JP4562422B2 - 小型艇の揚収装置 - Google Patents

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本発明は、艦船に搭載された作業艇や救命艇などの小型艇を降下、揚収する装置(以下、揚収装置という)に関するものである。
艦船に搭載された作業艇や救命艇など(以下、小型艇という)の降下、揚収作業においては、小型艇は母艦船から繰り出されたワイヤロープを艇首尾に連結して行う。小型艇を降下させると、着水した瞬間から波浪による上下揺動及び縦揺動の影響を受け、小型艇はそれに従った運動を行う。そして、このような降下、揚収作業は波浪中及び航走中での運用が要求される。
この種の揚収装置にミランダ式ダビットがある。このミランダ式ダビットは、荒天揚収時においてはクレードルを十分に下降させ、フオールワイヤーにランチングストロープフックを掛け、フックワイヤー上を滑ることにより波浪による本船と警救艇の相対変位に対して自由度を持たせ、かつ、この自由度により片吊りの危険を回避して2点吊りの弱点を克服し、荒天下における揚収能力を担保するようにしたものである(例えば、非特許文献1参照)。
小川明彦 外1名「ミランダ式ダビット荒天時揚収機能の向上に関する調査研究」、平成11年度研究成果報告書、海上保安庁、「平成16年4月30日検索」インターネット<URL:http://www.kaiho.mlit.go.jp/>
海洋での波浪は、様々な波長の波やうねりが複雑に絡み合うことにより海面が運動する。小型艇に比べて波長の長い波は、主として小型艇全体を上下揺させるような動きをし、波長の短かい波は、主として小型艇を縦揺させる。
このように、小型艇は海洋波の様々な波長による波浪の影響を受けるため、首尾に連結されているワイヤロープの必要量(クレードルから小型艇のワイヤロープ連結部までの長さ)が、小型艇の運動(上下揺及び縦揺)により著しく変動する。なお、小型艇の運動には、他に横揺、船首揺などが挙げられるが、これらは上下揺、縦揺に比べて微少なため、ここでは考慮しない。
上下揺は、小型艇全体が上下動するため、小型艇の首尾を吊っている2本のワイヤロープの繰り出し量は、図10(a)に示すように、ほぼ同じ周期で緊張とたるみを繰り返えす。
これに対して、縦揺は、艇重心を中心として揺動するため、図10(b)に示すように、2本のワイヤロープが逆の周期で緊張とたるみを繰り返えし、一方の側のワイヤロープが緊張状態にあるときは、他方の側のワイヤロープはたるんだ状態になる。そして、このような上下揺と縦揺が合成されると、図10(c)に示すように、小型艇はきわめて複雑な動きをすることになる。
このため、たるんだワイヤロープが運用に関係のない部分に引っ掛ったり、ワイヤロープの繰り出し量が海面の下降に追従されない場合は、小型艇が一瞬離水し、再び海面に着水する際に底部が叩きつけられて大きな衝撃を受けることがあり、乗艇している者が非常に危険である。
非特許文献1に記載のミランダ式ダビットにおいても、このような縦動に対する対策はたてられていなかった。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、小型艇の降下、揚収にあたり、縦揺により2本のワイヤロープの一方がたるむのを自動的に吸収すると共に他方のワイヤロープを繰り出すことにより、ワイヤロープの緊張状態を常に一定に保つようにした縦揺吸収装置を備えた小型艇の揚収装置を提供することを目的としたものである。
本発明に係る小型艇の揚収装置は、ウインチに巻かれた2本のワイヤロープを一対のクレードルに設けたガイドシープにそれぞれ掛けて、該ワイヤロープにより小型艇を降下又は揚収する装置において、前記一対のクレードルの間に、前記小型艇の縦揺による一方のワイヤロープのたるみを吸収すると共に他方のワイヤロープを繰り出して2本のワイヤロープの緊張状態を常に一定に保持する縦揺吸収装置を設け、該縦揺吸収装置を、張力センサが組み込まれた第1、第2のスライドシープを有し、前記クレードルの間に設けた基台上に敷設されたレール上を移動するスライドシープ支持部と、前記張力センサからの信号により前記スライドシープ支持部を中立位置にロックし又はロックを解除するロック装置とを備え、前記ワイヤロープを前記クレードルのガイドシープから前記基台に設けたガイドシープを介して前記第1、第2のスライドシープにそれぞれ掛けたのち、前記クレードルのトップシープに掛けて構成したものである。
