JP4557971B2 - 血液試料からの神経損傷の評価 - Google Patents

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Description

本発明は一般的には生物学および医学の分野に関する。より詳細には、本発明は、生物試料について、損傷した神経から放出される神経フィラメント(NF)由来のタンパク質およびペプチド(NFDP)を分析することにより、神経細胞への損傷を検出することに関する。
[関連出願との相互参照]
本願は、2003年3月31日に提出した、米国仮特許出願通し番号第60/459,286号に優先権を主張する。
[政府委託研究に関する陳述]
本発明は、米国陸軍による付与番号DAMD17−01−1−0765、および国立衛生研究所(NIH)による付与番号AA012151−02によって、米国政府から援助を受けて行われた。米国政府は、本発明における一定の権利を有する。
[背景]
近年、種々の損傷や疾病状態を迅速に診断するために、血液中の特異的マーカータンパク質の検出に大きな関心が寄せられるようになっている。このようないわゆるバイオマーカーを詳細に研究することで、種々の損傷や疾病状態の迅速かつ簡単な診断を行えるようになる可能性がある。たとえば、ヒト血清中の組織ポリペプチド抗原(TPA)の存在は、いくつかの種類のがんに対する有用なバイオマーカーであり、TPA発現のレベルががんの予後と負の相関性をもつことが長年来知られている。TPAは当初は、ヒト腫瘍抽出物の不溶性残渣に対して抗血清を作製することによって同定され、初期の研究による仮説では、TPAの成分が腫瘍特異的タンパク質であると考えられていた(非特許文献1)。しかしながら、後の研究から、TPAは実際には、部分的に分解されたケラチン8,18および19の複合体であることが示された。これらのケラチンは、がん細胞だけでなく正常な分化上皮細胞の細胞骨格に豊富に存在する成分である(非特許文献2)。急速に分裂するがん細胞は、それらの細胞質成分のいくつかを血清中に放出するが、該細胞質成分は血清プロテアーゼにある程度の耐性を持つことから、適当な免疫学的試験によって検出することができるようである。したがって、適当な型のがん腫を有する個体は、正常な個体に比べて、これらの循環タンパク質の断片をはるかに多く有することになる。血清中のTPA発現のレベルは、がん細胞負荷を正確に反映するものであるから、TPAの判定は診断と予後の両方に対して有用である。この種の手法の他の例としては、心臓クレアチンキナーゼと心臓トロポニンIのレベルを測定する心筋梗塞のモニタリングがあげられる。損傷を受けた心臓細胞から放出されたこれらのタンパク質の血清中含量は、梗塞の大きさに関する医学的に有用な情報を提供し、予後診断に価値を示す。この種の発見および多くの他のことから、細胞の正常なタンパク質は、ある種の特別な損傷および疾病状態において非常に高いレベルで発現される可能性があり、該タンパク質の免疫学的検出を診断および予後診断に使用しうるという原理が成立する。
神経損傷を伴う疾患は、世界的にみても大きな健康上の関心事であるが、真に信頼性があり便利な神経損傷の特異的バイオマーカーは、大きな科学的かつ潜在的な臨床的有用性を有するが、いまだ発見には至っていない(非特許文献3)。脳の損傷に対する数種の潜在マーカーが開示されているものの、いずれも欠点を有している。たとえば、以前の研究で、神経細胞特異的エノラーゼ(NSE)であるS100−β(非特許文献4)、より最近では生物試料中でのスペクトリン分解産物(SBP、非特許文献5)が、脳の損傷を測
定するのに有用であるとの提案がなされている。しかしながら、S100−βとSBPのいずれも、神経細胞または神経系の損傷に特異的でない。神経細胞特異的エノラーゼは、神経細胞においてのみ大量に発現されることからより前途有望なように見えるが、まだ広くは用いられていない。これはおそらく、NSEが比較的不安定なタンパク質であるためであろう。微小管関連タンパク質(MAP)tauもまた、神経損傷のバイオマーカーとして提案されている(非特許文献6)。しかしながら、これは特に豊富なタンパク質ではなく、非神経細胞(たとえば、反応性の星状グリア細胞)においても発現される(非特許文献7)。したがって、神経損傷を適宜評価するために使用できる迅速かつ信頼性の高い診断アッセイが必要とされている。そのようなアッセイは、実験動物における神経損傷を評価するために、また当該動物において神経防護作用のある薬物の効果をモニターするために有用であろう。このようなアッセイは、関連する分子が脳脊髄液(CSF)ではなく血液中で検出可能な場合に特に有用である。というのも、血液の採取は研究および医学の状況において常套的なものであるばかりでなく、CSFの採取よりも侵襲性や潜在的危険性が低く、簡単であるためである。潜在的バイオマーカーは、外傷後数時間以内の血液中で検出することができれば有用であろう。というのも、脊髄または脳内に神経損傷を負った可能性のある事故の犠牲者を、緊急治療室内でモニターするのに使用できるかもしれないからである。現行のX 線、CATスキャンおよびMRI技術を用いて事故犠牲者にどの程度の神経損傷が生じているかを判定することは難しい。したがって、神経損傷のバイオマーカーの検出および定量は、ヒトにおいて大きな診断的、予後診断的価値を有するであろう。
