JP4555507B2 - 自己潤滑性表面を有する軽量部品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自己潤滑性表面を有するアルミニウム合金系軽量部品及びその製造方法に関し、より詳しくは、自己潤滑性表面を有し、寸法精度が良好であり、充分な機械的特性を有するアルミニウム合金系軽量部品、並びにそのような軽量部品を加圧下でのパルス通電による焼結法を利用して手間がかからずに容易に製造することができる製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
粉末冶金法による焼結機械部品は高品質で安価に大量生産できることから、その生産量は近年増加傾向にあり、例えば、自動車業界においてはエンジン部品、駆動系部品、シャーシ等に使用されている。そして、それらは殆どが鉄鋼材料で造られている。
【0003】
また、摺動部分に使用されるトライボロジー応用製品としては、鉄鋼材料を用いて焼結法によって本体部を作製し、別個に作製した摺動部をその本体部に張り付けている。このような製法は手間がかかるだけでなく、得られる製品は当然に重いという欠点がある。
【0004】
近年、地球環境に対する負荷の低減、省エネルギーといった観点から、自動車や鉄道車両等の輸送機関の軽量化に対するニーズが高まっており、自動車部品等のアルミ化が鋳造品、プレス品から進んできている。
この軽量化を目的としたトライボロジー応用製品としては、アルミニウム合金ダイカストで本体部を作製し、別個に作製した摺動部をその本体部に張り付けることが実施されている。しかし、このアルミニウム合金ダイカスト製本体部の作製においては、製造方法の都合上、抜きテーパーを設ける必要があるため、所要の寸法精度を得るために機械加工を実施しており、余分な工数が増える上、寸法精度の確保が難しく、歩留りが悪いというのが現状である。
【0005】
また、軽量化を目的としたトライボロジー応用製品としては、粉末冶金法を用いてアルミニウム合金粉末から本体部を作製し、別個に作製した摺動部をその本体部に張り付けることも試みられているが、無加圧雰囲気下での焼結である粉末冶金法を用いてアルミニウム合金粉末から本体部を作製しているので緻密化することは困難であり、得られる製品は鉄系材料を用いて作製した製品よりも強度、延性、耐久性、耐摩耗性等の機械的性質が劣っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような諸問題を解決しようとするものであり、自己潤滑性表面を有し、寸法精度が良好であり、充分な機械的特性を有し、軽量であるアルミニウム合金系トライボロジー応用製品、並びにそのような軽量部品を加圧下でのパルス通電による焼結法を利用して手間がかからずに容易に製造することができる製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記の目的を達成するために種々検討を重ねた結果、成形型中に(a)構造部材となるアルミニウム合金粉末、又は純金属粉及び/又は合金粉の混合物でその総合組成がアルミニウム合金組成となる粉末混合物と、(b)粉末状固体潤滑材粉末と銅又はCu−Sn系銅合金粉末との混合物とを積層充填し、加圧下でパルス通電により一体焼結させることにより上記の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明の自己潤滑性表面を有する軽量部品は、(a)純金属粉及び/又は合金粉の混合物でその総合組成がJISで規定されている展伸材用アルミニウム合金組成又は鋳造用アルミニウム合金組成となる粉末混合物、JISで規定されている展伸材用アルミニウム合金組成の合金粉末、又はJISで規定されている鋳造用アルミニウム合金組成の合金粉末と、(b)粉末状固体潤滑材及び/又は表面が無電解めっき処理により被覆されている粉末状固体潤滑材5〜30質量%と、残部の銅又はCu−Sn系銅合金粉末との混合物とを積層して加圧下でパルス通電により一体焼結させることによって、(a)の粉末の焼結から形成された構成部材と、前記(b)の粉末の焼結から形成された自己潤滑性表面部材と、構造部材と自己潤滑性表面部材との界面に形成された金属間化合物層とからなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の自己潤滑性表面を有する軽量部品の製造方法は、成形型中に、
(a)純金属粉及び/又は合金粉の混合物でその総合組成がJISで規定されている展伸材用アルミニウム合金組成又は鋳造用アルミニウム合金組成となる粉末混合物、JISで規定されている展伸材用アルミニウム合金組成の合金粉末、又はJISで規定されている鋳造用アルミニウム合金組成の合金粉末と、
(b)粉末状固体潤滑材及び/又は表面が無電解めっき処理により被覆されている粉末状固体潤滑材5〜30質量%と、残部の銅又はCu−Sn系銅合金粉末との混合物と
を積層充填し、加圧下でパルス通電により一体焼結させることを特徴とする。
【0010】
更に、本発明の自己潤滑性表面を有する軽量部品の製造方法は、上記の製造方法で得られた焼結体を更に冷間圧縮により塑性加工して寸法精度を改善することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の自己潤滑性表面を有する軽量部品、及びその製造方法について説明する。
