JP4553459B2 - 構造物診断方法および構造物診断装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、コンクリート構造物などの内部欠陥を、内部の音響特性を計測することで発見する、あるいは、その音響速度、圧縮強度を推定する構造物診断方法、および構造物診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
第1例。
図10は従来の構造物診断装置の第1の例を示す構成図である。図において401は例えばコンクリートなどの被検査物、402は被検査物401の1つの面401aに密着して設置された受信子、403は受信子402からの信号を増幅する受信信号増幅器、404は受信信号増幅器403の出力信号をディジタル信号に変換するA/D変換器である。
405は被検査物401の1つの面401a(受信子402が設置された同じ面)に密着して設置された送信子、406は送信子405に信号を送る信号発生器である。
407はA/D変換器404によりディジタル化された受信信号(エコー信号波形または単にエコーとも言う)を信号処理して必要な音響特性を得る波形処理機構である。408は診断結果を表示する表示装置、409は診断結果を記憶する記憶装置である。
【0003】
次に動作について説明する。
高周波帯域(超音波域)の弾性波パルスを送信子405から被検査物401の内部に伝搬させ、被検査物401中の異常部( 図示しない欠陥部) によって反射されてくるエコーを受信子402により検出し、そのエコー信号の特性(大きさ、送信信号からの時間的ずれ、時間幅、周波数成分の変化など)から異常部の大きさや位置、種類を推定する。
【0004】
第2例。
図11は従来の構造物診断装置の第2の例を示す構成図である。
図において501はコンクリートなどの被検査物、502は被検査物501の1つの面501aに密着して設置された受信子、503は受信子502からの信号を増幅する受信信号増幅器、504は被検査物501のもう一つの面501b(受信子502が設置された面に対向する面)に密着して設置された送信子、505は送信子504に信号を送る信号発生器である。
506は信号発生器505からのトリガ信号と受信信号増幅器503からの信号を受けて、そのタイミングのずれにより被検査物501の内部の伝搬時間を計算する伝搬時間計測装置である。507は診断処理機構であり被検査物501の内部での音速(信号の伝播速度、以下、音響速度とも言う)の計算を行うと共に、診断データベース508から引き出した情報(予め類似する各種の構造物について音速と圧縮強度との関係を調べたもの)に基づいて、被検査物501の圧縮強度の推定を行う。509は診断結果を表示する表示装置、510は診断結果を記憶する記憶装置である。
【0005】
次に動作について説明する。
被検査物501の1つの面501aに接触させた送信子504から伝搬させた弾性波パルスを対向した面501bに接触させた受信子502により検出し、その伝搬時間と予め求めた伝搬距離(図11の場合は被検査物501の厚み)から被検査物501内部の音速を計算する。次に、求めた音速をもとに、予め求めてある音速と圧縮強度の関係(診断データベース508として保管してある)より、被検査物501の圧縮強度を推定し、表示装置509に表示する。
また、推定した圧縮強度と被検査物501の正常な状態での圧縮強度との差が、ある限界を越えているか否かによって異常部位の有無を表示する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の構造物診断装置は以上のように構成されているため、第1の例では、高周波パルスを用いているので異常部分の構造が不均質物質の場合には、弾性波の減衰が大きく、被検査物の異常部分からの反射波を検出することが困難となり適用できないという問題があった。
また、そのため、減衰に打ち勝つ大きなエネルギーを送信する必要があり、装置が大形、高価となるという問題があった。
また、指向性が鋭く1つの送信子位置で診断できる範囲が極めて狭く、例えばトンネル壁面などの広い範囲を検査するには多大の時間を必要とするという問題があった。
また、指向性が鋭いことから送信子と受信子の位置関係に制約、例えば同じ面に配置しなければならないなど、があった。
【0007】
また、第2の例では、あらかじめ、送信子と受信子との距離(弾性波の伝搬距離)を求めておく必要があるが、構造物の構造によっては求められない場合があり、音速を計測できない(診断そのものを実施できない)という問題があった。