ビョークルンド、ビー(Bjorklund,B)、Antibiot.Chemother.、1978年、第22巻、p.16−31 ウェバー(Weber)ら、Embo.J.1984年、第3巻、p.2707−2714 インゲブリグツセンおよびロムナー(Ingebrigtsen and Romner)、J.Trauma、2002年、第52巻、p.798−808 パーソン(Persson)ら、Stroke、1987年、第18巻、p.911−918 パイク(Pike)ら、J Cereb Blood Flow Metab、2004年、第24巻、p.98−106 ゼムラン(Zemlan)ら、J Neurochem、1999年、第72巻、p.741−750 トウゴウおよびディクソン(Togo and Dickson)、Acta Neuropathol.、2002年、第104巻、p.398−402
神経損傷を適宜評価するために使用できる迅速かつ信頼性の高い診断アッセイが必要とされている。
本発明は、実験動物における脊髄または脳などの中枢神経系(CNS)組織への損傷が、該動物の血液やCSFなどの生体液中で検出可能なNF由来タンパク質の漏出をもたらすという発見に関する。これらのNF由来タンパク質の存在は、特定のNFDPと特異的に結合する抗体を利用したアッセイを用いて検出することができる。NF発現は絶対的に神経細胞に限定されるので、NFDPの測定は、特異的かつ明確に神経細胞の損傷を検出する方法を提供する。
NFは主として3つのサブユニットタンパク質、すなわち、NF−L、NF−M、NF
−Hと、より少量の2つのタンパク質であるインターネキシンおよびペリフェリンとによって構成されている(シャウ(Shaw)、1998年、「Neurofilaments.」、米国ニューヨーク所在のスプリンガー(Springer))。神経細胞が損傷を受けると、安定な10nm径フィラメントにおいて通常見られるNFサブユニットは、カルパイン、カテプシン、カスパーゼなどの様々な内在酵素の影響によって、可溶性の成分に分解される。これらの酵素は、可溶性NFDPのファミリーを産生する。NFDPは、集合体化したNFに由来する可溶性かつ拡散性のタンパク質であり、完全に無傷なNFサブユニットタンパク質またはタンパク分解作用を受けたNFサブユニット断片のいずれかである。
プロテアーゼに対して最も耐性のあるNFサブユニットは、NF−Hであり、このことは、該分子のいくつかの特異なタンパク質化学的および免疫学的特性と合わせた場合に、この分子が神経損傷後の血液、CSFおよび他の生体液において最も容易に検出されることを示唆する。これに基づいて、酵素免疫吸着測定法(ELISA)捕捉アッセイの原型を開発した。このアッセイの現行バージョンでは、50μL容量中、最低50pg(1ng/mLまたは1μg/Lと同等、図1を参照)までのNF−Hを正確に定量することができる。原型アッセイを用いて、対照ラット血液中、および様々な実験的神経損傷を与えたラットの血液中のNF−H免疫反応性を調べた。対照血液中ではNF−H免疫反応性を全く検出することができなかったが、実験的脊髄損傷を与えたラットの血液中では、最大60μg/LのNF−H免疫反応性が検出された。実験的外傷性脳損傷を与えたラットでも、それよりも低いが再現性のあるNF−Hシグナルが血液中に認められた。様々な他の神経損傷パラダイムが、血液中に再現性あるNF−Hシグナルを示した。まとめると、一連の全実験において、NF−Hは、実験的神経損傷を受けた動物の血液中において、適当な抗体に基づくアッセイによって検出可能であることが示された。NF−Hシグナルは、血液中だけでなく、血液凝固後の血清、および血漿中でも容易に検出することができることから、シグナルは血液の可溶性画分中に存在し、赤血球細胞や他の細胞性成分とは結合していないことが示された。
具体的には、ラットに対して、胸の高さT11、T12レベルにおいて脊髄片側切断を行った。この系は、CNSに対する刺銃創を模するために用いる。切創の部位から採取した血液試料が非常に高レベルのNF−H発現(>80μg/L)を示したことから、NF−Hはこの種の神経損傷の直後に容易に検出可能な量で放出されることが分かった。2,8,16および24時間目に尾部から採取した血液試料はいずれも、少量ではあるが再現性のあるNF−Hシグナルを示し、時間が経つほどシグナルは強まっていた。これらの知見から、NF−Hは、神経損傷後の上記時間内に、容易に測定可能な量で血液中に認められるという原理が確立した。興味深いことに、この一連の実験において、NF−Hのレベルは約24時間で水平状態に達し、その後、損傷から3〜5日目の間をピークとしてさらに高レベルになり、損傷から約9日までに対照のレベルに戻る。免疫反応性のこの二番目のピークは、神経細胞の二次的な死に対応すると考えられ、このアッセイはこの現象を測定する唯一の方法を提供すると考えられる。この実験は、一連の動物に対して行ってきたが、そのすべてが非常に類似したNF−Hシグナルの時間的経過およびレベルを与えたことから、損傷に対する動物の反応と、NF−H検出のいずれも信頼性があり、再現性があることが示唆される。別の一連の実験から、ラットにおける実験的脊髄打撲傷(挫傷)が定量的かつ定性的に類似したNF−H反応を与えることを示す。打撲傷は、標準化された重量落下装置を用いて与え、このモデル系を用いて、ヒトの脊髄の挫滅および衝撃損傷を模する。最後に、同様に重量落下装置を用いた実験的外傷性脳損傷を施したラットの研究から、血液中のNF−Hシグナルは測定可能ではあっても、脊髄損傷を施したラットに比べて少量であることを示す。すなわち、血中NF−Hレベルによって、様々な種類の中枢神経系の神経損傷を確実に検出することができるのである。
