JP4557581B2 - 新規みりん及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、経時的な褐変増色が起こりにくく、かつ香味良好なみりん及びその製造方法に関する。
一般にみりんは、蒸きょうした糯米を米麹及びアルコールと共に仕込み、糖化、熟成して得られる調味料であるが、多量の糖類、アミノ酸やペプチド等を含有するために、清酒等の他の醸造物と比較すると経時的に褐変増色しやすく、この点が品質劣化の要因となっている。みりんの褐変増色は糖類とアミノ酸やペプチド等の窒素成分からアミノカルボニル反応によって生成するものに起因すると考えられている。みりん中の糖類、あるいはアミノ酸やペプチドを低減させるとアミノカルボニル反応の基質が減少することになり褐変増色すなわち着色が抑制される。しかしながら、糖類は甘みを付与するというみりんの最も重要な機能を担う必須成分であり、それを低減することはみりんの風味や調味料としての機能に大きな影響を及ぼすために好ましくない。また、アミノ酸やペプチドはみりんの成分中、経時的な褐変増色への寄与が最も高いが、旨みやコクの付与に関与するみりんにとって必須の成分であり、これらも糖類と同様に低減することはみりんの品質低下につながるので好ましくない。
アミノカルボニル反応を抑制する方法として、基質を低減させる以外の方法としてはpHの調整が挙げられる。アミノカルボニル反応はpHが高いほど反応が促進されることが知られており、みりんにおいてもpHを下げると経時着色が抑制されることが知られている。これまでみりんのpHを下げる方法として、生酸性を有する焼酎麹菌(特開昭57−105183号公報)やリゾープス属麹菌(特開昭63−152970号公報)を使用したみりんの製造方法や、掛米である糯米を、乳酸菌を添加した水に浸漬し、水切りした後蒸煮して得られる蒸し糯米を使用することにより、pHを下げる方法(特開平11―113555号公報)が提案されている。しかしながら、これらの方法はみりん醪の状態でpHを低下する方法であり、その場合、醪中のpHの低下に伴い醪中の米麹に由来する酸性プロテアーゼの活性が上昇するため、生成されるみりんは着色反応の基質であるアミノ酸やペプチドの含有量が必要以上に多くなり、pHの低下による経時褐変増色抑制効果が十分に発揮されない。また、みりん醪、みりん醪圧搾液、みりん等にグルコースオキシダーゼを添加、作用させてみりんのpHを低下させる方法(特開2003−304860公報)が提案されている。この方法はみりん醪圧搾液やみりんにも適用可能であるが、十分にpHが低下したみりんを得るためには数日を要し、また過酸化水素の除去が必要であるなど製造上の問題がある。以上はすべて有機酸を増量することによりpHを低下させる方法であるが、過剰な有機酸は香味に影響を及ぼすためみりんの品質にとって望ましくない。
溶液のpHを調整する公知の技術としてはイオン交換体を用いる方法がある。特にH型強酸性陽イオン交換体で溶液を処理することにより、有機酸を増加させることなく溶液のpHを低下させることができる。カラム状のH型強酸性陽イオン交換体に溶液を通液する場合、ある一定量を通液すると交換体の水素イオンがすべて溶液中に溶出してしまうため、それ以上通液を行っても通過液のpHは低下しない。したがって、H型強酸性陽イオン交換体を用いて溶液のpHを低下させる場合、1バッチにおける溶液の処理量は通過液のpH低下が終了する量より少なくして行われている。しかしながら、従来の方法でみりんをH型の陽イオン交換体で処理すると、pHが低下すると共にみりん中のアミノ酸やペプチド等の窒素成分がイオン交換体の樹脂に交換されることにより低減してしまい、旨みやコクの少ない品質の劣ったみりんとなってしまう。また、みりん中の香気成分も同様に低減してしまう。このように、従来の方法により単にH型強酸性陽イオン交換体処理するだけでは香味良好なみりんを製造することは困難であった。
以上のように、従来技術では糖類やアミノ酸、ペプチド等の窒素成分といったみりんにとっての必須成分含量を維持しつつ、また有機酸を過剰に含有しない、経時的な褐変増色が抑制され、かつ香味良好なみりんの製造方法は存在せず、その技術開発が望まれていた。
