JP2006137740A - シトラール水素化物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】亜臨界ないし超臨界状態の二酸化炭素を反応媒体として、水素及び担持貴金属触媒の存在下にシトラールを水素添加することからなるシトラール水素化物の製造方法。
【効果】高ゲラニオール含有シトラール水素化物を製造し、提供することができる。
【選択図】図9
Description
(1)超臨界又は亜臨界二酸化炭素中で、水素及び担持貴金属触媒存在下にシトラールを水素添加することを特徴とするシトラール水素化物の製造方法。
(2)担持体が、メソボーラスな多孔質体である前記(1)記載のシトラール水素化物の製造方法。
(3)担持される貴金属が、白金である前記(1)記載のシトラール水素化物の製造方法。
(4)担持される貴金属が、白金及びルテニウムの二元系金属である前記(1)記載のシトラール水素化物の製造方法。
(5)シトラール水素化物が、3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−オールである前記(1)記載のシトラール水素化物の製造方法。
(6)シトラール水素化物が、(E)−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−オールである前記(5)記載のシトラール水素化物の製造方法。
(7)担持される貴金属が、白金である前記(5)又は(6)記載のシトラール水素化物の製造方法。
(8)二酸化炭素圧が、10〜12MPaである前記(5)、(6)又は(7)記載のシトラール水素化物の製造方法。
(9)水素圧が、3〜5MPaである前記(5)、(6)又は(7)記載のシトラール水素化物の製造方法。
(10)シトラール水素化物が、3,7−ジメチル−6−オクテン−1−アールである前記(1)記載のシトラール水素化物の製造方法。
(11)担持される貴金属が、白金及びルテニウムの二元系金属である前記(10)記載のシトラール水素化物の製造方法。
(12)白金とルテニウムのモル比が、7:3〜6:4である前記(10)記載のシトラール水素化物の製造方法。
(13)二酸化炭素圧が、10〜14MPaである前記(10)、(11)又は(12)記載のシトラール水素化物の製造方法。
(14)水素圧が、3〜5MPaである前記(10)、(11)又は(12)記載のシトラール水素化物の製造方法。
(15)反応後、回収した担持貴金属触媒を繰り返し使用する前記(1)から(14)のいずれか1項に記載のシトラール水素化物の製造方法。
(16)反応温度が、50〜80℃である前記(1)から(15)のいずれか1項に記載のシトラール水素化物の製造方法。
本発明は、亜臨界ないし超臨界状態の二酸化炭素を反応媒体として、水素及び担持貴金属触媒の存在下で、原料のシトラールを水素添加することにより高転化率及び高選択率でシトラール水素化物を合成するものである。本発明においては、シトラール水素化物とは、シトラールを水素添加することによって選択的に得られることがあるゲラニオールネロール及びシトロネラールを包括する概念を意味するものとして定義される。
本実施例では、1%Pt溶液を、活性剤とシリカ前駆体の混合物中に添加することによりPt一元触媒を作製した。シリコン源として、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)(純度95%、和光純薬製)を、Pt源として、塩化Pt(純度98.5%、アルドリッチ社製)を使用し、臭化セチルトリメチルアンモニウム(純度99%、メルク社製)を、メソ多孔質構造を形成するための、テンプレートとして使用した。テンプレート2.39%、NaOH0.33g、及び27gの脱イオン水からなる組成を有する出発ゲル中に、Pt溶液、及びTEOS(5.0g)を撹拌下に、加え、更に、撹拌を2時間続けた。最後に、生成したゲルは、413Kで、48時間オートクレーブで処理した。生成したゲルの組成は、モル比で、TEOS 1、CTVA 0.27、Na2O 0.34、H2O 62.5であった。生成物を、濾過し、乾燥した後、823Kで10時間焼成して、Pt一元金属触媒を作製した。なお、Pt−Ru二元金属触媒については、Ru源として、ルテニウムアセチルアセトン(純度97%、アルドリッチ社製)を用いて、一元金属触媒と同様にして作製した。触媒中の金属成分は、Pt触媒で1%、Pt−Ru触媒で3.5%以下であった。
