JP4552031B2 - シトラール水素化物の製造方法 - Google Patents

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本発明は、シトラール水素化物の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、亜臨界ないし超臨界状態の二酸化炭素を反応媒体とし、水素及び担持貴金属触媒の存在下で、シトラールを水素化して、シトラール水素化物を高転化率及び高選択率で合成する方法に関するものである。
本発明は、例えば、薬品、ファインケミカル、香料の製造において、原料又は反応中間体などとして重要な位置を占めるシトロネラール、ゲラニオール、ネロールなどのシトラール水素化物を合成する、α,β−不飽和カルボニル化合物の部分水添反応の技術分野において、例えば、従来の、有機溶媒等を反応媒体として使用する、シトラールの部分水添反応では、高転化率及び高選択率で目的化合物を合成することは困難であり、高温度で長時間の反応を必要とすることがあり、また、反応混合物から、目的化合物であるシトロネラール、ゲラニオール、ネロールなどのシトラール水素化物を分離精製するには多くの工程が必要である等の問題があったことを踏まえ、亜臨界ないし超臨界二酸化炭素を反応媒体とし、水素及び担持貴金属触媒の存在下で、変換反応を行うことにより、従来法でなし得なかった、高転化率及び高選択率で目的化合物を合成することを可能とするシトラール水素化物の合成方法を提供するものである。本発明は、生成物の分離精製が容易であり、複雑な装置を必要とせず、低温で、短時間の反応で、環境に優しく、シトラールからシトロネラール、ゲラニオール、ネロールなどのシトラール水素化物、特に、シス及びトランス混合物であるシトラールから98%を上回るトランス異性体純度を持つゲラニオールを高選択的に合成することを可能とするものであり、薬品、ファインケミカル、香料等の技術分野における新技術を提供するものとして有用である。
従来、α、β−不飽和カルボニル化合物を選択的に水素化する反応は、例えば、薬品、ファインケミカル、香料等の分野で、広く関連化合物の合成反応として使用されている重要な化学反応として知られている。例えば、α、β−不飽和アルデヒドであるシトラールの水素化反応の生成物は、特に、香料分野で広く使用されている重要な香料原料である。シトラールは、通常、シス及びトランスの混合物であり、2個の炭素−炭素二重結合と、1個の炭素−酸素二重結合を有し、炭素−炭素二重結合のうちの1個は、炭素−酸素二重結合と共役した構造を有している。
図1に、シトラールの水素化反応の反応経路を示す。共役している炭素−酸素二重結合を水素化すると、ゲラニオール((E)−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−オール:P1)とネロール((Z)−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−オール:P2)が生成する。一方、共役している炭素−炭素二重結合を水素化すると、シトロネラール(3,7−ジメチル−6−オクテン−1−アール:P3)が生成する。更に、生成したゲラニオール(P1)、ネロール(P2)、又はシトロネラール(P3)の水素化反応を進めると、シトロネロール(P4)が生成する。これらの反応には、シス、トランス異性体化、数種の副反応、例えば、環化反応が同時に進行する他、炭素−炭素二重結合の水素化と炭素−酸素二重結合の水素化が同時に進行し、複数種の生成物を与える可能性がある。そこで、シトラールの水素化反応において、特定の所望のシトラール水素化物が得られる、選択率の良い反応方法が要望されていた。
これまで、シトラールを、貴金属担持触媒、例えば、Rh−Ge、Ru−Snや、塩基触媒の存在下で、液相中で水素化する方法が報告されている(非特許文献1参照)。このような、貴金属触媒による、シトラールの選択的水素化では、助触媒、例えば、Sn、Ge、Fe等により、生成物の選択率が向上する。一方、温度、圧力、特に、溶媒等の反応条件を調整することにより、生成物の選択率を変えることもできるが、疎水性溶媒、例えば、シクロヘキサン、アルコールを反応媒体とする、酸性触媒の存在下では、複数の副反応が進行し、所望の化合物の選択率が低下する。また、シトラールの部分水添反応によるゲラニオールの合成方法として、Pt/ZnOを触媒として使用し、例えば、水素圧50bar、120℃で水添を行い、99%を超える高いシトラール転化率において、97%を超えるゲラニオール+ネロール合計収率を得ることができ、シトロネロールの生成は2%である、ゲラニオールの合成方法が報告されている(特許文献1参照)。しかし、生成物のゲラニオールは最大でも45.52%程度である。また、炭素担体に担持された0.1〜10重量%Ruに加えて0.1〜5重量%のFeを含むRu−Fe二元金属触媒を使用し、シトラール/メタノール/トリメチルアミン(70:27:3)の溶液を、水素圧40bar、75℃で水添を行い、変換率95.61%、ゲラニオール+ネロールの選択率95.22%で、ゲラニオールとネロールの混合物を製造する方法、及び該方法に関連した水素化用の連続的に運転される反応器が提案されている(特許文献2,3参照)。しかし、これらの方法は、比較的低温での反応を可能とするが、生成物のゲラニオール/ネロールの比は12:10程度であり、転化率及び選択率において改善すべき問題を有している。
