JP4563275B2 - 切削可能部材および切削可能杭 - Google Patents

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Description

本発明は、地中構造体を構築するために用いられる切削可能部材、およびその切削可能部材を用いた切削可能杭に関する。
従来より、地中においてシールド掘削機が掘削を開始する地点である発進部や掘削を終了する到達地点である到達部としての鉄筋コンクリート製の土留め壁を構築する工法が知られている。この工法では、まず、シールド掘削機の発進部側の土留め壁の背面側の地盤とシールド掘削機の到達部側の土留め壁の地盤とに地盤改良材を注入して地下水等の噴出を防止することが行われる。そして、シールド掘削機の発進の際には発進部となる土留め壁の一部を人力により破壊し、シールド掘削機の到達の際には到達部となる土留め壁の一部も人力により破壊して、シールド掘削機による掘削が行われる。この工法の場合、シールド掘削機の発進または到達の際における土留め壁の掘削が困難なため、人力によって土留め壁の一部を破壊しなければならず、工数や手間の増大を招いてしまうという問題がある。
そこで、炭素繊維補強コンクリート部材と長尺のH型鋼とを連結した土留め壁構造部材を構成してこの土留め壁構造部材を多数並べることで土留め壁を形成し、シールド掘削機による発進部および到達部の掘削の容易化を図る工法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、プラスチック発泡体に無機繊維を混在させた複合体を介してH型鋼を接合するように構成された土留め壁構造部材を用いる工法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開平5−302490号公報 特許第2929536号明細書
しかしながら、特許文献1に記載された工法では、シールド掘削機による切削可能部材としての補強部材を多数並べて配置してその補強部材の端部を所定の連結金具に固定し、さらにその連結金具をH型鋼と連結するものであり、土留め壁の構築に複雑な手順が必要となって工数の増大を招いてしまうことになる。そして、この特許文献1に記載された工法では、高価な炭素繊維を用いた炭素繊維補強コンクリート部材を用いる必要があり経済的な負担増を招くとともに、さらに高い引張強度を有する炭素繊維のためにシールド掘削機による切削も困難になってしまうという問題がある。
また、特許文献2に記載された工法では、プラスチック発泡体に無機繊維を混在させた薄い板状の複合体を用いており、この複合体を複数枚積層して接着することで、シールド掘削機による切削可能部材が、長方形の中実構造の断面形状となるように形成されている。この切削可能部材とH型鋼とを接合するに際しては、切削可能部材の端部に設けた鉄板挿入溝に所定の接着用鉄板を接着固定するとともに、この接着用鉄板の露出部をH型鋼の端部に機械的に固定する必要がある。そして、さらにH型鋼の端部のウェブ部を切削可能部材の端部に設けたウェブ挿入孔に挿入して接着固定するようになっている。このため、切削可能部材とH型鋼との接合構造が相当に複雑な構造になってしまう。また、複雑な接合構造であるため、その接合部における力の伝達メカニズムも複雑で不明確なものとなってしまい、この接合部の強度設計が困難になってしまうという問題もある。さらに、この切削可能部材では、シールド掘削機によって切削したときにはプラスチック発泡体の部分で破断して大きな切削屑が発生するため、切削性が悪化することになってしまう。
本発明は、上記実情に鑑みることにより、地中構造体を構築するために用いられる切削可能部材に関し、土留め壁を構成するための十分な強度を有するとともにシールド掘削機による良好な切削性も確保することができ、さらにH型鋼と簡易な構成で容易に接合することができてH型鋼との接合性に優れて工数の増大を抑制することができる切削可能部材を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段及び効果
本発明に係る切削可能部材は、地中構造体を構築するために用いられる切削可能部材に関する。
そして、本発明に係る切削可能部材は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。すなわち、本発明は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