また被検査物の構造上、被検査物の対向する2つの面に送信子と受信子を設置できない場合も、診断そのものが実施できないという問題があった。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、減衰の少ない周波数を用いて、小さいエネルギーの送信で診断が可能で、送信子と受信子との配置に制約がなく、従って、その間の距離(伝搬距離)を計測する必要がなく、被検査物の任意の2つの面に配置して計測できるとともに、1つの送信子位置で被検査物の広範囲面積の計測を行うことができる構造物診断装置を得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明による構造物診断方法は、被検査物に対して送信子から音響弾性波を送信し、受信子でその反射波を受信し、受信した信号を処理することにより前記被検査物の内部欠陥等を診断する構造物診断方法において、被検査物の表面に送信子と受信子とを設置する手順と、前記送信子に送信信号をその周波数を掃引させつつ印加する手順と、 前記送信子に前記送信信号を印加している間に前記受信子が受信した信号をFFT解析し、1つ以上のピーク周波数を検出する手順と、前記ピーク周波数の信号を前記送信子に所定時間の間印加し、その遮断後に、前記受信子が受信する信号の減衰特性を計測する手順と、計測した減衰特性をあらかじめ測定した正常な被検査物の減衰特性と比較し、その差が所定の範囲を越えたとき異常と判定する手順を含むものである。
【0010】
また、送信子と受信子とを被検査物の表面の互いに平行でない面にそれぞれ設置する手順を含むものである。
【0011】
また、計測した減衰特性とあらかじめ記憶しているデータベースから、前記被検査物の圧縮強度または音速を推定する手順を含むものである。
【0012】
この発明の構造物診断装置は、被検査物に対して送信子から音響弾性波を送信し、受信子でその反射波を受信し、受信した信号を処理することにより前記被検査物の内部欠陥等を診断する構造物診断装置において、被検査物の表面に設置された送信子と受信子、周波数掃引発振を行って送信信号を出力する周波数特性計測用回路と、指定された周波数の発振を行う減衰特性計測用回路と、前記周波数特性計測用回路と前記減衰特性計測用回路のいずれかを選択する切り替え回路とを含み、前記送信子に信号を送信する信号発生器、前記受信子が受信した信号を解析して、大きい受信信号が得られる周波数と、前記被検査物の減衰特性とを得る波形処理装置、前記被検査物を構成する素材と類似する素材に関する前記減衰特性と音速との関係を示す第1のデータベース、前記被検査物を構成する素材と類似する素材に関する前記減衰特性または前記音速のいずれかと圧縮強度との関係を示す第2のデータベース、前記波形処理装置が得た前記減衰特性と前記第1及び第2のデータベースのデータから、前記被検査物の圧縮強度と音速を求める診断処理装置を備えたものである。
【0013】
また、周波数特性計測用回路が送信子に送信する掃引発振の周波数は100Hz〜100kHzの間にあり、減衰特性計測用回路が送信子に送信する周波数は前記掃引発振の周波数内の単一周波数を使用したものである。
【0014】
また、波形処理装置は、受信子が受信した信号をFFT変換し、その周波数成分が大きい方から複数のピーク周波数を検出して減衰特性計測用回路の周波数とし、かつ、波形処理装置は複数の周波数のそれぞれに対応して得た複数の減衰時定数を平均して被検査物の減衰特性としたものである。
【0015】
また、減衰特性計測用回路は、波形処理装置から得られたピーク周波数の正弦波を、所定の時間の間送信子に印加し、前記印加を停止した後に、波形処理装置が受信子の受信信号の減衰時間を計測して、減衰特性を算出したものである。
【0016】
また、減衰特性計測用回路は、予め求めておいた被検査物の固有振動数の正弦波を、所定の時間の間送信子に印加し、前記印加を停止した後に、波形処理装置が受信子の受信信号の減衰時間を計測して、減衰特性を算出したものである。
【0017】
また、診断処理装置は計測した減衰時間と、予め求めた診断データベースを基に、被検査物内の音速を算出したものである。
【0018】
また、診断処理装置は計測した減衰時間と、予め求めた診断データベースを基に、被検査物内部の圧縮強度を推定したものである。
【0019】
また、送信子と受信子は被検査物の表面の互いに平行でない面に設置したものである。
【0020】
