JP2005296971A - 鋼の連続鋳造用浸漬ノズル - Google Patents

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Abstract

【課題】 溶鋼通過量の低下や吐出流速分布の不均一化,吐出流速の増速といった問題を招くことなく、アルミナ付着を防止することができる鋼の連続鋳造用浸漬ノズルを提供すること。
【解決手段】 浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の少なくともメニスカスから吐出孔上端までの間に、高さが2〜15mmの突起を配設した鋼の連続鋳造用浸漬ノズルであって、溶鋼流通方向に対して垂直な方向における上記突起部の少なくとも一部が独立した突起であり、この突起を、ノズルの中心軸を通る平面に対してほぼ面対称に配設した上記浸漬ノズル。
【選択図】 なし

Description

本発明は、鋼の連続鋳造用浸漬ノズルに関し、特に、反吐出孔部へのアルミナ付着を防止し、溶鋼の偏流を防止することを特徴とする鋼の連続鋳造用浸漬ノズルに関する。
鋼の連続鋳造用浸漬ノズルは、タンディッシュ・モールド間をシールし、溶鋼の再酸化を防止すると共に、該浸漬ノズルの吐出孔からの溶鋼流を制御し、かつモールド内に均一に溶鋼を供給し、操業の安定化および鋳片品質の向上を図ることにある。
浸漬ノズルを介して溶鋼をモールド内に供給する操業条件では、一般に、アルミキルド鋼が鋳造される。アルミキルドとは、精錬時に溶鋼中の酸素をアルミと酸化反応させて除去することであるが、この場合、溶鋼中に酸化アルミニウム(以下、“アルミナ”という)が懸濁する。このアルミナは、大部分が浮上・除去されるものであるが、その一部は、溶鋼中に懸濁したままである。そのため、浸漬ノズルの溶鋼流通孔部を流下する溶鋼中にもアルミナが存在し、このアルミナが浸漬ノズルの溶鋼流通孔部内の“流れの淀む部位”に付着する。
この付着厚みが増加すると、吐出孔から吐出する溶鋼流の向きや勢いが変化し、モールド内における溶鋼流動が理想的な状態を保てなくなる。そのため、鋳片品質の悪化や、場合によっては、ブレイクアウト等のトラブルを引き起こすことにつながる。また、更に付着が進行すると、浸漬ノズルの溶鋼流通孔部が狭窄し、所定の溶鋼通過量を確保できなくなり、生産性が低下する。
このアルミナ付着を防止する技術として、ノズルからのガス吹きや難アルミナ付着材の適用の他に、溶鋼流通孔部の形状を改善する方法がある。
例えば、「吐出孔から下部の溶湯流通路断面積を真上部の通路断面積より小さくすると共に、吐出孔に対し直角だけずれた位置の通路内径を吐出孔の水平寸法に等しくしたノズル」(特許文献1:特公平7−67602号公報参照)といった、吐出孔から下部の溶鋼流通孔を縮小する提案がある。
また、「吐出孔近傍を凸状曲面に形成し、この上流側の内径を該凸状曲面部の最小流路径より大きく拡張したノズル」(特許文献2:特開平4−220148号公報参照)や、「溶鋼流通孔に複数の段差部を設けた浸漬ノズル」(特許文献3:実公平7−23091号公報参照)といった、溶鋼流通孔部に環状突起を形成させた提案もある。
更に、「吐出孔より上の内孔内に長円状の2つの内孔変形部を有し、下部の変形部は長円の長手方向の向きが吐出孔方向とほぼ平行に、上部の変形部は長円の長手方向の向きが吐出孔方向とほぼ直角に配置されたノズル」(特許文献4:特開2002−254162号公報参照)といった、楕円状の段差を形成させた提案もされている。
特公平7−67602号公報(請求項1参照) 特開平4−220148号公報(請求項1参照) 実公平7−23091号公報(請求項1参照) 特開2002−254162号公報(請求項1参照)
上記従来技術では、段差等の形成により溶鋼流通孔部に乱流を発生させることで、いくらかはアルミナ付着を抑制することができるが、まだまだ不充分である。また、形状によっては、吐出孔部における吐出流速分布を不均一にしたり、吐出流速を増速させてしまい、モールド内での溶鋼流動を理想的な状態に保つことができなくなる。さらに、段差等の形成により溶鋼流の流通を妨げ、所定の溶鋼通過量を確保できなくなる場合もある。
本発明者等は、各種調査の結果、例えば、吐出孔が2孔ある浸漬ノズルの場合、吐出孔と吐出孔間の柱の部位(以下、“反吐出孔”という)との内孔側が最も溶鋼が淀む部位であり、“この反吐出孔内孔側からアルミナ付着が開始・進行する”ことを見いだした。