上記目的を達成するための本発明に係る切削可能部材における第1の特徴は、一方向に配列されている長繊維材である第1の繊維と当該第1の繊維の配列方向とは異なる方向に配向するように配置されている第2の繊維とに樹脂が含浸されて形成されている繊維補強樹脂層で形成され、前記繊維補強樹脂層がシート状に形成されており、当該繊維補強樹脂層が複数層積層されて断面がH型となるように形が調整された状態で硬化することで、H型断面形状形成されていることである。
この構成によると、一方向に配列されている長繊維材に加えてこの長繊維材と異なる配列方向に配向するように配置された第2の繊維も含有されているため、複数の方向から外力が作用する場合であってもそれぞれの方向において高い耐力を発揮することができ、土留め壁を構成するための十分な強度を確保することができる。そして、本発明の構成によると、繊維補強樹脂層で形成されており、さらに、第1の繊維と第2の繊維とが樹脂に分散された状態で強度の偏りが少ない状態になっており、繊維が織物としての状態で含有されているものでもなく、大きな切削屑が発生することがない。このため、良好な切削性を確保することができる。また、H型断面形状となるように形成されているため、一般的な鋼材であるH型鋼と簡易な構成で容易に接合することができる。したがって、本発明の構成によると、土留め壁を構成するための十分な強度を有するとともにシールド掘削機による良好な切削性も確保することができ、さらにH型鋼と簡易な構成で容易に接合することができてH型鋼との接合性に優れて工数の増大を抑制することができる切削可能部材を提供することができる。
また、本発明の構成によると、切削可能部材の全長がH型断面形状に形成されており、ウェブ部およびフランジ部で形成されるくぼみ部分を有していることになる。このため、この切削可能部材を備える切削可能杭を掘削孔内に設置してそれに隣接している部分を掘削しているときに、掘削刃が設置済みの切削可能杭に当たりにくく次の掘削も行い易いことになる。また、H型断面形状に形成されていることで、矩形断面形状のものに比して表面積を多く確保できるため、表面に沿って水が浸入する際における浸入経路を長くとることができ、水の浸入を抑制することができる。そして、上記くぼみ部分にモルタルを充填して硬化させたような場合にそのモルタル層にクラックが発生したときであっても、クラック発生面が切削可能部材の表面に沿って生成することが抑制されるため、水の浸入を抑制することができる。
また、繊維補強樹脂層を積層して硬化させることで形成できるため、寸法設計の自由度が大きく、大型の切削可能部材であっても容易に形成することができる。
本発明に係る切削可能部材における第2の特徴は、前記第2の繊維は、ランダムな配向方向に配置されている短繊維材であることである。
この構成によると、一方向に配列されている長繊維材に加えてランダムな配向方向に配置された短繊維材も含有されているため、種々の方向から外力が作用する場合であってもそれぞれの方向において高い耐力を発揮することができ、土留め壁を構成するための十分な強度を確保することができる。そして、長繊維材に加えてランダム配置の短繊維材が樹脂に分散された状態で強度の偏りが非常に少ない状態になっており、大きな切削屑が発生することがない。このため、良好な切削性を確保することができる。
本発明に係る切削可能部材における第3の特徴は、前記第2の繊維は、前記第1の繊維の配列方向とは異なる方向において一方向に配列された長繊維材であることである。
この構成によると、第1および第2の繊維として複数の方向に配向するように配列された長繊維材が含有されているため、複数の方向から外力が作用する場合であってもそれぞれの方向において高い耐力を発揮することができ、土留め壁を構成するための十分な強度を確保することができる。そして、長繊維材が複数の方向に配向して配列されているため強度の偏りが少ない状態になっており、繊維が織物としての状態で含有されているものでもなく、大きな切削屑が発生することがない。このため、良好な切削性を確保することができる。
本発明に係る切削可能部材における第の特徴は、長手方向の端部において、ウェブ部およびフランジ部のうちの少なくともいずれか一方の平板状部分に対して取り付けられる金属プレートと、前記金属プレートと当該金属プレートが取り付けられる前記平板状部分とを貫通するように設けられている孔と、を更に備えていることである。
この構成によると、金属プレートと平板状部分とに貫通形成された孔にボルト等を挿通して金属プレートを切削可能部材に取り付けることができる。そして、この金属プレートを介して、H型鋼と切削可能部材とを容易に接合することができる。
本発明に係る切削可能部材における第の特徴は、長手方向における両端部以外の部分である中間部において、ウェブ部およびフランジ部で形成されるくぼみ部分に対して少なくとも充填されて固化された中詰め材を更に備えていることである。