また、波形処理装置は、受信子が受信した信号をFFT変換し、その中から一つのピーク周波数を検出して減衰特性計測用回路の周波数とし、かつ、ピーク周波数に対応して得た減衰時定数を被検査物の減衰特性としたものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明による構造物診断装置の構成図である。図において101はコンクリートなどの被検査物、102は被検査物101の1つの面101bに密着設置した受信子、103は受信子102の受信信号を増幅する受信信号増幅器、104は受信信号増幅器103の出力をディジタル信号に変換するA/D変換器である。
105は被検査物101のもう一つの面101a(面101aと101bとは互いに平行でない)に密着設置した送信子、106は送信子105に送信信号を送る信号発生器である。信号発生器106は周波数特性計測用回路107と減衰特性計測用回路108と、この2つの回路のいずれかを選択する切り替え回路109とを含んでいる。信号発生器106は計測制御装置110により制御される。
111はA/D変換器104によりディジタル化された信号波形を解析、処理する波形処理機構(波形処理装置)である。112は診断処理機構(診断処理装置)であり波形処理装置111の処理結果と診断データベース113から、被検査物101の音速や圧縮強度などの推定を行う。114は解析結果及び診断結果を表示する表示装置、115は解析結果及び診断結果を記憶する記憶装置である。 ここで、送信子105と受信子102とは同じ面に平行に設置してもよい。
【0022】
以下、図1の構造物診断装置の動作について説明する。
図2は診断手順を示すフローチャートである。
まず、ステップS01で診断を行う被検査物101に送信子105と受信子102を設置する。ここで送信子105と受信子102との位置関係は被検査物101に対し同一面である必要はなく、任意の場所に(図1のように角度の異なる2つの面101a,101bに)設置してもよい。したがって、被検査物101の対向面に送信子105と受信子102を設置できない場合や、同一面に設置できない場合においても計測を行うことができ、診断実施の可否は被検査物101の形や設置状況に依存しない。この手順はこの発明に言う、被検査物の表面の互いに平行でない面に、それぞれ設置する手順、を含んでいる。勿論、平行な面に設置しても以下の動作に変わりはない。
【0023】
次に、ステップS02で、信号発生器106の切替え回路109により周波数特性計測用回路107を選択し、送信信号を周波数掃引により発振して被検査物101を加振する。この手順はこの発明に言う送信子に送信信号をその周波数を掃引させつつ印加する手順である。
図3に周波数掃引の送信信号を示す。図3(a)と(b)において横軸は同じ時間軸であり、図(a)の縦軸は駆動電流の電流値、図(b)の縦軸は周波数である。図3に示す例では低周波から高周波(約100Hz〜約100kHz)へ連続的に周波数が変化する駆動信号を示している。ここで変化の仕方は直線的でも、上に凸の曲線でも、上に凹の曲線でもよいが、一様に変化するものとする。
勿論、高い周波数から低い周波数の方へ掃引してもかまわない。
この送信信号が送信子105により被検査物101に伝達され、被検査物101の応答が受信子102により検出される。
【0024】
次に、ステップS03で、受信子102により得られた信号を波形処理機構111がFFT解析し周波数スペクトルを求める。図4は得られた周波数スペクトルの一例を示す。図の縦軸は振幅の比例尺である。
この周波数スペクトルのピークの大きい順にとった複数のピーク(図4に符号71、72、73、74として示す)から、被検査物101と探触子(送信子105と受信子102)を含んだ系の固有周波数を求める。被検査物101の構造はさまざまで共振のモードが数多く存在し、音響学的に共振しやすい構造には一般にはなっていないから、固有周波数は数点以上表れる場合が多い。
次に、ステップS04で、これら固有周波数の内で受信レベルが大きく、さらに数百Hz〜数十kHzの低周波領域のものを一つあるいは複数個決定する。例えば図4においては71を選択する。この例では固有周波数71の周波数は3.5kHzである。送信周波数は固有周波数で100Hz〜100kHzの低周波領域のものを用いるので、減衰の大きい被検査物や広範囲の計測が可能になる。
この手順は、この発明に言う、送信子に送信信号を印加している間に受信子が受信した信号をFFT解析し、1つ以上のピーク周波数を検出する手順に相当する。勿論、予め固有周波数が分っている場合はステップS02〜S04の送信周波数を決める計測は行わなくてよい。
【0025】