特開昭57−105183号公報 特開昭63−152970号公報 特開平11−113555号公報 特開2003−304860公報
本発明の目的は、上記従来技術にかんがみ、糖類やアミノ酸、ペプチド等の窒素成分を十分に含有すると共に、有機酸を過剰に含有することなくpHが通常のみりんより低い、経時的な褐変増色が起こりにくく、かつ香味良好なみりん及びその製造方法を提供することにある。
本発明を概説すれば、みりん醪のろ過液又はみりんを強酸性陽イオン交換体と接触させる工程を包含し、該みりん醪のろ過液又はみりんの処理容量を、強酸性陽イオン交換体に接触後の溶液のpHの低下が実質上終了するに足る容量であるイオン交換体容量の200倍以上の容量とすることを特徴とする、pHが4.2以上5.2以下であり、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、ギ酸、酢酸、ピログルタミン酸、及びグルコン酸からなる有機酸、更にそれらの塩の含有量の合計が400ppm以下であり、かつ窒素含有量が60mg%(w/v)以上であることを特徴とするみりんの製造方法に関する。
本発明者らは、前記従来技術の問題点について鋭意検討を重ねた結果、みりん醪のろ過液又はみりんをH型強酸性陽イオン交換体で処理する場合において、H型強酸性陽イオン交換体に接触後の溶液のpHの低下が実質上終了する容量以上の多量のみりんを一度に処理することにより、一度イオン交換体に交換された窒素成分や香気成分をより選択性の高いみりん中のミネラルなどの陽イオン成分等と交換させることにより再溶出させることができ、その結果、窒素成分含有量を維持しつつ効率的にpHを低下させることができ、着色の進行が顕著に抑制され、かつ香味良好なみりんを製造することができることを見出した。この製造方法を用いることにより、pHが4.2以上5.2以下であり、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、ギ酸、酢酸、ピログルタミン酸、及びグルコン酸からなる有機酸、更にそれらの塩の含有量の合計が400ppm以下であり、かつ窒素含有量が60mg%(w/v)以上というこれまでのみりんと比較して着色の進行が顕著に抑制され、かつ香味良好な新規みりんが得られることを見出し、本発明の完成に至った。
みりん醪のろ過液又はみりんの一定量以上を、強酸性陽イオン交換体、特に対イオンが水素イオンであるH型強酸性陽イオン交換体と接触させるという簡便な方法により、糖類やアミノ酸、ペプチド等の窒素成分が維持され、また有機酸を過剰に含有しない、経時的な褐変増色が顕著に抑制され、かつ香味良好なみりんを提供することができる。本発明は、みりんの着色の増加を簡単かつ効率的に抑制することができるので、みりんの品質劣化防止に有用なものである。
以下に本発明を具体的に説明する。
本発明におけるみりんとは、酒税法で言うみりんであればよい。また、その製造方法は酒税法に則ったみりんの製造方法であれば特に限定はない。例えば、一般的なみりんの製造方法は、搗精、洗米などの原料処理を行い、麹などを添加して仕込醪となし、糖化、熟成する。糖化、熟成を終えた醪は圧搾機で上槽して搾汁と粕に分離する。得られた搾汁は精製工程で火入れし、滓下げして清澄な製品みりんとなる。ここでいう原料処理には、精白、洗浄、浸漬、水切り、蒸煮、放冷の工程があるが、更に掛原料の液化及び/又は糖化工程も含んでいる。原料は米、米麹、醸造アルコール又は焼酎以外に、ぶどう糖、デンプン部分加水分解物を使用してもよい。また、必要に応じて酵素製剤を掛原料の処理の液化及び/又は糖化工程並びに醪へ添加してもよい。また、本発明におけるみりん醪のろ過液とは、みりん製造において熟成後のみりん醪をろ過して得られる清澄液のことをいう。例えば、本発明の製造方法により第1の発明のみりんを製造する場合には、その成分含有量としてクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、ギ酸、酢酸、ピログルタミン酸、及びグルコン酸からなる有機酸、更にそれらの塩の含有量の合計が400ppm以下であり、かつ窒素含有量が60mg%(w/v)以上であるみりん醪のろ過液又はみりんを用いればよい。