本明細書に記載されるELISAアッセイは、迅速で(現行では3時間少々で実施される)、かつ非侵襲的である(一滴の血液しか必要としない)。このアッセイは、新鮮血液、室温で凝固した後に得られる血清、または遠心分離によって得られる血漿を用いて行う。統一するために、該アッセイを、新鮮血液から、14,000g、10分間、室温での遠心分離によって得られた血漿に対して標準化した。試料は多いほど間違いなく感度は上がるが、通常は実験ラットからの10μLの試料を用いた。NF−Hシグナルはかなり安定で、血液、血清または血漿を数回に亘って凍結融解した後でも、あるいは室温に数時間放置した後でも、明確な減少なく検出することができた。このことは、該アッセイが実用においても堅調であることを示している。該アッセイは、神経損傷の定量と、神経細胞死に対処するように設計された薬物の有効性の評価とを目的とした動物実験において用いることができる。神経損傷の堅調かつ迅速なアッセイは、緊急治療室における脊髄および脳損傷のヒト患者に対する利用に大きな可能性を有している。
したがって、本発明は、対象における神経損傷の検出方法を特徴とする。本方法は、(a)対象に由来する生物試料(例えば、血液、血清、血漿、CSFまたはその他の流体)を提供する工程と、(b)試料中の少なくとも1つのNFDPの存在を検出または定量する工程と、(c)試料中のNFDPの存在または量を神経損傷と相関づける工程とを含む。工程(b)は、試料を、少なくとも1つのNFDPと特異的に結合する少なくとも1つの抗体と接触させることを含んでいてもよい。また、該工程はイムノブロッティング、ELISA、ラジオイムノアッセイ、表面プラスモン共鳴、免疫拡散法または蛍光エネルギー移動からなる群より選択される免疫学的検定を実施することを含んでいてもよい。NFDPは、抗体以外の特異的リガンド、例えばPDZ、14−3−3またはその他の結合ドメインの組換え誘導体、内在NFDP結合タンパク質組換え体、または当該NFDPに結合するように特別に設計したリガンドなどによって検出することもできる。
本発明は、対象における神経損傷を検出および定量するためのキットも特徴とする。当該キットは、特定のNFDPに強力かつ特異的に結合する適切な捕捉抗体を結合させた固体またはナノ粒子基体と、該捕捉抗体にNFDPが適切に結合していることを検出するための二次抗体とを含む。キットは、捕捉されたNFDPの量を可視化して定量化するための他の適切な試薬を含んでいてもよい。また、適当な流体試料内の、神経損傷を反映するNF−Hレベルを検出および定量するための使用説明書を含んでいてもよい。検出試薬は、適当な発色性酵素、放射性プローブ、蛍光プローブ、金属ナノ粒子またはプラスチックナノ粒子を含んでいてもよい。核酸に基づくシグナル増幅を用いた最近の進歩を利用してもよい(たとえば、Namら、Science、2003年、第301巻、p.1884−1886)。NFDPはNF−Hであってもよいが、NF−M、NF−L、α−インターネキシンまたはペリフェリン分子の一部または全部を含むNFDPを検出するための試薬を含んでいてもよい。キットにおいては、少なくとも1つの抗体の、NFDPに対する結合の検出を、神経損傷の程度と相関づける。
本明細書中でも用いる「結合する(bind,binds)」または「〜と相互作用する」とは、ある分子が試料中の特定の別の分子を認識してこれに付着(結合)するが、試料中の他の構造的に無関係な分子を認識しこれに付着することが実質的にないことを意味する。一般に、第2の分子に「特異的に結合する」第1の分子は、該第2の分子に対して10〜10モル/リットルを超える結合親和性を有する。
本明細書中で用いる「血液」という用語は、血液から誘導される血漿および血清を意味する。
別の分子に「特異的に結合する抗体」という場合、該別の分子には結合するが、該別の分子と同一の抗原決定基を共用するもの以外の天然に存在するタンパク質に実質的な結合性を示さない抗体を意味する。「抗体」という用語には、ポリクローナル抗体およびモノ
クローナル抗体、ならびに完全な抗体分子と同じ抗原に特異的に結合できる抗体断片またはイムノグロブリン分子の一部も含まれる。
本明細書中で用いる「対象」という用語は、ヒトまたは、限定はされないが、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ウサギ、モルモット、ヒツジ、ヤギ、霊長類、ラット、およびマウスなどの哺乳動物を含むヒト以外の動物を意味する。NF−Hの免疫原性部位は高等脊椎動物種の間でよく保存されているため、このNF−Hアッセイは、鳥類およびは虫類の対象に対しても有効であると予想される。同様の理由から、他のNFDPの検出に基づくアッセイも、すべての高等脊椎動物種に対して有効であると考えられる。
特に定義しない限り、本明細書中で用いるすべての技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有するものとする。本明細書中に記載するものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験のために用いることができるが、適切な方法および材料を下記に記載する。本明細書中にあげるすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体を参照により本願に組み込む。対立する場合には、定義を含めた本明細書に従うものとする。さらに、以下に検討する特定の実施形態は例示にすぎず、限定することを意図したものではない。
