JP2023552755A - 頭部コンピュータ断層撮影スキャンの結果が外傷性脳損傷(tbi)に関して陰性の対象においてtbiを判定するための1種以上のバイオマーカーの使用 - Google Patents

頭部コンピュータ断層撮影スキャンの結果が外傷性脳損傷(tbi)に関して陰性の対象においてtbiを判定するための1種以上のバイオマーカーの使用 Download PDF

Info

Publication number
JP2023552755A
JP2023552755A JP2023533334A JP2023533334A JP2023552755A JP 2023552755 A JP2023552755 A JP 2023552755A JP 2023533334 A JP2023533334 A JP 2023533334A JP 2023533334 A JP2023533334 A JP 2023533334A JP 2023552755 A JP2023552755 A JP 2023552755A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
subject
antibody
sample
antibodies
tbi
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2023533334A
Other languages
English (en)
Inventor
マクイストン,ベス
ダトワイラー,ソール
チャンドラン,ラージ
マリノ,ジェイミー
ジャン,ホンウェイ
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Abbott Laboratories
Original Assignee
Abbott Laboratories
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Abbott Laboratories filed Critical Abbott Laboratories
Priority claimed from PCT/US2021/061215 external-priority patent/WO2022119841A1/en
Publication of JP2023552755A publication Critical patent/JP2023552755A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/68Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids
    • G01N33/6893Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids related to diseases not provided for elsewhere
    • G01N33/6896Neurological disorders, e.g. Alzheimer's disease
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N2333/00Assays involving biological materials from specific organisms or of a specific nature
    • G01N2333/90Enzymes; Proenzymes
    • G01N2333/914Hydrolases (3)
    • G01N2333/948Hydrolases (3) acting on peptide bonds (3.4)

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Urology & Nephrology (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Neurosurgery (AREA)
  • Neurology (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Magnetic Resonance Imaging Apparatus (AREA)
  • Apparatus For Radiation Diagnosis (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

本願では、ヒト対象等の対象から採取した試料中で、ユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、又はその組み合わせ等の少なくとも1種のバイオマーカーの値を検出することにより、対象が外傷性脳損傷(TBI)を有するか否かの判定を補助する方法が開示され、前記対象は、頭部CTスキャンを受けており、その結果がTBIに関して陰性である。

