JP4553323B2 - 成形品の製造方法 - Google Patents

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本発明はアルミニウム合金を用いて塑性加工により成形して成形品を得る成形品の製造方法およびその生産ラインに関するもので、例えば、詳しくは、各種車両たとえば自動車、二輪車、鉄道車両などの輸送装置に用いられるユニバーサルジョイントヨークのような、アルミニウム合金からなる成形品の製造方法に関するものである。
自動車部品は、専ら鉄系材料が使用されていたが、軽量化を主目的としてアルミニウム材料またはアルミニウム合金材料に置き換えることが多くなってきた。これら自動車部品では、優れた耐食性、高強度および優れた加工性が要求されることから、アルミニウム合金材料として6000系合金と称されるAl−Mg−Si系合金、特に、A6061が多用されている。そして、このような自動車部品は、強度の向上を図るため、アルミニウム合金材料を加工用素材として用いて塑性加工の1つである鍛造加工で製造される。
また、最近では、コストダウンを図る必要があるため、押出をせずに鋳造部材をそのまま素材として鍛造した後、T6処理して得られたサスペンション部品が実用化され始めており、さらに軽量化を目的にとして、従来のA6061合金に代わる高強度合金の開発が進められている(例えば下記の特許文献1,2,3参照)。
これらA6061合金およびその他のAl−Mg−Si系合金の高強度合金は、鍛造および熱処理工程において加工組織が再結晶し、粗大結晶粒が発生することにより、十分な高強度を得ることができないという問題があった。そのため、特許文献1,2のように、粗大再結晶粒防止のため、Zr(ジルコニウム)を添加して再結晶を防止している例が多い。
しかしながら、Zrの添加は、再結晶防止に効果があるものの、次のような問題を有している。
(a)Zrの添加により、Al−Ti(チタン)−B(ホウ素)系合金の結晶粒微細化効果が弱められ、鋳塊自体の結晶粒が粗くなり、逆に塑性加工後の加工品の強度低下をきたすことが多くなる。
(b)鋳塊自体の結晶粒微細化効果が弱められるため、鋳塊割れが発生し易くなり、内部欠陥が増加し、歩留まりが悪化する。
(c)ZrはAl−Ti−B系合金と化合物を形成し、合金溶湯を貯留する炉の底に化合物が堆積し、炉を汚染するとともに、製造した鋳塊においてもこれら化合物が鋳塊中に粗大に晶出し、強度を低下させる。
このため、Zrの添加は効果があるものの、強度の安定性を維持するのが難しく、製品の品質が不安定となり、材料コストの上昇を招いていた。
その他、このようなAl合金鍛造素材は、たとえば、以下に概説する(1)〜(4)の公報に開示されている。これら公報には、押出加工を経ずに鋳造棒を熱間鍛造して製造する自動車の緩衝部材の機械的強度、靭性等の更なる向上を目的として改良されたAl合金鍛造素材が種々提案されている(下記の特許文献4,5,6参照)。
(1)特許文献4には、Si:0.6〜3.0%、Mg:0.2〜2.0%、Cu:0.3〜1.0%、Ti:0.01〜0.1%、B:0.0001〜0.01%、Mn:0.1〜0.5%、Cr:0.1〜0.5%及びFe:0.05〜0.5%を含み、かつ合金設計値から換算したMg2Si量が1.5%以上、または、0.5%以上となるように設計したAl合金を、冷却速度200℃/秒以下で鋳造した後、10〜50%の据込み率で鍛造加工して構成されるAl合金鍛造素材が開示されている。
(2)特許文献5には、Mg:0.8〜1.2wt%、Si:0.7〜1.0wt%、Cu:0.3〜0.6wt%、Mn:0.15〜0.3wt%、Fe及びCrを2種合計で0.7wt%以下を含有し、かつ、デンドライト二次アーム間隔(DAS)が40μm以下、尚かつ、晶出物の平均粒径が8μm以下の組織として構成されるAl合金鍛造素材が開示されている。
(3)特許文献6には、Mg:0.6〜1.6%、Si:0.6〜1.8%、Cu:0.05〜1.0%を含むとともに、Feを0.03%以下に規制し、Mn:0.15〜0.6%、Cr:0.1〜0.2%、Zr:0.05〜0.2%の一種または二種以上を含み、更に、水素:0.25cc/100gAl以下とし、残部Al及び不可避的不純物から成る素材を、10℃/秒以上の冷却速度で鋳造し、530〜600℃の温度で均質化熱処理した後に、熱間鍛造して鍛造材とし、この鍛造材におけるAl合金組織中のMg2SiとAl−Fe−Si−(Mn、Cr、Zr)系における晶出物の合計の面積率を単位面積当り1.5%以下として構成されるAl合金鍛造素材が開示されている。
これらの特許文献4,5,6に開示される、従来のアルミニウム合金鍛造素材の製造方法は、通常の溶製法にてAl合金溶湯を調製する工程と、続いて、このAl合金溶湯を連続鋳造法、半連続鋳造法(DC鋳造法)、ホットトップ鋳造法等のいわゆる連続鋳造法のうち、いずれかの方法によって本発明で規定される範囲にはない冷却速度で冷却しつつ鋳造し、アルミニウム合金の鋳塊を製造する工程と、その後、この鋳塊に均質化熱処理を施して、アルミニウム合金結晶の均質化を行なう工程とからなっていた。尚、Al合金鍛造素材(前記鋳塊)に、鍛造を施し、さらに、T6処理を施すことにより、アルミニウム合金鍛造材が製造されることとなる。
