JP4550682B2 - 光記録媒体及び光記録媒体の光記録方法 - Google Patents

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Description

本発明は光記録媒体等に関し、より詳しくは、色素を含有する記録層を有する光記録媒体等に関する。
近年、超高密度の記録が可能となる青色レーザの開発は急速に進んでおり、それに対応した追記型の光記録媒体の開発が行なわれている。中でも、比較的安価のコストで効率的な生産が可能となる色素塗布型の追記型媒体の開発が強く望まれている。従来の色素塗布型追記型の光記録媒体では、色素を主成分とする有機化合物からなる記録層にレーザ光を照射し、有機化合物の分解・変質による光学的(屈折率・吸収率)変化を主に生じさせることで記録ピットを形成させている。記録ピット部は、光学的変化のみならず、通常は、記録層体積変化による変形、発熱による基板と色素の混合部形成、基板変形(主として基板膨張による盛り上がり)等を伴う(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
記録層に用いられる有機化合物の記録・再生に用いるレーザ波長に対する光学的挙動、分解・昇華及びこれに伴う発熱等の熱的挙動が良好な記録ピットを形成させるための重要な要素となっている。したがって、記録層に用いる有機化合物は、光学的性質、分解挙動の適切な材料を選択する必要がある。
そもそも、従来型の追記型媒体、特に、CD−RやDVD−Rでは、Al、Ag、Au等の反射膜を基板上にあらかじめ形成した凹上ピットに被覆してなる再生専用の記録媒体(ROM媒体)との再生互換を維持することを目的とし、概ね60%以上の反射率と、同様に、概ね60%を超える高変調度を実現することを目的としている。先ず、未記録状態で高反射率を得るために、記録層の光学的性質が規定される。通常は、未記録状態で屈折率nが約2以上、消衰係数が0.01〜0.3程度の値が要求される(特許文献5、特許文献6参照)
色素を主成分とする記録層では、記録によるかかる光学的性質の変化だけでは、60%以上もの高変調度をえることが困難である。即ち、屈折率nと吸収率kの変化量が有機物である色素では限りがあるので、平面状態での反射率変化には限りがある。
そこで、記録ピット部と未記録部の反射光の位相差による量部分からの反射光の干渉効果を用いて、記録ピット部分での反射率変化(反射率低下)を見かけ上大きくする方法が利用されている。つまり、ROM媒体のような位相差ピットと同様の原理が用いられており、屈折率変化が無機物より小さい有機物記録層の場合、むしろ、位相差による反射率変化が主として用いることが有利であることが報告されている(特許文献7参照)。また、上記の記録原理を総合的に考慮した検討が行われている(非特許文献1参照)。
以下、以上のように記録された部分(記録マーク部と言われることがある。)を、その物理的な形状によらず、記録ピット、記録ピット部あるいは記録ピット部分と称す。
図1は、従来構成の色素を主成分とする記録層を有する追記型媒体(光記録媒体10)を説明する図である。図1に示すように、光記録媒体10は、溝を形成した基板11上に少なくとも記録層12と反射層13、保護コート層14をこの順に形成してなり、対物レンズ18を用いて、基板11を介して記録再生光ビーム17を入射し、記録層12に照射する。基板11の厚みは、1.2mm(CD)又は0.6mm(DVD)が通常用いられる。また、記録ピットは、記録再生光ビーム17が入射する面19から見て近い側で、通常の溝と呼ばれる基板溝部16の部分に形成され、遠い側の基板溝間部15には形成されない。
前述したこれらの公知文献において、位相差変化は、色素を含む記録層12の記録前後の屈折率変化もできる限り大きくする一方で、記録ピット部の形状変化、即ち、溝内に形成された記録ピット部で、局所的に溝形状が変化する(基板11が膨らむ、あるいは、陥没することで溝深さが等価的に変化する)、膜厚が変化する(記録層12の膨張、収縮による膜厚の透過的な変化)効果が位相差変化に寄与することも報告されている。
上記のような記録原理においては、未記録時の反射率を高め、またレーザの照射によって有機化合物が分解し、大きな屈折率変化が生じるようにするため(これによって大きな変調度が得られる)、通常は、記録再生光波長は大きな吸収帯の長波長側の裾に位置するように選択される。これは、大きな吸収帯の長波長側の裾では、適度な消衰係数を有し、かつ大きな屈折率が得られる波長領域となるためである。
しかしながら、青色レーザ波長に対する光学的性質が従来並みの値を有する材料は見出されていない。特に、現在実用化されている青色半導体レーザの発振波長の中心である405nm近傍においては、従来の追記型光記録媒体の記録層に要求される光学定数と同程度の光学定数を有する有機化合物がほとんど存在せず、いまだ、探索の段階である。さらに、従来の色素記録層を有する追記型光記録媒体では、記録再生光波長近傍に色素の主吸収帯が存在するため、その光学定数の波長依存性が大きくなり(波長によって光学定数が大きく変動する)、レーザの個体差や、環境温度の変化等による記録再生光波長の変動に対し、記録感度や変調度、ジッター(Jitter)やエラ−率等の記録特性や、反射率等が大きく変化するという問題がある。
例えば、405nm近傍に吸収を有する色素記録層を用いた記録のアイデアが報告されているが、そこに用いられる色素は、従来と同じ光学特性及び機能が要求されており、ひとえに、高性能な色素の探索発見に依存している(特許文献8、特許文献9参照)。次いで、図1に示すような、従来の色素を主成分とする記録層12を用いた追記型の光記録媒体10では、溝形状及び記録層12の基板溝部16と基板溝間部15の厚みの分布も適正に制御しなければならないこと等が報告されている(特許文献10、特許文献11、特許文献12参照)。
即ち、上述のように高反射率の確保の点から、記録再生光波長に対し、比較的小さな消衰係数(0.01〜0.3程度)を持つ色素しか使用することができない。そのため、記録層12において記録に必要な光吸収を得るために、また、記録前後の位相差変化を大きくするために、記録層12の膜厚を薄膜化することが不可能である。その結果、記録層12の膜厚は、通常、λ/(2n)(nは基板11の屈折率)程度の厚みが用いられ、記録層12に用いる色素を溝に埋め込み、クロストークを低減するために、深い溝を持った基板11を使用する必要がある。色素を含む記録層12は、通常スピンコート法(塗布法)によって形成されるため、色素を深い溝に埋めて、溝部の記録層12を厚膜化することは、かえって都合がよい。他方、塗布法では、基板溝部16と基板溝間部15の記録層膜厚に差が生じるが、かかる記録層膜厚の差が生じることは、深い溝を用いても安定してトラッキングサ−ボ信号を得ることに有効である。
つまり、図1の基板11表面で規定される溝形状と、記録層12と反射層13との界面で規定される溝形状とは、これら双方を適正な値に保たなければ、記録ピット部での信号特性とトラッキング信号特性の両方を良好に保つことができない。溝の深さは、通常、λ/(2n)(λは記録再生光ビーム17の波長、nは基板11の屈折率)近くとする必要があり、CD−Rでは200nm程度、DVD−Rでは150nm程度の範囲としている。このような、深い溝を有する基板11の形成が非常に難しくなり、光記録媒体10の品質を低下させる要因になっている。
特に、青色レーザ光を用いる光記録媒体では、λ=405nmとすれば、100nm近い深い溝が必要となる一方で、高密度化のためにトラックピッチを0.2μm〜0.4μmとすることが多い。かかる狭トラックピッチで、そのように深い溝を形成することは尚さら困難が伴い、実際上、従来のポリカーボネート樹脂では量産は不可能に近い。即ち、青色レーザ光を用いる媒体では、従来構成では、量産化が困難となる可能性が高い。
さらに、上記公報における実施例の多くは、従来のディスク構成を示した図1での例であるが、青色レーザを用いた高密度記録を実現するために、いわゆる膜面入射と呼ばれる構成が注目されており、相変化型記録層等の無機材料記録層を用いた構成が報告されている(非特許文献3参照)。膜面入射と呼ばれる構成においては、従来とは逆に、溝を形成された基板上に、少なくとも反射膜、記録層、カバー層をこの順に形成してなり、カバー層を介して記録・再生用の集束レーザ光を入射し、記録層に照射する。カバー層の厚みは、いわゆるブルーレイ・ディスク(Blu−Ray)では、100μm程度が通常用いられる(非特許文献9)。このような薄いカバー層側から、記録再生光を入射するのは、その集束のための対物レンズに従来のより高開口数(NA(開口数)、通常は0.7〜0.9、ブルーレイ・ディスクでは0.85)を用いるためである。高NA(開口数)の対物レンズを用いた場合、カバー層の厚みによる収差の影響を小さくするために、100μm程度という薄さが必要となる。このような青色波長記録、膜面入射層構成をとりあげた例は数多く報告されている(非特許文献4参照、特許文献13〜特許文献24参照)。また、関連する技術についても多くの報告がある(非特許文献5〜非特許文献8参照、特許文献25〜特許文献36参照)。
「プロシ−ディングス・オブ・インタ−ナショナル・シンポジウム・オン・オプチカル・メモリ(Proceedings of International Symposium on Optical Memory)」、(米国)、第4巻、1991年、p.99−108 「ジャパニ−ズ・ジャ−ナル・オブ・アプライド・フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics)」、(日本国)第42巻、2003年、p.834−840 「プロシ−ディングス・オブ・エスピ−アイイ−(Proceedings of SPIE)」、(米国)、第4342巻、2002年、p.168−177 「ジャパニ−ズ・ジャ−ナル・オブ・アプライド・フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics)」、(日本国)、第42巻、2003年、p.1056−1058 中島平太郎・小川博共著、「コンパクトディスク読本」改訂3版、オ−ム社、平成8年、p.168 「ジャパニ−ズ・ジャ−ナル・オブ・アプライド・フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics)」、(日本国)、第42巻、2003年、p.914−918 「ジャパニ−ズ・ジャ−ナル・オブ・アプライド・フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics)」、(日本国)、第39巻、2000年、p.775−778 「ジャパニ−ズ・ジャ−ナル・オブ・アプライド・フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics)」、(日本国)、第42巻、2003年、p.912−914 「光ディスク解体新書」、日経エレクトロニクス編、日経BP社、2003年、第3章 藤原裕之著、「分光エリプソメトリ−」、丸善出版社、平成15年、第5章 アィフォンス ブイ ポシウス(Alphonsus V.Pocius)著、水町浩、小野拡邦訳「接着剤と接着技術入門」、日刊工業新聞社、1999 特開平2−168446号公報 特開平2−187939号公報 特開平3−52142号公報 特開平3−63943号公報 特開平2−87339号公報 特開平2−132656号公報 特開昭57−501980号公報 国際公開01/74600号パンフレット 特開2002−301870号公報 特開平3−54744号公報 特開平3−22224号公報 特開平4−182944号公報 特開2003−331465号公報 特開2001−273672号公報 特開2004−1375号公報 特開昭59−19253号公報 特開平8−138245号公報 特開2004−30864号公報 特開2001−273672号公報 特開2002−245678号公報 特開2001−155383号公報 特開2003−303442号公報 特開2002−367219号公報 特開2003−16689号公報 特開平5−128589号公報 特開平5−174380号公報 特開平6−4901号公報 特開2000−43423号公報 特開2001−287466号公報 特開2003−266954号公報 特開平9−277703号公報 特開平10−26692号公報 特開2000−20772号公報 特開2001−155383号公報 特開平11−273147号公報 特開平11−25523号公報 特開2003−217173号公報 特開2004−86932号公報 特開2004−98542号公報 特開2004−160742号公報 特開2003−217177号公報 特開2001−331936号公報 国際公開03/003361号パンフレット 特表2005−504649号公報
ところで、開発の先行する膜面入射型の相変化型媒体では、入射光側から見たカバー層溝部に記録マークを形成する。これは、入射光側から見れば、従来の基板上の基板溝部への記録と同じであり、CD−RW、DVD−RWとほとんど同じ層構成で実現できることを意味し、実際、良好な特性が得られている。他方、色素を主成分とする記録層、特に塗布型の場合、カバー層溝部への記録は容易ではない。通常、基板上のスピンコートでは、基板における溝部に、色素がたまりやすいからである。たとえ、基板溝間部に色素が適当な膜厚塗布されたとしても、通常は、基板溝部にも相当量の色素がたまる為、カバー層溝部に形成した記録ピット(記録マーク)が、カバー層溝間部にもはみ出しやすく、このため、クロストークが大きくなるトラックピッチが詰められないため、高密度化に限度がある。
しかし、前述した公知文献においては、ほとんどが、従来どおり、入射光側からみて近い側のカバー層溝部への記録により反射光強度が低下することを主眼としている。あるいは、溝部の段差による反射光の位相の変化を考慮しない単に平面状態でおきる反射率低下に注目している。あるいは、位相差を極力使わない平面状態での反射率変化を利用することを前提としている。このような前提条件では、カバー層溝部記録でのクロストークの問題は解決できず、溶液塗布による記録層形成プロセスになじまない。位相変化を有効に活用してカバー層溝間部への良好な記録特性を実現しているとはいえない。特に、マーク長変調記録において、最短マーク長から最長マーク長までの全マーク長に対して、実用的な記録パワーマ−ジンを有し、良好なジッター(Jitter)特性を実現した例はない。
このように、いまだ、従来のCD−R、DVD−Rに匹敵する高性能、低コストの色素を主成分とする記録層を有する青色レーザ対応、膜面入射型追記型媒体は知られていないのが現状である。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものである。
即ち、本発明の目的は、安定に成形できる比較的浅い溝深さの基板を用いて、良好な記録再生特性を有する極めて高密度の光記録媒体を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、良好な記録再生特性が得られる光記録媒体の光記録方法を提供することにある。
そこで本発明者等は、膜面入射構成を有する光記録媒体において、高容量化が可能で、且つ色素を主成分とする記録層を有し、量産性に優れた塗布型媒体について鋭意検討を行った結果本発明に到達した。
即ち、本発明によれば、案内溝が形成された基板と、基板上に、少なくとも、光反射機能を有する層と、未記録状態において記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分として含有する記録層と、記録層に対して記録再生光が入射するカバー層と、をこの順に具え、記録再生光を集束して得られる記録再生光ビームがカバー層に入射する面から遠い側の案内溝部を記録溝部とするとき、記録溝部に形成された記録ピット部の反射光強度が、記録溝部における未記録時の反射光強度より高くなり、記録溝部の未記録時における記録層膜厚d が5nm以上50nm未満であることを特徴とする光記録媒体が提供される。
本発明が適用される光記録媒体によれば、極めて高密度な情報が記録され、これらの記録された情報に基づき、良好な記録再生特性を得ることができる。
ここで、本発明が適用される光記録媒体において、記録溝部に形成された記録ピット部の反射光強度が、記録ピット部における反射光の位相変化により増加することを特徴としている。
また、本発明が適用される光記録媒体においては、光反射機能を有する層の記録層側の界面を反射基準面とし、記録溝部における反射基準面までの往復光路長と記録ピット部を形成しない案内溝部である記録溝間部における反射基準面までの往復光路長との差によって生じる位相差Φbが、0<|Φb|<πであり、記録溝部に記録ピット部が存在する場合の位相差Φaが、0<|Φa|<πであり、且つ、|Φb|>|Φa|であることを特徴とするものである。
さらに、本発明が適用される光記録媒体においては、反射基準面で規定される記録溝部と記録溝間部との段差dGLと、記録層の未記録時の記録再生光波長λにおける屈折率nと、カバー層の記録再生光波長λにおける屈折率nと、記録溝部の未記録時における記録層膜厚dと、記録溝間部の未記録時における記録層膜厚dと、の関係が、
(λ/8)≦|(n−n)・(d−d)+n・dGL|≦(15/64)・λであることを特徴としている。
次に、本発明を方法のカテゴリーとして把握すると、案内溝が形成された基板上に、少なくとも、光反射機能を有する層と、未記録時に記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分とする記録層と、カバー層とが順次積層された構造を有する光記録媒体に、カバー層側から記録再生光を入射して記録再生を行う光記録媒体の光記録方法であって、記録再生光を集束して得られる記録再生光ビームがカバー層に入射する面から遠い側の案内溝部を記録溝部するとき、記録溝部に形成した記録ピット部の反射光強度が記録溝部の未記録時の反射光強度より高くなり、記録溝部の未記録時における記録層膜厚d が5nm以上50nm未満であることを特徴とする光記録媒体の光記録方法が提供される。
かくして本発明によれば、良好な記録再生特性を有する極めて高密度な光記録媒体が得られる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態)について説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。
図2は、本実施の形態が適用される色素を主成分とする記録層を有する膜面入射構成の追記型媒体(光記録媒体20)を説明する図である。本実施の形態においては、溝を形成した基板21上に、少なくとも反射機能を有する層(反射層23)と、図2において後述するように、未記録(記録前)状態において記録再生光に対して吸収を有する色素を主成分とする光吸収機能を有する記録層22、及びカバー層24が順次積層された構造を有し、記録再生を、カバー層24側から対物レンズ28を介して集光された記録再生光ビーム27を入射して行う。即ち、「膜面入射構成」(Reverse stackともいう)をとる。以下においては、反射機能を有する層を単に「反射層23」、色素を主成分とする光吸収機能を有する記録層を単に「記録層22」と呼ぶ。前述したように、図1を用いて説明した従来構成を「基板入射構成」と呼ぶ。後述する図2で説明する膜面入射構成のカバー層24側に記録再生光ビーム27を入射するに当たり、高密度記録のために、通常、NA(開口数)=0.6〜0.9程度の高NA(開口数)の対物レンズが用いられる。記録再生光波長λは、赤色から青紫色波長(350nm〜600nm程度)がよく用いられる。さらに、高密度記録のためには、350nm〜450nmの波長域を用いることが好ましいが、必ずしもこれに限定されない。
本実施の形態においては、図2において、記録再生光ビーム27のカバー層24への入射面(記録再生光ビームが入射する面29)から見て遠い側の案内溝部(記録再生光ビームが入射する面から遠い側の案内溝部)を記録溝部とし、記録溝部に形成した記録ピット部の反射光強度が記録溝部の未記録時の反射光強度より高くなるような記録を行う。その主たるメカニズムは、反射光強度の増加が前記記録ピット部での反射光の位相変化による。即ち、記録溝部における反射光の往復光路長の記録前後で変化を利用する。
ここで、膜面入射型の光記録媒体20では、記録再生光ビーム27のカバー層24への入射面(記録再生光ビームが入射する面29)から遠い案内溝部(基板21の溝部と一致)をカバー層溝間部(in−groove)25、記録再生光ビーム27が入射する面29から近い案内溝間部(基板21の溝間部と一致)をカバー層溝部(on−groove)26と呼ぶことにする(on−groove、in−grooveの呼称は、非特許文献3による。)。
より具体的には、以下のような工夫をすることにより、本発明を実現することができる。
(1)未記録状態のカバー層溝間部からの反射光とカバー層溝部からの反射光の位相の差Φが、概ねπ/2〜πとなるような深さの溝を形成し、カバー層溝間部(in−groove)での記録層膜厚を該溝深さより薄くなるような薄膜とし、他方、カバー層溝部(on−groove)での膜厚がほとんどゼロとなる非常に薄い色素を主成分とする記録層22を設ける。該カバー層溝間部に、カバー層側から記録再生光ビームを照射して、該記録層に変質を生じさせ、主として位相変化による反射光強度の増加による記録ピットを形成する。膜面入射構造において、従来のon−groove、HtoL記録に比べ、塗布型色素媒体の性能が大幅に改善される。また、クロストークの小さな高トラックピッチ密度(例えば、0.2μm〜0.4μm)での記録が可能となる。また、そのような高トラックピッチの溝の形成が容易となる。
(2)記録層22として、未記録状態において比較的低屈折率(例えば屈折率が1.3〜1.9)、比較的高消衰係数(例えば、消衰係数が0.3〜1)の主成分色素を利用し、記録により、反射面の記録再生光入射側に屈折率が低下する記録ピット部を形成する。これにより、記録ピット部を通過した記録再生光の光路長が、記録前に比べて短くなる位相変化が起きる。つまり、光学的に記録溝部深さが浅くなるような変化が起きて、反射光強度が増加する。
従来の色素記録層を用いた記録媒体に比べ屈折率が低くてもよく、主吸収帯と記録再生光波長との相対関係に自由度が増し、特に、記録際再生光波長400nm近傍での記録に適した色素選択の幅が増える。
(3)記録ピット部での屈折率の低下に、記録層22内部もしくはその界面部での空洞形成を利用しても良い。また、記録層22がカバー層24方向に膨らむ変形をあわせて用いるのが好ましく、カバー層24の少なくとも記録層22側には、ガラス転移点が室温以下の粘着剤等からなる柔らかい変形促進層を形成して、前記変形を助長する。これにより、記録により反射光強度が増加するような位相変化の方向がそろう。(記録信号波形の歪が無くなる)かつ、比較的小さな屈折率変化でも位相変化量(記録信号振幅)を大きくできる。さらに、記録層の消衰係数の減少及び平面状態で生じる反射率変化による反射光強度の増加も合わせて用いることができる。
以上により、案内溝が形成された基板と、前記基板上に、少なくとも、光反射機能を有する層と、未記録状態において記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分として含有する記録層と、前記記録層に対して記録再生光が入射するカバー層と、をこの順に具え、前記記録再生光を集束して得られる記録再生光ビームが前記カバー層に入射する面から遠い側の案内溝部を記録溝部とするとき、前記記録溝部に形成された記録ピット部の反射光強度が、当該記録溝部における未記録部の反射光強度より高くなっている光記録媒体が実現でき、該記録ピット部から高変調度かつ歪みの無いLtoH極性の記録信号を得られるという特徴がある。
(4)上記の条件に加えて、記録層主成分色素の重量減少開始温度が300℃以下であり、かつ、未記録状態の複素屈折率の虚数部である消衰係数が0.3以上である色素を記録層として用いることにより、10m/s以上の高速記録におけるジッター特性を改善できる。
以下においては、記録再生光波長λにおける記録層の未記録状態(記録前)の光学特性は、複素屈折率n =n−i・kで表し、実部nを屈折率、虚部k消衰係数と呼ぶ。記録ピット部、即ち、記録後には、nがn’=n−δnに、kがk’=k−δkに変化するものとする。
さらに、以下で用いる反射率と反射光強度という2つの言葉の区別を説明する。反射率とは、平面状態で2種の光学特性の異なる物質間で生じる光の反射において、入射エネルギー光強度に対する、反射エネルギー光強度の割合である。記録層が平面状であっても、光学特性が変化すれば、反射率が変化する。一方、反射光強度は、集束された記録再生光ビームと対物レンズを介して記録媒体面を読んだときに、ディテクタ−上に戻ってくる光の強度のことである。