また、シトラールを水素化してシトロネラールを得る方法についても種々提案されている(特許文献4、5、6、7、8、9参照)。これらは、いずれも炭素数1から5のアルコール溶媒中、Pd、Rhなどの貴金属触媒存在下、ホウ酸塩、無機塩基、有機塩基などの存在下にシトラールの水素化を行うものであり、反応終了後に溶媒の回収、添加物に由来する廃棄物の処理など、工業的かつ経済的に実施する上での改善すべき問題を有している。
最近、有機合成の技術分野において、超臨界状態の二酸化炭素は、環境に優しい反応媒体として注目を集めている。超臨界状態の二酸化炭素を、例えば、ケイ皮アルデヒドの水素化反応の媒体としてPt−Ru二元金属触媒の存在下で、ケイ皮アルデヒドを水素化する反応では、ケイ皮アルコールのみが生成物として得られたことが記載されている(非特許文献2参照)。
特開2003−221351号公報 特開2003−245555号公報 特開2003−206248号公報 国際特許出願公開WO2004/007414号 特開平11−349517号公報 英国特許第1 389 177号 英国特許第1 476 818号 英国特許第1 340 409号 米国特許第3,971,830号 A. M. Silva, Appl. Catal. A2003,241, 155-164 Maya Chatterjee, New J. Chem.,2002, 27, 510-513
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術の諸問題を抜本的に解決することが可能な、新しいα,β−不飽和カルボニル化合物の選択的水素化方法を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、シトラールを、亜臨界ないし超臨界状態の二酸化炭素(scCOと記載することがある。)を反応媒体として、水素及び担持貴金属触媒の存在下で、選択的に水素化、又は選択的に水素化並びに異性化することにより、特定のシトラール水素化物に高転化率及び高選択率で変換できること見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の目的は、シトラールを、亜臨界ないし超臨界二酸化炭素を反応媒体として、水素及び担持貴金属触媒の存在下で、選択的に水素化、又は選択的に水素化並びに異性化して、シトロネラール、ゲラニオール、ネロールなどのシトラール水素化物の内、特定のシトラール水素化物を高転化率及び高選択率で合成する方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明の目的は、有機溶媒を使用しない、廃触媒が生成しないもしくは極めて少量しか生成しない方法により、しかも、従来法に比較して、低温度条件での反応を可能とする、環境に優しい方法で、シトラールからシトロネロール、ゲラニオール、ネロールなどのシトラール水素化物を選択的に合成する方法を提供することである。更に、本発明の他の目的は、合成香料、化粧品、薬品及びファインケミカル等の技術分野において、原料又は反応中間体として有用なゲラニオールを、98:2を上回るゲラニオール/ネロールの比率で製造する方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)超臨界又は亜臨界二酸化炭素中で、水素及び担持貴金属触媒存在下にシトラールを水素化、あるいは水素化並びに異性化してシトラール水素化物製造する方法であって、
1)担持体が、メソボーラスな多孔質体であり、2)担持される貴金属が、白金、あるいは白金及びルテニウムの二元系金属であり、3)シトラール水素化物が、ゲラニオール、ネロール、シトロネラール、又はシトロネロールであることを特徴とするシトラール水素化物の製造方法。
(2)ゲラニオールを、98:2を上回るゲラニオール/ネロールの比率で製造する、前記(1)に記載のシトラール水素化物の製造方法。
)二酸化炭素圧が、10〜12MPaである前記(又は(2)記載のシトラール水素化物の製造方法。
)水素圧が、3〜5MPaである前記(又は(2)記載のシトラール水素化物の製造方法。
)白金とルテニウムのモル比が、7:3〜6:4である前記(から(4)のいずれかに記載のシトラール水素化物の製造方法。
)反応後、回収した担持貴金属触媒を繰り返し使用する前記(1)から()のいずれかに記載のシトラール水素化物の製造方法。
