出孔
(5)・・・・反吐出孔へのアルミナ付着
(6)・・・・突起
(7)・・・・突起の独立部の側面
(8)・・・・突起の独立部により反吐出孔部へ導かれた溶鋼流
(9)・・・・反吐出孔
(10)・・・・メニスカス
Claims (5)
- 浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の少なくともメニスカスから吐出孔上端までの間に、高さが2〜15mmの突起を配設した鋼の連続鋳造用浸漬ノズルであって、溶鋼流通方向に対して垂直な方向における前記突起部の少なくとも一部が、ノズルの中心軸と正対しない“側面”を有する独立した突起であり、この突起の独立部は、ノズルの中心軸を通る平面に対してほぼ面対称に配設することを特徴とする鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
- 前記突起の、溶鋼流通方向に対して垂直な方向において環状に連続していない部分である独立部の少なくとも一部を、吐出孔の中心から溶鋼流通方向に対して垂直な方向に45〜135°ずれた位置に配設することを特徴とする請求項1に記載の鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
- 前記突起の独立部は、少なくとも吐出孔の上方に配設することを特徴とする請求項1に記載の鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
- 前記突起は、溶鋼流通方向に対して垂直な方向において、環状に連続せず独立して配設されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
- 前記突起は、ノズルの中心軸側からみた該突起の上部形状と下部形状が異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
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