ROM媒体において、ピット部、未記録部(ピット周辺部)は同一の反射層で覆われているから、反射膜の反射率は、ピット部、未記録部で同じである。一方、ピット部で生じる反射光と未記録部の反射光との位相差のために、干渉効果によって、記録ピット部で反射光強度が変化して見える(通常は、低下して見える)のである。このような干渉効果は、記録ピットが局所的に形成され、記録再生光ビーム径内部に、記録ピット部とその周辺の未記録部が含まれている場合に、記録ピット部と周辺部との反射光が位相差によって干渉して起きる。一方、記録ピット部でなんらかの光学的変化を生じる記録可能媒体においては、凹凸がない平面状態であっても記録膜それ自体の屈折率変化によって、反射光率変化が生じる。これを、本実施の形態においては「平面状態で生じる反射率変化」という。言い換えると、記録膜平面全体が記録前の屈折率か記録後の屈折率かによって、記録膜に生じる反射率変化のことであり、記録ピットとその周辺部の反射光の干渉を考慮しなくても生じる反射光強度変化である。一方、記録層の光学的変化が局所的ピット部である場合、記録ピット部の反射光の位相と、その周辺部の反射光の位相が異なる場合に、反射光の2次元的干渉が生じて反射光強度が記録ピット周辺部で局所的に変化して見える。
このようにして、本実施の形態では、位相の異なる反射光の2次元的干渉を考慮しない反射光強度変化を「平面状態で生じる反射光強度変化」あるいは「平面状態の反射光強度変化」とし、記録ピットとその周辺部の位相の異なる反射光の2次元的干渉を考慮した反射光強度変化を「位相差によって生じる(局所的)反射光強度変化」、あるいは、「位相差による反射光強度変化」として、両者を区別して考える。
一般的に、「位相差による反射光強度変化」によって、十分な反射光強度変化、つまり、記録信号の振幅(あるいは、光学的コントラスト)を得ようとすると、記録層22自体の屈折率変化が、非常に大きくなければならない。例えば、CD−RやDVD−Rでは、色素記録層の記録前屈折率の実部が2.5〜3.0であり、記録後には、1〜1.5程度になることが求められる。また、色素記録層の記録前複素屈折率の虚部kは0.1程度よりは小さいことが未記録状態でのROM互換の高反射率を得る上で好ましいとされていた。また、記録層22の膜厚が50nm〜100nmと厚めであることが必要である。その程度の厚みが無いと大部分の光が記録層22内を通過してしまい、十分な反射光強度変化とピット形成に必要な光吸収が起こり得ないからである。このように厚い色素記録層ではピット部での変形による局所的位相変化は、補助的に用いられているに過ぎない。他方、前述のROM媒体では、記録ピット部での局所的屈折率変化はなく、「位相差による反射光強度変化」のみが検出されていると考えられる。良好な記録品質を得るためには、記録ピット分での反射光強度変化が、上記2種類の反射光強度変化が混合して起きる場合、両者が強めあうことが望ましい。2種類の反射光強度変化が強めあうとは、それぞれで生じる反射光強度の変化の方向、つまり、反射光強度が増加するか低下するか、が、そろっているということである。
上記のような記録層の屈折率低下は、「平面状態の反射光強度変化」において、反射率の低下、よって、反射光強度の低下をもたらす。従来のCD−R,DVD−Rでは、上記のようにこの屈折率変化は、1以上となり得るので、「平面状態の反射光強度変化」による反射率低下が、記録信号の振幅の相当部分を占める。従って、基本的に記録により反射率は低下する。また、補助的に利用される記録ピット部での「位相差による反射光強度変化」の方向が、反射率低下に寄与するように種々の検討がなされてきたといえる。他方、記録層色素の分解による消衰係数の低下は、反射率増加につながって、信号振幅をむしろ低下させるので、消衰係数の変化を小さくする必要がある。さらに、記録前反射率をROM媒体並みに高くするには、記録前の記録層の消衰係数を小さくすることが望ましい。よって、消衰係数は0.3、さらには、0.2以下と小さくすることを意図している。
次いで、反射基準面を先ず定義する。反射基準面としては、主反射面となる反射層の記録層側界面(表面)をとる。主反射面とは、再生反射光に寄与する割合が最も高い反射界面をさす。本実施の形態が適用される光記録媒体20を示す図2において、主反射面は記録層22と反射層23との界面にある。なぜなら、本実施の形態が適用される光記録媒体20において対象とする記録層22は、比較的薄く、且つその吸収率が低いために、大部分の光エネルギーは記録層22をただ通過し、反射面との境界に達しうるからである。尚、他にも反射を起こしうる界面があり、再生光の反射光強度は、各界面からの反射光強度と位相の全体の寄与で決まる。本実施の形態が適用される光記録媒体20では、主反射面での反射の寄与が大部分であるため、主反射面で反射する光の強度と位相だけを考慮すればよい。このため、主反射面を反射基準面とするのである。
本実施の形態においては、先ず、図2において、カバー層溝間部25へピット(マーク)を形成する。それは、主として製造が容易なスピンコート法で形成された記録層22を利用するためである。逆に、塗布法を利用することで、自然に、カバー層溝間部(基板溝部)25の記録層膜厚がカバー層溝部(基板溝間部)26の記録層膜厚より厚くなるとはいえ、その厚みが「平面状態の反射光強度変化変化」で、十分な反射光強度変化を得られるほどは厚くなく、主として、「干渉を考慮した反射光強度変化」により、これにより、比較的薄い記録層膜厚でかつ記録自体の屈折率変化が小さくてもカバー層溝間部25に形成されたピット部で大きな反射光強度変化(高変調度)が実現できるのである。
本実施の形態においては、記録ピット部における反射光の位相の変化により、図2の反射基準面で構成されるカバー層溝間部25とカバー層溝部26の段差が、記録後には記録前より光学的に浅く見えるような変化を生じさせることを特徴とする。その際に、トラッキングサ−ボを安定化させるために、先ず、プッシュプル信号の反転を生じさせず、かつ、記録前の反射光強度にくらべて記録後の反射光強度が増加するような位相変化を記録ピットにおいて生じさせる。
図2に示す本実施の形態が適用される膜面入射構成の光記録媒体20の層構成を、従来構成として説明した図1における基板入射構成の光記録媒体10と比較しながら説明する。ここで、図1に示す光記録媒体10及び図2に示す光記録媒体20の層構成を、反射基準面で反射される光の位相に注目して区別して説明するために、図1で基板溝部16へ記録する場合、図2でカバー層溝間部25、カバー層溝部26に記録する場合のそれぞれに対応して、図3、図4、図5を用いて検討を行う。
図3は、従来構成である図1の基板入射構成の基板11側から入射する記録再生光ビーム17の反射光を説明するための図である。
図4は、膜面入射型媒体(光記録媒体20)の層構成とカバー層溝間部25部に記録する場合の位相差を説明する図である。
図5は、膜面入射型媒体(光記録媒体20)の層構成とカバー層溝部26に記録する場合の位相差を説明する図である。
即ち、図4及び図5は、図2の膜面入射構成の光記録媒体20において、膜面入射構成のカバー層24の入射面28側から入射する記録再生光ビーム27の反射光を説明するための図である。図4が、本実施の形態が適用される光記録媒体20におけるカバー層溝間部(基板溝部)25にピットを形成する。図5は、本発明効果の対比説明のために、同じ膜面入射構成でありながら、カバー層溝部(基板溝間部)26にピットを形成する。
図3、図4、図5では、それぞれ、(a)が記録前、(b)が記録後の記録ピットを含む断面図である。以下において、記録ピットを形成するほうの溝ないし溝間部を、「記録溝部」、その間を「記録溝間部」と称する。即ち、従来構成の図3においては、基板溝部16が「記録溝部」であり、記録溝間部15が「記録溝間部」である。また、本発明に係る図4においては、カバー層溝間部25が「記録溝部」であり、カバー層溝部26が「記録溝間部」となる。他方、対比説明である図5においては、カバー層溝部26が「記録溝部」であり、カバー層溝間部25が「記録溝間部」となる。
先ず、記録溝部の反射光と記録溝間部の反射光の位相差を求めるに当たり、位相の基準面をA−A’で定義する。図3,図4,図5において、それぞれの未記録状態の図(a)においては、A−A’は、それぞれ、記録溝部における記録層12/基板11界面(図3(a))、記録溝間部における記録層22/カバー層24界面(図4(a))、記録溝部における記録層22/カバー層24界面(図5(a))に対応している。一方、図3,図4,図5の記録後状態の図(b)においては、A−A’は、それぞれ、記録溝部における記録層12(混合層16m)/基板11界面(図3(b))、記録溝間部における記録層22/カバー層24界面(図4(b))、記録溝部における記録層22(混合層26m)/カバー層24界面(図4(b))に対応している。A−A’面より手前(入射側)では、光路によって光学的な差は生じない。また、記録前の記録溝部における反射基準面をB−B’、記録前の基板21(図3)もしくはカバー層24(図4)の記録溝部底面(記録層12/基板11、記録層22/カバー層24界面)をC−C’で定義する。図3及び図5の記録前においては、A−A’とC−C’は一致する。
記録前の基板溝部での記録層厚みをd、基板溝間部での厚みをdとし、反射基準面での記録溝部と記録溝間部の段差をdGL、基板表面での記録溝間部の段差をdGLSとする。図3の場合には、dGLは、記録層12の記録溝部での埋り方に依存し、dGLSと異なる値となる。図4、図5の場合には、反射層23の記録溝部と記録溝間部での被覆具合によるが、通常は、反射層23は、記録溝部と記録溝間部でほぼ同じ膜厚となるので、基板21表面での段差がそのまま反映されるので、dGL=dGLSである。
基板11,21の屈折率をn、カバー層24の屈折率をnとする。記録ピットの形成により、一般的には、以下のような変化が生じる。記録ピット部16p,25p,26pにおいて記録層12,22の屈折率は、nからn’=n−δnに変化する。また、記録ピット部16p,25p,26pにおいて、記録層12,22その入射側界面において、記録層12と基板11もしくは基板21とカバー層24材料との間に混合が生じ、混合層が形成される。さらに、記録層12,22が体積変化を起こして、反射基準面(記録層/反射層界面)の位置が移動する。尚、通常は、有機物である基板11,21もしくはカバー層24材料と金属である反射層材料との間での混合層形成は無視できる程度である。そこで、記録層12/基板11(図1)、記録層22/カバー層24(図2)間で記録層12と基板11もしくは記録層22とカバー層24材料の混合がおき、厚さdmixの混合層16m,25m,26mが形成されるものとする。また、混合層16m,25m,26mの屈折率を、n’=n−δn(図3(b))、n’=n−δn(図4(b)、図5(b))とする。
この際、記録層12/基板11あるいは、記録層22/カバー層24界面は、C−C’を基準として、記録後は、dbmpだけ移動する。dbmpは図3,図4,図5に示すように、記録層12,22内部へ移動する方向を正とする。逆にdbmpが負であれば、記録層12,22がC−C’面を超えて、膨張することを意味する。また、もし、図3の記録層12/基板11、図4、図5の記録層22/カバー層24間に両者の混合を妨げる界面層を設けた場合には、dmix=0となりうる。但し、記録層12,22の体積変化によりdbmpの変形は生じうる。色素混合が起きない場合の基板21またはカバー層24のdbmp変形に伴う屈折率変化の影響は、小さく無視できると考えられる。
他方、記録溝部での反射基準面の移動量を記録前の反射基準面の位置B−B’を基準としてdpitとする。dpitは、図3,図4,図5に示すように、記録層12,22が収縮する方向(反射基準面が記録層12,22内部へ移動する方向)を正とする。逆にdpitが負であれば、記録層12,22がB−B’面を超えて、膨張することを意味する。記録後の記録層膜厚は、
Ga=d−dpit−dbmp (1)
となる。尚、dGL、d、d、dmix、n、n、n、dGaは、その定義及び、物理的特性から負の値をとらない。
このような記録ピットのモデル化や、以下で述べる位相の見積もり方法は公知の方法を用いた(非特許文献1)。
さて、位相の基準面A−A’における記録溝部と記録溝間部の再生光(反射光)の位相差を記録前と記録後で求める。記録前における記録溝部と記録溝間部の反射光の位相差をΦb、記録後、記録ピット部16p,25p,26pと記録溝間部の反射光の位相差をΦaとし、Φで総称する。いずれも、
Φ=Φb又はΦa
=(記録溝間部の反射光位相)−(記録溝部(記録後はピット部を含む)の位相) (2)
Φ=Φb又はΦa
=(2π/λ)・2・{(記録溝間部光路長)−(記録溝部(記録後はピット部を含む)の光路長)} (3)
として定義する。
ここで、(3)式において係数2が掛かっているのは、往復の光路長を考えるためである。
図3においては、
Φb=(2π/λ)・2・(n・dGL+n・d−n・d
=(4π/λ)・{n・dGL−n・(d−d)} (4)
Φa=(2π/λ)・2・{n・dGL+n・(dmix−dbmp)+n・d−〔(n−δn)・(d−dpit−dbmp)+(n−δn)・dmix〕}
=Φb+ΔΦ (5)
但し、
ΔΦ=(4π/λ){(n−n)・dbmp+n・dpit+δn・dmix+δn・(d−dpit−dbmp)} (6)
である。また、記録溝部が入射側から見て記録溝間部より手前にあるから、Φb>0である。
一方、図4においては、
Φb=(2π/λ)・2・{n・d−〔n・d+n・(d+dGL−d)〕}=(4π/λ)・{(n−n)・(d−d)−n・dGL} (7)
Φa=(2π/λ)・2・{(n・d−〔n・(d+dGL−d+dbmp−dmix)+(n−δn)・(d−dpit−dbmp)+(n−δn)・dmix〕}
=Φb+ΔΦ (8)
但し、
ΔΦ=(4π/λ){(n−n)・dbmp+n・dpit+δn・dmix
+δn・(d−dpit−dbmp)} (9)
である。また、記録溝部が入射側から見て記録溝間部より奥にあるから、Φb<0である。
さらに、図5においては、
Φb=(2π/λ)・2・{n・d+n・(d+dGL−d)−n・d
=(4π/λ)・{(n−n)・(d−d)+n・dGL} (10)
Φa=(2π/λ)・2・{n・d+n・(d+dGL−d)+n・(dmix−dbmp)−〔(n−δn)・(d−dpit−dbmp)+(n−δn)・dmix〕}
=Φb+ΔΦ (11)
但し、
ΔΦ=(4π/λ){(n−n)・dbmp+n・dpit+δn・dmix+δn・(d−dpit−dbmp)} (12)
である。また、記録溝部のほうが入射側から見て記録溝間部より手前にあるから、Φb>0である。
ΔΦが、記録により生じたピット部での位相変化であり、(12)式でdとdが入れかわっていることを除けば、いずれの場合も同じ式で表現できる。また、以後、Φb、Φb、Φbを総称してΦbで表し、Φa、Φa、Φaを総称してΦaであらわす。
ΔΦによって生じる信号の変調度mは、
m∝1−cos(ΔΦ)=sin(ΔΦ/2) (13)
≒(ΔΦ/2) (14)
となる。最右辺(14)はΔΦが小さい場合の近似である。
|ΔΦ|が大きければ、変調度は大きくなるのであるが、通常は、記録による位相の変化|ΔΦ|は、0からπの間にあり、通常はπ/2程度以下であると考えられる。実際上、従来のCD−R、DVD−Rをはじめとする従来の色素系記録層では、そのような大きな位相変化は報告されておらず、また、前述のように青色波長域では、色素の一般的特性から尚さら位相変化は小さくなる傾向にあるからである。逆に、|ΔΦ|がπを超える変化は、記録前後でプッシュプルの強制を反転させる可能性、プッシュプル信号の変化が大きくなりすぎる可能性があり、トラッキングサ−ボの安定性維持の面から好ましくない。
ここで、図6は、記録溝部と記録溝間部の位相差と反射光強度の関係を説明する図である。図6では、|Φ|と記録前後の記録溝部における反射光強度の関係が示されている。ここでは、簡単のため、記録層12,22の吸収の影響は無視している。図3、図5の構成では、通常、Φb>0となるので、ΔΦ>0なる場合が、図6の|Φ|が増加する方向である。つまり、Φbが増加してΦaとなることを示す。
一方、図4の構成では、通常、Φb<0となるので、ΔΦ<0なる場合が、図6の|Φ|が増加する方向である。つまり、図6における横軸に(−1)を乗じたものに相当する。よって、|Φb|が増加して|Φa|となることを示す。
平面状態(dGL=0)での記録溝部の反射率をR0とすると、|Φ|が大きくなるにつれ、記録溝部と記録溝間部の反射光の位相差Φbから干渉効果が生じ、反射光強度が低下していく。そして、位相差|Φ|がπ(半波長)と等しくなると、反射光強度は極小値となる。さらに、|Φ|がπを超えて増大すると、反射光強度は増加に転じ、|Φ|=2πで極大値をとる。
ここで、プッシュプル信号強度は、位相差|Φ|が、π/2の時に最大となり、πのときに極小となって、極性が反転する。以後、再び増加・減少し、2πにおいて極小となって再び極性が逆転する。以上の関係は、位相ピットによるROM媒体における、ピット部の深さ(dGLに相当)と反射率の関係とまったく同様である(非特許文献5)。
以下に、プッシュプル信号について若干の説明をする。
図7は、記録信号(和信号)とプッシュプル信号(差信号)を検出する4分割ディテクタ−の構成を説明するための図である。4分割ディテクタ−は、4つの独立した光検出器からなり、それぞれの出力をIa、Ib、Ic、Idとする。図7の記録溝部及び記録溝間部からの0次回折光及び1次回折光は、4分割ディテクタ−にて受光され、電気信号に変換される。4分割ディテクタ−からの信号から、下記の演算出力を得る。
Isum=(Ia+Ib+Ic+Id) (15)
IPP=(Ia+Ib)−(Ic+Id) (16)
なる演算出力が得られる。
また、図8は、実際に、複数の記録溝、溝間を横断しながら得られる出力信号を低周波通過フィルタ−(カットオフ周波数30kHz程度)を通過させた後に検出する信号を示す図である。
図8において、Isummax、Isumminは、記録溝部あるいは記録溝間部のちょうど真上(中心軸上)を光ビームが通過したときに対応する。Isump−pは、Isum信号のpeak−to−peakでの信号振幅である。IPPp−pは、プッシュプル信号のPeak−to−peakの信号振幅である。プッシュプル信号強度とは、IPPp−pのことをいい、プッシュプル信号IPPそのものとは区別する。
トラッキングサ−ボは、図8(b)のプッシュプル信号(IPP)を誤差信号として、フィ−ドバック・サ−ボを行う。図8(b)で、IPP信号の極性が、+から−に変化する点が、記録溝部中心に対応し、−から+に変化する点が、記録溝間部に対応する。プッシュプルの極性が反転するとは、この符号の変化が逆になることである。符合が逆になると、記録溝部にサ−ボがかかった(即ち、集光ビームスポットが記録溝部に照射される)つもりが、逆に記録溝間部にサ−ボがかかるような不都合を起こす。
記録溝部にサ−ボがかかったときのIsum信号が、記録信号であり、本実施の形態では、記録後に増加する変化を示す。ここで、
IPPnorm=IPPp−p/{(Isummax+Isummin)/2} (17)
なる演算出力は、規格化プッシュプル信号強度(IPPnorm)という。
(17)式でIPPp−pのかわりに、IPPを用いたものが、規格化プッシュプル信号である。
このような規格化プッシュプル信号及び規格化プッシュプル信号強度の定義は、通常の、記録型CD、DVDの規格で規定された一般的なものと同等である。
図6に示すような位相差と反射光強度の関係は、上記(13)式からも分かるように、周期的である。記録前後での|Φ|の変化、即ち|ΔΦ|は、色素を主成分とする媒体では、通常、(π/2)程度より小さい。逆に、本実施の形態では、記録による|Φ|の変化は、最大でもπ以下であるとする。そのために、必要なら、記録層膜厚を適宜薄くすればよい。
ここで、位相基準面A−A’からみて、記録ピット部16p,25p,26pの形成により記録溝部の反射光の位相(あるいは光路長)が記録前より小さくなった場合(記録前より位相が遅れた場合)、即ち、ΔΦ>0である場合、入射側から見て反射基準面の光学的距離(光路長)は減少し、光源に(あるいは、位相の基準面A−A’に)近寄ったことになる。したがって、図3においては、記録溝部の反射基準面が下方に移動した(dGLが増加)と同等の効果があり、結果として記録ピット部16pの反射光強度は減少する。図4では、逆に記録溝部の反射基準面が上方に移動した(dGLが減少)と同等の効果があり、結果として、記録ピット部25pの反射光強度は増加する。図5では、記録溝部の反射基準面が上方に移動した(dGLが増加)と同等の効果があり、結果として、記録ピット部26pの反射光強度は減少する。
一方、位相基準面A−A’からみて、記録ピット部16p,25p,26pの反射光の位相(あるいは光路長)が記録前より大きくなった場合(記録前より位相が遅れた場合)、ΔΦ<0である場合、入射側から見て反射基準面の光学的距離(光路長)は増加し、光源に(あるいは、位相基準面A−A’に)から遠ざかったことになる。図3においては、記録溝部の反射基準面が上方に移動した(dGLが減少)と同等の効果があり、結果として記録ピット部16pの反射光強度は増加する。図4では、逆に記録溝部の反射基準面が下方に移動した(dGLが増加)と同等の効果があり、結果として、記録ピット部25pの反射光強度は減少する。図5では、記録溝部の反射基準面が下方に移動した(dGLが減少)と同等の効果があり、結果として、記録ピット部26pの反射光強度は増加する。ここで、記録ピット部の反射光強度が記録後に減少するか、増加するかという、反射光強度の変化の方向を記録(信号)の極性という。
したがって、記録ピット部16p,25p,26pでΔΦ>0となる位相変化がおきるならば、図3、図5の記録溝部においては、記録により反射光強度が低下する「High to Low」(以下、単に、HtoLと記す)となる信号の極性の変化を利用することが好ましく、図4の記録溝部においては、記録により反射光強度が増加する「Low to High」(以下、単に、LtoHと記す)となる極性を利用することが好ましい。他方、ΔΦ<0となる位相変化がおきるならば、図3、図5の記録溝部においてはLtoHとなる極性を利用することが好ましく、図4の記録溝部においてはHtoLとなる極性を利用することが好ましい。以上の関係を表1にまとめて示す。表1は、ΔΦの符号に対して、図3、図4、図5の構成と記録溝部において、HtoL、LtoHいずれの極性の反射光強度変化が好ましいかを示す。
Figure 0004550682
このように、記録ピット形成位置(記録溝部)が基板(カバー層)溝部と基板(カバー層)溝間部のいずれにあるかによって、また、記録ピット部の反射光の位相変化の方向によって、記録による反射光の位相変化の方向(増減)が好ましい場合と好ましくない場合がある。従来、相変化型記録媒体では、位相差記録として利用する例があるが、色素記録層を用いた追記型媒体では、必ずしも、具体的かつ積極的に使い分けられている例はなかった。なぜなら、従来の色素記録層追記型媒体のほとんどが、図1の構成の基板溝部に記録を行うこと、平面状態の屈折率変化によるHtoL記録を前提としており、あえて、溝間部へ、位相の変化を主とし、「干渉効果を考慮した反射光強度の変化」を主としたLtoH記録を行うことがほとんどなかったからである。
(位相変化ΔΦの符号と記録極性の好ましい態様について)
さて、記録ピット部16p,25p,26pでは、光学的に記録層12,22の屈折率変化あるいは変形による位相の変化(即ち、位相差を考慮した反射光強度の変化に寄与する。)と、屈折率変化による平面状態での反射光強度の変化(即ち、位相差を考慮しない反射光強度の変化)が、同時に起こりうる。これらの変化の方向がそろっていることが好ましい。つまり、記録信号の極性が、記録パワーや記録ピットの長さ、大きさに寄らず一定であるためには、個々の反射光強度変化がそろっていることが好ましい。
以下において、色素記録層媒体で図4のカバー層溝間部25に記録を行う場合に、ΔΦ>0及びΔΦ<0がどのような場合に生じ、いずれの方向を好適に利用すべきかを、図3,図5の場合と比較しつつ検討する。
ΔΦにおいて、
Φbmp=(n−n)・dbmp (18)
Φpit=n・dpit (19)
Φmix=δn・dmix (20)
Φ=δn・(d−dpit−dbmp)=δn・dGa (21)
とすると、Φbmpは、記録層入射側界面の変形(移動)による位相変化、Φpitは記録層12,22/反射層13,23界面の変形(移動)による位相変化、Φmixは混合層16m,25m,26m形成による位相変化、Φは記録層12,22の屈折率変化による位相変化に対応する。これらの位相変化が大きくて、変化の方向、即ち、Φbmp、Φpit、Φmix、Φの符号がそろっていることが、変調度を大きくし、かつ、特定の信号極性の信号波形をひずませずに、良好な記録特性を得るために重要なことである。
このうち、位相変化の方向をそろえるためには、上記、Φbmp、Φpit、Φmix、Φに係る複数の物理パラメーターをすべて正確に制御するよりは、できるだけ少ない要素に限定して制御することが望ましい。
先ず、記録層入射側界面に界面層を設けるなどして、dmix=0とすることも好ましい。dmixによる位相差変化は、あまり大きくできないので積極的に利用しにくいだけでなく、その厚みの制御が難しいからである。よって、記録層入射側界面に界面層を設けるなどして、dmix=0とすることが好ましい。
次いで、変形に関しては、一箇所に集中し、かつ、一方向に限定されることが好ましい。複数の変形部位よりも、一箇所の変形部位をより正確に制御するほうが良好な信号品質が得られやすいからである。
従って、本実施の形態においては、ΦbmpとΦpitのうちのいずれかと、Φを主として利用することが好ましい。