)反応温度が、50〜80℃である前記(1)から()のいずれかに記載のシトラール水素化物の製造方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、亜臨界ないし超臨界状態の二酸化炭素を反応媒体として、水素及び担持貴金属触媒の存在下で、原料のシトラールを水素添加することにより高転化率及び高選択率でシトラール水素化物を合成するものである。本発明においては、シトラール水素化物とは、シトラールを水素添加することによって選択的に得られることがあるゲラニオールネロール及びシトロネラールを包括する概念を意味するものとして定義される。
本発明は、種々の反応ガスに対して高い溶解性を示す亜臨界ないし超臨界二酸化炭素を反応媒体として使用することにより、従来、有機溶媒等を使用し、有機化合物のガス−液体相反応を利用した合成反応では、しばしば問題となっていた物質輸送に基づく反応の限界を避けることを可能にすると共に、特に、臨界領域の近傍では、生成物の選択性を変更することを可能とするものである。本発明は、亜臨界ないし超臨界二酸化炭素を反応媒体とし、水素及び担持貴金属、例えば、Pt一元金属触媒(以下、Pt触媒と記載することがある。)、Pt−Ru二元金属触媒(以下、Pt−Ru触媒と記載することがある。)の存在下で、シトラールを選択的に水素化又は水素化並びに異性化することにより、亜臨界ないし超臨界二酸化炭素の溶媒としての特性を十分に生かして、高転化率及び選択性でシトラール水素化物を合成することを可能にするものである。
α、β不飽和カルボニル化合物の水素化反応を、亜臨界ないし超臨界二酸化炭素を反応媒体として行うことは、従来、ほとんど報告されていないが、例えば、ケイ皮アルデヒドを、Pt−Ru触媒の存在下で、水素化して、ケイ皮アルコールを合成する方法がある(非特許文献2参照)。これに対して、本発明では、出発原料が、シトラールであり、例えば、Pt触媒を使用すると、主生成物をゲラニオールとすることが可能となり、また、Pt−Ru触媒を使用すると、主生成物をシトロネラールとすることが可能となる。Pt触媒を用いる場合には、水素化と同時に選択的な異性化反応が起こるという特異な合成反応の進行を利用するものである。
また、有機溶媒を反応媒体とする、シトラールの水素化反応により、ゲラニオールを合成する反応が報告されており(特許文献1、2、及び3参照)、そこでは、転化率及び選択率において、比較的良好であることが示されているが、本発明と、有機溶媒を使用した例を、同一反応条件下に対比した結果(図9参照)、本発明が、転化率及び選択率共に、格段に優れた効果を発揮することが明らかとなった。即ち、本発明は、上記構成を採用することにより、転化率及び選択率について、従来法をはるかに上回る格別の作用効果を奏するものであると云える。
本発明においては、シトラールからゲラニオールへの変換反応により、シトラールの水素化並びに異性化反応で、ゲラニオールの生成と同時に、幾何異性体のネロールが生成され、それらの混合物(シトラール水素化物)が得られる。従来のシトラールの部分水添反応では、例えば、得られた生成物におけるゲラニオール/ネロールの比は、4:6程度である例が報告されているが、本発明の方法をPt触媒存在下で行った生成物では、ゲラニオール/ネロールの比は98:2を上回る値が得られる。この際の、亜臨界ないし超臨界状態の二酸化炭素としては、具体的には、温度35〜100℃、圧力10〜40MPa、好ましくは、温度50〜70℃、圧力10〜20MPaの二酸化炭素が例示される。
本発明において、触媒成分の貴金属を担持する担持体としては、好適には、例えば、直径2〜50nmの孔を持つ多孔質体のメソポーラスシリカが例示され、担持貴金属触媒としては、具体的には、メソポーラスシリカに担持されたPt一元金属触媒である、Pt−MCM−41、Pt−MCM−48、又は、Pt−Ru二元金属触媒である、Pt−Ru−MCM−41が例示される。また、本発明において、メソポーラス担体等の担持体に担持される貴金属の量としては、1〜5重量%、好ましくは1〜3重量%が例示される。しかし、本発明は、上述の例に制限されるものではなく、これらと同効の機能を有するものであれば、担持体及び貴金属の種類を限定することなく同様に使用することができる。
メソポーラスシリカ担持体に担持されたPt一元金属触媒、及びPt−Ru二元金属触媒は、XRDパターンによれば、Ia30Lの結晶空間群に属し、(211)及び(220)に顕著な反射を示す。担体のメソポーラスな状態は、Pt又はPt−Ruを担持し、触媒とした後にも変化はない。また、TEM写真により、触媒表面を観察したところ、本発明の、焼成後のPt−MCM−48触媒表面には、Ptの小粒子が集まった大きな集合体の球形粒子が、ランダムに分散している。触媒の、光電子の結合エネルギーの測定によれば、本発明のPt−MCM−48触媒には、金属Ptのみが存在し、Pt−Ru二元金属触媒では、PtイオンとPtが存在している。