次に、決定した固有周波数71の周波数を用いて、ステップS05で送信子105により予め定めた一定時間(例えば一例として0.5秒)加振し、その後、加振をやめる。まず切替え回路109により信号発生器106の減衰特性計測用回路108を選択する。減衰特性計測用回路108は図5に示す駆動信号を出力し、送信子105を駆動する。図5において駆動信号は先程決定された周波数71の正弦波であり、時刻t1にオンし、時刻t2にオフされるような一定時間長の連続波である。この駆動信号が送信子105に出力される。ここで送信は単一周波数で正弦波を用いるので、効率良く弾性波を被検査物101に伝搬させることができる。
【0026】
次に、ステップS06で、前記加振を止めた後に受信子102により得られた受信信号の減衰特性を求める。被検査物101の応答を受信子102により検出する。求める減衰特性は自由振動時間領域での減衰時定数である。
減衰特性を検出する一手順を以下に述べる。
図6は受信子102より検出された受信信号の例(図4で示した固有周波数71(3.5kHz)の例)を示す。図6でt2が図5の信号オフ時点t2に対応する。減衰特性は信号オフt2後の応答から算出される。ここでは減衰特性として減衰時定数を計測する。一般に減衰特性は対数減衰の傾向を示すため、図7に示すように受信レベルを対数軸で表示することにより、減衰特性が直線的な変化として検知しやすくなる。図中の説明補助線11は減衰していく振動振幅を直線にて近似した近似線である。この近似線から減衰時定数τは下記のように計算される。
図7中の直線11上に取った任意の2点P3、及びP4の座標をそれぞれ (t3,y3)、及び (t4,y4)とすると、
【0027】
【数1】
Figure 0004553459
【0028】
として求められる。
今、図7の例では、
P3(101.6ms,0.350)、P4(102.7ms,0.071)
であるため、τ=0.69msと計算される。
以上の解析や計算は波形処理機構111で行う。
ステップS05とS06の手順はこの発明に言う、ピーク周波数の信号を送信子に所定時間の間印加し、その遮断後に、受信子が受信する信号の減衰特性を計測する手順に相当する。
【0029】
次に、ステップS07で異常部分の有無の検知を行うかどうかを選択する。行う場合は、ステップS08で、前述の求めた減衰特性すなわち減衰時定数が、診断データベース113(あるいは記録してある過去の測定結果)に記憶している正常値と比較して異常か否かを調べる。例えば求めた自由振動時間領域での減衰時定数が正常部分の減衰時定数より、あらかじめ定めた差以上にかけ離れている場合は異常部分であると推定する。
異常であれば、ステップS09で、被検査物101の診断データベース113(あるいは記録してある過去の判定結果)に記憶しているデータから、異常部分の材質の判定など、より詳しい判定を行う。この処理は診断処理機構112で行う。
【0030】
ステップS10以降で、被検査物の圧縮強度と音速を推定する場合は、前述のS08〜S09で求めた減衰特性を指標として、データ(データベース113)より推定する。図8は自由振動時間領域(送信子105の励振を停止した後の振動)での減衰時定数と音速との関係を示した図(第1のデータベースと言う)である。自由振動時間領域での減衰時定数と音速の間に、図8中に黒点で示した関係があることが分っている場合、データの隙間はあらかじめ補完して、点線で示したデータ曲線を得ておく。(ステップS11)
この図より、求めた自由振動時間領域での減衰時定数より被検査物101の音速が推定できる。(ステップS12)
同様に圧縮強度も自由振動時間領域での減衰時定数または音速との相関関係を図9(第2のデータベースという)のように、予め求めておく。(ステップS13)
そして、得られた減衰時定数または音速から圧縮強度を推定する。(ステップS14)
図9は音速と圧縮強度との関係を示す図である。
【0031】
また、減衰特性は周波数に依存することが分っている。そこで決定した複数個の周波数でそれぞれ減衰特性を求め加算平均化を行うことにより診断項目の精度を向上することができる。
【0032】
次にデータベース113を構築するための手順を説明する。
データベース113としては、音響速度がそれぞれ異なるコアサンプル(被検査物サンプル)を多数準備し、各コアの音響速度を計測するとともに、前述の説明に基づいて減衰時定数を計測し、また圧縮強度を測定して、更にデータ間を補完して、両者間の相関を明確にしたデータベース113を構築する。
音響速度の異なるコアサンプルを入手する手段としては、種々の構造物からコアリングを行い、これを収集することにより音響速度が分布するコアのサンプル集合を入手する。さらに、例えば水−セメント比の異なるコンクリートコアを多数種類製作し、この音響速度と減衰時定数、および圧縮強度を計測するという方法もある。