本発明は、神経損傷を評価するためにCSFまたは血液などの生物試料中のNFDPを検出するための組成物および方法に関する。下記に記載する好ましい実施形態は、これらの組成物および方法の適用を例示するものである。とはいえ、当該実施形態の説明から、下記に提供する説明に基づいて本発明の他の態様を作成および/または実施することもできる。
[生物学的方法]
従来の生物学的技術を含む方法について説明する。そのような技術は当該技術分野において周知であり、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第3版、第1〜3巻、サムブルック(Sambrook)ら編、米国ニューヨークコールドスプリングハーバー所在のコールドスプリングハーバーラボラトリープレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press )、2001年;および「Current Protocols in Molecular Biology」、オースベル(Ausubel)ら編、米国ニューヨーク所在のグリーネパブリッシングアンドワイリーインターサイエンス(Greene Publishing & Wiley-Interscience)、1992年(定期的に改訂)などの方法論書に詳細に記載されている。免疫学的方法(たとえば、抗体特異的抗原の調製、免疫沈降、イムノブロッティング)は、例えば、「Current Protocols in Immunology」、コリガン(Coligan)ら編、米国ニューヨーク所在のジョンワイリーアンドサンズ(John Wiley & Sons )、1991年;および「Methods of Immunological Analysis」、マッセイエフ(Masseyeff)ら編、米国ニューヨーク所在のジョンワイリーアンドサンズ、1992年に記載されている。
[NFDP]
NFDPは、活性化されたプロテアーゼによるNFの酵素的分解によって生産される。NFは、神経細胞の主要な構造成分であり、10nmフィラメントまたは中間フィラメントのタンパク質ファミリーに属する。NFは、主要なサブユニットNF−L、NF−MおよびNF−Hで構成され、特定の神経細胞種はより少量のさらに2つのサブユニット、ペリフェリンおよびインターネキシンも含んでいる。10nmフィラメントまたは中間フィラメントタンパク質ファミリーの他のメンバーとしては、上皮細胞中に見られるケラチン、星状細胞に特徴的なグリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)、筋肉および内皮細
胞中に見られるデスミン、多くの細胞種において見られるビメンチン、ならびにいくつかの認知度の低いタンパク質があげられる。このタンパク質ファミリーは、いくつかの興味深い特性を有している。第一に、明確で特異的な細胞サブタイプ発現パターンで発現される。このことは、例えば、細胞が神経を起源とすることを明白に同定するためにNFに対する抗体を用いることができること、ならびにGFAP抗体が星状細胞の同定に対する判断基準として使用されることを意味する。第二に、種々の中間フィラメントタンパク質およびそれらのサブユニットは多くの細胞における非常に豊富な成分であり、多くの大きな神経細胞においてNFサブユニットはタンパク質全量の数パーセントを占める場合もある。第三に、NFサブユニットおよび他の10nmフィラメントのサブユニットは長寿命で安定な細胞成分であるので、正常な細胞内タンパク質分解機構に対する耐性がかなり高いはずである。これらの特性により、一般的には10nmまたは中間フィラメントのタンパク質、とりわけ神経フィラメント分子は、細胞種特異的損傷の分析を目的とした診断キットの開発に関する優れた標的となる。
成熟神経系の大きな神経細胞は、特にNF−L、NF−MおよびNF−Hを豊富に含んでいる。この3つのポリペプチドのそれぞれは、複合マルチドメインタンパク質であり、NF−MおよびNF−Hの場合は異常なまでに大幅にリン酸化されている。神経系が損傷を受けると、神経細胞がアポトーシスまたは壊死により死んで、細胞内容物を周囲の組織、血液および脳脊髄液中に放出すると考えられる。アポトーシスも壊死も一連のタンパク質分解酵素の活性化を引き起こすことから、この細胞内容物は部分的にタンパク質分解されると予想される。しかしながら、NF−Hは免疫原性が高く、かつプロテアーゼ耐性も有するので、無傷のNF−HまたはNF−Hに由来する断片は、損傷を受けた神経細胞から放出された後に、体液中で検出できると考えられる。上に示したように、NF−Hは損傷部位において血中に大量に検出することができ、血中では損傷から早ければ2時間後に、また神経損傷後の数日間に亘って血中で検出することができる。
NFは神経細胞内でしか見られないので、この手法は他の方法に比べてはるかに有益である。以前の研究者は血中およびDSF中で検出可能なS100−βおよびスペクトリン分解産物を脳損傷のマーカーとして使用していた。しかしながら、これらのタンパク質はいずれも神経細胞内だけでなく、グリア、内皮、および多くの他の種類の細胞中でも見られ、CNS中の細胞に特異的なものではない。したがって、NF検出に基づいた試験は、神経細胞への損傷のみを反映することから、はるかに正確な情報を提供し、より大きな科学的および臨床的価値を与えるものである。上述のように、MAP−tauおよび神経細胞特異的エノラーゼは、固有の欠点も有した神経損傷の他の潜在的マーカーである。NFは最も豊富な神経特異的成分であると考えられ、大きな生物種、特にヒトなどにおいてとりわけ多く発現されることから、NF検出系はより大きな感度を提供するとも考えられる。