本実施例では、出発原料のシトラール(シス,トランス比 4:6)をゲラニオールへ変換するために、scCO2を反応溶媒とするシトラールの水素化反応を、ステンレス製のバッチ式反応器(50ml)中で行った。0.1gの触媒と反応基質6.5モルを反応器に入れた。反応器をシールし、2MPaのCO2で、2回フラッシュして、反応器中の空気を除去した。フラッシュの後、反応器における反応温度323Kに保持した。前述した量の水素を反応器に注入した。液状CO2を、高圧液状ポンプにより反応器に導入し、所定の圧力に加圧し、反応圧を、背圧弁で制御した。反応容器中の、水素と反応混合物は、絶えずテフロン(登録商標)製の撹拌棒で撹拌した。所定の反応条件で反応した後、反応器を氷水で冷却し、次いで、注意深く減圧した。液状の反応混合物を、GC/MSで同定し、GC(HP5890)で定量した。生成物の含有率を検量線により求めた。触媒の再使用を検討する際には、触媒を反応生成物から分離し、これを新しい反応原料中に加えて再度反応を実施した。なお、有機溶媒中での水素化反応の検討では、scCO2の代わりに、10mlの有機溶媒を使用して行った。
図2に、本発明の、Pt−MCM−48触媒の活性について示す。図2には、Pt触媒を、323Kで、シトラールの水素化反応に使用した場合のCO2圧の影響が示されている。4MPaの水素の存在下、2時間の水素化反応では、シトラールからゲラニオールへの反応経路(経路I)が、シトラールからシトロネラールへの反経路(経路II)よりも優先した。CO2の圧力を、6から10MPaに上昇すると、ゲラニオールの選択性は、15%から90%へと増加するが、以後、その値は減少した。ゲラニオールの選択性は、CO2圧(又はCO2密度)と共に変化した。例えば、CO2圧が、8から10MPaへと上昇すると、密度は、520.8から708.3kg/m3に増加することから、CO2の圧力が選択率に影響することが示された。表面に露出する金属Ptが存在することは、C=O結合の水素化に好ましく、これらの反応条件の下では、イソプレゴール、環化生成物等の副生物の生成はないことが分かった。本実施例により、高転化率、高選択率でトランス−ゲラニオールを合成し、ゲラニオール+ネロールの混合物におけるゲラニオール/ネロールの比 98:2の結果が得られた。
図3に、Pt−Ru二元金属触媒を使用し、scCO2中で、323K、2時間の反応条件下に、シトラールの水素化反応行った結果を示す。Ptに加え、更にRuを担持することにより、水素化反応の主生成物は、シトネラールへと変化した。12MPaのscCO2下では、シトロネラールの選択率が80%、転化率が90%となった。即ち、PtへRuを更に担持すると、反応経路はIからIIへと変化し、転化率と選択率はPt−Ruの比と共に増加し、30%のRu含有率で選択率は極大値となった(図4)。このように、Ruは、この反応において、重要な役割を果たすことが分かった。この結果は、従来知られていた、ケイ皮アルデヒドの水素化反応の結果とは対照的であり、シトラールの水素化反応では、C=O結合よりもC=C結合の水素化反応が優先される。Pt−Ru二元金属触媒では、CO2圧が、6から12MPaに上昇すると、シトラールの転化率は8から80%、選択率は、70から90%へと増加する。
これらの2種類の触媒では、選択率は極大値を有する。この現象は、溶質と、圧力による密度変化にともなって、反応分子と遷移状態のCO2との平均距離が変化することによる。このことは、超臨界の流体の密度が変化すると、化学平衡が変化し、反応の活性、選択性をも変化することになる。図5及び図6に、Pt触媒及びPt−Ru触媒の存在下、323Kで行った、シトラールの水素化反応の、反応時間、転化率及び選択率の関係を示す。反応速度は、反応初期では速く、その後は定常状態に達する傾向を示し、同じ反応時間で対比すると、Pt−Ru触媒の方がPt触媒よりもシトラールの転化率が高いことが分かった。図5は、Pt触媒では、反応経路Iによる反応が進行し、Pt−Ru触媒では、反応経路IIによる反応が進行することを示す。scCO2中では、Pt触媒は、C=O結合が,C=C結合より優先して水素化されることが分かった。
本発明のシトラールの水素化反応は、水素圧が、転化率及び選択率へ影響する。図7及び図8の結果は、Pt一元金属触媒及びPt−Ru二元金属元触媒は、共に、水素圧の上昇と共に転化率が増加することを示している。scCO2が、水素溶解性が良好であることにより、通常の有機溶媒と比較して、転化率が向上している。他方、図8は、H2圧を、2MPaから6MPaに上げると、ゲラニオールの選択率が、5から33.4%へと増加すると同時に、転化率も増加することを示している。シトラールの水素化反応は、いくつかの反応経路からなっているが、水素圧が変化すると、各反応の反応速度が影響されるため、水素圧が上昇すると、ある反応が他の反応より優先して進行することがあり、この場合には、scCO2中で、ゲラニオールの生成反応が優先されたことにより、選択率が改善されている。
本発明において、scCO2を、水素化反応の反応媒体として使用する反応と、有機溶媒又は無溶媒を使用した反応との、反応率及び選択率の値を対比すると、図9に示すように、scCO2中では、Pt一元金属触媒では、ゲラニオールが圧倒的な生成物であるのに対し、有機溶媒中では、シトロネラ−ルに対して選択的であり、ゲラニオールは、ほとんど生成しなかった。こうした、Pt触媒の、scCO2中での特徴は、水素の利用可能性の相違に基づくと考えられる。液相中でのSiO2を担体とする水素化反応は、水素圧に対する1次反応であり、scCO2媒体では、水素を効率的に利用できることにより、不飽和アルデヒドから対応する不飽和アルコールへの反応が、迅速に、連続して進行するものと考えられる。