(4)一方、下記の特許文献7には、前記均質化熱処理を省略したAl合金鍛造素材の製造方法として、重量%で、Mg:0.6〜1.2%、Si:0.6〜1.5%、Cu:0.3〜1.1%を含有し、さらに、Ti:0.005〜0.1%、B:0.0001〜0.004%の1種または2種、Mn:0.2〜0.8%、Cr:0.05〜0.3%、Zr:0.05〜0.25%のうち1種以上を含有し、残りがAlと不可避不純物から成るAl合金鋳塊に対し、押出加工前の均質化熱処理を施さずに、450〜520℃の温度で押出加工を施し、この押出材に490〜570℃の温度で1時間以上の析出処理を施して構成されるAl合金鍛造素材が開示されている。
(5)また下記の特許文献8には、Mgを0.8wt%〜1.2wt%、Siを0.7wt%〜1.0wt%、Cuを0.3wt%〜0.6wt%、Mnを0.14wt%〜0.3wt%、Crを0.14wt%〜0.3wt%、Feを0.5wt%以下、Tiを0.01wt%〜0.15wt%、Bを0.0001wt%〜0.03wt%含有し、晶出物の平均粒径が8μm以下、デンドライト二次アーム間隔が40μm以下、かつ、結晶粒径が300μm以下の組織を有する塑性加工用アルミニウム合金鋳塊について、さらにこの鋳塊を連続鋳造する塑性加工用アルミニウム合金鋳塊の製造方法であって、鋳造温度を(750±50)℃とし、鋳造速度を(240±50)mm/分として鋳造し、鋳造後に均質化処理を施さないこと、この鋳塊に塑性加工を施すとき、〔430+塑性加工率(%)〕℃以上550℃以下で加熱すること、520℃〜550℃で溶体化処理を施すことの開示が有る。
(6)さらに下記の特許文献9には、Tiの含有量を0.01〜0.1質量%に規制したJIS6000系合金の成分規格を備えるアルミニウム合金を、半連続鋳造法を含む連続鋳造法により10℃/秒以上の冷却速度にて鋳造して鋳塊を形成し、前記鋳塊に均質化熱処理を施すことなく、かつ、押出し加工を経ずに、鍛造素材を得ることを特徴とするアルミニウム合金鍛造素材の製造方法、および該鍛造素材が、断面中心部における交線法を用いて算出したデンドライトアームスペーシングの値の平均値が23μm以下であることの開示が有る。
特開平5−59477号公報 特開平5−247574号公報 特開平6−256880号公報 特開平8−3675号公報 特開平6−256880号公報 特願平11−224024号公報 特開平7−150312号公報 特開2002−294383号公報 特開2002−254143号公報
有底の薄肉円筒形状部位、該底部の円筒形状と反対側へ延びる凸状部位を有している成形品としてユニバーサルジョイントヨーク(以降ヨークと称することも有る。)がある。
ヨークの場合、従来技術として冷間鍛造による方法があり、冷間鍛造の場合は、熱間鍛造と異なり加工歪が十分多く残留した状態で溶体化処理するため、微細な組織を有した成形品を得ることができる。しかし、金型への負担率が大きいため金型寿命が短くなり、結果、生産性が低くコストが高いものになっていた。金型への負担率を低減するために成形品に余肉を付加したり、2工程に分けて成形するなどの対応が必要であった。そこで、結局生産性の高い製造方法が求められていた。
一方、前記の各特許文献1〜9には、機械的強度を得る為の、アルミニウム合金の組成、均質化処理の温度、熱間塑性加工時の素材温度、溶体化処理の温度が開示されている。しかし、実際に生産をする場合には、成形品の形状に応じて金型への抜熱を考慮した温度管理や、製品部位毎の温度差を小さくする条件設定および背圧負荷による加工率の不均一さを抑制することが必要であるが、それらの具体的な条件は示されていない。
特に肉厚部位(ヨークでは耳部(ピンボス部))と薄肉部(ヨークではカップ部(円筒形状部位))とを有する成形品の場合には、肉厚部位と薄肉部位とで加工率が大きく異なることになる。それにより生じる金型への抜熱差による冷却差や加工発熱差による加熱差が誘発され、その結果、部位間の温度差が生じる。その為、従来の均一な圧延、押出などの熱間加工で効果を得られていた材料組成による手法や熱処理温度による従来技術だけでは成形品を好ましい微細組織状態とすることは困難であった。従来の手法では、粗大な再結晶が発生し、均質微細な組織の製品を得ることか困難であった。
そのため、現状では、不充分な微細組織状態であっても好ましい強度を有するように、全体を厚肉に設計するなどして安全を見込んだ設計をして対応していた。
材料の持つ強度ポテンシャルを十分に発揮できる好ましい微細組織状態を得る為の製造方法が求められていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、好ましい組織状態を有する成形品を製造する成形品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、鍛造成形性と製品形状の関係について鋭意研究をおこないその知見に基づいて本発明を完成するに至った。