Description

本開示は、外傷性脳損傷(TBI)等の頭部の損傷を生じているか、又は生じている可能性があるか、又は生じていることが疑われる対象の診断と評価を補助する方法に関する。前記方法は、対象が頭部の損傷を生じた時点、又は生じた可能性がある時点、又は生じたことが疑われる時点から24時間以内の1時点以上で前記対象から採取した1種以上の試料中で、ユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、又はその組み合わせ等の少なくとも1種のバイオマーカーの値を検出する工程を含み、前記対象は、(臨床的に適切な時間枠内で)それと同時、その前又はその後に頭部コンピュータ断層撮影(CT)スキャンも受けており、その結果がTBIに関して陰性であり、更に前記方法は、前記試料中の1種以上のバイオマーカーの値が参照値よりも高いならば、前記対象がTBIを有する可能性の方が高いと診断する工程を含む。
米国だけでも毎年500万件を超える軽度外傷性脳損傷(TBI)が発生している。現在のところ、患者評定を助長するのに利用可能な簡単・客観的・正確な測定法は存在しない。実際に、TBI評価及び診断の多くは主観的データに基づいている。残念ながら、頭部CTやグラスゴーコーマスコア(Glascow Coma Score:GCS)等の客観的測定は、軽度TBIを評価するにはさほど包括的又は高感度ではない。更に、頭部CTは、現時点では大半の場合に軽度TBIを検出できず、高価であり、患者を不必要な放射線に曝露する。また、頭部CTが陰性でも、患者が脳震盪を起こしている疑いがなくなったという意味ではなく、外科処置等の所定の介入が不可欠ではないという意味に過ぎない。臨床医と患者は、適切なトリアージと回復を促進するようにこの状態を正確に評価するために客観的で信頼できる情報を必要とする。現在までのところ、患者評価及び管理を補助するように急性ケア状況でUCH-L1及びGFAPを使用するために利用可能なデータは限られている。
軽度TBI又は脳震盪は、客観的に検出することが非常に難しく、世界中の救急治療室で日々の課題である。脳震盪は、通常では出血等の肉眼所見を生じず、従来の脳のコンピュータ断層撮影スキャンでは異常ないが、急激な神経細胞機能障害を生じ、数日~数週間で自然に解消する。軽度TBI患者の約15%は、持続的な認知機能障害を患う。現場、救急治療室及びクリニック、スポーツ領域、並びに軍事行動(例えば、戦闘)における軽度TBI犠牲者にはアンメットニーズがある。
脳損傷の重症度の現在の評定用アルゴリズムとしては、グラスゴーコーマスケールスコア及び他の尺度が挙げられる。これらの尺度は、急性重症度に関しては十分な場合もあるが、微妙な病理には感度が不十分であり、持続的障害に繋がりかねない。GCS及び他の尺度は、損傷の種類を識別することもできず、十分であるとは思われない。例えば、臨床試験に参加して同じGCSレベルにグループ分けされた患者でも、損傷の重症度と種類が著しく不均一になる可能性がある。それに伴ってアウトカムも変動するため、不適切な分類は臨床試験の整合性を損なう。損傷の分類が改善されるならば、臨床試験におけるTBI患者の疾患重症度及び種類をより的確に見分けることができるであろう。
また、現在の脳損傷試験は、拡張版グラスゴーアウトカムスケール(Glascow Outcome Scale Extended)等のアウトカム尺度に依存しており、包括的現象を捉えるが、アウトカムの微妙な差を評定できない。このため、脳損傷治療の試験に連続して30回失敗している。
治療及び予防を試験するためには、患者が脳損傷からどの程度回復しているかを判定するための高感度のアウトカム尺度が必要である。
1態様において、本開示は、頭部の損傷を生じているか、又は生じている可能性があるか、又は生じていることが疑われるヒト対象等の対象の診断と評価を補助する方法の改善に関する。このような改善方法は、(1)実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷後約24時間以内に前記対象から取得した試料で、前記試料中のユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、又はその組み合わせを含むバイオマーカーの値を測定又は検出するためのアッセイと、(2)臨床的に適切な時間枠内で前記対象に実施される頭部コンピュータ断層撮影(CT)スキャンを、同時又は逐次実施する工程を含み、前記改善は、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、前記頭部CTスキャンがTBIに関して陰性であるならば、前記対象が外傷性脳損傷(TBI)を有する可能性の方が高いと診断する工程を含む。
更に別の態様では、(a)頭部損傷を生じている対象における値;(b)対象におけるTBIの発生;(c)対象における軽度、中等度、重度、若しくは中等度~重度等のTBIのステージ;(d)対象における意識消失;(e)MRIがTBIに関して陰性でなく陽性;(f)対象における健忘の発生(即ち、健忘の有無)又は(g)対象におけるTBIの重症度に関連するカットオフ値と前記参照値を相関させる。
別の態様において、上記改善方法は更に、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、前記頭部CTスキャンがTBIに関して陰性であるならば、前記対象をTBIについて経過観察する工程を含む。別の態様において、前記改善方法は更に、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、前記頭部CTスキャンがTBIに関して陰性であるならば、前記対象にTBIの治療を施す工程を含む。更に別の態様において、前記改善方法は更に、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、前記頭部CTスキャンがTBIに関して陰性であるならば、前記対象にTBIの治療を施した後、前記対象を経過観察する工程を含む。
上記改善方法の更に別の態様では、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷後約0~約12時間以内に、前記試料を採取することができる。例えば、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷後約5分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の約10分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の約12分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の15分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の約20分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の30分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の60分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の1.5時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の2時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の3時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の4時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の5時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の6時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の7時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の8時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の9時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の10時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の11時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の12時間以内に、前記試料を採取することができる。
1実施形態では、上記改善方法を使用し、TBIを有するとして前記対象を評定又は評価する。別の実施形態では、上記改善方法を使用し、軽度TBIを有するとして前記対象を評定又は評価する。別の実施形態では、上記改善方法を使用し、中等度TBIを有するとして前記対象を評定又は評価する。別の実施形態では、上記改善方法を使用し、重度TBIを有するとして前記対象を評定又は評価する。別の実施形態では、上記改善方法を使用し、中等度~重度TBIを有するとして前記対象を評定又は評価する。更にまた別の実施形態では、上記改善方法を使用し、TBIをもたないとして前記対象を評定又は評価する。
上記改善方法は更に、軽度、中等度、重度、又は中等度~重度TBIを有するとして評定又は評価されたヒト対象等の対象にTBI治療(例えば、外科処置、治療処置、又はその組み合わせ)を施す工程を含むことができる。当技術分野で公知であり、本願に更に記載する任意のこのような治療を使用することができる。更に、別の実施形態では、TBIの治療中の任意の対象を任意に治療クール中又は治療クール後に経過観察することもできる。あるいは、前記方法は更に、軽度、中等度、重度、又は中等度~重度TBIを有するとして評定された対象(例えば、まだ治療を受けていなくてもよい対象)を経過観察する工程を含むことができる。
上記改善方法において、前記試料は、血液試料、尿試料、脳脊髄液試料、組織試料、体液試料、唾液試料、口咽頭検体、及び鼻咽頭検体から構成される群から選択することができる。血液試料は、全血試料、血清試料、又は血漿試料を含むことができる。所定の実施形態において、前記試料は、全血試料である。所定の実施形態において、前記試料は、血漿試料である。更に他の実施形態において、前記試料は、血清試料である。更に他の実施形態において、前記試料は、唾液試料である。更にまた他の実施形態において、前記試料は、口咽頭検体である。更に他の実施形態において、前記試料は、鼻咽頭検体である。このような試料は、種々の方法で取得することができる。例えば、前記対象が身体揺さぶり、閉鎖性若しくは開放性頭部外傷をもたらす外的な機械的若しくは他の力による鈍的衝撃、1回以上の転倒、爆発若しくは爆破又は他の型の鈍力外傷に起因する頭部損傷を生じた後に、前記試料を取得することができる。あるいは、前記対象が火炎、化学物質、毒素又は化学物質と毒素の組み合わせを吸い込んだ後又はこれらに曝露された後に、前記試料を取得することができる。化学物質又は毒素の例は、カビ、アスベスト、駆除剤、殺虫剤、有機溶剤、塗料、接着剤、ガス、有機金属、乱用薬物又は1種以上のそれらの組み合わせである。更に、前記試料は、自己免疫疾患、代謝障害、脳腫瘍、低酸素症、ウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2)、真菌感染症、細菌感染症、髄膜炎、水頭症、又は任意のそれらの組み合わせに罹患している対象から取得することができる。
上記改善方法は、対象の臨床状態、対象の臨床検査値、対象が軽度、中等度、重度、又は中等度~重度TBIのいずれを生じているかの分類、対象のUCH-L1値、GFAP値及び/又はUCH-L1値とGFAP値が低値、中値又は高値のいずれであるか、並びに前記対象が頭部損傷を生じた又は生じた可能性のあるイベントのタイミングから構成される群から選択される因子に関係なく、ヒト対象等の任意の対象で実施することができる。
上記改善方法において、前記アッセイは、イムノアッセイである。所定の実施形態において、前記アッセイは、ポイントオブケアアッセイである。更に他の実施形態において、前記アッセイは、臨床化学検査である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、単分子検出アッセイである。更に他の実施形態において、前記アッセイは、イムノアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は全血である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、ポイントオブケアアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は全血である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、臨床化学検査であり、前記試料は全血である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、単分子検出アッセイであり、前記試料は全血である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、イムノアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は血清である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、ポイントオブケアアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は血清である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、臨床化学検査であり、前記試料は血清である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、単分子検出アッセイであり、前記試料は血清である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、イムノアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は血漿である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、ポイントオブケアアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は血漿である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、臨床化学検査であり、前記試料は血漿である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、単分子検出アッセイであり、前記試料は血漿である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、イムノアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は唾液である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、ポイントオブケアアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は唾液である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、臨床化学検査であり、前記試料は唾液である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、単分子検出アッセイであり、前記試料は唾液である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、イムノアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は、口咽頭検体又は鼻咽頭検体である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、ポイントオブケアアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は、口咽頭検体又は鼻咽頭検体である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、臨床化学検査であり、前記試料は、口咽頭検体又は鼻咽頭検体である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、単分子検出アッセイであり、前記試料は、口咽頭検体又は鼻咽頭検体である。
別の態様において、本開示は、頭部の損傷を生じているか、又は生じている可能性があるか、又は生じていることが疑われるヒト対象等の対象の診断と評価を補助する方法に関する。前記方法は、
a.(1)実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷後約24時間以内に前記対象から取得した試料で、前記試料中のユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、又はその組み合わせを含むバイオマーカーの値を測定又は検出するためのアッセイと、(2)臨床的に適切な時間枠内で前記対象に実施される頭部コンピュータ断層撮影(CT)スキャンを、同時又は逐次実施する工程と;
b.前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、前記頭部CTスキャンがTBIに関して陰性であるならば、前記対象が外傷性脳損傷(TBI)を有する可能性の方が高いと診断する工程を含む。
更に別の態様では、(a)頭部損傷を生じている対象における値;(b)対象におけるTBIの発生;(c)対象における軽度、中等度、重度、若しくは中等度~重度等のTBIのステージ;(d)対象における意識消失;(e)MRIがTBIに関して陰性でなく陽性;(f)対象における健忘の発生(即ち、健忘の有無)又は(g)対象におけるTBIの重症度に関連するカットオフ値と前記参照値を相関させる。
別の態様において、上記方法は更に、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、前記頭部CTスキャンがTBIに関して陰性であるならば、前記対象をTBIについて経過観察する工程を含む。別の態様において、前記方法は更に、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、前記頭部CTスキャンがTBIに関して陰性であるならば、前記対象にTBIの治療を施す工程を含む。更に別の態様において、前記方法は更に、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、前記頭部CTスキャンがTBIに関して陰性であるならば、前記対象にTBIの治療を施した後、前記対象を経過観察する工程を含む。
上記方法の更に別の態様では、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷後約0~約12時間以内に、前記試料を採取することができる。例えば、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷後約5分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の約10分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の約12分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の15分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の約20分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の30分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の60分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の1.5時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の2時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の3時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の4時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の5時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の6時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の7時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の8時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の9時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の10時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の11時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の12時間以内に、前記試料を採取することができる。
1実施形態では、上記方法を使用し、TBIを有するとして前記対象を評定又は評価する。別の実施形態では、上記方法を使用し、軽度TBIを有するとして前記対象を評定又は評価する。別の実施形態では、上記方法を使用し、中等度TBIを有するとして前記対象を評定又は評価する。別の実施形態では、上記方法を使用し、重度TBIを有するとして前記対象を評定又は評価する。別の実施形態では、上記方法を使用し、中等度~重度TBIを有するとして前記対象を評定又は評価する。更にまた別の実施形態では、上記方法を使用し、TBIをもたないとして前記対象を評定又は評価する。
上記方法は更に、軽度、中等度、重度、又は中等度~重度TBIを有するとして評定又は評価されたヒト対象等の対象にTBI治療(例えば、外科処置、治療処置、又はその組み合わせ)を施す工程を含むことができる。当技術分野で公知であり、本願に更に記載する任意のこのような治療を使用することができる。更に、別の実施形態では、TBIの治療中の任意の対象を任意に治療クール中又は治療クール後に経過観察することもできる。あるいは、前記方法は更に、軽度、中等度、重度、又は中等度~重度TBIを有するとして評定された対象(例えば、まだ治療を受けていなくてもよい対象)を経過観察する工程を含むことができる。
上記方法において、前記試料は、血液試料、尿試料、脳脊髄液試料、組織試料、体液試料、唾液試料、口咽頭検体、及び鼻咽頭検体から構成される群から選択することができる。所定の実施形態において、前記試料は、全血試料である。血液試料は、全血試料、血清試料、又は血漿試料とすることができる。所定の実施形態において、前記試料は、血漿試料である。更に他の実施形態において、前記試料は、血清試料である。更に他の実施形態において、前記試料は、唾液試料である。更にまた他の実施形態において、前記試料は、口咽頭検体である。更に他の実施形態において、前記試料は、鼻咽頭検体である。このような試料は、種々の方法で取得することができる。例えば、前記対象が身体揺さぶり、閉鎖性若しくは開放性頭部外傷をもたらす外的な機械的若しくは他の力による鈍的衝撃、1回以上の転倒、爆発若しくは爆破又は他の型の鈍力外傷に起因する頭部損傷を生じた後に、前記試料を取得することができる。あるいは、前記対象が火炎、化学物質、毒素又は化学物質と毒素の組み合わせを吸い込んだ後又はこれらに曝露された後に、前記試料を取得することができる。化学物質又は毒素の例は、カビ、アスベスト、駆除剤、殺虫剤、有機溶剤、塗料、接着剤、ガス、有機金属、乱用薬物又は1種以上のそれらの組み合わせである。更に、前記試料は、自己免疫疾患、代謝障害、脳腫瘍、低酸素症、ウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2)、真菌感染症、細菌感染症、髄膜炎、水頭症、又は任意のそれらの組み合わせに罹患している対象から取得することができる。
上記方法は、対象の臨床状態、対象の臨床検査値、対象が軽度、中等度、重度、又は中等度~重度TBIのいずれを生じているかの分類、対象のUCH-L1値、GFAP値及び/又はUCH-L1値とGFAP値が低値、中値又は高値のいずれであるか、並びに前記対象が頭部損傷を生じた又は生じた可能性のあるイベントのタイミングから構成される群から選択される因子に関係なく、ヒト対象等の任意の対象で実施することができる。
上記方法において、前記アッセイは、イムノアッセイである。所定の実施形態において、前記アッセイは、ポイントオブケアアッセイである。更に他の実施形態において、前記アッセイは、臨床化学検査である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、単分子検出アッセイである。更に他の実施形態において、前記アッセイは、イムノアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は全血である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、ポイントオブケアアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は全血である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、臨床化学検査であり、前記試料は全血である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、単分子検出アッセイであり、前記試料は全血である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、イムノアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は血清である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、ポイントオブケアアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は血清である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、臨床化学検査であり、前記試料は血清である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、単分子検出アッセイであり、前記試料は血清である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、イムノアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は血漿である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、ポイントオブケアアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は血漿である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、臨床化学検査であり、前記試料は血漿である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、単分子検出アッセイであり、前記試料は血漿である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、イムノアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は唾液である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、ポイントオブケアアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は唾液である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、臨床化学検査であり、前記試料は唾液である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、単分子検出アッセイであり、前記試料は唾液である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、イムノアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は、口咽頭検体又は鼻咽頭検体である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、ポイントオブケアアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は、口咽頭検体又は鼻咽頭検体である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、臨床化学検査であり、前記試料は、口咽頭検体又は鼻咽頭検体である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、単分子検出アッセイであり、前記試料は、口咽頭検体又は鼻咽頭検体である。
更にまた別の態様において、本開示は、頭部の損傷を生じているか又は生じている可能性のあるヒト対象等の対象の診断と評価を補助する方法の改善に関する。前記改善は、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷後約24時間以内に前記対象から取得した試料で、前記試料中のユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、又はその組み合わせを含むバイオマーカーの値を測定又は検出するためのアッセイを実施する工程を含み、前記改善は更に、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、臨床的に適切な時間枠内で前記対象に実施された頭部コンピュータ断層撮影(CT)スキャンが、TBIに関して陰性であるか、又は前記対象に頭部CTスキャンが実施されていないならば、前記対象が外傷性脳損傷(TBI)を有する可能性の方が高いと診断する工程を含む。
更に別の態様では、(a)頭部損傷を生じている対象における値;(b)対象におけるTBIの発生;(c)対象における軽度、中等度、重度、若しくは中等度~重度等のTBIのステージ;(d)対象における意識消失;(e)MRIがTBIに関して陰性でなく陽性;(f)対象における健忘の発生(即ち、健忘の有無)又は(g)対象におけるTBIの重症度に関連するカットオフ値と前記参照値を相関させる。
別の態様において、上記改善方法は更に、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、任意に、頭部CTスキャンを実施する場合に、その結果がTBIに関して陰性であるならば、前記対象をTBIについて経過観察する工程を含む。別の態様において、前記改善方法は更に、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、任意に、前記頭部CTスキャンを実施する場合に、その結果がTBIに関して陰性であるならば、前記対象にTBIの治療を施す工程を含む。更に別の態様において、前記改善方法は更に、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、任意に、前記頭部CTスキャンを実施する場合に、その結果がTBIに関して陰性であるならば、前記対象にTBIの治療を施した後、前記対象を経過観察する工程を含む。
上記改善方法の更に別の態様では、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷後約0~約12時間以内に、前記試料を採取することができる。例えば、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷後約5分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の約10分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の約12分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の15分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の約20分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の30分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の60分以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の1.5時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の2時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の3時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の4時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の5時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の6時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の7時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の8時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の9時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の10時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の11時間以内に、前記試料を採取することができる。あるいは、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の12時間以内に、前記試料を採取することができる。
1実施形態では、上記改善方法を使用し、TBIを有するとして前記対象を評定又は評価する。別の実施形態では、上記改善方法を使用し、軽度TBIを有するとして前記対象を評定又は評価する。別の実施形態では、上記改善方法を使用し、中等度TBIを有するとして前記対象を評定又は評価する。別の実施形態では、上記改善方法を使用し、重度TBIを有するとして前記対象を評定又は評価する。別の実施形態では、上記改善方法を使用し、中等度~重度TBIを有するとして前記対象を評定又は評価する。更にまた別の実施形態では、上記改善方法を使用し、TBIをもたないとして前記対象を評定又は評価する。
上記改善方法は更に、軽度、中等度、重度、又は中等度~重度TBIを有するとして評定又は評価されたヒト対象等の対象にTBI治療(例えば、外科処置、治療処置、又はその組み合わせ)を施す工程を含むことができる。当技術分野で公知であり、本願に更に記載する任意のこのような治療を使用することができる。更に、別の実施形態では、TBIの治療中の任意の対象を任意に治療クール中又は治療クール後に経過観察することもできる。あるいは、前記方法は更に、軽度、中等度、重度、又は中等度~重度TBIを有するとして評定された対象(例えば、まだ治療を受けていなくてもよい対象)を経過観察する工程を含むことができる。
上記改善方法において、前記試料は、血液試料、尿試料、脳脊髄液試料、組織試料、体液試料、唾液試料、口咽頭検体、及び鼻咽頭検体から構成される群から選択することができる。血液試料は、全血試料、血清試料、又は血漿試料とすることができる。所定の実施形態において、前記試料は、全血試料である。所定の実施形態において、前記試料は、血漿試料である。更に他の実施形態において、前記試料は、血清試料である。更に他の実施形態において、前記試料は、唾液試料である。更にまた他の実施形態において、前記試料は、口咽頭検体である。更に他の実施形態において、前記試料は、鼻咽頭検体である。このような試料は、種々の方法で取得することができる。例えば、前記対象が身体揺さぶり、閉鎖性若しくは開放性頭部外傷をもたらす外的な機械的若しくは他の力による鈍的衝撃、1回以上の転倒、爆発若しくは爆破又は他の型の鈍力外傷に起因する頭部損傷を生じた後に、前記試料を取得することができる。あるいは、前記対象が火炎、化学物質、毒素又は化学物質と毒素の組み合わせを吸い込んだ後又はこれらに曝露された後に、前記試料を取得することができる。化学物質又は毒素の例は、カビ、アスベスト、駆除剤、殺虫剤、有機溶剤、塗料、接着剤、ガス、有機金属、乱用薬物又は1種以上のそれらの組み合わせである。更に、前記試料は、自己免疫疾患、代謝障害、脳腫瘍、低酸素症、ウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2)、真菌感染症、細菌感染症、髄膜炎、水頭症、又は任意のそれらの組み合わせに罹患している対象から取得することができる。
上記改善方法は、対象の臨床状態、対象の臨床検査値、対象が軽度、中等度、重度、又は中等度~重度TBIのいずれを生じているかの分類、対象のUCH-L1値、GFAP値及び/又はUCH-L1値とGFAP値が低値、中値又は高値のいずれであるか、並びに前記対象が頭部損傷を生じた又は生じた可能性のあるイベントのタイミングから構成される群から選択される因子に関係なく、ヒト対象等の任意の対象で実施することができる。
上記改善方法において、前記アッセイは、イムノアッセイである。所定の実施形態において、前記アッセイは、ポイントオブケアアッセイである。更に他の実施形態において、前記アッセイは、臨床化学検査である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、単分子検出アッセイである。更に他の実施形態において、前記アッセイは、イムノアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は全血である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、ポイントオブケアアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は全血である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、臨床化学検査であり、前記試料は全血である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、単分子検出アッセイであり、前記試料は全血である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、イムノアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は血清である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、ポイントオブケアアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は血清である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、臨床化学検査であり、前記試料は血清である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、単分子検出アッセイであり、前記試料は血清である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、イムノアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は血漿である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、ポイントオブケアアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は血漿である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、臨床化学検査であり、前記試料は血漿である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、単分子検出アッセイであり、前記試料は血漿である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、イムノアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は唾液である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、ポイントオブケアアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は唾液である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、臨床化学検査であり、前記試料は唾液である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、単分子検出アッセイであり、前記試料は唾液である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、イムノアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は、口咽頭検体又は鼻咽頭検体である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、ポイントオブケアアッセイであり、前記対象はヒトであり、前記試料は、口咽頭検体又は鼻咽頭検体である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、臨床化学検査であり、前記試料は、口咽頭検体又は鼻咽頭検体である。更に他の実施形態において、前記アッセイは、単分子検出アッセイであり、前記試料は、口咽頭検体又は鼻咽頭検体である。
図1A~Dは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象のグラスゴーコーマスコア(GCS)重症度(即ち、GCS軽度対中等度/重度)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から12時間以内(図1A、1C)又は損傷から24.1時間以内(図1B、1D)に試料を評定した。GFAP値を図1A及び図1Bに示す。UCH-L1値を図1C及び図1Dに示す。 図1A~Dは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象のグラスゴーコーマスコア(GCS)重症度(即ち、GCS軽度対中等度/重度)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から12時間以内(図1A、1C)又は損傷から24.1時間以内(図1B、1D)に試料を評定した。GFAP値を図1A及び図1Bに示す。UCH-L1値を図1C及び図1Dに示す。 図1A~Dは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象のグラスゴーコーマスコア(GCS)重症度(即ち、GCS軽度対中等度/重度)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から12時間以内(図1A、1C)又は損傷から24.1時間以内(図1B、1D)に試料を評定した。GFAP値を図1A及び図1Bに示す。UCH-L1値を図1C及び図1Dに示す。 図1A~Dは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象のグラスゴーコーマスコア(GCS)重症度(即ち、GCS軽度対中等度/重度)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から12時間以内(図1A、1C)又は損傷から24.1時間以内(図1B、1D)に試料を評定した。GFAP値を図1A及び図1Bに示す。UCH-L1値を図1C及び図1Dに示す。 図2A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象の損傷後の意識消失(即ち、有無)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図2A、2D)、12時間以内(図2B、2E)、又は24.1時間以内(図2C、2F)に試料を評定した。GFAP値を図2A~2Cに示す。UCH-L1値を図2D~Fに示す。 図2A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象の損傷後の意識消失(即ち、有無)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図2A、2D)、12時間以内(図2B、2E)、又は24.1時間以内(図2C、2F)に試料を評定した。GFAP値を図2A~2Cに示す。UCH-L1値を図2D~Fに示す。 図2A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象の損傷後の意識消失(即ち、有無)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図2A、2D)、12時間以内(図2B、2E)、又は24.1時間以内(図2C、2F)に試料を評定した。GFAP値を図2A~2Cに示す。UCH-L1値を図2D~Fに示す。 図2A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象の損傷後の意識消失(即ち、有無)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図2A、2D)、12時間以内(図2B、2E)、又は24.1時間以内(図2C、2F)に試料を評定した。GFAP値を図2A~2Cに示す。UCH-L1値を図2D~Fに示す。 図2A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象の損傷後の意識消失(即ち、有無)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図2A、2D)、12時間以内(図2B、2E)、又は24.1時間以内(図2C、2F)に試料を評定した。GFAP値を図2A~2Cに示す。UCH-L1値を図2D~Fに示す。 図2A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象の損傷後の意識消失(即ち、有無)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図2A、2D)、12時間以内(図2B、2E)、又は24.1時間以内(図2C、2F)に試料を評定した。GFAP値を図2A~2Cに示す。UCH-L1値を図2D~Fに示す。 図3A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象のMRI結果(即ち、陽性か陰性か)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図3A、3D)、12時間以内(図3B、3E)又は24.1時間以内(図3C、3F)に試料を評定した。GFAP値を図3A~3Cに示す。UCH-L1値を図3D~Fに示す。 図3A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象のMRI結果(即ち、陽性か陰性か)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図3A、3D)、12時間以内(図3B、3E)又は24.1時間以内(図3C、3F)に試料を評定した。GFAP値を図3A~3Cに示す。UCH-L1値を図3D~Fに示す。 図3A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象のMRI結果(即ち、陽性か陰性か)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図3A、3D)、12時間以内(図3B、3E)又は24.1時間以内(図3C、3F)に試料を評定した。GFAP値を図3A~3Cに示す。UCH-L1値を図3D~Fに示す。 図3A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象のMRI結果(即ち、陽性か陰性か)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図3A、3D)、12時間以内(図3B、3E)又は24.1時間以内(図3C、3F)に試料を評定した。GFAP値を図3A~3Cに示す。UCH-L1値を図3D~Fに示す。 図3A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象のMRI結果(即ち、陽性か陰性か)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図3A、3D)、12時間以内(図3B、3E)又は24.1時間以内(図3C、3F)に試料を評定した。GFAP値を図3A~3Cに示す。UCH-L1値を図3D~Fに示す。 図3A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象のMRI結果(即ち、陽性か陰性か)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図3A、3D)、12時間以内(図3B、3E)又は24.1時間以内(図3C、3F)に試料を評定した。GFAP値を図3A~3Cに示す。UCH-L1値を図3D~Fに示す。 図4A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象の外傷後健忘(即ち、健忘の有無)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図4A、4D)、12時間以内(図4B、4E)又は24.1時間以内(図4C、4F)に試料を評定した。GFAP値を図4A~Cに示す。UCH-L1値を図4D~Fに示す。 図4A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象の外傷後健忘(即ち、健忘の有無)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図4A、4D)、12時間以内(図4B、4E)又は24.1時間以内(図4C、4F)に試料を評定した。GFAP値を図4A~Cに示す。UCH-L1値を図4D~Fに示す。 図4A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象の外傷後健忘(即ち、健忘の有無)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図4A、4D)、12時間以内(図4B、4E)又は24.1時間以内(図4C、4F)に試料を評定した。GFAP値を図4A~Cに示す。UCH-L1値を図4D~Fに示す。 図4A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象の外傷後健忘(即ち、健忘の有無)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図4A、4D)、12時間以内(図4B、4E)又は24.1時間以内(図4C、4F)に試料を評定した。GFAP値を図4A~Cに示す。UCH-L1値を図4D~Fに示す。 図4A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象の外傷後健忘(即ち、健忘の有無)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図4A、4D)、12時間以内(図4B、4E)又は24.1時間以内(図4C、4F)に試料を評定した。GFAP値を図4A~Cに示す。UCH-L1値を図4D~Fに示す。 図4A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象の外傷後健忘(即ち、健忘の有無)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図4A、4D)、12時間以内(図4B、4E)又は24.1時間以内(図4C、4F)に試料を評定した。GFAP値を図4A~Cに示す。UCH-L1値を図4D~Fに示す。
詳細な説明
本開示は、(例えば、軽度、中等度、重度又は中等度~重度TBI等の)外傷性脳損傷等の頭部の損傷を生じているか、又は生じている可能性があるか、又は生じていることが疑われるヒト対象が、任意に臨床的に適切な時間枠内で少なくとも1回の頭部コンピュータ断層撮影(CT)スキャンを受けており、その結果がTBIに関して陰性である場合に、ユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、又はその組み合わせ等のバイオマーカーを使用して前記対象の診断と評価を補助する改善方法に関する。
本願に記載する方法は、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷の約24時間以内の時点でヒト対象等の対象から採取した1種以上の試料中の1種以上のバイオマーカー値を検出する工程を含む。任意に、頭部CTスキャンを実施する場合には、同時又は任意の順序で逐次実施することができ、対象から採取した1種以上の試料中の1種以上のバイオマーカー値を検出すると同時、その前、又はその後に実施することができる。前記対象が任意に頭部CTスキャンを受けており、その結果がTBIに関して陰性である場合に、UCH-L1、GFAP、又はその組み合わせ等の1種以上のバイオマーカーの値が参照値よりも高値で検出されると、ヒト対象等の対象がTBIを有する可能性の方が高いと正確に評価又は診断し易くなる。換言するならば、所定の態様において、本願に記載する改善方法は、TBIを生じているが、1回以上の頭部CTスキャンの結果のみに基づいてTBIを生じていないと誤って診断された可能性のある対象を同定することができる。
本セクションで使用するセクション見出しと、本願の開示内容全体は、単に体系化の目的に過ぎず、限定的なものではない。
1.定義
本願中で他の定義のない限り、本願で使用する科学技術用語は、当技術分野における通常の知識を有する者に広く理解されている意味とする。矛盾する場合には、定義を含めて本願に従う。好ましい方法と材料について以下に記載するが、本発明の実施又は試験には、本願に記載するものと同様又は等価の方法及び材料を使用することができる。本願中に言及する全刊行物、特許出願、特許及び他の参考資料は、その開示内容全体を本願に援用する。本願に開示する材料、方法及び実例は、例証に過ぎず、限定的なものではない。
本願で使用する場合に「含む」、「包含する」、「有している」、「有する」、「できる」、「含有する」なる用語とその変形は、他の行為又は構造の可能性を排除しない拡張可能な暫定的語句、用語又は単語を意味する。文脈からそうでないことが明らかな場合を除き、単数形の不定冠詞、「及び」及び定冠詞は複数の言及を含む。明確に記載しているか否かに拘わらず、本開示は、本願に示す実施形態又は構成要素「を含む」、「から構成される」及び「から本質的に構成される」他の実施形態も想定する。
本願中で数値範囲を指定する場合には、範囲内の同一精度の各数値が明確に想定される。例えば、6~9の範囲では、6と9に加えて7と8の数値も想定され、6.0~7.0の範囲では、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、及び7.0の数値が明確に想定される。
「親和性成熟抗体」とは、本願では、1個以上のCDRに1箇所以上の改変を含み、その結果、改変箇所のない親抗体に比較して標的抗原に対する抗体の親和性(即ち、K、k又はk)が改善された抗体を表すために使用される。典型的な親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル又はピコモルレベルの親和性を有するであろう。バイオディスプレイ法を使用して作製されたコンビナトリアル抗体ライブラリーのスクリーニングをはじめとして、親和性成熟抗体の種々の作製方法が当技術分野で公知である。例えば、Marks et al.,BioTechnology,10:779-783(1992)は、VH及びVLドメインシャフリングによる親和性成熟について記載している。Barbas et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,91:3809-3813(1994);Schier et al.,Gene,169:147-155(1995);Yelton et al.,J.Immunol.,155:1994-2004(1995);Jackson et al.,J.Immunol.,154(7):3310-3319(1995);及びHawkins et al,J.Mol.Biol.,226:889-896(1992)には、CDR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発が記載されている。米国特許第6,914,128B1号には、選択的突然変異誘発位置及び活性増強アミノ酸残基との接触位置又は超突然変異位置における選択的突然変異が記載されている。
本願で使用する場合に「アナログアッセイ」とは、反応混合物全体(例えば、単一反応容器)において被検体により発生される総シグナル(例えば、蛍光、色等)を測定することにより、被検試料中の被検体の存在及び/又は濃度を測定するアッセイを意味する。アナログアッセイでは、ノイズをシグナルから識別できない。アナログアッセイの1例は、単一反応容器に含まれる複数のビーズ又は微粒子から発生される総シグナルを測定することにより、被検体の存在及び/又は濃度を測定するアッセイである。
本願で使用する場合に「抗体」及び「複数の抗体」とは、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体(完全又は部分ヒト化抗体)、限定されないが、鳥類(例えば、アヒル又はガチョウ)、サメ、クジラ、及び非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、マウス等)又は非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジー等)を含む哺乳動物等の動物抗体、組換え抗体、キメラ抗体、一本鎖Fv(「scFv」)、一本鎖抗体、シングルドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合により連結されたFv(「sdFv」)、及び抗イディオタイプ(「抗Id」)抗体、デュアルドメイン抗体、デュアル可変ドメイン(DVD)又はトリプル可変ドメイン(TVD)抗体(デュアル可変ドメイン免疫グロブリンとその作製方法は、Wu,C.,et al.,Nature Biotechnology,25(11):1290-1297(2007)及びPCT国際公開WO2001/058956に記載されており、各々その開示内容を本願に援用する)、並びに以上のいずれかの機能的に活性なエピトープ結合断片を意味する。抗体としては、免疫グロブリン分子と免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片、即ち、被検体結合部位を含む分子が挙げられる。免疫グロブリン分子は、任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラスとすることができる。簡略にするために、本願では、被検体に対する抗体を「抗被検体抗体」又は単に「被検体抗体」(例えば、抗UCH-L1抗体又はUCH-L1抗体)と呼ぶことが多い。
本願で使用する場合に「抗体断片」とは、抗原結合部位又は可変領域を含む無傷の抗体の一部分を意味する。前記一部分は、無傷の抗体のFc領域の重鎖定常ドメイン(即ち、抗体イディオタイプに応じてCH2、CH3、又はCH4)を含まない。抗体断片の例としては、限定されないが、Fab断片、Fab’断片、Fab’-SH断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、ダイアボディ、一本鎖Fv(scFv)分子、軽鎖可変ドメインを1個だけ含む一本鎖ポリペプチド、軽鎖可変ドメインの3個のCDRを含む一本鎖ポリペプチド、重鎖可変領域を1個だけ含む一本鎖ポリペプチド、及び重鎖可変領域の3個のCDRを含む一本鎖ポリペプチドが挙げられる。
「曲線下面積」又は「AUC」とは、ROC曲線の下の面積を意味する。ROC曲線の下のAUCは、正確性の尺度である。AUCが1であるならば、試験は完全であり、AUCが0.5であるならば、試験は意味がない。好ましいAUCとしては、少なくとも約0.700、少なくとも約0.750、少なくとも約0.800、少なくとも約0.850、少なくとも約0.900、少なくとも約0.910、少なくとも約0.920、少なくとも約0.930、少なくとも約0.940、少なくとも約0.950、少なくとも約0.960、少なくとも約0.970、少なくとも約0.980、少なくとも約0.990、又は少なくとも約0.995が挙げられる。
「ビーズ」と「粒子」は、本願では同義に使用され、実質的に球状の固相担体を意味する。ビーズ又は粒子の1例は、微粒子である。本願で使用することができる微粒子は、当技術分野で公知の任意の種類とすることができる。例えば、前記ビーズ又は粒子は、磁気ビーズ又は磁性粒子とすることができる。磁気ビーズ/粒子は、強磁性、フェリ磁性、常磁性、超常磁性又は磁性流体とすることができる。典型的な強磁性材料としては、Fe、Co、Ni、Gd、Dy、CrO、MnAs、MnBi、EuO、及びNiO/Feが挙げられる。フェリ磁性材料の例としては、NiFe、CoFe、Fe(又はFeO・Fe)が挙げられる。ビーズは、磁性の固体コア部分を有することができ、その周囲に1層以上の非磁性層が配置されている。あるいは、磁性部分を非磁性コアの周囲の層とすることもできる。微粒子は、本願に記載する方法で機能する任意の寸法とすることができ、例えば、約0.75~約5nm、又は約1~約5nm、又は約1~約3nmとすることができる。
「結合タンパク質」とは、本発明では、例えば、ポリペプチド、抗原、化合物若しくは他の分子、又は任意種類の基質等の結合パートナーと結合して複合体を形成する単量体若しくは多量体タンパク質を表すために使用される。結合タンパク質は、結合パートナーと特異的に結合する。結合タンパク質としては、抗体とその抗原結合断片に加え、当技術分野で公知であり、以下に記載するような他の種々の形態とその誘導体、及び抗原分子若しくは抗原分子上の特定部位(エピトープ)と結合する1個以上の抗原結合ドメインを含む他の分子が挙げられる。したがって、結合タンパク質としては、限定されないが、抗体、四量体免疫グロブリン、IgG分子、IgG1分子、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ヒト化抗体、親和性成熟抗体、及び抗原結合能を維持するいずれかのこのような抗体の断片が挙げられる。
「二重特異性抗体」とは、本願では、クアドローマ技術(Milstein et al.,Nature,305(5934):537-540(1983)参照)、2種の異なるモノクローナル抗体の化学的共役(Staerz et al.,Nature,314(6012):628-631(1985)参照)、又はFc領域に突然変異を導入するノブ・イントゥ・ホール法(knob-into-hole)若しくは同様のアプローチ(Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90(14):6444-6448(1993)参照)により作製され、複数の異なる免疫グロブリン種を生じ、そのうちの1種のみが機能的な二重特異性抗体となるような全長抗体を表すために使用される。二重特異性抗体は、その2本の結合アームの一方においてある抗原(又はエピトープ)と結合し(第1のHC/LC対)、その第2のアームにおいて別の抗原(又はエピトープ)と結合する(別のHC/LC対)。この定義によると、二重特異性抗体は、(特異性とCDR配列の両方において)異なる2本の抗原結合アームを有しており、それらが結合する各抗原に対して一価である。
「CDR」とは、本願では、抗体可変配列内の「相補性決定領域」を表すために使用される。重鎖と軽鎖の可変領域の各々に3個のCDRが存在する。可変領域の各々について、これらの領域は、重鎖又は軽鎖のN末端から順に「CDR1」、「CDR2」、及び「CDR3」と呼ばれる。本願で使用する場合に「CDRセット」なる用語は、抗原と結合する単一の可変領域に存在する3個1組のCDRを意味する。したがって、抗原結合部位は、重鎖及び軽鎖可変領域の各々からのCDRセットを含む6個のCDRを含むことができる。1個のCDR(例えば、CDR1、CDR2、又はCDR3)を含むポリペプチドを「分子認識単位」と呼ぶ場合もある。抗原と抗体の複合体の結晶構造解析の結果、CDRのアミノ酸残基は、結合した抗原と広い抗原接触部を形成し、重鎖CDR3との抗原接触部が最も広いことが立証された。したがって、分子認識単位が、主に抗原結合部位の特異性を担っていると思われる。一般に、CDR残基は、抗原結合に作用するのに直接的且つ最も実質的に関与する。
これらのCDRの厳密な境界は種々のシステムに従って種々に定義されている。Kabat(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987)及び(1991))により記載されているシステムは、抗体のあらゆる可変領域に適用可能な明確な残基ナンバリングシステムを提供するのみならず、3個のCDRを定義する厳密な残基境界も提供する。これらのCDRを「Kabat CDR」と呼ぶ場合がある。Chothiaら(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.,196:901-917(1987);及びChothia et al.,Nature,342:877-883(1989))は、Kabat CDR内の所定のサブ部分が、アミノ酸配列レベルでは多様性が大きいにも拘らず、ほぼ同一のペプチド主鎖構造をとることを見出した。これらのサブ部分は、「L1」、「L2」、及び「L3」、又は「H1」、「H2」、及び「H3」と呼ばれ、「L」及び「H」は、夫々軽鎖領域と重鎖領域を表す。これらの領域を「Chothia CDR」と呼ぶ場合もあり、その境界は、Kabat CDRとオーバーラップする。Kabat CDRとオーバーラップするCDRを定義する他の境界は、Padlan,FASEB J.,9:133-139(1995)と、MacCallum,J.Mol.Biol.,262(5):732-745(1996)に記載されている。本願に記載するシステムの1種に厳密に従わないかもしれないが、Kabat CDRとオーバーラップする更に他のCDR境界定義もあり、特定の残基若しくは残基群又はCDR全体でさえも抗原結合に有意に影響を与えないという予想又は実験結果に鑑み、短縮又は延長してもよい。本願で使用する方法は、これらのシステムのいずれに従って定義されたCDRも利用することができるが、所定の実施形態は、Kabat又はChothiaに定義されるCDRを使用する。
「臨床的に適切な時間枠」とは、慎重且つ賢明な医療従事者(例えば、医師、看護師、パラメディック等)が1種以上のバイオマーカー試験の結果を頭部CTスキャン等の画像法に関連付けられると妥当に判断するのに要する時間枠(例えば、秒、分、又は時間)、又は監督団体(例えば、世界保健機関(WHO)等の標準制定機関、医師審査会、FDA、EMEA等の規制承認当局等)により制定されたガイドラインに従う時間枠を意味する。
「コンポーネント」、「複数のコンポーネント」、又は「少なくとも1種のコンポーネント」とは、一般に、本願に記載する方法及び当技術分野で公知の他の方法に従い、患者尿、全血、血清又は血漿試料等の被検試料のアッセイ用キットに含むことができる捕捉抗体、検出抗体又はコンジュゲート、キャリブレーター、対照、感度パネル、容器、緩衝液、希釈剤、塩、酵素、酵素の補因子、検出試薬、前処理試薬/溶液、(例えば、溶液としての)基質、停止溶液等を意味する。一部のコンポーネントは溶液とすることができ、又はアッセイで使用時に再構成するように凍結乾燥することができる。
本願で使用する場合に「~に相関」とは、~に比較することを意味する。
本願で使用する場合に「CTスキャン」とは、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンを意味する。CTスキャンは、種々の角度から撮影した一連のX線画像を集合し、コンピュータ処理を使用して体内の骨、血管及び軟組織の断面画像又はスライスを作成する。CTスキャンは、X線CT、陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)、コンピュータ体軸断層撮影(CATスキャン)、又はコンピュータ支援断層撮影を使用することができる。CTスキャンは、コンベンショナルCTスキャンでもよいし、スパイラル/ヘリカルCTスキャンでもよい。コンベンショナルCTスキャンでは、例えば、腹部の最上部から骨盤に向かって、スライス毎にスキャンし、スライス後毎にスキャンが停止し、次のスライスに移動する。コンベンショナルCTスキャンでは、移動によるアーチファクトを避けるために患者は息を止める必要がある。スパイラル/ヘリカルCTスキャンは螺旋状に撮影される連続スキャンであり、著しく迅速な方法であり、スキャン画像は連続的である。