[神経損傷の検出]
本発明は対象における神経損傷の検出方法を提供する。本方法は、(a)対象に由来する生物試料、例えば血液またはCSFを提供する工程と、(b)該試料中の、無傷のNFから発生したNFDPの存在を検出する工程と、(c)試料中のNFDPの量を、正常な(すなわち損傷を受けていない)対照対象からの試料中のNFDPの量と比較する工程と、(d)工程(a)の試料中のNFDPの量を、損傷の重症度と相関づける工程とを含む。
対象物由来の生物試料を提供する工程は、従来の医療技術によって行うことができる。生物試料は、対象の体内のいずれの部位から得てもよい。NF−Hは神経損傷後にCSF中に蓄積すると予想され、そこでアッセイすることもできるが、本方法の大きな利点は、血液中で十分なシグナルを検出しうることにある。血液は、CSFよりもはるかに容易に
得ることができ、実験動物や緊急治療室内のヒト患者から常套的に採取することができる。したがって、NF−Hを検出するための適当なキットを入手する以外に、他に特別な工程を必要としない。
本発明において用いる適切な対象は、我々のアッセイ系によって検出可能なNFを発現する任意の動物種とすることができる。したがって、対象は、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ウサギ、モルモット、ヒツジ、ヤギ、霊長類、ラット、およびマウスなどの任意の哺乳動物であってよい。本アッセイは、魚類や両生類とまではいかずとも、少なくとも鳥類およびは虫類の生物種に有効であると予想される。本発明の方法に対して好ましい対象は、ヒトである。特に好ましいのは、外傷性または非外傷性の神経損傷を発症しているかそのおそれのある対象、例えば、外傷性損傷(たとえば、射創、自動車事故、スポーツ事故)、虚血事象(たとえば、脳梗塞、脳出血、心停止)および神経変性障害(たとえば、アルツハイマー病やパーキンソン病)による神経損傷の犠牲者などである。
試料中のNFDPを検出する工程は、様々な方法によって行うことができる。タンパク質の存在を分析するための多くの適切な技術が知られている。たとえば、タンパク質および該タンパク質の特異的分解産物は、免疫学的技法を用いて、イムノブロッティング(たとえば、ウェスタンブロッティング)、ELISA,ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫蛍光または免疫組織化学染色および分析、ならびに同様の技法などの免疫学的検定において、たとえば、タンパク質および/またはその分解産物(例えば、NF、NFのサブユニット、および特異的プロテアーゼによって生産されるNFの分解産物)に特異的に結合する抗体を用いて検出することができる。NFDPを検出するための適切な方法は、以下に記載するが、他の適切な方法を用いてもよい。
NFDPに結合する任意の抗体が、本発明において使用するのに適している。好ましい実施形態において、特定のNFDPを同時または独立に検出するために、1つの抗体を用いてもよい。本発明の1つの態様において、タンパク質試料のイムノブロットを特定のNFDP(たとえば、NF−H)しか検出しない抗NFDP抗体を用いて探査することもできる。
[キット]
本発明は、血液やCSFなどの生物試料中のNFDPのレベルを評価する(たとえば、対象中の神経損傷を検出する)ためのキットを含む。該キットは、固体基体と、所定のNFDPに特異的に結合する少なくとも1つの捕捉抗体と、捕捉抗体に結合したNFDPを検出するために用いる当該NFDPに特異的な別の抗体と、該キットを用いて対象中の神経損傷を検出するための説明書とを含む。キットは典型的には、ELISAプレート、スライドグラス、または他の適当な基体に固定化されたNFDP特異的ポリクローナル、モノクローナル、または組換え抗体を含んでいる。固定化された抗体を、生物試料とともにインキュベートして、試料中に含まれる可能性のある特異的NFDP(例えばNF−H)を結合させる。特定の生成物の結合は、個々のNFDPに特異的な検出抗体によって判定する。検出抗体の存在は、検出抗体と反応する酵素標識抗体などの検出薬によって可視化および定量する。酵素標識抗体の存在は、該酵素に適当した発色性基質を用いて検出する。シグナルの定量化は、個々の発色物に対して最適な波長における光学密度測定によって実施することができる。より複雑な手法では、表面プラスモン共鳴、蛍光共鳴エネルギー移動または結合の評価に特化された装置の使用を含む他の技術が、結合の定量という点で、かつハイスループットの用途に対して有益であるかもしれない。
本発明の開発にあたって、NFサブユニットに対する一連の特異的ポリクローナル抗体をウサギおよびニワトリにおいて作製し、あるモノクローナル抗体についてはマウスにおいて作製した。ここに記載する原型ELISAアッセイにおいて、我々は非常に高い力価