pitに関しては、通常は、基板またはカバー層の膨張あるいは、記録層の体積収縮が主要因であるから、dpit>0となることが多い。これは、Φpitには有利ではあるが、dGa、すなわち、Φには不利である。一方、記録層の吸収は、記録層の厚みの中間部から入射側界面側で最も高くなるので、その部分で最も高温となり、反射層の界面側は、発熱量が相対的に小さい。また、反射層に高放熱性材料を用いれば、その記録層の発熱の影響は、大部分記録層の入射側界面に集中する。発熱が集中するのは、図4では、記録層22とカバー層24側の界面である。したがって図4の構成では、色素の入射側界面、即ちカバー層24との界面に変形が生じる。このため、dpitは自然と小さくなるので寄与は小さい。従来構成とは異なり、基板21側変形の影響は少ないと考えられ、実際上、dpit≒0とみなせる。このことは、むしろ、制御すべき変形要素をdbmpに集約したことがよいことを示唆している。
この場合、Φは、(21)式から分かるように、色素の屈折率変化δn、変形dbmpが寄与しており、ΔΦの大きさと符号に最も重要な要素である。
bmpは後に考慮するとして4番目のΦに係る物理現象のうち、記録層屈折率変化δの影響を先ず考察する。記録後の記録層膜厚dGaは、その定義上dGa>0であるから、δnの符号が、Φの符号を支配すると考えられる。本発明においては、色素を主成分とする記録層を用いるが、色素の主吸収帯は、そのもっとも強い吸収波長(吸収のピーク)が、可視光域(概ね400−800nm)にある吸収帯であるとする。主成分となる色素の主吸収端近傍の波長で記録再生を行った場合、通常は、記録層の発熱により、記録層は分解され、吸収が大きく減少するものと考えられる。少なくとも、未記録状態では主吸収帯では、いわゆるクラマ−ス・クロ−ニッヒ型の異常分散が存在し、図9に示すような屈折率n及び消衰係数kの波長依存性が存在すると考えられている。主吸収端の長波長端λでは、n=1.5〜3程度、k=0.1〜1.5程度となりうるし、短波長端λでは、n=0.5〜1.5程度、k=0.1〜1.5程度となりうる。主吸収端の中央部では、kが大きくなりすぎる場合があるので、通常は、k=0.01〜0.6となるよう、ピークの中心から多少ずれた波長域λ及びλを記録再生光波長とすることがある。一方、記録後の屈折率の挙動は、色素によって異なるであろうが、記録後にもクラマ−ス・クロ−ニッヒ関係が維持され、nが増加するとは限らない。むしろこの関係が成り立たない場合が多いと考えられる。
通常、記録層主成分とする色素の分解温度は、500℃以下であり、記録光による発熱によって、記録層主成分の色素は、主吸収端を維持できないまでに分解されるからである。その場合、クラマ−ス・クロ−ニッヒ型の異常分散は存在せず、よって、n’=1〜1.5程度の屈折率しか得られない。
したがって、色素の分解を利用する場合には、n、kが減少する場合を利用したほうが色素の選択の幅は広がると考えられる。即ち、δn>0である場合を利用するのが記録層材料の選択肢が広く好ましい。
尚、記録層内あるいは、その隣接する界面に空洞が発生することも多いが、その場合にも、空洞内はn’=1と考えられるから、屈折率の低下とみなすことができる。空洞が記録層の一部を占めていても、記録層の平均的な屈折率は低下しているとみなせる。この場合も、δn>0である。あるいは、記録層色素の吸収に関わる構造の変化が小さくても、記録層の温度上昇で記録層体積の膨張が生じて密度が低下しても、屈折率が低下しうる。なお、以上の屈折率低下のメカニズムのうち、空洞を形成して、n’≒1とすることが、最も確実にかつ大きなδnを得るために好ましいことであると考えられる。
以上から考えて、記録層主成分の色素の光学的変化(含む空洞、低密度部等の形成)を利用するならば、δn>0、即ち、屈折率の低下を利用するほうが、色素選択の範囲が広がり好ましい。前述のようにdGa>0であるから、結局、Φ>0を利用することが好ましい。
さて、記録による変質(分解を伴う)後の色素の屈折率は、概ね基板やカバー層並に低下すると考えられる。また、空洞形成等でもカバー層同等以下に低下すると考えられる。よって、本実施の形態では、n’<nとなる色素を好適に利用する。従って、δn>|n−n|と考えられる。一方、ΦbmpとΦの大小は、ほぼ、dbmpの符号に依存する。dGa=d−dpit−dbmpであるから、前述のようにdpit≒0とすると、dGa≒d−dbmpとなる。従って、dbmp<0であれば、dGa>|dbmp|である。dbmp>0、つまり、記録層の体積収縮がおきるとしても、記録層膜厚が50%未満になるような極端な記録層の収縮は、通常考えられない(あるいは、そのような収縮は記録層物質が記録ピット部より流出することを意味するので好ましくないともいえる)ので、同様に、dGa>dbmpである。結局、|Φbmp|<Φであり、主要な変化はΦによるとすると、同様に、δn>0なる変化は、Φ>0なる変化となり、ΔΦ>0なる位相変化につながると考えられる。
従来のCD−R等の有機色素系の光ディスクにおいては、dmix=dbmp>0とみなし、混合層16m,25m,26mが記録層12,22側に入り込むことの寄与が多いと考えられている(非特許文献1)。Φpit>0、Φbmp>0であり、同様に全体としてΔΦ>0である。逆にいうと、ΔΦ>0を極力大きくして変調度をとるべく検討が重ねられてきたといっても過言ではない。従来の図1の溝部において、ΔΦ>0なる位相変化を生ぜしめ、HtoL記録を実現していることも考えれば、色素を主成分とする記録層22では、ΔΦ>0なる位相変化を利用するのが自然である。すなわち、前記記録ピット部25pでの位相変化が、前記反射層23の入射光側におけるnより低い屈折率部の形成によるものであることが望ましい。そのことが、色素主成分記録層を利用するに当たって最も好ましいことなのである。ここで、本実施の形態において重要なことは、ΔΦ>0なる位相変化を積極的かつ選択的に利用することであって、従来発明のように、入射側から見て近い(光路長が小さい)溝部に記録することや、HtoL記録を行うことではない。
従来の青色レーザ光記録に関する先行技術では、CD−RやDVD−Rの従来技術にとらわれ、入射側から見て溝となるカバー層溝部26(図5参照)に、ΔΦ>0なる位相変化で、HtoL記録を行おうとする前提条件から抜け出せずにいたといえる。あるいは、位相変化に頼らず50〜100nmの厚膜記録層として、平面状態で起こる反射率変化、特に、δnが概ね1以上となる大きな変化や、同時に起きる消衰係数の大きな変化を利用して反射光強度低下、即ち、HtoL記録をすることを意図していたのである。
ここで、ΔΦ>0なる位相変化とプッシュプル信号の関係について考察しておく。従来のCD−RやDVD−Rの類推からカバー層溝部26(図5参照)に対するHtoL記録を行う場合、プッシュプル信号極性が反転しないようにしたければ、dGLとして、往復の光路長が1波長より大きくなる(|Φb|>2πとなる)ような深い溝段差(「深溝」と称する)か、Φbがほとんどゼロであり、かろうじてプッシュプル信号が出るような溝段差(「浅溝」と称する)に限られる。深溝の場合、図6の|Φb|>2πなる斜面で、矢印αの方向の位相変化を利用し、光学的に溝が深くなるようにする。この場合、矢印の始点となる溝深さは、400nm前後の青色波長では100nm程度が必要で、前述のように狭トラックピッチでは、成形時に不良転写がおきやすく、量産に困難を伴う。また、たとえ、所望の溝形状が得られても、溝壁の微小な表面粗さによるノイズが信号に混入しやすい。さらに、溝底部、側面の壁に反射層23を均等に形成するのが困難である。反射層23自体の溝壁への密着性も悪く、剥離等の劣化が起こりやすい。このように、「深溝」を用いた従来方式でΔΦ>0なる位相変化を利用して、HtoL記録を行おうとすると、トラックピッチを詰めるのに困難が伴う。
一方、浅溝の場合は、図6の|Φ|=0〜πの間の斜面で矢印βの方向の位相変化を使用し、光学的に溝が深くなるようにすることで、HtoL記録となる。未記録状態である程度のプッシュプル信号強度を得ようとすれば、溝深さは、青色波長では、20nm〜30nm程度となる。このような状態で記録層22を形成した場合、平面状態と同じく、記録溝部(この場合、カバー層溝部26)にも溝間部にも同等に記録層膜厚が形成されやすく、記録ピットが記録溝部からはみ出しやすいし、記録ピットからの回折光が隣接記録溝に漏れこんで、クロストークが非常に大きくなってしまう。同様に、従来方式でΔΦ>0なる位相変化を利用して、HtoL記録を行おうとすると、トラックピッチを詰めるのに困難が伴うのである。
本発明者等は、これらの課題を克服できる、真に、膜面入射型色素媒体、特に塗布型記録層を有する媒体について検討を行った。その結果、膜面入射型色素媒体に好ましい構成は、従来の、「深溝」を用いたHtoL記録ではなく、図6において、矢印γの方向の位相変化、従って、後述の「中間溝」を用いたLtoHなる記録極性の信号を得るものであることを見出したのである。即ち、記録再生をカバー層24側から記録再生光を入射して行う光記録媒体20であって、記録再生光ビーム27がカバー層24に入射する面(記録再生光ビーム27が入射する面29)から遠い側の案内溝部を記録溝部するとき、記録溝部に形成した記録ピット部の反射光強度が記録溝部の未記録時の反射光強度より高くなるような媒体及び記録方法である。従来、色素を記録層に用いた追記型媒体は、記録後にROM媒体と同等の記録信号が得られるのが特徴であるが、そのためには、記録後に、再生互換性が確保できればよいのであって、記録前にROM媒体同様の高反射光強度を保持する必要はなく、記録後のHレベルの反射光強度が、ROM媒体で規定される反射光強度(ROM媒体では単に反射率と呼ぶことが多い)の範囲内であればよい。LtoH記録は決して、ROM媒体との再生互換性を維持することと矛盾しないのである。
尚、本実施の形態において重要なことは、上記、記録層屈折率の低下、空洞の形成等によるピット部での屈折率低下、記録層22内部もしくはその界面での変形が、すべて、主反射面である反射層23の記録再生光入射側で起きているということである。さらには、前述のように、dpit≒0、dmix≒0であることが好ましい。すなわち、記録ピット部において、反射層/記録層、及び、反射層/基板界面のいずれにも変形及び混合が生じていないことが、記録信号極性を支配する要素を簡素化でき、記録信号波形へのひずみを抑制できるので好ましい。もし、記録層22とカバー層24との間に、半透明反射層(薄いAg,Al等の金属、あるいは、Si,Ge等の半導体膜)が存在し、主反射面が半透明膜のいずれかの界面に移行した場合、たとえ、LtoH記録であっても、カバー層溝間部25における良好なLtoH記録を実現するのは困難となる。なぜなら、半透明反射膜でほとんどすべての反射が起きていれば、記録層22の屈折率変化δnによる位相変化はほとんど利用できず、信号振幅を大きくすることが困難となるからである。また、多少とも、半透明反射層の透過光の影響があったとすると、裏面の金属反射層からの反射光の位相と半透明反射層の反射光の位相の両方の寄与が混じるので、位相変化の方向を一定方向にそろえて制御するのが複雑かつ困難になる。
図4に示すような膜面入射構成で、記録再生光ビーム27(図2)の入射する面29(図2)から遠い側の案内溝部を記録溝部するとき、従来構成と同じ位相変化による記録原理を適用しようとすれば、ΔΦ>0となるような位相変化を利用してLtoH記録を行いうる。
そのためには、先ず、前記記録ピット部25pでの位相変化が、前記反射層23の入射光側におけるnより低い屈折率部の形成によるものであるであることが望ましい。そして、記録前において、各種サ−ボの安定性を維持するために、少なくとも3%〜30%の反射率を維持することが好ましい。
ここでいう未記録状態の記録溝部反射率(R)は、反射率既知(Rref)の反射膜のみを、図2に示す光記録媒体20と同様な構成で成膜し、集束光ビームを記録溝部に焦点が合うように照射して得られた反射光強度をIref、図2に示す光記録媒体20において同様に、集束光ビームを記録溝部に照射して得られた反射光強度をIとするとき、R=Rref・(I/Iref)として得られたものである。同様に、記録後において、記録信号振幅の、記録ピット間(スペース部)の低反射光強度Iに対応する記録溝部反射率をR、記録ピット(マーク部)の高反射光強度Iに対応する記録溝部反射率をRと呼ぶ。
以下では、慣用に従って、記録溝部の反射光強度変化を定量化する際には、この、記録溝部反射率を用いて表す。
本実施の形態では、記録による位相変化を利用するため、記録層22自体の透明性を高くすることが好ましい。記録層22を単独で透明なポリカーボネート樹脂基板に形成した場合の透過率は、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。透過率が高すぎると十分記録光エネルギーが吸収できないから、95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましい。
一方、このような高透過率が維持されていることは、図2の構成のディスク(未記録状態)において、平坦部(鏡面部)で平面状態の反射率R0を測定し、その反射率が、記録層膜厚をゼロとした、同一構成を有するディスクの平面状態での反射率の40%以上、好ましくは、50%以上、より好ましくは70%以上あることで概ね確認できる。
(記録溝深さdGL,記録溝部の記録層厚みdと記録溝間部の記録層厚みdの好ましい態様について)
ΔΦ>0なる位相変化を利用し、カバー層溝間部25にLtoH記録する場合、光学的にピット部で溝深さが変化するので、溝深さに強く依存するプッシュプル信号が、記録前後で変化しやすくなる。特に問題になるのは、プッシュプル信号の極性が反転するような位相変化である。
LtoH記録を行って、かつ、プッシュプル信号の極性変化を起こさないためには、図6において、0<|Φb|、|Φa|<πなる斜面で矢印γの方向の位相変化により、光学的な溝が浅くなる現象を利用することが好ましい。つまり、図4において、位相差基準面A−A’からみて、記録溝部の反射基準面までの光路長が小さくなるような変化が記録ピット部25pで起きるようにする。図4の場合、Φb=Φb<0、Φa=Φa<0であり、ΔΦ>0であるから、|Φb|>|Φa|である。尚、式(2)のように位相差を定義した関係で、Φb、Φaが図4の場合には負となるので、絶対値で表記した。
特に、プッシュプル信号として、式(17)の規格化されたプッシュプル信号強度IPPnormを用いる場合、本実施の形態では、記録後の平均反射率は増加するから、式(17)の分母が増加する。
記録後の規格化プッシュプル信号強度IPPnormを十分な大きさに保つには、式(17)の分子であるプッシュプル信号強度IPPp−pが記録後に増加するか、少なくとも、大きな値を保つことが好ましい。つまり、|Φa|が記録後にπ/2近傍にあることが好ましい。一方、記録前にも十分なプッシュプル信号を確保するためには|Φb|は、πよりも(1/16)π程度は小さいことが望ましい。そのため、|Φb|が、経路γにおいて、π/2〜(15/16)πの範囲にあることが好ましいこととなる。
具体的には、図4において、|Φb|=(4π/λ)|ψb|をπ/2〜(15/16)πの範囲にするためには、
|ψb|=|(n−n)・(d−d)−n・dGL
=|(n−n)・(d−d)+n・dGL
を、λ/8〜(15/64)・λの範囲にすることが好ましい。
その際の溝深さdGLは、d=d、記録再生光波長λ=350〜450nmの青色波長とした場合、式(7)より、
|ψb|=n・dGL (7a)
となる。同様の式は、n≒nでも得られる。nを一般的な高分子材料の値、1.4〜1.6程度とすると、溝深さdGLは、通常30nm以上、好ましくは35nm以上とする。一方、溝深さdGLは、通常70nm以下、好ましくは65nm以下、より好ましくは60nm以下とする。このような深さの溝を「中間溝」と呼ぶこととする。上述の図3や図5で「深溝」を用いる場合に比べ、溝形成及びカバー層溝間部25への反射膜の被覆が格段に容易になるという利点を有する。
一般に、スピンコートで塗布法により記録層を成膜したときには、基板溝部に記録層が溜まりやすいという性質を考慮すると、自然とd>dとなる。さらには、塗布する色素量を少なくして、全体として記録層膜厚を薄くすると、実質上d≒0とでき、記録層をほぼ完全に記録溝内(この場合、カバー層溝間部25)に閉じ込めることが可能になる。
この場合、式(7)は、
|ψb|=|(n−n)・d−n・dGL
=|(n−n)・d+n・dGL| (7b)
となり、(7a)に対する、上記、溝深さの好ましい範囲に対して、|(n−n)・d|分だけ補正が必要になる。n>nであれば、若干浅め、n<nであれば、若干深めが好ましいことなる。本実施の形態において用いたような色素記録層では、概ね、(n−n)は−0.5〜+0.5の範囲であり、d=30nm程度であるので、高々10nm程度の補正を考慮すればよい。逆に、n・dGLなる溝形状が与えられれば、nがnに比べて小さいほど|Φb|は小さくなり、図6から、溝部の反射光強度が増加する。一方、nがnに比べて大きいほど、溝部の反射光強度は減少する。
また、記録層膜厚は、溝深さに比べて薄くし、d<dGLとするのが好ましい。記録ピットがたとえ後述のような変形を伴っていても、少なくともその幅が溝幅内に抑制される効果が得られる、クロストークを低減できるためである。このため、(d/dGL)≦1とすることが好ましく、(d/dGL)≦0.8とすることがより好ましく、(d/dGL)≦0.7とすることがさらに好ましい。
つまり、本実施の形態が適用される光記録媒体20では、記録層22を塗布によって形成し、dGL>d>dとするのが好ましい。さらに好ましくは、d/d≦0.5として、実際上、記録溝間上に記録層22がほとんど堆積しないようにする。一方、後述するように、dは実質的にゼロであることが好ましいので、d/dの下限値は、理想的にはゼロである。
前述のようにdGLが30〜70nmである場合には、dは、5nm以上とすることが好ましく、10nm以上とすることがより好ましい。これは、dを5nm以上とすることによって、位相変化を大きくでき、記録ピット形成に必要な光エネルギーの吸収が可能となるからである。一方、dは、50nm未満とすることが好ましく、45nm以下とすることがより好ましく、40nm以下とすることがさらに好ましい。位相変化を主として用い、屈折率変化による「平面状態での反射率変化」の影響を小さくするためにも、記録層22はこのように薄いことが望ましい。従来のCD−R、DVD−Rのように、未記録での屈折率が2.5〜3である高屈折率の色素主成分の記録層では、記録によってnは減少した場合、「平面状態の反射率」低下をまねくことがある。位相差変化によってLtoH記録をする場合には、逆の極性となりやすく好ましくない。
さらに、記録層22が薄いほうが、記録ピット部での変形が大きくなりすぎたり、記録溝間部へはみ出したりすることを抑制できる。
カバー層溝間部に記録ピットを形成する本発明において、前述のような「中間溝」深さを用いること、及び、d/d≦1として、記録層22を薄くして「中間溝」深さの記録溝内に閉じ込めることは、後述のように記録ピット部での空洞形成及びカバー層方向への膨れ変形を積極的に用いる場合には、なおさら、好ましいこととなる。この点においても、本発明は、カバー層溝部に記録を行い、空洞を形成してHtoL記録を行う場合より、クロストークを抑制する効果に優れている。
かくして、記録ピットは、記録溝内にほぼ完全に閉じ込められ、かつ、図4における記録ピット部25pの回折光の隣接記録溝への漏れこみ(クロストーク)も非常に小さくできるという利点がえられる。つまり、カバー層溝間部25への記録でLtoH記録を志向することは、単にΔΦ>0なる位相変化とカバー層溝間部25へ記録の有利な組み合わせとなるだけではなく、狭トラックピッチ化による高密度記録により適した構成が得られやすくなるのである。さらに、dをほぼゼロとすると、(7b)式の|ψb|において、(n−n)・dの項の寄与を最大とでき、dGLを若干ではあるが浅くすることができ、溝形成がより容易となる。例えば、記録再生光波長λ=400nm、n=1.5程度の場合、(15/64)・λとなるdはd=dの場合は62.5nmであるが、d=0、|n−n|=0.3、δn=0.5、d=0.5・dGL、の場合、57nmとできるのである。トラックピッチが0.3μm程度になると、このような5nmの溝深さの差は、スタンパ−からの溝形状転写の容易さに大きな影響を及ぼす。
(記録層屈折率、n,n,δn、及び、変形量dbmpの好ましい態様について)
さて、ΔΦ>0なる位相変化を利用し、膜面入射記録において、カバー層溝間部25に記録を行い、LtoH記録を行うことは、高密度記録を行うにあたって重要なことであるが、さらに、良好な記録品質を得るためには、以下に述べるような事項を考慮することが望ましい。
先ず、記録信号振幅を大きくとるために全体として|ΔΦ|を大きくすることが挙げられる。次いで、マーク長変調記録において、最短マーク長から最長マーク長までの全マーク長に対して、実用的な記録パワーマ−ジンを有し、良好なジッター(Jitter)特性を実現するために、以下のことを行うことが好ましい。つまり、ΔΦに寄与する各位相変化方向と大きさを、記録パワーの変動、マーク長の変動に対しても、特定範囲内で一致させることが好ましい。少なくとも、逆方向の位相変化が、記録パワー変動やマーク長によって混じるようなことは、無視できる程度に小さくすることが好ましい。
そして、先ず、Φを正の方向で大きくするには、δn>0、つまり、記録ピット部25pの位相(光路長)が、記録前に対して大きく低下することが先ず好ましい。そして、記録後の記録層膜厚dGaが厚いほうが好ましく、d≦dGaであることがより好ましい。前述のように、クロストーク等を小さくするためにはdGaはdGLよりあまり大きくならないことが好ましい。但し、dbmp<0なる変形が伴う場合は、dGa>dGLであってもよいが、その大きさは、dGLの3倍以下であることが好ましい。このようにdGaが大きくても、記録ピットの横方向の幅が記録溝幅を超えてはみ出さなければ、クロストークへの影響は少ない。従って、dGa>dGLである場合には、特に、dが薄く、実質的にゼロとみなせる10nm以下であることが好ましい。あるいは、前述のようにd/d≦0.5を満たすのみならず、より好ましくは、d/d≦0.3、さらに好ましくは、d/d≦0.2とすることである。
(21)式から、δnとdGa=d−dpit−dbmp≒d−dbmpとなる。よって、dGaを大きくするには、dbmp<0、つまり、記録層22がカバー層24に向かって膨らむ変形が好ましい。つまり、通常の色素では前述のようにδn>0であるから、dbmp<0とすることは、(21)式のΦを通じてΔΦ>0を大きくできるのである。
他方、dbmpは、(18)式のΦbmpという成分にも寄与する。以下では、Φbmpを通じて、dbmpを積極的に活用した記録メカニズム(記録モード)を考える。
先ず、第一の態様として、n−n<0となるように、nが小さな色素を選ぶ場合について考える。Φbmp>0とするためには、dbmp<0つまり、図4で記録層22がカバー層24側に膨らむような変形が好ましい。ここで、dbmp<0とすれば、dGaも大きくなるので非常に都合がよい。つまり、δnが小さくても、dbmp<0の絶対値が大きい、つまり、記録層22のカバー層24側へのふくれ変形が大きければ、それだけで、大きな変調度を得ることもできる。このため、δnが小さい記録層、場合によっては、δnがほとんどゼロの記録層材料も使用できる。このことは、CD−RやDVD−Rのような赤外や赤色波長域で使用する場合のように2.5を超える大きなnの色素を得ることが困難な、青色波長域で利用するに当たって、特に好ましい。
記録層22内あるいは、その隣接する界面に空洞が発生する場合も、それによる膨れ変形が、記録層22のカバー層24側界面にdbmp<0なる変形を及ぼすと考えられ、空洞内のn’が1程度まで低下することを考えると、大きな信号振幅を得るうえで、非常に好ましい。
必ずしも、厳密にn<nということではなく、nがnの同等以下であれば良い。nは、通常カバー層材料に高分子材料を用いるので、1.4〜1.6であるため、nは、1.6以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。下限としては通常、1.0以上であることが好ましく、1.2以上あることが好ましく、1.3以上であることがより好ましい。これは、短吸収端の長波長側λを記録再生光波長とする場合にほぼ該当する。
次いで、第2の態様として、n>nなる場合でも、n’がnより小さくなる場合を考える。式(9)において、Φpit、Φmix≒0とすると、
ΔΦ≒(4π/λ){(n−n)・dbmp+δn・(d−dbmp)}
=(4π/λ){(n−n−δn)・dbmp+δn・d
=(4π/λ){(n’−n)・dbmp+δn・d} (9a)
を得る。ここで、δn・d>0である。n’が十分低下する、特に、空洞が形成されてn’=1となるような場合、n’−n<0となるので、dbmp<0であることが好ましい。nが、従来のCD−RやDVD−Rで用いられたように、2より大きいと、n’>nとなる場合も生じる。nが、2以下とすれば、ほぼ確実に、n’<ncとなり好ましい。より好ましいのはnが1.9以下である。、さらに、空洞(n’=1)が形成されると、確実にn’<nとなり、δn>0も大きくとれるので、非常に好ましい。
結局、本発明における好ましいn,n,δn及びdbmpの組み合わせの態様を記録モードと称すれば、最も好ましい記録モードから順に、以下のようになる。
(記録モード1)