この構成によると、くぼみ部分において充填固化された中詰め材を設けることで、高い切削性を確保しつつ曲げ剛性を増すことができ、さらに撓み変形量も小さく抑えることができる。また、両端部には中詰め材を設けていないため、施工現場においてその両端部を容易にH型鋼に接合することができる。
本発明に係る切削可能部材における第の特徴は、前記中詰め材が前記くぼみ部分に対応して凹んだ状態となるように充填されて固化されることで前記中間部が鼓型断面形状に形成されていることである。
この構成によると、中間部が鼓型断面形状に形成されているため、この切削可能部材を備える切削可能杭を掘削孔内に設置してそれに隣接している部分を掘削しているときに、掘削刃が設置済みの切削可能杭に当たりにくく次の掘削も行い易いことになる。
本発明に係る切削可能部材における第の特徴は、前記くぼみ部分と前記中詰め材との間に接着剤層が介在していることである。
この構成によると、くぼみ部分と中詰め材との間に接着剤層が介在しているため、くぼみ部分における中詰め材の接合強度をより高くすることができる。なお、接着剤層を形成するための接着剤としては、例えば、砂入りの樹脂モルタルなどを用いることができる。
本発明に係る切削可能部材における第の特徴は、前記ウェブ部を貫通するとともに、当該ウェブ部の両側に配置されている前記中詰め材を貫通して連結する棒状体を更に備えていることである。
この構成によると、ウェブ部とその両側に配置された中詰め材とを貫通して連結する棒状体を設けることで、中詰め材のウェブ部への接合強度をより高くすることができる。
また、本発明に係る切削可能杭は、前述の目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。すなわち、本発明は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
前述の目的を達成するための本発明に係る切削可能杭における第1の特徴は、前述した切削可能部材と、当該切削可能部材に板状部材およびボルト部材を介して機械的に接合されているH型鋼と、を備えていることである。
この構成によると、切削可能部材とH型鋼とを板状部材およびボルトを介して容易に接合して切削可能杭を構成することができる。また、H型鋼および切削可能部材はいずれもH型断面形状同士での接合であるため、そのH型鋼および切削可能部材の接合部における力の伝達メカニズムが明確であり、接合部の強度設計が容易になる。
本発明に係る切削可能杭における第2の特徴は、前記切削可能部材と前記H型鋼とが前記板状部材および前記ボルト部材を介して支圧接合構造により接合されていることである。
この構成によると、切削可能部材とH型鋼とを板状部材およびボルト部材を介して支圧接合構造により接合することで、摩擦接合構造で接合する場合に比して、接合部の強度設計をより容易に行うことができる。
本発明に係る切削可能杭における第3の特徴は、前記切削可能部材と前記板状部材との間に接着剤層が介在していることである。
この構成によると、切削可能部材の表面に多少の凹凸を形成している不陸があっても、接着剤層にてこの不陸を吸収して板状部材を切削可能部材に対して強固に接合することができる。
本発明に係る切削可能杭における第4の特徴は、前記切削可能部材と前記H型鋼とを接合している接合部に設けられ、当該切削可能部材の端部および当該H型鋼の端部の外周を覆うように設けられた止水部を更に備えていることである。
この構成によると、切削可能部材とH型鋼との接合部に両部材の端部の外周を覆う止水部を設けることで、簡易な構成で効率よく止水を行うことができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。本発明の実施形態に係る切削可能部材は、地中構造体を構築するために広く用いることができるものであり、その切削可能部材を用いて本実施形態に係る切削可能杭が構成される。そして、本実施形態に係る切削可能部材およびこれを用いた切削可能杭は、地中においてシールド掘削機が掘削を開始する地点である発進部や掘削を終了する到達地点である到達部を形成する土留め壁などを構築するために用いることができるものである。
