JP4550682B2 - 光記録媒体及び光記録媒体の光記録方法 - Google Patents
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Description
以下、以上のように記録された部分(記録マーク部と言われることがある。)を、その物理的な形状によらず、記録ピット、記録ピット部あるいは記録ピット部分と称す。
即ち、本発明の目的は、安定に成形できる比較的浅い溝深さの基板を用いて、良好な記録再生特性を有する極めて高密度の光記録媒体を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、良好な記録再生特性が得られる光記録媒体の光記録方法を提供することにある。
即ち、本発明によれば、案内溝が形成された基板と、基板上に、少なくとも、光反射機能を有する層と、未記録状態において記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分として含有する記録層と、記録層に対して記録再生光が入射するカバー層と、をこの順に具え、記録再生光を集束して得られる記録再生光ビームがカバー層に入射する面から遠い側の案内溝部を記録溝部とするとき、記録溝部に形成された記録ピット部の反射光強度が、記録溝部における未記録時の反射光強度より高くなり、記録溝部の未記録時における記録層膜厚d G が5nm以上50nm未満であることを特徴とする光記録媒体が提供される。
本発明が適用される光記録媒体によれば、極めて高密度な情報が記録され、これらの記録された情報に基づき、良好な記録再生特性を得ることができる。
また、本発明が適用される光記録媒体においては、光反射機能を有する層の記録層側の界面を反射基準面とし、記録溝部における反射基準面までの往復光路長と記録ピット部を形成しない案内溝部である記録溝間部における反射基準面までの往復光路長との差によって生じる位相差Φbが、0<|Φb|<πであり、記録溝部に記録ピット部が存在する場合の位相差Φaが、0<|Φa|<πであり、且つ、|Φb|>|Φa|であることを特徴とするものである。
さらに、本発明が適用される光記録媒体においては、反射基準面で規定される記録溝部と記録溝間部との段差dGLと、記録層の未記録時の記録再生光波長λにおける屈折率ndと、カバー層の記録再生光波長λにおける屈折率ncと、記録溝部の未記録時における記録層膜厚dGと、記録溝間部の未記録時における記録層膜厚dLと、の関係が、
(λ/8)≦|(nd−nc)・(dG−dL)+nc・dGL|≦(15/64)・λであることを特徴としている。
図2は、本実施の形態が適用される色素を主成分とする記録層を有する膜面入射構成の追記型媒体(光記録媒体20)を説明する図である。本実施の形態においては、溝を形成した基板21上に、少なくとも反射機能を有する層(反射層23)と、図2において後述するように、未記録(記録前)状態において記録再生光に対して吸収を有する色素を主成分とする光吸収機能を有する記録層22、及びカバー層24が順次積層された構造を有し、記録再生を、カバー層24側から対物レンズ28を介して集光された記録再生光ビーム27を入射して行う。即ち、「膜面入射構成」(Reverse stackともいう)をとる。以下においては、反射機能を有する層を単に「反射層23」、色素を主成分とする光吸収機能を有する記録層を単に「記録層22」と呼ぶ。前述したように、図1を用いて説明した従来構成を「基板入射構成」と呼ぶ。後述する図2で説明する膜面入射構成のカバー層24側に記録再生光ビーム27を入射するに当たり、高密度記録のために、通常、NA(開口数)=0.6〜0.9程度の高NA(開口数)の対物レンズが用いられる。記録再生光波長λは、赤色から青紫色波長(350nm〜600nm程度)がよく用いられる。さらに、高密度記録のためには、350nm〜450nmの波長域を用いることが好ましいが、必ずしもこれに限定されない。