成形条件とカップ部へのメタルフローの状態と微細組織状態との関係を検討した結果、成形品の形状に応じた熱処理温度と鍛造素材温度とを制御することによって好ましい微細組織を有する成形品を得ることに成功した。そのメカニズムは以下と推定される。均質化温度は低い方が好ましく、特にFe、Mnを添加した場合は、高い温度では、たとえば560℃以上では、その添加効果が低減する。また、鍛造温度は残留歪みの解放を目的として制御することが必要である。溶体化温度は、残留歪みによる粒子の粗大化を促進する方向に作用するので低い方が好ましい。また、微細粒の結合成長の点からも低い方がよい。よって、鍛造(鍛造素材)温度が低く、溶体化温度が高いと粒子の粗大化が起こりやすくなる。
上記課題を解決するための本発明は、6000系のアルミニウム合金からなる合金を、溶湯温度を700℃以上とした連続鋳造法により、その成分が質量%で0.3%〜1.0%Si、0.2%〜0.6%のCu、0.8%〜1.5%のMg、0.05%〜0.5%のCr、0.03%〜0.15%のMn、0.15%〜0.40%のFe、及び残部がAlと不可避的不純物とからなり、FeとMnとの総和が0.23%〜0.55%に制御された丸棒に鋳造する工程、この丸棒を450℃〜500℃の温度で均質化処理する工程、均質化処理したものを素材として、加工時の素材温度が460℃〜530℃を満足するように、上金型、および、背圧発生手段を備えた下金型からなる金型を150℃〜350℃に保持して用いる鍛造加工により、前記背圧、前記金型の温度、前記素材温度をセットで制御しつつ熱間塑性加工処理し、素形材を成型する工程、熱間塑性加工処理後に溶体化処理を含む熱処理を施す工程、を含む成型品の製造方法であって、前記成形品は、有底の薄肉円筒形状部位と、該底部の円筒形状と反対側へ延びる凸状部位とを有する、ことを特徴とする成形品の製造方法である。
本発明の製造方法は、均質化温度が450℃〜500℃であり、または熱間塑性加工時の素材温度が460℃〜530℃の温度条件を満足する製造方法であるので、均一微細な組織を持ち、高強度である成形品を高い生産性のもとに製造することができる。
そのメカニズムは、素材の再結晶核となる遷移金属元素が粗大な析出とならず、微細な均一な分布の素材とすることができる、または、熱間塑性加工時の点在する残留歪が溶体化の昇温時の粗大再結晶核となりうるが素材温度が460℃以上の高温であるため、残留歪が解放され、粗大再結晶を防止することができるからと推定される。
本発明の実施形態の一例を説明する。
図2に素形材を機械加工した後の成形品の例としてユニバーサルジョイントヨークの一例を示す。ユニバーサルジョイントヨークは、少なくともシャフトへの接合部(カップ状部)(95)、ピンボス部(43)、ピン孔(94a、94b)、プレート部(42)とから構成されている。夫々の部位はさらに必要に応じて機械加工により最終製品に加工される。
図1に本発明のユニバーサルジョイントヨーク素形材の一例を示す。素形材は、少なくともシャフトへの接合部(カップ状部)(41)、ピンボス部(43)、プレート部(42)とから構成されている。
図3(a),(b)にプロペラシャフト用に用いるユニバーサルジョイントヨーク素形材の別の例の概略見取り図を示す。ユニバーサルジョイントヨーク素形材10は、円筒部11と、この円筒部11の一端を閉塞する底12と、この底12の円筒部11と反対側へ対向して延びる2つのピンボス部13とで構成されている。なお、カップ形状部(有底円筒形状部)は、円筒部11と底12とで構成され、接続部として機能する。
本発明のユニバーサルジョントヨーク及びそれを組み込んだパワートレインシステムの構成の例を図4に基づいて具体的に説明する。符号112a、112b、112cはヨークで、このヨークは図2に示すように、ピンボス部(43)に機械加工により設けた十字軸との接続部となるピン穴(94a、94b)を有している。ピン穴へは十字軸(113a、113b、113c)を介して対となるヨークへと接続される。一方、カップ状に形成された部位(95)は機械加工によりシャフト(114a、114b)の径に合せて仕上げられ、シャフトへミグ溶接(MIG:Metal Inert Gas arc welding)、ティグ溶接(TIG:Tungsten Inert Gas arc welding)などの溶接、摩擦圧接、摩擦攪拌接合などの接合により、シャフト(114a、114b)へ固定される。
ユニバーサルジョイントヨークおよびその素形材において、符号41、符号11が有底の薄肉円筒形状部位、符号43、符号13が該底部の円筒形状と反対側へ延びる凸状部位に対応している。ユニバーサルジョイントヨークおよびその素形材は、肉厚部位(耳部(ピンボス部))と薄肉部(カップ形状部位(円筒形状部位))とを有する成形品となっている。
本発明に含まれる、6000系のアルミニウム合金からなる合金を連続鋳造法により鋳造した丸棒に均質化処理を施す工程を説明する。
まず、アルミニウム合金溶湯を調製し、そのアルミニウム合金溶湯を連続鋳造法、半連続鋳造法(DC鋳造法)、ホットトップ鋳造法等のいわゆる連続鋳造法のうち、いずれかの方法によって鋳造して丸棒材を得る。
連続鋳造した丸棒材であれば、特に制限は無いが、連続鋳造棒の組織において、微量に含まれる遷移金属元素が微細均一に析出しているものが好ましい。例えば、鋳造条件の溶湯温度を高く、例えば700℃以上としたり、鋳造径をφ90以下と小さくしたりすることで実現できる。