本発明の自己潤滑性表面を有する軽量部品は、構造部材と、自己潤滑性表面部材と、それらの界面に存在する金属間化合物層とからなるものであり、この構造部材は、純金属粉及び/又は合金粉の混合物でその総合組成がJISで規定されている展伸材用アルミニウム合金組成又は鋳造用アルミニウム合金組成となる粉末混合物、JISで規定されている展伸材用アルミニウム合金粉末、又はJISで規定されている鋳造用アルミニウム合金粉末を加圧下でパルス通電により焼結させて形成されたものである。
【0012】
本発明において、JISで規定されている展伸材用アルミニウム合金組成としては、JISで規定されている合金番号2000系、3000系、4000系、5000系、6000系、7000系等のアルミニウム合金組成があり、JISで規定されている鋳造用アルミニウム合金組成としては、JISで規定されている記号AC1B、AC2A、AC2B、AC3A、AC4A、AC4B、AC4C、AC4D、AC5A、AC7A、AC8A、AC8B、AC8C、AC9A、AC9B、ADC1、ADC1C、ADC2、ADC3、ADC5、ADC6、ADC7、ADC8、ADC10、ADC10Z、ADC11、ADC12、ADC12Z、ADC14等がある。
【0013】
本発明においては、強度の面で、アルミニウム合金組成がJISで規定されている展伸材用アルミニウム合金組成であることが好ましく、JISで規定されている合金番号2000系のアルミニウム合金組成、殊にJISで規定されている合金番号2014のアルミニウム合金組成であることが一層好ましい。
【0014】
本発明において、純金属粉及び/又は合金粉の混合物でその総合組成がJISで規定されている展伸材用アルミニウム合金組成又は鋳造用アルミニウム合金組成となる粉末混合物としては、純アルミニウム粉、その他の純金属粉及び種々の母合金粉を適切に組み合わせて、例えば、純アルミニウム粉、純銅粉、純ケイ素粉、50質量%Al−50質量%Mg合金粉を用いてその総合組成をJISで規定されている合金番号2014のアルミニウム合金組成としたものがある。
【0015】
本発明においては、構造部材は上記したようなアルミニウム合金組成の粉末を加圧下でパルス通電により焼結させて形成されるので、構造部材のかさ密度は真密度の98%以上、好ましくは99%以上、最も好ましくはほぼ100%となり、緻密化されているので、強度等の機械的特性に優れたものとなる。
【0016】
本発明の自己潤滑性表面を有する軽量部品の自己潤滑性表面部材は、粉末状固体潤滑材及び/又は表面が無電解めっき処理により被覆されている粉末状固体潤滑材5〜30質量%と、残部の銅又はCu−Sn系銅合金粉末との混合物を加圧下でパルス通電により焼結させて形成されたものである。
【0017】
本発明においては、粉末状固体潤滑材として、本発明の軽量部品が使用される環境に応じて、MoS2 、WS2 、NbS2 等の硫化物、BN等の窒化物、黒鉛、雲母、亜鉛華、酸化鉛、滑石及び硫黄からなる群より選ばれた粉末状固体潤滑材、或いはこれらの粉末状固体潤滑材の表面が無電解めっき処理により、例えば銅無電解めっき処理により被覆されているものを用いることができる。また、自己潤滑性表面部材中に占める粉末状固体潤滑材の量は、所望の自己潤滑性や強度等を考慮して5〜30質量%とする。
【0018】
本発明においては、上記した構造部材と自己潤滑性表面部材との界面に加圧下でのパルス通電による焼結によって形成された金属間化合物層が存在する。この金属間化合物層の存在により、構造部材と自己潤滑性表面部材との接合が良好になっていると判断される。
【0019】
本発明の製造方法は、成形型中に、
(a)純金属粉及び/又は合金粉の混合物でその総合組成がJISで規定されている展伸材用アルミニウム合金組成又は鋳造用アルミニウム合金組成となる粉末混合物、JISで規定されている展伸材用アルミニウム合金組成の合金粉末、又はJISで規定されている鋳造用アルミニウム合金組成の合金粉末と、
(b)粉末状固体潤滑材及び/又は表面が無電解めっき処理により被覆されている粉末状固体潤滑材5〜30質量%と、残部の銅又はCu−Sn系銅合金粉末との混合物と
を積層充填し、加圧下でパルス通電により一体焼結させることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の製造方法で用いる原料については上記で説明した通りである。成形型については黒鉛型、超硬型、ダイス鋼型等を用いることができ、黒鉛型を用いることが好ましい。
本発明においては、まず最初に、上記の(a)成分及び(b)成分を積層充填するのであるが、何れの成分を先に充填するかは必ずしも重要ではない。しかしながら、目的とする軽量部品の形状によっては、(a)成分又は(b)成分の何れかを先に充填することが好ましい場合もある。
【0021】
本発明の製造方法においては、加圧下でのパルス通電により一体焼結させるのであり、圧粉体の粒子間隙に直接パルス状の電気エネルギーが投入され、粒子間に局所的な高温場が形成されるので、これまで焼結が困難であるとされていた材料や異種材料からなる複合材料等の焼結が短時間で且つ高品質に得ることができる。表面に強固な酸化物被膜を有するアルミニウム粉、アルミニウム合金粉と、粉末状固体潤滑材を含有する銅粉又はCu−Sn系銅合金粉との一体焼結には特に有効な手段である。