より具体的には、以下のような工夫をすることにより、本発明を実現することができる。
(1)未記録状態のカバー層溝間部からの反射光とカバー層溝部からの反射光の位相の差Φが、概ねπ/2〜πとなるような深さの溝を形成し、カバー層溝間部(in−groove)での記録層膜厚を該溝深さより薄くなるような薄膜とし、他方、カバー層溝部(on−groove)での膜厚がほとんどゼロとなる非常に薄い色素を主成分とする記録層22を設ける。該カバー層溝間部に、カバー層側から記録再生光ビームを照射して、該記録層に変質を生じさせ、主として位相変化による反射光強度の増加による記録ピットを形成する。膜面入射構造において、従来のon−groove、HtoL記録に比べ、塗布型色素媒体の性能が大幅に改善される。また、クロストークの小さな高トラックピッチ密度(例えば、0.2μm〜0.4μm)での記録が可能となる。また、そのような高トラックピッチの溝の形成が容易となる。
(2)記録層22として、未記録状態において比較的低屈折率(例えば屈折率が1.3〜1.9)、比較的高消衰係数(例えば、消衰係数が0.3〜1)の主成分色素を利用し、記録により、反射面の記録再生光入射側に屈折率が低下する記録ピット部を形成する。これにより、記録ピット部を通過した記録再生光の光路長が、記録前に比べて短くなる位相変化が起きる。つまり、光学的に記録溝部深さが浅くなるような変化が起きて、反射光強度が増加する。
従来の色素記録層を用いた記録媒体に比べ屈折率が低くてもよく、主吸収帯と記録再生光波長との相対関係に自由度が増し、特に、記録際再生光波長400nm近傍での記録に適した色素選択の幅が増える。
(3)記録ピット部での屈折率の低下に、記録層22内部もしくはその界面部での空洞形成を利用しても良い。また、記録層22がカバー層24方向に膨らむ変形をあわせて用いるのが好ましく、カバー層24の少なくとも記録層22側には、ガラス転移点が室温以下の粘着剤等からなる柔らかい変形促進層を形成して、前記変形を助長する。これにより、記録により反射光強度が増加するような位相変化の方向がそろう。(記録信号波形の歪が無くなる)かつ、比較的小さな屈折率変化でも位相変化量(記録信号振幅)を大きくできる。さらに、記録層の消衰係数の減少及び平面状態で生じる反射率変化による反射光強度の増加も合わせて用いることができる。
以上により、案内溝が形成された基板と、前記基板上に、少なくとも、光反射機能を有する層と、未記録状態において記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分として含有する記録層と、前記記録層に対して記録再生光が入射するカバー層と、をこの順に具え、前記記録再生光を集束して得られる記録再生光ビームが前記カバー層に入射する面から遠い側の案内溝部を記録溝部とするとき、前記記録溝部に形成された記録ピット部の反射光強度が、当該記録溝部における未記録部の反射光強度より高くなっている光記録媒体が実現でき、該記録ピット部から高変調度かつ歪みの無いLtoH極性の記録信号を得られるという特徴がある。
(4)上記の条件に加えて、記録層主成分色素の重量減少開始温度が300℃以下であり、かつ、未記録状態の複素屈折率の虚数部である消衰係数kdが0.3以上である色素を記録層として用いることにより、10m/s以上の高速記録におけるジッター特性を改善できる。