δn>0,n<≒n(n<≒ncは、ndはn程度以下のことを意味する。)であり、dbmp<=0であること。
=1.4〜1.6とすると、nは、1.6以下であることが好ましい。
記録層22内あるいは、その隣接する界面に空洞が発生することがより好ましい。
(記録モード2)
δn>0,n>nであり、n’<n、dbmp<=0であること。
同様に、n=1.4〜1.6とすると、nは2以下であることが好ましい。
記録層22内あるいは、その隣接する界面に空洞が発生することがより好ましい。
記録モード1と記録モード2は、(9a)式の観点からは、n’<nであれば、同等であり、どちらが有利とはいえない。しかし、記録モード2は、記録後のn’の推定が困難である場合に、δn>0でさえあれば、n’<n<nにより確実に、n’<nが担保されるので、dbmp<0なる変形が発生する場合には、記録モード1が好ましいのである。もし、空洞形成がないか、dbmp≒0であれば、δnが大きくできる点で、未記録のnが大きめである記録モード2が有利になる場合がある。
尚、第3の態様として、式(9)の上からは、以下の記録モード3が適用しうる。
(記録モード3)δn<0、n>n、dbmp>0あること。
δnが相対的に大きい場合には、dbmp>0による、dGaが小さくなる負の効果を相殺できる。但し、本発明者らの検討に寄れば、dbmp<0なるふくらみ変形の変形量が、dGLまたはdの3倍近くにまで達しうる場合があるのに対し、dbmp>0なるへこみ変形が、dの50%以上に達することはほとんどないので、このような第3の態様は、本実施の形態への適用を妨げるものではないが、必ずしも好ましいとはいえない。
さらに、この場合、実質的にδnの変化だけに頼るので、結局、従来のCD−R,DVD−Rのように2を超えるような大きなnの色素に頼らざるを得ず、また、「平面状態での反射率変化」による反射光強度低下、すなわち、HtoL極性が混じる場合は、尚さら、好ましくないこととなる。
尚、繰り返しになるが、本実施の形態では、これらの記録モードに関する現象が、主反射面の入射光側で起きていることが重要であり、図4の層構成はそれを実現するために重要である。
bmp<0なる変形を促進するためには、記録層22の熱変質に熱膨張、分解、昇華による体積膨張圧力が生じることが望ましい。また、記録層22とカバー層24の界面に界面層をもうけて、前記圧力を閉じ込めて、他の層にリークしないようにすることが好ましい。界面層は、ガスバリア性が高く、カバー層24よりも変形しやすいことが望ましい。特に、昇華性の強い色素を主成分として用いると、記録層22部分に局所的に体積膨張圧力が生じやすい。また、この際、同時に空洞を形成しやすく、色素主成分の記録層単体の屈折率変化が小さくても、空洞形成(内部のn’は1とみなしうる)による効果が加わって、記録層22のδnを大きくできるので好ましい。つまり、記録層22の内部または、その隣接する層との界面に空洞が形成されるのがδn>0を大きくするために好ましく、かつ、空洞内の圧力によって生じるdbmp<0となるような記録層22のカバー層24側への膨れは、ΔΦ>0なる変化を最も効率よく生じうると考えられ最も好ましい。
このように、n、n’、nの大小関係とdbmpの符号(変形の方向)の組み合わせを特定の関係に保つことが、マーク長によって、記録信号極性(HtoLかLtoH)が逆転したり、混合したりする(微分波形が得られる)現象を防ぐ上で有効である。
ここで、nの下限について、異常分散特性を有する色素の特性に基づき、若干の補足説明を加えておく。図9は、色素の主吸収帯におけるクラマース・クローニッヒの関係を説明する図である。クラマ−ス・クロ−ニッヒの型の異常分散においては、吸収のピークが高く吸収であればあるほど、短波長短λでの屈折率は低下し、長波長端λでの屈折率は高くなる。従来のCD−R,DVD−Rは、長波長端λでnが2〜3の色素を用いることを好ましいとしてきたので、非常に急峻な吸収ピークを有する色素の合成が最大の課題であった。短波長端λでは、そのような吸収なピークを実現した場合、nが0.5程度まで低下しうる。このような、急峻なピークを有する色素で、その吸収が急激に変化する波長域を利用する場合の最大の難点は、記録再生光波長λが変化したときに、その光学特性が急激に変化するため、安定した記録特性が得られなくなる。通常、記録再生に用いる半導体レーザからの出射光の波長は、半導体レーザの使用環境温度(通常、0℃〜70℃程度の範囲)によって、少なくとも±5nmは変動する。特に、青色波長400nm程度と高NA(開口数)による高密度記録では、このような波長変動による光学特性の変化は好ましくない。
さらに、式(9a)から分かるように、カバー層溝間部(in−groove)25を記録部として位相変化を利用しようとすれば、δnが増加するような変化は、ΔΦ<0なる変化で図6の経路β上の「浅溝」を利用したHtoL記録となるので、良好なLtoH記録は実現できない。カバー層溝部(on−groove)26を利用すれば、LtoH記録となりうるが、カバー層溝部26での記録は塗布法で記録層22を形成する場合に適していないことは、前述の通りである。また、n’>nほど大きな変化は、λの領域では、通常実現されておらず、(n’−n)>0となる。ΔΦ<0と矛盾しないためには、dbmp>0としなければならないが、同様に、dbmp>0となる変形量には限界があるので、大きな信号振幅が取りにくい。
他方、青色波長記録において、1程度より小さなnとδn<0なる色素を利用し、「平面状態の反射率変化」による反射光強度変化を利用したHtoL記録も提唱されている。しかしながら、この場合、大きなδnを得ることが困難であるという問題もある。通常は、n=0.5から1.0、n’=1.0〜1.5程度としかならないので、δnは0.5程度より小さい。そのため、記録層22上下にスパッタ法や真空蒸着法で成膜した誘電体層を設けるなどの非常に複雑な構成を利用することが提案されているが、本来、塗布法での製造プロセスのコスト上の利点を利用すべき色素記録層にとって、好ましくないコストの上昇をもたらす。尚、nは0より大きい。
図24は、図2の層構成において、記録層膜厚30nm、k=0.4で一定、Ag反射層(複素屈折率0.09−i・2.0)、界面層膜厚20nm(屈折率2.3−i・0.0)、カバー層n=1.5で複素屈折率の虚部0.0と仮定した場合の、平面部での反射光強度R0の記録層屈折率n依存性の計算値を示している。nが約2以下の場合、nが減少すれば、反射率は増加していることが分かる。他方、nが1未満の場合に、δn<0、すなわちnが増加するような変化は、平面状態での反射率変化による反射光強度減少を招くとともに、(21)式のΦの負の変化をもたらすので、むしろ、図3や図5の場合に適用して、HtoL極性の信号が得られやすいことも分かる。
記録によるkの減少が加われば、記録後の反射光強度は、記録前に比べてさらに増加しうる。位相差が関与しない状態では、反射率変化の大きさそのものは小さいが、少なくとも位相差によるLtoH極性の記録信号極性と矛盾しない。
このような観点からも、nが1〜2の色素において、カバー層溝間部(in−groove)を記録溝部とし、記録後にnが減少すること(δn>0)は、良好なLtoH記録を行ううえで非常に都合が良い事が分かる。同時に、記録にkが減少すれば、記録ピット部での吸収が減少して、やはり、平面状態での反射率は増加するので好ましいが、このようなことは、色素が分解して異常分散がなくなることでむしろ通常起こりうる現象である。つまり、記録モード1,2における局所的位相変化による反射光強度の増大は、平面状態における反射光強度の増大と相性がよく、全体として、歪みのないLtoH極性の信号を得る上で非常に都合が良い。
(具体的な層構成及び材料の好ましい態様について)
以下において、図2及び図4で示す層構成の具体的材料・態様について、青色波長レーザの開発が進んでいる状況を考慮して、特に、記録再生光ビーム27の波長λが405nm近傍の場合を想定して説明する。
(基板)
基板21は、膜面入射構成では、適度な加工性と剛性を有するプラスチック、金属、ガラス等を用いることができる。従来の基板入射構成と異なり、透明性や複屈折に対する制限はない。表面に案内溝を形成するのであるが、金属、ガラスでは、表面に光や熱硬化性の薄い樹脂層を設け、そこに、溝を形成する必要がある。この点、プラスチック材料を用い、射出成型によって、基板21形状、特に円盤状、と表面の案内溝を一挙に形成するほうが製造上は好ましい。
射出成型できるプラスチック材料としては、従来CDやDVDで用いられたポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。基板21の厚みとしては0.5mm〜1.2mm程度とするのが好ましい。基板厚とカバー層厚を合わせて、従来のCDやDVDと同じ1.2mmとすることが好ましい。従来のCDやDVDで使われるケ−ス等をそのまま用いることができるからである。基板厚を1.1mm、カバー層厚みを0.1mmとすることが、ブルーレイ・ディスクでは規定されている。(非特許文献9)
基板21にはトラッキング用の案内溝が形成されている。本実施の形態では、カバー層溝間部25が記録溝部となるトラックピッチは、CD−R、DVD−Rより高密度化を達成するためには、0.1μm〜0.6μmとするのが好ましく、0.2μm〜0.4μmとするのがより好ましい。溝深さは、前述のように、記録再生光波長λ、dGL、d、d等に依存するが、概ね30nm〜70nmの範囲にあることが好ましい。溝深さは、前記範囲内で、未記録状態の記録溝部反射率R、記録信号の信号特性、プッシュプル信号特性、記録層の光学特性等を考慮して適宜最適化される。例えば、記録層の光学特性の変化に対して、同等のRを得るためには、n,kが大きな場合は、溝深さを相対的に浅くし、n,kが小さな場合は、相対的に深くするのが好ましい。また、同じ溝深さであっても、nが約1.5以上であれば、kを約0.5以下とする、逆に、kが約0.5以上であれば、nが約1.5以下となるような値の記録層を選べば、Rを10%以上に保つことができる。
本実施の形態では、記録溝部と記録溝間部とにおけるそれぞれの反射光の位相差による干渉を利用しているから、両方が集束光スポット内に存在することが必要である。このため、記録溝幅(カバー層溝間部25の幅)は、記録再生光ビーム27の記録層22面におけるスポット径(溝横断方向の直径)より小さくするのが好ましい。記録再生光波長λ=405nm、NA(開口数)=0.85の光学系で、トラックピッチを0.32μmとする場合、0.1μm〜0.2μmの範囲とするのが好ましい。これらの範囲外では、溝または溝間部の形成が困難となる場合が多い。
案内溝の形状は、通常、矩形となる。特に、後述の塗布による記録層形成時に、色素を含む溶液の溶剤がほとんど蒸発するまでの数十秒間に、基板溝部上に、色素が選択的に溜まることが望ましい。このため、矩形溝の基板溝間の肩を丸くして色素溶液が、基板溝部に落下して溜まりやすくすることも好ましい。このような丸い肩を有する溝形状は、プラスチック基板もしくは、スタンパの表面を、プラズマやUVオゾン等に数秒から数分さらしてエッチングすることで得られる。プラズマによるエッチングでは、基板の溝部の肩(溝間部のエッジ)のようなとがった部分が選択的に削られる性質があるので、丸まった溝部の肩の形状を得るのに適している。
案内溝は、通常は、アドレスや同期信号等の付加情報を付与するために、溝蛇行、溝深さ変調等の溝形状の変調、記録溝部あるいは記録溝間部の断続による凹凸ピット等による付加信号を有する。例えば、ブルーレイ・ディスクでは、MSK(minimum−shift−keying)とSTW(saw−tooth−wobbles)という2変調方式を用いたウォブル・アドレス方式が用いられている。(非特許文献9)
(光反射機能を有する層)
光反射機能を有する層(反射層23)には、記録再生光波長に対する反射率が高く、記録再生光波長に対して70%以上の反射率を有するものが好ましい。記録再生用波長として用いられる可視光、特に、青色波長域で高反射率を示すものとして、Au、Ag、Al及びこれらを主成分とする合金が挙げられる。より好ましくは、λ=405nmでの反射率が高く、吸収が小さいAgを主成分とする合金である。Agを主成分として、Au、Cu、希土類元素(特に、Nd)、Nb、Ta、V、Mo、Mn、Mg、Cr、Bi、Al、Si、Ge等を0.01原子%〜10原子%添加することで、水分、酸素、硫黄等に対する耐食性が高めることができ好ましい。この他に、誘電体層を複数積層した誘電体ミラーを用いることも可能である。
反射層23の膜厚は、基板21表面の溝段差を保持するために、dGLと同等かそれより薄いことが好ましい。同様に、記録再生光波長λ=405nmとする場合、前述のように、dGLは70nm以下とするのが好ましいから、反射層の膜厚は、70nm以下が好ましく、より好ましくは65nm以下とする。後述の、2層媒体を形成する場合を除いて、反射層膜厚の下限は、30nm以上が好ましく、より好ましくは40nm以上とする。反射層23の表面粗さRaは、5nm以下であることが好ましく、1nm以下であることがより好ましい。Agは添加物の添加によって平坦性が増す性質があり、この意味でも、上記の添加元素を0.1原子%以上が好ましく、さらに好ましくは、0.5原子%以上とするのが好ましい。反射層23はスパッタリング法、イオンプレーティング法や、電子ビーム蒸着法などで形成することができる。
反射基準面の段差で規定される溝深さdGLは、ほぼ基板21表面の溝深さdGLSに等しい。溝深さは、断面を電子顕微鏡で観察すれば直接測定できる。あるいは、原子間力顕微鏡(AFM)などの探針法によって測定できる。溝や溝間部が完全に平坦でない場合は、溝と溝間のそれぞれの中心での高さの差でdGLを定義する。溝幅は、同様に、反射層23成膜後の実際に記録層22が存在する溝部の幅をいうが、反射層23形成後も基板21表面の溝形状をほぼ保持するならば、基板21表面の溝幅値を用いることができる。また、溝幅は、溝深さの半分の深さにおける幅を採用する。溝幅は、同様に、断面を電子顕微鏡で観察すれば直接測定できる。あるいは、原子間力顕微鏡(Atomic force microprobe、AFM)などの探針法によって測定できる。
(色素を主成分とする記録層)
本実施の形態において使用する色素は、300nm〜800nmの可視光(及びその近傍)波長領域に、その構造に起因した顕著な吸収帯を有する有機化合物をいう。このような色素を記録層22として形成した未記録(記録前)の状態において記録再生光ビーム27の波長λに吸収を有し、記録により変質して記録層22に再生光の反射光強度の変化として検出されうる光学的変化を起こす色素を、「主成分色素」と呼ぶ。主成分色素は、複数の色素の混合物として、上記の機能を発揮するものであってもよい。
主成分色素含有量は、重量%にして50%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。主成分色素は単独の色素が記録再生光ビーム27の波長λに対して吸収があり、記録によって変質して上記光学的変化を生じることが好ましいが、記録再生光ビーム27の波長λに対する吸収を有し、発熱することで、間接的に他方の色素を変質させ光学的変化を起こさせるように機能分担されていてもよい。主成分色素にはこの他、光吸収機能を有する色素の経時安定性(温度、湿度、光に対する安定性)を改善するためのいわゆるクエンチャーとしての色素が混合されていてもよい。主成分色素以外の含有物としては、低・高分子材料からなる結合剤(バインダー)、誘電体等が挙げられる。
主成分色素は、特に、構造によって限定されるものではない。本実施の形態においては、記録により、記録層22内にδn>0なる変化を生じるものであり、未記録(記録前)状態での消衰係数>0である限り、原則として光学的特性に対する強い制約はない。主成分色素が記録再生光ビーム27の波長λに対する吸収を有し、且つ、自らの吸光、発熱によって、変質を起こし、屈折率の低下、δn>0、を生じればよい。ここで、変質とは、具体的には、主成分色素の吸収・発熱による膨張、分解、昇華、溶融等の現象をいう。主成分となる色素そのものが変質して、なんらかの構造変化を伴い、屈折率が低下してもよい。また、δn>0なる変化は記録層22内及び/または界面に空洞が形成されてもよいし、記録層22の熱膨張による屈折率低下であってもよい。
このような変質を示す温度としては、100℃〜500℃の範囲にあることが好ましく、100℃から350℃の範囲にあることがより好ましい。保存安定性、耐再生光劣化の観点からは、150℃以上であることがさらに好ましい。また、分解温度が300℃以下であれば、特に10m/s以上の高線速度でのジッター特性が良好になる傾向があり好ましい。分解温度が280℃以下であることが、さらに高速記録での特性を良好にする可能性があるので、好ましい。通常は、以上で述べた、変質挙動は主成分色素の熱特性として測定され、熱重量分析−示差熱分析(TG−DTA)法によって、重量減少開始温度として大まかな挙動を測定できる。前述のようにdbmp<0、即ち、記録層22がカバー層24に向かって膨らむような変形が同時に起きること、がΔΦ>0なる位相変化を利用する上でより好ましい。したがって、昇華性があるか、分解物の揮発性が高く、記録層22内部に膨張のための圧力を生じうるものが好ましい。
記録(再生)光のエネルギーを吸収して、上記変質を起こすための、記録(再生)光のパワーを記録感度という。特に、400nm程度の波長での半導体レーザの出力パワーには、赤色レーザに比べてまだ低く、このため、記録感度の観点からは、k≧0.1であることが好ましい。他方、未記録状態の記録溝部反射率Rgを3%以上とするためには、k≦1.5であることが好ましく、k≦1.2であることがより好ましい。k≦1.0であることがさらに好ましい。
記録前の反射率Rあるいは、記録ピット間反射率Rは、10%以上であることがより好ましい。そのためには、kは0.6以下とするのが好ましく、0.5以下とするのがより好ましい。また、kが0.6程度より大きければ、nを1.7以下とするのが好ましく、1.6以下とするのがさらに好ましい。ただしkが1.0程度より大きい場合には、nを1.3より小さくすることが好ましい。記録層を発熱させ変質を生じさせるのに十分な光吸収が得られる。特に、10m/s以上の高線速での記録においては、記録感度を良好に保つためにも、kが0.25以上であることが好ましい。kが0.3以上であることがより好ましい。特に、記録ピット内部においては、k’≦k(つまり記録によってkが減少する)となっていれば、kの変化による反射光強度の増加が位相変化ΔΦによる反射光強度増加と矛盾せず、信号波形をひずませること無く、その振幅を大きくできて好ましい。kの低下による反射光強度増加を、付加的に利用するには、kは0.2以上であることが好ましく、さらに、0.3以上であることがより好ましい。一方、k’は0.3以下、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下とすれば、記録後の反射光率RをROM媒体と同様に高く保つ、概ね30%以上とする、ことができる。
記録層の膜厚dは、記録ピットが、カバー層溝間部に閉じ込めクロストークを十分小さくできるよう、前述のようにdGLより薄いことが好ましく、d/dGLは0.8以下とすることがより好ましく、0.7以下とすることがさらに好ましい。dGLを70nm以下とすることが好ましい、400nm近傍の波長では、dは、70nm以下とすることが好ましいが、50nm未満とすることがより好ましい。さらに、kが特に0.3以上なる記録層では、再生光ビームを多数回照射した場合に、再生光を吸収して記録層に変質が起きるのを防ぐために、記録層膜厚は、やはり50nm未満であることが好まく、40nm以下であることがより好ましい。
なお、再生光ビームの強度は、通常、再生光強度(mW)/再生光ビームの走査速度(m/s)が、0.2mW・s/m以下であることが好ましく、0.1mW・s/m以下であることがより好ましい。
さらに、記録層膜厚が上記好ましい値を超えて厚くなり過ぎると、式(9)ないしは(9a)において、位相変化量δn・dや、変形量dbmp(<0)の絶対値が大きくなり、全体としてΔΦが大きくなりすぎる場合がある。プッシュプル信号の極性が小さくなりすぎる、あるいは、極性が反転するなどしてトラッキングサーボが不安定になることがあるのでやはり好ましくない。
他方、記録層膜厚の下限は、5nm以上であり、10nm以上とすることが好ましい。
単独で好ましい特性を示す色素として「記録モード1」または「記録モード2」で利用できる色素が挙げられる。
すなわち、主吸収帯ピークが、概ね300nm〜600nmの範囲にあって、その主吸収帯のピークにおけるモル吸光係数(クロロホルム中)が、20000〜150000の範囲にあるものである。モル吸光係数が、概ね100000を超える急峻なピークを有する吸収帯では、図9において長波長端λでの屈折率が2より大きくなるので、そのような色素を用いる場合には、短波長端λに記録再生光波長が位置すること望ましい。
他方、モル吸光係数が、通常は100000以下、より好ましくは80000以下、さらに好ましくは70000以下の、比較的ゆるやか、且つ、平坦な、例えば、図19のような吸収帯の場合は、吸収帯全域にわたって、屈折率がほぼ1以上2以下となりうる。ここで、図19は、比較的平坦な主吸収帯におけるクラマース・クローニッヒの関係を説明する図である。また、消衰係数も吸収帯の全波長域にわたって、0.6以下となりうる。モル吸光係数は、20000以上が好ましく、より好ましくは30000以上であると、消衰係数が、0.2以上、さらには、0.3以上となり好ましい。従って、記録再生光波長λが、吸収帯の中心部や、長波長端λ、短波長端λのいずれに位置していても良い。
従来のような急峻なピークを有する色素を用いず、nが1〜2の範囲のλ端を好適に利用する本発明は、従来、屈折率が低いために使用することが困難なこのような色素が使用できる点でも、色素選択の幅が非常に広くなる点でも、優れているといえる。nの範囲としては、1.2〜1.9であることがより好ましく、1.2〜1.6であることがさらに好ましい。
なお、前述のようにkの値によって、nのさらに好ましい範囲を適宜選択することができるが、特に、nとkの組み合わせとして好ましい範囲は、n=1.2〜1.9かつk=0.28〜1であり、より好ましいのは、n=1.3〜1.9かつk=0.3〜1である。
さらに、色素の分解による主吸収帯の消滅だけでは、n’が1.5以下となることは少ないので、特に、nが1.6以下の場合には、空洞の形成が伴うことが好ましい。さらに、dbmp<0なる変形を伴い、その変形量|dbmp|がdの2倍以上となることが好ましい。
さらに、比較的平坦な吸収帯のさらに中央部付近を用いれば、記録再生光λの変動に対して安定であるという利点も有する。
一方、短波長端λでの記録再生を使う場合は、従来知られたCD−R、DVD−R用の長波長域に主吸収帯のある色素及びその誘導体をも使うことができる点で好ましい。このような色素は、すでに性質がよく知られ、安全性、安定性も信頼できるデータがある。また、合成ルートや量産方法も確立されており、コスト的にも有利である。
尚、λを利用する場合の利点として、色素の吸収帯が、波長400nm以下の紫外光波長域にはほとんど伸びていないので、紫外光を吸収して劣化する心配がないことが挙げられる。このことは、単なる経時安定性の問題だけでなく、カバー層形成に紫外線硬化樹脂のスピンコート法を用いることができるという利点もある。できるだけ塗布型プロセスで統一することが、装置コストも抑制できて好ましいのである。
通常の紫外線硬化樹脂硬化用の紫外線照射装置である水銀ランプ等では、概ね350nm以下の波長域の光を重合開始剤の励起用に使用するようになっている。特に、350nm以下の波長域での消衰係数が、0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましい。ゼロであってもかまわない。
上記のような吸収帯を有する色素としては、メチン系、(含金)アゾ系、ピロン系、ポルフィリン系化合物等及びこれらの混合物が挙げられる。より具体的には、含金アゾ系色素(特開平9−277703号公報、特開平10−026692号公報等)、ピロン系色素(特開2003−266954号公報)は、本来、耐光性に優れ、かつ、TG−DTAでの重量減少開始温度Tが、150℃〜400℃にあり、急峻な減量特性(分解物の揮発性が高く、空洞を形成しやすい)を有する点で好ましい。特に好ましいのは、n=1.2〜1.9、k=0.3〜1、T=150℃〜300℃である色素である。中でも、これらの特性を満足する含金アゾ色素が好ましい。
アゾ系色素としては、より具体的には、6−ヒドロキシ−2−ピリドン構造からなるカップラー成分と、イソキサゾールトリアゾール、ピラゾールから選ばれるいずれか1種のジアゾ成分とを有する化合物と、該有機色素化合物が配位する金属イオンとから構成される金属錯体化合物が挙げられる。特に、下記一般式[I]〜[II]を有する含金属ピリドンアゾ化合物が好ましい。
Figure 0004550682
(式中、R〜R10は、それぞれ独立に、水素原子または1価の官能基である。)
また、下記一般式[IV]または[V]で示される環状β−ジケトンアゾ化合物と金属イオンからなる含金属環状β−ジケトンアゾ化合物が好ましい。
Figure 0004550682