さらに、上記の縦揺吸収装置において、前記スライドシープ支持部の前後に該スライドシープ支持部をガイドするガイドバーを設け、該ガイドバーの前記スライドシープ支持部の両側にそれぞればねを設けたものである。
本発明は、小型艇の揚収装置において、クレードルに縦揺吸収装置を設け、小型艇が波浪によって縦揺し、一方のワイヤロープがたるんだときはこれを自動的に吸収すると共に、他方のワイヤロープを繰り出して両ワイヤロープの緊張状態を常に一定に保持するようにしたので、たるんだワイヤロープが運用に関係のない部分に引掛ったり、小型艇の底が波にたたかれたりするのを防止することができる。
また、小型艇が空中に浮いている状態では、スライドシープ保持部を中立位置に自動的にロックして小型艇の水平状態を保持するようにしたので、乗員の安全性を確保することができる。
図7は本発明の一実施の形態に係る小型艇の揚収装置の全体構成を示す側面図、図8は図7の正面図、図9は同じく平面図である。
図において、1は艦船、60は艦船に搭載された小型艇である。10は小型艇60の揚収装置で、側面ほぼC字状の一対のクレードル11a,11bを有し、両クレードル11a,11bの下端部は甲板2に設けた支持部材3にそれぞれ回動自在に支持されており、両クレードル11a,11bの間の上部には、後述の縦揺吸収装置30が設けられている。
12は下部が甲板2に設けた支持部材4に回動自在に支持され、アクチュエータの先端部がクレードル11a,11bにそれぞれ連結された油圧シリンダで、油圧シリンダ12の伸縮によりクレードル11a,11bは支持部材3を中心に回動し、小型艇60の繰り出し、格納を行う。
13は甲板2上に設置されたウインチで、これに巻かれたワイヤロープ18a,18bがそれぞれ同量巻取りできるドラム溝が設けられたウインチドラム14、このウインチドラム14を駆動する油圧モータ15、応急用エアモータ16、ブレーキ17等から構成されている。そして、ワイヤロープ18a,18bは、それぞれ案内シープ19,20から縦動吸収装置30のガイドシープ48a,48b、スライドシープ39a,39bを介してクレードル11a,11bのトップシープ19a,20aに掛けられている(図1参照)。5は揚収された小型艇60を格納する格納装置である。
図1は縦揺吸収装置の一実施の形態の模式的説明図、図2は図1の要部の平面図、図3は図2の側面図、図4は図3のA−A断面図である。
31は両クレードル11a,11bの間の上部に設けられた基台で、その上面にはレール32が敷設されている。35はスライドシープ支持部で、基台31の両側に設けられた支持部材43a,43bに支持された基板36の下面には、下部両側に、先端部にベアリングを有しレール32を摺動自在に挟持するリニアガイド37a,37bが設けられており、基板36の上面両側には支持板38a,38bが立設されている。そして、この両支持板38a,38bの間には、第1のスライドシープ39aと第2のスライドシープ39bが、支持軸40により回転自在に取付けられている。なお、図示してないが、第1、第2のスライドシープ39a,39bにはそれぞれ張力センサが設けられており、この張力センサの検出信号は、後述の油圧シリンダ50a,50bに送信される。
41a,41bは支持板38a,38bの外側面において、第1、第2のスライドシープ39a,39bの間に設けられたブラケットで、軸受穴42を備えている。なお、レール32の基台31の下面にはシーブ保持部材44に取付けられている。
45a,45bはスライドシープ支持部35の両側(前後)において、支持板38a,38bに設けたブラケット41a,41bの軸受穴42に摺動自在に挿通され、両端部が基台31上に設けた支持部材46に取付けられたガイドバーで、スライドシープ支持部35は、このガイドバー45a,45bに沿ってレール32上を左右方向に自在に摺動するようになっている。47a,47b,47c,47dは支持板38a,38bのブラケット41a,41bと、支持部材46との間において、それぞれガイドバー45a,45bに介装されたコイルばねである。このコイルばね47a〜47cは、初期状態において、ワイヤロープ18a,18bのトップシープ19a,20aから、小型艇60への連結部までの距離分の質量に相当する圧縮量でつぶされた状態にあることが望ましい。なお、48a,48bは基台31に設けたガイドシープである。