本発明の製造方法の主要部は、強酸性陽イオン交換体を使用することにある。他のイオン交換体では十分な効率でpHを低下させることができない。強酸性陽イオン交換体とは、イオン交換基が強酸性の交換基を有するイオン交換体のことをいう。交換基を保持する担体としては、非特異的吸着が少ない不溶性高分子であればいずれも本発明に使用でき、例えば、ダイヤイオンSK1B、SK104、SK110、SK112、SK116、PK208、PK212、PK216、PK220、PK228(いずれも三菱化学株式会社製)、アンバーライトIR120B Na、IR120BN Na、IR124 Na、1006F H、200CT Na、252 Na、IR118 H、IR120B H AG(いずれもローム&ハース社製)、ダウエックスHCR−S、HCR−W2、HGR−W2、マラソンC、モノスフィアー650C、MSC−1、88、モノスフィアー88(いずれもダウ・ケミカル社製)、デュオライトC20S、C20、C20LF、C26A(いずれもローム&ハース社製)等を例示することができる。
本発明に使用する強酸性陽イオン交換体の対イオンとしては、水素イオンを用いることが好ましい。以下、対イオンが水素イオンである強酸性陽イオン交換体を本発明ではH型強酸性陽イオン交換体と略述する。したがって、例えばNa型の強酸性陽イオン交換体を使用する場合は、使用する前に塩酸などの強酸性溶液を通液させることによりH型強酸性陽イオン交換体とすればよい。みりん中のミネラルやアミノ酸等の陽イオン成分とH型強酸性陽イオン交換体の樹脂からの水素イオンとが交換することによりみりん中の水素イオン濃度が上昇しpHが低下する。
本発明においてH型強酸性陽イオン交換体と接触させる工程は、みりん醪のろ過後であればいずれの工程においても適用できる。接触方法はカラム法やバッチ法が一般的に用いられるが、特に限定はなく、製造の観点からはカラム法が望ましい。接触温度はイオン分子の交換に支障がない温度であればよく、10〜40℃、好ましくは20〜30℃である。
一般にみりんのpHは5.5〜6.2であるが、例えば本発明のH型強酸性陽イオン交換体による処理を行うことによりみりんのpHを元の液のpHより低下させることができる。pHが4.2未満の場合、酸味が強くなり、また香気が弱くなるなど品質に問題が生じる。pHが5.2超の場合は実質的に有効なだけの経時的褐変増色抑制効果を得ることができない。したがって、pHは4.2以上5.2以下の範囲、香味の点から好ましくは4.5以上5.2以下、より好ましくは4.8以上5.2以下の範囲がよい。pHの調整はイオン交換体容量に対する溶液の処理容量により行う。処理容量が少ないほど処理後の溶液全体のpHの低下が著しい。例えばみりんをH型強酸性陽イオン交換体で処理すると水素イオンが溶出する代りにアミノ酸等の窒素成分や香気成分がイオン交換体に交換される。香味良好なみりんを製造するためには、これらの窒素成分や香気成分を再溶出させるために強酸性陽イオン交換体に接触後の溶液のpHの低下が実質上終了するに足る容量以上の多量のみりんを処理すればよい。本発明でいう「pHの低下が実質上終了するに足る容量」とは、例えばカラム法でH型強酸性陽イオン交換体による処理を行う場合、イオン交換体を通過した瞬間の溶液のpHが通過する前の溶液のpHと実質的に同じとなる状態にまでなった時点におけるイオン交換体を通過した溶液の総容量のこという。上限としては、pHが5.2となるまでである。少量のみりんを処理して著しくpHの低いみりんを調整後、適当なアルカリを用いて、所望のpHに調整する、あるいは未処理のみりんを混合するなどして目的のpHに調整することも可能ではあるが、この場合、イオン交換体に交換された窒素成分や香気成分が回収されず品質的に良好なみりんを得ることができない。みりん醪のろ過液又はみりんの具体的な処理容量は、処理するみりん醪のろ過液又はみりんの成分組成、あるいは使用するイオン交換体の交換容量をはじめとする性能の違いによるため、予め小規模試験により量的関係を最適化しておく必要があるが、その方法自体は公知のものである。例えばpH5.8の一般的なみりんを、イオン交換体の母体がスチレン系であり、総交換容量2.0meq/mL、架橋度8%の一般的な強酸性陽イオン交換体を用いて処理する場合、イオン交換体容量の200倍のみりんを通液するとpHの低下が実質上終了する。したがって、この場合、イオン交換体容量の200倍以上、好ましくは300倍以上のみりんを通液することが望ましい。通液速度に関しても処理するみりん醪のろ過液又はみりん、あるいは使用する強酸性陽イオン交換体に応じて適宜最適な条件を設定すればよい。