本発明において、例えば、Pt−MCM−48触媒を、323Kで、シトラールの水素化並びに異性化反応に使用した場合、4MPaの水素の存在下、2時間の水素化反応では、シトラールからゲラニオールへの反応経路(経路I)が、シトラールからシトロネラールへの反経路(経路II)よりも優先する。二酸化炭素の圧力を、6から10MPaに上昇させると、ゲラニオールの選択性は、15%から90%へと増加するが、以後、その値は減少する。ゲラニオールの選択性は、二酸化炭素圧(又は二酸化炭素密度)と共に変化する。例えば、二酸化炭素圧が、8から10MPaへと上昇すると、密度は、520.8から708.3kg/mに増加することから、二酸化炭素の圧力が選択率に影響することは疑いのないことである。表面に露出する金属Ptが存在することは、炭素−酸素二重結合の水素化に好ましく、これらの反応条件の下では、イソプレゴール、環化生成物等の副生物の生成はない。
Ptに加え、更にRuを担持することにより、水素化反応の主生成物は、シトロネラールへと変化する。12MPaの超臨界二酸化炭素下では、シトロネラールの選択率が80%、転化率が90%となる。即ち、PtへRuを更に担持すると、反応経路はIからIIへと変化し、転化率と選択率はPt−Ruの比と共に増加し、30%のRu含有率で選択率は極大値となる。このように、Ruは、この反応において、重要な役割を果たす。この結果は、従来知られていた、ケイ皮アルデヒドの水素化反応の結果とは対照的であり、シトラールの水素化反応では、炭素酸素二重結合よりも炭素−炭素二重結合の水素化反応が優先される。Pt−Ru二元金属触媒では、二酸化炭素圧が、6から12MPaに上昇すると、シトラールの転化率は8から80%、シトロネラールの選択率は70から90%へと増加する。
これらの2種類の触媒では、それぞれの主生成物の選択率は極大値を有する。この現象は、溶質と、圧力による密度変化にともなって、反応分子と亜臨界ないし超臨界状態の二酸化炭素との平均距離が変化することを示す。このことは、超臨界の流体の密度が変化すると、化学平衡が変化し、反応の活性、選択性をも変化することになる。Pt触媒及びPt−Ru触媒の存在下、323Kで行った、シトラールの水素化反応の、反応時間、転化率及び選択率の関係を見ると、反応速度は、反応初期では速く、その後は定常状態に達する傾向を示し、同じ反応時間で対比すると、Pt−Ru触媒の方がPt触媒よりもシトラールの転化率が高い。Pt触媒では、反応経路Iによる反応が進行し、Pt−Ru触媒では、反応経路IIによる反応が進行する。超臨界二酸化炭素中では、Pt触媒は、炭素−酸素二重結合が,炭素−炭素二重結合より優先して水素化されることが分かる。
本発明の製造方法において、反応が、均一相又は不均一相で進行することを知ることは、超臨界二酸化炭素系での触媒反応を理解し、反応を、効率良く遂行するために重要である。目視によれば、シトラールの溶解度は、二酸化炭素の圧力と共に増加する。4MPaの水素の下では、11MPa以上の二酸化炭素圧で、均一相が達成される。相の効果は、シトラールの水素化反応が進行している間中認められる。両触媒は、7MPa以下の低超臨界二酸化炭素圧では、液相中での物質移動が制限されるために、転化率は低く、圧力を上げると、超臨界二酸化炭素中の反応物の濃度が増加し、転化率が上昇する。17MPa付近の二酸化炭素圧では、反応物質の濃度が低下し、反応率は低下する。選択率については、Pt一元金属触媒では、ゲラニオールの選択性の極大値は、10MPaの不均一相にある。一方、Pt−Ru二元金属触媒では、シトロネラール選択率の極大値が12MPa付近にあり、均一相の領域に一致する。このように、極大値が圧力に依存することは、金属粒子と媒体との相互作用に基づくものであり、Ruは、金属と媒体との相互作用を変えるものと考えられる。
本発明のシトラールの水素化反応は、水素圧が、転化率及び選択率へ影響する。Pt一元金属触媒及びPt−Ru二元金属元触媒では、共に、水素圧の上昇と共に転化率が増加する。超臨界二酸化炭素が、水素溶解性が良好であることにより、通常の有機溶媒と比較して、転化率が向上している。他方、水素圧を、2MPaから6MPaに上げると、ゲラニオールの選択率が、5から33.4%へと増加すると同時に、転化率も増加する。シトラールの水素化反応は、いくつかの反応経路からなっているが、水素圧が変化すると、各反応の反応速度が影響されるため、水素圧が上昇すると、ある反応が他の反応より優先して進行することがあり、この場合には、超臨界二酸化炭素中で、ゲラニオールの生成反応が優先されたことにより、選択率が改善される。
表1に、本発明における、超臨界二酸化炭素中で、Pt−MCM−48及びPt−Ru−MCM−48を触媒とした、シトラールの水素化反応における温度の影響を示す。反応条件は、シトラール6.5ミリモル、触媒0.1g、CO:10MPa、CO:12MPa、H:4MPa、反応時間2時間である。シトラールの水素化反応では、Pt一元金属触媒では、反応温度を、308Kから323Kに上げると、シトラールの転化率は、32.7から71.3%へと急激に増加すると共に、ゲラニオールの選択率が、54.0から90.4%へと大きく増加する。反応は、温度、308,323及び343Kとし、CO圧力は、10及び12MPa、水素分圧を4MPaとした。表1によれば、温度の上昇と共に、本発明の一元触媒では、ゲラニオールの選択率は約90%と、高水準で一定であるが、二元触媒では、0から23.4%へと増加するに過ぎない。