本発明の製造方法においては、上記のようにして得られた焼結体を更に冷間圧縮により塑性加工して寸法精度を改善することができる。
【0022】
【実施例】
実施例1
構造部材形成用粉末として、純アルミニウム粉、純銅粉、純ケイ素粉、50質量%Al−50質量%Mg合金粉を用いてその総合組成がAl−4.0質量%Cu−0.6質量%Mg−0.8質量%Siとなるように配合し、V型混合機を用いて充分に混合して粉末混合物を用意した。また、自己潤滑性表面部材形成用粉末として、表面が無電解めっき処理により銅で被覆されている黒鉛粉末20質量%とCu−20質量%Sn合金粉末80質量%とをV型混合機を用いて充分に混合して粉末混合物を用意した。
【0023】
パルス通電加圧焼結装置として住友石炭鉱業製のSPS−1050を用い、成形型として図1に示す形状(外径28mm、中心部の穴の内径5mm、最大高さ13.5mm)のラックガイドを成形できる黒鉛製成形型を用いた。黒鉛製成形型中に構造部材形成用粉末を充填してその表面を平にし、その上に自己潤滑性表面部材形成用粉末を積層充填した。50MPaの加圧下でパルス通電により780Kに加熱し、5分間保持して焼結させた。
【0024】
この焼結体の形状は図1に示す通りであり、1は構造部材であり、2は自己潤滑性表面部材である。
1の部分のみについて測定した引張強さは272MPaであり、伸びは13.6%であり、かさ密度は真密度と実質的に同一であった。
【0025】
また、1と2との界面部分のSEM像は図2に示す通りであった。図2から明らかなように、界面にはアルミニウムと銅との反応による厚さ約8μmの金属間化合物層が形成されており、また、1の部分(図2で下側)も2の部分(図2で上側)も緻密化しており、ポア等は認められなかった。
【0026】
上記のようにして得られた直径28mmのラックガイドの上部と下部との直径の差は0.02mm程度で寸法精度の優れたものであった。しかし、このラックガイドを490MPaで冷間圧縮により塑性加工したところ、ラックガイドの上部と下部との直径の差は0.001mmとなり、寸法精度が顕著に改善された。
【0027】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の自己潤滑性表面を有する軽量部品は自己潤滑性表面を有し、寸法精度が良好であり、充分な機械的特性を有している。また、本発明の製造方法は上記のような優れた自己潤滑性表面を有する軽量部品を手間がかからずに容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で製造されたラックガイドの斜視図である。
【図2】 実施例1で製造されたラックガイドの界面部分のSEM像である。
【符号の説明】
1 構造部材
2 自己潤滑性表面部材
Claims (7)
- (a)純金属粉及び/又は合金粉の混合物でその総合組成がJISで規定されている展伸材用アルミニウム合金組成又は鋳造用アルミニウム合金組成となる粉末混合物、JISで規定されている展伸材用アルミニウム合金組成の合金粉末、又はJISで規定されている鋳造用アルミニウム合金組成の合金粉末と、
(b)粉末状固体潤滑材及び/又は表面が無電解めっき処理により被覆されている粉末状固体潤滑材5〜30質量%と、残部の銅又はCu−Sn系銅合金粉末との混合物とを積層して加圧下でパルス通電により一体焼結させることによって、
前記(a)の粉末の焼結から形成された構造部材と、前記(b)の粉末の焼結から形成された自己潤滑性表面部材と、前記構造部材と前記自己潤滑性表面部材との界面に形成された金属間化合物層とからなることを特徴とする自己潤滑性表面を有する軽量部品。 - アルミニウム合金組成がJISで規定されている展伸材用アルミニウム合金組成である請求項1記載の自己潤滑性表面を有する軽量部品。
- アルミニウム合金組成がJISで規定されている合金番号2000系のアルミニウム合金組成である請求項2記載の自己潤滑性表面を有する軽量部品。
- 構造部材のかさ密度が真密度の98%以上である請求項1、2又は3記載の自己潤滑性表面を有する軽量部品。
- 粉末状固体潤滑材がMoS2 、WS2 、NbS2 、BN、黒鉛、雲母、亜鉛華、酸化鉛、滑石及び硫黄からなる群より選ばれたものである請求項1記載の自己潤滑性表面を有する軽量部品。
- 成形型中に、(a)純金属粉及び/又は合金粉の混合物でその総合組成がJISで規定されている展伸材用アルミニウム合金組成又は鋳造用アルミニウム合金組成となる粉末混合物、JISで規定されている展伸材用アルミニウム合金組成の合金粉末、又はJISで規定されている鋳造用アルミニウム合金組成の合金粉末と、(b)粉末状固体潤滑材及び/又は表面が無電解めっき処理により被覆されている粉末状固体潤滑材5〜30質量%と、残部の銅又はCu−Sn系銅合金粉末との混合物とを積層充填し、加圧下でパルス通電により一体焼結させることを特徴とする自己潤滑性表面を有する軽量部品の製造方法。
- 請求項6記載の製造方法で得られた焼結体を更に冷間圧縮により塑性加工して寸法精度を改善することを特徴とする自己潤滑性表面を有する軽量部品の製造方法。
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