(式中、環Aは、炭素原子及び窒素原子とともに形成される含窒素複素芳香環であり、X、X’、Y、Y’、Zは各々独立に、水素原子以外に置換基(スピロ含む)を有していてもよい炭素原子、酸素原子、硫黄原子、N−R11で表される窒素原子、C=O、C=S、C=NR12のいずれかを表し、βジケトン構造とともに5または6員環構造を形成する。 11 は水素原子、直鎖又は分岐のアルキル基、環状アルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、−COR13で表されるアシル基、−NR1415を表すアミノ基のいずれかを表し、R12は水素原子、直鎖又は分岐のアルキル基、アリール基を表す。R13は炭化水基、又は複素環基を表し、R14,R15は水素原子、炭化水素基または複素環基を表すまたこれらは必要に応じて置換されてもよい。またX、X’、Y、Y’、Zが炭素原子またはN−R11で表される窒素原子の場合、隣接する両者の結合は単結合であっても二重結合であってもよい。さらに、X、X’、Y、Y’、Zが炭素原子、N−R11で表される窒素原子、C=NR12の場合、隣接するもの同士で互いに縮合して、飽和又は不飽和の炭化水素環あるいは複素環を形成してもよい。)
下記、一般式[VI]で示される化合物と金属からなる含金族アゾ化合物もまた好ましい。
Figure 0004550682
(式中Aは、これが結合している炭素原子及び窒素原子とともに複素芳香環を形成する残基を表し、Xは活性水素を有する基を表し、R16及びR17は各々独立に水素または任意の置換基を表す。)
さらに、下記一般式[VII]で表される含金族アゾ化合物も挙げられる。
Figure 0004550682
(式[VII]中、環Aは、炭素原子及び窒素原子とともに形成される含窒素複素芳香環であり、XLは、Lが脱離することによりXが陰イオンとなり金属が配位可能となる置換基を表す。R18,R19は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖または分岐のアルキル基、環状アルキル基、アラルキル基又はアルケニル基を表し、これらは各々隣接する置換基同士または互いに縮合環を形成してもよい。R20,R21,R22は各々独立に水素または任意の置換基を表す。)
これらのアゾ系色素は、従来CD−RやDVD−Rで用いられたアゾ系色素より、さらに、短波長よりの主吸収帯を有しており、400nm近傍での消衰係数が、0.3〜1程度の大きな値となるので好ましい。金属イオンとしては、Ni,Co,Cu、Zn、Fe,Mnの2価の金属イオンが上げられるが、特に、Ni,Coを含有する場合が、耐光性、耐高温高湿環境性に優れており、好ましい。なお、式[VIII]で表される含金アゾ系色素は、長波長化して後述の化合物Yとしても用いることができる。
ピロン系色素としては、より具体的には、下記一般式[VIII]又は[IX]を有する化合物が好ましい。
Figure 0004550682
(式[VIII]中、R23〜R26は水素原子または任意の置換基を表すか、R23とR24,R25とR26が各々縮合して炭化水素環または複素環構造を形成する。該炭化水素環及び該複素環は、置換基を有していてもよい。Xは電子吸引性基を表し、Xは水素原子または−Q−Y(Qは直接結合、炭素数1または2のアルキレン基、アリーレン基またはヘテロアリーレン基を表し、Yは電子吸引性基を表す。該アルキレン基、該アリーレン基、ヘテロアリーレン基はY以外に任意の置換基を有していてもよい。Zは−O−、−S−、−SO−、−NR27−(R27は水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、−NR2829(R28,R29は各々独立して水素原子、置換されてもよい炭化水素基または置換されてもよい複素環基、−COR30−(R30は置換されてもよい炭化水素基または置換されてもよい複素環基を表す。)、−COR31(R31は置換されてもよい炭化水素基または置換されてもよい複素環基を表す)を表す。)
Figure 0004550682
(式[IX]中、R32〜R35は水素原子または任意の置換基を表すか、R32とR33,R34とR35が各々縮合して炭化水素環または複素環構造を形成する。該炭化水素環及び該複素環は、置換基を有していてもよい。環AはC=Oと共に置換基を有していてもよい炭素環式ケトン環または複素環式ケトン環を表し、Zは−O−、−S−、−SO−、−NR36−(R36は水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、−NR3738(R37,R38は各々独立して水素原子、置換されてもよい炭化水素基または置換されてもよい複素環基、−COR39−(R39は置換されてもよい炭化水素基または置換されてもよい複素環基を表す。)、−COR40(R40は置換されてもよい炭化水素基または置換されてもよい複素環基を表す)を表す。)
尚、本実施の形態が適用される光記録媒体20においては、nが2程度より大きい色素Xに、n<nなる色素または他の有機物、無機物材料を混合し(混合物Y)、記録層22の平均的なnを低下させて、nと同等以下とすることも可能である。この場合、n>nなる色素は、主として、kの大きな色素を用いて光吸収機能を実現し、n<nなる色素は、主として、分解によって、dbmp<0なる変形を生じせしめる材料を混合することが好ましい。尚、この場合、材料は色素であっても良い。
色素Xは、n>n、特に、n>2、であって、主吸収帯が記録再生光波長の長波長側(図9のλの帯域)で、高屈折率を有する色素である。このような色素としては、主吸収帯のピークが300nm〜400nmにあるもので、屈折率nが2〜3の範囲にあるものが好ましい。
色素Xとしては、具体的には、ポルフィリン、スチルベン、(カルボ)スチリル、クマリン、ピロン、カルコン、トリアゾ−ル、メチン系(シアニン系、オキソノール系)、スルホニルイミン系、アズラクトン系化合物等及びこれらの混合物が挙げられる。特に、クマリン系色素(特開2000−043423号公報)、カルボスチリル系色素(特開2001−287466号公報)、前述のピロン系色素(特開2003−266954号公報)等は適度な分解または昇華温度を有するので好ましい。また、主吸収帯ではないが、それに準じた強い吸収帯を350nm〜400nm付近に有するフタロシアニン、ナフタロシアニン化合物及びその誘導体、さらにはこれらの混合物も好ましい。
混合物Yとしては、含金アゾ系色素で、主吸収帯が600nm〜800nmの波長帯にあるものが挙げられる。CD−RやDVD−Rの使用に適した色素で、405nm近傍では、消衰係数が0.2以下さらには、0.1以下であるものが好ましい。その屈折率nは、長波長端λでは、2.5以上と非常に高くても、短波長端では吸収のピークから、十分離れているので、1.5程度となり都合が良い。
より具体的には、特開平6−65514号公報において開示される一般式[X]で示される含金族アゾ化合物が挙げられる。
Figure 0004550682
(式[X]中、R41、R42は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、フッ素化アルキル基、分岐アルキル基、ニトロ基、シアノ基、COOR45、COR46、OR47、SR48(R45〜R48は炭素数1〜6のアルキル基、フッ素化アルキル基、分岐アルキル基、環状アルキル基を表す)を表し、Xは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、分岐アルキル基、OR49、SR50(R49,R50は炭素数1から3のアルキル基を表す)を表し、R43、R44は水素原子、炭素数1から10のアルキル基、分岐アルキル基、環状アルキル基を表し、隣接するベンゼン環と結合していても、また。窒素原子、R43,R44でひとつの環を形成していても差し支えはない。)
あるいは、特開2002−114922で開示される一般式[XI]で示される含金族アゾ化合物も好ましい。
Figure 0004550682
(式[XI]中、R51、R52は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、フッ素化アルキル基、分岐アルキル基、ニトロ基、シアノ基、COOR55 、COR56、OR57、SR58(R55〜R58は炭素数1〜6のアルキル基、フッ素化アルキル基、分岐アルキル基、環状アルキル基を表す)を表し、Xは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、分岐アルキル基、OR59、SR60(R59,R60は炭素数1から3のアルキル基を表す)を表し、R53、R54は水素原子、炭素数1から3のアルキル基をあらわす。)が挙げられる。
本実施の形態においては、記録層22は塗布法、真空蒸着法等で形成するが、特に、塗布法で形成することが好ましい。即ち、上記色素を主成分に結合剤、クエンチャ−等とともに適当な溶剤に溶解して記録層22塗布液を調整し、前述の反射層23上に塗布する。溶解液中の主成分色素の濃度は、通常、0.01重量%〜10重量%の範囲であり、好ましくは、0.1重量%〜5重量%、さらに好ましくは、0.2重量%〜2重量%とする。これにより、通常、1nm〜100nm程度の厚みに記録層22が形成される。その厚みを50nm未満とするために、上記色素濃度を1重量%未満とするのが好ましく、0.8重量%未満とするのがより好ましい。また、塗布の回転数をさらに調整することも好ましい。
主成分色素材料等を溶解する溶剤としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコール等のアルコール;テトラフルオロプロパノール(TFP)、オクタフルオロペンタノール(OFP)等のフッ素化炭化水素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;ジクロルメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルシクロヘキサン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン等を挙げることができる。これらの溶剤を溶解すべき主成分色素材料等の溶解性を考慮して適宜選択し、また、2種以上を混合して用いることができる。
結合剤としては、セルロース誘導体、天然高分子物質、炭化水素系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル樹脂、ポリビニールアルコール、エポキシ樹脂等の有機高分子等を使うことができる。さらに、記録層22には、耐光性を向上させるために、種々の色素又は色素以外の褪色防止剤を含有させることができる。褪色防止剤としては、一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項クエンチャー等の褪色防止剤の使用量は、前記記録層材料に対して、通常、0.1重量%〜50重量%であり、好ましくは、1〜30重量%であり、さらに好ましくは、5重量%〜25重量%である。
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロ−ルコート法等が挙げられるが、特に、ディスク上記録媒体においては、スピンコート法が膜厚の均一性を確保しかつ、欠陥密度を低減できて好ましい。
(界面層)
本実施の形態においては、特に、記録層22とカバー層24の間に界面層を設けることで、記録層22のカバー層24側への膨れ、dbmp<0、を有効に利用することができる。カバー層24の厚みは、1nm〜50nmであることがより好ましい。さらに好ましくは、上限は30nmとすることである。また、下限は5nm以上とすることが好ましい。界面層における反射は、できるだけ小さいことが望ましい。主反射面である反射層23からの反射光の位相変化を選択的に利用するためである。界面層に主反射面があることは、本実施の形態においては好ましいことではない。このため、界面層と記録層22、あるいは界面層とカバー層24の屈折率の差が小さいことが望ましい。その差は、いずれも、1以下が好ましく、より好ましくは、0.7以下、さらに好ましくは0.5以下である。
尚、界面層を用いて、図4に示すような混合層25mの形成を抑制することや、逆構成で記録層22上にカバー層24を貼り付ける際の接着剤による腐食防止や、カバー層24を塗布するときの溶剤による記録層22の溶出を防止する効果が知られており、本実施の形態においても、そのような効果を併せて利用することは適宜可能である。界面層として用いられる材料は、記録再生光波長に対して透明で、かつ、化学的、機械的、熱的に安定なものが好ましい。ここで、透明とは、記録再生光ビーム27に対する透過率が80%以上となることであるが、90%以上であることがより好ましい。透過率の上限は100%である。
界面層は、金属、半導体等の酸化物、窒化物、炭化物、硫化物、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)等のフッ化物等の誘電体化合物やその混合物が好ましい。界面層の屈折率は、前述のように、記録層やカバー層の屈折率との差が1以下のものが好ましく、値としては1〜2.5の範囲にあることが望ましい。界面層の硬度や厚みにより、記録層22の変形、特に、カバー層24側へのふくらみ変形(dbmp<0)を促進したり、抑制したりすることができる。ふくらみ変形を有効に活用するためには、比較的、硬度の低い誘電体材料が好ましく、特に、ZnO,In、Ga、ZnSや希土類金属の硫化物に、他の金属、半導体の酸化物、窒化物、炭化物を混合した材料が好ましい。また、プラスチックのスパッタ膜、炭化水素分子のプラズマ重合膜を用いることもできる。尚、界面層が設けられても、その厚みや屈折率が、記録溝部及び溝間部において均一で、記録により顕著に変化しなければ、式(2)、式(3)の光路長、式(7)〜式(9)はそのまま成り立つ。
(カバー層)
カバー層24は、記録再生光ビーム27に対して透明で複屈折の少ない材料が選ばれ、通常は、プラスチック板(シートと呼ぶ)を接着剤で貼り合せるか、塗布後、光、放射線、または熱等で硬化して形成する。カバー層24は、記録再生光ビーム27の波長λに対して透過率70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
シート材として用いられるプラスチックは、ポリカーボネート、ポリオレフィン、アクリル、三酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート等である。接着には、光、放射線硬化、熱硬化樹脂や、感圧性の接着剤が用いられる。感圧性接着剤としては、また、アクリル系、メタクリレート系、ゴム系、シリコン系、ウレタン系の各ポリマーからなる粘着剤を使用できる。
例えば、接着層を構成する光硬化性樹脂を適当な溶剤に溶解して塗布液を調整した後、この塗布液を記録層22または界面層上に塗布して塗布膜を形成し、塗布膜上にポリカーボネートシートを重ね合わせる。その後、必要に応じて重ね合わせた状態で、媒体を回転させるなどして塗布液をさらに延伸展開した後、UVランプで紫外線を照射して硬化させる。あるいは、感圧性接着剤をあらかじめシートに塗布しておき、シートを記録層22あるいは界面層上に重ね合わせた後、適度な圧力で押さえつけて圧着する。
前記粘着剤としては、透明性、耐久性の観点から、アクリル系、メタクリレート系のポリマー粘着剤が好ましい。より具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−オクチルアクリレートなどを主成分モノマーとし、これらの主成分モノマーを、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド誘導体、マレイン酸、ヒドロキシルエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等の極性モノマーを共重合させる。主成分モノマーの分子量調整、その短鎖成分の混合、アクリル酸による架橋点密度の調整により、ガラス転移温度Tg、タック性能(低い圧力で接触させたときに直ちに形成される接着力)、剥離強度、せん断保持力等の物性を制御することができる(非特許文献11、第9章)。アクリル系ポリマーの溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等が用いられる。上記粘着剤は、さらに、ポリイソシアネート系架橋剤を含有することが好ましい。
また、粘着剤は、前述のような材料を用いるが、カバー層シート材の記録層側に接する表面に所定量を均一に塗布し、溶剤を乾燥させた後、記録層側表面(界面層を有する場合はその表面)に貼り合わせローラー等により圧力をかけて硬化させる。該粘着剤を塗布されたカバー層シート材を記録層を形成した記録媒体表面に接着する際には、空気を巻き込んで泡を形成しないように、真空中で貼り合せるのが好ましい。
また、離型フィルム上に上記粘着剤を塗布して溶剤を乾燥した後、カバー層シートを貼り合わせ、さらに離型フィルムを剥離してカバー層シートと粘着剤層を一体化した後、記録媒体と貼りあわせても良い。
塗布法によってカバー層24を形成する場合には、スピンコート法、ディップ法等が用いられるが、特に、ディスク上媒体に対してはスピンコート法を用いることが多い。塗布によるカバー層24材料としては、同様に、ウレタン、エポキシ、アクリル系の樹脂等を用い、塗布後、紫外線、電子線、放射線を照射し、ラジカル重合もしくは、カチオン重合を促進して硬化する。
ここで、dbmp<0なる変形を利用するためには、カバー層24の少なくとも記録層22あるいは、上記界面層に接する側の層(少なくとも、dGLと同程度かより厚めの範囲)が、膨れ変形に追従しやすいことが望ましい。そうして、dbmpがdの1倍から3倍の範囲にあることが好ましい。むしろ、1.5倍以上の大きな変形を積極的に利用することが望ましい。カバー層24は、適度なやわらかさ(硬度)を有することが好ましく、例えば、カバー層24が厚み50μm〜100μmの樹脂のシート材からなり、感圧性の接着剤で貼り合せた場合は、接着剤層のガラス転移温度が−50℃〜50℃と低く、比較的やわらかいので、dbmp<0なる変形が比較的大きくなる。特に好ましいのは、ガラス転移温度が室温以下となっていることである。接着剤からなる接着層の厚みは、通常1μm〜50μmであることが好ましく、5μm〜30μmであることがより好ましい。接着層材料の厚み、ガラス転移温度、架橋密度を制御してかかる膨れ変形量を積極的に制御する変形促進層を設けることが好ましい。あるいは、塗布法で形成するカバー層24においても、1μm〜50μm、より好ましくは、5μm〜30μmの厚みの比較的低硬度の変形促進層と、残りの厚みの層に分けて多層に塗布することも、変形量dbmpの制御のためには好ましい。
このように、カバー層の記録層(界面層)側に粘着剤、接着剤、保護コート剤等からなる変形促進層を形成する場合、一定の柔軟性を付与するため、ガラス転移温度Tgが25℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、−10℃以下であることがさらに好ましい。ここでいうガラス転移温度Tgは、粘着剤、接着剤、保護コート剤等の硬化後において測定した値とする。Tgの簡便な測定方法は、示差走査熱分析(DSC)である。また、動的粘弾性率測定装置により、貯蔵弾性率の温度依存性を測定しても得られる(非特許文献11、第5章)。
bmp<0なる変形を促進することは、LtoHの信号振幅を大きくできるのみならず、記録に必要な記録パワーを小さくできる利点もある。他方、変形が大きすぎるとクロストークが大きくなったり、プッシュプル信号が小さくなりすぎたりするので、変形促進層はガラス転移温度以上においても適度な粘弾性を保持していることが好ましい。
カバー層24は、さらにその入射光側表面に耐擦傷性、耐指紋付着性といった機能を付与するために、表面に厚さ0.1μm〜50μm程度の層を別途設けることもある。カバー層24の厚みは、記録再生光ビーム27の波長λや対物レンズ28のNA(開口数)にもよるが、0.01mm〜0.3mmの範囲が好ましく、0.05mm〜0.15mmの範囲がより好ましい。接着層やハードコート層等の厚みを含む全体の厚みが、光学的に許容される厚み範囲となるようにするのが好ましい。たとえば、いわゆるブルーレイ・ディスクでは、100μm±3μm程度以下に制御するのが好ましい。
なお、変形促進層を設ける場合のように、カバー層の記録層側に屈折率の異なる層を設けた場合、本発明におけるカバー層屈折率nとしては、記録層側の層の値を参照する。
(その他の構成)
本実施の形態においては、前述の記録層22とカバー層24との界面の他に、基板21、反射層23、記録層22、のそれぞれの界面に、相互の層の接触・拡散防止や、位相差及び反射率の調整のために界面層を挿入することができる。
(他の実施の態様)
(1)多層記録用半透明記録媒体
本実施の形態が適用される光記録媒体20において、反射層23の膜厚を薄くし、記録再生光の略50%以上が反射層23を透過するような薄さにすると、いわゆる多層記録媒体が可能になる。即ち、基板21上に、複数の情報層を設けた記録媒体である。
図10は、2層の情報層を設けた光記録媒体100を説明する図である。記録再生光ビーム107が入射する側の情報層をL1層、奥側にある情報層をL0層と呼ぶ。L1層は、透過率50%以上であることが好ましい。L1層の半透明反射層113が、例えば、Ag合金であれば、Ag合金の膜厚を1nm〜50nmが好ましく、より好ましくは、5nm〜30nm、さらに好ましくは、5nm〜20nmとすることが好ましい。このような透過性の高い反射層は半透明反射層113と呼ばれる。L0層とL1層との間には、それぞれの信号の混信を防止するために、透明な中間層114が設けられる。尚、図10におけるL0層における反射層103には、前述の反射層23(図2)と同様の材料が使用できる。但し、この場合にも、主反射面は、L1層においては半透明反射層113と記録層112との界面にあり、L0層においては反射層103と記録層102との界面にあることが、本実施の形態においては重要である。
例えば、記録再生光ビーム107波長λ=405nm、NA(開口数)=0.85の光学系では、中間層114の厚みは約25μm、カバー層111の厚みは約75μm程度とされる。中間層114の厚み分布は、同様に±2μm程度以下とするのが好ましい。L0層、L1層それぞれに、本実施の形態が適用される光記録媒体100における層構成の範囲において異なる層構成を用いてもよいし、同一の層構成を用いてもよい。それぞれの情報層に用いる色素を主成分とする記録層102,112の組成や材料が異なっていても良いし、同じでもよい。
本実施の形態においては、特に、位相変化を利用しているので、記録前後でL1層を透過する光量がほとんど変化しないことが期待される。これは、L1層が記録・未記録であるにかかわらず、L0層への透過光量、L0層からの反射光量がほとんど変化しないことを意味し、L1層の状態に関わらず、安定的にL0層の記録再生ができるので好ましいことである。
(2)パ−シャルROMディスク
本実施の形態が適用される光記録媒体20において、記録層22での再生光の吸収が比較的小さい。このため、鏡面部における反射膜自体からの反射光強度は、記録層22においてほとんど減衰することが無い。その結果、記録層膜厚をゼロとした場合の反射光強度の50%以上の値を維持できる。一方、記録溝部が基板溝部であって、その深さが、「中間溝」であるので、未記録状態のRは、3%〜30%と低くできる。通常、ROMのピット深さは、変調度とプッシュプル信号強度を考慮して、図6において、位相差Φがπ/2〜πの範囲に設定されるので、ROMのピットの深さと本発明の中間溝の深さはほぼ同じになる。つまり、ROMのピット周辺部の反射光の位相から該ピット部の反射光の位相を引いた値、Φp、が、式(2)で定義されたΦbとほぼ同じにできる。このため、記録溝を部分的に断続的に形成した記録ピットを配置すれば、通常のROMのように、位相による反射光強度変化を用いて、予め基板上に情報を記録しておくことができる。さらに、記録溝を部分的に断絶した部分と、連続的な溝部を形成すれば、パーシャルROMが容易に実現できる。これが、図6の「浅溝」や「深溝」であれば、ROM部での信号振幅がとりにくいか、ピットの転写が困難となる。従来のCD−R,DVD−Rでは、「深溝」であったので、ピット深さを別途大きく異なる深さの「中間溝」の範囲とする必要があり、あらかじめ、基板上にパーシャルROMを形成するのは非常な困難が伴っていた。
しかし、本発明によれば溝の断続や連続は、スタンパー形成時のガラスマスター上のフォトレジスト厚みが一定であってもよく、露光用レーザー光のオン・オフで容易に実現できる。通常はフォトレジストの露光される部分が基板の溝もしくはピット部になる。このようにして形成したスタンパーを用い、基板上の少なくとも一部に、記録溝と同じ深さのピット列からなる再生専用データ領域を設けた基板が形成できる。この基板上に、ROM部、記録溝部ともに、図2と同一の層構成、すなわち、少なくとも、光反射機能を有する層23と、未記録状態において記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分として含有する記録層22と、前記記録層に対して記録再生光が入射するカバー層24と、を形成することにより、パーシャルROM媒体が形成される。本発明光記録媒体においては、色素主成分記録層22での記録再生光の吸収は小さく、透過率を70%以上とできるので、ROM部においては、色素主成分記録層のないROM媒体とほぼ同等の反射率と変調度が得られる。また、記録溝部に記録ピットを形成した後には、若干低めてはあるものの記録後反射率RHは、ROM部のマーク間(スペース)反射率に近い反射率が得られるので、同一のサーボゲインを保ったままのサーボが可能となる。記録溝部では、ROM媒体のトラッキングサーボに用いられる、DPD(Differential Phase Detection)法によるトラッキングが、ROM部と同様に可能となるという利点もある。DPD信号は、(記録)ピット(マーク)部の位相差の寄与が大きいので、位相変化を主とする記録ピット部を有する本発明記録媒体では、ROM部同等の大きなDPD信号を確保できるのである。