頭部の損傷を生じているか、又は生じている可能性があるか、又は生じていることが疑われる対象から撮影された画像に頭蓋内病変が認められないとき、頭部CTスキャンは、TBIに関して「陰性」である。更に明確に説明すると、病変が検出又は確認されないとき、対象の頭部CTスキャンはTBIに関して「陰性」であるが、頭部CTが陰性でも、対象がまだ(例えば、TBIの)症状を患っている場合がある。全ての損傷又は病変を頭部CTにより可視化することはできないので、大半の対象は、頭部CTでTBIに関して陰性になるであろう。したがって、本願に記載する方法及びアッセイは、頭部CTが陰性であるが、TBIを有する可能性がある対象の評定又は判定を提供するために使用することができる。
「アッセイにより測定される」とは、本願では、任意の適切なアッセイによる参照値の測定を表すために使用される。参照値の測定は、所定の実施形態では、対象からの試料に適用しようとするアッセイと同一種のアッセイにより(例えば、イムノアッセイ、臨床化学検査、単分子検出アッセイ、タンパク質免疫沈降法、免疫電気泳動法、化学分析、SDS-PAGEとウェスタンブロット分析若しくはタンパク質免疫染色法、電気泳動分析、タンパク質アッセイ、競合結合アッセイ、機能的タンパク質アッセイ、又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)や液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)等のクロマトグラフィー若しくはスペクトロメトリー法により)実施することができる。参照値の測定は、所定の実施形態では、対象からの試料に適用しようとするアッセイと同一種のアッセイにより同一のアッセイ条件下で実施することができる。本願中で言及するように、本開示は、(例えば、種々の時点の参照値を比較することにより計算される)典型的な参照値を提供する。本開示により提供される記載に基づき、他のアッセイのアッセイ特異的参照値を得るように本願の開示を他のアッセイに適応させることは、当技術分野における通常の知識を有する者が十分になし得る範囲内である。例えば、頭部の損傷を生じていることが分かっているヒト対象から取得した試料(より特定的には、(i)軽度TBI、及び/又は(ii)中等度、重度、若しくは中等度~重度TBIを生じていることが分かっているヒト対象から取得した試料)と、頭部の損傷を生じていないことが分かっているヒト対象から取得した試料を含む1組のトレーニング試料を使用し、アッセイ特異的参照値を得ることができる。当然のことながら、「アッセイにより測定され」、指定レベルの「感度」及び/又は「特異度」を有する参照値とは、本願では、前記参照値を本発明の方法で採用するときに指定感度及び/又は特異度を提供するように決定された参照値を表すために使用される。例えば、複数の異なる可能な参照値を使用してアッセイデータの繰り返し統計分析により、本発明の方法で所定の参照値に関連する感度と特異度を決定することは、当技術分野における通常の知識を有する者が十分になし得る範囲内である。
実際に、外傷性脳損傷を有する対象と外傷性脳損傷をもたない対象、又は軽度外傷性脳損傷を有する対象と中等度、重度、若しくは中等度~重度外傷性脳損傷を有する対象を識別する際に、当業者は、カットオフ値の上昇が感度と特異度に及ぼす影響を比較考量するであろう。カットオフ値の高低は、感度及び特異度と、他の標準統計尺度に明確且つ予想可能な影響を及ぼすであろう。カットオフ値を上げると、特異度は改善されるが、感度(疾患の試験結果が陽性の対象の割合)は低下する可能性があることはよく知られている。他方、カットオフ値を下げると、感度は改善されるが、特異度(疾患の試験結果が陰性の対象の割合)は低下するであろう。それに伴い、外傷性脳損傷の検出結果又は軽度に対する中等度、重度、若しくは中等度~重度外傷性脳損傷の判定結果がどうなるかは、当業者に容易に予想されよう。対象が外傷性脳損傷を有するか否か、又は軽度に対して中等度、重度、若しくは中等度~重度外傷性脳損傷を有するかを識別する際に、カットオフ値が高いほど、外傷性脳損傷、軽度外傷性脳損傷、中等度外傷性脳損傷、重度外傷性脳損傷又は中等度~重度外傷性脳損傷を有する対象から真陰性(即ち、外傷性脳損傷をもたない対象、軽度外傷性脳損傷をもたない対象、中等度外傷性脳損傷をもたない対象、重度外傷性脳損傷をもたない対象、又は中等度~重度外傷性脳損傷をもたない対象)が識別されるので、特異度は改善する。しかし、それと同時に、カットオフ値を上げると、陽性として同定される対象の合計数と、真陽性数が減少するので、感度は低下する。逆に、カットオフ値が低いほど、外傷性脳損傷、軽度外傷性脳損傷、中等度外傷性脳損傷、重度外傷性脳損傷又は中等度~重度外傷性脳損傷をもたない対象から真陽性(即ち、外傷性脳損傷を有する対象、軽度外傷性脳損傷を有する対象、中等度外傷性脳損傷を有する対象、重度外傷性脳損傷を有する対象又は中等度~重度外傷性脳損傷を有する対象)が識別されるので、感度は改善する。しかし、それと同時に、カットオフ値を下げると、陽性として同定される対象の合計数と、偽陽性数が増加するので、特異度は低下する。
一般に、感度値が高いと、当業者は、疾患又は病態(例えば、外傷性脳損傷、軽度外傷性脳損傷、中等度外傷性脳損傷、重度外傷性脳損傷又は中等度~重度外傷性脳損傷)を除外診断し易く、特異度値が高いと、当業者は、疾患又は病態を確定診断し易い。当業者が疾患を除外診断したいか又は確定診断したいかは、エラーの種類毎に患者の帰結がどのようになるかに依存する。したがって、数値がどのように選択されたかという基本的な情報が完全に開示されない限り、試験カットオフ値を誘導するために利用される厳密なバランスを認識又は予想することはできない。感度と特異度及び他の因子のバランスは、ケースバイケースで異なるであろう。このため、場合によっては、医師又は医療従事者が選択できるような代替カットオフ(例えば、参照)値を提供することが好ましい。
本願で使用する抗体の「誘導体」とは、真の抗体又は親抗体に比較してそのアミノ酸配列に1箇所以上の修飾を有しており、改変ドメイン構造を示す抗体を意味することができる。誘導体は、天然抗体に認められる典型的なドメイン構造と、標的(抗原)と特異的に結合することが可能なアミノ酸配列をとることができる。抗体誘導体の典型例は、他のポリペプチドと結合させた抗体、再配置された抗体ドメイン、又は抗体の断片である。誘導体は更に、少なくとも1種の他の化合物、例えば、タンパク質ドメインを含むことができ、前記タンパク質ドメインは、共有又は非共有結合により連結されている。前記連結は、当技術分野で公知の方法に従う遺伝子融合に基づくことができる。抗体を含む融合タンパク質に存在する付加ドメインは、フレキシブルリンカーにより連結することが好ましく、ペプチドリンカーが有利であり、前記ペプチドリンカーは、付加タンパク質ドメインのC末端と抗体のN末端の間、又は抗体のC末端と付加タンパク質ドメインのN末端の間の距離に対応するために十分な長さのペプチド結合した複数の親水性アミノ酸を含む。抗体は、生物学的活性や、例えば、固相担体、生体活性物質(例えば、サイトカイン又は成長ホルモン)、化学物質、ペプチド、タンパク質、若しくは薬物との選択的結合に適した構造を有するエフェクター分子と連結することができる。
本願で使用する場合に「デジタルアッセイ」とは、(例えば、試料中の被検体の存在及び/又は濃度を検出するために)被検体を捕捉し、被検体の分子を分離・解析するアッセイを意味する。デジタルアッセイでは、ノイズがシグナルから分離される。デジタルアッセイでは、結果が1又は0の数値に割り当てられる。デジタルアッセイの例としては、(オーバーラップしてもよいが、相互に排他的ではない)以下のアッセイ、即ち、単分子検出アッセイ、ナノウェルアッセイ、単分子酵素免疫測定法、直接捕捉計数アッセイ等の1種以上が挙げられる。
「乱用薬物」とは、本願では、(例えば、気晴らし及び/又は向精神作用等の)医療以外の理由で摂取される1種以上の(薬物等の)付加的物質を表すために使用される。このような乱用薬物の過剰な耽溺、使用又は依存を「物質乱用」と言うことが多い。乱用薬物の例としては、アルコール、バルビツール酸系薬物、ベンゾジアゼピン、大麻、コカイン、幻覚剤(例えば、ケタミン、メスカリン(ペヨーテ)、PCP、サイロシビン、DMT及び/又はLSD)、メタカロン、オピオイド、アンフェタミン(メタンフェタミンを含む)、アナボリックステロイド、吸入剤(即ち、例えば、亜硝酸塩、スプレー塗料、クリーニング液、マーカー、接着剤等の向精神性を有する揮発性物質を含有する物質)及びその組み合わせが挙げられる。
「デュアル特異性抗体」とは、本願では、その2本の結合アームの各々において2種の異なる抗原(又はエピトープ)と結合する(1対のHC/LC)ことが可能な全長抗体を表すために使用される(PCT公開WO02/02773参照)。したがって、デュアル特異性結合タンパク質は、同一の特異性と同一のCDR配列をもつ2本の同一の抗原結合アームを有しており、結合する各抗原に対して二価である。
「デュアル可変ドメイン」とは、本願では、二価(2個の抗原結合部位)、四価(4個の抗原結合部位)、又は多価結合タンパク質のいずれでもよい結合タンパク質上の2個以上の抗原結合部位を表すために使用される。DVDは、単一特異的、即ち、1個の抗原(又は1個のエピトープ)と結合することが可能であってもよいし、多重特異的、即ち、2個以上の抗原(即ち、同一標的抗原分子の2個以上のエピトープ又は異なる標的抗原の2個以上のエピトープ)と結合することが可能であってもよい。好ましいDVD結合タンパク質は、2本の重鎖DVDポリペプチドと2本の軽鎖DVDポリペプチドを含み、「DVD免疫グロブリン」又は「DVD-Ig」と呼ばれる。したがって、このようなDVD-Ig結合タンパク質は、四量体であり、IgG分子と同様であるが、IgG分子よりも多くの抗原結合部位を提供する。即ち、四量体DVD-Ig分子の各半分は、IgG分子の半分と同様であり、重鎖DVDポリペプチドと軽鎖DVDポリペプチドを含むが、IgG分子の1対の重鎖及び軽鎖が単一の抗原結合ドメインを提供するのに対して、DVD-Igの1対の重鎖及び軽鎖は、2個以上の抗原結合部位を提供する。
DVD-Ig結合タンパク質の各抗原結合部位は、ドナー(「親」)モノクローナル抗体に由来することができ、したがって、重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、抗原結合部位1個当たり合計6個のCDRが抗原結合に関与する。したがって、2個の異なるエピトープ(即ち、2個の異なる抗原分子の2個の異なるエピトープ又は同一抗原分子の2個の異なるエピトープ)と結合するDVD-Ig結合タンパク質は、第1の親モノクローナル抗体に由来する抗原結合部位と、第2の親モノクローナル抗体に由来する抗原結合部位を含む。
DVD-Ig結合分子のデザイン、発現及び特性決定については、PCT公開第WO2007/024715号、米国特許第7,612,181号、及びWu et al.,Nature Biotech.,25:1290-1297(2007)に記載されている。このようなDVD-Ig分子の好ましい1例は、構造式VD1-(X1)n-VD2-C-(X2)n(式中、VD1は第1の重鎖可変ドメインであり、VD2は第2の重鎖可変ドメインであり、Cは重鎖定常ドメインであり、X1はリンカーであり、但し、CH1以外のものであり、X2はFc領域であり、nは0又は1であるが、1が好ましい)を含む重鎖と、構造式VD1-(X1)n-VD2-C-(X2)n(式中、VD1は第1の軽鎖可変ドメインであり、VD2は第2の軽鎖可変ドメインであり、Cは軽鎖定常ドメインであり、X1はリンカーであり、但し、CH1以外のものであり、X2はFc領域を含まず、nは0又は1であるが、1が好ましい)を含む軽鎖を含む。このようなDVD-Igは、2本のこのような重鎖と2本のこのような軽鎖を含むことができ、各鎖は、可変領域間に定常領域を介さずにタンデムに連結された可変ドメインを含み、重鎖と軽鎖は会合してタンデムな機能的抗原結合部位を形成し、1対の重鎖及び軽鎖は、別の対の重鎖及び軽鎖と会合し、4個の機能的抗原結合部位を有する四量体結合タンパク質を形成することができる。別の例において、DVD-Ig分子は、可変ドメイン間に定常領域を介さずにタンデムに連結された3個の可変ドメイン(VD1、VD2、VD3)を各々含む重鎖及び軽鎖を含むことができ、1対の重鎖及び軽鎖は会合して3個の抗原結合部位を形成することができ、1対の重鎖及び軽鎖は別の対の重鎖及び軽鎖と会合して6個の抗原結合部位を有する四量体結合タンパク質を形成することができる。
好ましい1実施形態において、DVD-Ig結合タンパク質は、その親モノクローナル抗体の結合相手と同一の標的分子と結合するのみならず、その親モノクローナル抗体の1種以上が有する1種以上の望ましい特性も有する。このような付加特性は、親モノクローナル抗体の1種以上の抗体パラメーターであることが好ましい。その親モノクローナル抗体の1種以上に由来するDVD-Ig結合タンパク質に付与することができる抗体パラメーターとしては、限定されないが、抗原特異性、抗原親和性、力価、生物学的機能、エピトープ認識、タンパク質安定性、タンパク質可溶性、産生効率、免疫原性、薬物動態、生体利用性、組織交差反応性、及びオルソロガスな抗原結合が挙げられる。
DVD-Ig結合タンパク質は、UCH-L1の少なくとも1個のエピトープと結合する。DVD-Ig結合タンパク質の非限定的な例としては、UCH-L1の1個以上のエピトープと結合するDVD-Ig結合タンパク質、ヒトUCH-L1のエピトープと別の生物種(例えば、マウス)のUCH-L1のエピトープとに結合するDVD-Ig結合タンパク質、及びヒトUCH-L1のエピトープと別の標的分子のエピトープとに結合するDVD-Ig結合タンパク質が挙げられる。
本願で使用する場合に「ダイナミックレンジ」とは、アッセイ読み出し値が被分析試料中の標的分子又は被検体の量に比例する範囲を意味する。
「エピトープ」、又は「複数のエピトープ」、又は「着目エピトープ」とは、認識され、その特異的結合パートナー上の相補的部位と結合することができる任意の分子上の部位を意味する。分子と特異的結合パートナーは、特異的結合対を形成する。例えば、エピトープは、ポリペプチド、タンパク質、ハプテン、(限定されないが、糖脂質、糖タンパク質又はリポ多糖等の)糖鎖抗原、又は多糖上に存在することができる。その特異的結合パートナーは、限定されないが、抗体とすることができる。
本願で使用する場合に「断片抗原結合断片」又は「Fab断片」とは、抗原と結合し、1個の抗原結合部位と、1本の完全な軽鎖と、1本の重鎖の一部を含む抗体の断片を意味する。Fabは、VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン及びCH1ドメインから構成される一価断片である。Fabは、重鎖と軽鎖の各々の1個の定常ドメインと1個の可変ドメインから構成される。可変ドメインは、単量体のアミノ末端に1組の相補性決定領域を含むパラトープ(抗原結合部位)を含む。したがって、Y字の各アームは、抗原上のエピトープと結合する。Fab断片は、例えば、免疫グロブリン単量体を切断して2個のFab断片と1個のFc断片にするために使用することができる酵素パパインを使用して当技術分野で記載されているように作製することもできるし、組換え手段により作製することもできる。
本願で使用する場合に「F(ab’)断片」とは、ヒンジ領域の一部を無傷のままにしながらFc領域の大半を除去するように全長IgG抗体のペプシン消化により作製された抗体を意味する。F(ab’)断片は、ジスルフィド結合により相互に連結された2個の抗原結合F(ab)部分を有するため、二価であり、約110kDaの分子量を有する。二価抗体断片(F(ab’)断片)は、全長IgG分子よりも短く、組織に浸透し易いため、免疫組織化学においてより良好な抗原認識を助長する。F(ab’)断片を使用すると、生細胞上のFc受容体又はプロテインA/Gとの非特異的結合も避けられる。F(ab’)断片は抗原と結合し、浸透することができる。
本願で使用する場合に「フレームワーク」(FR)又は「フレームワーク配列」とは、可変領域からCDRを除いた残りの配列を意味することができる。CDR配列の厳密な定義は種々のシステム(例えば、上記参照)により決定することができるので、フレームワーク配列の意味も、それに応じて種々に解釈される。6個のCDR(軽鎖のCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3と、重鎖のCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3)は更に、軽鎖及び重鎖上のフレームワーク領域を各鎖上の4個のサブ領域(FR1、FR2、FR3、及びFR4)に分割し、CDR1はFR1とFR2の間に配置され、CDR2はFR2とFR3の間に配置され、CDR3はFR3とFR4の間に配置される。特定のサブ領域をFR1、FR2、FR3、又はFR4として指定しない限り、それ以外で言及されるフレームワーク領域は、1本の天然免疫グロブリン鎖の可変領域内のFR全体を表す。本願で使用する場合、FRは、4個のサブ領域の1個を表し、FRsは、フレームワーク領域を構成する4個のサブ領域の2個以上を表す。
当技術分野で公知の技術を使用して非ヒト抗体をヒト化するために重鎖及び軽鎖「アクセプター」フレームワーク配列(又は単に「アクセプター」配列)として使用することができるヒト重鎖及び軽鎖FR配列は、当技術分野で公知である。1実施形態において、ヒト重鎖及び軽鎖アクセプター配列は、V-base(ハイパーテキストトランスファープロトコル://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)等の公共データベース又は国際ImMunoGeneTics(R)(IMGT(R))情報システム(ハイパーテキストトランスファープロトコル://imgt.cines.fr/texts/IMGTレパートリー/LocusGenes/)にリストされているフレームワーク配列から選択される。
本願で使用する場合に「機能的抗原結合部位」とは、標的抗原と結合することが可能な結合タンパク質(例えば、抗体)上の部位を意味することができる。抗原結合部位の抗原結合親和性は、親結合タンパク質(例えば、抗原結合部位が由来する親抗体)ほど強くなくてもよいが、抗原との結合能は、タンパク質(例えば、抗原と結合する抗体)を評価する方法として知られている種々の方法のいずれか1種を使用して測定可能でなければならない。更に、多価タンパク質(例えば、多価抗体)の抗原結合部位の抗原結合親和性は、本願では、定量可能な程度に同一である必要はない。
「GFAP」とは、本願では、グリア線維性酸性タンパク質を表すために使用される。GFAPは、ヒトにおいてGFAP遺伝子によりコードされ、(例えば、他の生物種で組換え手段により)作製することができるタンパク質である。
「GFAP状態」とは、(GFAPの単回測定等による)ある時点におけるGFAPの値若しくは量、(GFAP量の増減を確認するために対象で実施される反復試験等による)経過観察に関連するGFAPの値若しくは量、(一次性脳損傷及び/又は二次性脳損傷のいずれかに関係なく)外傷性脳損傷の治療に関連するGFAPの値若しくは量又はその組み合わせを意味することができる。
本願で使用する場合に「グラスゴーコーマスケール」又は「GCS」とは、脳損傷を生じている患者における意識レベルの障害を評定するための実用的方法を提供する(例えば、1974年にGraham Teasdale and Bryan Jennett,Lancet 1974;2:81-4により記載された)15点満点のスケールを意味する。この試験は、最良運動反応、言語反応及び開眼反応を以下の点数で測定する。I.最良運動反応(6点-2部分要求に従う;5点-首への刺激に対して鎖骨の上に手を動かす;4点-急に肘を曲げるが、目立った異常は示さない;3点-肘を曲げ、明白に目立った異常を示す;2点-肘を伸ばす;1点-腕/脚の運動なし、妨害因子なし;NT-麻痺又は他の制限因子);II.言語反応(5点-名前、場所及び日付を正しく言える;4点-見当識を失っているが、会話は成り立つ;3点-聞き取れるシングルワード;2点-呻き/唸り声のみ;1点-聞こえる反応なし、妨害因子なし;NT-会話を妨害する因子);及びIII.開眼(4-刺激前に開眼;3点-話しかけ又は大声の呼びかけ後;2点-指先刺激後;1点-全く開眼せず、妨害因子なし;NT-局所因子による閉眼)。最終的なスコアは、I+II+IIIの点数を加算することにより決定される。GCSスコアが13~15であるならば、対象は軽度TBIを有するとみなされる。GCSスコアが9~12であるならば、対象は中等度TBIを有するとみなされる。GCSスコアが8以下、一般的に3~8であるならば、対象は重度TBIを有するとみなされる。
本願で使用する場合に「グラスゴーアウトカムスケール」とは、患者状態を死亡、植物状態、重度障害、中等度障害又は回復良好の5つのカテゴリーの1つに等級付けする機能的アウトカムのグローバルスケールを意味する。「拡張版グラスゴーアウトカムスケール」又は「GOSE」は、本願では同義に使用し、表1に示すように重度障害、中等度障害及び回復良好のカテゴリーを下位と上位のカテゴリーに細分することにより8つのカテゴリーのより詳細な分類を提供する。
Figure 2023552755000002
「ヒト化抗体」とは、本願では、非ヒト生物種(例えば、マウス)に由来する重鎖及び軽鎖可変領域配列を含むが、「ヒト様」となるように、即ち、ヒト生殖細胞系列可変配列とより類似するように、VH及び/又はVL配列の少なくとも一部を改変させた抗体を表すために使用される。「ヒト化抗体」は、着目抗原と免疫特異的に結合し、実質的にヒト抗体のアミノ酸配列を有するフレームワーク(FR)領域と、実質的に非ヒト抗体のアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を含む抗体又はその変異体、誘導体、アナログ、若しくは断片である。CDRに関して本願で使用する「実質的に」なる用語は、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列に少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%一致するアミノ酸配列を有するCDRを意味する。ヒト化抗体は、少なくとも1個、一般的には2個の可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)、FabC、Fv)の実質的に全部を含み、CDR領域の全部又は実質的に全部が、非ヒト免疫グロブリン(即ち、ドナー抗体)のCDR領域に対応し、フレームワーク領域の全部又は実質的に全部が、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のフレームワーク領域である。1実施形態において、ヒト化抗体は更に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、一般的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。所定の実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖と、重鎖の少なくとも可変ドメインを含む。前記抗体は更に、重鎖のCH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、CH3領域、及びCH4領域を含むことができる。所定の実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖のみを含む。所定の実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト化重鎖のみを含む。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖のヒト化可変ドメイン及び/又はヒト化重鎖のみを含む。
ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含む任意の免疫グロブリンクラスと、限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む任意のアイソタイプから選択することができる。ヒト化抗体は、2種類以上のクラス又はアイソタイプに由来する配列を含むことができ、当技術分野で周知の技術を使用して所望のエフェクター機能を最適化させるように特定の定常ドメインを選択することができる。
ヒト化抗体のフレームワーク領域とCDRは、親配列と厳密に対応する必要はなく、例えば、その部位のCDR又はフレームワーク残基がドナー抗体又はコンセンサスフレームワークのいずれとも対応しないように、少なくとも1アミノ酸残基の置換、挿入及び/又は欠失により、ドナー抗体CDR又はコンセンサスフレームワークに突然変異を誘発してもよい。しかし、好ましい実施形態において、このような突然変異は、広範囲にならない。通常では、ヒト化抗体残基の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%が親FR及びCDR配列の残基と対応するであろう。本願で使用する場合に「コンセンサスフレームワーク」なる用語は、コンセンサス免疫グロブリン配列におけるフレームワーク領域を意味する。本願で使用する場合に「コンセンサス免疫グロブリン配列」なる用語は、同族免疫グロブリン配列のファミリーに最高頻度で存在するアミノ酸(又はヌクレオチド)から形成される配列を意味する(例えば、Winnaker,From Genes to Clones(Verlagsgesellschaft,Weinheim,1987)参照)。したがって、「コンセンサス免疫グロブリン配列」は、「コンセンサスフレームワーク領域」及び/又は「コンセンサスCDR」を含むことができる。免疫グロブリンのファミリーにおいて、コンセンサス配列中の各位置は、前記ファミリーにおけるその位置に最高頻度で存在するアミノ酸により占められる。2個のアミノ酸が同等の頻度で存在する場合には、どちらがコンセンサス配列に含まれていてもよい。
2個以上のポリペプチド又はポリヌクレオチド配列に関して本願で使用する場合に「一致する」又は「一致度」とは、これらの配列が指定領域に渡って同一である残基を指定百分率で有することを意味することができる。前記百分率は、2つの配列を最適に整列させ、2つの配列を指定領域で比較し、同一残基が両方の配列に出現する位置数を調べて一致位置数を求め、一致位置数を指定領域内の合計位置数で除し、結果に100を乗じて配列一致度百分率を得ることにより計算することができる。2つの配列の長さが異なる場合、又は整列させたときに一端以上がずれ、比較する指定領域に片方の配列しか含まれない場合には、この片方の配列の残基を計算の分母に含めるが、分子には含めない。
「頭部の損傷」又は「頭部損傷」は、本願では同義に使用し、頭皮、頭蓋又は脳の任意の外傷を意味する。このような損傷は、単に頭蓋の小さなこぶの場合もあるし、重度脳損傷の場合もある。このような損傷としては、脳の一次性損傷及び/又は脳の二次性損傷が挙げられる。一次性脳損傷は、初期受傷時に生じ、脳の物理的構造の変位に起因する。より具体的には、一次性脳損傷は、外傷イベント中に生じて周囲の脳組織の剪断と圧縮をもたらす実質(組織、血管)の物理的損傷である。二次性脳損傷は、一次性損傷後に生じ、一連の細胞プロセスを伴う場合がある。より具体的には、二次性脳損傷とは、一次性脳損傷後一定期間(数時間~数日間まで)をかけて徐々に発現する変化を意味する。これは、脳内の細胞変化、化学的変化、組織変化、又は血管変化のカスケード全体を含み、脳組織の更なる破壊に繋がる。
頭部の損傷は、閉鎖性でも開放性(穿通性)でもよい。閉鎖性頭部損傷とは、頭皮、頭蓋又は脳の外傷であって、打撃物による頭蓋の穿通がない場合を意味する。開放性頭部損傷とは、頭皮、頭蓋又は脳の外傷であって、打撃物による頭蓋の穿通がある場合を意味する。頭部の損傷は、人による身体揺さぶり、閉鎖性又は開放性頭部外傷をもたらす外的な機械的又は他の力による鈍的衝撃(例えば、自動車、飛行機、列車等による車両事故、野球バットや火器による頭部殴打)、脳血管事故(例えば、卒中)、(例えば、運動又は他の活動における)1回以上の転倒、爆発又は爆破(「爆破損傷」と総称する)及び他の型の鈍力外傷に起因することができる。あるいは、頭部の損傷は、火炎、化学物質、毒素又は化学物質と毒素の組み合わせの吸い込み及び/又は曝露に起因することができる。このような化学物質及び/又は毒素の例としては、カビ、アスベスト、駆除剤及び殺虫剤、有機溶剤、塗料、接着剤、(一酸化炭素、硫化水素、及びシアン化物等の)ガス、(メチル水銀、四エチル鉛及び有機スズ等の)有機金属並びに/又は1種以上の乱用薬物が挙げられる。あるいは、対象が自己免疫疾患、代謝障害、脳腫瘍、低酸素症、ウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2)、真菌感染症、細菌感染症、髄膜炎、水頭症、又は任意のそれらの組み合わせに罹患している結果として、頭部の損傷が生じる場合もある。場合によっては、このようなイベント又は損傷が生起又は発生したかどうかが確かでない可能性がある。例えば、患者又は対象の既往歴がない場合や、対象が話せない場合や、対象がどのイベントに曝露されたかを気付いていない場合等が挙げられる。このような状況を本願では、対象が「頭部の損傷を生じている可能性がある」と言う。本願の所定の実施形態において、閉鎖性頭部損傷は、卒中等の脳血管事故を含まず、明確に除外する。
本願で使用する場合に「頭蓋内病変」とは、脳の内側の損傷区域を意味する。頭蓋内病変は、CTスキャン又は磁気共鳴画像法(MRI)等の脳画像検査で認められる異常とすることができる。CT又はMRIスキャン上に、脳病変は、正常脳組織と異なる暗スポット又は明スポットとして出現することができる。
本願で使用する場合に「単離ポリヌクレオチド」とは、(例えば、ゲノム、cDNA、若しくは合成起源、又はその組み合わせの)ポリヌクレオチドを意味することができ、その起源により、単離ポリヌクレオチドは、前記「単離ポリヌクレオチド」が自然界で結合しているポリヌクレオチドの全部若しくは一部と結合していないか、自然界で連結されていないポリヌクレオチドと機能的に連結されているか、又はより大きな配列の一部として自然界に存在しない。
本願で使用する場合に「ラベル」及び「検出可能なラベル」とは、抗体と被検体の反応を検出可能にするために抗体又は被検体に結合される部分を意味し、こうして標識された抗体又は被検体を「検出可能に標識されている」と言う。ラベルは、目視又は計器手段により検出可能なシグナルを発生することができる。各種ラベルとしては、色素原、蛍光化合物、化学発光化合物、放射性化合物等のシグナル発生物質が挙げられる。ラベルの代表例としては、光を発生する部分(例えば、アクリジニウム化合物)と、蛍光を発生する部分(例えば、フルオレセイン)が挙げられる。他のラベルも本願中に記載する。この点に関して、前記部分自体は検出可能でなくてもよいが、更に別の部分と反応すると、検出可能になるものもある。「検出可能に標識されている」なる用語の使用は、このような標識も包含するものとする。
当技術分野で公知の任意の適切な検出可能なラベルを使用することができる。例えば、検出可能なラベルは、放射性ラベル(例えば、3H、14C、32P、33P、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho、及び153Sm)、酵素ラベル(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリペルオキシダーゼ、グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ等)、化学発光ラベル(例えば、アクリジニウムエステル、チオエステル、又はスルホンアミド、ルミノール、イソルミノール、フェナントリジニウムエステル等)、蛍光ラベル(例えば、フルオレセイン(例えば、5-フルオレセイン、6-カルボキシフルオレセイン、3’6-カルボキシフルオレセイン、5(6)-カルボキシフルオレセイン、6-ヘキサクロロフルオレセイン、6-テトラクロロフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート等))、ローダミン、フィコビリタンパク質、R-フィコエリスリン、量子ドット(例えば、硫化亜鉛でキャップしたセレン化カドミウム)、測温ラベル、又はイムノポリメラーゼ連鎖反応ラベルとすることができる。ラベル、標識手順及びラベルの検出の手引きは、Polak and Van Noorden,Introduction to Immunocytochemistry,2nd ed.,Springer Verlag,N.Y.(1997)と、Molecular Probes,Inc.,Eugene,Oregonにより発行されたハンドブック兼カタログであるHaugland,Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(1996)を参照されたい。FPIAでは蛍光ラベルを使用することができる(例えば、その開示内容全体を本願に援用する米国特許第5,593,896号、5,573,904号、5,496,925号、5,359,093号及び5,352,803号参照)。均一系化学発光アッセイでは、アクリジニウム化合物を検出可能なラベルとして使用することができる(例えば、Adamczyk et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.16:1324-1328(2006);Adamczyk et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.4:2313-2317(2004);Adamczyk et al.,Biorg.Med.Chem.Lett.14:3917-3921(2004);及びAdamczyk et al.,Org.Lett.5:3779-3782(2003)参照)。
1態様において、前記アクリジニウム化合物は、アクリジニウム-9-カルボキサミドである。アクリジニウム-9-カルボキサミドの製造方法は、Mattingly,J.Biolumin.Chemilumin.6:107-114(1991);Adamczyk et al.,J.Org.Chem.63:5636-5639(1998);Adamczyk et al.,Tetrahedron 55:10899-10914(1999);Adamczyk et al.,Org.Lett.1:779-781(1999);Adamczyk et al.,Bioconjugate Chem.11:714-724(2000);Mattingly et al.,In Luminescence Biotechnology:Instruments and Applications;Dyke,K.V.Ed.;CRC Press:Boca Raton,pp.77-105(2002);Adamczyk et al.,Org.Lett.5:3779-3782(2003);並びに米国特許第5,468,646号、5,543,524号及び5,783,699号に記載されている(各々、前記方法に関するその教示内容全体を本願に援用する)。
アクリジニウム化合物の別の例は、アクリジニウム-9-カルボン酸アリールエステルである。式IIのアクリジニウム-9-カルボン酸アリールエステルの1例は、10-メチル-9-(フェノキシカルボニル)アクリジニウムフルオロスルホネート(Cayman Chemical,Ann Arbor,MIから入手可能)である。アクリジニウム-9-カルボン酸アリールエステルの製造方法は、McCapra et al.,Photochem.Photobiol.4:1111-21(1965);Razavi et al.,Luminescence 15:245-249(2000);Razavi et al.,Luminescence 15:239-244(2000)、及び米国特許第5,241,070号に記載されている(各々、前記方法に関するその教示内容全体を本願に援用する)。このようなアクリジニウム-9-カルボン酸アリールエステルは、シグナルの強度及び/又はシグナルの速さの点において、少なくとも1個のオキシダーゼ分子による被検体の酸化で生成される過酸化水素の効率的な化学発光指示薬である。アクリジニウム-9-カルボン酸アリールエステルの化学発光過程は、迅速に(即ち、1秒未満で)完了するが、アクリジニウム-9-カルボキサミド化学発光は、2秒を超える。一方、アクリジニウム-9-カルボン酸アリールエステルは、タンパク質の存在下でその化学発光性を失う。したがって、その使用には、シグナル発生・検出中にタンパク質が不在であることが必要である。試料中のタンパク質の分離又は除去方法は、当業者に周知であり、限定されないが、限外濾過、抽出、沈殿、透析、クロマトグラフィー、及び/又は消化が挙げられる(例えば、Wells,High Throughput Bioanalytical Sample Preparation.Methods and Automation Strategies,Elsevier(2003)参照)。被検試料から除去又は分離されるタンパク質の量は、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、又は約95%とすることができる。アクリジニウム-9-カルボン酸アリールエステルとその使用に関するその他の詳細は、2007年4月9日付け米国特許出願第11/697,835号に記載されている。アクリジニウム-9-カルボン酸アリールエステルは、脱気無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)やコール酸ナトリウム水溶液等の任意の適切な溶媒に溶解することができる。
「連結配列」又は「連結ペプチド配列」とは、1本以上の着目ポリペプチド配列(例えば、全長、断片等)と連結される天然又は人工ポリペプチド配列を意味する。「連結される」なる用語は、連結配列を着目ポリペプチド配列と結合することを意味する。1個以上のペプチド結合によりこのようなポリペプチド配列を結合することが好ましい。連結配列は、約4~約50アミノ酸長とすることができる。連結配列の長さは、約6~ 約30アミノ酸が好ましい。天然連結配列をアミノ酸置換、付加、又は欠失により修飾し、人工連結配列を作製することができる。連結配列は、組換えFabにおける使用をはじめとして、多くの用途に使用することができる。典型的な連結配列としては、限定されないが、以下のものが挙げられる。(i)HHHHHH(配列番号3)のアミノ酸配列を有する6×Hisタグ等のヒスチジン(His)タグは、着目ポリペプチド及び抗体の単離と精製を助長するための連結配列として有用である。(ii)エンテロキナーゼ切断部位は、Hisタグと同様に、着目タンパク質及び抗体の単離と精製に使用される。多くの場合、エンテロキナーゼ切断部位は、着目タンパク質及び抗体の単離と精製においてHisタグと共に使用される。種々のエンテロキナーゼ切断部位が当技術分野で公知である。エンテロキナーゼ切断部位の例としては、限定されないが、DDDDK(配列番号4)のアミノ酸配列とその誘導体(例えば、ADDDDK(配列番号5)等)が挙げられる。(iii)一本鎖可変領域断片の軽鎖及び/又は重鎖可変領域を連結又は結合するためにその他の配列も使用することができる。他の連結配列の例は、Bird et al.,Science 242:423-426(1988);Huston et al.,PNAS USA 85:5879-5883(1988);及びMcCafferty et al.,Nature 348:552-554(1990)に挙げられている。薬物の結合や固相担体への結合等の付加機能のために、連結配列を修飾することもできる。本開示に関して、モノクローナル抗体は、例えば、Hisタグ、エンテロキナーゼ切断部位、又はその両方等の連結配列を含むことができる。
「磁気共鳴画像法」又は「MRI」とは、本願では同義に使用され、健康及び疾患の両方において生体の解剖学的構造及び生理プロセスの画像を形成するために放射線医療で使用される医用画像技術を意味する(例えば、本願では、同義に「MRI」、「MRI法」又は「MRIスキャン」と呼ぶ)。MRIは、強磁場におかれたときの高周波ラジオ波に対する生体組織の原子核の応答を測定し、体内臓器の画像を生成する医用画像法である。MRIスキャナーは、核磁気共鳴(NMR)科学に基づき、強磁場、ラジオ波及び磁場勾配を使用して生体内の画像を生成する。
本願で使用する場合に「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一の抗体の集団から得られる抗体を意味し、即ち、前記集団を構成する個々の抗体は、少量存在する可能性のある天然突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、単一抗原に対して高度に特異的である。更に、ポリクローナル抗体製剤は、一般的に種々の決定基(エピトープ)に対する種々の抗体を含むが、これとは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に特異的である。本願におけるモノクローナル抗体は、具体的に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定生物種に由来するか又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は相同であり、前記抗体鎖の残余が別の生物種に由来するか又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体と、所望の生物学的活性を示す限りにおいてこのような抗体の断片を含む。
「多価結合タンパク質」とは、本願では、2個以上の抗原結合部位(本願では「抗原結合ドメイン」とも言う)を含む結合タンパク質を表すために使用される。多価結合タンパク質は、3個以上の抗原結合部位を有するように人工的に作製されることが好ましく、一般に、天然に存在する抗体ではない。「多重特異性結合タンパク質」なる用語は、2個以上の関連する標的又は無関係の標的と結合することができる結合タンパク質を意味し、同一標的分子の2個以上の異なるエピトープと結合することが可能な結合タンパク質が挙げられる。
「陰性適中率」又は「NPV」とは、本願では同義に使用され、対象の試験結果が陰性である場合に、対象のアウトカムが陰性となる確率を意味する。
本願で使用する場合に「参照値」とは、診断、予後又は治療効果を評定するために使用され、種々の臨床パラメーター(例えば、疾患の存在、疾患のステージ、疾患の重症度、疾患の進行、非進行又は改善等)と従来関係付けられているか又は本願で関連付けられるアッセイカットオフ値を意味する。本願で使用する場合に「絶対量」とは、異なる時点で採取又はサンプリングされた少なくとも2回のアッセイ結果間の変化又は差の絶対値であって、参照値と同様に、種々の臨床パラメーター(例えば、疾患の存在、疾患のステージ、疾患の重症度、疾患の進行、非進行又は改善等)と従来関係付けられているか又は本願で関連付けられる数値を意味する。本願で使用する場合に「絶対値」とは、その符号に関係なく、即ち、正負に関係なく、(例えば、(第1の時点で測定された値と、第2の時点で測定された値等の)2つの比較される値の差等の)実数値を意味する。
本開示は、典型的な参照値と、(例えば、異なる時点の参照値を比較することにより計算された)絶対量を提供する。しかし、参照値と絶対量がイムノアッセイの種類(例えば、利用される抗体、反応条件、試料純度等)に応じて変動する可能性があり、アッセイを比較・標準化できることは周知である。更に、本開示により提供される記載に基づき、他のイムノアッセイのイムノアッセイ特異的参照値及び絶対量を得るように本願の開示を他のイムノアッセイに適応させることは、当技術分野における通常の知識を有する者が十分になし得る範囲内である。参照値と絶対量の厳密な数値は、アッセイ間で変動し得るが、本願に記載する知見は、一般に他のアッセイにも適用可能であり、外挿することができる。
「ポイントオブケアデバイス」とは、患者ケアの現場(例えば、病院、医院、救急若しくは他の医療ケア施設、患者の自宅、介護施設及び/又は長期ケア及び/又はホスピス施設)のポイントオブケア(即ち、実験室の外)又はその付近で医療診断試験を提供するために使用されるデバイスを意味する。ポイントオブケアデバイスの例としては、Abbott Laboratories社(Abbott Park,IL)(例えば、i-STAT及びi-STAT Alinity)、Universal Biosensors社(オーストラリア、ロウビル)(US2006/0134713参照)、Axis-Shield PoC AS社(ノルウェー、オスロ)及びClinical Lab Products社(米国、ロサンゼルス)の製品が挙げられる。
「陽性適中率」又は「PPV」とは、本願では同義に使用され、対象の試験結果が陽性である場合に、対象のアウトカムが陽性となる確率を意味する。
本願に記載するイムノアッセイ及びキットに関する「品質管理試薬」としては、限定されないが、キャリブレーター、対照及び感度パネルが挙げられる。抗体又は被検体等の被検体の濃度の内挿用の校正(標準)曲線を作成するために、一般的に(例えば、複数等の1以上の)「キャリブレーター」又は「標準」が使用される。あるいは、参照値又は対照値(例えば、「低」値、「中」値、又は「高」値)の付近の単一キャリブレーターを使用することができる。複数のキャリブレーター(即ち、2以上のキャリブレーター又は変動量のキャリブレーター)を組み合わせて使用し、「感度パネル」を構成することができる。
「受信者動作特性」曲線又は「ROC」曲線とは、その識別閾値の変動に伴う二項分類器システムの性能を示すグラフプロットを意味する。例えば、ROC曲線は、診断試験の種々の可能なカットオフ点の偽陽性率に対する真陽性率のプロットとすることができる。この曲線は、種々の閾値設定で陰性のうちの偽陽性の割合(FPR=偽陽性率)に対して陽性のうちの真陽性の割合(TPR=真陽性率)をプロットすることにより作成される。TPRは、感度とも呼ばれ、FPRは、1-特異度又は真陰性率である。ROC曲線は、感度と特異度のトレードオフを示し(感度の上昇は特異度の低下を伴う)、曲線がROC空間の左端に近付き、次いで上端に近付くにつれて試験は正確になり、曲線がROC空間の45度の対角線に近付くにつれて試験の正確性は低下し、カットオフ点における接線の傾きは試験のその数値の尤度比(LR)を表し、曲線下の面積は試験の正確性の尺度となる。
「組換え抗体」及び「複数の組換え抗体」とは、1種以上のモノクローナル抗体の全部又は一部をコードする核酸配列を組換え技術により適切な発現ベクターにクローニングする工程と、次いで前記抗体を適切な宿主細胞で発現させる工程を含む1工程以上により作製される抗体を意味する。この用語は、限定されないが、組換え生産されたモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体(完全又は部分ヒト化抗体)、抗体断片から形成される多重特異性又は多価構造、二機能性抗体、ヘテロコンジュゲートAb、DVD-Ig(R)、及び本願の(i)に記載した他の抗体を含む(デュアル可変ドメイン免疫グロブリンとその作製方法は、Wu,C.,et al.,Nature Biotechnology,25:1290-1297(2007)に記載されている)。本願で使用する場合に「二機能性抗体」なる用語は、ある抗原部位に対する特異性を有する第1のアームと、別の抗原部位に対する特異性を有する第2のアームを含む抗体を意味し、即ち、二機能性抗体は、デュアル特異性を有する。
本願で使用する場合に対象(例えば、患者)の「リスク評定」、「リスク分類」、「リスク同定」又は「リスク層別化」とは、より詳しい情報に基づいて対象に関する治療決定を実施できるように、疾患発症又は疾患進行を含む将来のイベントの発生リスクを予測するためのバイオマーカーを含む因子の評価を意味する。
「試料」、「被検試料」、「検体」、「対象からの試料」、「生体試料」、及び「患者試料」とは、本願では同義に使用され、(例えば、毛細管血、静脈血、乾燥血斑等を含む)全血、血清若しくは血漿等の血液、組織、唾液、尿、羊水、口咽頭検体、鼻咽頭検体、限定されないが、痰、気管内吸引物若しくは気管支肺胞洗浄液等の下気道検体、脳脊髄液、胎盤細胞若しくは組織、血管内皮細胞、白血球、又は単球の試料とすることができる。試料は、患者から取得した状態で直接使用することもできるし、本願に記載する何らかの方法又は当技術分野で公知の他の方法で試料の特徴を改変するように、濾過、蒸留、抽出、濃縮、遠心、妨害成分の不活性化、試薬の添加等により前処理することもできる。更に、試料は1回以上のスワブを使用して取得した鼻咽頭又は口咽頭試料とすることもでき、試料を取得後、ウイルス輸送媒体(VTM)又はユニバーサル輸送媒体(UTM)を入れた滅菌チューブに浸して保管するか、又は別の試験用媒体に移す。
試料を取得するには種々の細胞種、組織、又は体液を利用することができる。このような細胞種、組織、及び体液としては、生検及び剖検試料等の組織切片、口咽頭検体、鼻咽頭検体、組織学的検査目的で採取した凍結切片、血液(例えば、全血、乾燥血斑等)、血漿、血清、唾液、赤血球、血小板、間質液、脳脊髄液等が挙げられる。細胞種及び組織としては、吸引により採取したリンパ液、脳脊髄液、又は任意の体液も挙げられる。組織又は細胞種は、ヒト及び非ヒト動物から細胞試料を採取することにより提供することもできるし、予め単離した(例えば、別の人により、別の時点で及び/又は別の目的のために単離した)細胞を使用することにより遂行することもできる。治療又はアウトカム履歴を有するもの等のアーカイブ組織を使用してもよい。タンパク質又はヌクレオチド単離及び/又は精製が不要な場合もある。所定の実施形態において、前記試料は、血液試料(例えば、全血試料、血清試料、又は血漿試料)である。所定の実施形態において、前記試料は、全血試料である。所定の実施形態において、前記試料は、毛細管血試料である。所定の実施形態において、前記試料は、乾燥血斑である。所定の実施形態において、前記試料は、血清試料である。更に他の実施形態において、前記試料は、血漿試料である。所定の実施形態において、前記試料は、口咽頭検体である。他の実施形態において、前記試料は、鼻咽頭検体である。他の実施形態において、前記試料は、痰である。他の実施形態において、前記試料は、気管内吸引物である。更にまた他の実施形態において、前記試料は、気管支肺胞洗浄液である。更にまた他の実施形態において、前記試料は、唾液試料である。
本願で使用する場合にアッセイの「感度」とは、アウトカムが陽性であり、陽性として正しく同定される対象の割合を意味する(例えば、試験の標的である疾患又は病態を有する対象を正しく同定する)。例えば、これは、TBIをもたない対象から識別してTBIを有する対象を正しく同定すること、軽度TBIを有する対象から識別して中等度、重度、又は中等度~重度TBIを有する対象を正しく同定すること、中等度、重度、又は中等度~重度TBIを有する対象から識別して軽度TBIを有する対象を正しく同定すること、TBIをもたない対象から識別して中等度、重度、又は中等度~重度TBIを有する対象を正しく同定すること、あるいはTBIをもたない対象から識別して軽度TBIを有する対象を正しく同定すること等が挙げられる。
本願で使用する場合にアッセイの「特異度」とは、アウトカムが陰性であり、陰性として正しく同定される対象の割合を意味する(例えば、試験の標的である疾患又は病態をもたない対象を正しく同定する)。例えば、これは、TBIを有する対象から識別してTBIをもたない対象を正しく同定すること、軽度TBIを有する対象から識別して中等度、重度、又は中等度~重度TBIをもたない対象を正しく同定すること、中等度、重度、又は中等度~重度TBIを有する対象から識別して軽度TBIをもたない対象を正しく同定すること等が挙げられる。
「校正組成物系列」とは、既知濃度のUCH-L1を含有する複数の組成物を意味し、組成物は各々、UCH-L1の濃度が系列中の他の組成物と相違する。
「固相」又は「固相担体」とは、本願では同義に使用され、(1)1種以上の捕捉剤若しくは捕捉用特異的結合パートナー、又は(2)1種以上の検出剤若しくは検出用特異的結合パートナーを結合及び/又は吸引して固相化するために使用することができる任意の材料を意味する。固相は、捕捉剤を吸引・固相化するその固有の能力により選択することができる。あるいは、固相は、(1)捕捉剤若しくは捕捉用特異的結合パートナー、又は(2)検出剤若しくは検出用特異的結合パートナーを吸引・固相化する能力を有する連結剤を結合することができる。例えば、連結剤は、捕捉剤(例えば、捕捉用特異的結合パートナー)若しくは検出剤(例えば、検出用特異的結合パートナー)自体に対して、あるいは(1)捕捉剤若しくは捕捉用特異的結合パートナー、又は(2)検出剤若しくは検出用特異的結合パートナーと結合された荷電物質に対して逆電荷の荷電物質を含むことができる。一般に、連結剤は、固相に固相化(結合)され、結合反応により、(1)捕捉剤若しくは捕捉用特異的結合パートナー、又は(2)検出剤若しくは検出用特異的結合パートナーを固相化することが可能な(好ましくは特異的な)任意の結合パートナーとすることができる。連結剤により、アッセイの実施前又はアッセイの実施中に捕捉剤を固相材料に間接的に結合することが可能になる。例えば、固相は、プラスチック、誘導体化プラスチック、磁性若しくは非磁性金属、ガラス又はシリコン製とすることができ、例えば、試験管、マイクロタイターウェル、シート、ビーズ、微粒子、チップ、及び当技術分野における通常の知識を有する者に公知の他の構造が挙げられる。
本願で使用する場合に「特異的結合」又は「特異的に結合する」とは、抗体、タンパク質又はペプチドと第2の化学種の相互作用を意味することができ、前記相互作用は、化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存し、例えば、抗体は、タンパク質全般ではなく、特定のタンパク質構造を認識してこれと結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的であるならば、標識された「A」と前記抗体を含む反応にエピトープA(遊離未標識A)を含む分子を介在させると、標識されたAが前記抗体と結合する量は減るであろう。
「特異的結合パートナー」とは、特異的結合対のメンバーである。特異的結合対は、化学的又は物理的手段により相互に特異的に結合する2個の異なる分子を含む。したがって、一般的なイムノアッセイの抗原と抗体の特異的結合対以外に、他の特異的結合対としては、ビオチンとアビジン(又はストレプトアビジン)、糖鎖とレクチン、相補的ヌクレオチド配列、エフェクター分子とレセプター分子、補因子と酵素、酵素と酵素阻害剤等を挙げることができる。更に、特異的結合対としては、元の特異的結合メンバーのアナログであるメンバー(例えば、被検体アナログ)を挙げることができる。免疫反応性特異的結合メンバーとしては、単離されたものであるか又は組換え生産されたものであるかに関係なく、抗原、抗原断片、及びモノクローナル抗体とポリクローナル抗体を含む抗体に加え、複合体とその断片が挙げられる。
本願で使用する場合に「統計的に有意」とは、2個以上の変数間の関係が偶然以外の原因に起因する確率を意味する。データセットの結果が統計的に有意であるか否かを判定するには、統計的仮説検定を使用する。統計的仮説検定では、検定統計量の観測p値が検定の設定された有意水準よりも小さければ、統計的に有意な結果が得られる。p値は、帰無仮説が真であると仮定したときに、少なくとも観測結果と同程度に仮説から外れた結果を得る確率である。統計的仮説解析の例としては、ウィルコクソンの符号順位検定、t検定、カイ二乗検定又はフィッシャーの正確確率検定が挙げられる。本願で使用する場合に「有意」とは、統計的に有意であると判定されていない変化を意味する(例えば、統計的仮説検定を実施していなくてもよい)。
「対象」及び「患者」とは、本願では同義に使用され、任意の脊椎動物を意味し、限定されないが、哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、及びマウス、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザルやアカゲザル等のサル、チンパンジー等)及びヒト)が挙げられる。所定の実施形態において、前記対象はヒトでも非ヒトでもよい。所定の実施形態において、前記対象はヒトである。前記対象又は患者は、他の型の治療を受療中でもよい。
「治療する」、「治療用」又は「治療」とは、本願では各々同義に使用され、このような用語が適用される疾患及び/若しくは損傷、又はこのような疾患の1種以上の症状の進行を逆行、緩和又は抑制することを表す。対象の状態に応じて、この用語は疾患を予防することも意味し、疾患の発症を予防すること、又は疾患に伴う症状を予防することを含む。治療は急性的に実施してもよいし、慢性的に実施してもよい。この用語は更に、疾患に罹患する前に前記疾患又はこのような疾患に伴う症状の重症度を低下させることも意味する。罹患前の疾患のこのような予防又はその重症度の低下とは、投与時に前記疾患に罹患していない対象に医薬組成物を投与することを意味する。「予防する」とは、疾患又はこのような疾患に伴う1種以上の症状の再発を防止することも意味する。「治療」及び「治療的」とは、治療行為を意味し、「治療する」とは、上記に定義した通りである。
「外傷性脳損傷」又は「TBI」とは、本願では同義に使用され、広範な症状と障害を伴う複合損傷を意味する。TBIは、他の損傷と同様に急性イベントであることが最も多い。TBIは、「軽度」、「中等度」、又は「重度」に分類することができる。TBIの原因は多様であり、例えば、人による身体揺さぶり、自動車事故、火器による損傷、脳血管事故(例えば、卒中)、転倒、爆発又は爆破及び他の型の鈍力外傷が挙げられる。TBIの他の原因としては、1種以上の火炎、化学物質若しくは毒素(例えば、カビ、アスベスト、駆除剤及び殺虫剤、有機溶剤、塗料、接着剤、ガス(例えば、一酸化炭素、硫化水素、及びシアン化物)、有機金属(例えば、メチル水銀、四エチル鉛及び有機スズ)、1種以上の乱用薬物又はそれらの組み合わせ)の吸い込み及び/又は曝露が挙げられる。あるいは、TBIは、自己免疫疾患、代謝障害、脳腫瘍、低酸素症、ウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2、髄膜炎等)、真菌感染症(例えば、髄膜炎)、細菌感染症(例えば、髄膜炎)、又は任意のそれらの組み合わせに罹患している対象で生じる可能性がある。TBIの危険が最も高い年齢群は、若年成人と高齢者である。本願の所定の実施形態において、外傷性脳損傷又はTBIは、卒中等の脳血管事故を含まず、明確に除外する。
本願で使用する場合に「軽度TBI」とは、対象が意識消失していてもよいし、していなくてもよい頭部損傷を意味する。意識消失している対象でも、一般的に短時間であり、通常では僅か数秒間又は数分間である。軽度TBIは、脳震盪、軽微な頭部外傷、軽微なTBI、軽微な脳損傷、及び軽微な頭部損傷とも呼ばれる。MRIとCTスキャンは正常であることが多いが、軽度TBIを有する個体は、頭痛、思考障害、記憶障害、気分変動及び苛立ち等の認知障害を有する場合がある。
軽度TBIは最も一般的なTBIであり、初期損傷時に見落とされることが多い。一般的に、対象はグラスゴーコーマスケール点数が13~15点(例えば、13~15点又は14~15点)である。軽度TBIを有する人の15%は、症状が3カ月以上続く。軽度TBIの一般的な症状としては、疲労感、頭痛、視覚障害、記憶消失、注意力/集中力低下、睡眠障害、眩暈/平衡感覚低下、短気-情緒障害、抑うつ感情、及び発作が挙げられる。軽度TBIに伴う他の症状としては、悪心、味覚低下、光と音に対する感受性、気分変調、迷子若しくは混乱及び/又は思考遅延が挙げられる。
本願で使用する場合に「中等度TBI」とは、意識消失及び/又は錯乱と失見当識が1~24時間であり、対象のグラスゴーコーマスケール点数が9~13点(例えば、9~12点又は9~13点)である脳損傷を意味する。中等度TBIを有する個体は、脳画像結果が異常になる可能性がある。本願で使用する場合に「重度TBI」とは、意識消失が24時間超であり、損傷又は穿通性頭蓋損傷後の記憶消失が24時間超であり、対象のグラスゴーコーマスケール点数が3~8点である脳損傷を意味する。障害は、高次認知機能障害から昏睡状態までの範囲に渡る。回復しても、腕又は脚の機能低下、発語又は言語異常、思考能力低下又は情緒障害が残る場合がある。重度損傷を有する個体は、長期間無反応状態のままになる可能性がある。重度TBIを有する多くの人々では、機能と自立を最大にするために長期リハビリテーションが必要になることが多い。
本願で使用する場合に「中等度~重度」TBIとは、経時的な中等度から重度TBIへの変化を含み、したがって、(例えば、一時的な)中等度TBI単独、重度TBI単独、及び中等度~重度TBI複合を包含する範囲の脳損傷を意味する。例えば、臨床状況によっては、対象は当初は中等度TBIを有すると診断されるが、時間(分、時間又は日数レベル)の経過に伴い、(例えば、脳出血がある状況のように)重度TBIに進行する場合がある。あるいは、臨床状況によっては、対象は当初は重度TBIを有すると診断されるが、時間(分、時間又は日数レベル)の経過に伴い、中等度TBIに移行する場合がある。このような対象は、「中等度~重度」に分類することができる患者の例である。中等度~重度TBIの一般的な症状としては、注意力、集中力、被転導性、記憶、処理速度、錯乱、保続、衝動性、言語処理、及び/若しくは「遂行機能」の障害、他者の言うことを理解できない(受容性失語)、発語が困難で他者に理解されない(表出性失語)、不明瞭発語、話し方が非常に速い若しくは非常に遅い、読字障害、書字障害、触覚、温度、運動、四肢位置及び微細な識別の解釈困難、感覚印象の心理学的に有意義なデータへの統合若しくはパターン化、完全若しくは部分的な視力喪失、眼筋力低下と二重視(複視)、霧視、距離判断障害、無意識的眼球運動(眼球振盪)、光不耐性(羞明)、聴力低下若しくは喪失等の聴覚障害、耳鳴り(響鳴)、音に対する感受性増加、嗅覚消失若しくは低下(無嗅覚症)、味覚消失若しくは低下、数種類に分類することができ、意識、感覚認知若しくは運動の混乱を伴う場合がある癲癇に付随する痙攣、排便・排尿コントロール障害、睡眠障害、持久力低下、食欲変化、体温調節障害、月経困難、依存的行動、感情能力若しくは安定性の障害、モチベーションの欠如、被刺激性、攻撃性、抑うつ、脱抑制、又は自覚の拒否/欠如を含む認知障害が挙げられる。中等度~重度TBIを有する対象は、グラスゴーコーマスケール点数が3~12点とすることができる(中等度TBIの9~12点と、重度TBIの3~8点を含む)。
「ユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1」又は「UCH-L1」とは、本願では同義に使用され、ヒトにおいてUCH-L1遺伝子によりコードされる脱ユビキチン化酵素を意味する。UCH-L1は、ユビキチンカルボキシル末端エステラーゼL1及びユビキチンチオールエステラーゼとも呼ばれ、その産物がユビキチンの低分子C末端付加物を加水分解してユビキチン単量体を生じる遺伝子ファミリーのメンバーである。
「UCH-L1状態」とは、(UCH-L1の単回測定等による)ある時点におけるUCH-L1の値若しくは量、(UCH-L1量の増減を確認するために対象で実施される反復試験等による)経過観察に関連するUCH-L1の値若しくは量、(一次性脳損傷及び/又は二次性脳損傷のいずれかに関係なく)外傷性脳損傷の治療に関連するUCH-L1の値若しくは量又はその組み合わせを意味することができる。
「変異体」とは、本願では、アミノ酸の挿入、欠失又は保存的置換によりアミノ酸配列が相違するが、少なくとも1種の生物学的活性を維持するペプチド又はポリペプチドを表すために使用される。「生物学的活性」の代表例としては、特異的抗体と結合する能力又は免疫応答を促進する能力が挙げられる。変異体とは、本願では、少なくとも1種の生物学的活性を維持するアミノ酸配列を有する参照タンパク質と実質的に一致するアミノ酸配列を有するタンパク質を表すためにも使用される。アミノ酸の保存的置換、即ち、アミノ酸を類似の性質(例えば、親水性、程度、及び荷電領域の分布)の別のアミノ酸で置換することは、当技術分野において一般的に軽微な変化を伴うとして認識されている。これらの軽微な変化は、一面において、当技術分野で理解されているようにアミノ酸の疎水性親水性指標を考慮することにより、同定することができる。Kyte et al.,J.Mol.Biol.157:105-132(1982)参照。アミノ酸の疎水性親水性指標は、その疎水性と電荷を考慮することに基づく。疎水性親水性指標が類似するアミノ酸を置換してもタンパク質機能を維持できることは当技術分野で知られている。1態様では、疎水性親水性指標が±2のアミノ酸を置換する。生物学的機能を維持するタンパク質が得られるような置換を明らかにするために、アミノ酸の親水性を使用することもできる。最大局所平均親水性は、抗原性及び免疫原性とよく相関することが報告されている有用な手段であるが、ペプチドに関してアミノ酸の親水性を考慮すると、このペプチドの最大局所平均親水性を計算することができる。全文を本願に援用する米国特許第4,554,101号参照。当技術分野で理解されているように、類似の親水性値を有するアミノ酸を置換すると、生物学的活性(例えば、免疫原性)を維持するペプチドが得られる。親水性値が相互に±2以内のアミノ酸で置換を行うことができる。アミノ酸の疎水性指数と親水性値はどちらもそのアミノ酸の特定の側鎖により影響される。この所見に一致し、生物学的機能に適合可能なアミノ酸置換は、疎水性、親水性、電荷、寸法及び他の性質により明らかなように、アミノ酸、特にこれらのアミノ酸の側鎖の相対類似性に依存すると考えられる。「変異体」とは、抗UCH-L1抗体の対応する断片とアミノ酸配列が相違するが、依然として抗原反応性であり、UCH-L1との結合について抗UCH-L1抗体の対応する断片と競合することができる抗UCH-L1抗体の抗原反応性断片を表すために使用することもできる。「変異体」とは、タンパク質分解、リン酸化又は他の翻訳後修飾等により差次的にプロセシングされているが、その抗原反応性を維持するポリペプチド又はその断片を表すために使用することもできる。
「ベクター」とは、本願では、これが連結された別の核酸を輸送することができる核酸分子を表すために使用される。ベクターの1例は、付加DNAセグメントをライゲーションすることができる環状二本鎖DNAループを意味する「プラスミド」である。別の型のベクターは、ウイルスベクターであり、付加DNAセグメントをウイルスゲノムにライゲーションすることができる。所定のベクターは、それらが導入される宿主細胞で自律複製することができる(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターや、エピソーマル哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、ノンエピソーマル哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入すると、宿主細胞のゲノムに組込むことができるので、宿主ゲノムと共に複製される。更に、所定のベクターは、それらが機能的に連結された遺伝子の発現を誘導することができる。このようなベクターを本願では「組換え発現ベクター」(又は、単に「発現ベクター」)と呼ぶ。一般に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドは、最も広く使用されている形態のベクターであるので、「プラスミド」と「ベクター」は同義に使用することができる。しかし、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)等の他の形態の発現ベクターも使用することができる。この点については、(RNAウイルスベクターを含む)RNAベクターも本開示に関して適用できる。
本願中で他の定義のない限り、本開示に関連して使用する科学技術用語は、当技術分野における通常の知識を有する者に広く理解されている意味とする。例えば、本願に記載する細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学並びにタンパク質及び核酸化学及びハイブリダイゼーションに関して使用される全ての命名法とこれらの技術は、当技術分野で周知であり、広く使用されている。用語の意味と範囲は明白でなければならないが、潜在的に曖昧な場合には、辞書又は外部の定義よりも本願に記載する定義を優先する。更に、文脈から必然的にそうでない場合を除き、単数形の用語は複数形も含み、複数形の用語は単数形も含む。
2.頭部コンピュータ断層撮影(CT)スキャンの結果が外傷性脳損傷(TBI)に関して陰性の対象においてTBIの判定を補助する方法
本開示は特に、頭部の損傷を生じているか、又は生じている可能性があるか、又は生じていることが疑われるヒト対象等の対象が、頭部CTスキャンを1回以上受けており、その結果がTBIに関して陰性である場合に、前記対象が外傷性脳損傷(TBI)を生じている可能性の方が高いか否かを判定するのを補助する方法に関する。具体的に、このような方法は、(a)(1)実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷後約24時間以内に前記対象から取得した試料で、前記試料中のユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、又はその組み合わせを含むバイオマーカーの値を測定又は検出するための少なくとも1種のアッセイと、(2)臨床的に適切な時間枠内で前記対象に実施される少なくとも1回の頭部CTスキャンを、同時又は(任意の順序で)逐次実施する工程と;(b)前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、前記頭部CTスキャンがTBIに関して陰性であるならば、前記対象がTBIを有する可能性の方が高いと診断する工程を含むことができる。前記試料は、生体試料とすることができる。