このアルミナ付着開始時の概要を、図6に基づいて、以下に説明する。なお、図6は、溶鋼流通孔部がストレート状の浸漬ノズルを示す図であって、(A)は、同浸漬ノズルを吐出孔の方向で垂直に半割りにした概略図であり、(B)は、同浸漬ノズルを吐出孔側から見た概略図である。
図6の(A),(B)に図示する浸漬ノズル(1)では、溶鋼流通孔部がストレートで何の突起も配設していない状態を示しているが、この図に示すように、溶鋼流通孔部を流下してきた溶鋼流(2)は、ノズル下部まではほぼ垂直に流下し、続いて、吐出孔(4)が開放されているため、この吐出孔(4)の方向に分かれて向きを変え、吐出流(3)として吐出する。このような状態で溶鋼流(2)が流下・吐出するため、吐出流(3)の分岐点である反吐出孔部内孔側壁面では、流れが“淀む領域”となり、ここにアルミナが付着する(図6(A),(B)の「反吐出孔へのアルミナ付着(5)」参照)。
反吐出孔内孔側へのアルミナ付着(5)を防止することができれば、溶鋼流通孔部全体への付着の進行も防止できる。この反吐出孔内孔側へのアルミナ付着(5)を防止するためには、反吐出孔内孔側で発生する溶鋼流の淀み部を解消できれば良い。言い換えれば、反吐出孔内孔側へ溶鋼流を強制的に導くことができれば良いわけである。本発明者等は、この点に着目して本発明を完成したものである。
即ち、本発明は、前記従来技術の欠点,問題点に鑑み成されたものであって、その目的とするところは、“反吐出孔内孔側に溶鋼流を強制的に供給して淀み部を解消する”ことで、反吐出孔内孔側へのアルミナ付着を防止することである。そして、これにより、溶鋼流通孔部全体のアルミナ付着を防止することができる鋼の連続鋳造用浸漬ノズルを提供することである。さらに、溶鋼通過量の低下や吐出流速分布の不均一化,吐出流速の増速といった問題を招くことなく、アルミナ付着を防止することができる鋼の連続鋳造用浸漬ノズルを提供することである。
上記目的を達成する手段として、すなわち、“溶鋼通過量の低下や吐出流速分布の不均一化,吐出流速の増速といった問題を招くことなく、ノズル内孔部のアルミナの付着を防止する”ための技術的構成として、本発明に係る鋼の連続鋳造用浸漬ノズルは、「浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の少なくともメニスカスから吐出孔上端までの間に、高さが2〜15mmの突起を配設した鋼の連続鋳造用浸漬ノズルであって、溶鋼流通方向に対して垂直な方向における前記突起部の少なくとも一部が独立した突起であり、この突起の独立部は、ノズルの中心軸を通る平面に対してほぼ面対称に配設する」ことを特徴とする(請求項1)。
そして、上記突起の独立部は、「吐出孔の上方から45〜135°ずれた位置に少なくとも配設すること(請求項2)」が好ましく、また、「少なくとも吐出孔の上方に配設すること(請求項3)」が好ましい。
さらに、上記突起は、その一部が“溶鋼流通方向に対して垂直な方向において環状に連続した部分を有するもの”も包含するが、このうち「溶鋼流通方向に対して垂直な方向において環状に連続せず、独立して配設すること(請求項4)」が好ましい。また、上記したように、完全に独立した突起の場合、および、その一部が環状に連続した部分を有する突起の場合も含めて、該突起として、「上部形状と下部形状が異なる突起を配設すること(請求項5)」が好ましい。
このように従来の単なる円筒状変形部ではなく、より複雑な必要最小限の形状の突起部をメニスカスから吐出孔上端までの間に形成することで、反吐出孔内孔側に溶鋼流を強制的に供給し、反吐出孔内孔側へのアルミナ付着を防止することができる。その結果、実機操業において、ノズル内孔部のアルミナ付着を抑制するため、安定操業や鋳片品質の向上に寄与することができる。
以下、本発明に係る鋼の連続鋳造用浸漬ノズル(以下、単に“本発明に係る浸漬ノズル”という)の実施の形態について詳細に説明する。
本発明に係る浸漬ノズルは、前記したとおり、「浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の少なくともメニスカスから吐出孔上端までの間に、高さが2〜15mmの突起を配設した鋼の連続鋳造用浸漬ノズルであって、溶鋼流通方向に対して垂直な方向における前記突起部の少なくとも一部が独立した突起であり、この突起の独立部は、ノズルの中心軸を通る平面に対してほぼ面対称に配設する」ことを特徴とする。