図1は、本実施形態に係る切削可能部材1および切削可能杭10を示す平面図である。図1に示すように、切削可能杭10は、切削可能部材1とH型鋼11とを備えて構成されている。また、図2は図1のII−II線矢視断面図であり、図3は図1のIII−III線矢視断面図であり、図4は図1のIV−IV線矢視位置から見た図である。図1乃至図4に示すように、H型鋼11だけでなく切削可能部材1もH型断面形状に形成されており、切削可能部材1とH型鋼11とは、板状部材である複数の金属プレート21(21a、21b)・22(22a、22b)(以下、単にプレート21・22という)と、複数のボルト部材23・24(以下、単にボルト23・24という)とを介して機械的に接合されている。そして、これらの切削可能部材1とH型鋼11とはプレート21・22およびボルト23・24を介して支圧接合構造により接合されている。
切削可能部材1は、シート状に形成された繊維補強樹脂層を複数層積層することで形成されており、この複数層積層された繊維補強樹脂層が硬化することでH型断面形状(図2参照)となるように形成されている。図5は、複数層積層されるうちの1つの繊維補強樹脂層12の断面の構造を説明するための模式図である。この模式図に示す繊維補強樹脂層12は、シート・モールド・コンパウンド25(以下、「SMC25」という)に補強材のガラス長繊維材26を加えて一体で成形したガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastic)として構成されている。そして、ガラス長繊維材26は、一方向に並んで配列されている。
SMC25は、不飽和ポリエステル樹脂である樹脂マトリックス中に低収縮剤、充填剤、添加剤等を加えた混合物を強化材であるガラス短繊維材(図示せず)に含浸させ、厚さ1〜5mm程度のシート状に加工した熱硬化性成形材料として構成されている。ガラス短繊維材は、SMC25中においてランダムな配向方向に配置されている。なお、ガラス長繊維材26とSMC25におけるガラス短繊維材との原料物性は表1に示すとおりで、SMC25における不飽和ポリエステル樹脂の原料物性は表2に示すとおりである。
Figure 0004563275
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このように、切削可能部材1の形成に用いられる繊維補強樹脂層12は、一方向に配列されているガラス長繊維材26である第1の繊維に樹脂が含浸されて形成されているとともに、ガラス長繊維材26の配列方向とは異なる方向に配向するように配置されている第2の繊維を含んで形成されている。この第2の繊維が、前述したように、SMC25においてランダム配置されているガラス短繊維材により構成されている。
また、切削可能部材1は、図6および図7の断面図に示すように、上記繊維補強樹脂層12が硬化してコの字断面形状になるように形成されている2つの繊維補強部材27のウェブ部28同士が接合されることでH型断面形状が形成されている。すなわち。図6に示す2つのコの字断面の繊維補強部材27が図中の矢印方向にそのウェブ部28同士が接合されて、図7に示すH型断面形状の切削可能部材1が形成されている。
また、切削可能部材1には、図1および図2によく示すように、長手方向の端部において、ウェブ部28の平板状部分に取り付けられる前述のプレート21(21a、21b)と、フランジ部29の平板状部分に取り付けられる前述のプレート22(22a、22b)とが備えられている。さらに、切削可能部材1には、ウェブ部28においてはプレート22とこのプレート22が取り付けられている平板状部分とを貫通するように孔30が設けられており、フランジ部29においてはプレート21とこのプレート21が取り付けられている平板状部分とを貫通するように孔31が設けられている。なお、切削可能部材1のフランジ部29およびプレート21の間と、ウェブ部28およびプレート22との間には、例えば砂入り樹脂モルタルで構成される接着剤層が介在しており、これによりプレート21・22がフランジ部29およびウェブ部28に対して強固に接合されており、接合部の接合力を補助的に高めている。
図1に示すように、H型鋼11の端部は、切削可能部材1に対してそのプレート21・22を介して接合されている。すなわち、プレート21およびボルト23を介して切削可能部材1のフランジ部29とH型鋼11のフランジ部とが接合され、プレート22およびボルト24を介して切削可能部材1のウェブ部28とH型鋼11のウェブ部とが接合されている。なお、図3に示すように、H型鋼11のウェブ部とプレート22との間には、切削可能部材1のウェブ部28との厚さ調整のための調整板32が介装されている。
次に、本実施形態の切削可能部材の製造方法について説明する。なお、切削可能部材としては、コの字状断面形状の繊維補強部材27が接合されて形成された切削可能部材1ではなく、H型断面形状になるように繊維補強樹脂層12が複数層積層された状態で硬化して形成された切削可能部材1aの製造方法について説明する。なお、図8は、切削可能部材1aの断面図であって図2に対応する断面図を示したものである。
