JP4554794B2 - 絶縁層を有するステンレス鋼 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に絶縁層を有するステンレス鋼に関し、特に自己発熱体を構成するに適した絶縁層を有するステンレス鋼に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、地球環境や都市環境改善の観点より、発電効率が高いことから二酸化炭素の発生量が少なく、また、一酸化炭素や窒素酸化物などの有害物質の発生量が極めて少ない燃料電池が注目を集めており、庭用,自動車用,発電用に開発が急がれている。
【0003】
燃料電池の燃料としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ガソリン、灯油、軽油などの炭化水素やメタノールなどのアルコール類などが考えられており、触媒を用いて水蒸気改質や部分酸化反応させることにより水素を主体とするガスを得ることができるが、これらの反応を適切に進行させるためには、触媒を適切な温度とすることが必要である。
特に起動時には触媒が常温となっているので適温まで迅速に昇温させる必要があるが、従来の触媒プロセスで採用されている外部加熱方式では、間接加熱方式のため昇温に時間がかかるので、前記用途(家庭用,自動車用,発電用)に使用される場合には、自己発熱型メタルハニカムの使用が、立ち上げ時間の短縮に有効である。
【0004】
自己発熱型メタルハニカムとは、Fe−Cr−Al系フェライトステンレス鋼箔の平板と波板とを積層、捲回したハニカム構造体で、このハニカム構造体に通電し、発熱させるのであるが、その際、平板と波板との接触部が絶縁されていなければならない。ところで、特公平5−41297号公報にはFe−Cr−Al系フェライトステンレス鋼箔の平板と波板とを積層、捲回したハニカム構造体において、平板と波板との接触部がAlウイスカー被覆層により絶縁されていることを特徴とするハニカム構造体が開示されている。
しかしながら、均質なAlウイスカーを生成させるためには、真空雰囲気で短時間加熱後、大気中で長時間酸化処理する必要があった。例えば、前記特公平5−41297号公報には、その実施例として、100Vの耐電圧を得るために、2×10−5Torr真空雰囲気下,900℃で1分間加熱後、900℃大気中で16時間加熱、酸化させてウイスカー生成熱処理を実施している。このようにウイスカーを生成させるためには、▲1▼真空雰囲気下での予備熱処理、▲2▼大気中での長時間加熱処理が必要であり、このような処理は生産性向上のための阻害要因となっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者は上記の点を改良すべく種々検討したところ、ステンレス鋼箔の表面に等軸晶および/または柱状晶からなるα−Alを形成することによって自己発熱型ハニカム構造体を形成した場合、平板と波板との接触部が絶縁されることを見いだし、本発明を完成したもので、その目的とするところは、自己発熱型メタルハニカム用発熱体を製造するに適したAl絶縁層を表面に有するステンレス鋼箔を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、1000℃で1時間以上の酸化処理を施し、全表面が等軸晶および柱状晶からなるα−Al23で被覆されたことを特徴とする絶縁層を有するステンレス鋼である。そして、等軸晶および柱状晶からなるα−Al23の絶縁層の厚みX(μm)としては自己発熱体を構成するに適した絶縁層に必要とする耐電圧Y(V)に対してX≧(Y+8)/430であることが好ましい。即ち、本発明において等軸晶および柱状晶からなるα−Al23の絶縁層は、後記するように簡便な熱処理で生成させることができ、しかもメタルハニカム構造体を製作し、電流を導通した場合、箔の内部は導電性であるが、表面は絶縁性であるため平板と波板との接触点における絶縁性を確保でき、その結果、ステンレス鋼に沿って電流が流れるので通電により発熱させることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に述べる。
本発明におけるステンレス鋼を形成する素材としては、酸化により表面に等軸晶および/または柱状晶からなるα−Al被膜が生成するものであればどのような化学成分のものでもよく、例えばCr:10〜30%,Al:2〜10%,残部Fe、および不可避的な不純物、あるいは必要に応じ、他の成分を含むことができるステンレス鋼等である。或いは蒸着Alメッキ層を有するステンレス鋼でも良い。等軸晶および/または柱状晶からなるα−Al被膜はAlフェライトステンレス鋼を大気中で酸化することによって形成する。Alフェライトステンレス鋼を大気中で酸化すると、はじめに網目状のポーラスな酸化被膜が形成され、被膜と鋼素地界面には空隙が認められるが、更に酸化を続けると、表面形態は緻密かつ平滑な等軸晶からなる酸化皮膜となり、そして更に酸化を続けると、表面形態は緻密かつ平滑で、被膜は表層の等軸晶と下層の柱状晶からなる。なお、更に酸化すると、鋼中のAlが枯渇し、異常酸化し始めるため,(Fe,Cr)を主体とする酸化物が被膜を破って表面まで成長する。
表面に形成される等軸晶および/または柱状晶からなるα−Alの形態の一例の写真を示す。図1は、Fe−20%、Cr−5%、Alステンレス鋼圧延箔の母材表面であり、図2は、これを大気中で酸化処理して等軸晶よりなるα−Alを生成させた表面である。なお、Alフェライトステンレス鋼の酸化皮膜の形態変化については日新製鋼技報、第65号、P1〜12に報告があり、等軸晶の例としてPhoto、4(a),(d)があり、等軸晶および柱状晶の例としてPhoto、3の(b),(e)やPhoto、4の(b),(c),(e),(f)がある。