ここで、メニスカスとは、モールド内の溶鋼の表面位置を指し、そして、メニスカスより上方は“溶鋼が自然落下する非充満域”であり、メニスカスより下方は“溶鋼が溶鋼流通孔部に満たされた充満域”となる。
ノズルの溶鋼流通孔部に配設する突起部の高さは、2mm未満では、反吐出孔内孔側に溶鋼流を強制的に導く効果に乏しく、一方、溶鋼通過量を確保するためには、突起の高さは、15mm以下であることが好ましい。
本発明において、突起の形状については、前記したように、反吐出孔側へ流れを強制的に導くために、「溶鋼流通方向に対して垂直な方向における突起部の少なくとも一部が独立した突起(以下、“突起の独立部”というが、単に“突起”と略記することもある)」とすることを特徴とする。
円筒状の環状突起では、吐出孔側にも反吐出孔側にも同じように流れが導かれるため、“反吐出孔に優先的に溶鋼流を導く”という本発明で意図する効果が生じ難い。
例えば、図1(A)に示すように、反吐出孔(9)の上に逆五角形の突起(6)を配設すると、ここは溶鋼流(2)が充満した領域であるので、溶鋼は、この突起の独立部の側面(7)に沿って引き寄せられるように流れ、反吐出孔(9)に流れが導かれる(図1(A)の「突起の独立部により反吐出孔部へ導かれた溶鋼流(8)」参照)。
メニスカス(10)より上方の非充満域では、このような突起の側面に引き寄せられるような流れは示さないが、メニスカス(10)より下方の“溶鋼が充満した領域”では、突起の独立部の側面(7)に引き寄せられる流れ方を示す。よって、反吐出孔(9)に流れを導くための突起は、メニスカス(10)より下方の充満領域に配設することが必要である。なお、図1(A)の逆五角形の突起(6)について、溶鋼流通方向に対して垂直な方向におけるc−c断面を図1(B)に示すが、この突起(6)は、円周方向には連続しておらず、独立した突起形状を呈している。
また、図2の(A)に、吐出孔(4)の上方に略三角形の突起(6)を配設した例を示す。そして、同(B)に、(A)のe−e面の断面図を示すが、この図2の(B)から明らかなように、この突起(6)も、円周方向には連続しておらず、独立した突起形状を呈している。この場合、該突起(6)(略三角形突起)の上流側頂点に衝突した溶鋼流(2)は、突起の独立部の側面(7)を伝って、反吐出孔(9)側に流れが導かれる(図2(A)の「突起の独立部により反吐出孔部へ導かれた溶鋼流(8)」参照)。
本発明で配設する突起の他の実施形態として、その突起の一部が溶鋼流通方向に対して垂直な方向に連続していても構わない場合がある。このように突起の一部が連続していてもアルミナ付着防止に効果が認められる形状例を図3に示す。なお、図3の(A)は、本発明の実施の形態である浸漬ノズルを示す図であって、(A)は、溶鋼流通方向に対して平行な切断面の概略図であり、(B)は、(A)のg1−g1面の断面図であり、(C)は、(A)のg2−g2面の断面図である。
この例では、図3の(B)に示すように、逆三角形の突起(6)の上流側が一部溶鋼流通方向に対して垂直な方向に連続している。しかし、図3の(C)では、この突起(6)は、連続しておらず独立した突起である。このように、突起部の一部が連続していても、適正な独立部が形成されていれば、反吐出孔側へ溶鋼流(2)が導かれ(図3(A)の「突起の独立部により反吐出孔部へ導かれた溶鋼流(8)」参照)、所望の効果を発揮するものである。
本発明における突起(突起の独立部)は、浸漬ノズルの中心軸を通る平面に対してほぼ面対称に配設されることを特徴とする。例えば、前掲の図1の(A)に示すように、反吐出孔(9)の上方に突起(6)を配設した場合には、他方の反吐出孔上方の同じ部位に同形状の突起を配設することを意味する。突起の位置が面対称でない場合は、2つの吐出孔から均等に吐出しない、あるいは、吐出流に偏流が生じるといった問題が生じる。