このようにして、本発明の製造方法により製造されたみりんは、従来の製造方法により製造されたみりんより、経時的な褐変増色が起こりにくく品質的に安定したものであり、かつ香味良好なものとなる。
本発明の製造方法を用いれば、一般的なみりん醪のろ過液又はみりんより、pHが4.2以上5.2以下であり、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、ギ酸、酢酸、ピログルタミン酸、及びグルコン酸からなる有機酸、更にそれらの塩の含有量の合計が400ppm以下であり、かつ窒素含有量が60mg%(w/v)以上である新規みりんを製造することができる。なお、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、ギ酸、酢酸、ピログルタミン酸、及びグルコン酸からなる有機酸、更にそれらの塩の含有量の合計が400ppmを超えると、酸味が強く、酸が浮くものとなり、また、窒素含有量が60mg%(w/v)未満では、旨みやコクに欠けるものとなる。有機酸及びそれらの塩の分析方法は、通常用いられる方法に従って行えばよく、例えばイオン排除クロマトグラフィーによる方法が挙げられる。なお、本発明では、有機酸換算としてppmを単位に算出しているが、これは濃度の単位mg/Lと同義である。クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、ギ酸、酢酸、ピログルタミン酸、及びグルコン酸からなる有機酸、更にそれらの塩の含有量というのは、前記した分析方法で分析可能な含有量であり、9種の有機酸のうちで被検みりん中にない(又は分析で検出できない)酸及びそれらの塩は除外して算出すればよく、また、そのようなみりんも本発明に含まれる。本発明のみりんは、経時的な褐変増色が起こりにくく、また香味の面では有機酸を過剰に含有しないため余分な酸味がなく、かつアミノ酸やペプチドを高含有するため旨みやコクが豊かな従来にない優れたみりんとなる。本発明のみりんはこれまでの製造方法では製造することができず、また実際に市販みりんの分析を行った結果、本発明が規定するpH、有機酸の含有量の合計、かつ窒素含有量を満たすみりんは存在しなかった。
なお、経時的な褐変増色の抑制効果を評価する方法としては一般的な方法が用いられる。例えば、増色度を評価する方法としては、まず本発明で得られたみりん(以下、本発明品という)について色調の指標となる10mmセルの430nmの吸光度(A)を測定する。以下、吸光度の測定はすべて10mmセルでの測定とする。本発明品を適当な温度、例えば40℃で一定期間、例えば1ヵ月間保持し、430nmの吸光度(A)を測定する。一方、強酸性陽イオン交換体の処理を行わなかったみりん(以下、対照品という)に関しても、430nmの吸光度(A)を測定した後、同条件で保持し、430nmの吸光度(A)を測定する。両者の吸光度から、下記式により増色度である△OD430nmを算出する。
△OD430nm(本発明品)=A−A
△OD430nm(対照品) =A−A
また、上記式で得られた増色度を用いて下記式により着色抑制率を算出することもできる。
着色抑制率(%)=〔{△OD430nm(対照品)−△OD430nm(本発明品)}÷△OD430nm(対照品)〕×100
経時的な褐変増色の抑制効果を評価するには、増色度での比較を行ってもよいし、着色抑制率を算出して比較を行うこともできる。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