図9は、切削可能部材1aを金型33を用いて製造する工程を説明する模式図である。金型33は、上金型34と下金型35と一対の側面金型36・36とを備えて構成されている。この図9に示すように、切削可能部材1aの製造においては、シート状に形成された繊維補強樹脂層12を下金型35の上面に複数枚積層して配置し、その複数層積層された繊維補強樹脂層12をH型断面形状となるように形を調整しながら側面金型36および上金型34を配置する。そして、樹脂のはみ出しを防止するためのスペーサを適宜使用するとともに、図中矢印で示すように四方から(上下左右から)図示しないプレス機等で加圧しつつ適宜所定の手段を用いて加熱することで、硬化してH型断面形状の切削可能部材1aが形成されることになる。
金型33での成形が終了すると、冷却が行われる。そして、冷却が終了すると、上下金型(34・35)、側面金型36が分解されて型開きが行われて、H型断面形状になった切削可能部材1aが取り出される。取り出された切削可能部材1aはトリミングされて寸法等の微調整が行われ、プレート21・22等が取り付けられる。そして、H型鋼11と接合されると切削可能杭として完成されることになる。
以上説明した本実施形態の切削可能部材1によると、一方向に配列されているガラス長繊維材26に加えてこのガラス長繊維材26と異なる配列方向に配向するように配置された第2の繊維(SMC25中の短繊維材)も含有されているため、複数の方向から外力が作用する場合であってもそれぞれの方向において高い耐力を発揮することができ、土留め壁を構成するための十分な強度を確保することができる。そして、切削可能部材1によると、繊維補強樹脂層12で形成されており、さらに、第1の繊維と第2の繊維とが樹脂に分散された状態で強度の偏りが少ない状態になっており、繊維が織物としての状態で含有されているものでもなく、大きな切削屑が発生することがない。このため、良好な切削性を確保することができる。また、H型断面形状となるように形成されているため、一般的な鋼材であるH型鋼と簡易な構成で容易に接合することができる。したがって、切削可能部材1によると、土留め壁を構成するための十分な強度を有するとともにシールド掘削機による良好な切削性も確保することができ、さらにH型鋼と簡易な構成で容易に接合することができてH型鋼との接合性に優れて工数の増大を抑制することができる切削可能部材を提供することができる。
また、切削可能部材1によると、H型断面形状に形成されておりウェブ部28およびフランジ部29で形成されるくぼみ部分を有していることになる。このため、この切削可能部材1を備える切削可能杭10を掘削孔内に設置してそれに隣接している部分を掘削しているときに、掘削刃が設置済みの切削可能杭に当たりにくく次の掘削も行い易いことになる。また、H型断面形状に形成されていることで、矩形断面形状のものに比して表面積を多く確保できるため、表面に沿って水が浸入する際における浸入経路を長くとることができ、水の浸入を抑制することができる。そして、上記くぼみ部分にモルタルを充填して硬化させたような場合にそのモルタル層にクラックが発生したときであっても、クラック発生面が切削可能部材の表面に沿って生成することが抑制されるため、水の浸入を抑制することができる。
また、切削可能部材1によると、一方向に配列されているガラス長繊維材26に加えてランダムな配向方向に配置された短繊維材も含有されているため、種々の方向から外力が作用する場合であってもそれぞれの方向において高い耐力を発揮することができ、土留め壁を構成するための十分な強度を確保することができる。そして、ガラス長繊維材26に加えてランダム配置の短繊維材が樹脂に分散された状態で強度の偏りが非常に少ない状態になっており、大きな切削屑が発生することがない。このため、良好な切削性を確保することができる。
また、切削可能部材1によると、繊維補強樹脂層12を積層して硬化させることで形成できるため、寸法設計の自由度が大きく、大型の切削可能部材であっても容易に形成することができる。
また、切削可能部材1によると、コの字断面形状の繊維補強部材27を形成してそのウェブ部29同士で接合することで、H型断面形状の切削可能部材1を容易に作製することができる。
また、切削可能部材1によると、プレート21・22とウェブ部28およびフランジ部29の平板状部分とに貫通形成された孔30・31にボルト等を挿通してプレート21・22を切削可能部材1に取り付けることができる。そして、このプレート21・22を介して、H型鋼11と切削可能部材1とを容易に接合することができる。