(1)CO2圧力と選択率
PH2(MPa)=4で、CO2圧力を変えて、シトラールを水素化した。その結果を表3に示す。
同様に、PCO2(MPa)=14で、H2圧力を変えて、シトラールを水素化した。その結果を表4に示す。
同様に、PH2(MPa)=4、PCO2(MPa)=14に固定して、反応時間を変えて、シトラールを水素化した。その結果を表5に示す。
同様に、PH2(MPa)=4で、種々の有機溶媒中でシトラールを水素化した。その結果を表6に示す。
PH2(MPa)=4、PCO2(MPa)=14で、反応温度を変えて、シトラールを水素化した。その結果を表7に示す。
PCO2(MPa)とPH2(MPa)の総圧力を一定にしてそれらの圧力比を変えて、シトラールを水素化した。その結果を表8に示す。
PH2(MPa)=4で、CO2圧力を変えて、シトラールを水素化した。アイソマー(ゲラニオール及びネロール)の選択率を表9に示す。
PH2(MPa)=4、PCO2(MPa)=14で、反応時間を変えて、シトラールを水素化した。その結果を表10に示す。
(1)CO2圧力と選択率
PH2(MPa)=4で、CO2の圧力を変えて、シトラールを水素化した。その結果を表11に示す。
PCO2(MPa)=12で、H2の圧力を変えて、シトラールを水素化した。その結果を表12に示す。
PH2(MPa)=4、PCO2(MPa)=12で、反応時間を変えて、シトラールを水素化した。その結果を表13に示す。
PH2(MPa)=4、PCO2(MPa)=12で、温度を変えてシトラールを水素化した。その結果を表14に示す。
PH2(MPa)とPCO2(MPa)の総圧力を一定として圧力比を、シトラールを水素化した。その結果を表15に示す。
種々の触媒を用いて、CO2の圧力を変えて、アクロレインを水素化した。その結果を表16に示す。
CO2圧力と触媒を変えて、クロトンアルデヒドを水素化した。その結果を表17に示す。
Ru−Pt担持触媒MCM−48触媒を用いて、CO2圧力を変えて、シンナムアルデヒドを水素化した。その結果を表18に示す。
Claims (16)
- 超臨界又は亜臨界二酸化炭素中で、水素及び担持貴金属触媒存在下にシトラールを水素添加することを特徴とするシトラール水素化物の製造方法。
- 担持体が、メソボーラスな多孔質体である請求項1記載のシトラール水素化物の製造方法。
- 担持される貴金属が、白金である請求項1記載のシトラール水素化物の製造方法。
- 担持される貴金属が、白金及びルテニウムの二元系金属である請求項1記載のシトラール水素化物の製造方法。
- シトラール水素化物が、3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−オールである請求項1記載のシトラール水素化物の製造方法。
- シトラール水素化物が、(E)−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−オールである請求項5記載のシトラール水素化物の製造方法。
- 担持される貴金属が、白金である請求項5又は請求項6記載のシトラール水素化物の製造方法。
- 二酸化炭素圧が、10〜12MPaである請求項5、請求項6又は請求項7記載のシトラール水素化物の製造方法。
- 水素圧が、3〜5MPaである請求項5、請求項6又は請求項7記載のシトラール水素化物の製造方法。
- シトラール水素化物が、3,7−ジメチル−6−オクテン−1−アールである請求項1記載のシトラール水素化物の製造方法。
- 担持される貴金属が、白金及びルテニウムの二元系金属である請求項10記載のシトラール水素化物の製造方法。
- 白金とルテニウムのモル比が、7:3〜6:4である請求項10記載のシトラール水素化物の製造方法。
- 二酸化炭素圧が、10〜14MPaである請求項10、請求項11又は請求項12記載のシトラール水素化物の製造方法。
- 水素圧が、3〜5MPaである請求項10、請求項11又は請求項12記載のシトラール水素化物の製造方法。
- 反応後、回収した担持貴金属触媒を繰り返し使用する請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のシトラール水素化物の製造方法。
- 反応温度が、50〜80℃である請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のシトラール水素化物の製造方法。
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