図8、図9は実際の構造物からサンプルしたデータを補完して、データベースを構築したものの一例を示している。図8、図9から減衰時定数と圧縮強度の図を容易に得られることはいうまでもない。
【0033】
次に、診断の手順につき説明する。
以上の説明で、診断を実施した被検査物101の減衰時定数が得られたので、図8に示す減衰時定数−音響速度のデータベースから、被検査物101の減衰時定数に対応する音響速度のデータを読み取ることにより、音響速度が予測できることとなる。例えば、減衰時定数が0.69msであれば、得られる音響速度の予測値は(図8中に点線で示したように)3533m/sとなる。正常なサンプルの音速がどの範囲であるかを、あらかじめ調べてあれば前述の結果から、被検査物が正常なものかどうかの診断を音速の面からも行うことができる。
【0034】
一方、音響速度と圧縮強度との相関データベース( 図9) をさらに適用することにより、得られた音響速度の値に対応する圧縮強度値が19N/mm2 と求まり、減衰時定数から被検査物101の強度予測までが可能になり、この面からの診断を行うこともできる。
【0035】
【発明の効果】
以上のように、この発明の構造物診断方法によれば、被検査物のピーク周波数を検出する手順と、このピーク周波数で減衰特性を計測する手順と、減衰特性だけで被検査物の異常を診断する手順とを含んでいるので、比較的低い送信信号で診断、検査を行うことが出来るという作用効果が得られる。
【0036】
また、送信子と受信子とは互いに平行でないように設置する手順を含むので、送信子と受信子の設置に制約が少なくなり、容易に設置できるという作用効果が得られる。
【0037】
また、減衰特性から音速または圧縮強度をもとめる手順を含むので、被検査物の異常の種類を推定することができる作用効果が得られる。
【0038】
この発明の構造物診断装置によれば、受信子により得られた信号の減衰特性より被検査物の異常部分の検知と圧縮強度および音速の推定を行うので、被検査物の破壊を伴わず被検査物の任意の面で計測を行うことができる。
【0039】
また、発信周波数として約100Hz〜約100kHzという低周波領域で、また、被検査物の固有周波数を用いるので効率的に信号を被検査物に伝搬させることができ、減衰の大きい被検査物の計測が可能で、また、1つの送信子位置で広い範囲の計測を行える効果がある。
【0040】
また、複数のピーク周波数で計測を行い、得た複数の減衰時定数の平均から減衰特性を得るので、精度が向上するという作用効果が得られる。
【0041】
また、減衰特性はピーク周波数の正弦波を所定時間印加したのちの自由振動を計測しているので比較的低い送信信号で診断、検査を行うことが出来るという作用効果が得られる。
【0042】
また、減衰特性はあらかじめ求めた被検査物の固有振動周波数の正弦波を所定時間印加したのちの自由振動を計測しているので比較的低い送信信号で診断、検査を行うことが出来るという作用効果が得られる。
【0043】
また、被検査物の音速を測定するので、内部構造の異常を更に詳しく知ることができる。
【0044】
また、被検査物の圧縮強度を測定するので、内部構造の異常を更に詳しく知ることができる。
【0045】
また、送信子と受信子はそれぞれが互いに平行でない面に設置されることを許容しているので、設置の自由度が高くなるという作用効果が得られる。
【0046】
また、一つのピーク周波数で計測を行い、得た減衰時定数から減衰特性を得るので、構成を単純化できるという作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の構造物診断装置を示す構成図である。
【図2】 この発明の診断手順を示すフロー図である。
【図3】 周波数掃引の駆動信号を説明する図である。
【図4】 受信子により得られた周波数スペクトルの一例を示す図である。
【図5】 減衰特性計測用駆動信号を示す図である
【図6】 受信子により得られた時間応答の一例を示す図である。
【図7】 受信子により得られた時間応答の減衰特性算出例を示す図である。
【図8】 減衰時間と音速の関係を示すデータベースの例図である。
【図9】 音響速度と圧縮強度の相関データベース例を示す図である。
【図10】 従来の構造物診断装置の第1例を示す構成図である。
【図11】 従来の構造物診断装置の第2例を示す構成図である。
【符号の説明】
101 被検査物、 102 受信子、 103 受信増幅器、
105 送信子、 106 信号発生器、
107 周波数特性計測用回路、 108 減衰特性計測用回路、
109 切替え回路、 111 波形処理装置、 112 診断処理装置、
113 診断データベース。

Claims (12)