様々な処理容量でみりんを強酸性陽イオン交換体で処理した実施例を以下に示す。強酸性陽イオン交換体、ダイヤイオンSK1B(三菱化学株式会社製)5mlを内径10mmのクロマトグラフ管に充填し、水洗した後、7%塩酸30mlを通液しH型にした。更に水洗した後、本みりん(宝酒造株式会社製)をSV8の流速で通液した。なお、本発明でいうSVとは、通液の速度であり、空間速度(S.V.と略記)、あるいは液空間速度(LHSVと略記)のことであり、以下SVと略述する。予備試験の結果、本実施例の条件ではイオン交換体容量の200倍のみりんを通液した段階で通過液のpHの低下が実質上終了した。みりん400ml通液したもの(イオン交換体容量の80倍)を試験例1、600ml通液したもの(イオン交換体容量の120倍)を試験例2、800ml通液したもの(イオン交換体容量の160倍)を試験例3、1000ml通液したもの(イオン交換体容量の200倍)を本発明1、1500ml通液したもの(イオン交換体容量の300倍)を本発明2、2000ml通液したもの(イオン交換体容量の400倍)を本発明3とした。未処理の本みりんを比較例1とした。得られた処理液について分析、官能検査及び保存試験を行った。官能検査は10名のパネラーで行い、3点法(1;良、2;普通、3;悪)で評価した。各パネラーによる官能検査の平均値より、1.0〜1.5を◎、1.5超〜2.0を○、2.0超〜2.5を△、2.5超〜3.0を×で示した。保存試験は40℃暗所にて静置保存をし、1ヵ月間の増色度である△OD430nm(10mmセルの430nmの吸光度の差)を測定し着色抑制率を計算した。結果を表1に示す。また、40℃での保存試験において、定期的にサンプリングを行い着色の指標となる10mmセルの430nmの吸光度の経時変化を測定した結果を図1に示す。
なお、図1においては、縦軸を430nmの吸光度、横軸を保存期間(日)として、結果をグラフ化した。
Figure 0004557581
総有機酸は、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、ギ酸、酢酸、ピログルタミン酸、及びグルコン酸からなる有機酸、更にそれらの塩の含有量の合計を示す。
表1に示すように、H型強酸性陽イオン交換体で処理することによりみりんのpHが低下した。イオン交換体容量に対するみりんの処理容量が少ないほどpHの低下が著しく、また窒素成分の低減が大きかった。しかしながら、窒素成分の低減はみりんの処理容量をイオン交換体容量の200倍以上にすれば10%以下に抑制することができた。官能検査の結果より、みりんの処理容量がイオン交換体容量の200倍以上であれば良好であり、特に300倍及び400倍を通液した本発明2及び本発明3の評価が高かった。これは窒素成分や香気成分を十分量含有し、かつみりんの香味にとって適当なpHであるためである。表1及び図1に示すように、保存試験の結果、処理容量が少ないほど着色が抑制されていた。しかしながら、イオン交換体容量の400倍のみりんを処理した本発明3でも着色抑制率が35%以上であり十分な着色抑制効果を示した。
本発明3と比較例1を用いて、めんつゆと高野豆腐の含め煮を調理し官能検査を行った。めんつゆは、みりん18ml、濃口しょうゆ30ml、上白糖4.4g、食塩0.3gを配合し、更に水を加えて全量を200mlとして調製した。高野豆腐の含め煮に関しては、まず以下のように調味液を調製した。すなわち、みりん250ml、薄口しょうゆ30ml、上白糖15g、だししるべK超淡色(宝酒造株式会社製)14g、だししるべL−2(宝酒造株式会社製)10gを配合し、更に水を加えて全量を1000mlとした。この調味液に予めお湯で戻し2cm角程度にカットした高野豆腐を加え沸騰するまで強火で加熱し、沸騰後は弱火で20分間煮た。官能検査は10名のパネラーで行い、3点法で評価した。その結果、本発明3で調理したサンプルは比較例1で調理したサンプルと同様に、旨みやコクが強く、また香りも豊かであり非常においしいという評価が得られた。以上より本発明のみりんは調理時においても優れた調理効果を示すことがわかった。