吐出孔開孔部の上部分において吸い込み流が発生し、パウダースラグの吸い込みにより吐出孔が溶損しやすく、吐出孔の上方に突起を配設できない場合、本発明で配設する突起(突起の独立部)は、少なくとも吐出孔の中心上方から45〜135°ずれた位置に配設することを特徴とする。2孔ノズルの場合は、例えば、図1の(A)に示すように、吐出孔(4)の中心上方から90°ずれた位置に突起(6)を配設するのが好ましいが、図4に示すように、吐出孔(4)の中心上方から45°ずれた位置に、4ヶの突起(6)を配設することも可能である。
また、吐出孔開孔部の上部分において、吸い込み流が発生せず溶損がない場合、本発明で配設する突起は、少なくとも吐出孔の上方に配設することが好ましい。例えば、図2の(A)に示すように、吐出孔(4)の上方に、反吐出孔(9)へ流れを誘導するような形状の突起(6)を配設すると効果的である。
本発明で配設する突起は、該突起の上部形状と下部形状が異なる方が好ましい。図5に示すように、突起(6)の上部形状と下部形状が同じでも、該突起(6)を配設していない部分の間隔が適正である場合には、反吐出孔へのアルミナ付着は防止できるが、突起の上部形状と下部形状は異なる方が、流れを反吐出孔へ導く効果が発現し易くなり、好ましいものである。
また、突起の形状は、流線形のような曲面に囲まれた形状でもよい。
本発明で配設する突起は、2孔ノズルの場合、溶鋼流通孔部のメニスカスから吐出孔上端までの間に1対(2ヶ)配設されていれば良いが、溶鋼通過量に余裕があれば、2対(4ヶ)以上配設しても良い。また、4孔ノズルの場合は、4ヶ配設されていることが望ましい。さらに、溶鋼通過量に余裕があれば、1段(1対)だけでなく、2段以上(2対以上)配設することも可能である。
本発明において、溶鋼流通孔部に本発明で特定する突起のみを配設してもよいが、これ以外に、該突起の上方に、例えば、従来の段差や独立突起など、その他の形状の突起を配設してもよい。そのほうが、反吐出孔部内孔側へのアルミナ付着を防止するだけでなく、溶鋼流通孔部の整流化に寄与し、モールド内での溶鋼流動の適正化が図れるため、好ましい。
本発明において、本発明で特定する突起は、鋳造用ノズルの本体と一体成形されることが好ましい。一体成形でない嵌め込み式などの場合は、この突起部とノズル本体との隙間に溶鋼や鋼中介在物が入り込み、突起部の脱落につながることが懸念されるため、好ましくない。
本発明において、突起部の材質は、特に限定されない。通常使用されるアルミナ−カーボン材質やスピネル−カーボン材質,ジルコニア−カーボン材質等の黒鉛含有材質や、黒鉛を含まないノンカーボン材質等、いずれの材質も適用可能である。
また、本発明で特定する突起を配設した“本発明に係る浸漬ノズル”を使用する場合、通常の“Ar等のガスの吹込み”も勿論行うことができる。上ノズルやプレートから、また、浸漬ノズルからのガス吹き等、いずれの方法にも適用することができる。
更に、本発明において、本発明で特定する突起を浸漬ノズルに配設する場合、吐出孔は、単孔ではなく2孔以上あることが好ましい。通常、スラブ用浸漬ノズルには、“2孔”ないし側面2孔と底孔からなる“3孔”が一般的であり、更に、ブルーム用等の小断面モールド用には“4孔”や、側面4孔と底孔からなる“5孔”のものも存在するが、いずれのノズルにも適用することができる。
突起部分を除くノズル本体部の形状は、溶鋼流通方向に対して垂直な断面で円形であるのが一般的であるが、モールドの形状によっては、断面が長円形や矩形のタイプも使用されており、本発明で特定する突起は、いずれのタイプにも適用可能である。
ここで、前記“背景技術”の項で挙げた先行技術と本発明とを対比することで、本発明を更に詳細に説明する。
本発明に関連する、少なくとも溶鋼流通孔部のメニスカスから吐出孔上端までの間に突起部を形成する技術としては、前掲の特許文献1(特公平7−67602号公報)には、「吐出孔から下部の溶湯流通路断面積を真上部の通路断面積より小さくすると共に、吐出孔に対し直角だけずれた位置の通路内径を吐出孔の水平寸法に等しくしたノズル」が開示されている。これは、吐出孔から下部の溶鋼流通孔を縮小する提案であり、反吐出孔部のアルミナ付着に関しては、ある程度の効果が発揮されるものの、溶鋼通過量に重要な影響を及ぼす吐出孔内孔側を縮小するため、所望の溶鋼通過量を確保することができない。
本発明のうち、反吐出孔側に本発明で特定する突起を配設する場合の“該突起の下端の位置”は、基本的には、吐出孔上端位置より上方になるよう配設するものである。但し、溶鋼通過量に余裕がある場合や、溶鋼流通孔部全体のテーパーが殆どないか小さい場合には、吐出孔形状との関係で、吐出孔上端位置より幾分下方にまで突起下端位置を延長しても差し支えない。