なお、上記のようなパーシャルROMの製造法において、ROM部ピット深さと記録溝の深さdGLSは同じとなるが、厳密に同じである必要は無い。たとえば、露光用のレーザー光のオン・オフという、レーザー光パワーの2値変調ではなく、ピット部と記録溝部でのオンまたはオフ時のパワーを異なるものにすれば、ピット深さと、記録溝の深さを異なるものとできる。このように、本発明において記録ピットと記録溝の深さが同じであるとは、|Φp−Φb|がπ/2未満であることをいう。ただし、通常は、π/3以下であることが好ましく、π/4以下であることがより好ましい。
また、記録層22に用いる色素を特定条件で、もしくは、経時的に腐食しやすいものにすれば、初期は再生可能で、所定期間後に再生不可となるROM媒体が実現できる。たとえば、レンタルビデオ店で、所定の貸し出し期間後、再生不能となれば、返却不能で、不当に利用されるおそれの少ないデジタル・ビデオ・ディスクとして利用できる。
他方、記録層22に用いる色素を、初期は不透明でありながら特定条件下で、もしくは、経時的に透明化するようなものにすれば、配布時には再生不可能ながら、ユーザーの手元に渡って後に、再生可能となるようなROM媒体も実現できる。
さらに、ROMピット部に、記録光ビームを照射して、本実施の形態において説明した記録方法であるLtoH記録を行うと、ピット部の反射率が上昇して、ROM信号の再生を不可能にするような使用法も可能であり、記録媒体上の情報の機密保護に利用できる。
(3)プッシュプル信号に関する追加規定
図1に示した従来構成の光記録媒体10では、塗布法で記録層12を形成するので、d>dとなる。このため、記録層12の上に形成される反射基準面での溝段差dGLは、基板11上の溝段差dGLSより浅くなる。すなわち、dGL<dGLSである。従って、図1の構成の光記録媒体10では、dGLSを、図6において説明した「深溝」の深さとしても、反射基準面では、「浅溝」〜「中間溝」程度の段差となりうる。また、未記録の反射率RがROM互換性確保のために、通常50%〜80%程度と高くなるように設計されている。このため、規格化プッシュプル信号強度IPPnormは、DVDでは、通常0.2〜0.4程度である。光記録装置では、このような規格化プッシュプル信号強度値に合わせて設計されており、次世代の青色レーザ対応の記録装置でも、媒体側が同様の値を実現することが想定の上、設計が進んでいる。
一方、図2に示した本実施の形態が適用される光記録媒体20では、反射基準面の溝段差dGLが基板溝段差dGLSとほぼ等しくなることはすでに述べた。本発明者らの検討によれば、dGLSとして、図6において説明した「中間溝」を用いると、dGLも同等の値となる。また、未記録状態の記録溝部反射率も、従来のROM互換媒体に比べれば低く、通常3%〜30%程度である。このため、IPPnormは、従来構成の光記録媒体10(図1)より大きくなり、場合によっては、1を超える大きな値となる。また、記録後は、反射率が上昇するので、IPPnormは、記録前の50%程度にまで低下することが多い。しかし、少なくともIPPnormは、トラッキングサ−ボを安定化させるために、0.2以上は確保することが望ましい。特に、記録前IPPnormを小さくするために「浅溝」に近づけると十分な信号振幅が得られなくなる。そこで、少なくとも記録後は、現行のDVD−R等と同程度のIPPnorm値である0.2〜0.5となるようにする。そして記録前は、この値を維持するためにIPPnormを0.5〜0.8とすることが好ましい。このため、記録再生光波長λを約405nm、NA(開口数)=0.85とするビームでは、トラックピッチを0.32μmとし、dGLS≒dGLを、40nm以上60nm以下とするのが好ましい。溝幅を0.14μm〜0.18μmとする。また、未記録状態での記録溝部反射率Rgは、10%〜25%とするのが好ましい。そのため、記録層膜厚dを20nm〜40nm、屈折率nを1〜2、消衰係数を0.2〜0.5とすることがより好ましい。
(位相差による記録の検証)
主として、図4に示す記録ピット部25pでの位相変化ΔΦによって、LtoH記録が行われているかどうかは、以下のようにして検証できる。尚、図3における記録ピット部16p、図5における記録ピット部26pでの位相変化の寄与についても同様にして検証できる。本実施の形態では、記録層22の記録前後における平面状態の反射率変化による反射光強度変化が記録の主たる要素ではない。従って、反射層23、記録層22、カバー層24等の層構成を、平面上に設けて記録を行ったときに、案内溝深さが「中間溝」である場合と比べて、LtoH極性で、遜色のない信号振幅が得られれば、位相変化による反射光強度変化ではなく、平面状態での反射率変化による反射光強度が主であると考えられる。
あるいは、鏡面部(平面状態にある部分)に記録を行った場合に、なんらかの信号振幅が観測されたとしても、その信号振幅が所定の「中間溝」深さでLtoH記録を行った場合の信号振幅の半分以下であれば、主たる信号振幅の要因は位相の変化であると考えられる。
本実施の形態では、図6に示すように、案内溝を設けることで、平面未記録状態の反射率R0に対して、記録溝部での未記録状態の反射光強度を低下させ、記録によって、溝深さが光学的に浅くなるような位相変化を生じさせ、記録後の反射光強度をR0に近づけることを主たる記録原理としている。従って、上述のように、平面上における記録において、R0より反射光強度が大幅に増加するようなことは、ありえないからである。図6に従えば、ΔΦ>0なる位相変化があれば、かえって反射光強度低下、即ち、HtoL記録が起こる可能性が高い。その場合には、プッシュプル信号の極性は反転する。
R0より反射光強度が増加するのは、記録層22の消衰係数の顕著な低下により、記録層22での吸収光量が大幅に減少し、反射光強度の増加につながっている可能性が高い。完全な平面(鏡面部)への記録を集束光で行い再生して検証することは、トラッキングサーボの追従ができないので困難な可能性があるが、その場合も、例えば、20nm〜30nm程度のごく浅い溝において、案内溝へのトラッキングを維持しながら同様の試験を行い、同様に、「中間溝」の場合よりLtoHの記録信号振幅が大幅(概ね半分以下)に低下していれば、位相変化が作用していると判断できる。そのような浅溝の場合にも依然として、大きなLtoHの記録信号振幅が観測される場合には、記録層22の消衰係数の顕著な低下による平面状態での反射率低下の記録への寄与が主であるところが、本実施の形態における位相差による記録方法とは異なると考えられる。
あるいは、完全に平面状態での記録を行わなくても、案内溝深さを|Φb|=πに近い深さから浅くしていくときに、概ね、|Φb|=π/2より浅くなったところで、LtoHの信号振幅が低下していけば、同様に、位相変化が作用していると判断できる。
(薄膜状態の記録層の屈折率の測定)
本実施の形態における記録層22の屈折率は、以下の方法で測定した値を用いる。光学定数(複素屈折率n =n−i・k)はエリプソメトリー(偏光解析)によって測定した。以下にその測定及び算出方法について述べる。
エリプソメトリーではp偏光、s偏光を試料に照射し、光反射による偏光状態の違いから、光学定数や薄膜の膜厚などを測定する手法である。測定値としてはp偏光、s偏光の振幅反射係数r、振幅反射係数rの比として次式で定義される位相差Δ及び振幅比Ψが得られ、この値から数値計算(最小二乗法)によるフィッティング等により光学定数や薄膜膜厚を算出する。
Figure 0004550682
本測定においては、先ず、ポリカーボネートからなる基板上に色素を塗布したサンプルを用意し、このサンプルに空気中から波長λ=405nmの光を入射角を変化させながら入射させ、上記Ψ及びΔの入射角依存性を測定した。
一方で媒質(空気)/薄膜(色素)/基板(ポリカーボネート)と形成されたサンプルに空気側から波長λの光を入射角θで入射した際のρ=tanΨ・exp(iΔ)は媒質、薄膜、基板の複素屈折率をそれぞれN、N,N=n 、また薄膜の膜厚をdとしたとき次式(23)で表されることが一般に知られている(非特許文献10)。
Figure 0004550682
Figure 0004550682
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Figure 0004550682
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この式(23)を、上記測定したΨ及びΔの入射角依存性と矛盾なく説明できる色素薄膜の複素屈折率N(=n =n−i・k)及び膜厚dを最小二乗法により求める。
尚、ここで空気の屈折率N、及びポリカーボネートの屈折率Nは文献値等によりN=1.0、N=1.58使用した。
但し、ここでの最小二乗近似では複数のn、k、dの組み合わせが求まるのみで一意に求めることはできない。但し、n、k、dどれか一つの値が求められれば他の二つの値を決定することは可能である。
本測定の目的はn、kを求めることであるからdを別途求める必要がある。そこで、本実施の形態では、n,kは波長に依存する量であるが、dは波長に依存しない量であることを利用した。すなわち、色素の吸収スペクトルの波長依存性において、吸収がない、すなわち、kがゼロとみなせる波長λで、先ず、n,dを求め、次いで、このdを用いて、所定の波長λ(記録再生光波長)における、n,kを求めるのである。
以下、具体例として下記の構造式を有するNi含有アゾ色素(色素A2)(クロロホルム溶液中でのモル吸光係数は55000である)の光学定数を求めた過程を記述する。
先ず、直径120mmの円盤状の案内溝を有しない平坦な表面のポリカーボネート基板に、その中心付近に色素A2を0.75wt%含有するオクタフルオロペンタノール(OFP)溶液0.8gを滴下し、20秒間で4200rpmまで回転数を上昇し3秒間回転維持することで色素A2を含有するOFP溶液を延伸した。その後100℃で1時間保持することで溶媒であるOFPを揮発させ色素A2の薄膜を形成した。
Figure 0004550682
日本分光社製エリプソメーター「MEL−30S」を用いて、波長405nmにおけるΨ、Δの入射角依存性を40°から50°の範囲で測定した。ここで、図20は、色素A2のエリプソメトリー測定データの一例を示す図である。この測定値に対し、前述した式(23)に最小二乗法を適用し、n、k、dを求めた。ここで最小二乗法を適用する場合に初期条件として所与のdを与えると、複数のn、k、dの組み合わせ候補が求められた。このn、kのd依存性をグラフとしてプロットしたものを図21に示す。ここで、図21は、色素A2のエリプソメトリー測定より得られたΔ、Ψをもとに、膜厚dを所与の初期値としてn,kを求め、d依存性として示した図である。即ち、図21によれば、dを可変パラメーターとして与えられたとき、最小二乗法により、式(23)におけるr、rの入射角依存性を説明できる最も良い近似値を与えるn,kが求められる。
次に、膜厚dを求めるため先ず日立社製スペクトルメーター「U3300」で色素の吸収スペクトルを測定した。ここで、図22は、色素A2の吸収スペクトルの一例を示す図である。図22によれば、(波長)=700nmでは吸収がないことが分かる。この(波長)=700nmで同様にΨ、Δの入射角依存性を40°から50°の範囲で測定し、式(23)でk=0の条件を付加して最小二乗法を適用したところ、一意にn及びd=28.5nmが求められた。このdの値を図21に適用することで、波長405nmにおける屈折率、消衰係数がn=1.37、k=0.48が求められた。
同様の手順を吸収帯の各波長で繰り返し行い、色素A2の主吸収帯のn の波長依存性を求めた。ここで、図23は、異常分散のある主吸収帯での複素屈折率n の波長依存性の実測例である。図23によれば、図19で示されたような比較的急峻でない吸収帯に対するクラマース・クローニヒ型の異常分散関係が存在することが、本測定法によっても確かめられた。
(本発明に係る記録方法及び光記録装置について)
本発明は、また、案内溝が形成された基板上に、少なくとも、光反射機能を有する層と、未記録時に記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分とする記録層と、カバー層24とが順次積層された構造を有する光記録媒体において、記録再生光ビーム27が前記カバー層に入射する面から遠い側の案内溝部25を記録溝部として、前記カバー層側から前記記録再生光を入射して、前記記録溝部に形成した記録ピット部の反射光強度が当該記録溝部の未記録時の反射光強度より高くすることを特徴とする光記録方法を提示する。本記録方法は、いわゆる膜面入射型記録媒体に対する記録方法であって、特に、波長350〜450nmの青紫色レーザーダイオードを記録再生光源としてもちい、NA=0.6〜1の高NAの集束ビームを用いる高密度記録に適している。
本発明に用いる記録装置の基本構造は、従来の光記録装置と同じものを用いることができる。例えば、そのフォーカスサーボ方式や、トラッキングサーボ方式は、従来公知の方式を適用できる。集束ビームの焦点位置のスポットが、カバー層溝間部に照射され、トラッキングサーボによって、該カバー層溝間部を追従するようになっていればよい。より具体的には、図7を用いて説明したようなプッシュプル信号を利用する方法が好ましいし、通常は、プッシュプル信号が利用されている。
本発明では、前述のように記録ピットとその周辺部の位相の異なる反射光の2次元的干渉を考慮した「位相差によって生じる(局所的)反射光強度変化」を検出するので、集束された記録再生光ビーム27のスポットの記録溝部横断方向の直径は通常、記録ピットの幅より大きくする。本発明における記録ピットの幅は、記録溝部の溝幅に制限されるので、記録ビームスポット径D(ガウシアンビームの1/eの強度で定義する)は、記録溝幅(カバー層溝間部の幅)Wgより広いことが好ましい。ただし、あまりに広すぎては、隣接記録溝部とのクロストークが増大するので、通常は、Wg<D≦2TP、(TPは、記録溝のトラックピッチ)とすることが好ましく、D≦1.5TP、であることがより好ましい。
カバー層溝間部に記録を行う場合、集束された記録再生光ビーム27は、記録層主成分色素を昇温・発熱せしめて、変質(膨張、分解、昇華、溶融等)を起こさせる。マーク長変調記録を行う場合、記録再生光ビームのパワー(記録パワー)をマーク長に従って、強弱変調させる。なお、マーク長変調方式は、特に制限は無く、通常用いられるRun−Length−Limited符号である、EFM変調(CD)、EFM+変調(DVD)、1−7PP変調(ブルーレイ)等を適用できる。
ただし、HtoL極性信号を前提とした記録再生系においては、LtoH記録に当たって、マークとスペースでの記録信号極性が逆になるように記録データ信号の極性を予め反転させておくことがある。こうすれば、記録後の信号は、見かけ上、HtoL極性の信号と同等にできる。
通常は、マーク部で記録パワーを高レベルPwとし、マーク間(スペース)で低レベルPsとする。Ps/Pwは、通常0.5以下とする。Psは一回だけの照射では、記録層に上記変質を生じさせないようなパワーであり、Pwに先行して記録層を予熱したりするために利用される。公知の記録パルスストラテジーは、本発明記録方法及び記録装置においても適宜使用される。例えば、記録マーク部に対応する記録パワーPw照射時間はさらに、短い時間で断続的に照射されたり、複数のパワーレベルに変調したり、Pw照射後、Psに移行するまでの一定時間Psよりもさらに低いパワーレベルPbを照射する、等の記録ストラテジーが使用できる。
以下の実施例、比較例においては、同様な手順によって各色素のn を求めている。
以下、実施例に基づき本実施の形態をさらに詳細に説明する。尚、本実施の形態は実施例に限定されない。
(試料の作成方法及び評価方法)
トラックピッチ0.32μmで溝幅約0.18μm〜0.2μm、溝深さ約25nmから65nmまで条件を振って案内溝を形成したポリカーボネート樹脂(波長405nmでの屈折率は1.58である。以下、屈折率は、同様に波長405nmでの値である。)の溝深さステップ基板上に、Ag97.4Nd0.7Cu0.9Au1.0,Ag98.1Nd1.0Cu0.9、もしくはAg99.45Bi0.35Nd0.2合金ターゲット、組成はいずれも原子%、をスパッタして厚さ約65nmの反射層を形成した。その複素屈折率は、実部の屈折率が0.09、虚部の消衰係数が2である。記録特性はこの両者の反射層によって大差は無かった。その上に、主成分色素をオクタフルオロペンタノール(OFP)で希釈後、スピンコート法で成膜した。
スピンコート法の条件は、以下の通りである。即ち、各色素を、特に断りの無い限り、0.6重量%〜0.8重量%の濃度でOFPに溶解させた溶液を、ディスク中央付近に1.5g環状に塗布し、ディスクを1200rpmで7秒間回転させ色素を延伸し、その後、9200rpmで3秒間回転させ色素を振り切ることにより塗布を行った。尚、塗布後にはディスクを100℃の環境下に1時間保持することで溶媒であるOFPを蒸発除去した。
その後、スパッタ法により、ZnS:SiO(屈折率約2.3)の界面層を、約20〜30nmの厚みに形成した。その上に、厚さ75μmのポリカーボネート樹脂(屈折率1.58)のシートと厚さ25μmの感圧接着剤層(屈折率約1.5)とからなる合計の厚さ100μmの透明なカバー層を貼り合わせた。該カバー層の透過率は、約90%である。また、本構成において記録層膜厚をゼロとした場合のディスク平面部(鏡面部)の反射率は約60%である。測定にあたっては、参照光路に色素の塗布されていないポリカーボネート樹脂基板を挿入することにより、紫外域での基板の吸収の影響を差し引いた。
また、基板の溝深さ及び溝幅は原子間力顕微鏡(AFM:Digital Instruments社製 NanoScopeIIIa)を用いて測定した。
ポリカーボネート樹脂基板上に塗布された、記録層単独の塗膜状態での吸収スペクトルは、分光光度計(日立製作所製、U3300)を用いて測定した。また、TG−DTAによる重量減少開始温度の測定は、3mg〜4mgの色素粉末を乳鉢で均一になるようにすりつぶし、粉末サンプルをセイコーインスツルメンツ社製TG−DTA装置(TG/TDA6200)を用いて、300℃から600℃まで、10℃/minの昇温速度で行った。フローガスは窒素を用いた。オプティカル・デンシティ(OD)値、モル吸光係数(ε)は、色素をクロロホルム中に溶解(色素濃度5mg/l)し、同様に、上記分光光度計で測定した。主吸収帯の最も強い吸収を示す波長(ピーク)における値である。
ディスクの記録再生評価は、記録再生光波長λ=406nm、NA(開口数)=0.85、集束ビームスポットの径約0.42μm(1/e強度となる点)の光学系を有するパルステック社製ODU1000テスターを用いて行った。記録再生は、図2及び図4におけるカバー層溝間部25(基板溝部、in−groove)に対して行った。
ディスクは、線速度5.3m/s(記録条件1)又は4.9m/s(記録条件2)を1倍速とし、1倍速またはその2倍速となるよう回転させた。記録条件2のほうが記録条件1より線密度が高い。
記録パワーは5mWから9mWの範囲で変化させ、再生は、1倍速のみで行った。再生光パワーは0.35mWとした。
記録には、(1、7)RLL−NRZI変調されたマーク長変調信号(17PP)を用いた。1倍速での基準クロック周期Tは、15.15nsec.(チャネルクロック周波数66MHz)とし、2倍速では7.58nsec.(チャネルクロック周波数132MHz)とした。
ジッター(Jitter)測定は、記録信号をリミット・イコライザーにより波形等化した後2値化を行い、2値化した信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジと、チャネルクロック信号の立ち上がりエッジとの時間差の分布σをタイムインターバルアナライザにより測定し、チャネルクロック周期をTとして、σ/Tにより測定した。(データ.トゥー.クロック.ジッター Data to Clock Jitter)。これらの測定条件は概ねブルーレイ・ディスクにおける測定条件(非特許文献7、9)に準拠している。
再生時の反射光強度は、再生ディテクターの電圧出力に比例し、前述のような既知の反射率Rrefで規格化した反射率としている。変調度mは、前述のR,Rを測定して、
m=(R−R)/R
によって計算される。
記録に際しては、図11に示す分割記録パルスを用いた。即ち、nT(nは2から8までの自然数、Tはチャネルクロック周期)マーク長をn−1個の記録パルス(記録パワーPw)で記録する。Pwは記録パワー、Pb1、Pb2はバイアスパワーである。先頭記録パルスの遅延(dTtop、図11中の矢印の向きが正の値)、先頭パルス長(Ttop)、中間パルス長(Tmp)、最終のバイアスパワーPb1の照射時間の遅延時間(dTe、図11中の矢印の向きが負の値)を時間長のパラメーターとする。Tmpはクロック周期Tで繰り返される。尚、2T、3Tマーク長と4Tから9Tマーク長で異なったパラメーターを用いている。また、Pwを可変とするときはPb2/Pw比を一定として変更している。
記録信号評価においては、先ず、主として位相変化によるLtoH記録ができていること、プッシュプル信号の極性が反転していないこと、よって、0<|Φa|<|Φb|<πであることを確認した後、記録再生信号から、変調度の大きさや波形のひずみ状態を読み取り、LtoH記録の信号品質の良否を大まかに観察した。概ね、40%以上の変調度がとれており、全マーク長でLtoHの極性の信号が得られていることを最低条件とした。
ジッター(Jitter)値は、通常、記録条件1の1倍速記録、記録条件1の2倍速記録、記録条件2の1倍速記録、記録条件2の2倍速記録の順に、後者ほどより厳しい評価基準となる。上記記録条件の順に、ジッター値が悪化していく。ジッター(Jitter)値は、概ね10%程度より低ければ、エラー訂正後に再生可能なレベルと言われているので、上記最低条件に加えて、少なくとも、記録条件1の1倍速記録で、ジッター(Jitter)値が10%程度まで下がるものを、本実施の形態の実施例とした。
さらに、ジッター(Jitter)値の記録パワー依存性を測定し、最小のジッター(Jitter)値となる記録パワーPwoを最適記録パワーとする。Pwoは、通常、記録条件1の2倍速記録で最も大きくなり、また、記録層色素の特性差が出やすい。このようにして、LtoH記録におけるより好ましい態様を明らかにした。
(実施例1)
図12は、記録層の材料として用いた含金アゾ系色素(色素A)単独の塗膜状態での吸収スペクトルである。尚、含金アゾ系色素(色素A)の化学式を以下に示す。
Figure 0004550682
図12から分かるように、含金アゾ系色素(色素A)は、記録再生光波長λ=405nmの長波長側に主吸収帯を有し、そのピークは510nm付近にある。このため、記録再生は、上記吸収スペクトルの短波長側λにて行った。
未記録での薄膜状態の記録層の複素屈折率はn=1.38、k=0.15であった。また溶媒を乾燥蒸発させた後の記録層は、ごく微量の残留溶媒を別とすれば色素Aが100%とみなせる。
上記記録媒体をディスク1とし、基板の溝深さを50nm、25nmとした他はディスク1と全く同じ構成をもつディスク2、ディスク3作成した。これらのディスク1〜ディスク3は、その面内に上記案内溝からなる記録領域の他、案内溝のない鏡面領域を有する。
ディスク1〜ディスク3に対し記録領域の記録再生光ビーム入射面から見て遠い案内溝部に沿ってレーザビームの照射により、それぞれ長さ0.64μmのマーク(記録ピット部)とスペース(マーク間、未記録部)からなる単一信号を記録した。次いでマーク、スペースそれぞれの反射率を測定した。また未記録の鏡面領域の反射光強度を反射率に換算して測定した。それぞれの反射率を表2に示す。尚、鏡面領域反射率は、前述した図6のR0に相当する。
Figure 0004550682
表2において、いずれの場合も、未記録のスペース部の反射率より、マーク部の反射率が高くなっており、LtoH記録であることが確認できた。未記録鏡面領域の反射率はディスク1からディスク3においてほぼ等しい。一方で記録溝部スペース部の反射率はいずれも鏡面領域より低く、溝が深くなるほど反射率が低い。また記録溝部マーク部の反射率はいずれも鏡面領域よりは低いが、スペース部より高く記録により鏡面の反射率に近づいている。例えば、溝深さの最も深いディスク1においては未記録部の反射率が最も低く、未記録部・記録部の反射率差が大きい。逆に、溝の最も浅いディスク3においては、未記録部の反射率は鏡面領域の反射率に近づき、未記録部・記録部の反射率差も極僅かである。
この結果は、以下のことを示唆している。即ち、記録領域において溝部と溝間部からの反射光の位相差により反射光強度が低下しており、本実施例の範囲では溝が深いほど位相差が大きい。ここに記録ピットを形成すると記録層の変質による記録層の光学特性変化が生じ、溝部及び溝間部からの反射光位相差が小さくなる。これは、式(9)においてΔΦ>0となっていることを示唆している。つまり、反射光強度がより浅い溝の状態に近づいていると考えられる。そして、これは、図6の経路γ上を変化したものと考えられる。