【0008】
等軸晶および/または柱状晶からなるα−Al23生成は高温短時間の処理で可能であり、被膜酸化の温度条件としては約900℃〜約1300℃であり、処理時間としては約1時間未満〜16時間程度である。そして、図3に示されているように、(図3の生成条件は実施例1参照)低温で長時間処理するより、高温で短時間処理した方がα−Al23被膜は厚くなり、α−Al23被膜の絶縁破壊電圧は、絶縁体であるα−Al23被膜が厚くなるほど高くなる。等軸晶および/または柱状晶からなるα−Al23の絶縁破壊電圧に及ぼす酸化時間、酸化温度、酸化物の形態の影響を図4に示す。(なお、図4の生成条件は実施例1参照)図4より、α−Al23被膜は、同一酸化温度であれば、等軸晶および/または柱状晶からなるα−Al23よりウイスカー状のα−Al23の方が成長は速いため厚くなりやすく、より短時間の熱処理で絶縁破壊電圧を高くすることができるものの、酸化温度を高温としてもα−Al23の成長速度が速くなるため、α−Al23被覆層を厚くでき、これをもって絶縁破壊電圧を高くすることが可能である。本発明にかかる等軸晶および柱状晶からなるα−Al23層がウイスカー状α−Al23層より優位である理由としては次のように考えられる。
(i)等軸晶および柱状晶からなるα−Al23層はウイスカーα−Al23層より緻密なため大気中の酸素の内方拡散に時間がかかり、耐酸化寿命が向上する。
(ii)酸化膜厚が同一であれば等軸晶および柱状晶からなるα−Al23層の方がウイスカーより耐電圧に優れている。
【0009】
【実施例】
実施例1
Fe−20%Cr−5%Alフェライト系ステンレス鋼の50μmの冷間圧延箔を用いて、900〜1300℃で1時間未満〜16時間大気中において酸化処理して、絶縁破壊電圧に及ぼす酸化時間,酸化温度,表面酸化物の形態の影響を調査した結果を図4に示し、同時に比較例として同一の材料を用いて900℃でウイスカー生成処理(2×10−5Torr,900℃で1分間熱処理後、大気中,900℃で2〜14時間熱処理)した材料の調査結果も示す。
【0010】
図4からわかるように、同一温度(900℃)で酸化処理した場合には、等軸晶および/または柱状晶からなるα−Al被膜よりウイスカー状Alを生成させた方が、絶縁破壊電圧は高くなるが、酸化温度を高温にしても同様の効果があり、1000℃で1時間以上の酸化処理をすれば900℃−14時間のAlウイスカー生成処理したのと同等以上の効果があることがわかる。
しかしながら、酸化処理温度が高温になるに従い、腹伸びやねじれなどの箔の変形が目立ち始め、その後のハニカム成形時に波板と平板との間に隙間が生じたり、真っ直ぐに捲き回しや積層するのが困難になるという問題が発生し、1300℃で2時間酸化処理したものが、その後にハニカム成形するに際しての限界であった。
【0011】
実施例2
Fe−20%、Cr−5%、Alフェライト系ステンレス鋼の50μmの冷間圧延箔を用いて、900〜1300℃で1時間未満〜16時間大気中において酸化処理して図2に代表される等軸晶および/または柱状晶からなるα−Al23被膜を生成させ、絶縁破壊電圧に及ぼす等軸晶および柱状晶からなるα−Al23被膜厚の影響を調査した結果を図3に示す。上の酸化処理をすれば900℃−14時間のAl23ウイスカー生成処理したのと同等以上の効果があることがわかる。しかしながら、酸化処理温度が高温になるに従い、腹伸びやねじれなど箔の変形が目立ち始め、その後のハニカム成形時に波板と平板との間に隙間が生じたり、真っ直ぐに捲き回しや積層するのが困難になるという問題が発生し、1300℃で2時間酸化処理したものが、その後にハニカム成形するに際しての限界であった。
【発明の効果】
以上のように、本発明による箔表面の等軸晶および柱状晶からなるα−Al23被膜は良好な絶縁性を示し、本発明による製造方法を用いれば、このような箔を効率よく生産することができる。さらに、このような箔で製造した自己加熱型メタルハニカムを改質器(炭化水素やアルコールなどの燃料から燃料電池の直接の燃料である水素を製造する装置)として用いれば、所定の温度まで急速に昇温できるので起動時間が短縮されて、大幅に利便性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】Fe−20%、Cr−5%、Alステンレス鋼圧延箔の酸化処理前の金属箔表面の写真(倍率5000倍)。
【図2】図1の金属箔表面を大気中で酸化処理して等軸晶よりなるα−Alを生成させた表面の写真(倍率5000倍)。
【図3】 Fe−20%、Cr−5%、Alフェライト系ステンレス鋼における絶縁破壊電圧に及ぼす等軸晶および/または柱状晶からなるα−Al被膜厚の影響の図である。
【図4】 Fe−20%、Cr−5%、Alフェライト系ステンレス鋼箔において、絶縁破壊電圧に及ぼす酸化時間の影響を酸化温度,表面酸化物の形態との関係で調査した結果の図である。
○ 900℃ 等軸晶および/または柱状晶
● 900℃ ウイスカー
△ 1000℃ 等軸晶および/または柱状晶
◇ 1100℃ 等軸晶および/または柱状晶
□ 1200℃ 等軸晶および/または柱状晶
* 1300℃ 等軸晶および/または柱状晶

Claims (2)

  1. 1000℃で1時間以上の酸化処理を施し、全表面が等軸晶および柱状晶からなるα−Al23で被覆されたことを特徴とする絶縁層を有するステンレス鋼。
  2. 等軸晶および柱状晶からなるα−Al23で被覆された絶縁層の厚みX(μm)が、自己発熱体を構成するに適した絶縁層に必要とする耐電圧Y(V)に対してX≧(Y+8)/430で表されることを特徴とする請求項1記載の絶縁層を有するステンレス鋼。
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