また、前掲の特許文献2(特開平4-220148号公報)には、「吐出孔近傍を凸状曲面に形成し、この上流側の内径を該凸状曲面部の最小流路径より大きく拡張したノズル」が、前掲の特許文献3(実公平7-23091号公報)には、「溶鋼流通孔に複数の段差部を設けた浸漬ノズル」が開示されている。これらは、溶鋼流通孔部に環状突起を形成させた提案であり、本発明で特定する突起のように、該突起の側面[前掲の図1(A)や図2(A)の「突起の独立部の側面(7)」参照]を利用して効果的に溶鋼流を反吐出孔側へ導く効果は、期待できない。
さらに、前掲の特許文献4(特開2002-254162号公報)には、「吐出孔より上の内孔内に長円状の2つの内孔変形部を有し、下部の変形部は長円の長手方向の向きが吐出孔方向とほぼ平行に、上部の変形部は長円の長手方向の向きが吐出孔方向とほぼ直角に配置されたノズル」が開示されている。これは、楕円状の段差を形成させた提案であり、基本的には、前記特許文献2(特開平4-220148号公報)や特許文献3(実公平7-23091号公報)と同様、反吐出孔側に溶鋼流を供給する効果に乏しい。
これらは、いずれも“反吐出孔内孔側へ溶鋼流を積極的に導いてアルミナ付着を防止する突起形状”ではないことが本発明とは異なるものである。“反吐出孔内孔側へ溶鋼流を積極的に導く”ためには、少なくともメニスカスから吐出孔上端までの間、つまり、溶鋼が自然落下する非充満域ではなく、メニスカスから下方の充満域において効果を発揮する形状の突起を配設することが必要である。
つまり、従来の技術では、鋳造用ノズルの溶鋼流通孔部の少なくともメニスカスから吐出孔上端までの間に、高さが2〜15mmの突起を配設する場合において、溶鋼流通方向に対して垂直な方向における該突起部の少なくとも一部を独立させ、かつこの突起は、ノズルの中心軸を通る平面に対してほぼ面対称に形成することで、反吐出孔内孔側へ溶鋼流を誘導し、アルミナ付着を防止できるような形状の突起は配設されておらず、ここに本発明の新規性がある。
以下、本発明の実施例を比較例と共に挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例1,2によって限定されるものではない。
<実施例1(図1参照)>
実施例1として、図1(A),(B)に示す形状の透明なアクリル製浸漬ノズル(逆五角形の突起(6)を配設した浸漬ノズル)を用い、上ノズルから空気を5L/minで吹き込んで水モデル実験を行った。
この突起(6)付近の様子を観察した結果、図1(A)に示すように、符号(8)のような“突起に引き寄せられる流れ”が発生し、反吐出孔(9)部に流れが導かれている様子が確認された。
次に、本実施例1と、比較例1として図6(A),(B)に示す“溶鋼流通孔部がストレート状のアクリル製浸漬ノズル”を用いて、実機での比較試験を行った。
比較試験は、鋼種:極低炭素鋼、溶鋼通過量:6t/min、モールドサイズ:250×1600mm、連々数:5chでストランド比較を行った。結果は、比較例1は、図6(A),(B)中の符号(5)に示すように、反吐出孔部にアルミナが付着した(最大付着厚み:23mm)。これに対して、実施例1では、全く付着がなかった。さらに、比較例1では、パウダースラグを吸い込んで、吐出孔(4)が上方に逆U字型に溶損・拡大していたのに対し、実施例1では、全く溶損していなかった。
<実施例2(図2参照)>
実施例2として、図2(A),(B)に示す形状の透明なアクリル製浸漬ノズル(略三角形の突起(6)を配設した浸漬ノズル)を用い、実施例1と同様の水モデル実験を行った。結果は、図2(A)中の符号(8)で示すように、突起の独立部の側面(7)を伝って、反吐出孔(9)へ流れが導かれている様子が確認された。
次に、本実施例2と前記比較例1を用いて、実機での比較試験を行った。
比較試験は、鋼種:低炭素鋼、溶鋼通過量:4t/min、モールドサイズ:230×1400mm、連々数:3chでストランド比較試験を行った。結果は、比較例1では、前記比較試験結果とほぼ同様のアルミナ付着(最大付着厚み:19mm)があったのに対し、実施例2では、最大付着厚みが1.5mmと、アルミナ付着が殆ど認められなかった。