本発明における、超臨界二酸化炭素を、水素化反応の反応媒体として使用する反応と、通常の有機溶媒又は無溶媒を使用した反応との、反応率及び選択率の値を対比すると、超臨界二酸化炭素中では、Pt一元金属触媒では、ゲラニオールが圧倒的な生成物であるのに対し、有機溶媒中では、シトロネラ−ルに対して選択的であり、ゲラニオールは、ほとんど生成しない。こうした、Pt触媒の、超臨界二酸化炭素中での特徴は、水素の利用可能性の相違に基づくと考えられる。液相中でのシリカを担体とする水素化反応は、水素圧に対する1次反応であり、超臨界二酸化炭素媒体では、水素を効率的に利用できることにより、不飽和アルデヒドから対応する不飽和アルコールへの反応が、迅速に、連続して進行する。
Pt−Ru二元金属触媒については、超臨界二酸化炭素、有機溶媒共に、シトロネラールが主生成物であるものの、有機溶媒中では、超臨界二酸化炭素中と対比して、選択率は大幅に低下する。無溶媒中での転化率は、ごく低い値を示すに過ぎない。このように、有機溶媒又は無溶媒の下での反応が、低い転化率と選択率を示すことは、液相中又は無溶媒の状態では、物質輸送に対する大きな抵抗があるものと考えられる。本発明が、有機溶媒を使用する反応と対比して、転化率と選択率の双方において優れていることは、超臨界二酸化炭素媒体が、溶解性に優れていることが、大きな役割を果たしていると考えられる。
触媒を使用して、合成反応を行うことにより触媒が不活性化することは、有機溶媒中でシトラールを水素化する反応において一般的に起こる問題であり、それは、例えば、脱カルボニル反応に関連して、触媒表面に炭素系の生成物が沈着することによる。表2に、シトラールの水素化反応における、触媒の不活性化を示す。反応条件は、シトラール6.5ミリモル、触媒0.1g、CO:10MPa、CO:12MPa、H:4MPa、反応時間2時間である。表2は、超臨界二酸化炭素中で、シトラールの水素化反応は、長時間連続して行うことができ、転化率や選択率が低下するような、不活性化の問題は生じないことを示している。このことは、触媒を不活性化する物質が、超臨界二酸化炭素の抽出作用により超臨界二酸化炭素中に溶出し、触媒の表面に不活性化物が沈着することを防止することにより、シトラールの水素化反応では、超臨界媒体を使用した反応方法が、従来の有機溶媒を使用した方法に対し、優れていることを示している。
以上のように、本発明は、超臨界二酸化炭素が有用な反応媒体として、水素及び担持貴金属触媒と組み合わせることにより、シトラールを、選択的に水素化して、ゲラニオール又はシトロネラールを高転化率及び高選択率で合成することが可能であり、同じ条件で対比した、有機溶媒を反応媒体とする方法と比べ、転化率及び選択率において格段に優れている。
更に、超臨界二酸化炭素は、簡単に反応条件を制御することが可能であり、従来の有機溶媒に対する代替溶媒として、環境に優しい新しいゲラニオールの合成方法を提供する上で有用である。また、これと本発明の担持貴金属触媒との組み合わせは、将来の、α、β−不飽和カルボニル類の水素化反応の基礎となり得るものである。本発明は、実用化の点からみても、従来の、有機溶媒を使用したα、β−不飽和アルコールの合成方法にはない数多くの利点を有していると云える。本発明では、α,β−不飽和カルボニル化合物であるシトラールを、亜臨界ないし超臨界状態の二酸化炭素を反応媒体として、水素及び担持貴金属触媒の存在下で選択的に水素化並びに異性化して、トランス異性体((E)−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−オール)の構成比を選択的に高めた対応するα,β−不飽和アルコールであるゲラニオールへ変換することが可能である。本発明は、生成物のゲラニオール+ネロールの混合物のゲラニオール/ネロールの比を98:2〜99:1に高めた高ゲラニオール含有シトラール水素化物を合成し、提供することを可能とするものである。
本発明のトランス−α,β−不飽和アルコール高含有シトラール水素化物は、相当するシス,トランス混合物(シス,トランス比 4:6)であるα,β−不飽和カルボニル化合物の対応する異性化反応生成物であり、該異性化反応生成物のトランス体/シス体の構成比は一定の値を示すので、トランス−α,β−不飽和アルコール製品のトランス体/シス体の構成比を精密に分析すれば、本発明の一段ステップの異性化反応方法による異性化反応体であることを確認(識別)することができる。
本発明により、(1)シトラールを原料として、水素化、又は水素化並びに異性化反応により、ゲラニオール、ネロール、シトネラール等のシトラール水素化物を高転化率、及び高選択率で合成する方法を提供することができる、(2)この合成方法により、シトラールからゲラニオール/ネロールの比が98:2を上回る、トランス異性体((E)−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−オール)を選択的に高めた高ゲラニオール含有シトラール水素化物を合成し、提供することができる、(3)触媒の不活性化の問題がないため、触媒を何度も再使用することが可能であり、また、生成物を、触媒及び反応媒体から容易に分離することができる、(4)有機溶媒を使用しない、また、廃液、廃物等の処理を必要としない、環境に優しいゲラニオールの合成方法を提供することができる、(5)所望の化合物を合成するための、反応条件が簡単に設定することが可能であり、しかも、従来例に比較して、低温度での反応を可能とする、シス,トランス混合物であるシトラールから対応するトランス−α,β−不飽和アルコールであるゲラニオールを合成する方法を提供することができる、(6)例えば、合成香料、化粧品、薬品及びファインケミカル等の技術分野において、原料又は反応中間体として有用なシトラール水素化物を提供することを可能とする、という格別な効果が奏される。