更に別の態様において、本開示は、頭部の損傷を生じているか、又は生じている可能性があるか、又は生じていることが疑われるヒト対象等の対象が、TBIを生じている可能性が高いか否かを判定するのを補助する方法に関する。具体的に、前記方法は、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷後約24時間以内に前記対象から取得した試料で、前記試料中のユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、又はその組み合わせを含むバイオマーカーの値を測定又は検出するためのアッセイを実施する工程を含み、前記方法は、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、臨床的に適切な時間枠内で前記対象に実施された頭部コンピュータ断層撮影(CT)スキャンが、TBIに関して陰性であるか、又は前記対象で頭部CTスキャンが実施されていないならば、前記対象が外傷性脳損傷(TBI)を有する可能性の方が高いと診断する工程を含む。前記試料は、生体試料とすることができる。所定の態様では、前記対象で頭部CTスキャンを実施する。他の態様では、前記対象で頭部CTスキャンを実施しない。
本願に記載するように、前記少なくとも1種のアッセイと、任意に、少なくとも1回の頭部CTスキャンを実施する場合に、前記頭部CTスキャンは、同時又は任意の順序で逐次実施することができる。逐次実施する場合には、前記アッセイと前記頭部CTスキャンを臨床的に適切な時間枠内で実施することができ、例えば、相互に約1分以内、相互に約2分以内、相互に約3分以内、相互に約4分以内、相互に約5分以内、相互に約10分以内、相互に約15分以内、相互に20分以内、相互に約25分以内、相互に約30分以内、相互に約45分以内、相互に約50分以内、相互に約60分以内、相互に約1時間以内、相互に約1.5時間以内、相互に約2時間以内、相互に約3時間以内、相互に約4時間以内、相互に約5時間以内、相互に約6時間以内、相互に約7時間以内、相互に約8時間以内、相互に約9時間以内、相互に約10時間以内、相互に約11時間以内、又は相互に約12時間以内に実施することができる。
所定の態様において、本願に記載する方法は、頭部の損傷を生じているか又は生じている可能性のある対象が、頭部CTスキャンを受けており、その結果がTBIに関して陰性である場合に、1種以上のバイオマーカー値に基づいてTBIを有するとして同定することができる。本願に記載する方法は、TBIを生じているが、1回以上の頭部CTスキャンの結果のみに基づいてTBIをもたないとして誤って診断された可能性のある対象を同定することができる。
所定の実施形態において、前記方法は、前記対象の疑われる損傷から約24時間以内に試料を取得する工程と、ユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、又はその組み合わせ等のTBIのバイオマーカーの抗体と前記試料を接触させ、前記抗体と前記バイオマーカーの複合体を形成する工程を含むことができる。前記方法は更に、得られた抗体とバイオマーカーの複合体を検出する工程を含む。
所定の実施形態では、頭部の損傷(例えば、実際の損傷)又は疑われる損傷から約24時間以内、例えば約0~約6時間以内、約0~約8時間以内、約0~約10時間以内、約0~約12時間以内、約0~約18時間以内、約6時間~約12時間以内、約6時間~約18時間、又は約12時間~約18時間以内に、前記試料をヒト対象等の対象から採取する。例えば、頭部の損傷又は疑われる損傷から約0分以内、約30分以内、約60分以内、約90分以内、約120分以内、約3時間以内、約4時間以内、約5時間以内、約6時間以内、7時間以内、約8時間以内、約9時間以内、約10時間以内、約11時間以内、約12時間以内、約13時間以内、約14時間以内、約15時間以内、約16時間以内、約17時間以内、約18時間以内、約19時間以内、約20時間以内、約21時間以内、約22時間以内、約23時間以内、又は約24時間以内に、前記試料をヒト対象等の対象から採取することができる。所定の実施形態において、UCH-L1、GFAP、又はその組み合わせ等のバイオマーカーの存在の徴候は、頭部の損傷又は疑われる損傷後、約0分以内、約30分以内、約60分以内、約90分以内、約120分以内、約3時間以内、約4時間以内、約5時間以内、約6時間以内、7時間以内、約8時間以内、約9時間以内、約10時間以内、約11時間以内、約12時間以内、約13時間以内、約14時間以内、約15時間以内、約16時間以内、約17時間以内、約18時間以内、約19時間以内、約20時間以内、約21時間以内、約22時間以内、約23時間以内、又は約24時間以内に現れる。
一般に、被検試料をUCH-L1についてアッセイして得られた結果を比較評定するためのベンチマークとして、UCH-L1、GFAP、又はその組み合わせ等のバイオマーカーの参照値を利用することができる。一般に、このような比較を行う際に、UCH-L1、GFAP、又はその組み合わせ等のバイオマーカーの参照値は、被検体の存在、量又は濃度と、TBIの特定のステージ若しくはエンドポイント又は特定の指標とを関係又は関連付けられるように、特定のアッセイを適切な条件下で十分な回数実施することにより得られる。一般的に、UCH-L1、GFAP、又はその組み合わせ等のバイオマーカーの参照値は、参照対象(又は対象集団)のアッセイで得られる。測定されるUCH-L1、GFAP、又はその組み合わせ等のバイオマーカーは、その断片、その分解物、及び/又はその酵素分解物を含むことができる。
所定の実施形態において、前記方法は更に、後述するように、ヒト対象等の対象に外傷性脳損傷治療を施す工程及び/又は前記対象を経過観察する工程を含む。
本願に記載する方法で利用されるアッセイの種類は重要ではなく、試験は、当技術分野で公知の任意のアッセイとすることができ、例えば、イムノアッセイ、タンパク質免疫沈降法、免疫電気泳動法、化学分析、SDS-PAGEとウェスタンブロット分析若しくはタンパク質免疫染色法、電気泳動分析、タンパク質アッセイ、競合結合アッセイ、機能的タンパク質アッセイ、又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)や液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)等のクロマトグラフィー若しくはスペクトロメトリー法が挙げられる。また、当技術分野における通常の知識を有する者に知られているような臨床化学フォーマットで前記アッセイを利用することもできる。このようなアッセイについては、本願のセクション4~8で詳述する。(例えば、血清を利用するイムノアッセイ又は全血を利用するポイントオブケアデバイス等の)特定の試料種を利用するアッセイで使用される数値(例えば、キャリブレーター及び/又は対照の参照値、カットオフ値、閾値、特異度、感度、濃度等)を、アッセイ標準化等の当技術分野における公知技術により他のアッセイフォーマットに外挿できることは、当技術分野で公知である。例えば、アッセイ標準化を実施することができる1つの方法は、試料濃度読み値を上下させてコンパレータ方法と整合する傾きを得るように、アッセイで利用されるキャリブレーターに係数を適用することにより実施することができる。あるアッセイで得られた結果を別のアッセイに標準化する他の方法も周知であり、文献に記載されている(例えば、その開示内容を本願に援用するDavid Wild,Immunoassay Handbook,第4版、3.5章、315~322頁参照)。
3.頭部の損傷を生じている対象の治療及び経過観察
上記方法で同定された対象を治療又は経過観察することができる。所定の実施形態において、前記方法は更に、ヒト対象等の対象に、当技術分野で公知の任意の治療等の外傷性脳損傷治療を施す工程を含む。例えば、外傷性脳損傷の治療は、頭部の損傷の重症度に応じて種々の形態をとることができる。例えば、軽度TBIの対象では、前記治療は、安静にする、運動等の身体活動を控える、明るい場所への外出時には光を避けるか又はサングラスをかける、頭痛又は片頭痛の軽減薬の服用、制吐薬の服用等の1種以上を含むことができる。中等度、重度又は中等度~重度TBI患者の治療としては、(例えば、利尿剤、抗痙攣薬、個体を鎮静させ、薬物誘導昏睡状態にする薬剤、又は(TBIの治療用に知られているか又は将来開発される)他の医薬品若しくはバイオ医薬品等の)1種以上の適切な薬剤の投与、(例えば、血腫の除去、頭蓋骨折の修復、減圧開頭術等の)1種以上の外科処置、気道の保護、及び(例えば、1種以上のリハビリテーション、認知行動療法、アンガーマネジメント、カウンセリング心理学等の)1種以上の療法が挙げられる。所定の実施形態において、前記方法は更に、ヒト対象等の対象を経過観察する工程を含む。所定の実施形態では、CTスキャン又はMRI法で対象を経過観察することができる。
4.UCH-L1値の測定方法
上記方法では、任意の手段によりUCH-L1値を測定することができ、イムノアッセイ、タンパク質免疫沈降法、免疫電気泳動法、化学分析、SDS-PAGEとウェスタンブロット分析、タンパク質免疫染色法、電気泳動分析、タンパク質アッセイ、競合結合アッセイ、機能的タンパク質アッセイ等の抗体依存方法や、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又は液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)等のクロマトグラフィー又はスペクトロメトリー法が挙げられる。また、当業者に公知のように、臨床化学フォーマットで前記アッセイを利用することもできる。
所定の実施形態において、UCH-L1値の測定は、前記試料を第1の特異的結合メンバー及び第2の特異的結合メンバーと接触させる工程を含む。所定の実施形態において、前記第1の特異的結合メンバーは、捕捉抗体であり、前記第2の特異的結合メンバーは、検出抗体である。所定の実施形態において、UCH-L1値の測定は、捕捉抗体とUCH-L1抗原と検出抗体の複合体(例えば、UCH-L1捕捉抗体とUCH-L1抗原とUCH-L1検出抗体の複合体)が形成されるように、前記試料を、(1)UCH-L1又はUCH-L1断片上のエピトープと結合して捕捉抗体とUCHとL1抗原の複合体(例えば、UCH-L1捕捉抗体とUCH-L1抗原の複合体)を形成する捕捉抗体(例えば、UCH-L1捕捉抗体)と、(2)検出可能なラベルを含み、捕捉抗体と結合していないUCH-L1上のエピトープと結合してUCH-L1抗原と検出抗体の複合体(例えば、UCH-L1抗原とUCH-L1検出抗体の複合体)を形成する検出抗体(例えば、UCH-L1検出抗体)とに、同時又は任意の順序で逐次接触させる工程と、前記捕捉抗体とUCH-L1抗原と検出抗体の複合体中の検出可能なラベルにより発生されるシグナルに基づいて前記試料中のUCH-L1の量又は濃度を測定する工程を含む。
所定の実施形態において、前記第1の特異的結合メンバーは、固相担体に固相化されている。所定の実施形態において、前記第2の特異的結合メンバーは、固相担体に固相化されている。所定の実施形態において、前記第1の特異的結合メンバーは、以下に記載するようなUCH-L1抗体である。
所定の実施形態において、前記試料は、希釈されているか、又は希釈されていない。前記試料は、約1~約25マイクロリットル、約1~約24マイクロリットル、約1~約23マイクロリットル、約1~約22マイクロリットル、約1~約21マイクロリットル、約1~約20マイクロリットル、約1~約18マイクロリットル、約1~約17マイクロリットル、約1~約16マイクロリットル、約15マイクロリットル又は約1マイクロリットル、約2マイクロリットル、約3マイクロリットル、約4マイクロリットル、約5マイクロリットル、約6マイクロリットル、約7マイクロリットル、約8マイクロリットル、約9マイクロリットル、約10マイクロリットル、約11マイクロリットル、約12マイクロリットル、約13マイクロリットル、約14マイクロリットル、約15マイクロリットル、約16マイクロリットル、約17マイクロリットル、約18マイクロリットル、約19マイクロリットル、約20マイクロリットル、約21マイクロリットル、約22マイクロリットル、約23マイクロリットル、約24マイクロリットル又は約25マイクロリットルとすることができる。所定の実施形態において、前記試料は、約1~約150マイクロリットル以下又は約1~約25マイクロリットル以下である。
ポイントオブケアデバイス以外の(例えば、Abbott Laboratories社製機器ARCHITECT(R)や、他のコアラボラトリー機器等の)所定の機器は、試料中の25,000pg/mL超のUCH-L1値を測定することが可能であると思われる。
他の検出方法としては、ナノポアデバイス又はナノウェルデバイスの使用が挙げられ、あるいはこれらのデバイスで使用するように適応させることができる。ナノポアデバイスの例は、その開示内容全体を本願に援用する国際特許公開第WO2016/161402号に記載されている。ナノウェルデバイスの例は、その開示内容全体を本願に援用する国際特許公開第WO2016/161400号に記載されている。
5.UCH-L1抗体
本願に記載する方法は、ユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(「UCH-L1」)(又はその断片)と特異的に結合する単離抗体(「UCH-L1抗体」と言う)を使用することができる。UCH-L1抗体は、外傷性脳損傷の尺度としてのUCH-L1状態を評定するため、試料中のUCH-L1の存在を検出するため、試料中に存在するUCH-L1の量を定量するため、又は試料中のUCH-L1の存在を検出し、定量するために使用することができる。
a.ユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)
ユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(「UCH-L1」)は、「ユビキチンC末端ヒドロラーゼ」とも呼ばれ、脱ユビキチン化酵素である。UCH-L1は、その産物がユビキチンの低分子C末端付加物を加水分解してユビキチン単量体を生じる遺伝子ファミリーのメンバーである。UCH-L1の発現はニューロンと、びまん性内分泌系の細胞及びその腫瘍に高度に特異的である。全ニューロンに多量に存在し(総脳タンパク質の1~2%に相当)、ニューロンと精巣/卵巣で特異的に発現される。UCH-L1の触媒三残基は、90位のシステインと、176位のアスパラギン酸と、161位のヒスチジンを含み、そのヒドロラーゼ活性を担う。
ヒトUCH-L1は、以下のアミノ酸配列を有することができる。
Figure 2023552755000003
ヒトUCH-L1は、配列番号1の断片又は変異体でもよい。UCH-L1の断片は、5~225アミノ酸長、10~225アミノ酸長、50~225アミノ酸長、60~225アミノ酸長、65~225アミノ酸長、100~225アミノ酸長、150~225アミノ酸長、100~175アミノ酸長、又は175~225アミノ酸長とすることができる。前記断片は、配列番号1に由来する連続数のアミノ酸を含むことができる。
b.UCH-L1認識抗体
本抗体は、UCH-L1、その断片、UCH-L1のエピトープ、又はその変異体と結合する抗体である。前記抗体は、抗UCH-L1抗体の断片又はその変異体若しくは誘導体でもよい。前記抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。前記抗体は、キメラ抗体、一本鎖抗体、親和性成熟抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、若しくはFab断片等の抗体断片、又はその混合物とすることができる。抗体断片又は誘導体は、F(ab’)、Fv又はscFv断片を含むことができる。抗体誘導体は、ペプチドミメティクスにより作製することができる。更に、一本鎖抗体の作製について記載されている技術を応用して一本鎖抗体を作製することもできる。
前記抗UCH-L1抗体は、キメラ抗UCH-L1抗体又はヒト化抗UCH-L1抗体とすることができる。1実施形態において、前記ヒト化抗体及びキメラ抗体はいずれも一価である。1実施形態において、前記ヒト化抗体及びキメラ抗体は、いずれもFc領域と連結された1個のFab領域を含む。
ヒト抗体は、ファージディスプレイ技術又はヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニックマウスから得ることができる。ヒト抗体は、ヒトインビボ免疫応答の結果として作製・単離することができる。例えば、Funaro et al.,BMC Biotechnology,2008(8):85参照。したがって、前記抗体は、ヒト及び非動物レパートリーの産物とすることができる。ヒト由来であるため、自己抗原に対する反応性の危険を最小限にすることができる。あるいは、標準酵母ディスプレイライブラリー及びディスプレイ技術を使用してヒト抗UCH-L1抗体を選択・単離することもできる。例えば、ナイーブヒト一本鎖可変領域断片(scFv)のライブラリーを使用してヒト抗UCH-L1抗体を選択することができる。トランスジェニック動物を使用してヒト抗体を発現させることができる。
ヒト化抗体は、所望の抗原と結合する非ヒト種抗体に由来する抗体分子であって、非ヒト種に由来する1個以上の相補性決定領域(CDR)と、ヒト免疫グロブリン分子に由来するフレームワーク領域を有するものとすることができる。
前記抗体は、当技術分野で公知のものとは異なる生物学的機能を有するという点で公知抗体と区別することができる。
(1)エピトープ
前記抗体は、UCH-L1(配列番号1)、その断片、又はその変異体と免疫特異的に結合することができる。前記抗体は、エピトープ領域内の少なくとも3アミノ酸、少なくとも4アミノ酸、少なくとも5アミノ酸、少なくとも6アミノ酸、少なくとも7アミノ酸、少なくとも8アミノ酸、少なくとも9アミノ酸、又は少なくとも10アミノ酸を免疫特異的に認識し、これらと結合することができる。前記抗体は、エピトープ領域の少なくとも3連続アミノ酸、少なくとも4連続アミノ酸、少なくとも5連続アミノ酸、少なくとも6連続アミノ酸、少なくとも7連続アミノ酸、少なくとも8連続アミノ酸、少なくとも9連続アミノ酸、又は少なくとも10連続アミノ酸を免疫特異的に認識し、これらと結合することができる。
c.抗体作製/生産
抗体は、当業者に周知の技術を含む種々の技術のいずれかにより作製することができる。一般に、抗体は、細胞培養技術により作製することができ、従来技術により、あるいは抗体遺伝子、重鎖及び/又は軽鎖を適切な細菌又は哺乳動物細胞宿主にトランスフェクションして抗体を産生させることにより、モノクローナル抗体を作製する方法が挙げられ、前記抗体は組換え体でもよい。「トランスフェクション」なる用語の各種変形は、外来DNAを原核又は真核宿主細胞に導入するために広く使用されている多様な技術を包含するものとし、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、DEAE-デキストラントランスフェクション等が挙げられる。原核宿主細胞でも真核宿主細胞でも抗体を発現させることが可能であるが、真核細胞(特に哺乳動物細胞)は原核細胞よりも正しく折り畳まれた免疫学的に活性な抗体をアセンブル・分泌する可能性が高いので、真核細胞で抗体を発現させるほうが好ましく、哺乳動物宿主細胞が最も好ましい。
組換え抗体を発現させるための典型的な哺乳動物宿主細胞としては、例えば、Kaufman and Sharp,J.Mol.Biol.,159:601-621(1982)に記載されているように、DHFR選択マーカーと共に使用されるチャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216-4220(1980)に記載されているdhfr-CHO細胞を含む)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞、及びSP2細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入すると、宿主細胞における抗体の発現、又はより好ましくは宿主細胞を増殖させる培養培地への抗体の分泌を可能にするために十分な時間をかけて宿主細胞を培養することにより、抗体が産生される。標準タンパク質精製法を使用して培養培地から抗体を回収することができる。
Fab断片やscFv分子等の機能的抗体断片を作製するために宿主細胞を使用することもできる。当然のことながら、上記手順の変形を実施してもよい。例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖のいずれかの機能的断片をコードするDNAを宿主細胞にトランスフェクトすることが望ましいと思われる。着目抗原との結合に不要な軽鎖及び重鎖の一方又は両方をコードするDNAの一部又は全部を除去するために、組換えDNA技術を使用してもよい。このような短縮型DNA分子から発現される分子も、前記抗体に含まれる。更に、標準化学的架橋方法により第1の抗体を第2の抗体と架橋させることにより、一方の重鎖と一方の軽鎖が第1の抗体であり(即ち、ヒトUCH-L1と結合する)、他方の重鎖と軽鎖がヒトUCH-L1以外の抗原に特異的である二機能性抗体を作製することもできる。
抗体又はその抗原結合部分の好ましい組換え発現システムでは、リン酸カルシウム法によるトランスフェクションにより、抗体重鎖と抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターをdhfr-CHO細胞に導入する。組換え発現ベクターの内側で、抗体重鎖及び軽鎖遺伝子を各々CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントと機能的に連結し、前記遺伝子の高レベルの転写を推進する。組換え発現ベクターは、DHFR遺伝子も組込んでいるので、メトトレキサート選択/増幅を使用してベクターをトランスフェクトされたCHO細胞を選択することができる。選択された形質転換宿主細胞を培養し、抗体重鎖及び軽鎖を発現させ、培養培地から無傷の抗体を回収する。組換え発現ベクターを作製し、宿主細胞にトランスフェクトし、形質転換細胞を選択し、宿主細胞を培養し、培養培地から抗体を回収するには、標準分子生物学技術を使用する。更に、組換え抗体が合成されるまで宿主細胞を適切な培養培地で培養することにより、組換え抗体を合成する方法を実施してもよい。前記方法は更に、組換え抗体を培養培地から単離する工程を含むことができる。
モノクローナル抗体の作製方法は、所望の特異性を有する抗体を産生することが可能な不死細胞株の作製を含む。このような細胞株は、免疫動物から取得した脾細胞から作製することができる。動物にUCH-L1又はその断片及び/若しくは変異体を免疫することができる。動物に免疫するために使用されるペプチドは、ヒトFc(例えば、ヒト抗体の断片結晶化可能領域又はテール領域)をコードするアミノ酸を含むことができる。次に、例えば、骨髄腫細胞融合パートナーと融合することにより、脾細胞を不死化させることができる。種々の融合技術を利用することができる。例えば、脾細胞と骨髄腫細胞を非イオン性界面活性剤で数分間結合させた後、ハイブリッド細胞の増殖を助長するが、骨髄腫細胞の増殖は助長しない選択培地に低密度で撒くことができる。このような技術の1例は、ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(HAT)選択を使用する。別の技術は、電気融合法を含む。十分な時間、通常では約1~2週間後に、ハイブリッドのコロニーが認められる。シングルコロニーを選択し、ポリペプチドに対する結合活性についてその培養上清を試験する。高い反応性と特異性を有するハイブリドーマを使用することができる。
増殖中のハイブリドーマコロニーの上清からモノクローナル抗体を単離することができる。更に、収率を上げるために種々の技術を利用することができ、ハイブリドーマ細胞株をマウス等の適切な脊椎動物宿主の腹腔に注入する方法が挙げられる。その後、腹水又は血液からモノクローナル抗体を回収することができる。クロマトグラフィー、ゲル濾過、沈殿、及び抽出等の従来技術により、汚染物質を抗体から除去することができる。抗体を精製するための工程で使用することができる方法の1例はアフィニティークロマトグラフィーである。
タンパク質分解酵素であるパパインは、IgG分子を優先的に切断して数個の断片とし、そのうちの2個(F(ab)断片)は、各々無傷の抗原結合部位を含む共有結合的ヘテロダイマーを構成する。酵素ペプシンは、IgG分子を切断し、両方の抗原結合部位を含むF(ab’)断片を含む数個の断片にすることができる。
Fv断片は、IgM免疫グロブリン分子と、ごく稀であるが、IgG又はIgA免疫グロブリン分子の優先的なタンパク質分解切断により作製することができる。Fv断片は、組換え技術を使用して得ることもできる。Fv断片は、天然抗体分子の抗原認識・結合能の多くを維持する抗原結合部位を含む非共有結合的VH::VLヘテロダイマーを含む。
前記抗体、抗体断片、又は誘導体は、重鎖及び軽鎖相補性決定領域(「CDR」)セットと、夫々CDRを挟むように配置され、CDRを支えると共に、CDRの相互間の空間関係を規定する重鎖及び軽鎖フレームワーク(「FR」)セットを含むことができる。CDRセットは、重鎖又は軽鎖V領域の3個の超可変領域を含むことができる。
必要な特異性の抗体を作製又は単離する他の適切な方法も使用することができ、限定されないが、当技術分野で公知の方法を使用し、例えば、Cambridge Antibody Technologies社(英国、ケンブリッジシャー)、MorphoSys社(Martinsreid/Planegg,Del.)、Biovation社(英国、スコットランド、アバディーン)、BioInvent社(スウェーデン、ルンド)等の種々の販売業者から入手可能なペプチド又はタンパク質ライブラリー(例えば、非限定的な例として、バクテリオファージ、リボソーム、オリゴヌクレオチド、RNA、cDNA、酵母等のディスプレイライブラリー)から組換え抗体を選択する方法が挙げられる。米国特許第4,704,692号、5,723,323号、5,763,192号、5,814,476号、5,817,483号、5,824,514号、5,976,862号参照。代替方法は、当技術分野で公知のように、及び/又は本願に記載するように、ヒト抗体のレパートリーを産生することが可能なトランスジェニック動物(例えば、SCIDマウス、Nguyen et al.(1997)Microbiol.Immunol.41:901-907;Sandhu et al.(1996)Crit.Rev.Biotechnol.16:95-118;Eren et al.(1998)Immunol.93:154-161)の免疫に依存する。このような技術としては、限定されないが、リボソームディスプレイ法(Hanes et al.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:4937-4942;Hanes et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:14130-14135);シングルセル抗体作製技術(例えば、リンパ球選択抗体法(「SLAM」)(米国特許第5,627,052号、Wen et al.(1987)J.Immunol.17:887-892;Babcook et al.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7843-7848));ゲルマイクロドロップ・フローサイトメトリー法(Powell et al.(1990)Biotechnol.8:333-337;One Cell Systems,(Cambridge,Mass).;Gray et al.(1995)J.Imm.Meth.182:155-163;Kenny et al.(1995)Bio/Technol.13:787-790);B細胞選択法(Steenbakkers et al.(1994)Molec.Biol.Reports 19:125-134(1994))が挙げられる。
当技術分野で公知の多数の手順のいずれか1種により親和性成熟抗体を作製することができる。例えば、Marks et al.,BioTechnology,10:779-783(1992)は、VH及びVLドメインシャフリングによる親和性成熟について記載している。Barbas et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,91:3809-3813(1994);Schier et al.,Gene,169:147-155(1995);Yelton et al.,J.Immunol.,155:1994-2004(1995);Jackson et al.,J.Immunol.,154(7):3310-3319(1995);Hawkins et al,J.Mol.Biol.,226:889-896(1992)には、CDR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発が記載されている。米国特許第6,914,128 B1号には、選択的突然変異誘発位置及び活性増強アミノ酸残基との接触又は超突然変異位置における選択的突然変異が記載されている。
その乳汁中にこのような抗体を産生するトランスジェニック動物又はヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジ等の哺乳動物を提供するように、抗体をコードするポリヌクレオチドを適切な宿主に送達することにより、抗体変異体を作製することもできる。これらの方法は、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第5,827,690号、5,849,992号、4,873,316号、5,849,992号、5,994,616号、5,565,362号、及び5,304,489号に記載されている。
このような抗体を産生するトランスジェニック植物及び培養植物細胞(例えば、非限定的な例として、タバコ、トウモロコシ、及びアオウキクサ)、特定の部分、又は前記植物部分若しくは前記部分から培養された細胞における変異体を提供するように、ポリヌクレオチドを送達することにより、抗体変異体を作製することもできる。例えば、Cramer et al.(1999)Curr.Top.Microbiol.Immunol.240:95-118とその引用文献は、例えば、誘導プロモーターを使用して多量の組換えタンパク質を発現するトランスジェニックタバコ葉の生産について記載している。他の組換えシステムで産生されるか又は天然源から精製される哺乳動物タンパク質と同等の生物学的活性を有する哺乳動物タンパク質を商業生産レベルで発現させるために、トランスジェニックトウモロコシが使用されている。例えば、Hood et al.,Adv.Exp.Med.Biol.(1999)464:127-147とその引用文献参照。タバコ種子とジャガイモ塊茎をはじめとして、一本鎖抗体(scFv)等の抗体断片を含むトランスジェニック植物種子からも抗体変異体が大量に生産されている。例えば、Conrad et al.(1998)Plant Mol.Biol.38:101-109とその引用文献参照。したがって、公知方法に従い、トランスジェニック植物を使用して抗体を作製することもできる。
例えば、免疫原性を変更するように、又は結合親和性、会合速度、解離速度、アビディティ、特異性、半減期、若しくは他の任意の適切な特性を低下、増強若しくは変更するように、外来配列を付加することにより、抗体誘導体を作製することができる。一般に、非ヒト又はヒトCDR配列の一部又は全部を維持し、可変領域と定常領域の非ヒト配列をヒト又は他のアミノ酸で置換する。
低分子抗体断片は、2個の抗原結合部位を有するダイアボディとすることができ、同一ポリペプチド鎖で重鎖可変ドメイン(VH)を軽鎖可変ドメイン(VL)と連結した断片(VH-VL)である。例えば、EP404,097;WO93/11161;及びHollinger et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448参照。同一の抗体鎖上のこれらの2個のドメインを対合させるには短か過ぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインを別の抗体鎖の相補的ドメインと対合させ、2個の抗原結合部位を形成する。Chenら名義の米国特許第6,632,926号は、親抗体の超可変領域に1アミノ酸以上を挿入し、標的抗原に対する結合親和性を前記抗原に対する親抗体の結合親和性の少なくとも約2倍とした抗体変異体を開示しており、その開示内容全体を本願に援用する。
前記抗体は、線状抗体とすることができる。線状抗体の作製手順は、当技術分野で公知であり、Zapata et al.,(1995)Protein Eng.8(10):1057-1062に記載されている。要約すると、これらの抗体は、1対の抗原結合領域を形成する1対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。線状抗体は二重特異性又は単一特異性とすることができる。
前記抗体は、公知方法により組換え細胞培養から回収・精製することができ、このような方法としては、限定されないが、プロテインA精製、硫安又はエタノール沈殿、酸抽出、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーが挙げられる。高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)も精製に使用できる。
前記抗体を検出可能に標識すると有用であると思われる。抗体をこれらの物質に共役させる方法は当技術分野で公知である。単に例証の目的に過ぎないが、放射性原子、発色団、フルオロフォア等の検出可能な部分で抗体を標識することができる。このような標識抗体をインビボで又は単離した被検試料で診断技術に使用することができる。抗体をサイトカイン、リガンド、別の抗体と連結することができる。抗腫瘍作用を奏するように抗体とカップリングするのに適した物質としては、インターロイキン2(IL-2)及び腫瘍壊死因子(TNF)等のサイトカイン;アルミニウム(III)フタロシアニンテトラスルホン酸、ヘマトポルフィリン、及びフタロシアニンを含む光線力学的療法用光増感剤;ヨウ素-131(131I)、イットリウム-90(90Y)、ビスマス-212(212Bi)、ビスマス-213(213Bi)、テクネチウム-99m(99mTc)、レニウム-186(186Re)、及びレニウム-188(188Re)等の放射性核種;ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、メトトレキサート、ダウノマイシン、ネオカルジノスタチン、及びカルボプラチン等の抗生物質;ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素A、ブドウ球菌エンテロトキシンA、アブリンA毒素、リシンA(脱グリコシル化リシンA及び天然リシンA)、TGF-α毒素、タイワンコブラ(naja atra)に由来する細胞毒、及びゲロニン(植物毒素)等の細菌、植物、及び他の毒素;レストリクトシン(アスペルギルス・レストリクタス(Aspergillus restrictus)により産生されるリボソーム不活性化タンパク質)、サポリン(サボンソウ(Saponaria officinalis)に由来するリボソーム不活性化タンパク質)、及びRNase等の植物、細菌及び真菌に由来するリボソーム不活性化タンパク質;チロシンキナーゼ阻害剤;ly207702(ジフルオロ化プリンヌクレオチド);抗嚢胞剤(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、毒素をコードするプラスミド、メトトレキサート等)を内包するリポソーム;並びに他の抗体又はF(ab)等の抗体断片が挙げられる。
ハイブリドーマ技術、リンパ球選択抗体法(SLAM)、トランスジェニック動物、及び組換え抗体ライブラリーの使用による抗体作製について、以下に詳述する。
(1)ハイブリドーマ技術を使用した抗UCH-L1モノクローナル抗体
ハイブリドーマ技術、組換え技術、及びファージディスプレイ技術、又はその組み合わせの使用を含む当技術分野で公知の多様な技術を使用して、モノクローナル抗体を作製することができる。例えば、当技術分野で公知であり、例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,second edition,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,1988);Hammerling,et al.,In Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas,(Elsevier,N.Y.,1981)に教示されているものを含むハイブリドーマ技術を使用して、モノクローナル抗体を作製することができる。なお、本願で使用する「モノクローナル抗体」なる用語は、ハイブリドーマ技術により作製される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」なる用語は、任意の真核、原核、又はファージクローンを含むシングルクローンに由来する抗体を意味し、その作製方法を意味するものではない。
モノクローナル抗体の作製方法と、このような方法により作製された抗体は、本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養する工程を含むことができ、前記ハイブリドーマは、UCH-L1を免疫した動物(例えば、ラット又はマウス)から単離した脾細胞を骨髄腫細胞と融合した後、融合から得られたハイブリドーマをスクリーニングし、本発明のポリペプチドと結合することが可能な抗体を分泌するハイブリドーマクローンを選択することにより作製することが好ましい。要約すると、ラットにUCH-L1抗原を免疫することができる。好ましい1実施形態では、UCH-L1抗原をアジュバントと共に投与し、免疫応答を刺激する。このようなアジュバントとしては、完全若しくは不完全フロイントアジュバント、RIBI(ムラミルジペプチド)又はISCOM(免疫刺激複合体)が挙げられる。このようなアジュバントは、ポリペプチドを局所貯留場所に隔離することにより急速に分散しないように保護することができ、又はマクロファージ及び免疫系の他の成分に対して走化性の因子を分泌するように宿主を刺激する物質を含有することができる。ポリペプチドを投与する場合には、数週間かけてポリペプチドを2回以上投与する免疫スケジュールが好ましいが、ポリペプチドの単回投与を使用してもよい。
動物にUCH-L1抗原を免疫後、動物から抗体及び/又は抗体産生細胞を取得することができる。動物の採血又は屠殺により抗UCH-L1抗体を含有する血清を動物から取得する。血清を動物から取得したまま使用してもよいし、血清から免疫グロブリン画分を取得してもよいし、血清から抗UCH-L1抗体を精製してもよい。こうして取得された血清又は免疫グロブリンは、ポリクローナルであるため、一連の不均一な性質を有する。
免疫応答が検出されたら(例えば、抗原UCH-L1に特異的な抗体がラット血清中で検出されたら)、ラット脾臓を摘出し、脾細胞を単離する。次に、脾細胞を周知技術により任意の適切な骨髄腫細胞(例えば、American Type Culture Collection(ATCC,Manassas,Va.,US)から入手可能な細胞株SP20に由来する細胞)と融合する。ハイブリドーマを限界希釈法により選択・クローニングする。次に、UCH-L1と結合することが可能な抗体を分泌する細胞について、当技術分野で公知の方法によりハイブリドーマクローンをアッセイする。陽性のハイブリドーマクローンをラットに免疫することにより、一般に高値の抗体を含有する腹水を生成することができる。
別の実施形態では、免疫した動物から抗体を産生する不死化ハイブリドーマを作製することができる。免疫後、動物を屠殺し、当技術分野で周知のように、脾臓B細胞を不死化骨髄腫細胞と融合する。例えば、Harlow and Lane,前出参照。好ましい1実施形態において、前記骨髄腫細胞は、免疫グロブリンポリペプチドを分泌しない(非分泌型細胞株)。融合と抗生物質選択後、UCH-L1若しくはその一部、又はUCH-L1を発現する細胞を使用してハイブリドーマをスクリーニングする。好ましい1実施形態では、酵素免疫測定法(ELISA)又はラジオイムノアッセイ(RIA)、好ましくはELISAを使用して初期スクリーニングを実施する。ELISAスクリーニングの1例は、PCT公開第WO00/37504号に記載されている。
抗UCH-L1抗体を産生するハイブリドーマを選択し、クローニングし、堅牢なハイブリドーマ増殖、高収率の抗体産生、及び望ましい抗体特性を含む望ましい特性について更にスクリーニングする。同系動物、免疫系を欠損する動物(例えば、ヌードマウス)でインビボにて又は細胞培養でインビトロにてハイブリドーマを培養・増殖させることができる。ハイブリドーマの選択、クローニング及び増殖方法は当技術分野における通常の知識を有する者に周知である。
好ましい1実施形態において、ハイブリドーマは、ラットハイブリドーマである。別の実施形態では、マウス、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、又はウマ等の非ヒト非ラット生物種でハイブリドーマを産生させる。更に別の好ましい実施形態において、ハイブリドーマは、抗UCH-L1抗体を発現するヒト細胞とヒト非分泌型骨髄腫を融合させたヒトハイブリドーマである。
公知技術により、非特異的エピトープを認識する抗体断片を作製することができる。例えば、(2個の同一のFab断片を作製するために)パパイン又は(F(ab’)断片を作製するために)ペプシン等の酵素を使用して免疫グロブリン分子のタンパク質分解切断により、本発明のFab及びF(ab’)断片を作製することができる。IgG分子のF(ab’)断片は、より大きい(「親」)IgG分子の2個の抗原結合部位を維持し、親IgG分子の(軽鎖可変領域と軽鎖定常領域を含む)両方の軽鎖と、重鎖のCH1ドメインと、ジスルフィド形成ヒンジ領域を含む。したがって、F(ab’)断片は依然として親IgG分子と同様に抗原分子と架橋することが可能である。
(2)SLAMを使用した抗UCH-L1モノクローナル抗体
本発明の別の態様では、当技術分野でリンパ球選択抗体法(SLAM)と呼ばれ、米国特許第5,627,052号;PCT公開第WO92/02551号;及びBabcook et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:7843-7848(1996)に記載されているような手順を使用し、単離されたシングルリンパ球から組換え抗体を作製する。この方法では、抗原特異的溶血プラークアッセイを使用して着目抗体を分泌するシングルセル(例えば、免疫した動物のいずれか1個体に由来するリンパ球)をスクリーニングし、ビオチン等のリンカーを使用して抗原UCH-L1、UCH-L1のサブユニット、又はその断片をヒツジ赤血球とカップリングし、UCH-L1に対して特異性を有する抗体を分泌するシングルセルを同定するために使用する。着目抗体を分泌する細胞を同定後、逆転写PCR(RT-PCR)により重鎖及び軽鎖可変領域cDNAを細胞からレスキューした後、COS又はCHO細胞等の哺乳動物宿主細胞で適切な免疫グロブリン定常領域(例えば、ヒト定常領域)のコンテキストにおいてこれらの可変領域を発現させることができる。インビボで選択したリンパ球に由来する免疫グロブリン配列を増幅して宿主細胞にトランスフェクトした後、例えば、トランスフェクトした細胞をパニングすることにより、インビトロで更に分析・選択し、UCH-L1に対する抗体を発現する細胞を単離することができる。増幅した免疫グロブリン配列をインビトロ親和性成熟法等により、インビトロで更に操作することができる。例えば、PCT公開第WO97/29131号及びPCT公開第WO00/56772号参照。
(3)トランスジェニック動物を使用した抗UCH-L1モノクローナル抗体
本発明の別の実施形態では、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の一部又は全部を含む非ヒト動物にUCH-L1抗原を免疫することにより、抗体を作製する。1実施形態において、前記非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の大きい断片を含み、マウス抗体産生を欠損する人工マウス系列であるXENOMOUSE(R)トランスジェニックマウスである。例えば、Green et al.,Nature Genetics,7:13-21(1994)並びに米国特許第5,916,771号、5,939,598号、5,985,615号、5,998,209号、6,075,181号、6,091,001号、6,114,598号、及び6,130,364号参照。PCT公開第WO91/10741号、WO94/02602号、WO96/34096号、WO96/33735号、WO98/16654号、WO98/24893号、WO98/50433号、WO99/45031号、WO99/53049号、WO00/09560号、及びWO00/37504も参照。XENOMOUSE(R)トランスジェニックマウスは、完全ヒト抗体の成人様ヒトレパートリーを産生し、抗原特異的ヒトモノクローナル抗体を生成する。XENOMOUSE(R)トランスジェニックマウスは、ヒト重鎖遺伝子座とx軽鎖遺伝子座のメガベースサイズの生殖細胞系列構造YAC断片の導入により、ヒト抗体レパートリーの約80%を含む。その開示内容を本願に援用するMendez et al.,Nature Genetics,15:146-156(1997),Green and Jakobovits,J.Exp.Med.,188:483-495(1998)参照。
(4)組換え抗体ライブラリーを使用した抗UCH-L1モノクローナル抗体
抗体ライブラリーをスクリーニングして所望のUCH-L1結合特異性を有する抗体を同定するインビトロ方法も、本発明の抗体を作製するために使用することができる。組換え抗体ライブラリーのこのようなスクリーニングの方法は、当技術分野で周知であり、例えば、各々その開示内容を本願に援用する米国特許第5,223,409号(Ladner et al.);PCT公開第WO92/18619号(Kang et al.);PCT公開第WO91/17271号(Dower et al.);PCT公開第WO92/20791号(Winter et al.);PCT公開第WO92/15679号(Markland et al.);PCT公開第WO93/01288号(Breitling et al.);PCT公開第WO92/01047号(McCafferty et al.);PCT公開第WO92/09690号(Garrard et al.);Fuchs et al.,Bio/Technology,9:1369-1372(1991);Hay et al.,Hum.Antibod.Hybridomas,3:81-85(1992);Huse et al.,Science,246:1275-1281(1989);McCafferty et al.,Nature,348:552-554(1990);Griffiths et al.,EMBO J.,12:725-734(1993);Hawkins et al.,J.Mol.Biol.,226:889-896(1992);Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991);Gram et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:3576-3580(1992);Garrard et al.,Bio/Technology,9:1373-1377(1991);Hoogenboom et al.,Nucl.Acids Res.,19:4133-4137(1991);Barbas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:7978-7982(1991);米国特許出願公開第2003/0186374号;及びPCT公開第WO97/29131号に記載されている方法が挙げられる。
前記組換え抗体ライブラリーは、UCH-L1又はUCH-L1の一部を免疫した対象に由来することができる。あるいは、前記組換え抗体ライブラリーは、ヒトUCH-L1を免疫していないヒト対象に由来するヒト抗体ライブラリーのように、ナイーブ対象(即ち、UCH-L1を免疫していない対象)に由来することができる。本発明の抗体は、ヒトUCH-L1を含むペプチドで組換え抗体ライブラリーをスクリーニングしてUCH-L1を認識する抗体を選択することにより選択される。このようなスクリーニングと選択を実施する方法は、前の段落に挙げた参考資料に記載されているように、当技術分野で周知である。UCH-L1に対する特定の結合親和性を有する本発明の抗体(例えば、特定のKoff速度定数でヒトUCH-L1から解離する抗体)を選択するためには、当技術分野で公知の表面プラズモン共鳴法を使用し、所望のKoff速度定数を有する抗体を選択することができる。hUCH-L1に対して特定の中和活性を有する本発明の抗体(例えば、特定のIC50を有する抗体)を選択するためには、UCH-L1活性の阻害を評定する方法として当技術分野で公知の標準方法を使用することができる。
1態様において、本発明は、ヒトUCH-L1と結合する単離抗体又はその抗原結合部分に関する。前記抗体は、中和抗体であることが好ましい。種々の実施形態において、前記抗体は、組換え抗体又はモノクローナル抗体である。
例えば、当技術分野で公知の種々のファージディスプレイ法を使用して抗体を作製することもできる。ファージディスプレイ法では、機能的抗体ドメインをコードするポリヌクレオチド配列を含むファージ粒子の表面に前記機能的抗体ドメインを提示させる。レパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒト又はマウス)から発現される抗原結合ドメインを提示させるために、このようなファージを利用することができる。例えば、標識抗原又は固相表面若しくはビーズに結合若しくは捕捉した抗原を使用し、着目抗原と結合する抗原結合ドメインを発現するファージを抗原で選択又は同定することができる。これらの方法で使用されるファージは、一般的に、Fab抗体ドメイン、Fv抗体ドメイン、又はジスルフィド結合により安定化させたFv抗体ドメインをファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIタンパク質と組換え融合させたファージから発現されるfd及びM13結合ドメインを含む繊維状ファージである。抗体を作製するために使用することができるファージディスプレイ法の例としては、Brinkmann et al.,J.Immunol.Methods,182:41-50(1995);Ames et al.,J.Immunol.Methods,184:177-186(1995);Kettleborough et al.,Eur.J.Immunol.,24:952-958(1994);Persic et al.,Gene,187:9-18(1997);Burton et al.,Advances in Immunology,57:191-280(1994);PCT公開第WO92/01047号;PCT公開第WO90/02809号、WO91/10737号、WO92/01047号、WO92/18619号、WO93/11236号、WO95/15982号、WO95/20401号、並びに米国特許第5,698,426号、5,223,409号、5,403,484号、5,580,717号、5,427,908号、5,750,753号、5,821,047号、5,571,698号、5,427,908号、5,516,637号、5,780,225号、5,658,727号、5,733,743号、及び5,969,108号に開示されている方法が挙げられる。
上記参考資料に記載されているように、ファージ選択後に、前記ファージに由来する領域をコードする抗体を単離し、ヒト抗体又は他の任意の所望の抗原結合断片を含む全長抗体を作製するために使用し、例えば、以下に詳述するように、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、及び細菌を含む任意の所望の宿主で発現させることができる。例えば、PCT公開第WO92/22324号;Mullinax et al.,BioTechniques,12(6):864-869(1992);Sawai et al.,Am.J.Reprod.Immunol.,34:26-34(1995);及びBetter et al.,Science,240:1041-1043(1988)に開示されている方法等の当技術分野で公知の方法を使用し、Fab、Fab’、及びF(ab’)断片を組換え生産する技術を利用することもできる。一本鎖Fv及び抗体を作製するために使用することができる技術の例としては、米国特許第4,946,778号及び5,258,498号;Huston et al.,Methods in Enzymology,203:46-88(1991);Shu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7995-7999(1993);並びにSkerra et al.,Science,240:1038-1041(1988)に記載されている技術が挙げられる。
ファージディスプレイ法による組換え抗体ライブラリーのスクリーニングの代わりに、大型のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする方法として当技術分野で公知の他の方法を本発明の抗体の同定に適用することもできる。代替発現システムの1例は、PCT公開第WO98/31700号(Szostak and Roberts)、及びRoberts and Szostak,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:12297-12302(1997)に記載されているように、組換え抗体ライブラリーをRNA-タンパク質融合体として発現させるシステムである。このシステムでは、ペプチジルアクセプター抗生物質であるピューロマイシンをその3’末端に付けた合成mRNAのインビトロ翻訳により、mRNAとこれによりコードされるペプチド又はタンパク質の共有結合的融合体を作製する。したがって、コードされるペプチド又はタンパク質(例えば、抗体又はその部分)の性質(例えば、抗体又はその部分とデュアル特異性抗原との結合)に基づいてmRNAの複合体混合物(例えば、コンビナトリアルライブラリー)から特定のmRNAを集積させることができる。このようなライブラリーのスクリーニングから回収された抗体又はその部分をコードする核酸配列を上記のような組換え手段により(例えば、哺乳動物宿主細胞で)発現させることができ、更に、上記のように、当初に選択された配列に突然変異を導入したmRNA-ペプチド融合体の付加ラウンドのスクリーニングにより、又は組換え抗体の他のインビトロ親和性成熟法により、更に親和性成熟に供することができる。この方法の好ましい1例はPROfusionディスプレイ技術である。
別のアプローチでは、当技術分野で公知の酵母ディスプレイ法を使用して抗体を作製することもできる。酵母ディスプレイ法では、遺伝子工学的手法を用いて抗体ドメインを酵母細胞壁に繋ぎ、酵母の表面に提示させる。このような酵母を利用してレパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒト又はマウス)から発現される抗原結合ドメインを提示させることができる。抗体を作製するために使用することができる酵母ディスプレイ法の例としては、本願に援用する米国特許第6,699,658号(Wittrup et al.)に開示されている方法が挙げられる。
d.組換えUCH-L1抗体の作製
当技術分野で公知の多数の技術のいずれかにより、抗体を作製することができる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターを標準技術により宿主細胞にトランスフェクトし、宿主細胞から発現させる。「トランスフェクション」なる用語の各種変形は、外来DNAを原核又は真核宿主細胞に導入するために広く使用されている多様な技術を包含するものとし、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、DEAE-デキストラントランスフェクション等が挙げられる。原核宿主細胞でも真核宿主細胞でも本発明の抗体を発現させることが可能であるが、真核細胞(特に哺乳動物細胞)は原核細胞よりも正しく折り畳まれた免疫学的に活性な抗体をアセンブル・分泌する可能性が高いので、真核細胞で抗体を発現させるほうが好ましく、哺乳動物宿主細胞が最も好ましい。
本発明の組換え抗体を発現させるための典型的な哺乳動物宿主細胞としては、例えば、Kaufman and Sharp,J.Mol.Biol.,159:601-621(1982)に記載されているように、DHFR選択マーカーと共に使用されるチャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216-4220(1980)に記載されているdhfr-CHO細胞を含む)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞、及びSP2細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入すると、宿主細胞における抗体の発現、又はより好ましくは宿主細胞を増殖させる培養培地への抗体の分泌を可能にするために十分な時間をかけて宿主細胞を培養することにより、抗体が産生される。標準タンパク質精製法を使用して培養培地から抗体を回収することができる。
Fab断片やscFv分子等の機能的抗体断片を作製するために宿主細胞を使用することもできる。当然のことながら、上記手順の変形を実施してもよい。例えば、本発明の抗体の軽鎖及び/又は重鎖のいずれかの機能的断片をコードするDNAを宿主細胞にトランスフェクトすることが望ましいと思われる。着目抗原との結合に不要な軽鎖及び重鎖の一方又は両方をコードするDNAの一部又は全部を除去するために、組換えDNA技術を使用してもよい。このような短縮型DNA分子から発現される分子も、本発明の抗体に含まれる。更に、標準化学的架橋方法により本発明の抗体を第2の抗体と架橋させることにより、一方の重鎖と軽鎖が本発明の抗体であり(即ち、ヒトUCH-L1と結合する)、他方の重鎖と軽鎖がヒトUCH-L1以外の抗原に特異的である二機能性抗体を作製することもできる。
本発明の抗体又はその抗原結合部分の好ましい組換え発現システムでは、リン酸カルシウム法によるトランスフェクションにより、抗体重鎖と抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターをdhfr-CHO細胞に導入する。組換え発現ベクターの内側で、抗体重鎖及び軽鎖遺伝子を各々CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントと機能的に連結し、前記遺伝子の高レベルの転写を推進する。組換え発現ベクターは、DHFR遺伝子も組込んでいるので、メトトレキサート選択/増幅を使用してベクターをトランスフェクトされたCHO細胞を選択することができる。選択された形質転換宿主細胞を培養し、抗体重鎖及び軽鎖を発現させ、培養培地から無傷の抗体を回収する。組換え発現ベクターを作製し、宿主細胞にトランスフェクトし、形質転換細胞を選択し、宿主細胞を培養し、培養培地から抗体を回収するには、標準分子生物学技術を使用する。更に、本発明は、本発明の組換え抗体が合成されるまで本発明の宿主細胞を適切な培養培地で培養することにより、本発明の組換え抗体を合成する方法を提供する。前記方法は更に、前記組換え抗体を培養培地から単離する工程を含むことができる。
(1)ヒト化抗体
ヒト化抗体は、着目抗原と免疫特異的に結合し、実質的にヒト抗体のアミノ酸配列を有するフレームワーク(FR)領域と、実質的に非ヒト抗体のアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を含む抗体又はその変異体、誘導体、アナログ若しくは部分とすることができる。ヒト化抗体は、所望の抗原と結合し、非ヒト種に由来する1個以上の相補性決定領域(CDR)と、ヒト免疫グロブリン分子に由来するフレームワーク領域を有する非ヒト種抗体に由来することができる。
CDRに関して本願で使用する「実質的に」なる用語は、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列に少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%一致するアミノ酸配列を有するCDRを意味する。ヒト化抗体は、少なくとも1個、一般的には2個の可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)、FabC、Fv)の実質的に全部を含み、CDR領域の全部又は実質的に全部が、非ヒト免疫グロブリン(即ち、ドナー抗体)のCDR領域に対応し、フレームワーク領域の全部又は実質的に全部が、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のフレームワーク領域である。1態様によると、ヒト化抗体は更に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、一般的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。所定の実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖と、重鎖の少なくとも可変ドメインの両方を含む。前記抗体は更に、重鎖のCH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、CH3領域、及びCH4領域を含むことができる。所定の実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖のみを含む。所定の実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト化重鎖のみを含む。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖及び/又は重鎖のヒト化可変ドメインのみを含む。
ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含む任意の免疫グロブリンクラスと、限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む任意のアイソタイプから選択することができる。ヒト化抗体は、2種類以上のクラス又はアイソタイプに由来する配列を含むことができ、当技術分野で周知の技術を使用して所望のエフェクター機能を最適化させるように特定の定常ドメインを選択することができる。
ヒト化抗体のフレームワーク領域とCDR領域は、親配列と厳密に対応する必要はなく、例えば、その部位のCDR又はフレームワーク残基がドナー抗体又はコンセンサスフレームワークのいずれとも対応しないように、少なくとも1アミノ酸残基の置換、挿入及び/又は欠失により、ドナー抗体CDR又はコンセンサスフレームワークに突然変異を誘発してもよい。しかし、1実施形態において、このような突然変異は、広範囲にならない。通常では、ヒト化抗体残基の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%が親FR及びCDR配列と対応するであろう。本願で使用する場合に「コンセンサスフレームワーク」なる用語は、コンセンサス免疫グロブリン配列におけるフレームワーク領域を意味する。本願で使用する場合に「コンセンサス免疫グロブリン配列」なる用語は、同族免疫グロブリン配列のファミリーに最高頻度で存在するアミノ酸(又はヌクレオチド)から形成される配列を意味する(例えば、Winnaker,From Genes to Clones(Verlagsgesellschaft,Weinheim,Germany 1987)参照)。免疫グロブリンのファミリーにおいて、コンセンサス配列中の各位置は、前記ファミリーにおけるその位置に最高頻度で存在するアミノ酸により占められる。2個のアミノ酸が同等の頻度で存在する場合には、どちらがコンセンサス配列に含まれていてもよい。
齧歯類抗ヒト抗体に対する免疫応答は、ヒトレシピエントにおけるこれらの部分の治療適用の持続時間と有効性を制限するので、このような望ましくない免疫応答を最小限にするように、ヒト化抗体を設計することができる。ヒト化抗体は、非ヒト資源から導入された1個以上のアミノ酸残基を有することができる。これらの非ヒト残基は、「インポート」残基と呼ばれることが多く、一般的に可変ドメインから取り出される。ヒト化は、ヒト抗体の対応する配列を超可変領域配列に置き換えることにより実施することができる。したがって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインよりも実質的に少ない部分が非ヒト種に由来する対応する配列で置き換えられたキメラ抗体である。例えば、その開示内容を本願に援用する米国特許第4,816,567号参照。ヒト化抗体は、一部の超可変領域残基と、恐らく一部のFR残基が、齧歯類抗体における類似部位からの残基で置き換えられたヒト抗体とすることができる。本発明の抗体のヒト化又はエンジニアリングは、限定されないが、米国特許第5,723,323号、5,976,862号、5,824,514号、5,817,483号、5,814,476号、5,763,192号、5,723,323号、5,766,886号、5,714,352号、6,204,023号、6,180,370号、5,693,762号、5,530,101号、5,585,089号、5,225,539号、及び4,816,567号に記載されている方法等の任意の公知方法を使用して実施することができる。
ヒト化抗体は、UCH-L1に対する高い親和性と、他の好ましい生物学的性質を維持することができる。ヒト化抗体は、親配列とヒト化配列の三次元モデルを使用して親配列と種々の概念ヒト化産物の分析法により作製することができる。三次元免疫グロブリンモデルは、広く入手可能である。選択された候補免疫グロブリン配列の予想される三次元立体構造を描画・表示するコンピュータプログラムが入手可能である。これらの表示を精査すると、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の予想される役割を解析することができ、即ち、その抗原と結合する候補免疫グロブリンの能力に影響を与える残基を解析することができる。こうして、UCH-L1に対する親和性の増加等の望ましい抗体特性が得られるように、レシピエント配列とインポート配列からFR残基を選択し、組み合わせることができる。一般に、抗原結合に影響を与えるのに直接的且つ最も実質的に関与しているのは、超可変領域残基であると思われる。
ヒト化の代用として、ヒト抗体(本願では「完全ヒト抗体」とも言う)を作製することもできる。例えば、PROfusion及び/又は酵母関連技術により、ライブラリーからヒト抗体を単離することが可能である。トランスジェニック動物(例えば、免疫後に、内在性免疫グロブリン産生の不在下でヒト抗体の完全なレパートリーを産生することが可能なマウス)を作製することも可能である。例えば、キメラ及び生殖細胞系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子のホモ接合性欠失の結果、内在性抗体産生が完全に阻害される。ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子配列をこのような生殖細胞系列突然変異体マウスに移入すると、抗原チャレンジ後にヒト抗体が産生されるであろう。ヒト化抗体又は完全ヒト抗体は、各々その開示内容を本願に援用する米国特許第5,770,429号、5,833,985号、5,837,243号、5,922,845号、6,017,517号、6,096,311号、6,111,166号、6,270,765号、6,303,755号、6,365,116号、6,410,690号、6,682,928号、及び6,984,720号に記載されている方法に従って作製することができる。
e.抗UCH-L1抗体
上記技術と、当技術分野で公知の慣用技術を使用して抗UCH-L1抗体を作製することができる。所定の実施形態において、抗UCH-L1抗体は、United State Biological(カタログ番号:031320)、Cell Signaling Technology(カタログ番号:3524)、Sigma-Aldrich(カタログ番号:HPA005993)、Santa Cruz Biotechnology,Inc.(カタログ番号:sc-58593又はsc-58594)、R&D Systems(カタログ番号:MAB6007)、Novus Biologicals(カタログ番号:NB600-1160)、Biorbyt(カタログ番号:orb33715)、Enzo Life Sciences,Inc.(カタログ番号:ADI-905-520-1)、Bio-Rad(カタログ番号:VMA00004)、BioVision(カタログ番号:6130-50)、Abcam(カタログ番号:ab75275又はab104938)、Invitrogen Antibodies(カタログ番号:480012)、ThermoFisher Scientific(カタログ番号:MA1-46079、MA5-17235、MA1-90008、又はMA1-83428)、EMD Millipore(カタログ番号:MABN48)、又はSino Biological Inc.(カタログ番号:50690-R011)の各社から入手可能なUCH-L1抗体等の共役していない抗UCH-L1抗体とすることができる。BioVision(カタログ番号:6960-25)又はAviva Systems Biology(Cat.Nos.OAAF01904-FITC)の各社から入手可能な共役UCH-L1抗体のように、UCH-L1抗体をフルオロフォアと共役させてもよい。