のNF−Hに対するニワトリポリクローナル抗体を捕捉用として用いた。これを純粋なNF−H上にてアフィニティ精製し、標準的な方法を用いてELISAプレート上にコーティングした。検出抗体は、同様にしてアフィニティ精製したウサギポリクローナル抗体とした。2つの異なる生物種において作製した2つのポリクローナル抗体の組み合わせにより、このアッセイは異例の感度を得た。さらに別の個々のNFDPに特異的に結合する他の抗体については、将来、利用性についての評価がなされるであろう。このようなキットは、NF−M,NF−L,α−インターネキシンおよびペリフェリンを検出するための試薬を含むことになろう。本発明の範囲内のキットは、グリアの損傷も評価できるようにするために、グリア繊維性酸性タンパク質(GFAP)に対する抗体プローブを含んでいてもよい。さらに進化した自動化キットは、同一の抗体試薬に基づくタンパク質マイクロアレイを用いる。このようなアレイは、基礎研究および臨床(例えば緊急治療室の)用途のいずれでも用いることができる。さらに、特定の固定化された抗体を用いた比色フィルタによるアッセイも本発明の範囲内にある。
神経損傷の強力な血清バイオマーカーとしての神経フィラメントサブユニットNF−H
[材料と方法]
NF−H特異的抗体の開発:ウシ組織は比較的に容易に入手可能で、ウシNF−H分子がヒトおよび他の生物種のNF−H分子と免疫学的およびタンパク質化学的に類似していることから、ウシNF−Hを用いてNF−Hと反応する抗体を調製した。ウシ脊髄組織は、地方の食肉処理場から入手し、氷上で輸送し、髄膜を剥いで、−70℃で保存した。神経フィラメントを豊富に含むゲルを本質的にデラコルテらの報告(Delacourteら,Biochem J、1980年、第191巻、p.543−546)に従って調製した。簡単に説明すると、およそ250gのウシ脊髄材料を解凍し、羽根形式のホモジナイザーで、MESバッファ(0.1M MES,1mM EGTA,0.5mM MgCl、pH=6.5,+0.2mM PMSF)中でホモジナイズした。ホモジネートをチーズ布でろ過し、14,000rpm/29,000g、4℃で1時間遠心分離した。次いで、上清を28,000rpm/78,000g、4℃で30分間遠心分離した。グリセロールを加えて終濃度20%とし、該材料を37℃で20分間インキュベートした。上清を45,000rpm/235,000g、20℃で30分間遠心分離した。各調製あたり、典型的には、約3gの透明の黄色がかったペレットが回収された。これらのペレットは典型的には、約90%のNF−L、NF−MおよびNF−Hと、より少量のGFAPおよびフォドリン/スペクトリンとを含んでいる。この材料を10mMリン酸バッファ、1mMEDTA、0.1%β−メルカプトエタノール、pH=7.5中の6M尿素に溶解し、同バッファで平衡化しておいたDEAEセルロースカラムにアプライした。タンパク質を、同バッファ中0M〜0.25MのNaCl勾配を用いて溶出した。単一のきれいなNF−Hタンパク質のバンドが、約0.05MのNaClにおいて溶出されたので、この材料を約lmg/mlに濃縮し、PBSに対して透析した。250μgの精製NF−Hを、1:1の比でフロイント完全アジュバントと混合してマウス、ウサギ、およびニワトリに注射し、3週間後には200μgをフロイント不完全アジュバントと1:1の比で混合して、動物に追加投与した。
さらに2回の追加投与を行った後、2羽のウサギから採血し、アフィニティ精製用に血清を回収した。ニワトリに対しては、卵を採取し、有機溶媒中で脱脂してから硫酸アンモニウム沈殿を行ってIgY富化調製物を作製した。マウスは屠殺して、PAI骨髄腫に融合させたマウス脾臓細胞を標準的な方法を用いてハイブリドーマ製造用に処理した。ハイブリドーマは、6×24ウェルディッシュ中で培養し、ELISAによって免疫原についてスクリーニングした。NP1ハイブリドーマがELISAにおいてNF−Hと非常に強く反応し、かつ非固定の組織切片およびパラホルムアルデヒド固定した組織切片中の神経細胞を染色した場合にはサブクローニング用に選択した。ニワトリポリクローナルIgY
調製物をCPCA−NF−Hと名付け、ウサギポリクローナル血清をRPCA−NF−Hと名付け、マウスモノクローナル抗体をMCA−NP1と名付ける。これら全ては現在ではEnCor Biotechnology Inc.(米国フロリダ州アラチュア所在)より市販されている。アッセイにおいて使用する前に、ウサギ血清およびIgY調製物のいずれも、臭化シアン活性化セファロース(商標)4B(シグマ(Sigma)社)に結合させた精製NF−Hでアフィニティ精製した。マウスモノクローナル抗体は、Hi−Trap(商標)プロテインGカラム(アマシャム(Amersham)社)で、製造業者の説明書に従ってアフィニティ精製した。溶出した抗体をPBSに対して透析してからELISAアッセイにおいて使用した。
原型のELISAアッセイ:ELISAアッセイを行うために、タンパク質の結合を高めるためのコーティングを施した標準的な96ウェル形式のELISAプレートであるImmulon(登録商標)4HBXプレートを用いた。アフィニティ精製した抗NF−Hニワトリ抗体をUV吸光度によって定量し、100μL量をpH9.5の50mM重炭酸ナトリウムバッファ中0.7μg/mlの濃度で使用した。プレートを4℃で一晩インキュベートした翌日、Tris緩衝生理食塩水(TBS)中の5%カーネーション(Carnation)社の脱脂乳150μLで少なくとも1時間ブロッキング処理した。次に、プレートを、TBS+0.1%Tween20(TBS/Tween)で、300μL容、1サイクルあたりの浸漬時間4秒、5サイクルに設定したバイオラッド(Biorad)社のELISAプレートウォッシャーを用いて洗浄した。プレートは、1mMアジ化ナトリウムを含む100μL/ウェルのTBS/Tween中、4℃の湿潤ボックス中に保存してもよいし、即座にアッセイのために使用してもよい。アッセイのためには、50μL のELISAインキュベーションバッファ(TBS/Tween中の2%Carnation脱脂乳)を各ウェルにアプライした。次に最大50μLの血液または他のタンパク質試料を、各プレートのA列にアプライし、この材料をディッシュの下方向へ連続希釈して、1枚のプレートあたり最大12試料の分析を行えるようにした。