鋳造された、連続鋳造棒(丸棒材。)の合金組成は、質量%で0.3%〜1.0%Si、0.2%〜0.6%Cu、0.8%〜1.5%Mg、0.05%〜0.5%Cr、0.05%〜0.15%Mn、0.18%〜0.40%Feおよび残部がAlと不可避的不純物であることが好ましい。
Feは微細な再結晶核となり、粗大な再結晶を防止し、微細均一な組織となる作用を有するので、微量な添加が耐食性に及ぼす影響も少なくなり、強度と耐食性のバランスの点から好ましい。より好ましくは、0.2質量%〜0.3質量%である。
Mnは微細な再結晶核となり、粗大な再結晶を防止し、微細均一な組織となる作用を有するので、微量な添加が耐食性に及ぼす影響も少なくなり、強度と耐食性のバランスの点から好ましい。より好ましくは、0.06質量%〜0.1質量%である。
FeおよびMnの総量を管理することが好ましく、例えば0.23〜0.55質量%とすることができる。
その後、この鋳塊に均質化熱処理を施して、アルミニウム合金結晶の均質化を行なう。本発明では、均質化処理の温度(雰囲気温度)は450℃〜500℃(好ましくは460℃〜480℃)とする。この範囲であると鋳造時の偏析を均質化する効果が得られる上、再結晶核となる遷移金属元素の粗大化が起こらず、粗大再結晶防止の点から好ましい。この範囲未満であると鋳造時の偏析を均質化する効果が得られにくくなり、この範囲を超えると遷移金属元素の析出が粗大となり、粗大再結晶防止効果が小さくなる。特に、Fe、Mnを添加した場合、より高い効果を得るためには、この範囲が好ましい。
保持時間は5〜8時間とするのが好ましい。
均質化処理した丸棒は必要に応じて所定の長さに切断する。この時、素材が過加熱状態とならないように冷却しながら、切断することが均質化処理状態を維持できるので好ましい。
次ぎに、本発明に含まれる、均質化処理したものを素材として熱間塑性加工により素形材を成形する工程を説明する。
本発明の塑性加工の一例である鍛造加工に用いる鍛造装置の構成の一例を図5をもとに説明する。
鍛造装置は、鍛造機(221)と、上金型(103)と、下金型(105)とを含むものである。下金型の内部には、背圧力発生手段の一例としてガスクッション(300)を内蔵している。下金型には、鍛造済み品を排出するためのノックアウトピン(107)が配置されている。符号108はスプレー移動装置、符号109はスプレー回転装置、符号110はスプレーシャフトである。スプレーノズル(104)は、スプレーシャフトを介してスプレー回転装置、スプレー移動装置により取り付けられており、潤滑材を噴霧状に吐出して、金型に潤滑材を塗布する。
本発明の、鍛造用金型を詳しく説明する。
図6に本発明の製造方法に用いる上金型下金型の一例の概略断面図を示した。下金型はカップ形状部の内側を形成するセンターブッシュ(203)と、外側を形成する下型(201)と、背圧力をかけながらカップ形状先端を形成するリングノック(67)と背圧力を発生する手段としてガスクッションと、下受圧板(204)と、ノックアウトピン(107)、これらを支持する下ボルスター(205)と、上金型であるパンチ(202)などを支える上ボルスター(211)から構成されている。ガスクッションは、例えば、空圧シリンダー圧力伝達軸(68)、空圧シリンダー(71)、空圧シリンダー気体封入部(72)から構成されるものを用いることができる。リングノックは空圧シリンダー圧力伝達軸を介して空圧シリンダーから発生する背圧力を受けている。このため、リングノックは、空圧シリンダー圧力より大きい力を受けることにより上金型とは相対的に後方に可動することができるようになっている。
ノックアウトピンをリングノックに組み込んだ構造とすることも可能である。
空圧シリンダーから発生する背圧力により、成形開始前は、リングノックの先端はカップ内径部を形成するセンターブッシュ(203)の先端部と同一面もしくはそれよりも突出した位置にあるのが好ましい。リングノックの先端がセンターブッシュ(203)の先端部に対して入りこんだ状態では期待する背圧効果が充分に得られないからである。
リングノックにかかる空圧シリンダーからの背圧力が、初期背圧が5〜20Mpaになるように、空圧シリンダー内圧またはシリンダーの本数を調整してあるのが好ましい。
背圧力を発生させる手段の一例であるガスクッションは下金型内に内蔵されている。さらに、本発明の金型構成では、ガスクッションは下受圧板を固定端として配設され、圧力伝達軸を介してリングノックに応力を伝える構成となっている。圧力伝達軸としては、空圧シリンダー圧力伝達軸の他にノックピンやコマなどを挙げることができる。
背圧力を発生させる手段は、成形の際に金型が移動するストロークの長さ全体に渡って圧力を生じさせる機能を有していれば良い。
ガスクッションを背圧力発生手段とした場合は、外部からの圧力供給を受けずとも充分な背圧力を得ることができるので、金型内に内蔵することができる。その結果、プレス機に付属させる発生装置が省略でき、専用の圧力伝達配管を備えたダイセットが不要となるので、汎用プレスおよびダイセットにも簡便に取り付けることが可能となり好ましい。