一般的に、「位相差による反射光強度変化」によって、十分な反射光強度変化、つまり、記録信号の振幅(あるいは、光学的コントラスト)を得ようとすると、記録層22自体の屈折率変化が、非常に大きくなければならない。例えば、CD−RやDVD−Rでは、色素記録層の記録前屈折率の実部が2.5〜3.0であり、記録後には、1〜1.5程度になることが求められる。また、色素記録層の記録前複素屈折率の虚部kdは0.1程度よりは小さいことが未記録状態でのROM互換の高反射率を得る上で好ましいとされていた。また、記録層22の膜厚が50nm〜100nmと厚めであることが必要である。その程度の厚みが無いと大部分の光が記録層22内を通過してしまい、十分な反射光強度変化とピット形成に必要な光吸収が起こり得ないからである。このように厚い色素記録層ではピット部での変形による局所的位相変化は、補助的に用いられているに過ぎない。他方、前述のROM媒体では、記録ピット部での局所的屈折率変化はなく、「位相差による反射光強度変化」のみが検出されていると考えられる。良好な記録品質を得るためには、記録ピット分での反射光強度変化が、上記2種類の反射光強度変化が混合して起きる場合、両者が強めあうことが望ましい。2種類の反射光強度変化が強めあうとは、それぞれで生じる反射光強度の変化の方向、つまり、反射光強度が増加するか低下するか、が、そろっているということである。
図4は、膜面入射型媒体(光記録媒体20)の層構成とカバー層溝間部25部に記録する場合の位相差を説明する図である。
図5は、膜面入射型媒体(光記録媒体20)の層構成とカバー層溝部26に記録する場合の位相差を説明する図である。
即ち、図4及び図5は、図2の膜面入射構成の光記録媒体20において、膜面入射構成のカバー層24の入射面28側から入射する記録再生光ビーム27の反射光を説明するための図である。図4が、本実施の形態が適用される光記録媒体20におけるカバー層溝間部(基板溝部)25にピットを形成する。図5は、本発明効果の対比説明のために、同じ膜面入射構成でありながら、カバー層溝部(基板溝間部)26にピットを形成する。
dGa=dG−dpit−dbmp (1)
となる。尚、dGL、dG、dL、dmix、nd、nc、ns、dGaは、その定義及び、物理的特性から負の値をとらない。
このような記録ピットのモデル化や、以下で述べる位相の見積もり方法は公知の方法を用いた(非特許文献1)。
Φ=Φb又はΦa
=(記録溝間部の反射光位相)−(記録溝部(記録後はピット部を含む)の位相) (2)
Φ=Φb又はΦa
=(2π/λ)・2・{(記録溝間部光路長)−(記録溝部(記録後はピット部を含む)の光路長)} (3)
として定義する。
図3においては、
Φb1=(2π/λ)・2・(ns・dGL+nd・dL−nd・dG)
=(4π/λ)・{ns・dGL−nd・(dG−dL)} (4)
Φa1=(2π/λ)・2・{ns・dGL+ns・(dmix−dbmp)+nd・dL−〔(nd−δnd)・(dG−dpit−dbmp)+(ns−δns)・dmix〕}
=Φb1+ΔΦ (5)
但し、
ΔΦ=(4π/λ){(nd−ns)・dbmp+nd・dpit+δns・dmix+δnd・(dG−dpit−dbmp)} (6)
である。また、記録溝部が入射側から見て記録溝間部より手前にあるから、Φb1>0である。
Φb2=(2π/λ)・2・{nd・dL−〔nd・dG+nc・(dL+dGL−dG)〕}=(4π/λ)・{(nc−nd)・(dG−dL)−nc・dGL} (7)
Φa2=(2π/λ)・2・{(nd・dL−〔nc・(dL+dGL−dG+dbmp−dmix)+(nd−δnd)・(dG−dpit−dbmp)+(nc−δnc)・dmix〕}
=Φb2+ΔΦ (8)
但し、
ΔΦ=(4π/λ){(nd−nc)・dbmp+nd・dpit+δnc・dmix
+δnd・(dG−dpit−dbmp)} (9)
である。また、記録溝部が入射側から見て記録溝間部より奥にあるから、Φb2<0である。
Φb3=(2π/λ)・2・{nd・dG+nc・(dL+dGL−dG)−nd・dL}
=(4π/λ)・{(nd−nc)・(dG−dL)+nc・dGL} (10)