6.GFAP値の測定方法
上記方法では、任意の手段によりGFAP値を測定することができ、イムノアッセイ、タンパク質免疫沈降法、免疫電気泳動法、化学分析、SDS-PAGEとウェスタンブロット分析又はタンパク質免疫染色法、電気泳動分析、タンパク質アッセイ、競合結合アッセイ、機能的タンパク質アッセイ等の抗体依存方法や、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又は液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)等のクロマトグラフィー又はスペクトロメトリー法が挙げられる。また、当業者に公知のように、臨床化学フォーマットで前記アッセイを利用することもできる。
所定の実施形態において、GFAP値の測定は、前記試料を第1の特異的結合メンバー及び第2の特異的結合メンバーと接触させる工程を含む。所定の実施形態において、前記第1の特異的結合メンバーは、捕捉抗体であり、前記第2の特異的結合メンバーは、検出抗体である。所定の実施形態において、GFAP値の測定は、捕捉抗体とGFAP抗原と検出抗体の複合体(例えば、GFAP捕捉抗体とGFAP抗原とGFAP検出抗体の複合体)が形成されるように、前記試料を、(1)GFAP又はGFAP断片上のエピトープと結合して捕捉抗体とGFAP抗原の複合体(例えば、GFAP捕捉抗体とGFAP抗原の複合体)を形成する捕捉抗体(例えば、GFAP捕捉抗体)と、(2)検出可能なラベルを含み、捕捉抗体と結合していないGFAP上のエピトープと結合してGFAP抗原と検出抗体の複合体(例えば、GFAP抗原とGFAP検出抗体の複合体)を形成する検出抗体(例えば、GFAP検出抗体)とに、同時又は任意の順序で逐次接触させる工程と、前記捕捉抗体とGFAP抗原と検出抗体の複合体中の検出可能なラベルにより発生されるシグナルに基づいて前記試料中のGFAPの量又は濃度を測定する工程を含む。
所定の実施形態において、前記第1の特異的結合メンバーは、固相担体に固相化されている。所定の実施形態において、前記第2の特異的結合メンバーは、固相担体に固相化されている。所定の実施形態において、前記第1の特異的結合メンバーは、以下に記載するようなGFAP抗体である。
所定の実施形態において、前記試料は、希釈されているか、又は希釈されていない。前記試料は、約1~約25マイクロリットル、約1~約24マイクロリットル、約1~約23マイクロリットル、約1~約22マイクロリットル、約1~約21マイクロリットル、約1~約20マイクロリットル、約1~約18マイクロリットル、約1~約17マイクロリットル、約1~約16マイクロリットル、約15マイクロリットル又は約1マイクロリットル、約2マイクロリットル、約3マイクロリットル、約4マイクロリットル、約5マイクロリットル、約6マイクロリットル、約7マイクロリットル、約8マイクロリットル、約9マイクロリットル、約10マイクロリットル、約11マイクロリットル、約12マイクロリットル、約13マイクロリットル、約14マイクロリットル、約15マイクロリットル、約16マイクロリットル、約17マイクロリットル、約18マイクロリットル、約19マイクロリットル、約20マイクロリットル、約21マイクロリットル、約22マイクロリットル、約23マイクロリットル、約24マイクロリットル又は約25マイクロリットルとすることができる。所定の実施形態において、前記試料は、約1~約150マイクロリットル以下又は約1~約25マイクロリットル以下である。
ポイントオブケアデバイス以外の(例えば、Abbott Laboratories社製機器ARCHITECT(R)や、他のコアラボラトリー機器等の)所定の機器は、試料中の25,000pg/mL超のGFAP値を測定することが可能であると思われる。
他の検出方法としては、ナノポアデバイス又はナノウェルデバイスの使用が挙げられ、あるいはこれらのデバイスで使用するように適応させることができる。ナノポアデバイスの例は、その開示内容全体を本願に援用する国際特許公開第WO2016/161402号に記載されている。ナノウェルデバイスの例は、その開示内容全体を本願に援用する国際特許公開第WO2016/161400号に記載されている。
7.GFAP抗体
本願に記載する方法は、グリア線維性酸性タンパク質(「GFAP」)(又はその断片)と特異的に結合する単離抗体(「GFAP抗体」と言う)を使用することができる。GFAP抗体は、外傷性脳損傷の尺度としてのGFAP状態を評定するため、試料中のGFAPの存在を検出するため、試料中に存在するGFAPの量を定量するため、又は試料中のGFAPの存在を検出し、定量するために使用することができる。
a.グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)
グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)は、アストロサイトにおける細胞骨格の一部を構成する50kDa細胞質内繊維状タンパク質であり、アストロサイト由来細胞に最も特異的なマーカーであることが証明されている。GFAPタンパク質は、ヒトではGFAP遺伝子によりコードされる。GFAPは、成熟アストロサイトの主要な中間径フィラメントである。分子の中心ロッドドメインにおいて、GFAPは、他の中間径フィラメントと顕著な構造相同性を有する。GFAPは、アストロサイト突起に構造安定性を提供することにより、アストロサイト運動性及び形状に関与する。グリア線維性酸性タンパク質とその分解物(GFAP-BDP)は、外傷性脳損傷(TBI)後に病態生理学的応答の一部として血液中に放出される脳特異的タンパク質である。外傷、遺伝障害、又は化学物質により起因するヒトCNSの損傷後、アストロサイトは増殖し、細胞本体及び突起の広範な肥大を示し、GFAPが著しくアップレギュレートされる。一方、アストロサイト悪性度の上昇と共に、GFAP産生の漸進的低下が生じる。GFAPは、シュワン細胞、腸管グリア細胞、唾液腺新生物、転移性腎臓がん、喉頭蓋軟骨、下垂体細胞、未成熟乏突起膠細胞、乳頭状髄膜腫、及び乳房の筋上皮細胞でも検出することができる。
ヒトGFAPは、以下のアミノ酸配列を有することができる。
Figure 2023552755000004
ヒトGFAPは、配列番号2の断片又は変異体でもよい。GFAPの断片は、5~400アミノ酸長、10~400アミノ酸長、50~400アミノ酸長、60~400アミノ酸長、65~400アミノ酸長、100~400アミノ酸長、150~400アミノ酸長、100~300アミノ酸長、又は200~300アミノ酸長とすることができる。前記断片は、配列番号2に由来する連続数のアミノ酸を含むことができる。配列番号2のヒトGFAP断片又は変異体は、GFAP分解物(BDP)でもよい。GFAP BDPは、38kDa、42kDa(低分子41kDa)、47kDa(低分子45kDa)、25kDa(低分子23kDa)、19kDa、又は20kDaとすることができる。
b.GFAP認識抗体
本抗体は、GFAP、その断片、GFAPのエピトープ、又はその変異体と結合する抗体である。前記抗体は、抗GFAP抗体の断片又はその変異体若しくは誘導体でもよい。前記抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。前記抗体は、キメラ抗体、一本鎖抗体、親和性成熟抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、若しくはFab断片等の抗体断片、又はその混合物とすることができる。抗体断片又は誘導体は、F(ab’)、Fv又はscFv断片を含むことができる。抗体誘導体は、ペプチドミメティクスにより作製することができる。更に、一本鎖抗体の作製について記載されている技術を応用して一本鎖抗体を作製することもできる。
前記抗GFAP抗体は、キメラ抗GFAP抗体又はヒト化抗GFAP抗体とすることができる。1実施形態において、前記ヒト化抗体及びキメラ抗体はいずれも一価である。1実施形態において、前記ヒト化抗体及びキメラ抗体は、いずれもFc領域と連結された1個のFab領域を含む。
ヒト抗体は、ファージディスプレイ技術又はヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニックマウスから得ることができる。ヒト抗体は、ヒトインビボ免疫応答の結果として作製・単離することができる。例えば、Funaro et al.,BMC Biotechnology,2008(8):85参照。したがって、前記抗体は、ヒト及び非動物レパートリーの産物とすることができる。ヒト由来であるため、自己抗原に対する反応性の危険を最小限にすることができる。あるいは、標準酵母ディスプレイライブラリー及びディスプレイ技術を使用してヒト抗GFAP抗体を選択・単離することもできる。例えば、ナイーブヒト一本鎖可変領域断片(scFv)のライブラリーを使用してヒト抗GFAP抗体を選択することができる。トランスジェニック動物を使用してヒト抗体を発現させることができる。
ヒト化抗体は、所望の抗原と結合する非ヒト種抗体に由来する抗体分子であって、非ヒト種に由来する1個以上の相補性決定領域(CDR)と、ヒト免疫グロブリン分子に由来するフレームワーク領域を有するものとすることができる。
前記抗体は、当技術分野で公知のものとは異なる生物学的機能を有するという点で公知抗体と区別することができる。
(1)エピトープ
前記抗体は、GFAP(配列番号2)、その断片、又はその変異体と免疫特異的に結合することができる。前記抗体は、エピトープ領域内の少なくとも3アミノ酸、少なくとも4アミノ酸、少なくとも5アミノ酸、少なくとも6アミノ酸、少なくとも7アミノ酸、少なくとも8アミノ酸、少なくとも9アミノ酸、又は少なくとも10アミノ酸を免疫特異的に認識し、これらと結合することができる。前記抗体は、エピトープ領域の少なくとも3連続アミノ酸、少なくとも4連続アミノ酸、少なくとも5連続アミノ酸、少なくとも6連続アミノ酸、少なくとも7連続アミノ酸、少なくとも8連続アミノ酸、少なくとも9連続アミノ酸、又は少なくとも10連続アミノ酸を免疫特異的に認識し、これらと結合することができる。
c.抗体作製/生産
抗体は、当業者に周知の技術を含む種々の技術のいずれかにより作製することができる。一般に、抗体は、細胞培養技術により作製することができ、従来技術により、あるいは抗体遺伝子、重鎖及び/又は軽鎖を適切な細菌又は哺乳動物細胞宿主にトランスフェクションして抗体を産生させることにより、モノクローナル抗体を作製する方法が挙げられ、前記抗体は組換え体でもよい。「トランスフェクション」なる用語の各種変形は、外来DNAを原核又は真核宿主細胞に導入するために広く使用されている多様な技術を包含するものとし、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、DEAE-デキストラントランスフェクション等が挙げられる。原核宿主細胞でも真核宿主細胞でも抗体を発現させることが可能であるが、真核細胞(特に哺乳動物細胞)は原核細胞よりも正しく折り畳まれた免疫学的に活性な抗体をアセンブル・分泌する可能性が高いので、真核細胞で抗体を発現させるほうが好ましく、哺乳動物宿主細胞が最も好ましい。
組換え抗体を発現させるための典型的な哺乳動物宿主細胞としては、例えば、Kaufman and Sharp,J.Mol.Biol.,159:601-621(1982)に記載されているように、DHFR選択マーカーと共に使用されるチャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216-4220(1980)に記載されているdhfr-CHO細胞を含む)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞、及びSP2細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入すると、宿主細胞における抗体の発現、又はより好ましくは宿主細胞を増殖させる培養培地への抗体の分泌を可能にするために十分な時間をかけて宿主細胞を培養することにより、抗体が産生される。標準タンパク質精製法を使用して培養培地から抗体を回収することができる。
Fab断片やscFv分子等の機能的抗体断片を作製するために宿主細胞を使用することもできる。当然のことながら、上記手順の変形を実施してもよい。例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖のいずれかの機能的断片をコードするDNAを宿主細胞にトランスフェクトすることが望ましいと思われる。着目抗原との結合に不要な軽鎖及び重鎖の一方又は両方をコードするDNAの一部又は全部を除去するために、組換えDNA技術を使用してもよい。このような短縮型DNA分子から発現される分子も、前記抗体に含まれる。更に、標準化学的架橋方法により第1の抗体を第2の抗体と架橋させることにより、一方の重鎖と一方の軽鎖が第1の抗体であり(即ち、ヒトGFAPと結合する)、他方の重鎖と軽鎖がヒトGFAP以外の抗原に特異的である二機能性抗体を作製することもできる。
抗体又はその抗原結合部分の好ましい組換え発現システムでは、リン酸カルシウム法によるトランスフェクションにより、抗体重鎖と抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターをdhfr-CHO細胞に導入する。組換え発現ベクターの内側で、抗体重鎖及び軽鎖遺伝子を各々CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントと機能的に連結し、前記遺伝子の高レベルの転写を推進する。組換え発現ベクターは、DHFR遺伝子も組込んでいるので、メトトレキサート選択/増幅を使用してベクターをトランスフェクトされたCHO細胞を選択することができる。選択された形質転換宿主細胞を培養し、抗体重鎖及び軽鎖を発現させ、培養培地から無傷の抗体を回収する。組換え発現ベクターを作製し、宿主細胞にトランスフェクトし、形質転換細胞を選択し、宿主細胞を培養し、培養培地から抗体を回収するには、標準分子生物学技術を使用する。更に、組換え抗体が合成されるまで宿主細胞を適切な培養培地で培養することにより、組換え抗体を合成する方法を実施してもよい。前記方法は更に、組換え抗体を培養培地から単離する工程を含むことができる。
モノクローナル抗体の作製方法は、所望の特異性を有する抗体を産生することが可能な不死細胞株の作製を含む。このような細胞株は、免疫動物から取得した脾細胞から作製することができる。動物にGFAP又はその断片及び/若しくは変異体を免疫することができる。動物に免疫するために使用されるペプチドは、ヒトFc(例えば、ヒト抗体の断片結晶化可能領域又はテール領域)をコードするアミノ酸を含むことができる。次に、例えば、骨髄腫細胞融合パートナーと融合することにより、脾細胞を不死化させることができる。種々の融合技術を利用することができる。例えば、脾細胞と骨髄腫細胞を非イオン性界面活性剤で数分間結合させた後、ハイブリッド細胞の増殖を助長するが、骨髄腫細胞の増殖は助長しない選択培地に低密度で撒くことができる。このような技術の1例は、ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(HAT)選択を使用する。別の技術は、電気融合法を含む。十分な時間、通常では約1~2週間後に、ハイブリッドのコロニーが認められる。シングルコロニーを選択し、ポリペプチドに対する結合活性についてその培養上清を試験する。高い反応性と特異性を有するハイブリドーマを使用することができる。
増殖中のハイブリドーマコロニーの上清からモノクローナル抗体を単離することができる。更に、収率を上げるために種々の技術を利用することができ、ハイブリドーマ細胞株をマウス等の適切な脊椎動物宿主の腹腔に注入する方法が挙げられる。その後、腹水又は血液からモノクローナル抗体を回収することができる。クロマトグラフィー、ゲル濾過、沈殿、及び抽出等の従来技術により、汚染物質を抗体から除去することができる。抗体を精製するための工程で使用することができる方法の1例はアフィニティークロマトグラフィーである。
タンパク質分解酵素であるパパインは、IgG分子を優先的に切断して数個の断片とし、そのうちの2個(F(ab)断片)は、各々無傷の抗原結合部位を含む共有結合的ヘテロダイマーを構成する。酵素ペプシンは、IgG分子を切断し、両方の抗原結合部位を含むF(ab’)断片を含む数個の断片にすることができる。
Fv断片は、IgM免疫グロブリン分子と、ごく稀であるが、IgG又はIgA免疫グロブリン分子の優先的なタンパク質分解切断により作製することができる。Fv断片は、組換え技術を使用して得ることもできる。Fv断片は、天然抗体分子の抗原認識・結合能の多くを維持する抗原結合部位を含む非共有結合的VH::VLヘテロダイマーを含む。
前記抗体、抗体断片、又は誘導体は、重鎖及び軽鎖相補性決定領域(「CDR」)セットと、夫々CDRを挟むように配置され、CDRを支えると共に、CDRの相互間の空間関係を規定する重鎖及び軽鎖フレームワーク(「FR」)セットを含むことができる。CDRセットは、重鎖又は軽鎖V領域の3個の超可変領域を含むことができる。
必要な特異性の抗体を作製又は単離する他の適切な方法も使用することができ、限定されないが、当技術分野で公知の方法を使用し、例えば、Cambridge Antibody Technologies社(英国、ケンブリッジシャー)、MorphoSys社(Martinsreid/Planegg,Del.)、Biovation社(英国、スコットランド、アバディーン)、BioInvent社(スウェーデン、ルンド)等の種々の販売業者から入手可能なペプチド又はタンパク質ライブラリー(例えば、非限定的な例として、バクテリオファージ、リボソーム、オリゴヌクレオチド、RNA、cDNA、酵母等のディスプレイライブラリー)から組換え抗体を選択する方法が挙げられる。米国特許第4,704,692号、5,723,323号、5,763,192号、5,814,476号、5,817,483号、5,824,514号、5,976,862号参照。代替方法は、当技術分野で公知のように、及び/又は本願に記載するように、ヒト抗体のレパートリーを産生することが可能なトランスジェニック動物(例えば、SCIDマウス、Nguyen et al.(1997)Microbiol.Immunol.41:901-907;Sandhu et al.(1996)Crit.Rev.Biotechnol.16:95-118;Eren et al.(1998)Immunol.93:154-161)の免疫に依存する。このような技術としては、限定されないが、リボソームディスプレイ法(Hanes et al.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:4937-4942;Hanes et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:14130-14135);シングルセル抗体作製技術(例えば、リンパ球選択抗体法(「SLAM」)(米国特許第5,627,052号,Wen et al.(1987)J.Immunol.17:887-892;Babcook et al.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7843-7848));ゲルマイクロドロップ・フローサイトメトリー法(Powell et al.(1990)Biotechnol.8:333-337;One Cell Systems,(Cambridge,Mass).;Gray et al.(1995)J.Imm.Meth.182:155-163;Kenny et al.(1995)Bio/Technol.13:787-790);B細胞選択法(Steenbakkers et al.(1994)Molec.Biol.Reports 19:125-134(1994))が挙げられる。
当技術分野で公知の多数の手順のいずれか1種により親和性成熟抗体を作製することができる。例えば、Marks et al.,BioTechnology,10:779-783(1992)は、VH及びVLドメインシャフリングによる親和性成熟について記載している。Barbas et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,91:3809-3813(1994);Schier et al.,Gene,169:147-155(1995);Yelton et al.,J.Immunol.,155:1994-2004(1995);Jackson et al.,J.Immunol.,154(7):3310-3319(1995);Hawkins et al,J.Mol.Biol.,226:889-896(1992)には、CDR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発が記載されている。米国特許第6,914,128 B1号には、選択的突然変異誘発位置及び活性増強アミノ酸残基との接触又は超突然変異位置における選択的突然変異が記載されている。
その乳汁中にこのような抗体を産生するトランスジェニック動物又はヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジ等の哺乳動物を作製するように、抗体をコードするポリヌクレオチドを適切な宿主に送達することにより、抗体変異体を作製することもできる。これらの方法は、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第5,827,690号、5,849,992号、4,873,316号、5,849,992号、5,994,616号、5,565,362号、及び5,304,489号に記載されている。
このような抗体を産生するトランスジェニック植物及び培養植物細胞(例えば、非限定的な例として、タバコ、トウモロコシ、及びアオウキクサ)、特定の部分、又は前記植物部分若しくは前記部分から培養された細胞における変異体を提供するように、ポリヌクレオチドを送達することにより、抗体変異体を作製することもできる。例えば、Cramer et al.(1999)Curr.Top.Microbiol.Immunol.240:95-118とその引用文献は、例えば、誘導プロモーターを使用して多量の組換えタンパク質を発現するトランスジェニックタバコ葉の生産について記載している。他の組換えシステムで産生されるか又は天然源から精製される哺乳動物タンパク質と同等の生物学的活性を有する哺乳動物タンパク質を商業生産レベルで発現させるために、トランスジェニックトウモロコシが使用されている。例えば、Hood et al.,Adv.Exp.Med.Biol.(1999)464:127-147とその引用文献参照。タバコ種子とジャガイモ塊茎をはじめとして、一本鎖抗体(scFv)等の抗体断片を含むトランスジェニック植物種子からも抗体変異体が大量に生産されている。例えば、Conrad et al.(1998)Plant Mol.Biol.38:101-109とその引用文献参照。したがって、公知方法に従い、トランスジェニック植物を使用して抗体を作製することもできる。
例えば、免疫原性を変更するように、又は結合親和性、会合速度、解離速度、アビディティ、特異性、半減期、若しくは他の任意の適切な特性を低下、増強若しくは変更するように、外来配列を付加することにより、抗体誘導体を作製することができる。一般に、非ヒト又はヒトCDR配列の一部又は全部を維持し、可変領域と定常領域の非ヒト配列をヒト又は他のアミノ酸で置換する。
低分子抗体断片は、2個の抗原結合部位を有するダイアボディとすることができ、同一ポリペプチド鎖で重鎖可変ドメイン(VH)を軽鎖可変ドメイン(VL)と連結した断片(VH-VL)である。例えば、EP404,097;WO93/11161;及びHollinger et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448参照。同一の抗体鎖上のこれらの2個のドメインを対合させるには短か過ぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインを別の抗体鎖の相補的ドメインと対合させ、2個の抗原結合部位を形成する。Chenら名義の米国特許第6,632,926号は、親抗体の超可変領域に1アミノ酸以上を挿入し、標的抗原に対する結合親和性を前記抗原に対する親抗体の結合親和性の少なくとも約2倍とした抗体変異体を開示しており、その開示内容全体を本願に援用する。
前記抗体は、線状抗体とすることができる。線状抗体の作製手順は、当技術分野で公知であり、Zapata et al.(1995)Protein Eng.8(10):1057-1062に記載されている。要約すると、これらの抗体は、1対の抗原結合領域を形成する1対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。線状抗体は二重特異性又は単一特異性とすることができる。
前記抗体は、公知方法により組換え細胞培養から回収・精製することができ、このような方法としては、限定されないが、プロテインA精製、硫安又はエタノール沈殿、酸抽出、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーが挙げられる。高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)も精製に使用できる。
前記抗体を検出可能に標識すると有用であると思われる。抗体をこれらの物質に共役させる方法は当技術分野で公知である。単に例証の目的に過ぎないが、放射性原子、発色団、フルオロフォア等の検出可能な部分で抗体を標識することができる。このような標識抗体をインビボで又は単離した被検試料で診断技術に使用することができる。抗体をサイトカイン、リガンド、別の抗体と連結することができる。抗腫瘍作用を奏するように抗体とカップリングするのに適した物質としては、インターロイキン2(IL-2)及び腫瘍壊死因子(TNF)等のサイトカイン;アルミニウム(III)フタロシアニンテトラスルホン酸、ヘマトポルフィリン、及びフタロシアニンを含む光線力学的療法用光増感剤;ヨウ素-131(131I)、イットリウム-90(90Y)、ビスマス-212(212Bi)、ビスマス-213(213Bi)、テクネチウム-99m(99mTc)、レニウム-186(186Re)、及びレニウム-188(188Re)等の放射性核種;ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、メトトレキサート、ダウノマイシン、ネオカルジノスタチン、及びカルボプラチン等の抗生物質;ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素A、ブドウ球菌エンテロトキシンA、アブリンA毒素、リシンA(脱グリコシル化リシンA及び天然リシンA)、TGF-α毒素、タイワンコブラ(naja atra)に由来する細胞毒、及びゲロニン(植物毒素)等の細菌、植物、及び他の毒素;レストリクトシン(アスペルギルス・レストリクタス(Aspergillus restrictus)により産生されるリボソーム不活性化タンパク質)、サポリン(サボンソウ(Saponaria officinalis)に由来するリボソーム不活性化タンパク質)、及びRNase等の植物、細菌及び真菌に由来するリボソーム不活性化タンパク質;チロシンキナーゼ阻害剤;ly207702(ジフルオロ化プリンヌクレオチド);抗嚢胞剤(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、毒素をコードするプラスミド、メトトレキサート等)を内包するリポソーム;並びに他の抗体又はF(ab)等の抗体断片が挙げられる。
ハイブリドーマ技術、リンパ球選択抗体法(SLAM)、トランスジェニック動物、及び組換え抗体ライブラリーの使用による抗体作製について、以下に詳述する。
(1)ハイブリドーマ技術を使用した抗GFAPモノクローナル抗体
ハイブリドーマ技術、組換え技術、及びファージディスプレイ技術、又はその組み合わせの使用を含む当技術分野で公知の多様な技術を使用して、モノクローナル抗体を作製することができる。例えば、当技術分野で公知であり、例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,second edition,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,1988);Hammerling,et al.,In Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas,(Elsevier,N.Y.,1981)に教示されているものを含むハイブリドーマ技術を使用して、モノクローナル抗体を作製することができる。なお、本願で使用する「モノクローナル抗体」なる用語は、ハイブリドーマ技術により作製される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」なる用語は、任意の真核、原核、又はファージクローンを含むシングルクローンに由来する抗体を意味し、その作製方法を意味するものではない。
モノクローナル抗体の作製方法と、このような方法により作製された抗体は、本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養する工程を含むことができ、前記ハイブリドーマは、GFAPを免疫した動物(例えば、ラット又はマウス)から単離した脾細胞を骨髄腫細胞と融合した後、融合から得られたハイブリドーマをスクリーニングし、本発明のポリペプチドと結合することが可能な抗体を分泌するハイブリドーマクローンを選択することにより作製することが好ましい。要約すると、ラットにGFAP抗原を免疫することができる。好ましい1実施形態では、GFAP抗原をアジュバントと共に投与し、免疫応答を刺激する。このようなアジュバントとしては、完全若しくは不完全フロイントアジュバント、RIBI(ムラミルジペプチド)又はISCOM(免疫刺激複合体)が挙げられる。このようなアジュバントは、ポリペプチドを局所貯留場所に隔離することにより急速に分散しないように保護することができ、又はマクロファージ及び免疫系の他の成分に対して走化性の因子を分泌するように宿主を刺激する物質を含有することができる。ポリペプチドを投与する場合には、数週間かけてポリペプチドを2回以上投与する免疫スケジュールが好ましいが、ポリペプチドの単回投与を使用してもよい。
動物にGFAP抗原抗原を免疫後、動物から抗体及び/又は抗体産生細胞を取得することができる。動物の採血又は屠殺により抗GFAP抗体を含有する血清を動物から取得する。血清を動物から取得したまま使用してもよいし、血清から免疫グロブリン画分を取得してもよいし、血清から抗GFAP抗体を精製してもよい。こうして取得された血清又は免疫グロブリンは、ポリクローナルであるため、一連の不均一な性質を有する。
免疫応答が検出されたら(例えば、抗原GFAPに特異的な抗体がラット血清中で検出されたら)、ラット脾臓を摘出し、脾細胞を単離する。次に、脾細胞を周知技術により任意の適切な骨髄腫細胞(例えば、American Type Culture Collection(ATCC,Manassas,Va.,US)から入手可能な細胞株SP20に由来する細胞)と融合する。ハイブリドーマを限界希釈法により選択・クローニングする。次に、GFAPと結合することが可能な抗体を分泌する細胞について、当技術分野で公知の方法によりハイブリドーマクローンをアッセイする。陽性のハイブリドーマクローンをラットに免疫することにより、一般に高値の抗体を含有する腹水を生成することができる。
別の実施形態では、免疫した動物から不死化ハイブリドーマを産生する抗体を作製することができる。免疫後、動物を屠殺し、当技術分野で周知のように、脾臓B細胞を不死化骨髄腫細胞と融合する。例えば、Harlow and Lane,前出参照。好ましい1実施形態において、前記骨髄腫細胞は、免疫グロブリンポリペプチドを分泌しない(非分泌型細胞株)。融合と抗生物質選択後、GFAP若しくはその一部、又はGFAPを発現する細胞を使用してハイブリドーマをスクリーニングする。好ましい1実施形態では、酵素免疫測定法(ELISA)又はラジオイムノアッセイ(RIA)、好ましくはELISAを使用して初期スクリーニングを実施する。ELISAスクリーニングの1例は、PCT公開第WO00/37504号に記載されている。
抗GFAP抗体を産生するハイブリドーマを選択し、クローニングし、堅牢なハイブリドーマ増殖、高収率の抗体産生、及び望ましい抗体特性を含む望ましい特性について更にスクリーニングする。同系動物、免疫系を欠損する動物(例えば、ヌードマウス)でインビボにて又は細胞培養でインビトロにてハイブリドーマを培養・増殖させることができる。ハイブリドーマの選択、クローニング及び増殖方法は当技術分野における通常の知識を有する者に周知である。
好ましい1実施形態において、ハイブリドーマは、ラットハイブリドーマである。別の実施形態では、マウス、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、又はウマ等の非ヒト非ラット生物種でハイブリドーマを産生させる。更に別の好ましい実施形態において、ハイブリドーマは、抗GFAP抗体を発現するヒト細胞とヒト非分泌型骨髄腫を融合させたヒトハイブリドーマである。
公知技術により、非特異的エピトープを認識する抗体断片を作製することができる。例えば、(2個の同一のFab断片を作製するために)パパイン又は(F(ab’)断片を作製するために)ペプシン等の酵素を使用して免疫グロブリン分子のタンパク質分解切断により、本発明のFab及びF(ab’)断片を作製することができる。IgG分子のF(ab’)断片は、より大きい(「親」)IgG分子の2個の抗原結合部位を維持し、親IgG分子の(軽鎖可変領域と軽鎖定常領域を含む)両方の軽鎖と、重鎖のCH1ドメインと、ジスルフィド形成ヒンジ領域を含む。したがって、F(ab’)断片は依然として親IgG分子と同様に抗原分子と架橋することが可能である。
(2)SLAMを使用した抗GFAPモノクローナル抗体
本発明の別の態様では、当技術分野でリンパ球選択抗体法(SLAM)と呼ばれ、米国特許第5,627,052号;PCT公開第WO92/02551号;及びBabcook et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:7843-7848(1996)に記載されているような手順を使用し、単離されたシングルリンパ球から組換え抗体を作製する。この方法では、抗原特異的溶血プラークアッセイを使用して着目抗体を分泌するシングルセル(例えば、免疫した動物のいずれか1個体に由来するリンパ球)をスクリーニングし、ビオチン等のリンカーを使用して抗原GFAP、GFAPのサブユニット、又はその断片をヒツジ赤血球とカップリングし、GFAPに対して特異性を有する抗体を分泌するシングルセルを同定するために使用する。着目抗体を分泌する細胞を同定後、逆転写PCR(RT-PCR)により重鎖及び軽鎖可変領域cDNAを細胞からレスキューした後、COS又はCHO細胞等の哺乳動物宿主細胞で適切な免疫グロブリン定常領域(例えば、ヒト定常領域)のコンテキストにおいてこれらの可変領域を発現させることができる。インビボで選択したリンパ球に由来する免疫グロブリン配列を増幅して宿主細胞にトランスフェクトした後、例えば、トランスフェクトした細胞をパニングすることにより、インビトロで更に分析・選択し、GFAPに対する抗体を発現する細胞を単離することができる。増幅した免疫グロブリン配列をインビトロ親和性成熟法等により、インビトロで更に操作することができる。例えば、PCT公開第WO97/29131号及びPCT公開第WO00/56772号参照。
(3)トランスジェニック動物を使用した抗GFAPモノクローナル抗体
本発明の別の実施形態では、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の一部又は全部を含む非ヒト動物にGFAP抗原を免疫することにより、抗体を作製する。1実施形態において、前記非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の大きい断片を含み、マウス抗体産生を欠損する人工マウス系列であるXENOMOUSE(R)トランスジェニックマウスである。例えば、Green et al.,Nature Genetics,7:13-21(1994)並びに米国特許第5,916,771号、5,939,598号、5,985,615号、5,998,209号、6,075,181号、6,091,001号、6,114,598号、及び6,130,364号参照。PCT公開第WO91/10741号、WO94/02602号、WO96/34096号、WO96/33735号、WO98/16654号、WO98/24893号、WO98/50433号、WO99/45031号、WO99/53049号、WO00/09560号、及びWO00/37504も参照。XENOMOUSE(R)トランスジェニックマウスは、完全ヒト抗体の成人様ヒトレパートリーを産生し、抗原特異的ヒトモノクローナル抗体を生成する。XENOMOUSE(R)トランスジェニックマウスは、ヒト重鎖遺伝子座とx軽鎖遺伝子座のメガベースサイズの生殖細胞系列構造YAC断片の導入により、ヒト抗体レパートリーの約80%を含む。その開示内容を本願に援用するMendez et al.,Nature Genetics,15:146-156(1997),Green and Jakobovits,J.Exp.Med.,188:483-495(1998)参照。
(4)組換え抗体ライブラリーを使用した抗GFAPモノクローナル抗体
抗体ライブラリーをスクリーニングして所望のGFAP結合特異性を有する抗体を同定するインビトロ方法も、本発明の抗体を作製するために使用することができる。組換え抗体ライブラリーのこのようなスクリーニングの方法は、当技術分野で周知であり、例えば、各々その開示内容を本願に援用する米国特許第5,223,409号(Ladner et al.);PCT公開第WO92/18619号(Kang et al.);PCT公開第WO91/17271号(Dower et al.);PCT公開第WO92/20791号(Winter et al.);PCT公開第WO92/15679号(Markland et al.);PCT公開第WO93/01288号(Breitling et al.);PCT公開第WO92/01047号(McCafferty et al.);PCT公開第WO92/09690号(Garrard et al.);Fuchs et al.,Bio/Technology,9:1369-1372(1991);Hay et al.,Hum.Antibod.Hybridomas,3:81-85(1992);Huse et al.,Science,246:1275-1281(1989);McCafferty et al.,Nature,348:552-554(1990);Griffiths et al.,EMBO J.,12:725-734(1993);Hawkins et al.,J.Mol.Biol.,226:889-896(1992);Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991);Gram et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:3576-3580(1992);Garrard et al.,Bio/Technology,9:1373-1377(1991);Hoogenboom et al.,Nucl.Acids Res.,19:4133-4137(1991);Barbas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:7978-7982(1991);米国特許出願公開第2003/0186374号;及びPCT公開第WO97/29131号に記載されている方法が挙げられる。
前記組換え抗体ライブラリーは、GFAP又はGFAPの一部を免疫した対象に由来することができる。あるいは、前記組換え抗体ライブラリーは、ヒトGFAPを免疫していないヒト対象に由来するヒト抗体ライブラリーのように、ナイーブ対象(即ち、GFAPを免疫していない対象)に由来することができる。本発明の抗体は、ヒトGFAPを含むペプチドで組換え抗体ライブラリーをスクリーニングしてGFAPを認識する抗体を選択することにより選択される。このようなスクリーニングと選択を実施する方法は、前の段落に挙げた参考資料に記載されているように、当技術分野で周知である。GFAPに対する特定の結合親和性を有する本発明の抗体(例えば、特定のKoff速度定数でヒトGFAPから解離する抗体)を選択するためには、当技術分野で公知の表面プラズモン共鳴法を使用し、所望のKoff速度定数を有する抗体を選択することができる。GFAPに対して特定の中和活性を有する本発明の抗体(例えば、特定のIC50を有する抗体)を選択するためには、GFAP活性の阻害を評定する方法として当技術分野で公知の標準方法を使用することができる。
1態様において、本発明は、ヒトGFAPと結合する単離抗体又はその抗原結合部分に関する。前記抗体は、中和抗体であることが好ましい。種々の実施形態において、前記抗体は、組換え抗体又はモノクローナル抗体である。
例えば、当技術分野で公知の種々のファージディスプレイ法を使用して抗体を作製することもできる。ファージディスプレイ法では、機能的抗体ドメインをコードするポリヌクレオチド配列を含むファージ粒子の表面に前記機能的抗体ドメインを提示させる。レパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒト又はマウス)から発現される抗原結合ドメインを提示させるために、このようなファージを利用することができる。例えば、標識抗原又は固相表面若しくはビーズに結合若しくは捕捉した抗原を使用し、着目抗原と結合する抗原結合ドメインを発現するファージを抗原で選択又は同定することができる。これらの方法で使用されるファージは、一般的に、Fab抗体ドメイン、Fv抗体ドメイン、又はジスルフィド結合により安定化させたFv抗体ドメインをファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIタンパク質と組換え融合させたファージから発現されるfd及びM13結合ドメインを含む繊維状ファージである。抗体を作製するために使用することができるファージディスプレイ法の例としては、Brinkmann et al.,J.Immunol.Methods,182:41-50(1995);Ames et al.,J.Immunol.Methods,184:177-186(1995);Kettleborough et al.,Eur.J.Immunol.,24:952-958(1994);Persic et al.,Gene,187:9-18(1997);Burton et al.,Advances in Immunology,57:191-280(1994);PCT公開第WO92/01047号;PCT公開第WO90/02809号、WO91/10737号、WO92/01047号、WO92/18619号、WO93/11236号、WO95/15982号、WO95/20401号、並びに米国特許第5,698,426号、5,223,409号、5,403,484号、5,580,717号、5,427,908号、5,750,753号、5,821,047号、5,571,698号、5,427,908号、5,516,637号、5,780,225号、5,658,727号、5,733,743号、及び5,969,108号に開示されている方法が挙げられる。
上記参考資料に記載されているように、ファージ選択後に、前記ファージに由来する領域をコードする抗体を単離し、ヒト抗体又は他の任意の所望の抗原結合断片を含む全長抗体を作製するために使用し、例えば、以下に詳述するように、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、及び細菌を含む任意の所望の宿主で発現させることができる。例えば、PCT公開第WO92/22324号;Mullinax et al.,BioTechniques,12(6):864-869(1992);Sawai et al.,Am.J.Reprod.Immunol.,34:26-34(1995);及びBetter et al.,Science,240:1041-1043(1988)に開示されている方法等の当技術分野で公知の方法を使用し、Fab、Fab’、及びF(ab’)断片を組換え生産する技術を利用することもできる。一本鎖Fv及び抗体を作製するために使用することができる技術の例としては、米国特許第4,946,778号及び5,258,498号;Huston et al.,Methods in Enzymology,203:46-88(1991);Shu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7995-7999(1993);並びにSkerra et al.,Science,240:1038-1041(1988)に記載されている技術が挙げられる。
ファージディスプレイ法による組換え抗体ライブラリーのスクリーニングの代わりに、大型のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする方法として当技術分野で公知の他の方法を本発明の抗体の同定に適用することもできる。代替発現システムの1例は、PCT公開第WO98/31700号(Szostak and Roberts)、及びRoberts and Szostak,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:12297-12302(1997)に記載されているように、組換え抗体ライブラリーをRNA-タンパク質融合体として発現させるシステムである。このシステムでは、ペプチジルアクセプター抗生物質であるピューロマイシンをその3’末端に付けた合成mRNAのインビトロ翻訳により、mRNAとこれによりコードされるペプチド又はタンパク質の共有結合的融合体を作製する。したがって、コードされるペプチド又はタンパク質(例えば、抗体又はその部分)の性質(例えば、抗体又はその部分とデュアル特異性抗原との結合)に基づいてmRNAの複合体混合物(例えば、コンビナトリアルライブラリー)から特定のmRNAを集積させることができる。このようなライブラリーのスクリーニングから回収された抗体又はその部分をコードする核酸配列を上記のような組換え手段により(例えば、哺乳動物宿主細胞で)発現させることができ、更に、上記のように、当初に選択された配列に突然変異を導入したmRNA-ペプチド融合体の付加ラウンドのスクリーニングにより、又は組換え抗体の他のインビトロ親和性成熟法により、更に親和性成熟に供することができる。この方法の好ましい1例はPROfusionディスプレイ技術である。
別のアプローチでは、当技術分野で公知の酵母ディスプレイ法を使用して抗体を作製することもできる。酵母ディスプレイ法では、遺伝子工学的手法を用いて抗体ドメインを酵母細胞壁に繋ぎ、酵母の表面に提示させる。このような酵母を利用してレパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒト又はマウス)から発現される抗原結合ドメインを提示させることができる。抗体を作製するために使用することができる酵母ディスプレイ法の例としては、本願に援用する米国特許第6,699,658号(Wittrup et al.)に開示されている方法が挙げられる。
d.組換えGFAP抗体の作製
当技術分野で公知の多数の技術のいずれかにより、抗体を作製することができる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターを標準技術により宿主細胞にトランスフェクトし、宿主細胞から発現させる。「トランスフェクション」なる用語の各種変形は、外来DNAを原核又は真核宿主細胞に導入するために広く使用されている多様な技術を包含するものとし、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、DEAE-デキストラントランスフェクション等が挙げられる。原核宿主細胞でも真核宿主細胞でも本発明の抗体を発現させることが可能であるが、真核細胞(特に哺乳動物細胞)は原核細胞よりも正しく折り畳まれた免疫学的に活性な抗体をアセンブル・分泌する可能性が高いので、真核細胞で抗体を発現させるほうが好ましく、哺乳動物宿主細胞が最も好ましい。
本発明の組換え抗体を発現させるための典型的な哺乳動物宿主細胞としては、例えば、Kaufman and Sharp,J.Mol.Biol.,159:601-621(1982)に記載されているように、DHFR選択マーカーと共に使用されるチャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216-4220(1980)に記載されているdhfr-CHO細胞を含む)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞、及びSP2細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入すると、宿主細胞における抗体の発現、又はより好ましくは宿主細胞を増殖させる培養培地への抗体の分泌を可能にするために十分な時間をかけて宿主細胞を培養することにより、抗体が産生される。標準タンパク質精製法を使用して培養培地から抗体を回収することができる。
Fab断片やscFv分子等の機能的抗体断片を作製するために宿主細胞を使用することもできる。当然のことながら、上記手順の変形を実施してもよい。例えば、本発明の抗体の軽鎖及び/又は重鎖のいずれかの機能的断片をコードするDNAを宿主細胞にトランスフェクトすることが望ましいと思われる。着目抗原との結合に不要な軽鎖及び重鎖の一方又は両方をコードするDNAの一部又は全部を除去するために、組換えDNA技術を使用してもよい。このような短縮型DNA分子から発現される分子も、本発明の抗体に含まれる。更に、標準化学的架橋方法により本発明の抗体を第2の抗体と架橋させることにより、一方の重鎖と軽鎖が本発明の抗体であり(即ち、ヒトGFAPと結合する)、他方の重鎖と軽鎖がヒトGFAP以外の抗原に特異的である二機能性抗体を作製することもできる。
本発明の抗体又はその抗原結合部分の好ましい組換え発現システムでは、リン酸カルシウム法によるトランスフェクションにより、抗体重鎖と抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターをdhfr-CHO細胞に導入する。組換え発現ベクターの内側で、抗体重鎖及び軽鎖遺伝子を各々CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントと機能的に連結し、前記遺伝子の高レベルの転写を推進する。組換え発現ベクターは、DHFR遺伝子も組込んでいるので、メトトレキサート選択/増幅を使用してベクターをトランスフェクトされたCHO細胞を選択することができる。選択された形質転換宿主細胞を培養し、抗体重鎖及び軽鎖を発現させ、培養培地から無傷の抗体を回収する。組換え発現ベクターを作製し、宿主細胞にトランスフェクトし、形質転換細胞を選択し、宿主細胞を培養し、培養培地から抗体を回収するには、標準分子生物学技術を使用する。更に、本発明は、本発明の組換え抗体が合成されるまで本発明の宿主細胞を適切な培養培地で培養することにより、本発明の組換え抗体を合成する方法を提供する。前記方法は更に、前記組換え抗体を培養培地から単離する工程を含むことができる。
(1)ヒト化抗体
ヒト化抗体は、着目抗原と免疫特異的に結合し、実質的にヒト抗体のアミノ酸配列を有するフレームワーク(FR)領域と、実質的に非ヒト抗体のアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を含む抗体又はその変異体、誘導体、アナログ若しくは部分とすることができる。ヒト化抗体は、所望の抗原と結合し、非ヒト種に由来する1個以上の相補性決定領域(CDR)と、ヒト免疫グロブリン分子に由来するフレームワーク領域を有する非ヒト種抗体に由来することができる。
CDRに関して本願で使用する「実質的に」なる用語は、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列に少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%一致するアミノ酸配列を有するCDRを意味する。ヒト化抗体は、少なくとも1個、一般的には2個の可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)、FabC、Fv)の実質的に全部を含み、CDR領域の全部又は実質的に全部が、非ヒト免疫グロブリン(即ち、ドナー抗体)のCDR領域に対応し、フレームワーク領域の全部又は実質的に全部が、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のフレームワーク領域である。1態様によると、ヒト化抗体は更に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、一般的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。所定の実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖と、重鎖の少なくとも可変ドメインの両方を含む。前記抗体は更に、重鎖のCH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、CH3領域、及びCH4領域を含むことができる。所定の実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖のみを含む。所定の実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト化重鎖のみを含む。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖及び/又は重鎖のヒト化可変ドメインのみを含む。
ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含む任意の免疫グロブリンクラスと、限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む任意のアイソタイプから選択することができる。ヒト化抗体は、2種類以上のクラス又はアイソタイプに由来する配列を含むことができ、当技術分野で周知の技術を使用して所望のエフェクター機能を最適化させるように特定の定常ドメインを選択することができる。
ヒト化抗体のフレームワーク領域とCDR領域は、親配列と厳密に対応する必要はなく、例えば、その部位のCDR又はフレームワーク残基がドナー抗体又はコンセンサスフレームワークのいずれとも対応しないように、少なくとも1アミノ酸残基の置換、挿入及び/又は欠失により、ドナー抗体CDR又はコンセンサスフレームワークに突然変異を誘発してもよい。しかし、1実施形態において、このような突然変異は、広範囲にならない。通常では、ヒト化抗体残基の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%が親FR及びCDR配列と対応するであろう。本願で使用する場合に「コンセンサスフレームワーク」なる用語は、コンセンサス免疫グロブリン配列におけるフレームワーク領域を意味する。本願で使用する場合に「コンセンサス免疫グロブリン配列」なる用語は、同族免疫グロブリン配列のファミリーに最高頻度で存在するアミノ酸(又はヌクレオチド)から形成される配列を意味する(例えば、Winnaker,From Genes to Clones(Verlagsgesellschaft,Weinheim,Germany 1987)参照)。免疫グロブリンのファミリーにおいて、コンセンサス配列中の各位置は、前記ファミリーにおけるその位置に最高頻度で存在するアミノ酸により占められる。2個のアミノ酸が同等の頻度で存在する場合には、どちらがコンセンサス配列に含まれていてもよい。
齧歯類抗ヒト抗体に対する免疫応答は、ヒトレシピエントにおけるこれらの部分の治療適用の持続時間と有効性を制限するので、このような望ましくない免疫応答を最小限にするように、ヒト化抗体を設計することができる。ヒト化抗体は、非ヒト資源から導入された1個以上のアミノ酸残基を有することができる。これらの非ヒト残基は、「インポート」残基と呼ばれることが多く、一般的に可変ドメインから取り出される。ヒト化は、ヒト抗体の対応する配列を超可変領域配列に置き換えることにより実施することができる。したがって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインよりも実質的に少ない部分が非ヒト種に由来する対応する配列で置き換えられたキメラ抗体である。例えば、その開示内容を本願に援用する米国特許第4,816,567号参照。ヒト化抗体は、一部の超可変領域残基と、恐らく一部のFR残基が、齧歯類抗体における類似部位からの残基で置き換えられたヒト抗体とすることができる。本発明の抗体のヒト化又はエンジニアリングは、限定されないが、米国特許第5,723,323号、5,976,862号、5,824,514号、5,817,483号、5,814,476号、5,763,192号、5,723,323号、5,766,886号、5,714,352号、6,204,023号、6,180,370号、5,693,762号、5,530,101号、5,585,089号、5,225,539号、及び4,816,567号に記載されている方法等の任意の公知方法を使用して実施することができる。
ヒト化抗体は、GFAPに対する高い親和性と、他の好ましい生物学的性質を維持することができる。ヒト化抗体は、親配列とヒト化配列の三次元モデルを使用して親配列と種々の概念ヒト化産物の分析法により作製することができる。三次元免疫グロブリンモデルは、広く入手可能である。選択された候補免疫グロブリン配列の予想される三次元立体構造を描画・表示するコンピュータプログラムが入手可能である。これらの表示を精査すると、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の予想される役割を解析することができ、即ち、その抗原と結合する候補免疫グロブリンの能力に影響を与える残基を解析することができる。こうして、GFAPに対する親和性の増加等の望ましい抗体特性が得られれるように、レシピエント配列とインポート配列からFR残基を選択し、組み合わせることができる。一般に、抗原結合に影響を与えるのに直接的且つ最も実質的に関与しているのは、超可変領域残基であると思われる。
ヒト化の代用として、ヒト抗体(本願では「完全ヒト抗体」とも言う)を作製することもできる。例えば、PROfusion及び/又は酵母関連技術により、ライブラリーからヒト抗体を単離することが可能である。トランスジェニック動物(例えば、免疫後に、内在性免疫グロブリン産生の不在下でヒト抗体の完全なレパートリーを産生することが可能なマウス)を作製することも可能である。例えば、キメラ及び生殖細胞系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子のホモ接合性欠失の結果、内在性抗体産生が完全に阻害される。ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子配列をこのような生殖細胞系列突然変異体マウスに移入すると、抗原チャレンジ後にヒト抗体が産生されるであろう。ヒト化抗体又は完全ヒト抗体は、各々その開示内容を本願に援用する米国特許第5,770,429号、5,833,985号、5,837,243号、5,922,845号、6,017,517号、6,096,311号、6,111,166号、6,270,765号、6,303,755号、6,365,116号、6,410,690号、6,682,928号、及び6,984,720号に記載されている方法に従って作製することができる。
e.抗GFAP抗体
上記技術と、当技術分野で公知の慣用技術を使用して抗GFAP抗体を作製することができる。所定の実施形態において、抗GFAP抗体は、Dako(カタログ番号:M0761)、ThermoFisher Scientific(カタログ番号:MA5-12023、A-21282、13-0300、MA1-19170、MA1-19395、MA5-15086、MA5-16367、MA1-35377、MA1-06701、又はMA1-20035)、AbCam(カタログ番号:ab10062、ab4648、ab68428、ab33922、ab207165、ab190288、ab115898、又はab21837)、EMD Millipore(カタログ番号:FCMAB257P、MAB360、MAB3402、04-1031、04-1062、MAB5628)、Santa Cruz(カタログ番号:sc-166481、sc-166458、sc-58766、sc-56395、sc-51908、sc-135921、sc-71143、sc-65343、又はsc-33673)、Sigma-Aldrich(カタログ番号:G3893又はG6171)又はSino Biological Inc.(カタログ番号:100140-R012-50)の各社から入手可能なGFAP抗体等の共役していないGFAP抗体とすることができる。ThermoFisher Scientific(カタログ番号:A-21295又はA-21294)、EMD Millipore(カタログ番号:MAB3402X、MAB3402B、MAB3402B、又はMAB3402C3)又はAbCam(カタログ番号:ab49874又はab194325)の各社から入手可能な共役GFAP抗体のように、抗GFAP抗体をフルオロフォアと共役させてもよい。
8.方法の変形
本願には、試料中に存在する着目被検体(UCH-L1及び/又はGFAP)の存在又は量の測定方法を開示するが、本方法は、本願に記載する通りに実施することができる。被検体の他の分析方法を考慮し、前記方法を改変してもよい。周知の変形の例としては、限定されないが、サンドイッチイムノアッセイ(例えば、酵素検出法(酵素イムノアッセイ(EIA)又は酵素免疫測定法(ELISA))をはじめとするモノクローナル-モノクローナルサンドイッチイムノアッセイ、モノクローナル-ポリクローナルサンドイッチイムノアッセイ)、競合阻害イムノアッセイ(例えば、フォワード及びリバース)、多元酵素イムノアッセイ技術(EMIT)等のイムノアッセイ、競合結合アッセイ、生物発光共鳴エネルギー転移法(BRET)、ワンステップ抗体検出アッセイ、均一系アッセイ、不均一系アッセイ、キャプチャオンザフライ(capture on the fly)アッセイ等が挙げられる。
a.イムノアッセイ
着目被検体、及び/又はそのペプチド若しくは断片(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP、及び/又はそのペプチド若しくは断片、即ち、UCH-L1及び/又はGFAP断片)は、イムノアッセイでUCH-L1及び/又はGFAP抗体を使用して分析することができる。抗体を使用し、被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)との特異的結合を検出することにより、被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)の存在又は量を測定することができる。例えば、抗体又はその抗体断片は、被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)と特異的に結合することができる。必要に応じて、前記抗体の1種以上を1種以上の市販のモノクローナル/ポリクローナル抗体と併用することができる。このような抗体は、R&D Systems,Inc.(Minneapolis,MN)や、Enzo Life Sciences International,Inc.(Plymouth Meeting,PA)等の企業から入手可能である。
生体試料中に存在する被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)の存在又は量は、サンドイッチイムノアッセイ(例えば、放射性同位体検出法(ラジオイムノアッセイ(RIA))や、酵素検出法(酵素イムノアッセイ(EIA)又は酵素免疫測定法(ELISA)(例えば、Quantikine ELISAアッセイ,R&D Systems,Minneapolis,MN))をはじめとするモノクローナル-モノクローナルサンドイッチイムノアッセイ、モノクローナル-ポリクローナルサンドイッチイムノアッセイ)等のイムノアッセイを使用して容易に測定することができる。使用することができるポイントオブケアデバイスの1例は、i-STAT(R)(Abbott,Laboratories,Abbott Park,IL)である。使用することができる他の方法としては、化学発光微粒子イムノアッセイが挙げられ、特に、1例として、ARCHITECT(R)自動アナライザー(Abbott Laboratories,Abbott Park,IL)を利用する方法が挙げられる。他の方法としては、例えば、被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)に対する抗被検体(例えば、抗UCH-L1及び/又は抗GFAP)抗体(モノクローナル、ポリクローナル、キメラ、ヒト化、ヒト等)又はその抗体断片を使用した質量分析法と、(例えば、組織生検からの切片を用いた)免疫組織化学分析法が挙げられる。他の検出方法としては、例えば、各々その開示内容全体を本願に援用する米国特許第6,143,576号、6,113,855号、6,019,944号、5,985,579号、5,947,124号、5,939,272号、5,922,615号、5,885,527号、5,851,776号、5,824,799号、5,679,526号、5,525,524号、及び5,480,792に記載されている方法が挙げられる。抗体と被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)の特異的免疫結合は、抗体に結合した蛍光若しくは発光タグ、金属及び放射性核種等の直接ラベル又はアルカリホスファターゼや西洋ワサビペルオキシダーゼ等の間接ラベルにより検出することができる。
固相化抗体又はその抗体断片の使用をイムノアッセイに組み入れてもよい。磁性又はクロマトグラフィーマトリックス粒子、(マイクロタイターウェル等の)アッセイプレートの表面、固相基板材料の小片等の種々の担体上に抗体を固相化することができる。抗体又は複数の抗体を固相担体上に並べてコーティングすることにより、アッセイストリップを作製することができる。その後、このストリップを被検試料に浸し、洗浄と検出工程により短時間処理し、着色スポット等の測定可能なシグナルを生じることができる。
均一系フォーマットを使用してもよい。例えば、対象から被検試料を採取した後、混合物を調製する。混合物は、被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)について評定する被検試料と、第1の特異的結合パートナーと、第2の特異的結合パートナーを含む。混合物を形成するために被検試料、第1の特異的結合パートナー、及び第2の特異的結合パートナーを加える順序は重要ではない。被検試料を第1の特異的結合パートナー及び第2の特異的結合パートナーと同時に接触させる。所定の実施形態において、第1の特異的結合パートナーと、被検試料に含まれるUCH-L1及び/又はGFAPは、第1の特異的結合パートナーと被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)と抗原の複合体を形成することができ、第2の特異的結合パートナーは、第1の特異的結合パートナーと着目被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)と第2の特異的結合パートナーの複合体を形成することができる。所定の実施形態において、第2の特異的結合パートナーと、被検試料に含まれるUCH-L1及び/又はGFAPは、第2の特異的結合パートナーと被検体(例えば、UCH-L1)と抗原の複合体を形成することができ、第1の特異的結合パートナーは、第1の特異的結合パートナーと着目被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)と第2の特異的結合パートナーの複合体を形成することができる。第1の特異的結合パートナーは、抗被検体抗体(例えば、配列番号1の少なくとも3連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するエピトープと結合する抗UCH-L1抗体又は配列番号2の少なくとも3連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するエピトープと結合する抗GFAP抗体)とすることができる。第2の特異的結合パートナーは、抗被検体抗体(例えば、配列番号1の少なくとも3連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するエピトープと結合する抗UCH-L1抗体又は配列番号2の少なくとも3連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するエピトープと結合する抗GFAP抗体)とすることができる。更に、第2の特異的結合パートナーは、上記のような検出可能なラベルで標識されているか、又はこのようなラベルを含む。