50a,50bは基台31の下部側に対向して設けられたロック装置を構成する一対の油圧シリンダで、アクチュエータの先端部には、伸張時に保持部材44に設けた当接部44aの両側に当接し、スライドシープ支持部35をその位置にロックするシープ固定具51a,51bが設けられている。なお、ロック装置50a,50bは油圧シリンダに限定するものではなく、エアシリンダや電動モータなどを用いてもよい。
そして、ウインチ13からの一方のワイヤロープ18aは、クレードル11aのガイドシープ19から縦動吸収装置30の基台31に設けたガイドシープ48aを介して第1のスライドシープ39aに掛けられたのち、クレードル11aのトップシープ19aに掛けられており、また、他方のワイヤロープ18bはクレードル11bのガイドシープ20から縦動吸収装置30の基台31に設けたガイドシープ48bを介して第2スライドシープ39bに掛けられたのち、クレードル11bのトップシープ20aに掛けられている。なお、ワイヤロープ18a,18bの先端部にはフック21a,21bが取付けられている。
次に、本発明に係る揚収装置の作用につき、図5を参照して説明する。
先ず、初期状態においては、スライドシープ支持部35は、図1、図5(a)に示すように、縦揺吸収装置30の中央部に位置しており(以下、この位置を中立位置という)、油圧シリンダ50a,50bのアクチュエータが伸張してそのシープ固定具51a,51bがシープ保持部材44の当接部44aに圧着し、スライドシープ支持部35をその位置にロックしている。なお、以下の説明では、小型艇60の図の右側を艇首、左側を艇尾という。
ワイヤロープ18a,18bの先端部に設けたフック21a,21bを小型艇60の艇尾と艇首に掛け、ウインチ13を駆動してウインチ13から繰り出されたワイヤロープ18a,18bにより小型艇60を降下させる。小型艇60が着水すると浮力を受けるので、第1、第2のスライドシープ39a,39bに組み込まれた張力センサが浮力を感知し、これに対応した信号を油圧シリンダ50a,50bに送り、アクチュエータを後退させてシープ固定具51a,51bによるシープ保持具44のロックを解除する。これにより、スライドシープ保持部35はガイドバー45a,45bに沿ってレール32上を移動自在になる。
小型艇60が着水すると海面の運動により揺動し、例えば、図5(b)に示すように、艇首が持ち上った縦揺状態では艇尾は相対的に下った状態になる。これにより、スライドシープ支持部35は艇尾側のワイヤロープ18aに引かれて、コイルばね47a,47bを圧縮して図の左方向(艇尾方向)へ移動する。このため、ワイヤロープ18aが艇尾側へ繰り出され、同時に持ち上った艇首側のワイヤロープ18bが巻き取られる。このようにスライドシープ支持部35が移動することにより、両ワイヤロープ18a,18bに張力が掛けられるため、艇首側のワイヤロープ18bがたるむことがない。
艇尾側が持ち上り、艇首側が下ると、図5(c)に示すように、スライドシープ支持部35が図の右方向(艇首方向)に移動し、艇首側のワイヤロープ18bが繰り出されると共に、持ち上った艇尾側のワイヤロープ18が巻き取られて、両ワイヤロープ18a,18bに張力が掛けられるので、艇尾側のワイヤロープ18aがたるむことはない。
上記の説明では、小型艇60を洋上に下降させる場合について説明したが、洋上の小型艇60を揚収するときの縦動吸収装置30の作用も上記の場合とほぼ同様である。そして、小型艇60が上昇して離水すると浮力が無くなるため、スライドシープ39a,39bに組み込まれた圧力センサがこれを感知し、これに対応した信号を油圧シリンダ50a,50bに送る。この信号を受信した油圧シリンダ50a,50bはアクチュエータを伸張させてそのシープ固定具51a,51bによりスライドシープ保持部44を挟持し、図5(d)に示すように、スライドシープ保持部35を中立位置にロックする。
前述のように、波浪の変動により小型艇60は周期的に艇首が持ち上って艇尾が下ったり、艇尾が持ち上って艇首が下ったりして縦動し、持ち上った方のワイヤロープ18a(又は18b)がたるむという現象を生じるが、本発明においては、前記のような縦揺吸収装置30の作用により、小型艇60を吊したワイヤロープ18a,18bの緊張状態を常に一定に保つようにしたので、ワイヤロープ18a,18bがたるんで運用に関係のない部分に引掛ったり、小型艇60が波浪に追従できないため底が波にたたかれるというような現象を解消することができる。