Φa3=(2π/λ)・2・{nd・dG+nc・(dL+dGL−dG)+nc・(dmix−dbmp)−〔(nd−δnd)・(dL−dpit−dbmp)+(nc−δnc)・dmix〕}
=Φb3+ΔΦ (11)
但し、
ΔΦ=(4π/λ){(nd−nc)・dbmp+nd・dpit+δnc・dmix+δnd・(dL−dpit−dbmp)} (12)
である。また、記録溝部のほうが入射側から見て記録溝間部より手前にあるから、Φb3>0である。
ΔΦによって生じる信号の変調度mは、
m∝1−cos(ΔΦ)=sin2(ΔΦ/2) (13)
≒(ΔΦ/2)2 (14)
となる。最右辺(14)はΔΦが小さい場合の近似である。
図7は、記録信号(和信号)とプッシュプル信号(差信号)を検出する4分割ディテクタ−の構成を説明するための図である。4分割ディテクタ−は、4つの独立した光検出器からなり、それぞれの出力をIa、Ib、Ic、Idとする。図7の記録溝部及び記録溝間部からの0次回折光及び1次回折光は、4分割ディテクタ−にて受光され、電気信号に変換される。4分割ディテクタ−からの信号から、下記の演算出力を得る。
Isum=(Ia+Ib+Ic+Id) (15)
IPP=(Ia+Ib)−(Ic+Id) (16)
なる演算出力が得られる。
図8において、Isummax、Isumminは、記録溝部あるいは記録溝間部のちょうど真上(中心軸上)を光ビームが通過したときに対応する。Isump−pは、Isum信号のpeak−to−peakでの信号振幅である。IPPp−pは、プッシュプル信号のPeak−to−peakの信号振幅である。プッシュプル信号強度とは、IPPp−pのことをいい、プッシュプル信号IPPそのものとは区別する。
トラッキングサ−ボは、図8(b)のプッシュプル信号(IPP)を誤差信号として、フィ−ドバック・サ−ボを行う。図8(b)で、IPP信号の極性が、+から−に変化する点が、記録溝部中心に対応し、−から+に変化する点が、記録溝間部に対応する。プッシュプルの極性が反転するとは、この符号の変化が逆になることである。符合が逆になると、記録溝部にサ−ボがかかった(即ち、集光ビームスポットが記録溝部に照射される)つもりが、逆に記録溝間部にサ−ボがかかるような不都合を起こす。
IPPnorm=IPPp−p/{(Isummax+Isummin)/2} (17)
なる演算出力は、規格化プッシュプル信号強度(IPPnorm)という。
(17)式でIPPp−pのかわりに、IPPを用いたものが、規格化プッシュプル信号である。
このような規格化プッシュプル信号及び規格化プッシュプル信号強度の定義は、通常の、記録型CD、DVDの規格で規定された一般的なものと同等である。
さて、記録ピット部16p,25p,26pでは、光学的に記録層12,22の屈折率変化あるいは変形による位相の変化(即ち、位相差を考慮した反射光強度の変化に寄与する。)と、屈折率変化による平面状態での反射光強度の変化(即ち、位相差を考慮しない反射光強度の変化)が、同時に起こりうる。これらの変化の方向がそろっていることが好ましい。つまり、記録信号の極性が、記録パワーや記録ピットの長さ、大きさに寄らず一定であるためには、個々の反射光強度変化がそろっていることが好ましい。
以下において、色素記録層媒体で図4のカバー層溝間部25に記録を行う場合に、ΔΦ>0及びΔΦ<0がどのような場合に生じ、いずれの方向を好適に利用すべきかを、図3,図5の場合と比較しつつ検討する。
ΔΦにおいて、
Φbmp=(nd−nc)・dbmp (18)
Φpit=nd・dpit (19)
Φmix=δnc・dmix (20)
Φn=δnd・(dG−dpit−dbmp)=δnd・dGa (21)