図13は、実施例1に用いたディスク2の断面の透過電子顕微鏡写真である。図13(a)は未記録状態のディスク2の断面の透過電子顕微鏡(TEM)写真であり、図13(b)は、記録状態のディスク2の断面の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。断面試料は以下のようにして作成した。カバー層に粘着テ−プを貼り付けて引張った際、部分的における界面層/カバー層界面での剥離面を取り出す。剥離面上に保護のためにW(タングステン)を蒸着する。さらに、Wで被覆された剥離面上部から、真空中で高速イオンを照射してスパッタし、穴を形成する。穴の側面に断面が形成されたものを、透過電子顕微鏡で観察を行った。
図13(a)、図13(b)の断面像において、記録層は有機物であるため電子を透過するので白っぽく見える。記録溝間部(カバー層溝部)では、記録層膜厚dはほぼゼロであり、記録溝部では、記録層膜厚dは約30nmであることが分かる。また、反射基準面の段差で規定される溝深さdGLは、AFMで基板表面で測定したのとほぼ同じ約55nmである。記録ピット部では、界面層形状から、記録層がカバー層に向かって膨らんだ変形(即ち、図4において、dbmp<0)をしていることが分かる。さらに未記録の記録層にくらべ、白っぽくなっていることから、空洞(即ち、n’=1)が形成されていると考えられる。また、記録ピットが記録溝部からはみださずに溝内に閉じ込められていることも分かる。
尚、反射基準面からの記録後の空洞の高さは約80nmであり、dbmp=50nmである。また、反射層/基板界面に変質、変形は見られないので、dpit≒dmix≒0となっていることも確認できた。さて、これらの値及びn=1.38、n=1.5、δn=1.38−1=0.38(但し、空洞内の屈折率を1とした)、λ=406nm、d≒30nm、d≒0nm、dGL≒55nmを用いて、本実施の形態における各位相の値を見積もると、以下のとおりである。
式(7)におけるΦbは、
Φb=(4π/406)×(0.12×30−1.5×55)≒−0.78π
故に、|Φb|<πである。
式(9)におけるΔΦは、
ΔΦ=(4π/406)×(0.12×50+0.38×80)≒0.36π
となり、ΔΦは、通常、(π/2)以下となるという想定を満足している。
また、式(8)におけるΦaは、
Φa≒(−0.78+0.36)π=−0.42π
となり、|Φb|>|Φa|も満足していることが確認できた。
上記のように、浅溝でLtoHの記録ができなくなることから、本記録媒体のLtoHの信号振幅は、主として記録ピット部の位相変化(ΔΦ>0)によるものであると結論付けることができる。より具体的には、上記位相変化が記録ピット部の空洞形成をともなう屈折率低下(δn>0)に依存しており、かつ、記録ピット部で記録層がカバー層側に膨らむ変形を伴っていることが明らかとなった。また、プッシュプル信号の極性は変化しなかったので、0<|Φa|<|Φb|<πなる位相変化によるLtoH記録となっているといえる。
さて、ディスク2の詳細な記録特性をマーク長変調記録されたランダム信号の記録再生により評価した。
図14は、ディスク2の記録条件1における1倍速記録時の記録特性を示す図である。また、図15は、ディスク2の2倍速記録時の記録特性を示す図である。図14及び図15において、(a)、(b)、(c)は、それぞれジッター(Jitter)、記録部・未記録部の反射率及び変調度の記録パワー依存性を示す。記録に用いた分割記録パルスのパラメーターは、1倍速では表3に示す通りであり、2倍速では表4に示す通りである。表3に示す1倍速では、Pb1=0.3mW、Pb2/Pw=0.35とした。表4に示す2倍速では、Pb1=0.3mW、Pb2/Pw=0.45とした。尚、いずれも、Pr(再生光パワー)=0.35mWとした。
Figure 0004550682
Figure 0004550682
図14及び図15から、1倍速記録及び2倍速記録のそれぞれの記録条件において、良好なジッター(Jitter)及び十分な未記録部・記録部の反射率差即ち変調度が得られていることが分かる。特に、1トラックのみに記録したSingle Trackにおけるジッター(Jitter)と、5トラックに連続して記録し中央のトラックを測定したMulti Trackにおけるジッター(Jitter)との差が小さく、クロストークが極めて良好であることを示している。
(実施例2)
実施例1のディスク2の構成において、以下の点を変更した。
つまり、記録層の材料を、下記の構造を有するカルボスチリル系色素(色素B)(但し、Phはフェニル基である。)と、含金アゾ系色素(色素C)と、を70:30重量%比となるように混合した。そして、この混合物を主成分色素として、オクタフルオロペンタノールに0.6wt.%混合した。そして、塗布を行った。その他の条件はディスク2と同じ構成のディスク4を作成した。dは約30nmで、dは、ほぼゼロであった。
溶媒を乾燥蒸発させた後の記録層は、ごく微量の残留溶媒を別とすれば、カルボスチリル系色素(色素B)と含金アゾ系色素(色素C)とを合わせて100%とみなせる。
Figure 0004550682
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図16は、カルボスチリル系色素(色素B)単独の塗膜状態での吸収スペクトルである。記録層の複素屈折率は、n=2.18、k=0.34であった。その主吸収帯は350nm〜400nmの波長域にあり、ピークは390nm近傍にある。含金アゾ系色素C単独の塗膜状態での屈折率は、n=1.50、k=0.12であり、光吸収機能は小さい。その主吸収帯のピークは710nm近傍にある。また、単独では記録感度が悪く、8mW以下ではほとんど記録できない。記録層としては、主としてカルボスチル色素Bの長波長側での吸収を利用して、記録再生を行うこととなる。記録ピット部の反射率が増加したLtoH記録であった。実施例1と同様に、溝深さを浅くした場合には、信号振幅は低下した。また、プッシュプル信号の極性は変化しなかったので、0<|Φa|<|Φb|<π、ΔΦ>0、なる位相変化によるLtoH記録となっている。
ディスク4に対しても、実施例1と同様にランダム信号の記録再生により記録特性評価を行ったところ、記録信号はLtoHで、記録前後でプッシュプル信号の反転は見られなかった。
図17は、ディスク4の記録条件1における1倍速記録時のジッター(Jitter)(図17(a))、記録部・未記録部の反射率(図17(b))、変調度の記録パワー依存性(図17(c))を示す図である。記録に用いた分割記録パルスのパラメーターは表5に示す通りである。Pb1=0.3mW、Pb2/Pw=0.48、Pr=0.35mWとした。
Figure 0004550682
実施例1と同様に良好な記録特性が得られている。尚、色素B単独でも、マーク長にかかわらず一様にLtoH記録が可能となったが、ジッター(Jitter)は、混合膜より劣る結果となった。記録再生光波長λ=405nmの短波長側に主吸収帯を有する色素Bに吸収機能を持たせており、色素Cはジッター(Jitter)を改善する機能があると考えられる。
(実施例3)
実施例1のディスク2から反射層の膜厚をおおよそ15nmとした他はディスク2と同じ構成を持つディスク5を作成した。反射層を15nmとすることで半透明となり約50%前後の透過率が得られるよう作成した。Rgは約7%であった。この場合にも、主反射面は、反射層のいずれかの界面にある。このような半透明な構成は多層記録媒体への適用が可能となる。実施例1と同様の検証を行ったところ、信号振幅は低下した。また、プッシュプル信号の極性は変化しなかったので、0<|Φa|<|Φb|<π、ΔΦ>0、なる位相変化によるLtoH記録となっている。
ディスク5に対しても、実施例1と同様にランダム信号の記録再生により記録特性の評価をおこなった。図18は、ディスク5の記録条件1における1倍速記録時のジッター(Jitter)(図18(a))、記録部・未記録部の反射率(図18(b))、変調度の記録パワー依存性(図18(c))を示す図である。記録に用いた分割記録パルスのパラメーターは表6に示す通りである。Pb1=0.3mW、Pb2/Pw=0.44、Pr=0.7mWとした。
Figure 0004550682
反射率が実施例1、2と比較して小さい他は実施例1、2と同様に良好な特性が得られている。反射率に関しても実施例1、2と比較して小さいとはいえ記録・再生には十分な値である。
(実施例4)
実施例1において記録層色素として使用した含金アゾ系色素(色素A)に加えて、表7〜表9に示される色素の中から、20種類のアゾ系色素(色素A2〜色素A21)を用いて、実施例1と同様の層構成でディスクを作成した。尚、表7〜表9には、前述したアゾ系色素である色素A及び色素Cと、色素A2〜色素A21とについて、屈折率、熱特性等をまとめている。また、表7〜表9には、それぞれの記録条件2における記録特性を示す。膜状態でのλmaxは、主吸収帯のピーク波長である。いずれの場合も、λmaxは、300nm〜600nmの範囲にあるので、記録再生は、主吸収帯の何れかの波長で行われている。
尚、クロロホルム液中のλmaxと膜状態でのλmaxは、通常±10nm程度の範囲で一致する。
溝形状は、溝幅は約180nm(0.18μm)、溝深さは約50nm、トラックピッチは0.32μmとした、色素溶液の濃度は0.6重量%として、同様の塗布条件で塗布を行ったところ、いずれの場合も、dは約30nmの値が得られた。この塗布条件では、dは実質的にゼロとみなせるほど薄い。
Figure 0004550682
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いずれの場合も、ディスク鏡面部での未記録状態での反射率R0は、記録層膜厚をゼロとした場合の鏡面部反射率の70%以上が得られている。また、溝深さを約25nmとした浅溝の場合は、記録前反射率(スペース部反射率)が増加し、信号振幅及び変調度が低下しており、主として、位相変化ΔΦの寄与によるLtoH記録であることが確認できた。
記録パルスは、個々の色素及び1倍速、2倍速において、図11の記録パルスパラメーターをジッター(Jitter)値が良好になるように適宜最適化して用いている。最適記録パワーは,Multi Trackでのジッター(Jitter)が最小となるパワーである。記録線速度は、記録条件2である。Single TrackとMulti Trackのジッター(Jitter)の差は、いずれの場合も約0.5%以下であり、クロストークが非常に少ない良好な記録ができた。
また、溝深さ約55nm、溝幅約0.15μmとすると、いずれの場合も、未記録状態の規格化プッシュプル信号強度は0.7〜0.8であり、Multi Track記録における最適記録パワーでの記録後の規格化プッシュプル信号強度は0.4〜0.5となった。
表7〜9の結果から、特に2倍速において、k及び重量減少開始温度Tの影響が明瞭であることが分かる。すなわち、kが0.2以上かつTが280℃以下であれば、2倍速での最適記録パワーで評価される記録感度が、概ね8.5mW以下となり好ましいことがわかる。記録感度についてはkが特に重要で、kが0.25以上であれば、本実施例内であればTにかかわらず、記録感度は8.5mW以下となることがわかる。また、kが0.3以上、Tが300℃以下の場合には、2倍速でのジッター値が8.5%以下とでき、Tが280℃以下であれば8%以下とできることがわかる。kが0.3以上となる色素においては、λmaxが370〜450nmにあった。これら、2倍速で良好な記録特性を示すものは、さらに線速度での記録も可能である。例えば、色素A17に対して、いわゆる2T記録ストラテジー(n/2ストラテジーともいう、特許文献42)を適用して、4倍速記録を試みたところジッター7.2%を得た。
これらとは別にkが0.1〜0.3の範囲であって、重量減少開始温度が200℃以下の場合も、2倍速で8%未満のジッターが得られ好ましいことがわかる。
なお、色素A9は、kが0.3未満であるが、むしろ、nが1.3未満と小さいことがジッターに悪影響を与えている可能性がある。つまり、δnが小さくなり、Φnが小さくなっているため、変調度が他の例に比べて相対的に低くなり、2倍速でのジッターを若干悪化させている可能性もある。この観点から、nは、1.3以上であることがより好ましいことがわかる。
これら2倍速記録特性が相対的に劣る色素記録層であっても、300℃以下の低温で分解して空洞を形成する、つまり、dbmp<0なる変形の形成につながる添加剤を加える、あるいはkを大きくできる添加剤を加えるなどすれば、記録特性を改善することは可能である。色素単体での記録特性や保存安定性等を改善するために、このような添加剤を記録層に添加することは本発明においても適宜可能である。また、色素単体のkが0.5以上と大きく、記録によって大きく減少すれば、位相の変化に加えて、補助的にkの減少による反射光強度増加の効果も合わせ用いることで、記録特性が改善できる場合がある。さらに、記録層膜厚を若干厚めにすることで、最適記録パワーは低減できる。
なお、図25〜図27に、表7〜表9の色素のうち、600nmより長波長側に主吸収帯ピークがある例として色素C,主吸収帯ピークが記録再生光波長より短波長側にある例として色素A17、主吸収帯ピークが記録再生光波長に近い場合の例として色素A20の薄膜状態での吸光スペクトルを示す。主吸収帯のピーク位置を“→”示している。いずれも、明瞭な吸収帯が可視広域にあることが分かる。
さらに、図28〜図31に表7〜表9の色素のうち代表例として色素A2,A8、A17、A20のTG−DTAスペクトル(のうちの重量減少スペクトル)を示した。図中“→”で示された温度が、重量減少開始温度である。バックグラウンドのラインL−L’と最初の急峻な凡そ500μg以上の重量減少部の接線K−K’との交点を、重量減少開始温度としている。これは、窒素雰囲気中のスペクトルであるが、大気雰囲気中での測定でも、重量減少開始温度については、±5℃程度の範囲で一致している。
実施例5
実施例1において、記録層色素を非アゾ系色素B1、D1〜D6に置き換えて同様の層構成でディスクを作成した。また、これら色素を主成分とし、さらに、色素Cを30重量%加えて記録層としたディスクも作成した。表10には、非アゾ系色素である、色素Bと色素B1,D1〜D6とについて、屈折率、熱特性、記録特性等をまとめている。膜状態でのλmaxは、主吸収帯のピーク波長である。いずれの場合も、λmaxは、300〜600nmの範囲にあり、記録再生は主吸収帯の何れかの波長で行われている。色素BとB1はカルボスチリル系色素、D1〜D6はピロン系色素である。
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溝形状は、溝幅は約200nm(0.2μm)、溝深さは約50nm、トラックピッチは0.32μmとした、色素溶液の濃度は0.6重量%として、同様の塗布条件で塗布を行ったところ、いずれの場合も、dは約30nmの値が得られた。この塗布条件では、dは実質的にゼロとみなせるほど薄い。
いずれの場合も、ディスク鏡面部での未記録状態での反射率R0は、記録層膜厚をゼロとした場合の鏡面部反射率の70%以上が得られている。また、溝深さを約25nmとした浅溝の場合は、溝深さ50nmの場合と比べて、記録前反射率(スペース部反射率)が増加し、信号振幅及び変調度が低下しており、主として、位相変化ΔΦの寄与によるLtoH記録であることが確認できた。
これら、非アゾ系色素では、アゾ系色素に比べてジッターとしては若干劣るものが多かったので、若干記録条件の緩い記録条件1を適用した。
記録パルスは、個々の色素及び1倍速、2倍速において、図11の記録パルスストラテジーのパラメータをジッター値が良好になるように適宜最適化して用いている。最適記録パワーは、Multi Trackでのジッターが最小となるパワーである。色素B(n=2.18)、色素B1(n=2.07)、色素D1(n=2.03),色素D2(n=2.09)では単独で記録層とした場合は、明瞭なLtoH記録信号は得られなかった。おそらく、nが2以上であるため、n’が、n以下に十分低下していないのではないかと考えられる。n=1.93の色素D3は、ジッターが11%程度で比較的悪かったが、LtoH極性の信号は得られた。
しかし、いずれの場合も、色素C(n=1.50)を混合した場合は、Single TrackとMulti Trackのジッターの差は、約0.5%以下であり、非常にクロストークの少ない良好な記録ができた。
色素D4は、単独でも良好な記録特性が得られているので、記録条件2での評価も行なった。いずれの場合も、単独でも1倍速では9%以下のジッターが得られたが、記録条件2の2倍速ではジッターが10%以上となった。これは、重量減少開始温度が250℃より高いことと関連があるものと考えられる。
なお、実施例5のうち単独でも良好なジッター値が得られる色素D4の吸収スペクトルを図32に示す。色素D4のように双峰性の場合でも、各ピークは近接して一つの連続的な吸収帯を形成している。この場合は、吸光度の大きいほうのピークを主吸収帯のピークとしている。さらに、色素D4の重量減少スペクトルを、図33に示した。
尚、色素D5と色素D6については、単独では結晶化しやすい傾向が見られたため、単独で記録層とした場合の記録特性の評価は行わず、色素Cを混合して記録層として記録特性の評価を行った。
実施例6
実施例1〜4と同じ(1,7)RLL−NRZIマーク長変調データが、凹形状ピット列として記録されたROM信号を含む基板を用意した。ピット及び基板溝部深さは、約50nmである。基板溝部形状は、実施例4と同等である。該基板上に実施例4、色素A17の媒体と同じ層構成の記録媒体を形成した。記録ピット列が存在する領域をROM部、記録溝部が存在する領域を追記領域と称する。
図34は、パーシャルROMのROM領域と記録済み追記領域の再生信号波形を示す図である。図34(a),(b)に、それぞれROM領域及び記録済みの追記領域への再生信号波形(Isum信号、いわゆるアイパターン)を示す。追記領域への記録は、実施例4と同様に行っている。
図34(a)においてROM領域のRは約40%、変調度は約65%、ジッターは、7.2%であった。ジッター値が少し高めで、アシンメトリーも少しずれているように見えるが、これは、元のスタンパ製造上の問題であり、記録層を設けたためではない。スタンパ製造工程の改善により7%未満とすることは可能である。また、図34(b)において、追記領域のRは、約35%、変調度は約69%、ジッター値は、約5.5%であった。2つの領域の信号はきわめて類似しており、区別無く再生できるレベルである。さらに、スタンパ製造時のピット形成条件等を最適化すれば、より均一な再生信号を得ることも可能である。
図35は、ROM領域に本発明記録方法により上書きを行った場合の再生信号波形を示す図である。すなわち、図35は、図34(a)のROM部の記録層に実施例4と同様の記録信号を記録した場合の信号波形である。色素記録層記録部の反射率が上昇するため、特に、ROM信号のピット部での信号が乱され、ROM信号が再生不能となった。このように、本発明記録媒体を適用すれば、ROM部データのコピー防止,security上の観点から、一部のROMデータを、意図的、かつ、選択的に再生不可能とする使用方法が可能となる。
この場合、記録されたピット(マーク)位置は、基板上の凹部として形成されたピット列と同期しないので、全くランダムに上書きされている。凹部ピットのスペース部は、つまり、基板表面であり、ここに上書きされた場合は、位相差の寄与が無いので、反射率変化は小さい。もちろん、ピット部スペース部とも上書きされなければ反射率変化は生じない。凹部に上書きされなければ反射率は低いままである。他方、ピット凹部底面は、基板溝部とほぼ同じ深さであり、ここに、上書きされれば、通常の溝部への記録と同様に、位相差ΔΦ>0の寄与により、反射率は増加する。主として、このピット部への上書きにより、記録再生波形は大きく乱され、図35のような波形になっていると考えられる。
参考例1
以下においては、本発明において、カバー層溝間部(in−groove)に位相変化を主とするLtoH記録を行うことが、カバー層溝部(on−groove)に記録を行うことより優れていることを明らかにするため以下の実験を行った。
実施例4の色素A2のディスクにおいて記録層膜厚のみを変化させて、カバー層溝間部とカバー層溝部にそれぞれ記録を行った。記録層膜厚は、本実験に用いた範囲では塗布に用いる溶液中の色素濃度に比例することがわかっているので、溶液濃度0.6重量%(d≒30nm)、1.2重量%(d≒60nm)の各ディスクを用意した。
図36は、他の実施例と同じ評価機で、記録線速度5.3m/s(記録条件1)において、8Tマーク長とスペース長を交互に発生して記録を行った場合の、記録信号のCN比(キャリアー対ノイズ比)、クロストーク、記録信号の上端の反射率(R8H),下端の反射率(R8L)の記録パワー依存性を示す。
CN及びクロストークの測定は、記録ストラテジーとしては、図11において、dTtop=(10/16)T、Ttop=16/16T、Tmp=10/16T、dTe=0T,Pb1=Pb2=0.3mW,Pr=0.35mWで、8Tマークとスペースの繰り返し信号を記録し、再生信号(Isum信号)をADVANTEST社製、スペクトラムアナライザーTR4171、resolution band width=30kHz,video band width=100Hz、を用いて測定した。
ここでクロストークは、カバー層溝間部に記録した場合は、未記録の隣接カバー層溝部において、記録されたカバー層溝間部からの漏れ信号強度(両隣で測定したキャリアレベル値の平均値)を測定し、カバー層溝間部での記録信号のキャリアレベル値を引いたものである。他方、カバー層溝部に記録した場合は、未記録の隣接カバー層溝間部において、記録されたカバー層溝部からの漏れ信号強度(両隣で測定したキャリアレベル値の平均値)を測定し、カバー層溝部での記録信号のキャリアレベル値を引いたものである。クロストークは、通常、負の値をとり、絶対値が大きい方が、クロストークが小さい。
まず、色素濃度0.6重量%(d≒30nm)の場合に注目する。本発明態様に相当するカバー層溝間部に記録した場合(図36(a))、R8Lは未記録の反射率と同じで13%程度で一定であるが、5mW程度からLtoH極性の信号が記録され、R8Hレベルが記録パワーとともに増大し、CN比は約7mWで最大値60dBをとる。クロストークは常に−40dB以下である。
他方、カバー層溝部に記録を試みた場合(図36(b))、そもそも、d≒0となっているので、10mW未満では、全く記録信号が観測されない。10mW以上で非常に小さな歪んだ記録信号(約45dB以下)が観測されるが、これは、非常に高記録パワーであるため、カバー層溝部反射層のいずれかの界面において微小な変形が生じている可能性もあるのに加えて、両隣のカバー層溝間部に熱が伝わって、カバー層溝間部においてもわずかながら記録層の変質が生じたためと考えられる。つまり、実質的に、カバー層溝部への記録は困難である。クロストーク値は、−20dBと大きな値となっている。カバー層溝部への記録信号の漏れ信号というよりも、むしろ、カバー層溝間部の一部(カバー層溝部よりの溝壁など)に記録された弱い信号を観測しているものと考えられる。
ついで、色素濃度1.2重量%(d≒60nm)の場合に注目する。dは、断面観察から、30nm以下の薄い値となっていることがわかった。カバー層溝間部に記録した場合(図36(c))、R8Lは未記録の反射率と同じで約9%程度で一定であり、図36(a)の場合より低い。3mW程度からLtoH極性の信号が記録され、R8Hレベルが記録パワーとともに増大し、約24%に達する。全体に反射率が低いのは、記録層の厚膜化により、記録層で光が吸収されてしまうからであり、逆に、記録感度は良くなる。CN比は約6mWで最大値約60dBをとる。クロストークは6mW以下では−40dB以下である。6mW程度より高パワーでは、クロストークが大きくなる傾向が見られた。しかし、6mW以上では、プッシュプル信号が非常に小さくなり、規格化プッシュプル信号が0.1未満となったため、記録中又は記録直後にトラッキングサーボ維持できず測定ができなかった。このようにdがdGL(≒dGLS)を超えると、記録パワーが高い場合(おそらく、記録ピットでの変形dbmp<0が大きい場合)、トラッキングサーボが不安定になることがある。
他方、カバー層溝部に記録を試みた場合(図36(d))、7mW以下では、非常に微小な歪んだ信号が観測されたが、これはやはり、隣接するカバー層溝間部の一部への記録によるものと考えられる。7mW以上(図中の丸で囲まれた領域)で、R8Lが低下しているが、これは、カバー層溝部にHtoL極性の信号が記録されたためである。つまり図36(d)図において、未記録状態反射率は約9%で一定であるが、7mW以下ではそれがR8Lに対応し、7mW以上ではR8Hに対応する。7mW以上では、カバー層溝部において、空洞が形成され記録層がカバー層側に膨らむ変形が起きていると考えられるが、これは、式(12)でΔΦ>0なる位相変化が生じた場合に相当する。7mW以上のHtoL記録ではCN比は60dBに達せず、クロストーク値は、HtoL信号が隣接カバー層溝間部に漏れこんで−5dBまで増加した。