また、本実施形態の切削可能杭10によると、切削可能部材1とH型鋼11とをプレート20・21およびボルト23・24を介して容易に接合して切削可能杭を構成することができる。また、H型鋼11および切削可能部材1はいずれもH型断面形状同士での接合であるため、そのH型鋼11および切削可能部材1の接合部における力の伝達メカニズムが明確であり、接合部の強度設計が容易になる。
また、切削可能杭10によると、切削可能部材1とH型鋼11とをプレート21・22およびボルト23・24を介して支圧接合構造により接合することで、摩擦接合構造で接合する場合に比して、接合部の強度設計をより容易に行うことができる。
また、切削可能杭10によると、接着剤層を介してプレート21・22が取り付けられるため、切削可能部材1の表面に多少の凹凸を形成している不陸があっても、接着剤層にてこの不陸を吸収してプレート21・22を強固に接合することができ、接合部の接合力を補助的に高めることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
(1)本実施形態においては、第1の繊維として一方向に配列された長繊維材を含有し、第2の繊維としてランダムな配向方向に配置された短繊維材を含有する場合について説明したが、この通りでなくてもよい。第2の繊維としては、第1の繊維の配向方向とは異なる方向において一方向に配列された長繊維材であってもよい。すなわち、切削可能部材1を形成する繊維補強樹脂層12において、SMC25中にガラス長繊維材26とは異なる方向(例えば、直交する方向)において一方向に配列されたガラス長繊維材などであってもよい。
この変形例によると、第1および第2の繊維として複数の方向に配向するように配列された長繊維材が含有されているため、複数の方向から外力が作用する場合であってもそれぞれの方向において高い耐力を発揮することができ、土留め壁を構成するための十分な強度を確保することができる。そして、長繊維材が複数の方向に配向して配列されているため強度の偏りが少ない状態になっており、繊維が織物としての状態で含有されているものでもなく、大きな切削屑が発生することがない。このため、良好な切削性を確保することができる。
(2)図10は、変形例に係る切削可能部材2の断面図を示したものである。図10に示す切削可能部材2は、本実施形態の切削可能部材1aと同様に構成されているが、中詰め材43とボルト44とを備えている点が異なっている。中詰め材43は、例えば、切削可能杭2の長手方向における両端部以外の部分である中間部において、ウェブ部28およびフランジ部29で形成されるくぼみ部分に対して充填されて固化されたモルタルとして構成されている。また、この中詰め材43は、図10に示すように、くぼみ部分に対応して凹んだ状態となるように充填されて固化されることで、上記中間部が鼓型断面形状になるように形成されている。また、くぼみ部分と中詰め材43との間には、接着剤層(例えば、砂入り樹脂モルタルの層)が介在するように設けられている。また、ボルト44は、ウェブ部28を貫通するとともに、そのウェブ部28の両側に配置されている中詰め材43を貫通して連結する棒状体として構成されている。
この切削可能部材2によると、くぼみ部分において充填固化された中詰め材43を設けることで、高い切削性を確保しつつ曲げ剛性を増すことができ、さらに撓み変形量も小さく抑えることができる。また、切削可能部材2の両端部には中詰め材43を設けていないため、施工現場においてその両端部を容易にH型鋼に接合することができる。
また、切削可能部材2によると、その中間部が鼓型断面形状に形成されているため、この切削可能部材2を備える切削可能杭を掘削孔内に設置してそれに隣接している部分を掘削しているときに、掘削刃が設置済みの切削可能杭に当たりにくく次の掘削も行い易いことになる。また、切削可能部材2によると、くぼみ部分と中詰め材43との間に接着剤層が介在しているため、くぼみ部分における中詰め材43の接合強度をより高くすることができる。
また、切削可能部材2によると、ウェブ部28とその両側に配置された中詰め材43とを貫通して連結する棒状体であるボルト44を設けることで、中詰め材43のウェブ部28への接合強度をより高くすることができる。
(3)図11は、変形例に係る切削可能杭を示す平面図である。図11に示す切削可能杭は、本実施形態に係る切削可能杭10と同様に構成されているが、図中に二点鎖線で示す止水部45をさらに備えている点が異なっている。止水部45は、切削可能部材1とH型鋼11とを接合している接合部に設けられ、切削可能部材1の端部およびH型鋼11の端部の外周を覆うように設けられている。この止水部45は、例えば、ゴム板を接合部の外周に巻きつけて固定することにより設けられる。このように、切削可能部材1とH型鋼11との接合部に両部材の端部の外周を覆う止水部45を設けることで、簡易な構成で効率よく止水を行うことができる。