次に、本発明を、実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
(1)触媒の合成
本実施例では、1%Pt溶液を、活性剤とシリカ前駆体の混合物中に添加することによりPt一元触媒を作製した。シリコン源として、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)(純度95%、和光純薬製)を、Pt源として、塩化Pt(純度98.5%、アルドリッチ社製)を使用し、臭化セチルトリメチルアンモニウム(純度99%、メルク社製)を、メソ多孔質構造を形成するための、テンプレートとして使用した。テンプレート2.39%、NaOH0.33g、及び27gの脱イオン水からなる組成を有する出発ゲル中に、Pt溶液、及びTEOS(5.0g)を撹拌下に、加え、更に、撹拌を2時間続けた。最後に、生成したゲルは、413Kで、48時間オートクレーブで処理した。生成したゲルの組成は、モル比で、TEOS 1、CTVA 0.27、NaO 0.34、HO 62.5であった。生成物を、濾過し、乾燥した後、823Kで10時間焼成して、Pt一元金属触媒を作製した。なお、Pt−Ru二元金属触媒については、Ru源として、ルテニウムアセチルアセトン(純度97%、アルドリッチ社製)を用いて、一元金属触媒と同様にして作製した。触媒中の金属成分は、Pt触媒で1%、Pt−Ru触媒で3.5%以下であった。
メソポーラスシリカ担体担持Pt一元金属触媒、及びPt−Ru二元金属触媒は、XRDパターンによれば、Ia30Lの結晶空間群に属し、(211)及び(220)に顕著な反射を示した。担体のメソポーラスな状態は、Pt又はPt−Ruを担持し、触媒とした後にも変化はなかった。また、TEM写真により、触媒表面を観察したところ、本発明の、焼成後のPt−MCM−48触媒表面には、Ptの小粒子が集まった大きな集合体の球形粒子が、ランダムに分散していた。触媒の、光電子の結合エネルギーの測定によれば、本発明のPt−MCM−48触媒には、金属Ptのみが存在し、Pt−Ru二元金属触媒では、PtイオンとPtが存在していることが分かった。
(2)α,β−不飽和カルボニル化合物の水素化反応
本実施例では、出発原料のシトラール(シス,トランス比 4:6)をゲラニオールへ変換するために、scCOを反応溶媒とするシトラールの水素化反応を、ステンレス製のバッチ式反応器(50ml)中で行った。0.1gの触媒と反応基質6.5モルを反応器に入れた。反応器をシールし、2MPaのCOで、2回フラッシュして、反応器中の空気を除去した。フラッシュの後、反応器における反応温度323Kに保持した。前述した量の水素を反応器に注入した。液状COを、高圧液状ポンプにより反応器に導入し、所定の圧力に加圧し、反応圧を、背圧弁で制御した。反応容器中の、水素と反応混合物は、絶えずテフロン(登録商標)製の撹拌棒で撹拌した。所定の反応条件で反応した後、反応器を氷水で冷却し、次いで、注意深く減圧した。液状の反応混合物を、GC/MSで同定し、GC(HP5890)で定量した。生成物の含有率を検量線により求めた。触媒の再使用を検討する際には、触媒を反応生成物から分離し、これを新しい反応原料中に加えて再度反応を実施した。なお、有機溶媒中での水素化反応の検討では、scCOの代わりに、10mlの有機溶媒を使用して行った。
(3)Pt−元金属触媒の存在下での二酸化炭素圧力と選択率及び転化率
図2に、本発明の、Pt−MCM−48触媒の活性について示す。図2には、Pt触媒を、323Kで、シトラールの水素化反応に使用した場合のCO圧の影響が示されている。4MPaの水素の存在下、2時間の水素化反応では、シトラールからゲラニオールへの反応経路(経路I)が、シトラールからシトロネラールへの反経路(経路II)よりも優先した。COの圧力を、6から10MPaに上昇すると、ゲラニオールの選択性は、15%から90%へと増加するが、以後、その値は減少した。ゲラニオールの選択性は、CO圧(又はCO密度)と共に変化した。例えば、CO圧が、8から10MPaへと上昇すると、密度は、520.8から708.3kg/mに増加することから、COの圧力が選択率に影響することが示された。表面に露出する金属Ptが存在することは、C=O結合の水素化に好ましく、これらの反応条件の下では、イソプレゴール、環化生成物等の副生物の生成はないことが分かった。本実施例により、高転化率、高選択率でトランス−ゲラニオールを合成し、ゲラニオール+ネロールの混合物におけるゲラニオール/ネロールの比 98:2の結果が得られた。