不均一系フォーマットを使用してもよい。例えば、対象から被検試料を採取した後、第1の混合物を調製する。混合物は、被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)について評定する被検試料と、第1の特異的結合パートナーを含み、第1の特異的結合パートナーと、被検試料に含まれるUCH-L1及び/又はGFAPは、第1の特異的結合パートナーと被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)抗原の複合体を形成する。第1の特異的結合パートナーは、抗被検体抗体(例えば、配列番号1の少なくとも3連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するエピトープと結合する抗UCH-L1抗体又は配列番号2の少なくとも3連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するエピトープと結合する抗GFAP抗体)とすることができる。混合物を形成するために被検試料と第1の特異的結合パートナーを加える順序は、重要ではない。
第1の特異的結合パートナーを固相上に固相化してもよい。イムノアッセイで(第1の特異的結合パートナーと、任意に第2の特異的結合パートナーに)使用される固相は、当技術分野で公知の任意の固相とすることができ、限定されないが、磁性粒子、ビーズ、試験管、マイクロタイタープレート、キュベット、膜、足場分子、フィルム、濾紙、ディスク、及びチップが挙げられる。固相がビーズである実施形態において、前記ビーズは、磁気ビーズ又は磁性粒子とすることができる。磁気ビーズ/粒子は、強磁性、フェリ磁性、常磁性、超常磁性又は磁性流体とすることができる。典型的な強磁性材料としては、Fe、Co、Ni、Gd、Dy、CrO、MnAs、MnBi、EuO、及びNiO/Feが挙げられる。フェリ磁性材料の例としては、NiFe、CoFe、Fe(又はFeO・Fe)が挙げられる。ビーズは、磁性の固体コア部分を有することができ、その周囲に1層以上の非磁性層が配置されている。あるいは、磁性部分を非磁性コアの周囲の層とすることもできる。第1の特異的結合メンバーを固相化した固相担体は、乾燥状態又は液体中で保存することができる。第1の特異的結合メンバーを固相化した磁気ビーズと試料を接触させる前又は後に、磁気ビーズに磁場を印加することができる。
第1の特異的結合パートナーと被検体(例えば、UCH-L1又はGFAP)抗原の複合体を含む混合物が形成された後、当技術分野で公知の任意の技術を使用して複合体から未結合の被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)を除去する。例えば、洗浄により、未結合の被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)を除去することができる。但し、被検試料中に存在する全被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)が第1の特異的結合パートナーと結合するように、第1の特異的結合パートナーは、被検試料中に存在する被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)よりも過剰に存在することが望ましい。
未結合の被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)を除去した後に、第2の特異的結合パートナーを混合物に加え、第1の特異的結合パートナーと着目被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)と第2の特異的結合パートナーの複合体を形成する。第2の特異的結合パートナーは、抗被検体抗体(例えば、配列番号1の少なくとも3連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するエピトープと結合する抗UCH-L1抗体又は配列番号2の少なくとも3連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するエピトープと結合する抗GFAP抗体)とすることができる。更に、第2の特異的結合パートナーは、上記のような検出可能なラベルで標識されているか、又はこのようなラベルを含む。
固相化抗体又はその抗体断片の使用をイムノアッセイに組み入れてもよい。(磁気ビーズ等の)磁性又はクロマトグラフィーマトリックス粒子、ラテックス粒子又は表面修飾ラテックス粒子、ポリマー又はポリマーフィルム、プラスチック又はプラスチックフィルム、平面基板、(マイクロタイターウェル等の)アッセイプレートの表面、固相基板材料の小片等の種々の担体上に抗体を固相化することができる。抗体又は複数の抗体を固相担体上に並べてコーティングすることにより、アッセイストリップを作製することができる。その後、このストリップを被検試料に浸し、洗浄と検出工程により短時間処理し、着色スポット等の測定可能なシグナルを生じることができる。
所定の態様では、イムノアッセイのダイナミックレンジとローエンド感度を維持するのを同様に助長することができる他の抗体を選択できると考えられる。例えば、38kDaBDPのN末端の付近のエピトープと結合する少なくとも1種の(捕捉抗体又は第1の特異的結合パートナー等の)第1の抗体と、38kDaBDPの中央の付近(例えば、38kDaBDPの中央の付近)のエピトープと結合し、第1の抗体とオーバーラップしない少なくとも1種の(検出抗体又は第2の特異的結合パートナー等の)第2の抗体を選択すると有用であると思われる。他の変形も考えられ、短いペプチドとの結合を試験した後にキャリブレーター濃度を使用して抗体対をスクリーニングすることにより、種々のエピトープと結合する抗体を確認する等の方法により、通常の知識を有する者が容易に試験することができる。更に、GFAPに対する親和性の異なる抗体を選択する方法も、アッセイのダイナミックレンジを維持又は増加するのを助長できる。GFAP抗体は、文献に記載され、市販されている。
(1)サンドイッチイムノアッセイ
サンドイッチイムノアッセイは、2層の抗体(即ち、少なくとも1種の捕捉抗体)と検出抗体(即ち、少なくとも1種の検出抗体)の間の抗原量を測定する。捕捉抗体と検出抗体は、抗原(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP等の着目被検体)上の異なるエピトープと結合する。捕捉抗体とエピトープの結合は、検出抗体とエピトープの結合を妨害しないことが望ましい。サンドイッチイムノアッセイでは捕捉抗体及び検出抗体としてモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体のどちらを使用してもよい。
一般に、被検試料中の被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)を分離・定量するために、少なくとも2種の抗体を利用する。より具体的には、前記少なくとも2種の抗体は、被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)の所定のエピトープと結合し、「サンドイッチ」と呼ばれる免疫複合体を形成する。被検試料中の被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)を捕捉するために1種以上の抗体を使用することができ(これらの抗体を「捕捉」抗体又は複数の「捕捉」抗体と呼ぶことが多い)、検出可能な(即ち、定量可能な)ラベルをサンドイッチと結合させるために1種以上の抗体を使用する(これらの抗体を「検出」抗体又は複数の「検出」抗体と呼ぶことが多い)。サンドイッチアッセイでは、抗体とそのエピトープの結合が、アッセイにおける他の抗体とその夫々のエピソームの結合により弱められないことが望ましい。被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)を含有することが疑われる被験試料と接触させた1種以上の第1の抗体が、第2以降の抗体により認識されるエピトープの全部又は一部と結合しないように、抗体を選択し、1種以上の第2の検出抗体が被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)と結合するのを妨害しないようにする。
前記イムノアッセイでは、本願の抗体を第1の抗体として使用することができる。前記抗体は、被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)上のエピトープと免疫特異的に結合する。本発明の抗体に加え、前記イムノアッセイは、第1の抗体により認識されないか又は結合されないエピトープと免疫特異的に結合する第2の抗体を含むことができる。
被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)を含有することが疑われる被験試料を少なくとも1種の第1の捕捉抗体(又は複数の捕捉抗体)及び少なくとも1種の第2の検出抗体と同時又は逐次接触させることができる。サンドイッチアッセイフォーマットでは、第1の抗体と被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)抗原の複合体の形成を可能にする条件下で、被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)を含有することが疑われる被験試料を、先ず特定のエピトープと特異的に結合する前記少なくとも1種の第1の捕捉抗体と接触させる。2種以上の捕捉抗体を使用する場合には、第1の複数の捕捉抗体とUCH-L1及び/又はGFAP抗原の複合体が形成される。サンドイッチアッセイでは、被検試料中の予想される被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)の最大量よりも過剰のモル量で本願の抗体、好ましくは前記少なくとも1種の捕捉抗体を使用する。例えば、微粒子コーティングバッファー1ml当たり約5μg/mL~約1mg/mLの抗体を使用することができる。
i.抗UCH-L1捕捉抗体
任意に、被検試料を少なくとも1種の第1の捕捉抗体と接触させる前に、少なくとも1種の第1の捕捉抗体を固相担体に固定化し、第1の抗体と被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)の複合体を被検試料から分離し易くすることができる。当技術分野で公知の任意の固相担体を使用することができ、限定されないが、ウェル、チューブ、又はビーズ(例えば、微粒子)の形態のポリマー材料製の固相担体が挙げられる。抗体が被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)と結合するのを妨害されないという条件で、吸着によるか、化学的カップリング剤を使用する共有結合によるか、又は当技術分野で公知の他の手段により、抗体(又は複数の抗体)を固相担体に固定化することができる。更に、必要に応じて、抗体上の種々の官能基に対して反応性となるように、固相担体を誘導体化することができる。このような誘導体化には、限定されないが、マレイン酸無水物、N-ヒドロキシスクシンイミド及び1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等の所定のカップリング剤の使用が必要である。
その後、第1の捕捉抗体(又は複数の抗体)と被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)の複合体の形成を可能にするために、被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)を含有することが疑われる被験試料をインキュベートする。インキュベーションは、pH約4.5~約10.0、温度約2℃~約45℃で少なくとも約1分~約18時間、約2~6分間、約7~12分間、約5~15分間、又は約3~4分間実施することができる。
ii.検出抗体
第1の/複数の捕捉抗体と被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)の複合体の形成後、次に、(第1の/複数の抗体と被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)抗原と第2の抗体の複合体の形成を可能にする条件下で)前記複合体を少なくとも1種の第2の検出抗体と接触させる。所定の実施形態では、被検試料を捕捉抗体と同時に検出抗体と接触させる。第1の抗体と被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)の複合体を2種以上の検出抗体と接触させる場合には、第1の/複数の捕捉抗体と被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)と複数の検出抗体の複合体が形成される。第1の抗体の場合と同様に、上記と同様の条件下で第1の/複数の抗体と被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)と第2の/複数の抗体の複合体の形成に必要なインキュベーション時間をかけて、少なくとも第2(以降)の抗体を第1の抗体と被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)の複合体と接触させる。少なくとも1種の第2の抗体は、検出可能なラベルを含んでいることが好ましい。第1の/複数の抗体と被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)と第2の/複数の抗体の複合体の形成の前、それと同時、又はその後に、検出可能なラベルを少なくとも1種の第2の抗体と結合させることができる。当技術分野で公知の任意の検出可能なラベルを使用することができる。
Adamczyk et al.,Anal.Chim.Acta 579(1):61-67(2006)に記載されている方法に従い、化学発光アッセイを実施することができる。任意の適切なアッセイフォーマットを使用することができるが、マイクロプレートケミルミノメーター(Mithras LB-940,Berthold Technologies U.S.A.,LLC,Oak Ridge,TN)を使用すると、複数の小量の試料のアッセイを迅速に実施できる。ケミルミノメーターは96ウェル黒色ポリスチレン製マイクロプレート(Costar #3792)を使用し、複数の試薬インジェクターを搭載することができる。各試料を別々のウェルに加えた後、利用するアッセイの種類に応じて他の試薬を同時/逐次添加することができる。酸性化等により、アクリジニウムアリールエステルを利用する中性又は塩基性溶液中に擬似塩基が形成されないようにすることが望ましい。次に、化学発光応答をウェル毎に記録する。この点について、化学発光応答を記録する時間は、利用する試薬と特定のアクリジニウムの添加間の遅延時間によっても異なるであろう。
化学発光アッセイ用混合物を形成するために被検試料と特異的結合パートナーを加える順序は重要ではない。第1の特異的結合パートナーをアクリジニウム化合物で検出可能に標識する場合には、第1の特異的結合パートナーと抗原(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)の検出可能に標識された複合体が形成される。あるいは、第2の特異的結合パートナーを使用し、第2の特異的結合パートナーをアクリジニウム化合物で検出可能に標識する場合には、第1の特異的結合パートナーと被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)と第2の特異的結合パートナーの検出可能に標識された複合体が形成される。標識の有無に関係なく、洗浄等の当技術分野で公知の任意の技術を使用して未結合の特異的結合パートナーを混合物から除去することができる。
上記アクリジニウム化合物を加える前、それと同時、又はその後に、過酸化水素を混合物中でin situ生成させること又は混合物に提供若しくは供給することができる。過酸化水素は、当業者に自明のように多数の方法でin situ生成させることができる。
あるいは、単に混合物に過酸化水素源を加えることができる。例えば、過酸化水素源は、過酸化水素を含有することが知られている1種以上の緩衝液又は他の溶液とすることができる。この点については、単に過酸化水素溶液を加えることができる。
少なくとも1種の塩基性溶液を試料に同時に又は後から添加後に、被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)の存在を指示する検出可能なシグナル(即ち、化学発光シグナル)が発生される。塩基性溶液は、少なくとも1種の塩基を含有しており、pHが10以上、好ましくは12以上である。塩基性溶液の例としては、限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、及び炭酸水素カルシウムが挙げられる。試料に添加する塩基性溶液の量は、塩基性溶液の濃度によって異なる。使用する塩基性溶液の濃度に基づき、当業者は、試料に添加する塩基性溶液の量を容易に決定することができる。化学発光ラベル以外の他のラベルを利用することもできる。例えば、酵素ラベル(限定されないが、アルカリホスファターゼを含む)を利用することができる。
発生される化学発光シグナル又は他のシグナルは、当業者に公知の慣用技術を使用して検出することができる。発生されるシグナルの強度に基づき、試料中の着目被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)の量を定量することができる。具体的には、試料中の被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)の量は、発生されるシグナルの強度に比例する。発生される光の量を被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)の標準曲線と比較することにより、又は参照標準と比較することにより、被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)の存在量を定量することができる。標準曲線は、質量分析法、重量分析法、又は当技術分野で公知の他の技術により、既知濃度の被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)の段階希釈液又は溶液を使用して作成することができる。
(2)フォワード競合阻害アッセイ
フォワード競合フォーマットでは、標識した既知濃度の着目被検体(例えば、蛍光ラベル、切断可能なリンカーと結合したタグ等を付けた被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP))のアリコートを使用し、着目被検体抗体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP抗体)との結合について被検試料中の着目被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)と競合させる。
フォワード競合アッセイでは、固相化した特異的結合パートナー(例えば、抗体)を、被検試料と、標識した着目被検体、着目被検体断片又はその着目被検体変異体とに逐次又は同時に接触させることができる。前記着目被検体ペプチド、着目被検体断片又は着目被検体変異体は、切断可能なリンカーと結合したタグから構成される検出可能なラベルを含む任意の検出可能なラベルで標識することができる。このアッセイでは、前記抗体を固相担体上に固相化することができる。あるいは、微粒子又は平面基板等の固相担体上に固相化された抗種抗体等の抗体と前記抗体をカップリングすることができる。
サンドイッチアッセイフォーマットに関連して上述したと同様の条件下で、前記標識着目被検体、前記被検試料及び前記抗体をインキュベートする。こうして、2種類の異なる種類の抗体と着目被検体の複合体を作製することができる。具体的には、作製された抗体と着目被検体の複合体の一方は、検出可能なラベル(例えば、蛍光ラベル等)を含み、他方の抗体と着目被検体の複合体は、検出可能なラベルを含まない。検出可能なラベルの定量前に、必ずしも必要ではないが、抗体と着目被検体の複合体を被検試料の残余から分離することができる。抗体と着目被検体の複合体を被検試料の残余から分離するか否かに関係なく、次に、抗体と着目被検体の複合体中の検出可能なラベルの量を定量する。その後、被検試料中の着目被検体(例えば、膜と結合した着目被検体、可溶性着目被検体、可溶性着目被検体の断片、着目被検体(膜と結合しているか又は可溶性の着目被検体)の変異体又は任意のその組み合わせ)の濃度を、例えば上記のように測定することができる。
(3)リバース競合阻害アッセイ
リバース競合アッセイでは、固相化した着目被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)を、被検試料と、少なくとも1種の標識抗体とに逐次又は同時に接触させることができる。
サンドイッチアッセイフォーマットに関連して上述した固相担体等の固相担体に着目被検体を固定化することができる。
サンドイッチアッセイフォーマットに関連して上述したと同様の条件下で、前記固相化着目被検体、被検試料及び少なくとも1種の標識抗体をインキュベートする。こうして、2種類の異なる種類の着目被検体と抗体の複合体を作製する。具体的には、作製された着目被検体と抗体の複合体の一方は、固相化されており、検出可能なラベル(例えば、蛍光ラベル等)を含み、他方の着目被検体と抗体の複合体は、固相化されておらず、検出可能なラベルを含む。洗浄等の当技術分野で公知の技術により、固相化された着目被検体と抗体の複合体から、固相化されていない着目被検体と抗体の複合体と、被検試料の残余を除去する。固相化されていない着目被検体と抗体の複合体を除去したら、次に、タグの切断後に、固相化された着目被検体と抗体の複合体中の検出可能なラベルの量を定量する。その後、検出可能なラベルの量を上記のように比較することにより、被検試料中の着目被検体の濃度を測定することができる。
(4)ワンステップイムノアッセイ又は「キャプチャオンザフライ」アッセイ
キャプチャオンザフライイムノアッセイでは、固相担体に固相化剤をプレコーティングする。捕捉剤、被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)及び検出剤を一緒に固相担体に加えた後、検出前に洗浄工程を行う。捕捉剤は、被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)と結合することができ、固相化剤のリガンドを含む。捕捉剤と検出剤は、抗体とすることができ、あるいは、本願に記載するような又は当技術分野で公知の捕捉又は検出可能な他の任意の部分とすることができる。リガンドは、ペプチドタグを含むことができ、固相化剤は、抗ペプチドタグ抗体を含むことができる。あるいは、リガンドと固相化剤は、キャプチャオンザフライアッセイに利用されるように相互に結合することが可能な物質の任意の対(例えば、特異的結合対、及び当技術分野で公知の他の対)とすることができる。2種以上の被検体を測定することもできる。所定の実施形態では、固相担体に抗原をコーティングし、分析しようとする被検体を抗体とする。
所定の他の実施形態では、ワンステップイムノアッセイ又は「キャプチャオンザフライ」アッセイにおいて、(ビオチン、ストレプトアビジン等の)固相化剤をプレコーティングした(微粒子等の)固相担体と、(夫々捕捉剤及び検出試薬として機能する)少なくとも第1の特異的結合メンバー及び第2の特異的結合メンバーを使用する。第1の特異的結合メンバーは、固相化剤のリガンドを含み(例えば、固相担体上の固相化剤がストレプトアビジンであるならば、第1の特異的結合メンバー上のリガンドは、ビオチンとすることができる)、更に着目被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)と結合する。第2の特異的結合メンバーは、検出可能なラベルを含み、着目被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)と結合する。固相担体と第1及び第2の特異的結合メンバーを(逐次又は同時に)被検試料に加えることができる。第1の特異的結合メンバー上のリガンドは、固相担体上の固相化剤と結合し、固相担体と第1の特異的結合メンバーの複合体を形成する。試料中に着目被検体が存在する場合には、固相担体と第1の特異的結合メンバーの複合体と結合し、固相担体と第1の特異的結合メンバーと被検体の複合体を形成する。第2の特異的結合メンバーは、固相担体と第1の特異的結合メンバーと被検体の複合体と結合し、検出可能なラベルが検出される。検出の前に任意に洗浄工程を利用してもよい。所定の実施形態では、ワンステップアッセイにおいて、2種以上の被検体を測定することができる。所定の他の実施形態では、3種以上の特異的結合メンバーを利用することができる。所定の他の実施形態では、複数の検出可能なラベルを加えることができる。所定の他の実施形態では、複数の着目被検体を検出することができ、あるいは、その量、値又は濃度を測定、判定又は評定することができる。
本願に記載し、当技術分野で公知の種々のフォーマットでキャプチャオンザフライアッセイを使用することができる。例えば、前記フォーマットは、上記のようなサンドイッチアッセイとすることができ、あるいは、競合アッセイとすることができ、単一の特定結合メンバーを利用することができ、又は公知の他の変形を使用することができる。
9.他の因子
上記診断、予後判定及び/又は評定方法は更に、診断、予後判定及び評定の他の因子の使用を含む。所定の実施形態では、グラスゴーコーマスケールを使用して外傷性脳損傷を診断することができる。他の試験、スケール又は指標も単独又はグラスゴーコーマスケールと組み合わせて使用することができる。1例は、ランチョロスアミーゴススケール(Ranchos Los Amigos Scale)である。ランチョロスアミーゴススケールは、意識、認知、行動、及び環境に対する反応のレベルを測定する。ランチョロスアミーゴススケールは、以下のレベルを含む。レベルI:反応なし;レベルII:全身反応;レベルIII:局在反応;レベルIV:混乱-興奮;レベルV:混乱-不適切;レベルVI:混乱-適切;レベルVII:自動的-適切;及びレベルVIII:意図的-適切。別の例は、TBI後の脳震盪後症状の重症度を測定するための自己申告スケールであるリバーミード脳震盪後症状質問票である。患者は、過去24時間に16種類の症状(例えば、頭痛、眩暈、悪心、嘔吐)の各々がどの程度の重症度であったかを等級付けするように求められる。各場合に、症状を損傷が発生する前(発病前)の重症度と比較する。これらの症状を、無症状、障害なし、軽度障害、中等度障害、及び重度障害の0~4のスケールで重症度により報告する。
10.試料
所定の実施形態では、ヒト対象等の対象が、身体揺さぶり、閉鎖性若しくは開放性頭部外傷をもたらす外的な機械的若しくは他の力による鈍的衝撃、1回以上の転倒、爆発若しくは爆破又は他の型の鈍力外傷に起因する頭部の損傷を生じた後に、試料を取得する。所定の実施形態では、ヒト対象等の対象が、火炎、化学物質、毒素、又は火炎、化学物質及び毒素の組み合わせを吸い込んだ後又はこれらに曝露された後に、試料を取得する。このような化学物質及び/又は毒素の例としては、カビ、アスベスト、駆除剤及び殺虫剤、有機溶剤、塗料、接着剤、ガス(例えば、一酸化炭素、硫化水素、及びシアン化物)、有機金属(例えば、メチル水銀、四エチル鉛及び有機スズ)及び/又は1種以上の乱用薬物が挙げられる。所定の実施形態では、自己免疫疾患、代謝障害、脳腫瘍、低酸素症、ウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2)、真菌感染症、細菌感染症、髄膜炎、水頭症、又は任意のそれらの組み合わせに罹患しているヒト対象等の対象から試料を取得する。
更に別の実施形態において、本願に記載する方法は、以下に記載する抗UCH-L1及び/又は抗GFAP抗体又はその抗体断片を使用して対象におけるUCH-L1及び/又はGFAPの値を測定することにより、対象がTBI(例えば、軽度TBI、中等度TBI、重度TBI、又は中等度~重度TBI)を有するか否か又はその発症の危険があるか否かを判定するためにも使用することができる試料を使用する。したがって、特定の実施形態において、本開示は、本願に記載し、当技術分野で公知の外傷性脳損傷を有するか又はその危険のある対象が、療法又は治療の候補となるか否かを判定する方法も提供する。一般に、前記対象は、本願に記載するように、少なくとも(i)頭部の損傷を生じている;(ii)1種以上の化学物質及び/若しくは毒素を吸い込んでいる及び/若しくはこれらに曝露されている;(iii)自己免疫疾患、代謝障害、脳腫瘍、低酸素症、ウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2)、真菌感染症、細菌感染症、髄膜炎、水頭症、若しくは任意のそれらの組み合わせに罹患している;又は(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせである対象であり、あるいは、(例えば、自己免疫疾患、代謝障害、脳腫瘍、低酸素症、ウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2)、真菌感染症、細菌感染症、髄膜炎、水頭症、又は任意のそれらの組み合わせに罹患している対象等の)TBIを有するか若しくはその危険があるとして実際に診断された対象、並びに/又は好ましくない(即ち、臨床的に望ましくない)濃度若しくは量のUCH-L1及び/若しくはGFAP又はUCH-L1及び/若しくはGFAP断片を示す対象である。
a.被検試料又は生体試料
本願で使用する場合に、「試料」、「被検試料」、「生体試料」とは、UCH-L1及び/又はGFAPを含有するか又は含有することが疑われる液体試料を意味する。試料は、任意の適切な資源に由来することができる。場合により、試料は、液体、流動性粒状固体、又は固体粒子の懸濁液を含むことができる。場合により、試料は、本願に記載する分析前に処理してもよい。例えば、分析前に試料をその資源から分離又は精製してもよいが、所定の実施形態では、UCH-L1及び/又はGFAPを含有する未処理の試料を直接アッセイしてもよい。特定の例において、UCH-L1及び/又はGFAP源は、ヒト生体物質(例えば、体液、全血、血清、血漿等の血液、尿、唾液、汗、痰、精液、粘液、涙液、リンパ液、羊水、間質液、肺洗浄液、脳脊髄液、口咽頭検体、鼻咽頭検体、糞便、組織、臓器等)である。組織としては、限定されないが、骨格筋組織、肝組織、肺組織、腎組織、心筋組織、脳組織、骨髄、子宮頸部組織、皮膚等が挙げられる。試料は液体試料でもよいし、固体試料の抽出液でもよい。所定の場合において、試料の資源は、生検試料のように臓器又は組織でもよく、組織分解/細胞溶解により可溶化してもよい。
広い範囲の体積の液体試料を分析することができる。少数の典型的な実施形態において、試料体積は、約0.5nL、約1nL、約3nL、約0.01μL、約0.1μL、約1μL、約5μL、約10μL、約100μL、約1mL、約5mL、約10mL等とすることができる。場合により、体液試料の体積は、約0.01μL~約10mL、約0.01μL~約1mL、約0.01μL~約100μL、又は約0.1μL~約10μLとすることができる。
場合により、アッセイで使用する前に液体試料を希釈してもよい。例えば、UCH-L1及び/又はGFAP源がヒト体液(例えば、血液、血清)である実施形態では、体液を適切な溶媒(例えば、PBS緩衝液等の緩衝液)で希釈することができる。液体試料を使用前に、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約10倍、約100倍、又はそれ以上に希釈することができる。他の場合では、液体試料をアッセイで使用する前に希釈しない。
場合により、試料を分析前処理に供してもよい。分析前処理は、非特異的タンパク質除去及び/又は有効且つ廉価に実装可能な混合機能等の付加機能を提供することができる。分析前処理の一般方法としては、動電トラッピング、AC動電作用、表面音響波、等速電気泳動、誘電泳動、電気泳動、又は当技術分野で公知の他の前濃縮技術の使用が挙げられる。場合により、液体試料をアッセイで使用する前に濃縮してもよい。例えば、UCH-L1及び/又はGFAP源がヒト体液(例えば、血液、血清)である実施形態では、体液を沈殿、蒸発、濾過、遠心、又はその組み合わせにより濃縮することができる。液体試料を使用前に、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約10倍、約100倍、又はそれ以上に濃縮することができる。
b.対照
対照試料を加えると望ましいと思われる。対照試料は、上記のような対象からの試料と同時に分析することができる。対象試料から得られた結果を対照試料から得られた結果と比較することができる。試料のアッセイ結果を比較することができる標準曲線を準備することができる。このような標準曲線は、アッセイ単位の関数としてマーカー値(即ち、蛍光ラベルを使用する場合には、蛍光シグナル強度)を示す。複数のドナーから採取した試料を使用し、正常な健康組織におけるUCH-L1及び/又はGFAPの参照値と、上記特徴の1種以上を有する可能性のあるドナーから採取した組織におけるUCH-L1及び/又はGFAPの「危険」値について、標準曲線を準備することができる。
したがって、上記の点では、被検試料中のUCH-L1及び/又はGFAPの存在、量、又は濃度の測定方法が提供される。前記方法は、例えば、UCH-L1及び/又はGFAP上のエピトープと結合する少なくとも1種の捕捉抗体と、捕捉抗体のエピトープとは異なるUCH-L1及び/又はGFAP上のエピトープと結合し、任意に検出可能なラベルを含む少なくとも1種の検出抗体を利用し、イムノアッセイにより被検試料をUCH-L1及び/又はGFAPについてアッセイする工程と、被検試料中のUCH-L1及び/又はGFAPの存在、量、又は濃度の直接又は間接的指標として検出可能なラベルにより発生されたシグナルを、キャリブレーター中のUCH-L1及び/又はGFAPの存在、量、又は濃度の直接又は間接的指標として発生されたシグナルと比較する工程を含む。前記キャリブレーターは、任意にキャリブレーターの各々のUCH-L1及び/又はGFAPの濃度が系列中の他のキャリブレーターと異なるようにしたキャリブレーター系列の一部であり、そのようにすることが好ましい。
11.キット
本願では、UCH-L1及び/若しくはGFAP又はUCH-L1及び/若しくはGFAP断片について被検試料をアッセイ又は評定するために使用することができるキットを提供する。前記キットは、UCH-L1及び/又はGFAPについて被検試料をアッセイするための少なくとも1種のコンポーネントと、UCH-L1及び/又はGFAPについて被検試料をアッセイするための説明書を含む。例えば、前記キットは、イムノアッセイ(例えば、化学発光微粒子イムノアッセイ)により被検試料をUCH-L1及び/又はGFAPについてアッセイするための説明書を含むことができる。前記キットに含まれる説明書は、包装材料に添付することもできるし、パッケージインサートとして同梱することもできる。説明書は、一般的には書面又は印刷物であるが、このようなものに限定されない。このような説明書を格納し、エンドユーザーに伝達することが可能な任意の媒体が本開示により想定される。このような媒体としては、限定されないが、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CDROM)等が挙げられる。本願で使用する場合に、「説明書」なる用語は、説明書を提供するインターネットサイトのアドレスを含むことができる。
前記少なくとも1種のコンポーネントとしては、UCH-L1及び/又はGFAPと特異的に結合する1種以上の単離抗体又はその抗体断片を含む少なくとも1種の組成物が挙げられる。前記抗体は、UCH-L1及び/若しくはGFAP捕捉抗体並びに/又はUCH-L1及び/若しくはGFAP検出抗体とすることができる。
上記の代わりに又は上記に加え、前記キットは、キャリブレーター若しくは対照(例えば、精製し、任意に凍結乾燥したUCH-L1及び/又はGFAP)、及び/又はアッセイを実施するための少なくとも1個の容器(例えば、予め抗UCH-L1及び/又はGFAPモノクローナル抗体をコーティングしておくことができるチューブ、マイクロタイタープレート又はストリップ)、及び/又はアッセイ緩衝液若しくは洗浄緩衝液等の緩衝液を含むことができ、前記アッセイ緩衝液若しくは洗浄緩衝液のいずれか一方は、濃厚溶液、検出可能なラベル(例えば、酵素ラベル)の基質溶液、又は停止溶液として提供することができる。前記キットは、アッセイを実施するために必要な全コンポーネント(即ち、試薬、標準、緩衝液、希釈剤等)を含むことが好ましい。前記説明書は更に、標準曲線を作成するための説明書も含むことができる。
前記キットは更に、UCH-L1及び/又はGFAPを定量するための参照標準を含むことができる。前記参照標準は、UCH-L1及び/又はGFAP濃度の内挿及び/又は外挿用標準曲線を作成するために利用することができる。前記参照標準は、高値UCH-L1及び/又はGFAP濃度値(例えば、約100000pg/mL、約125000pg/mL、約150000pg/mL、約175000pg/mL、約200000pg/mL、約225000pg/mL、約250000pg/mL、約275000pg/mL、又は約300000pg/mL)、中値UCH-L1及び/又はGFAP濃度値(例えば、約25000pg/mL、約40000pg/mL、約45000pg/mL、約50000pg/mL、約55000pg/mL、約60000pg/mL、約75000pg/mL又は約100000pg/mL)、及び/又は低値UCH-L1及び/又はGFAP濃度値(例えば、約1pg/mL、約5pg/mL、約10pg/mL、約12.5pg/mL、約15pg/mL、約20pg/mL、約25pg/mL、約30pg/mL、約35pg/mL、約40pg/mL、約45pg/mL、約50pg/mL、約55pg/mL、約60pg/mL、約65pg/mL、約70pg/mL、約75pg/mL、約80pg/mL、約85pg/mL、約90pg/mL、約95pg/mL、又は約100pg/mL)を含むことができる。
前記キットで提供されるUCH-L1及び/又はGFAPに特異的な組換え抗体等の任意の抗体は、フルオロフォア、放射性部分、酵素、ビオチン/アビジンラベル、発色団、化学発光ラベル等の検出可能なラベルを結合することができ、あるいは、前記キットは、抗体を標識するための試薬若しくは抗体を検出するための試薬(例えば、検出抗体)、及び/又は被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)を標識するための試薬若しくは被検体(例えば、UCH-L1及び/又はGFAP)を検出するための試薬を含むことができる。前記抗体、キャリブレーター、及び/又は対照は、別々の容器で提供することもできるし、適切なアッセイフォーマット(例えば、マイクロタイタープレート)に予め分配しておくこともできる。
任意に、前記キットは、品質管理コンポーネント(例えば、感度パネル、キャリブレーター、及び陽性対照)を含む。品質管理試薬の調製は当技術分野で周知であり、種々の免疫診断製品のインサートシートに記載されている。感度パネルメンバーは、任意にアッセイ性能特性を設定するために使用され、更に任意に、イムノアッセイキット試薬の完全性とアッセイの標準化の有用な指標である。
前記キットは更に、任意に診断アッセイを実施するため又は品質管理評価を助長するために必要な他の試薬(例えば、緩衝液、塩、酵素、酵素補因子、基質、検出試薬等)を含むことができる。被検試料の単離及び/又は処理用の緩衝液及び溶液(例えば、前処理試薬)等の他のコンポーネントもキットに含むことができる。キットは更に、1種以上の他の対照を含むことができる。キットのコンポーネントの1種以上は、凍結乾燥することができ、その場合、キットは更に、凍結乾燥したコンポーネントの再構成に適した試薬を含むことができる。
前記キットの各種コンポーネントは、任意に必要に応じて適切な容器(例えば、マイクロタイタープレート)に収容して提供される。前記キットは更に、試料を保持又は保存するための容器(例えば、尿、全血、血漿、又は血清試料の容器又はカートリッジ)を含むことができる。必要に応じて前記キットは任意に更に、反応容器、混合容器、及び試薬又は被検試料の調製を助長する他のコンポーネントも含むことができる。前記キットは更に、被検試料を取得するのを補助するための1種以上の器具(例えば、シリンジ、ピペット、ピンセット、計量スプーン等)を含むことができる。
前記検出可能なラベルが少なくとも1種のアクリジニウム化合物である場合には、前記キットは、少なくとも1種のアクリジニウム-9-カルボキサミド、少なくとも1種のアクリジニウム-9-カルボン酸アリールエステル、又は任意のその組み合わせを含むことができる。前記検出可能なラベルが少なくとも1種のアクリジニウム化合物である場合には、前記キットは更に、緩衝液、溶液、及び/又は少なくとも1種の塩基性溶液等の過酸化水素源を含むことができる。必要に応じて、前記キットは、磁性粒子、ビーズ、試験管、マイクロタイタープレート、キュベット、膜、足場分子、フィルム、濾紙、ディスク、又はチップ等の固相を含むことができる。
必要に応じて、前記キットは更に、被検試料を別の被検体についてアッセイするための1種以上のコンポーネントを単独で又は更に説明書と共に含むことができ、前記コンポーネントは、外傷性脳損傷又は障害のバイオマーカー等のバイオマーカーとすることができる。
a.キット及び方法の応用
本願に記載するようなイムノアッセイにより被検試料中のUCH-L1及び/又はGFAPの濃度を評定又は測定するためのキット(又はそのコンポーネント)及び方法は、例えば、米国特許第5,063,081号、米国特許出願公開第2003/0170881号、2004/0018577号、2005/0054078号、及び2006/0160164号に記載され、例えば、Abbott Laboratories社(Abbott Park,IL)からAbbott Point of Care(i-STAT(R)又はi-STAT Alinity,Abbott Laboratories)として市販されている(固相を微粒子としたシステムを含む)種々の自動及び半自動システムと、米国特許第5,089,424号及び5,006,309号に記載され、例えば、Abbott Laboratories社(Abbott Park,IL)からARCHITECT(R)又はAbbott Alinityデバイスのシリーズとして市販されているシステムで使用するように適応させることができる。
自動又は半自動システムと非自動システム(例えば、ELISA)の違いをいくつか挙げると、第1の特異的結合パートナー(例えば、被検体抗体又は捕捉抗体)が結合される基板(サンドイッチ形成と被検体反応性に影響を与える可能性がある)と、捕捉工程、検出工程、及び/又は任意に実施される洗浄工程の長さとタイミングが挙げられる。ELISA等の非自動フォーマットは、試料及び捕捉試薬の共存下のインキュベーション時間を比較的長くする必要がある(例えば、約2時間)と思われるが、自動又は半自動フォーマット(例えば、Abbott Laboratories社製ARCHITECT(R)と任意の後継プラットフォーム)は、インキュベーション時間を比較的短くすることができる(例えば、ARCHITECT(R)では、約18分間)。同様に、ELISA等の非自動フォーマットは、コンジュゲート試薬等の検出抗体のインキュベーション時間が比較的長い(例えば、約2時間)が、自動又は半自動フォーマット(例えば、ARCHITECT(R)と任意の後継プラットフォーム)では、インキュベーション時間を比較的短くすることができる(例えば、ARCHITECT(R)と任意の後継プラットフォームでは、約4分間)。
Abbott Laboratories社から入手可能な他のプラットフォームとしては、限定されないが、AxSYM(R),IMx(R)(例えば、その開示内容全体を本願に援用する米国特許第5,294,404号参照)、PRISM(R)、EIA(ビーズ)、及びQuantum(TM)II並びに他のプラットフォームが挙げられる。また、他のフォーマット(例えば、電気化学的又は他のハンドヘルド又はポイントオブケアアッセイシステム)で前記アッセイ、キット、及びキットコンポーネントを利用することもできる。上述したように、本開示は、例えば、サンドイッチイムノアッセイを実施する市販のポイントオブケア(Abbott Laboratories社製i-STAT(R))電気化学的イムノアッセイシステムに適用可能である。使い捨て試験デバイスにおけるイムノセンサーとその製造・操作方法は、例えば、米国特許第5,063,081号、米国特許出願公開第2003/0170881号、2004/0018577号、2005/0054078号、及び2006/0160164号に記載されており、この点に関するそれらの教示内容全体を本願に援用する。
i-STAT(R)システムへのアッセイの適応については、以下の構成が好ましい。1対の金アンペロメトリック作用電極と銀-塩化銀参照電極を搭載した微細加工シリコンチップを作製する。作用電極の一方では、電極を覆うようにパターニングされたポリビニルアルコールのポリマーコーティングに、捕捉抗体を固相化したポリスチレンビーズ(直径0.2mm)を付着させる。イムノアッセイに適したフルイディクスフォーマットを有するi-STAT(R)カートリッジにこのチップを埋め込む。シリコンチップの一部には、1種以上のUCH-L1及び/若しくはGFAP抗体(UCH-L1及び/又はGFAPと結合することができる1種以上のモノクローナル/ポリクローナル抗体又はその断片、その変異体、若しくはその変異体の断片)又は1種以上の抗UCH-L1及び/若しくはGFAP DVD-Ig(又はUCH-L1及び/又はGFAPと結合することができるその断片、その変異体、若しくはその変異体の断片)等のUCH-L1及び/又はGFAPの特異的結合パートナーを配置し、いずれも検出可能に標識することができる。カートリッジの液体パウチ内には、リン酸p-アミノフェノールを含む水性試薬を収容する。
操作時には、TBIを生じている疑いのある対象からの試料を試験カートリッジの保持チャンバーに注入し、カートリッジをi-STAT(R)リーダーに挿入する。カートリッジ内のポンプエレメントが、チップを収容する導管内に試料を押し込む。試料をセンサーと接触させ、酵素コンジュゲートを試料に溶解させる。試料をセンサー間で揺動させて約2~12分間のサンドイッチの形成を促進する。アッセイの最後から2番目の工程では、試料を廃棄チャンバーに押し込み、アルカリホスファターゼ酵素の基質を含有する洗浄液を使用して過剰の酵素コンジュゲートと試料をセンサーチップから洗い流す。アッセイの最終工程において、アルカリホスファターゼラベルは、リン酸p-アミノフェノールと反応してリン酸基を切断し、遊離したp-アミノフェノールを作用電極で電気化学的に酸化させることができる。測定された電流に基づき、リーダーは、組み込みアルゴリズムと工場で決定された校正曲線により、試料中のUCH-L1及び/又はGFAPの量を計算することができる。
本開示の方法で使用するための本願に記載する自動及び半自動システムは、(例えば、陽性結果に基づいて)CTスキャンを実施すべきか又は(例えば、陰性結果に基づいて)CTスキャンを実施すべきでないかの決定(読み出し)を提供するために、1種以上のコンピュータプログラム、ソフトウェア又はアルゴリズムを利用することができる。例えば、(例えば、アルゴリズムを使用する)コンピュータプログラム又はソフトウェアは、(1個の試料を使用するか、2個以上を使用するかに関係なく)(1)GFAP及びUCH-L1値が参照値(又はカットオフ値)未満である場合には、結果は陰性であり、CTスキャンを実施しない;あるいは、(2)GFAP及び/又はUCH-L1が参照値(又はカットオフ値)以上である場合には、結果は陽性であり、CTスキャンを実施するという解釈を提供することができる。コンピュータプログラム又はソフトウェアは、参照値が陽性頭部CT、頭蓋内病変の存在又は外傷性脳損傷を生じていない対照対象に相関しているか否か、TBIを生じている対象を経過観察及び/又はTBI治療すべきか否か等の他の適切な解釈を提供することもできる。このようなコンピュータプログラム又はソフトウェアは、当技術分野で周知である。
本願に記載する方法とキットは、イムノアッセイを実施するための他の試薬及び方法も必然的に包含する。例えば、当技術分野で公知の緩衝液、並びに/又は例えばコンジュゲート希釈剤、及び/若しくはキャリブレーター希釈剤として洗浄用に利用されるように容易に調製若しくは最適化することができる緩衝液等の種々の緩衝液を包含する。コンジュゲート希釈剤の1例は、所定のキットで利用され、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、塩、タンパク質ブロッカー、抗微生物剤、及び界面活性剤を含有するARCHITECT(R)コンジュゲート希釈剤(Abbott Laboratories,Abbott Park,IL)である。キャリブレーター希釈剤の1例は、所定のキットで利用され、MES、他の塩、タンパク質ブロッカー、及び抗微生物剤を含有する緩衝液を含むARCHITECT(R)ヒトキャリブレーター希釈剤(Abbott Laboratories,Abbott Park,IL)である。また、2008年12月31日付け米国特許出願第61/142,048号に記載されているように、シグナル増幅剤としてシグナル抗体に連結された核酸配列を使用すると、例えば、i-STAT(R)カートリッジフォーマットでシグナル発生の改善が得られる。
本願の所定の実施形態は、外傷性脳損傷等の疾患を評定するために利用する場合に有利であるが、任意に、必要に応じて他の疾患、障害、及び病態におけるUCH-L1及び/又はGFAPを評定するために、前記アッセイ及びキットを利用することもできる。
外傷性脳損傷等の疾患を改善する化合物を同定するために、前記アッセイ方法を使用することもできる。例えば、UCH-L1及び/又はGFAPを発現する細胞を候補化合物と接触させることができる。本願に記載するアッセイ方法を使用し、前記化合物と接触させた細胞におけるUCH-L1及び/又はGFAPの発現レベルを、対照細胞における発現レベルと比較することができる。
本発明は、以下の非限定的な実施例により例証される複数の態様を有する。
[実施例1]i-STAT(R)UCH-L1アッセイ
CTスキャンが陰性の対象のTBI患者集団試験でi-STAT(R)UCH-L1アッセイを使用した。捕捉用モノクローナル抗体としての抗体Aと、検出用モノクローナル抗体としての抗体B及びC等のモノクローナル抗体対を使用した。抗体Aは、Abbott Laboratories社(Abbott Park,IL)の社内で開発された典型的な抗UCH-L1抗体である。抗体B及びCは、UCH-L1の種々のエピトープを認識し、試料中の抗原の検出を増強するものであり、Banyan Biomarkers社(Alachua,Florida)により開発された。Abbott Laboratories社(Abbott Park,IL)の社内で開発された他の抗体、又は他の市販抗体も、捕捉抗体又は検出抗体として種々の組み合わせで併用した場合に、同等のシグナル増強を示すか又は示すと予想される。UCH-L1アッセイデザインを主要な性能属性に対して評価した。カートリッジ構成は、抗体A(捕捉抗体)/抗体B+C(検出抗体)の抗体構成とし、試薬条件は、固形分0.8%、Fabアルカリホスファターゼクラスターコンジュゲート125μg/mL、及びSample Inlet Print:UCH-L1標準とした。アッセイ時間は、10~15分間とした(試料捕捉時間7~12分間)。
[実施例2]i-STAT(R)GFAPアッセイ
TBI患者集団試験でi-STAT(R)GFAPアッセイを使用した。捕捉用モノクローナル抗体としての抗体Aと、検出用モノクローナル抗体としての抗体B等のモノクローナル抗体対を使用した。抗体Aと抗体Bは、Abbott Laboratories社(Abbott Park,IL)の社内で開発された典型的な抗GFAP抗体である。抗体Aと抗体Bは、同一のGFAP分解物内のエピトープと結合する。GFAPアッセイデザインを主要な性能属性に対して評価した。カートリッジ構成は、抗体A(捕捉抗体)/抗体B(検出抗体)の抗体構成とし、試薬条件は、固形分0.8%、Fabアルカリホスファターゼクラスターコンジュゲート250μg/mL、及びSample Inlet Print:GFAP特異的とした。アッセイ時間は、10~15分間とした(試料捕捉時間7~12分間)。
[実施例3]CTスキャン陰性対象におけるGFAP及びUCH-L1値の評定
コンピュータ断層撮影(CT)陰性TBIを予測する際にGFAPやUCH-L1等のバイオマーカーの血中値を評価するために、頭部CTスキャンを受けた成人(即ち、18歳以上の)外傷対象から血液試料を採取した。CTスキャンが陰性(マーシャル分類=1)の対象のバイオマーカー濃度を評価した。
図1A~Dは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象のグラスゴーコーマスコア(GCS)重症度と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から12時間以内(図1A、1C)又は損傷から約24時間以内(即ち、約24.1時間以内)(図1B、1D)に試料を評定した。GFAP値を図1A及び図1Bに示す。UCH-L1値を図1C及び図1Dに示す。
図2A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象の損傷後の意識消失と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図2A、2D)、12時間以内(図2B、2E)、又は約24時間以内(即ち、約24.1時間以内)(図2C、2F)に試料を評定した。GFAP値を図2A~2Cに示す。UCH-L1値を図2D~Fに示す。
図3A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象のMRI結果と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図3A、3D)、12時間以内(図3B、3E)又は約24時間以内(即ち、約24.1時間以内)(図3C、3F)に試料を評定した。GFAP値を図3A~3Cに示す。UCH-L1値を図3D~Fに示す。
図4A~Fは、CTスキャンがTBIに関して陰性の対象の外傷後健忘(即ち、健忘の有無)と相関させたUCH-L1値又はGFAP値のROC分析を示す。損傷から4時間以内(図4A、4D)、12時間以内(図4B、4E)又は約24時間以内(即ち、約24.1時間以内)(図4C、4F)に試料を評定した。GFAP値を図4A~Cに示す。UCH-L1値を図4D~Fに示す。
当業者に自明の通り、本願に記載する本開示の方法の他の適切な改変と応用も容易に適用可能であり、妥当であり、本開示の範囲又は本願に開示する態様及び実施形態から逸脱しない限り、適切な均等物を使用して実施することができる。以上、本開示について詳細に記載したが、以下の実例を参照することにより更に明白に理解されよう。なお、これらの実例は本開示の一部の態様と実施形態を例証するものに過ぎず、本開示の範囲を制限するものとみなすべきではない。本願中に言及する全雑誌資料、米国特許及び刊行物の開示内容全体を本願に援用する。
本発明は、本願に記載する非限定的な実施例により例証される複数の態様を有する。
当然のことながら、以上の詳細な説明と添付図面は単に例証に過ぎず、本発明の範囲を制限するものとみなすべきではなく、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲とその均等物のみにより定義される。
本願に開示する実施形態の種々の変更及び改変が当業者に想到されよう。このような変更及び改変としては、限定されないが、本発明の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、組成物、製剤、又は使用方法に関するものが挙げられ、本発明の趣旨と範囲から逸脱しない限り、このような変更及び改変も実施することができる。
完璧を期するために、本発明の種々の態様を以下に箇条書きにする。
第1項.頭部の損傷を生じているか又は生じている可能性のある対象の診断と評価を補助する方法の改善において、前記方法が、(1)実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷後約24時間以内に前記対象から取得した試料で、前記試料中のユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、又はその組み合わせを含むバイオマーカーの値を測定又は検出するためのアッセイと、(2)臨床的に適切な時間枠内で前記対象に実施される頭部コンピュータ断層撮影スキャンを、同時又は逐次実施する工程を含み、前記改善が、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、前記頭部CTスキャンがTBIに関して陰性であるならば、前記対象が外傷性脳損傷(TBI)を有する可能性の方が高いと診断する工程を含む、前記改善。
第2項.更に、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、前記画像法がTBIに関して陰性であるならば、前記対象にTBIの治療を施す工程を含む、第1項に記載の改善。
第3項.前記参照値が、(a)頭部損傷を生じている対象における値;(b)対象におけるTBIの発生;(c)対象における軽度、中等度、重度、若しくは中等度~重度等のTBIのステージ;(d)対象における意識消失;(e)MRIがTBIに関して陰性でなく陽性;(f)対象における健忘の発生(即ち、健忘の有無)又は(g)対象におけるTBIの重症度に関連するカットオフ値と相関されている、第1項又は第2項のいずれか一項に記載の改善。
第4項.前記試料が、実際の頭部の損傷若しくは疑われる頭部の損傷後約0~約12時間以内、又は疑われる頭部の損傷後約12~約24時間以内に採取される、第1項~第3項のいずれか一項に記載の改善。
第5項.UCH-L1値の測定が、イムノアッセイ又は臨床化学検査により実施される、第1項~第4項のいずれか一項に記載の改善。
第6項.GFAP値の測定が、イムノアッセイ又は臨床化学検査により実施される、第1項~第5項のいずれか一項に記載の改善。
第7項.前記アッセイが、ポイントオブケアアッセイ又は単分子検出法を使用して実施される、第1項~第6項のいずれか一項に記載の改善。
第8項.前記試料が、血液試料、尿試料、脳脊髄液試料、組織試料、体液試料、唾液試料、口咽頭検体、及び鼻咽頭検体から構成される群から選択される、第1項~第7項のいずれか一項に記載の改善。
第9項.前記対象が身体揺さぶり、閉鎖性若しくは開放性頭部外傷をもたらす外的な機械的若しくは他の力による鈍的衝撃、1回以上の転倒、爆発若しくは爆破又は他の型の鈍力外傷に起因する頭部の損傷を生じた後又は生じた可能性があった後に、前記試料を取得する、第1項~第8項のいずれか一項に記載の改善。
第10項.前記対象が火炎、化学物質、毒素、又は火炎、化学物質及び毒素の組み合わせを吸い込んだ後又はこれらに曝露された後に、前記試料を取得する、第1項~第9項のいずれか一項に記載の改善。
第11項.前記化学物質又は毒素が、カビ、アスベスト、駆除剤、殺虫剤、有機溶剤、塗料、接着剤、ガス、有機金属、乱用薬物又は1種以上のそれらの組み合わせである、第10項に記載の改善。
第12項.前記試料が、自己免疫疾患、代謝障害、脳腫瘍、低酸素症、ウイルス感染症、真菌感染症、細菌感染症、髄膜炎、水頭症、又は任意のそれらの組み合わせに罹患している対象から取得される、第1項~第11項のいずれか一項に記載の改善。
第13項.対象の臨床状態、対象の臨床検査値、対象が軽度、中等度、重度、又は中等度~重度外傷性脳損傷のいずれを生じているかの分類、対象のUCH-L1値、GFAP値又はUCH-L1値とGFAP値が低値、中値又は高値のいずれであるか、及び前記対象が頭部の損傷を生じた又は生じた可能性のあるイベントのタイミングから構成される群から選択される因子に関係なく、任意の対象で前記方法を実施することができる、第1項~第12項のいずれか一項に記載の改善。
第14項.更に、前記対象を経過観察する工程を含む、第1項~第13項のいずれか一項に記載の改善。
第15項.頭部の損傷を生じているか又は生じている可能性のある対象の診断と評価を補助する方法であって、前記方法が、
a.(1)実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷後約24時間以内に前記対象から取得した試料で、前記試料中のユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、又はその組み合わせを含むバイオマーカーの値を測定又は検出するためのアッセイと、(2)臨床的に適切な時間枠内で実施される頭部コンピュータ断層撮影(CT)スキャンを、同時又は逐次実施する工程と;
b.前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、前記頭部CTスキャンがTBIに関して陰性であるならば、前記対象が外傷性脳損傷(TBI)を有する可能性の方が高いと診断する工程を含む、前記方法。
第16項.更に、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、前記CTスキャンがTBIに関して陰性であるならば、前記対象にTBIの治療を施す工程を含む、第15項に記載の方法。
第17項.前記参照値が、(a)頭部損傷を生じている対象における値;(b)対象におけるTBIの発生;(c)対象における軽度、中等度、重度、若しくは中等度~重度等のTBIのステージ;(d)対象における意識消失;(e)MRIがTBIに関して陰性でなく陽性;(f)対象における健忘の発生(即ち、健忘の有無)又は(g)対象におけるTBIの重症度に関連するカットオフ値と相関されている、第15項又は第16項のいずれか一項に記載の方法。
第18項.前記試料が、実際の頭部の損傷若しくは疑われる頭部の損傷後約0~約12時間以内、又は疑われる頭部の損傷後約12~約24時間以内に採取される、第15項~第17項のいずれか一項に記載の方法。
第19項.UCH-L1値の測定が、イムノアッセイ又は臨床化学検査により実施される、第15項~第18項のいずれか一項に記載の方法。
第20項.GFAP値の測定が、イムノアッセイ又は臨床化学検査により実施される、第15項~第19項のいずれか一項に記載の方法。
第21項.前記アッセイが、ポイントオブケアアッセイ又は単分子検出法を使用して実施される、第15項~第20項のいずれか一項に記載の方法。
第22項.前記試料が、血液試料、尿試料、脳脊髄液試料、組織試料、体液試料、唾液試料、口咽頭検体、及び鼻咽頭検体から構成される群から選択される、第15項~第21項のいずれか一項に記載の方法。
第23項.前記対象が身体揺さぶり、閉鎖性若しくは開放性頭部外傷をもたらす外的な機械的若しくは他の力による鈍的衝撃、1回以上の転倒、爆発若しくは爆破又は他の型の鈍力外傷に起因する頭部の損傷を生じた後又は生じた可能性があった後に、前記試料を取得する、第15項~第22項のいずれか一項に記載の方法。
第24項.前記対象が火炎、化学物質、毒素、又は火炎、化学物質及び毒素の組み合わせを吸い込んだ後又はこれらに曝露された後に前記試料を取得する、第15項~第22項のいずれか一項に記載の方法。
第25項.前記化学物質又は毒素が、カビ、アスベスト、駆除剤、殺虫剤、有機溶剤、塗料、接着剤、ガス、有機金属、乱用薬物又は1種以上のそれらの組み合わせである、第24項に記載の方法。
第26項.前記試料が、自己免疫疾患、代謝障害、脳腫瘍、低酸素症、ウイルス感染症、真菌感染症、細菌感染症、髄膜炎、水頭症、又は任意のそれらの組み合わせに罹患している対象から取得される、第15項~第22項のいずれか一項に記載の方法。
第27項.対象の臨床状態、対象の臨床検査値、対象が軽度、中等度、重度、又は中等度~重度外傷性脳損傷のいずれを生じているかの分類、対象のUCH-L1値、GFAP値又はUCH-L1値とGFAP値が低値、中値又は高値のいずれであるか、及び前記対象が頭部の損傷を生じた又は生じた可能性のあるイベントのタイミングから構成される群から選択される因子に関係なく、任意の対象で前記方法を実施することができる第15項~第22項のいずれか一項に記載の方法。
第28項.更に、前記対象を経過観察する工程を含む、第15項~第27項のいずれか一項に記載の方法。
第29項.頭部の損傷を生じているか又は生じている可能性のある対象の診断と評価を補助する方法の改善において、前記対象が、実際の頭部損傷又は疑われる頭部損傷から臨床的に適切な時間枠内で頭部コンピュータ断層撮影(CT)スキャンを受けており、その結果が外傷性脳損傷(TBI)に関して陰性であり、前記方法が、実際の頭部損傷又は疑われる頭部損傷後約24時間以内に前記対象から取得した試料で、前記試料中のユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、又はその組み合わせを含むバイオマーカーの値を測定又は検出するためのアッセイを前記頭部CTと同時又は逐次実施する工程を含み、前記改善が、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高いならば、前記対象が外傷性脳損傷(TBI)を有する可能性の方が高いと診断する工程を含む、前記改善。
第30項.頭部の損傷を生じているか又は生じている可能性のある対象の診断と評価を補助する方法の改善において、前記方法が、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷後約24時間以内に前記対象から取得した試料で、前記試料中のユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、又はその組み合わせを含むバイオマーカーの値を測定又は検出するためのアッセイを実施する工程を含み、前記改善が、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、臨床的に適切な時間枠内で前記対象に実施された頭部コンピュータ断層撮影(CT)スキャンが、TBIに関して陰性であるか、又は前記対象で頭部CTスキャンが実施されていないならば、前記対象が外傷性脳損傷(TBI)を有する可能性の方が高いと診断する工程を含む、前記改善。
第31項.更に、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、任意に、頭部CTスキャンを実施する場合に、その結果がTBIに関して陰性であるならば、前記対象にTBIの治療を施す工程を含む、第30項に記載の改善。
第32項.前記参照値が、(a)頭部損傷を生じている対象における値;(b)対象におけるTBIの発生;(c)対象における軽度、中等度、重度、若しくは中等度~重度等のTBIのステージ;(d)対象における意識消失;(e)MRIがTBIに関して陰性でなく陽性;(f)対象における健忘の発生(即ち、健忘の有無)又は(g)対象におけるTBIの重症度に関連するカットオフ値と相関されている、第30項又は第31項のいずれか一項に記載の改善。
第33項.前記試料が、実際の頭部の損傷若しくは疑われる頭部の損傷後約0~約12時間以内、又は実際の頭部の損傷若しくは疑われる頭部の損傷後約12~約24時間以内に採取される、第30項~第32項のいずれか一項に記載の改善。
第34項.UCH-L1値の測定が、イムノアッセイ又は臨床化学検査により実施される、第30項~第33項のいずれか一項に記載の改善。
第35項.GFAP値の測定が、イムノアッセイ又は臨床化学検査により実施される、第30項~第34項のいずれか一項に記載の改善。
第36項.前記アッセイが、ポイントオブケアアッセイ又は単分子検出法を使用して実施される、第30項~第35項のいずれか一項に記載の改善。
第37項.前記試料が、血液試料、尿試料、脳脊髄液試料、組織試料、体液試料、唾液試料、口咽頭検体、及び鼻咽頭検体から構成される群から選択される、第30項~第36項のいずれか一項に記載の改善。
第38項.前記対象が身体揺さぶり、閉鎖性若しくは開放性頭部外傷をもたらす外的な機械的若しくは他の力による鈍的衝撃、1回以上の転倒、爆発若しくは爆破又は他の型の鈍力外傷に起因する実際の頭部の損傷を生じた後に、前記試料を取得する、第30項~第37項のいずれか一項に記載の改善。
第39項.前記対象が火炎、化学物質、毒素、又は火炎、化学物質及び毒素の組み合わせを吸い込んだ後又はこれらに曝露された後に、前記試料を取得する、第30項~第37項のいずれか一項に記載の改善。
第40項.前記化学物質又は毒素が、カビ、アスベスト、駆除剤、殺虫剤、有機溶剤、塗料、接着剤、ガス、有機金属、乱用薬物又は1種以上のそれらの組み合わせである、第39項に記載の改善。
第41項.前記試料が、自己免疫疾患、代謝障害、脳腫瘍、低酸素症、ウイルス感染症、真菌感染症、細菌感染症、髄膜炎、水頭症、又は任意のそれらの組み合わせに罹患している対象から取得される、第30項~第37項のいずれか一項に記載の改善。
第42項.対象の臨床状態、対象の臨床検査値、対象が軽度、中等度、重度、又は中等度~重度外傷性脳損傷のいずれを生じているかの分類、対象のUCH-L1値、GFAP値又はUCH-L1値とGFAP値が低値、中値又は高値のいずれであるか、及び前記対象が頭部の損傷を生じた又は生じた可能性のあるイベントのタイミングから構成される群から選択される因子に関係なく、任意の対象で前記方法を実施することができる、第30項~第41項のいずれか一項に記載の改善。
第43項.更に、前記対象を経過観察する工程を含む、第30項~第42項のいずれか一項に記載の改善。
第44項.前記血液試料が、全血試料、血清試料、又は血漿試料である、第1項~第14項のいずれか一項に記載の改善。
第45項.前記対象が、ヒト対象である、第1項~第14項又は第44項のいずれか一項に記載の方法。
第46項.前記血液試料が、全血試料、血清試料、又は血漿試料である、第15項~第28項のいずれか一項に記載の方法。
第47項.前記対象が、ヒト対象である、第15項~第28項又は第46項のいずれか一項に記載の方法。
第48項.前記血液試料が、全血試料、血清試料、又は血漿試料である、第29項~第42項のいずれか一項に記載の改善。
第49項.前記対象が、ヒト対象である、第29項~第42項又は第48項のいずれか一項に記載の改善。