  1. 被検査物に対して送信子から音響弾性波を送信し、受信子でその反射波を受信し、受信した信号を処理することにより前記被検査物の内部欠陥等を診断する構造物診断方法において、
    被検査物の表面に送信子と受信子とを設置する手順と、
    前記送信子に送信信号をその周波数を掃引させつつ印加する手順と、
    前記送信子に前記送信信号を印加している間に前記受信子が受信した信号をFFT解析し、1つ以上のピーク周波数を検出する手順と、
    前記ピーク周波数の信号を前記送信子に所定時間の間印加し、その遮断後に、前記受信子が受信する信号の減衰特性を計測する手順と、
    計測した減衰特性をあらかじめ測定した正常な被検査物の減衰特性と比較し、その差が所定の範囲を越えたとき異常と判定する手順を含むことを特徴とする構造物診断方法。
  2. 送信子と受信子とを被検査物の表面の互いに平行でない面にそれぞれ設置する手順を含むことを特徴とする請求項1に記載の構造物診断方法。
  3. 計測した減衰特性とあらかじめ記憶しているデータベースから、前記被検査物の圧縮強度または音速を推定する手順を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の構造物診断方法。
  4. 被検査物に対して送信子から音響弾性波を送信し、受信子でその反射波を受信し、受信した信号を処理することにより前記被検査物の内部欠陥等を診断する構造物診断装置において、
    被検査物の表面に設置された送信子と受信子、
    周波数掃引発振を行って送信信号を出力する周波数特性計測用回路と、指定された周波数の発振を行う減衰特性計測用回路と、前記周波数特性計測用回路と前記減衰特性計測用回路のいずれかを選択する切り替え回路とを含み、前記送信子に送信信号を送信する信号発生器、
    前記受信子が受信した信号を解析して、大きい受信信号が得られる周波数と、前記被検査物の減衰特性とを得る波形処理装置、
    前記被検査物を構成する素材と類似する素材に関する前記減衰特性と音速との関係を示す第1のデータベース、
    前記被検査物を構成する素材と類似する素材に関する前記減衰特性または前記音速のいずれかと圧縮強度との関係を示す第2のデータベース、
    前記波形処理装置が得た前記減衰特性と前記第1及び第2のデータベースのデータから、前記被検査物の圧縮強度と音速を求める診断処理装置を備えたことを特徴とする構造物診断装置。
  5. 周波数特性計測用回路が送信子に送信する送信信号の掃引周波数は100Hz〜100kHzの間にあり、減衰特性計測用回路が送信子に送信する周波数は前記掃引発振の周波数内の単一周波数を使用したことを特徴とする請求項4に記載の構造物診断装置。
  6. 波形処理装置は、受信子が受信した信号をFFT変換し、その周波数成分が大きい方から複数のピーク周波数を検出して減衰特性計測用回路の周波数とし、かつ、波形処理装置は前記複数の周波数のそれぞれに対応して得た複数の減衰時定数を平均して被検査物の減衰特性としたことを特徴とする請求項4または5に記載の構造物診断装置。
  7. 減衰特性計測用回路は、波形処理装置から得られたピーク周波数の正弦波を、所定の時間の間送信子に印加し、前記印加を停止した後に、波形処理装置が受信子の受信信号の減衰時間を計測して減衰特性を算出したことを特徴とする請求項6に記載の構造物診断装置。
  8. 減衰特性計測用回路は、予め求めておいた被検査物の固有振動数の正弦波を、所定の時間の間送信子に印加し、前記印加を停止した後に、波形処理装置が受信子の受信信号の減衰時間を計測して減衰特性を算出したことを特徴とする請求項6に記載の構造物診断装置。
  9. 診断処理装置は、計測した減衰時間と予め求めた診断データベースを基に、被検査物内の音速を算出したことを特徴とする請求項7または8に記載の構造物診断装置。
  10. 診断処理装置は、計測した減衰時間と、予め求めた診断データベースを基に、被検査物内部の圧縮強度を推定したことを特徴とする請求項7または8に記載の構造物診断装置。
  11. 送信子と受信子は、被検査物の表面の互いに平行でない面にそれぞれ設置したことを特徴とする請求項4乃至10のいずれか一項に記載の構造物診断装置。
  12. 波形処理装置は、受信子が受信した信号をFFT変換し、その中から一つのピーク周波数を検出して減衰特性計測用回路の周波数とするとともに、前記ピーク周波数に対応して得た減衰時定数を被検査物の減衰特性としたことを特徴とする請求項4または5に記載の構造物診断装置。
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