背圧力を発生させる装置としてガスクッションを用いると伸縮の繰返しに対して耐久性に優れ、サイズやストローク長さのバラエティーが豊富で用途に応じて選択できるので好ましい。
リングノックの材質はダイス鋼、粉末ハイス鋼などを挙げることができる。その他金型を構成する部材の材質はダイス鋼、粉末ハイス鋼、超硬などを挙げることができる。リングノックと下金型の下型201やセンターブッシュ203との間の摺動を確保するために、リングノックが摺動する金型の各面、たとえば、カップ形状部の内径および外径を成形する各金型の表面に窒化処理、モリブデンコーティング処理などを施すのが良い。リングノックと下金型の下型201やセンターブッシュ203との間の隙間の間隔は0.05〜0.3mm程度が好ましい。0.05mm以下では摺動しにくく、潤滑剤塗布が困難。0.3mm以上では摺動、潤滑剤塗布は良いが除去必要となる隙間バリが発生する。
成形工程の動作を説明する。
下金型内部に鍛造用素材は投入される。上金型が下降して、素材は下金型と上金型により形成される閉塞した空間にはさみこまれる。成形の初期状態においては主にピンボス部への素材の塑性流動がおこり、下金型のリングノックには空圧シリンダーからの背圧力がかかっているためカップ部への素材の塑性流動は抑制される。この時、カップ状成形部の先端にリングノックを介して初期背圧が5〜20Mpaの背圧力がかかっている。
ピンボス形状部への素材の充満が進むと、リングノックが後方に可動する。この時空圧シリンダーの圧力は、成形荷重(上金型下降方向圧力)とうまく圧力をバランスしながら、リングノックは背圧を素材に負荷しながら上金型の移動方向に前進して行く。ストロークエンドではその背圧は初期背圧の10%〜180%(より好ましくは、50〜110%。)であることが好ましい。
空圧シリンダーによる背圧力の場合、素材にリングノックが接触し負荷がかかり始めた時の初期圧力が内部圧力により設定できる。その後、シリンダーの収縮により内部圧力が上昇し、シリンダーのストローク終端にかけて負荷圧力が上昇する。圧力の上昇に伴い、カップ部端部の高さを均一に調整することができるため好ましい。
背圧力発生装置のシリンダーのストロークエンドの位置は、プレス機の下死点においてもシリンダーは縮みきらないように設定するのが好ましい。シリンダーを痛めるおそれが無いからである。
素材の充満が完了して成形が終了すると、上金型が上昇するとその時同時に下金型に設けられた空圧シリンダーからの圧力によりリングノックを介して鍛造品カップ部先端が上に押しあげられ、下金型から鍛造済み品がはずれる。背圧力を発生する機構を有したリングノックが成形済み品の排出機能をも有している。
上金型が上昇した後、さらに、下金型下部からはノックピンが上昇して、鍛造品は下金型上面まで押し上げられ、鍛造品は金型の外へ排出される。
初期背圧力を高くして、ピンボス部の充満率を高めてから、初期圧力より低い背圧力にて成形する実施形態を説明する。初期背圧力を高くして、ピンボス部の充満率を高めてから、初期圧力より低い背圧力にて成形するので、カップ部成形時の成形荷重が低くでき、その結果金型寿命を向上させることができるので好ましい。
この例として、背圧力発生手段として油圧クッションを用いた実施形態について説明する。油圧クッションは例えば、前述した空気シリンダーと同様な構成とし、空気に変えて油を封入したものとすることができる。
この場合、背圧力の初期値を5〜20MPaとし、その後初期値より低い値で、例えば1.2〜5MPaになるのが好ましい。
油圧による背圧力である場合は、背圧力は素材にリングノックが接触し負荷がかかり始めたときの初期圧力(油圧シリンダーが縮み始めた時。)が高く、その後油圧シリンダーのストロークの長さによって圧力は影響されないため、縮み始めから成形終了まで所定圧力を荷重することができるため、成形能力が高くなる。例えば、ピンボス側の充満が完全に終了するまでリングノックが下降しないような設定が可能(例えば好ましくは充満率90%以上となるまで下降しない。)となり、ピンボス側の欠肉がより起こらない。一定圧力でリングノックが下降するためカップ部の不揃いも起こらない。
製品毎に圧力設定を変えられることができるような油圧制御を付加するのが好ましい。例えば、外部油圧ユニットを成形スライド信号により圧力制御する、または、単純に圧力の設定が同一油圧シリンダーを用いて減圧弁などにより圧力調整することが可能である。
前述した背圧力発生手段と組み合わせることにより、圧力パターンを変更でき、製品毎に要求される負荷パターンを選択できるので好ましい。
背圧力を発生させる装置として油圧クッションを用いると油の流動抵抗により、油封入圧力以上の初期圧力を発生させることができるので好ましい。また、伸縮の繰返しに対して耐久性に優れ、サイズやクッションのストローク長さのバラエティーが豊富で用途に応じて選択できるので好ましい。小型で金型内への配置が容易で好ましい。
この金型は、ユニバーサルジョイントヨークの素形材を鍛造するに用いる金型であって、閉塞な空間を形成する上金型、下金型と、リングノックと、ノックアウトピンと、リングノックに背圧力を発生する手段とを配設する受圧板とを含む鍛造用金型であるので、鍛造機のストロークが短く、ダイセットの間隔が狭く、従来のような大規模な背圧装置が配置できない場合にも適用が可能である。また小型の鍛造装置に適用できるので設備費を安価にすることができる。