振とうしながら室温で1時間インキュベーションした後、プレートを上述のようにBioradのELISAプレートウォッシャーを用いて、TBS/Tween中で数回洗浄した。アフィニティ精製した検出用抗NF−Hウサギ抗体を、50μg/mLの濃度で、ELISAプレート一枚につき10mLのELISAインキュベーションバッファに加え、100μLのこの溶液を各ウェルにアプライした。振とうしながら室温で1時間インキュベーションした後、プレートを上述のようにELISAプレートウォッシャーを用いてTBS/Tween中で再度洗浄し、各ウェルを、ELISAインキュベーションバッファ中で1:2,000希釈した抗ウサギヤギ抗体のアルカリホスファターゼ共役物(Sigma)とともにインキュベートした。振とうしながら室温でさらに1時間インキュベーションした後、プレートを最終的に上述のELISAプレートウォッシャーで洗浄し、1mg/mLのp−ニトロフェニルホスフェート(Sigma)を含む100μL/ウェルの0.1Mグリシン、1mM Mg、1mM Zn、pH=10.4によって発色させた。20分から1時間発色させた後、反応を50μL/ウェルの2M NaOHで停止し、結果をテカン(Tecan)社のSpectrafluor Plus(商標)ELISAプレートリーダーによって、405nmの吸光度を用いて定量した。
動物実験:体重230〜300グラムのメスのLong−Evansラットは、ハーラン(Harlan)社(米国インディアナ州インディアナポリス所在)より入手した。すべての手術手順は、暖房を行った無菌条件にて行った。麻酔を導入するために、Nembutal(登録商標)(ペントバルビタールナトリウム)を腹腔内投与(50〜60mg/kg)した。外科用メスによって、無傷の硬膜を有するT11、T10に部分的椎弓切除損傷を与えた後、T12、T11脊髄レベルで片側切断を行った。少量の血液試料を切断部位から取得した。切開を層内で閉じ、動物を、保温インキュベータ中で、食物および
水を自由摂取として回復させた。必要に応じて膀胱から尿を絞り出し、水分を与えた。損傷を与えた動物の場合、血液試料は、2時間、8時間、16時間、24時間、2日、およびその後11日目までの毎日、尾部からの採血により採取した。典型的な結果を図2に示す。ELISAでは、損傷から3〜4日目の血清中NF−Hの強いピークが一貫して示されている。しかしながら、NF−Hは、早ければ損傷から8時間後で確実に検出され、損傷から2時間後に弱いが再現性のあるシグナルが見られることは特筆すべきである。ELISAアッセイから、損傷部位から採取した血液中の、NF−Hの一貫した著しい発現が示され、実際には、それ以降の時点における血清中に見られるよりもはるかに高いレベルであった。これらの実験は、NF−Hが、神経損傷後、迅速に血中に放出され、実験的神経系損傷後の数時間および数日にわたって、一貫して再現性よく検出されることを実証するものである。
NF−Hが損傷部位において、また損傷から数時間後に検出可能であることは特に重要である。これにより、上記の知見に基づいたアッセイを、緊急治療室におけるヒト患者の神経損傷を検出するために使用できる。MRI、X線、CAT走査などの他の手段による、重篤な神経損傷の検出には問題があった。上記の知見に基づいたアッセイは、意識のない患者においても神経損傷を迅速に検出することができ、検出されるNF−Hのレベルは、予後に対して大いなる価値を有すると思われる。
別の一組の実験では、標準化されたNew Yorkインパクタ装置を用いて、10gの重りを25mm落下させることによって脊髄損傷を与えた。擬似損傷動物には、椎弓切除を行い、上記損傷装置内に置いたが、損傷は与えなかった。実験処置を行った動物は、損傷から、24時間後、48時間後、72時間後、5日後、7日後、および6週間後に屠殺した。血液を採取し、室温で1〜2時間凝固させた後、凍結保存した。図3に示すように、脊髄挫傷を負った動物の血清試料からは強いシグナルが得られた。検出されたNF−Hの量は、24時間後には顕著であり、48〜72時間にわたって増加した。5日目にNF−Hのレベルはいくぶん下がり、7日目にはほぼバックグラウンドレベルに戻った。シグナルは驚くほど強く、標準と比べて、実験動物血清中のNF−Hレベルは、損傷から24時間後の動物における26μg/Lから、72時間後の動物における66μg/Lの範囲であった。非処置動物は、機械的損傷を受けていないものであり、典型的には上記の研究に無関係な根拠のために実験の最後に屠殺したが、検出可能なNF−Hシグナルは全く示さなかった。さらなる対照は擬似処置動物であり、該動物には実験群と同様に麻酔を行い、脊髄を露出させはしたものの、重りの落下は行わなかった。これらの動物のいずれも、このアッセイによっては有意なNF−H免疫反応性を示さなかった。