また、実施例1,2と比較例1を用いて、水モデルで追加実験を行った。
実験は、スライドプレートを全開にした時に流れる水の量を測定した。結果は、比較例1では、1140L/minであったのに対し、実施例1では1135L/min,実施例2では1130L/minと、ほぼ同等であり、実機使用時にも問題ない範囲であり、本発明で特定する突起を配設したことが抵抗となっていないことを示した。
さらに、モールド短辺への吐出流の最大衝突速度をプロペラ流速計で測定した。結果は、比較例1では、23.1cm/secであったのに対し、実施例1では22.7cm/sec,実施例2では23.3cm/secと、同等であり、本発明で特定する突起を配設したことによる“吐出流速の増速”が認められないことを示した。
以上詳記したとおり、本発明に係る鋼の連続鋳造用浸漬ノズルによれば、反吐出孔内孔側へのアルミナ付着を防止し、独立した突起の配設による整流効果を鋳造終了まで確実に維持することができ、そのため、操業の安定化や鋼の鋳片品質の向上に寄与するものであり、産業上の利用可能性が極めて顕著である。
本発明の実施形態である「逆五角形の突起を配設した浸漬ノズル」を示す図であって、(A)は、溶鋼流通方向に対して平行な切断面の概略図であり、(B)は、(A)のc−c面の断面図である。 本発明の実施形態である「略三角形の突起を配設した浸漬ノズル」を示す図であって、(A)は、溶鋼流通方向に対して平行な切断面の概略図であり、(B)は、(A)のe−e面の断面図である。 本発明の実施形態である「一部が連続する突起を配設した浸漬ノズル」を示す図であって、(A)は、溶鋼流通方向に対して平行な切断面の概略図であり、(B)は、(A)のg1−g1面の断面図であり、(C)は、(A)のg2−g2面の断面図である。 本発明の実施形態である「吐出孔の中心上方から45°ずれた位置に突起を配設した浸漬ノズル」を示す図であって、溶鋼流通方向に対して平行な切断面の概略図である。 本発明の実施形態である「上部形状と下部形状が同一の突起を配設した浸漬ノズル」を示す図であって、溶鋼流通方向に対して平行な切断面の概略図である。 溶鋼流通孔部がストレート状の浸漬ノズルを示す図であって、(A)は、同浸漬ノズルを吐出孔の方向で垂直に半割りにした概略図であり、(B)は、同浸漬ノズルを吐出孔側から見た概略図である。
符号の説明
(1)・・・・浸漬ノズル
(2)・・・・溶鋼流
(3)・・・・吐出流
(4)・・・・吐出孔
(5)・・・・反吐出孔へのアルミナ付着
(6)・・・・突起
(7)・・・・突起の独立部の側面
(8)・・・・突起の独立部により反吐出孔部へ導かれた溶鋼流
(9)・・・・反吐出孔
(10)・・・・メニスカス

Claims (5)

  1. 浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の少なくともメニスカスから吐出孔上端までの間に、高さが2〜15mmの突起を配設した鋼の連続鋳造用浸漬ノズルであって、溶鋼流通方向に対して垂直な方向における前記突起部の少なくとも一部が独立した突起であり、この突起の独立部は、ノズルの中心軸を通る平面に対してほぼ面対称に配設することを特徴とする鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
  2. 前記突起の独立部は、吐出孔の上方から45〜135°ずれた位置に少なくとも配設することを特徴とする請求項1に記載の鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
  3. 前記突起の独立部は、少なくとも吐出孔の上方に配設することを特徴とする請求項1に記載の鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
  4. 前記突起は、溶鋼流通方向に対して垂直な方向において、環状に連続せず独立して配設されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
  5. 前記突起は、該突起の上部形状と下部形状が異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
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