Claims (17)

  1. 頭部の損傷を生じているか又は生じている可能性のある対象の診断と評価を補助する方法の改善において、前記方法が、(1)実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷後約24時間以内に前記対象から取得した試料で、前記試料中のユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、又はその組み合わせを含むバイオマーカーの値を測定又は検出するためのアッセイと、(2)臨床的に適切な時間枠内で前記対象に実施される頭部コンピュータ断層撮影(CT)スキャンを、同時又は逐次実施する工程を含み、前記改善が、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、前記頭部CTスキャンがTBIに関して陰性であるならば、前記対象が外傷性脳損傷(TBI)を有する可能性の方が高いと診断する工程を含む、前記改善。
  2. 頭部の損傷を生じているか又は生じている可能性のあるヒト対象の診断と評価を補助する方法の改善において、前記方法が、実際の頭部の損傷又は疑われる頭部の損傷後約24時間以内に前記対象から取得した試料で、前記試料中のユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、又はその組み合わせを含むバイオマーカーの値を測定又は検出するためのアッセイを実施する工程を含み、前記改善が、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、かつ臨床的に適切な時間枠内で前記対象に実施された頭部コンピュータ断層撮影(CT)スキャンが、TBIに関して陰性であるか、又は前記対象で頭部CTスキャンが実施されていないならば、前記対象が外傷性脳損傷(TBI)を有する可能性の方が高いと診断する、前記改善。
  3. 更に、前記バイオマーカーの値が参照値よりも高く、任意に、頭部CTスキャンを実施する場合に、TBIに関して陰性であるならば、前記対象にTBIの治療を施す工程を含む、請求項1又は2に記載の改善。
  4. 前記参照値が、(a)頭部損傷を生じている対象における値;(b)対象におけるTBIの発生;(c)対象における軽度、中等度、重度、若しくは中等度~重度等のTBIのステージ;(d)対象における意識消失;(e)MRIがTBIに関して陰性でなく陽性;(f)対象における健忘の発生(即ち、健忘の有無)又は(g)対象におけるTBIの重症度に関連するカットオフ値と相関されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の改善。
  5. 前記試料が、実際の頭部の損傷若しくは疑われる頭部の損傷後約0~約12時間以内、又は実際の頭部の損傷若しくは疑われる頭部の損傷後約12~約24時間以内に採取される、請求項1~4のいずれか一項に記載の改善。
  6. UCH-L1値の測定が、イムノアッセイ又は臨床化学検査により実施される、請求項1~5のいずれか一項に記載の改善。
  7. GFAP値の測定が、イムノアッセイ又は臨床化学検査により実施される、請求項1~6のいずれか一項に記載の改善。
  8. 前記アッセイが、ポイントオブケアアッセイ又は単分子検出法を使用して実施される、請求項1~7のいずれか一項に記載の改善。
  9. 前記試料が、血液試料、尿試料、脳脊髄液試料、組織試料、体液試料、唾液試料、口咽頭検体、及び鼻咽頭検体から構成される群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の改善。
  10. 前記対象が身体揺さぶり、閉鎖性若しくは開放性頭部外傷をもたらす外的な機械的若しくは他の力による鈍的衝撃、1回以上の転倒、爆発若しくは爆破又は他の型の鈍力外傷に起因する実際の頭部の損傷を生じた後又は生じた可能性があった後に、前記試料を取得する、請求項1~9のいずれか一項に記載の改善。
  11. 前記対象が火炎、化学物質、毒素、又は火炎、化学物質及び毒素の組み合わせを吸い込んだ後又はこれらに曝露された後に、前記試料を取得する、請求項1~10のいずれか一項に記載の改善。
  12. 前記化学物質又は毒素が、カビ、アスベスト、駆除剤、殺虫剤、有機溶剤、塗料、接着剤、ガス、有機金属、乱用薬物又は1種以上のそれらの組み合わせである、請求項11に記載の改善。
  13. 前記試料が、自己免疫疾患、代謝障害、脳腫瘍、低酸素症、ウイルス感染症、真菌感染症、細菌感染症、髄膜炎、水頭症、又は任意のそれらの組み合わせに罹患している対象から取得される、請求項1~10のいずれか一項に記載の改善。
  14. 対象の臨床状態、対象の臨床検査値、対象が軽度、中等度、重度、又は中等度~重度外傷性脳損傷のいずれを生じているかの分類、対象のUCH-L1値、GFAP値又はUCH-L1値とGFAP値が低値、中値又は高値のいずれであるか、及び前記対象が頭部の損傷を生じた又は生じた可能性のあるイベントのタイミングから構成される群から選択される因子に関係なく、任意の対象で前記方法を実施することができる、請求項1~13のいずれか一項に記載の改善。
  15. 更に、前記対象を経過観察する工程を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の改善。
  16. 前記血液試料が、全血、血清又は血漿である、請求項1~15のいずれか一項に記載の改善。
  17. 前記対象が、ヒト対象である、請求項1~16のいずれか一項に記載の改善。
JP2023533334A 2020-12-01 2021-11-30 頭部コンピュータ断層撮影スキャンの結果が外傷性脳損傷(tbi)に関して陰性の対象においてtbiを判定するための1種以上のバイオマーカーの使用 Pending JP2023552755A (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US202063120062P 2020-12-01 2020-12-01
US63/120,062 2020-12-01
US202163170873P 2021-04-05 2021-04-05
US63/170,873 2021-04-05
PCT/US2021/061215 WO2022119841A1 (en) 2020-12-01 2021-11-30 Use of one or more biomarkers to determine traumatic brain injury (tbi) in a subject having received a head computerized tomography scan that is negative for a tbi