本発明の金型は、背圧力発生機構が小型であり下金型に内蔵されているので従来のダイセットをそのまま用いて、金型のみを上記のような金型に交換することで、容易に主成形方向と反する応力を負荷する機構によりカップ形状部の高さが均一である鍛造品を得ることができる。
つぎに、図5の装置を用いた本発明のヨークの製造方法の一実施形態を説明する。
本発明の製造方法は、アルミニウム合金からなる合金を連続鋳造法により丸棒に鋳造する工程と、丸棒に均質化処理を施す工程と、丸棒材を所定の長さに切断する工程と、素材に潤滑剤を塗布する工程と、素材を所定の温度に予備加熱する工程と、素材を鍛造装置に投入する工程と、潤滑剤を金型へ塗布する工程と、素材を鍛造成形する工程と、ノックアウト機構により鍛造製品(ヨーク素形材)を排出する工程と、熱処理工程と、鍛造製品を機械加工する工程と、を含む製造方法である。
切断した丸棒材を据え込み鍛造用素材を得る工程を、切断工程後に設けることもできる。
本発明では、塑性加工の一部である据え込み加工時に、素材は460℃〜530℃(好ましくは480℃〜510℃。)に加熱しておく。この範囲未満であると成形後にも粗大再結晶の原因となる加工歪が残留し、溶体化時に粗大再結晶組織とり、強度が低下するおそれがある。この範囲を超えると塑性加工発熱により加工率の高い部位で局所融解が起こることが懸念され、局所融解が起きた場合、強度低下につながるおそれがある。
本発明では、このように、温度管理制御をすることにより、成形品の微細組織を制御し機械的強度も好ましいものを製造することができるようになった。
前述した金型を配置した鍛造装置の下金型の中に鍛造用素材を投入する。素材は例えば、連続鋳造棒を所定の長さに切断したものを用いることができる。素材は例えば、必要に応じて素材潤滑としてボンデ処理、黒鉛系水性潤滑剤への浸漬による潤滑剤の塗布処理を施しておく。強く塑性加工されて素材内部のアルミ地が表層に生じ銀色の金属光沢を有する新生面が生じるような高い塑性加工率で成形する場合は、潤滑切れ防止の点からボンデ処理が好ましい。製品外径がφ90mm以上に大きい場合において予め据え込み成形によって太径化した予備成形素材を用いることもできる。
本発明では、塑性加工の一部である鍛造加工時の金型への投入時に、素材は460℃〜530℃(好ましくは480℃〜510℃。)に加熱しておく。この範囲未満であると素材の変形抵抗が大きく、製品形状の欠肉などの不具合につながる上、粗大再結晶を引き起こす残留ひずみが残り、溶体化後に粗大再結晶組織となり、強度低下につながる、この範囲を超えると塑性加工発熱による局所融解が起こり、強度低下につながる。
予備加熱装置で素材を加熱した後投入するに際し、素材温度が低下しないように加熱後金型までの投入時間を20秒以内または温度低下が起こらない短時間であるように管理するのが好ましい。
特にヨークのような薄肉円筒形状を有する成形品の場合、素材の流動性と背圧とのバランスを維持する為に、素材の温度低下を見越して、温度設定を高くしたり、素材内の温度分布を均一にするために保持時間を設けるなど加熱時の制御を加えることが好ましい。
潤滑剤を金型へ塗布する。使用する潤滑剤としては水性黒鉛潤滑剤、油性黒鉛潤滑剤を挙げることができる。上金型のリングノックが金型内部へ収納された状態で金型への潤滑剤塗布を行なうので、隙間への浸透性より油性黒鉛潤滑剤がより好ましい。金型への潤滑剤塗布量は1g〜10g(濃度は0.5〜25質量%。)とするのが好ましい。
次に鍛造成形工程を説明する。
まず主鍛造が実施される。上金型が下降して、上下金型の間に拘束され素材は下金型に彫り込まれたピンボス形状部にまず素材流動が生じ、ピンボス部の概略形状が成形される。この段階では素材流動は主にピンボス部へ起り、下金型側のカップ部へは空圧シリンダーからの圧力がリングノックにかかっているためカップ部への素材流動はほとんど起こらない。この段階では、ピンボスの細部にまで充満していない。
さらに、上金型は下金型内径部に嵌合後も下降を続け、ピンボス部の細部にまで充満が完了する。この位置においては成形荷重が下金型に設けた空圧シリンダーの圧力に勝り、リングノックは下降し、カップ部への素材流動が起こり、カップ部もメタルが充満する。
鍛造条件は、製品形状に応じて最適化することができる。例えば、プレス速度は10〜40spm、プレス荷重は120〜450トンとする。
本発明では、金型温度の管理が肝要で、例えば150℃〜350℃に保持する。特に、薄肉円筒部位において、温度が200℃〜300℃の範囲であることが薄肉円筒部位が粗大再結晶組織とならない為には好ましい。薄肉円筒部位は塑性加工率が大きく、その分残留歪も多くなり、この部位の温度が金型への抜熱で塑性加工中に低下すると粗大再結晶の核となる残留歪を残したまま成形が完了する。このため、金型ヒーターは薄肉円筒部を成形する部位近傍に配置して、上記金型温度に制御して、製品から金型への抜熱を最小限に抑える必要がある。金型温度が高くなり過ぎると(350℃を超えると)金型自体の強度低下により金型寿命が短くなる上、金型に塗布する潤滑剤がはじかれ、金型に素材が焼き付くといった不具合を引き起こす。