さらに0.6重量%と1.2重量%のディスクでカバー層溝間部に、記録条件2の2倍速記録を行った場合のジッター値の記録パワー依存性を評価した。記録ストラテジーは、図11の記録ストラテジーをそれぞれに最適化して用いている。1.2重量%の場合は、ジッター値最小となる記録パワーは約5.5mWで、0.6重量%の場合の約8mWにくらべて低下しているものの、最小ジッター値は、1.2重量%の場合の約9%に対して、0.6重量%のディスクの方が約6.6%と低くなっている。記録層が厚い場合、記録感度は良くなるが、おそらく、記録溝部に沿った方向での、隣素記録ピット間の熱干渉が増大して、低いジッター値が得にくい傾向があると考えられるので、記録層膜厚は、溝深さより薄い方が好ましいことが分かる。
ついで、記録条件2の1倍速において最適記録パワーで記録された領域を、1倍速で繰り返し再生して再生光耐久性を調べた。再生光パワー3.5mW(高周波重畳あり)で、同一部分を繰り返し再生したところ、0.6重量%のディスクでは、初期ジッター値が5.2%で少なくとも100万回まで全くジッター値の増加が見られなかった。1.2重量%のディスクでは、初期ジッター値が6.4%で、数万回でジッターの顕著な増加が見られた。
参考例2
参考例2と同様の検討を、溝深さ約20nmの非常に浅い基板を用いて行った。8Tマーク/スペース信号を、5.3m/s(記録条件1)で記録した場合の記録信号のCN比(キャリアー対ノイズ比)、クロストーク、記録信号の上端の反射率(R8H),下端の反射率(R8L)の記録パワー依存性を図37に示す。
色素濃度0.6重量%(d≒30nm)の場合、カバー層溝間部に記録した場合(図37(a))、R8Lは未記録の反射率と同じで32%程度で一定である。5mW程度からLtoH極性の信号が記録されるが、R8Lが高いため位相変化ΔΦが小さく、信号振幅は非常に小さい。6.5mW以上では、トラッキングサーボが不安定で測定不可能であった。おそらく、記録ピットでの変形dbmp<0が浅いdGLを超えて非常に大きくなったため、規格化プッシュプル信号が非常に小さくなるか、その極性が反転してしまったためではないかと考えられる。
他方、カバー層溝部に記録を試みた場合(図37(b))、浅溝であるためカバー層溝部にも20nm弱の色素層が形成されるが、8mW未満では、ほとんど記録されない。8mW以上では、やはりトラッキングサーボが不安定になってしまった。
ついで、色素濃度1.2重量%(d≒60nm、d≒30nm)の場合に注目する。色素記録層は、溝横断方向に関して途切れることなくつながっている様に観測される。つまり、カバー層溝部(基板溝間部)にも、色素層が形成されている。
カバー層溝間部に記録した場合(図37(c))、R8Lは未記録の反射率で約21%程度で一定であり、図37(a)の場合より低い。3mW程度からLtoH極性の信号が記録され、R8Hレベルが記録パワーとともに増大し約28%に達するが、5mW以上では、プッシュプル信号が非常に小さくなり、記録中又は記録直後にトラッキングサーボ維持できず測定ができなかった。カバー層溝部に記録を試みた場合(図37(d))、6mW未満では隣接カバー層溝間部の一部に変質が生じた考えられる非常に小さなLtoH信号が観測された。約6mW以上では、HtoL記録になると予想されたが、やはり、記録中又は記録直後にトラッキングサーボ維持できず測定ができなかった。
参考例2の浅溝の場合は、カバー層溝間部においてLtoH記録自体は可能であるものの信号振幅、トラッキングサーボの観点からは、必ずしも良好な特性は得がたいことが分かる。この場合も、参考例1のように、溝深さを本発明で好ましい「中間溝」深さとすれば、特性は改善される。
参考例3
実施例4の色素A2を用いた場合において、カバー層の材料を種々変更して検討を行った。すなわち、カバー層の厚み100μmのうち界面層に接する10μmを表11に示した各種紫外線硬化型樹脂とし、残りの90μmを紫外線硬化型の樹脂F1とした。
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参考例F1では、100μmすべてを樹脂F1で形成した。これらの樹脂はすべてスピンコートによる塗布で形成した後、回転塗布の過程あるいは回転塗布終了直後に紫外線(ハリソン東芝製超高圧水銀ランプ、トスキュア751)を照射して完全硬化した。樹脂F1の硬化には、約800mJ/cmの紫外光を照射した。また、樹脂F2〜F6の硬化には、約1500〜2000mJ/cmの紫外光を照射した。樹脂F4〜F6は硬化後も粘りがあり、ガラス転移温度は、室温以下である。樹脂F1の完全硬化後のディスク上でのJIS K5600−5−4準拠(Heidon社製、Scratching intensity tester、HEIDON−18,加重750g、走査速度120mm/min.、走査距離7mm、また、三菱鉛筆を使用)での鉛筆硬度の測定値は2Bであった。樹脂F2、F3は、樹脂F1より高硬度の材料である。
図38は、他の実施例と同じ評価機で、記録線速度5.3m/sにおいて、8Tマーク長とスペース長を交互に発生して記録を行った場合の、記録信号のCN比(キャリアー対ノイズ比)の記録パワー依存性を示す。比較のために実施例4の色素A2のディスクでも同様の評価を行った(これを実施例4−A2と示す)。すなわち、ガラス転移温度−21℃の粘着剤F0が25μmとポリカーボネート樹脂75μmのシートからなるカバー層である。本シートカバー層の貼り合せ自体には、紫外線照射を必要としないが、念のため、カバー層F1形成と同様に紫外光を照射しても、特性に変化が無いことを確認している。これは、本発明において、図19のような平坦な吸収特性で、かつ、紫外領域にほとんど吸収を有しない色素を用いることのプロセス上の利点、すなわち、特別な保護処置をしなくても、紫外線硬化樹脂をカバー層として用いることができること、を示している。
図38から、実施例4の色素A2及び樹脂F4〜F6の変形促進層を用いた媒体が、高いCN比が得られ、且つ、低い記録パワーでCN比が40dBを越え、記録感度の点で、良好な特性が得られていることが分かる。
参考例F1〜F3では、若干の波形の歪みは見られるものの、少なくともCN比が50dBを超える点では、マーク長全体にわたってLtoH記録となっていた。色素A2においては、空洞形成、dbmp<0なる記録層側からカバー層への膨れ変形が信号振幅に寄与しており、高硬度のカバー層(少なくとも記録層側)においては、変形が抑制されて記録感度が悪化するものと考えられる。
記録条件1または2の1倍速でマーク長変調記録を行って、ジッター10%以下が得られたのは、実施例A2と樹脂F4〜F6の場合であった。F4、F5、F6とTgが低い方が低いジッターが得られ、F6では記録条件2でも、5.4%という低いジッターが得られた。上記ジッターの測定結果は、主として、2Tマークの形成の良好さによって差が生じたと考えられ、本発明において積極的に膨れ変形dbmp<0を利用する場合には、ガラス転移点が室温(25℃)以下の粘着剤並みの柔らかい変形促進層が、少なくとも記録層側には形成されていることが好ましいことが分かる。
本発明においては、記録層膜厚d≦dGLとして色素記録層を記録溝部に閉じ込めることで、このようにdbmp<0なる変形を積極的に用いてもクロストークの非常に小さな記録が可能となっている。
なお、色素A2では、特に、nが1.38と本発明実施例のなかでは、小さい部類なので、δnも相対的に小さい部類と考えられる。したがって。dbmp<0なる変形を積極的に活用する必要性が高いと考えられる。ここで、色素記録層をよりδnが大きなものに変更する、例えば、nを1.8〜1.9にする、などすれば、変形量|dbmp|が小さくても、記録信号特性を改善することは可能である。また、ガラス転移温度Tが0℃程度より高くでも、T以上での貯蔵弾性率が小さい材料を用いて改善することは可能である。
尚、本出願は、2004年7月16日付きで出願された日本出願(特願2004−210817号)及び2005年6月15日付きで出願された日本出願(特願2005−175803号)に基づいており、その全体が引用により援用される。
従来構成の色素を主成分とする記録層を有する追記型媒体(光記録媒体)を説明する図である。 本実施の形態が適用される色素を主成分とする記録層を有する膜面入射構成の追記型媒体(光記録媒体)を説明する図である。 従来構成である図1の基板入射構成の基板側から入射する記録再生光ビームの反射光を説明するための図である。 膜面入射型媒体の層構成とカバー層溝間部に記録する場合の位相差を説明する図である。 膜面入射型媒体の層構成とカバー層溝部に記録する場合の位相差を説明する図である。 記録溝部と記録溝間部の位相差と反射光強度の関係を説明する図である。 記録信号(和信号)とプッシュプル信号(差信号)を検出する4分割ディテクタ−の構成を説明する図である。 実際に、複数の記録溝、溝間を横断しながら得られる出力信号を低周波通過フィルタ−(カットオフ周波数30kHz程度)を通過させた後に検出する信号を示す図である。 色素の主吸収帯におけるクラマース・クローニッヒの関係を説明する図である。 2層の情報層を設けた光記録媒体を説明する図である。 実施例1及び実施例2において、記録に使用した分割記録パルスを説明する図である。 記録層の材料として用いた含金アゾ系色素(色素A)単独の塗膜状態での吸収スペクトルである。 実施例1に用いたディスク2の断面の透過電子顕微鏡写真である。 ディスク2の記録条件1における1倍速記録時の記録特性を示す図である。 ディスク2の2倍速記録時の記録特性を示す図である。 カルボスチリル系色素(色素B)単独の塗膜状態での吸収スペクトルである。 ディスク4の記録条件1における1倍速記録時のジッター(Jitter)、記録部・未記録部の反射率、変調度の記録パワー依存性を示す図である。 ディスク5の記録条件1における1倍速記録時のジッター(Jitter)、記録部・未記録部の反射率、変調度の記録パワー依存性を示す図である。 比較的平坦な主吸収帯におけるクラマース・クローニッヒの関係を説明する図である。 色素A2のエリプソメトリー測定データの一例を示す図である。 色素A2のエリプソメトリー測定より得られたΔ、Ψをもとに、膜厚dを所与の初期値としてn,kを求め、d依存性として示した図である。 色素A2の吸収スペクトルの一例を示す図である。 異常分散のある主吸収帯での複素屈折率n の波長依存性の実測例である。 図2の層構成において、記録層膜厚30nm、k=0.4で一定、Ag反射層(複素屈折率0.09−i・2.0)、界面層膜厚20nm(屈折率2.3−i・0.0)、カバー層n=1.5で複素屈折率の虚部0.0と仮定した場合の、平面部での反射光強度R0の記録層屈折率n依存性の計算値を示す図である。 色素Cの薄膜状態での吸収スペクトルを示す図である。 色素A17の薄膜状態での吸収スペクトルを示す図である。 色素A20の薄膜状態での吸収スペクトルを示す図である。 色素A2のTG−DTAスペクトルのうちの重量減少スペクトルを示す図である。 色素A8のTG−DTAスペクトルのうちの重量減少スペクトルを示ス図である。 色素A17のTG−DTAスペクトルのうちの重量減少スペクトルを示す図である。 色素A20のTG−DTAスペクトルのうちの重量減少スペクトルを示す図である。 実施例5において、色素D4の薄膜状態での吸収スペクトルを示す図である。 実施例5において、色素D4の重量減少スペクトルを示す図である。 パーシャルROMのROM領域と記録済み追記領域の再生信号波形を示す図である。 ROM領域に本発明記録方法により上書きを行った場合の再生信号波形を示す図である。 参考例1において、記録線速度5.3m/sにおいて、8Tマーク長とスペース長を交互に発生して記録を行った場合の、記録信号のCN比、クロストーク、記録信号の上端の反射率,下端の反射率の記録パワー依存性を示す図である。 参考例2において、8Tマーク/スペース信号を、5.3m/sで記録した場合の記録信号のCN比、クロストーク、記録信号の上端の反射率,下端の反射率の記録パワー依存性を示す図である。 参考例3において、記録線速度5.3m/sにおいて、8Tマーク長とスペース長を交互に発生して記録を行った場合の、記録信号のCN比の記録パワー依存性を示す図である。
符号の説明
10、20、100…光記録媒体、11、21、101…基板、12、22、102,112…記録層、13、23、103…反射層、14…保護コート層、15…基板溝間部、16…基板溝部、16m、25m、26m…混合層、16p、25p、26p…記録ピット部、17、27、107…記録再生光ビーム、18、28、108…対物レンズ、24,111…カバー層、25…カバー層溝間部、26…カバー層溝部、19,29…記録再生光ビームが入射する面、104…中間層、113…半透明反射層、114…中間層

Claims (44)

  1. 案内溝が形成された基板と、
    前記基板上に、少なくとも、光反射機能を有する層と、
    未記録状態において記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分として含有する記録層と、
    前記記録層に対して記録再生光が入射するカバー層と、をこの順に具え、
    前記記録再生光を集束して得られる記録再生光ビームが前記カバー層に入射する面から遠い側の案内溝部を記録溝部とするとき、
    前記記録溝部に形成された記録ピット部の反射光強度が、当該記録溝部における未記録時の反射光強度より高くなり、
    前記記録溝部の未記録時における記録層膜厚d が5nm以上50nm未満である
    ことを特徴とする光記録媒体。
  2. 前記記録ピット部の反射光強度が、当該記録ピット部における反射光の位相変化により増加することを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  3. 前記光反射機能を有する層の前記記録層側の界面を反射基準面とし、
    前記記録溝部における前記反射基準面までの往復光路長と前記記録ピット部を形成しない案内溝部である記録溝間部における前記反射基準面までの往復光路長との差によって生じる位相差Φbが、0<|Φb|<πであり、
    前記記録溝部に前記記録ピット部が存在する場合の位相差Φaが、0<|Φa|<πであり、
    且つ、|Φb|>|Φa|であることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
  4. 前記反射基準面で規定される前記記録溝部と前記記録溝間部との段差dGLと、
    前記記録層の未記録時の記録再生光波長λにおける屈折率nと、
    前記カバー層の前記記録再生光波長λにおける屈折率nと、
    前記記録溝部の未記録時における記録層膜厚dと、
    前記記録溝間部の未記録時における記録層膜厚dと、の関係が、
    (λ/8)≦|(n−n)・(d−d)+n・dGL|≦(15/64)・λであることを特徴とする請求項3記載の光記録媒体。
  5. 前記記録ピット部での位相変化が、前記光反射層の入射光側における屈折率nより低い屈折率部の形成によるものであることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
  6. 前記記録ピット部での位相変化が、前記記録層の前記記録再生光波長での屈折率が未記録状態に比べて減少することによるものであることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
  7. 前記記録後の減少した屈折率n’が、カバー層屈折率nよりも小さいことを特徴とする請求項6記載の光記録媒体。
  8. 前記記録ピット部での位相変化が、前記記録層の内部または当該記録層に隣接する層との界面に空洞を形成することによるものであることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
  9. 前記記録層が前記カバー層側へ膨らむ形状変化を伴うことを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
  10. 前記記録層の未記録状態での屈折率nが前記カバー層の屈折率nと同等以下であることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
  11. 前記記録ピット部に反射層/記録層、及び、反射層/基板界面のいずれにも変形及び混合が生じていないことを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
  12. 前記記録再生光の波長λが350nm〜450nmであることを特徴とする請求項1又は2記載の光記録媒体。
  13. 前記記録溝部の未記録時における記録層膜厚dが5nm以上40nm未満であることを特徴とする請求項12記載の光記録媒体。
  14. 前記光反射機能を有する層の前記記録層側の界面を反射基準面とし、
    前記反射基準面で規定される前記記録溝部と前記記録溝間部との段差dGLが、30nm〜70nmであることを特徴とする請求項12記載の光記録媒体。
  15. 前記記録溝部の未記録時における記録層膜厚dと、
    前記光反射機能を有する層の前記記録層側の界面を反射基準面とし、前記反射基準面で規定される前記記録溝部と前記記録溝間部との段差dGLと、
    前記記録溝間部の未記録時における記録層膜厚dと、が、
    <dGL、且つ、d/d≦0.2であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  16. 前記記録溝間部の未記録時における記録層膜厚dが、0nm〜10nmであることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  17. 前記記録層と前記カバー層との間に、当該記録層の材料と当該カバー層の材料との混合を防止する界面層をさらに設けたことを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  18. 前記記録層と前記カバー層との間に、当該記録層の材料と当該カバー層の材料との混合を防止する界面層をさらに設け、前記界面層の厚みが、1nm〜50nmであることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  19. 前記記録再生光ビームを前記記録溝部に照射した場合の反射率が、未記録時においては3%〜30%であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  20. 前記カバー層の前記記録再生光波長λにおける屈折率nが、1.4〜1.6であり、前記記録層の未記録時の記録再生光波長λにおける屈折率nが、1〜2であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  21. 前記記録層の屈折率nが1.2〜1.9であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  22. 前記記録層の未記録状態での、前記記録再生光波長λにおける消衰係数が0.1〜1であることを特徴とする請求項20記載の光記録媒体。
  23. 前記記録層の未記録状態での、前記記録再生光波長λにおける消衰係数が0.3以上であることを特徴とする請求項20記載の光記録媒体。
  24. 前記記録層として重量減少開始温度が300℃以下であり、かつ、未記録状態の消衰係数kが0.3以上である色素を用いることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  25. 前記屈折率nが、1.6以下であることを特徴とする請求項21記載の光記録媒体。
  26. 記録再生光波長λにおける前記光記録媒体の鏡面部での反射率が、記録層膜厚をゼロとした場合の鏡面部反射率の50%以上であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  27. 前記記録層の記録後の記録再生光波長λにおける消衰係数が、記録前に比べて減少することを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  28. 前記記録層の主成分となる色素の主吸収帯のピークにおけるクロロホルム溶液中でのモル吸光係数が、20000〜100000であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  29. 前記記録層の主成分となる色素が、n=1.3〜1.9、k=0.3〜1、熱重量分析で測定した重量減少開始温度が150〜300℃にある色素であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  30. 前記記録溝部の未記録状態における規格化プッシュプル信号強度が、0.5以上0.8以下であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  31. 前記記録溝部の記録後における規格化プッシュプル信号強度が、0.2以上0.5以下であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  32. 前記記録層が、前記案内溝を有する基板上へ、該色素を溶解した溶液の塗布により形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  33. 前記カバー層の記録層側界面に、変形促進層を設けたことを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  34. 前記変形促進層が、ガラス転移温度が0℃以下の粘着層であることを特徴とする請求項33記載の光記録媒体。
  35. 前記記録層の主成分となる色素の熱重量分析で測定した重量減少開始温度が、150℃〜250℃であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  36. 前記基板上の少なくとも一部に、前記記録溝と同じ深さのピット列からなる再生専用データ領域を設けたことを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  37. 案内溝が形成された基板上に、少なくとも、光反射機能を有する層と、未記録時に記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分とする記録層と、カバー層とが順次積層された構造を有する光記録媒体に、前記カバー層側から記録再生光を入射して記録再生を行う光記録媒体の光記録方法であって、
    前記記録再生光を集束して得られる記録再生光ビームが前記カバー層に入射する面から遠い側の案内溝部を記録溝部とするとき、前記記録溝部に形成した記録ピット部の反射光強度が当該記録溝部の未記録時の反射光強度より高くなり、
    前記記録溝部の未記録時における記録層膜厚d が5nm以上50nm未満である
    ことを特徴とする光記録媒体の光記録方法。
  38. 前記記録ピット部の反射光強度が、当該記録ピット部における反射光の位相変化により増加することを特徴とする請求項37記載の光記録媒体の光記録方法。
  39. 前記光反射機能を有する層の前記記録層側の界面を反射基準面とし、
    前記記録溝部における前記反射基準面までの往復光路長と前記記録ピット部を形成しない案内溝部である記録溝間部における前記反射基準面までの往復光路長との差によって生じる位相差Φbが、0<|Φb|<πであり、
    前記記録溝部に前記記録ピット部が存在する場合の位相差Φaが、0<|Φa|<πであり、
    且つ、|Φb|>|Φa|であることを特徴とする請求項38記載の光記録媒体の光記録方法。
  40. 前記記録ピット部での位相変化が、前記光反射層の入射光側における前記記録層の未記録時の記録再生光波長λにおける屈折率nより低い屈折率部の形成によるものであることを特徴とする請求項38記載の光記録媒体の光記録方法。
  41. 前記記録ピット部での位相変化が、前記記録層の前記記録再生光波長での屈折率が未記録状態に比べて減少することによるものであることを特徴とする請求項38記載の光記録媒体の光記録方法。
  42. 前記記録ピット部での位相変化が、前記記録層の内部または当該記録層に隣接する層との界面に空洞を形成することによるものであることを特徴とする請求項38記載の光記録媒体の光記録方法。
  43. 前記記録層が前記カバー層側へ膨らむ形状変化を伴うことを特徴とする請求項38記載の光記録媒体の光記録方法。
  44. 案内溝が形成された基板上に、少なくとも、光反射機能を有する層と、未記録時に記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分とする記録層と、カバー層とが順次積層された構造を有する光記録媒体に、前記カバー層側から記録再生光を入射して記録再生を行う光記録媒体に対する光記録装置であって、
    前記記録再生光を集束して得られる記録再生光ビームを前記カバー層に入射する面から遠い側の案内溝部である記録溝部に照射し、前記記録溝部に未記録時よりも反射光強度が増加した記録ピット部を形成し、
    前記記録溝部の未記録時における記録層膜厚d が5nm以上50nm未満である
    ことを特徴とする光記録装置。
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