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023552755A true JP2023552755A (ja) 2023-12-19

Family

ID=86613333

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023533334A Pending JP2023552755A (ja) 2020-12-01 2021-11-30 頭部コンピュータ断層撮影スキャンの結果が外傷性脳損傷(tbi)に関して陰性の対象においてtbiを判定するための1種以上のバイオマーカーの使用

Country Status (3)

Country Link
EP (1) EP4256348A1 (ja)
JP (1) JP2023552755A (ja)
AU (1) AU2021390474A1 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
AU2021390474A1 (en) 2023-06-08
EP4256348A1 (en) 2023-10-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7379165B2 (ja) Gfapとuch-l1との組合せを使用する、ヒト対象における外傷性脳損傷を診断及び査定する一助となるための方法
JP7344797B2 (ja) 早期バイオマーカーを使用する、ヒト対象における外傷性脳損傷の、超急性の診断及び決定の一助となるための方法
JP7416625B2 (ja) 早期バイオマーカーを使用する、頭部への損傷を負ったヒト対象又は負った可能性があるヒト対象に対して、イメージングを実施するかどうかの決定の一助となるための方法
AU2018256845B2 (en) Methods for aiding in the hyperacute diagnosis and determination of traumatic brain injury using early biomarkers on at least two samples from the same human subject
JP2019530875A (ja) 患者サンプルにおけるuch−l1状況を評価する改善された方法
JP2020522685A (ja) 心臓トロポニンi及び早期バイオマーカーを使用する、ヒト対象における軽度外傷性脳損傷を診断及び査定する一助となるための方法
US20240094226A1 (en) Biomarkers for use in determining traumatic brain injury (tbi)
US20220170948A1 (en) Use of one or more biomarkers to determine traumatic brain injury (tbi) in a human subject having received a head computerized tomography scan that is negative for a tbi
US20230213536A1 (en) Use of biomarkers to determine sub-acute traumatic brain injury (tbi) in a subject having received a head computerized tomography (ct) scan that is negative for a tbi or no head ct scan
US20220381796A1 (en) Methods of evaluating brain injury in a pediatric subject
US20240110928A1 (en) Biomarkers and methods for differentiating between mild and supermild traumatic brain injury
JP2023552755A (ja) 頭部コンピュータ断層撮影スキャンの結果が外傷性脳損傷(tbi)に関して陰性の対象においてtbiを判定するための1種以上のバイオマーカーの使用
WO2023102384A1 (en) Use of one or more biomarkers to determine traumatic brain injury (tbi) in a subject having received a head computerized tomography scan that is negative for a tbi
CA3239023A1 (en) Use of one or more biomarkers to determine traumatic brain injury (tbi) in a subject having received a head computerized tomography scan that is negative for a tbi

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230801

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20231218