背圧を用いた工法では金型温度および鍛造素材温度設定を高くし過ぎると、素材の強度低下を引き起こし、背圧力による薄肉カップ部の変形を引き起こすおそれがある。また、金型表面と素材表面の密着が起こり、焼き付きの不具合も発生するおそれがある。この様な観点から、(背圧力、金型温度、素材温度)の組み合わせはセットで制御されるのが好ましい。
鍛造が終了した後にノックアウトピンにより鍛造済品を排出する。
鍛造済品は好ましくは熱処理を実施する。熱処理は、鍛造済品である素形材の機械強度を向上させることを目的とし、条件は溶体化処理の温度(雰囲気温度)が430℃〜530℃(好ましくは510℃〜530℃。)、1〜5時間保持し、直後に冷媒槽(例えば、水温10〜70℃。)に浸漬させる。溶体化温度がこの範囲未満であると、溶体化によるCuなどの固溶強化元素が十分に固溶出来ず、時効処理後の硬さが不十分になり、この範囲を超えると、溶体化温度保持中に一旦、微細に再結晶した結晶粒同士が結合成長し、粗大再結晶組織となり、強度低下になる。冷媒としては、冷水、温水、油、添加剤を加えた水(エチレングリコールなど)を挙げることができる。水が、安価で、冷却能が高く急冷の点から好ましい。
以上の製造工程を実現する生産ラインの一例を図7に示す。
図7において、鍛造品の生産システムは、溶湯から連続鋳造棒を鋳造して所定の長さに切断する連続鋳造装置81と、この連続鋳造装置81で鋳造した連続鋳造棒に加熱処理(均質化処理)を施す加熱処理装置(均質化熱処理装置)82と、この加熱処理装置82で加熱処理されて曲がった連続鋳造棒の曲がりを矯正する矯正装置83と、この矯正装置83で曲がりを矯正された連続鋳造棒の外周部分を除去するピーリング装置84と、このピーリング装置84で外周部分が除去された連続鋳造棒を、製品を鍛造するのに必要な長さの切断片に切断する切断装置85と、この切断装置85で切断された切断片を予備加熱し切断片に馴染み易い水溶性の潤滑剤を付着させる予備潤滑装置86と、さらに予備加熱装置87で加熱された潤滑剤を付着させた切断片から鍛造製品(素形材)を鍛造する鍛造装置88と、この鍛造装置88で鍛造した鍛造製品に溶体化処理を施す溶体化加熱装置89と、この溶体化加熱装置89で加熱した鍛造製品を焼入れする焼入れ装置90と、この焼入れ装置90で焼入れした鍛造製品に時効処理を施す時効処理装置91とで構成されている。なお、ピーリング装置84は省略することができる。また、各装置間の搬送は自動搬送装置で行うことができる。
ここで、加熱処理装置82は、素材温度を450℃〜500℃とする機能を有している。予備加熱装置87は、素材温度を460℃〜530℃とする機能を有している。溶体化加熱装置89は、素形材温度を430℃〜530℃とする機能を有している。
鍛造装置88は、前述した背圧付与機能を有している。
本発明の生産ラインは、6000系のアルミニウム合金からなる合金を連続鋳造法により鋳造した丸棒に均質化処理を施す工程、均質化処理したものを素材として熱間塑性加工により素形材を成形する工程、塑性加工後に溶体化処理を含む熱処理する工程、を含む成形品の製造方法であって、均質化処理の温度が450℃〜500℃または熱間塑性加工時の素材温度が460℃〜530℃の温度条件を満足する温度管理をして、成形品を鋳造工程から各熱処理工程を含めて一貫して製造するので、好ましい微細組織を有する成形品を安定して製造することができる。
熱処理工程が終了した鍛造製品は、ピン穴部をマシニングセンターを用いたドリル加工により、シャフトへの取り付け部はNC旋盤機により機械加工を実施して最終製品のヨークに仕上る。
塑性加工として鍛造加工の場合を説明したが、本発明の製造方法は、均質化処理の温度、熱間塑性加工時の素材温度、溶体化処理の温度の条件を満たすものであれば転造加工、押出し加工とすることもできる。何れの場合も、溶体化時の微細再結晶核となる遷移金属元素が微細に析出した状態を維持し、塑性加工時の粗大再結晶核となる加工歪を回復でき、溶体化時の結晶粒成長を抑制でき、その結果粗大再結晶組織の防止ができるからである。
成形品の例としてヨークを挙げて説明したが、有底の薄肉円筒形状部位、該底部の円筒形状と反対側へ延びる凸状部位を有している成形品であれば、本発明の目的とするところであり、例えば、油圧シリンダまたはダンパーのケースを挙げることができる。
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
図5に示す鍛造装置を用いて図3に示す素形材を製造した。
<製造条件>
ホットトップ連続鋳造機によりφ85mmの丸棒素材を鋳造した。
均質化処理は、保持時間を12時間とした(処理温度は表に示した。)。
鋳造棒の外径をφ80mmまでピーリングし、厚さ68mmに切断スライスした。