また、スライドシープ支持部35の両側にガイドバー45a,45bに介装したコイルばね47a,47bと47c,47dを設け、スライドシープ支持部35の移動に伴って圧縮、復元を繰り返えすようにしたので、スライドシープ支持部35を迅速に反応させることができる。
さらに、スライドシープ支持部35は、小型艇60が空中にあるときは、シープ保持部材44を介して油圧シリンダ50a,50bによって中立位置にロックされているため、図5(d)に示すように小型艇60の水平状態を保持することができるので、乗員の安全を確保することができる。
また、スライドシープ39a,39bに組み込まれた張力センサにより、小型艇60が空中に浮いている状態か着水している状態かを監視し、着水中はスライドシープ支持部35のロックを自動的に解除してスライドシープ39a,39bをフリー状態にするようにしたので、小型艇60の縦動によるワイヤロープ18a,18bの繰り出し量の不均衡を自動的に吸収することができる。
さらに、油圧シリンダ50a,50bは、張力センサからの検出信号により波浪による小型艇60の縦揺の速度より早く作動するので、スライドシープ39a,39bを着水状態(フリー状態)から離水状態(ロック状態)に迅速に変換することができ、このため、離水動作中に小型艇60の底が波にたたかれるのを防止できる。
また、縦揺吸収装置30は、スライドシープ支持部35の両側に、ガイドシープ48aとスライドシープ39a、ガイドシープ48bとスライドシープ39bをそれぞれ設け、ワイヤロープ18aをガイドシープ48aからスライドシープ39aに掛け、またワイヤロープ18bをガイドシープ48bからスライドシープ39bに掛けて、それぞれ2段掛けとしたので、図6に示すように、小型艇60が着水して水平状態(21a,21bで示す)から波浪により艇首尾方向にそれぞれX/2(合計移動量をXとする)縦揺した場合、ウインチ13は固定されてワイヤロープ18a,18bの繰り出しがないため、この艇首尾の上下動X/2に対して、スライドシープ39a,39bの移動量をX/4とすることができる。このため小型艇60の上下動に対するスライドシープ39a,39bの応答時間を短縮できるばかりでなく、縦動吸収装置30を小型化することができる。
本発明に係る縦揺吸収装置の一実施の形態の模式的説明図である。 図1の要部の平面図である。 図2の側面図である。 図3のA−A断面図である。 本発明の作用説明図である。 本発明の作用説明図である。 本発明の一実施の形態に係る小型艇の揚収装置の全体構成を示す側面図である。 図7の正面図である。 図7の平面図である。 海洋における小型艇と波浪との関係を示す説明図である。
符号の説明
1 艦船、10 揚収装置、11a,11b クレードル、13 ウインチ、18a,18b ワイヤロープ、19,20 ガイドシープ、19a,20a トップシープ、30 縦揺吸収装置、31 基台、32 レール、35 スライドシープ支持部、39a,39b スライドシープ、41a,41b ブラケット、44 シープ保持部材、45a,45b ガイドバー、47a〜47d コイルばね、48a,48b ガイドシープ、50a,50b 油圧シリンダ、51a,51b シープ固定具、60 小型艇。

Claims (2)

  1. ウインチに巻かれた2本のワイヤロープを一対のクレードルに設けたガイドシープにそれぞれ掛けて、該ワイヤロープにより小型艇を降下又は揚収する装置において、
    前記一対のクレードルの間に、前記小型艇の縦揺による一方のワイヤロープのたるみを吸収すると共に他方のワイヤロープを繰り出して2本のワイヤロープの緊張状態を常に一定に保持する縦揺吸収装置を設け、
    該縦揺吸収装置を、張力センサが組込まれた第1、第2のスライドシープを有し、前記クレードルの間に設けた基台上に敷設されたレール上を移動するスライドシープ支持部と、前記張力センサからの信号により前記スライドシープ支持部を中立位置にロックし又はロックを解除するロック装置とを備え、前記ワイヤロープを前記クレードルのガイドシープから前記基台に設けたガイドシープを介して前記第1、第2のスライドシープにそれぞれ掛けたのち、前記クレードルのトップシープに掛けて構成したことを特徴とする小型艇の揚収装置。
  2. 前記基台上において、前記スライドシープ支持部の前後に該スライドシープ支持部をガイドするガイドバーを設け、該ガイドバーの前記スライドシープ支持部の両側にそれぞればねを設けたことを特徴とする請求項記載の小型艇の揚収装置。
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