他の強酸性陽イオン交換体でみりんを処理した実施例を以下に示す。アンバーライトIR120B Na(ローム&ハース社製)及びダウエックスHCR−S(ダウ・ケミカル社製)各5mlを内径10mmのクロマトグラフ管に充填し、水洗した後、7%塩酸30mlを通液しH型にした。更に水洗した後、実施例1において比較例1とした本みりん(宝酒造株式会社製)2000ml(イオン交換体容量の400倍)をSV8の流速で通液した。なお、予備試験の結果、本実施例の条件ではいずれの強酸性陽イオン交換体の場合においてもイオン交換体容量の200倍のみりんを通液した段階で通過液のpHの低下が実質上終了した。得られた処理液についてIR120B Naで処理したものを本発明4、HCR−Sで処理したものを本発明5とした。SK1Bを用いて全く同条件で処理を行った本発明3の結果と併せて、分析、官能検査及び保存試験を行った。官能検査及び保存試験は実施例1と同様の方法で行った。結果を表2に示す。
Figure 0004557581
表2に示すように、いずれの強酸性陽イオン交換体で処理した場合においても、官能検査の結果より、処理前のみりんと同等に高い評価が得られた。また、保存試験の結果、いずれの強酸性陽イオン交換体で処理した場合においても処理前のみりんと比較して顕著に経時的な褐変増色が抑制されていた。いずれの強酸性陽イオン交換体で処理した場合も分析値や保存試験結果がほぼ同じ数値になったのは、通過液のpHの低下が実質上終了するに足る容量以上のみりんを通液するという同じ条件に設定することにより、それぞれの強酸性陽イオン交換体の性能を引出すことができたものである。
様々な市販みりんを本発明の方法により処理した実施例を以下に示す。ダイヤイオンSK1B(三菱化学株式会社製)5mlを内径10mmのクロマトグラフ管に充填し、水洗した後、7%塩酸30mlを通液しH型にした。更に水洗した後、市販みりんA(比較例2とする)、市販みりんB(比較例3とする)及び市販みりんC(比較例4とする)各2000ml(イオン交換体容量の400倍)をSV8の流速で通液した。なお、予備試験の結果、本実施例の条件ではいずれのみりんを処理した場合においてもイオン交換体容量の200倍のみりんを通液した段階で通過液のpHの低下が実質上終了した。市販みりんAを処理したものを本発明6、市販みりんBを処理したものを本発明7、市販みりんCを処理したものを本発明8とした。それぞれ処理して得られたみりんについて分析、官能検査及び保存試験を行った。官能検査及び保存試験は実施例1と同様の方法で行った。結果を表3に示す。
Figure 0004557581
表3に示すように、いずれの市販みりんを本発明の方法により処理した場合においても、官能検査の結果より、処理前のみりんと同等に高い評価が得られた。また、保存試験の結果、いずれの市販みりんを本発明の方法により処理した場合においても処理前のみりんと比較して顕著に経時的な褐変増色が抑制されていた。
本発明によれば、みりんの種類、強酸性陽イオン交換体の種類を問わず、工業的規模で簡便に経時的な褐変増色が抑えられた、かつ香味良好なみりんを得ることができるので、本発明は有用なみりん及びその製造方法である。
イオン交換体容量に対するみりんの処理容量を変えて処理したみりんを用いて40℃にて保存試験を行い、その10mmセルの430nmの吸光度の経時変化を示す図である。

Claims (2)

  1. みりん醪のろ過液又はみりんを強酸性陽イオン交換体と接触させる工程を包含し、該みりん醪のろ過液又はみりんの処理容量を、強酸性陽イオン交換体に接触後の溶液のpHの低下が実質上終了するに足る容量であるイオン交換体容量の200倍以上の容量とすることを特徴とする、pHが4.2以上5.2以下であり、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、ギ酸、酢酸、ピログルタミン酸、及びグルコン酸からなる有機酸、更にそれらの塩の含有量の合計が400ppm以下であり、かつ窒素含有量が60mg%(w/v)以上であることを特徴とするみりんの製造方法
  2. 強酸性陽イオン交換体の対イオンが水素イオンである請求項1に記載のみりんの製造方法。
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