切断した素材を加熱炉にて所定の素材温度まで加熱して、φ110×36mmの円柱形状に据込成形した。据込時の金型温度は180℃とした。据込した素材を180℃に加熱して、15%黒鉛および分散剤などを添加分散した水液に浸漬し予備潤滑皮膜を形成した。予備潤滑した素材を加熱炉にて所定の素材温度まで加熱して鍛造した。鍛造金型の温度は薄肉円筒部において250℃とした。背圧は12MPaとした。金型への潤滑剤は油性黒鉛潤滑剤を2gスプレーガンにて塗布した後に水性黒鉛潤滑剤を10gスプレーガンにて塗布した。プレススピードは25spm、成形荷重は200tで成形した。成形した製品を所定の溶体化温度まで2時間で加熱昇温し、2時間保持した後に、水温20℃の水槽で焼入れ処理した。時効処理は180℃まで1時間で加熱昇温し、6時間保持して鍛造素形材とした。その他の条件は表1に示した。
<評価方法>
組織:試験片の処理は耳部中央およびカップ部を含む横断面で鍛造素形材を切断し、切断した面をフライス盤または旋盤により切削面粗さが5S以下に加工して仕上げた。仕上げた加工面を#320〜#800の研磨紙で研磨する。研磨した面を40℃〜60℃に加熱した10%〜25%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1〜5分浸漬し、エッチングする。直後に流水にてエッチング面を洗浄して乾燥させて、処理を完了した。組織の評価は目視により全面が微細な組織であれば◎、表面近傍のみが粗大な再結晶組織であれば○、中心部のみが微細で表層が粗大再結晶組織であれば△、全面が粗大な再結晶組織であれば×として標記した。
強度:耳部中心部より丸棒引張試験片を機械加工で製作し、万能材料試験機により引張試験を実施した。
以上の評価結果を表に併記した。
表1より、以下のことが分かる。均質化温度が所定の温度範囲である、または塑性加工温度(据え込み温度、鍛造温度)が所定の温度範囲であるとマクロ組織、引張強度が好ましくなる。均質化温度は530℃よりも470℃の方が好ましいことが分かる。据込温度、鍛造温度は475℃以上が好ましい。溶体化温度は560℃よりも530℃の方が好ましいことがわかる。これらをすべて満たしたものがより好ましい。また、成分として、Feを0.15%含有しているよりも、0.24%含有している方が好ましい。Mnは0.03%含有しているよりも、0.09〜0.10%含有している方が好ましい。
Figure 0004553323
本発明は、アルミニウム合金を素材とした成形品の製造に用いることができる。
機械加工前のヨークの素形材の一例の見取り図である。 機械加工後のヨークの一例の見取り図である。 機械加工前のヨークの素形材の別の例の見取り図である。 プロペラシャフトの概略構成図である。 本発明に用いる塑性加工装置の一例である鍛造装置の概略構成図である。 本発明に用いる金型構成の一例の断面図である。 本発明の生産ラインの一例の概略図である。
符号の説明
10:ヨーク素形材
11:円筒部
12:底
13:ピンボス部
41:カップ形状部
42:プレート部
43:ピンボス部
67:リングノック(可動ラム)
68:空圧シリンダー圧力伝達軸
71:空圧シリンダー
72:空圧シリンダー気体封入部
81:連続鋳造装置
82:加熱処理装置
83:矯正装置
84:ピーリング装置
85:切断装置
86:予備潤滑装置
87:予備加熱装置
88:鍛造装置
89:溶体化加熱装置
90:焼入れ装置
91:時効処理装置
95:シャフト接続部
94a、94b:ピン穴
103:上型
104:スプレーノズル
105:下型
107:ノックアウトピン
108:スプレー移動装置
109:スプレー回転装置
110:スプレーシャフト
111a、111b、111c:トランスミッション後端
112a、112b、112c:ヨーク部品
113a、113b、113c:十字軸
114a、114b:シャフト
115:センターベアリング
116:マウントインシュレーター
117:ボディー(車体)
118a、118b:溶接部
119:ファイナルドライブ
201:下型
202:上型
203:センターブッシュ
204:受圧板
205:下ボルスター
210:鍛造用素材
211:上ボルスター
221:鍛造機
300:ガスクッション

Claims (1)

  1. 6000系のアルミニウム合金からなる合金を、溶湯温度を700℃以上とした連続鋳造法により、その成分が質量%で0.3%〜1.0%Si、0.2%〜0.6%のCu、0.8%〜1.5%のMg、0.05%〜0.5%のCr、0.03%〜0.15%のMn、0.15%〜0.40%のFe、及び残部がAlと不可避的不純物とからなり、FeとMnとの総和が0.23%〜0.55%に制御された丸棒に鋳造する工程、
    この丸棒を450℃〜500℃の温度で均質化処理する工程、
    均質化処理したものを素材として、加工時の素材温度が460℃〜530℃を満足するように、上金型、および、背圧発生手段を備えた下金型からなる金型を150℃〜350℃に保持して用いる鍛造加工により、前記背圧、前記金型の温度、前記素材温度をセットで制御して熱間塑性加工処理し、素形材を成型する工程、
    熱間塑性加工処理後に溶体化処理を含む熱処理を施す工程、
    を含む成型品の製造方法であって、
    前記成形品は、有底の薄肉円筒形状部位と、該底部の円筒形状と反対側へ延びる凸状部位とを有する、
    ことを特徴とする成型品の製造方法。
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