(4)Pt−Ru二元金属触媒の存在下での二酸化炭素圧力と選択率及び転化率、及び Ru/Pt原子比とシトロネラール選択率
図3に、Pt−Ru二元金属触媒を使用し、scCO中で、323K、2時間の反応条件下に、シトラールの水素化反応行った結果を示す。Ptに加え、更にRuを担持することにより、水素化反応の主生成物は、シトネラールへと変化した。12MPaのscCO下では、シトロネラールの選択率が80%、転化率が90%となった。即ち、PtへRuを更に担持すると、反応経路はIからIIへと変化し、転化率と選択率はPt−Ruの比と共に増加し、30%のRu含有率で選択率は極大値となった(図4)。このように、Ruは、この反応において、重要な役割を果たすことが分かった。この結果は、従来知られていた、ケイ皮アルデヒドの水素化反応の結果とは対照的であり、シトラールの水素化反応では、C=O結合よりもC=C結合の水素化反応が優先される。Pt−Ru二元金属触媒では、CO圧が、6から12MPaに上昇すると、シトラールの転化率は8から80%、選択率は、70から90%へと増加する。
(5)反応時間と選択率及び転化率
これらの2種類の触媒では、選択率は極大値を有する。この現象は、溶質と、圧力による密度変化にともなって、反応分子と遷移状態のCOとの平均距離が変化することによる。このことは、超臨界の流体の密度が変化すると、化学平衡が変化し、反応の活性、選択性をも変化することになる。図5及び図6に、Pt触媒及びPt−Ru触媒の存在下、323Kで行った、シトラールの水素化反応の、反応時間、転化率及び選択率の関係を示す。反応速度は、反応初期では速く、その後は定常状態に達する傾向を示し、同じ反応時間で対比すると、Pt−Ru触媒の方がPt触媒よりもシトラールの転化率が高いことが分かった。図5は、Pt触媒では、反応経路Iによる反応が進行し、Pt−Ru触媒では、反応経路IIによる反応が進行することを示す。scCO中では、Pt触媒は、C=O結合が,C=C結合より優先して水素化されることが分かった。
(6)水素圧力と選択率及び転化率
本発明のシトラールの水素化反応は、水素圧が、転化率及び選択率へ影響する。図7及び図8の結果は、Pt一元金属触媒及びPt−Ru二元金属元触媒は、共に、水素圧の上昇と共に転化率が増加することを示している。scCOが、水素溶解性が良好であることにより、通常の有機溶媒と比較して、転化率が向上している。他方、図8は、H圧を、2MPaから6MPaに上げると、ゲラニオールの選択率が、5から33.4%へと増加すると同時に、転化率も増加することを示している。シトラールの水素化反応は、いくつかの反応経路からなっているが、水素圧が変化すると、各反応の反応速度が影響されるため、水素圧が上昇すると、ある反応が他の反応より優先して進行することがあり、この場合には、scCO中で、ゲラニオールの生成反応が優先されたことにより、選択率が改善されている。
(7)反応媒体と選択率及び転化率
本発明において、scCOを、水素化反応の反応媒体として使用する反応と、有機溶媒又は無溶媒を使用した反応との、反応率及び選択率の値を対比すると、図9に示すように、scCO中では、Pt一元金属触媒では、ゲラニオールが圧倒的な生成物であるのに対し、有機溶媒中では、シトロネラ−ルに対して選択的であり、ゲラニオールは、ほとんど生成しなかった。こうした、Pt触媒の、scCO中での特徴は、水素の利用可能性の相違に基づくと考えられる。液相中でのSiOを担体とする水素化反応は、水素圧に対する1次反応であり、scCO媒体では、水素を効率的に利用できることにより、不飽和アルデヒドから対応する不飽和アルコールへの反応が、迅速に、連続して進行するものと考えられる。
本実施例では、Pt担持MCM−41触媒を用いて、シトラールの水素化を行った。
(1)CO圧力と選択率
H2(MPa)=4で、CO圧力を変えて、シトラールを水素化した。その結果を表3に示す。
(2)水素圧力と選択率
同様に、PCO2(MPa)=14で、H圧力を変えて、シトラールを水素化した。その結果を表4に示す。
(3)反応時間と選択率
同様に、PH2(MPa)=4、PCO2(MPa)=14に固定して、反応時間を変えて、シトラールを水素化した。その結果を表5に示す。
(4)溶媒と選択率
同様に、PH2(MPa)=4で、種々の有機溶媒中でシトラールを水素化した。その結果を表6に示す。
(5)反応温度と選択率
H2(MPa)=4、PCO2(MPa)=14で、反応温度を変えて、シトラールを水素化した。その結果を表7に示す。
(6)総圧力と選択率
CO2(MPa)とPH2(MPa)の総圧力を一定にしてそれらの圧力比を変えて、シトラールを水素化した。その結果を表8に示す。
(7)CO圧力とアイソマーの選択率
H2(MPa)=4で、CO圧力を変えて、シトラールを水素化した。アイソマー(ゲラニオール及びネロール)の選択率を表9に示す。
(8)反応時間とアイソマーの選択率