どの形態のNF−Hがこのアッセイにおいて検出されているのかを正確に知ることが有益であると考えられるので、3日前に脊髄損傷を与えたラットの血清で、ELISAアッセイにおいて強いシグナルを示したものを予め分画しておいた。血清タンパク質の画分は、硫酸アンモニウム沈殿によって得た。画分は、ELISAを用いて分析したところ、弱いシグナルが第1の画分中で得られ、第2の画分中でより強いシグナルが得られ、それ以後の画分ではシグナルは実質的にバックグラウンドレベルであった。したがって、第2の画分をSuperose(商標)カラム(ファルマシア(Pharmacia)社)でゲルろ過し、画分をもう一度ELISAアッセイを用いて分析した。NF−H免疫反応性は非常に早い段階で溶出し、50万ダルトンの範囲の分子量を示した。このことは、NF−Hシグナルが少なくとも多量体であり、おそらくはタンパク質複合体の一部であることを示している。
アッセイの変法
上述のアッセイに加えて、動物血清中のNFDPを検出するのに有用な多くの変法が可
能である。たとえば、アビジン−ビオチン共役物に基づく方法を使用することにより、ELISAアッセイの感度を大幅に向上させることができるかもしれない。他の例としては、抗体濃度を高めることや室温ではなく37℃でのインキュベーションを用いるなどの変更によって、アッセイが向上するかもしれない。NF−H血清レベルを数分で判定できる迅速な比色法または他の方法を含むアッセイの開発も想像できる。このような手法は、ヒト患者の診断において潜在的に有用である。例えば、血清および他の流体中に見られる他の種類のバイオマーカーに対して開発されてきたような、フィルタ内で行う単純な拡散および抗体捕捉手順を用いた、血清中のNF−Hを検出するキットが特に有用であるかもしれない。このキットは、本明細書中に説明した例だけでなく様々な状況において神経損傷の程度を定量するために用いることができよう。このようなマーカーを検出するアッセイは、動物研究において実験的に有用であり、ヒトにおいては診断的に有用であると予測できる。特に、脊髄損傷および外傷性脳損傷患者における神経損傷の程度をMRIまたは他の現行の画像化方法によって判定することは難しい。本発明のように容易に検出できる神経タンパク質の検出に基づいたアッセイであれば、そのような事故の犠牲者における神経損傷の程度を迅速に評価することができるであろう。本発明の方法および組成物を用いて、NF−H発現のレベルを、特定の神経損傷の程度および特定の予後と相関づけることができると予想される。
[他の実施形態]
上記の明細書は多くの細目を含んでいるが、これらは本発明の範囲を限定するものではなく、その好ましい実施形態の例として記載したものである。多くの他の変形が可能である。したがって、本発明の範囲は、例示した実施形態ではなく、添付の特許請求の範囲とそれらの法的均等物によって決定されるべきである。
様々な量の純粋なNF−Hを用いたELISAの結果を示す、本発明の原型アッセイの感度を示すグラフ。縦座標のプロットは一般的なELISAプレートの連続希釈系列を示し、最初のウェルが希釈なし(100%、右側)、2番目が50%希釈、3番目が25%希釈、のように示されている。直線は、線形で定量化可能な反応を示す。50pgの量のNF−Hを少量(50μL)の試料中で容易にかつ再現性をもって検出することができる。 実験的脊髄片側切断を受けた1匹の動物から表示の時間において採取した一組の10μLの血漿試料についてNF−H濃度を決定するために行ったELISAの結果を示すグラフ。損傷後の最初の数時間内に検出されるNF−Hの著しい増加と、3〜4日後にみられるさらに高いピークに注目のこと。 実験的脊髄挫傷後のラット血清中のNF−H免疫反応性を示すグラフ。50μLの血液試料を凝固させ、ELISAアッセイ用に血清を採取した。3〜5日目までNF−Hのレベルは上昇し、7日目までに下降してベースラインに戻る。

Claims (5)

  1. 対象における神経損傷の検出方法であって、
    (a)対象に由来する血液、血清、または血漿試料を、NF−Hと特異的に結合する抗体と接触させる工程と、
    (b)前記試料中のNF−Hの存在または量を検出する工程と、
    (c)試料中のNF−Hの存在または量を神経損傷と相関づける工程と
    を備える方法。
  2. 試料中のNF−Hの存在または量を検出する工程(b)は、イムノブロッティング、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫拡散法または免疫沈降からなる群より選択される免疫学的検定を実施することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 試料中のNF−Hの存在または量を検出する工程(b)は、ELISAを実施することを含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
  4. 前記請求項1〜3のいずれかに記載の方法により対象における神経損傷を検出するためのキットの使用方法であって、
    (a)固体基体と、
    (b)NF−Hに特異的に結合する少なくとも1つの抗体と、
    (c)少なくとも1つの抗体とNF−Hとの結合を検出するための試薬と、
    (d)対象における神経損傷を検出するためのキットの使用説明書とを含むキットの使用方法
  5. NF−Hに対する少なくとも1つの抗体の結合を検出する試薬が、発色性基質分子を含むことを特徴とする請求項に記載の使用方法
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