本発明の一実施の形態に係る切削可能部材および切削可能杭を示す平面図である。 図2は図1のII−II線矢視断面図である。 図1のIII−III線矢視断面図である。 図1のIV−IV線矢視位置から見た図である。 図1に示す切削可能部材を形成するための繊維補強樹脂層の断面の構造を説明するための模式図である。 図1に示す切削可能部材を形成するための繊維補強部材を示す断面図である。 図6に示す繊維補強部材を接合して切削可能部材を形成した状態を示す断面図である。 変形例に係る切削可能部材を示す断面図である。 本発明の一実施の形態に係る切削可能部材を製造する工程を説明する図である。 変形例に係る切削可能部材を示す断面図である。 変形例に係る切削可能杭を示す平面図である。
符号の説明
1 切削可能部材
10 切削可能杭
11 H型鋼
12 繊維補強樹脂層
21、22 金属プレート
25 シート・モールド・コンパウンド(樹脂、第2の繊維)
26 ガラス長繊維材(第1の繊維)
28 ウェブ部
29 フランジ部

Claims (12)

  1. 地中構造体を構築するために用いられる切削可能部材であって、
    一方向に配列されている長繊維材である第1の繊維と当該第1の繊維の配列方向とは異なる方向に配向するように配置されている第2の繊維とに樹脂が含浸されて形成されている繊維補強樹脂層で形成され、
    前記繊維補強樹脂層がシート状に形成されており、当該繊維補強樹脂層が複数層積層されて断面がH型となるように形が調整された状態で硬化することで、H型断面形状形成されていることを特徴とする切削可能部材。
  2. 前記第2の繊維は、ランダムな配向方向に配置されている短繊維材であることを特徴とする請求項1に記載の切削可能部材。
  3. 前記第2の繊維は、前記第1の繊維の配列方向とは異なる方向において一方向に配列された長繊維材であることを特徴とする請求項1に記載の切削可能部材。
  4. 長手方向の端部において、ウェブ部およびフランジ部のうちの少なくともいずれか一方の平板状部分に対して取り付けられる金属プレートと、
    前記金属プレートと当該金属プレートが取り付けられる前記平板状部分とを貫通するように設けられている孔と、
    を更に備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の切削可能部材。
  5. 長手方向における両端部以外の部分である中間部において、ウェブ部およびフランジ部で形成されるくぼみ部分に対して少なくとも充填されて固化された中詰め材を更に備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の切削可能部材。
  6. 前記中詰め材が前記くぼみ部分に対応して凹んだ状態となるように充填されて固化されることで前記中間部が鼓型断面形状に形成されていることを特徴とする請求項に記載の切削可能部材。
  7. 前記くぼみ部分と前記中詰め材との間に接着剤層が介在していることを特徴とする請求項または請求項に記載の切削可能部材。
  8. 前記ウェブ部を貫通するとともに、当該ウェブ部の両側に配置されている前記中詰め材を貫通して連結する棒状体を更に備えていることを特徴とする請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の切削可能部材。
  9. 請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の切削可能部材と、当該切削可能部材に板状部材およびボルト部材を介して機械的に接合されているH型鋼と、を備えていることを特徴とする切削可能杭。
  10. 前記切削可能部材と前記H型鋼とが前記板状部材および前記ボルト部材を介して支圧接合構造により接合されていることを特徴とする請求項に記載の切削可能杭。
  11. 前記切削可能部材と前記板状部材との間に接着剤層が介在していることを特徴とする請求項または請求項10に記載の切削可能杭。
  12. 前記切削可能部材と前記H型鋼とを接合している接合部に設けられ、当該切削可能部材の端部および当該H型鋼の端部の外周を覆うように設けられた止水部を更に備えていることを特徴とする請求項乃至請求項11のいずれか1項に記載の切削可能杭。
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