H2(MPa)=4、PCO2(MPa)=14で、反応時間を変えて、シトラールを水素化した。その結果を表10に示す。
本実施例では、Ru−Pt触媒を用いて、シトラールの水素化を行った。
(1)CO圧力と選択率
H2(MPa)=4で、COの圧力を変えて、シトラールを水素化した。その結果を表11に示す。
(2)水素圧力と選択率
CO2(MPa)=12で、Hの圧力を変えて、シトラールを水素化した。その結果を表12に示す。
(3)反応時間と選択率
H2(MPa)=4、PCO2(MPa)=12で、反応時間を変えて、シトラールを水素化した。その結果を表13に示す。
(4)反応温度と選択率
H2(MPa)=4、PCO2(MPa)=12で、温度を変えてシトラールを水素化した。その結果を表14に示す。
(5)総圧力と選択率
H2(MPa)とPCO2(MPa)の総圧力を一定として圧力比を、シトラールを水素化した。その結果を表15に示す。
本実施例は参考例として示した参考実施例(参考例)であり、アクロレインの水素化を行った。
種々の触媒を用いて、COの圧力を変えて、アクロレインを水素化した。その結果を表16に示す。
本実施例は参考例として示した参考実施例(参考例)であり、クロトンアルデヒドの水素化を行った。
CO圧力と触媒を変えて、クロトンアルデヒドを水素化した。その結果を表17に示す。
本実施例は参考例として示した参考実施例(参考例)であり、シンナムアルデヒドの水素化を行った。
Ru−Pt担持触媒MCM−48触媒を用いて、CO圧力を変えて、シンナムアルデヒドを水素化した。その結果を表18に示す。
以上詳述したように、本発明は、シトラール水素化物の製造方法に係るものであり、本発明により、シトラールを、亜臨界ないし超臨界状態の二酸化炭素を反応媒体として、例えば、メソポーラス担体にPtを担持したメソポーラス担体担持Pt触媒の存在下で、選択的に水素化並びに異性化反応を行うことにより、トランス−ゲラニオールを合成するシトラール水素化物の合成方法を提供することができる。本発明により、ゲラニオールを、高転化率及び高選択率で合成し、提供することが可能となる。本発明により、生成物のトランス異性体の比を選択的に高めることができる。また、本発明は、触媒が不活性化することはなく、触媒を何度も再使用することが可能であり、生成物を、触媒及び反応媒体から容易に分離・精製することが可能な、シトラールの水素化反応によるゲラニオールの合成方法を提供することができる。本発明の、有機溶媒を使用しない、触媒の不活性化が生じない合成方法により、廃液、廃物等の処理を必要としない、環境に優しいゲラニオールの合成方法を提供することができる。本発明は、合成香料、化粧品、薬品及びファインケミカル等の技術分野において、原料又は反応中間体として有用なグラニオールの比を選択的に高めた高ゲラニオール含有シトラール水素化物を合成し、提供するものとして有用である。
シトラールの水素化反応による生成物を示す。 Pt一元金属触媒の存在下での二酸化炭素圧力と選択率及び転化率の関係を示す。 Pt−Ru二元金属触媒の存在下での二酸化炭素圧力と選択率及び転化率の関係を示す。 Pt−Ru二元金属触媒の存在下でのRu/Pt原子比とシトロネラール選択率の関係を示す。 Pt一元金属触媒の存在下での反応時間と選択率及び転化率の関係を示す。 Pt−Ru二元金属触媒の存在下での反応時間と選択率及び転化率の関係を示す。 Pt一元金属触媒の存在下での水素圧力と選択率及び転化率の関係を示す。 Pt−Ru二元金属触媒の存在下での水素圧力と選択率及び転化率の関係を示す。 反応媒体と選択率及び転化率の関係を示す。 アクロレインの水素化とその生成物を示す。 クロトンアルデヒドの水素化とその生成物を示す。 シンナムアルデヒドの水素化とその生成物を示す。

Claims (7)

  1. 超臨界又は亜臨界二酸化炭素中で、水素及び担持貴金属触媒存在下にシトラールを水素化、あるいは水素化並びに異性化してシトラール水素化物製造する方法であって、
    1)担持体が、メソボーラスな多孔質体であり、2)担持される貴金属が、白金、あるいは白金及びルテニウムの二元系金属であり、3)シトラール水素化物が、ゲラニオール、ネロール、シトロネラール、又はシトロネロールであることを特徴とするシトラール水素化物の製造方法。
  2. ゲラニオールを、98:2を上回るゲラニオール/ネロールの比率で製造する、請求項1に記載のシトラール水素化物の製造方法。
  3. 二酸化炭素圧が、10〜12MPaである請求項1又は2記載のシトラール水素化物の製造方法。
  4. 水素圧が、3〜5MPaである請求項1又は2記載のシトラール水素化物の製造方法。
  5. 白金とルテニウムのモル比が、7:3〜6:4である請求項1から4のいずれかに記載のシトラール水素化物の製造方法。
  6. 反応後、回収した担持貴金属触媒を繰り返し使用する請求項1からのいずれかに記載のシトラール水素化物の製造方法。
  7. 反応温度が、50〜80℃である請求項1からのいずれかに記載のシトラール水素化物の製造方法。
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