とすると、Φbmpは、記録層入射側界面の変形(移動)による位相変化、Φpitは記録層12,22/反射層13,23界面の変形(移動)による位相変化、Φmixは混合層16m,25m,26m形成による位相変化、Φnは記録層12,22の屈折率変化による位相変化に対応する。これらの位相変化が大きくて、変化の方向、即ち、Φbmp、Φpit、Φmix、Φnの符号がそろっていることが、変調度を大きくし、かつ、特定の信号極性の信号波形をひずませずに、良好な記録特性を得るために重要なことである。
先ず、記録層入射側界面に界面層を設けるなどして、dmix=0とすることも好ましい。dmixによる位相差変化は、あまり大きくできないので積極的に利用しにくいだけでなく、その厚みの制御が難しいからである。よって、記録層入射側界面に界面層を設けるなどして、dmix=0とすることが好ましい。
次いで、変形に関しては、一箇所に集中し、かつ、一方向に限定されることが好ましい。複数の変形部位よりも、一箇所の変形部位をより正確に制御するほうが良好な信号品質が得られやすいからである。
従って、本実施の形態においては、ΦbmpとΦpitのうちのいずれかと、Φnを主として利用することが好ましい。
dpitに関しては、通常は、基板またはカバー層の膨張あるいは、記録層の体積収縮が主要因であるから、dpit>0となることが多い。これは、Φpitには有利ではあるが、dGa、すなわち、Φnには不利である。一方、記録層の吸収は、記録層の厚みの中間部から入射側界面側で最も高くなるので、その部分で最も高温となり、反射層の界面側は、発熱量が相対的に小さい。また、反射層に高放熱性材料を用いれば、その記録層の発熱の影響は、大部分記録層の入射側界面に集中する。発熱が集中するのは、図4では、記録層22とカバー層24側の界面である。したがって図4の構成では、色素の入射側界面、即ちカバー層24との界面に変形が生じる。このため、dpitは自然と小さくなるので寄与は小さい。従来構成とは異なり、基板21側変形の影響は少ないと考えられ、実際上、dpit≒0とみなせる。このことは、むしろ、制御すべき変形要素をdbmpに集約したことがよいことを示唆している。
この場合、Φnは、(21)式から分かるように、色素の屈折率変化δnd、変形dbmpが寄与しており、ΔΦの大きさと符号に最も重要な要素である。
したがって、色素の分解を利用する場合には、nd、kdが減少する場合を利用したほうが色素の選択の幅は広がると考えられる。即ち、δnd>0である場合を利用するのが記録層材料の選択肢が広く好ましい。
さて、記録による変質(分解を伴う)後の色素の屈折率は、概ね基板やカバー層並に低下すると考えられる。また、空洞形成等でもカバー層同等以下に低下すると考えられる。よって、本実施の形態では、nd’<ncとなる色素を好適に利用する。従って、δnd>|nd−nc|と考えられる。一方、ΦbmpとΦnの大小は、ほぼ、dbmpの符号に依存する。dGa=dG−dpit−dbmpであるから、前述のようにdpit≒0とすると、dGa≒dG−dbmpとなる。従って、dbmp<0であれば、dGa>|dbmp|である。dbmp>0、つまり、記録層の体積収縮がおきるとしても、記録層膜厚が50%未満になるような極端な記録層の収縮は、通常考えられない(あるいは、そのような収縮は記録層物質が記録ピット部より流出することを意味するので好ましくないともいえる)ので、同様に、dGa>dbmpである。結局、|Φbmp|<Φnであり、主要な変化はΦnによるとすると、同様に、δnd>0なる変化は、Φn>0なる変化となり、ΔΦ>0なる位相変化につながると考えられる。
そのためには、先ず、前記記録ピット部25pでの位相変化が、前記反射層23の入射光側におけるndより低い屈折率部の形成によるものであるであることが望ましい。そして、記録前において、各種サ−ボの安定性を維持するために、少なくとも3%〜30%の反射率を維持することが好ましい。
ここでいう未記録状態の記録溝部反射率(Rg)は、反射率既知(Rref)の反射膜のみを、図2に示す光記録媒体20と同様な構成で成膜し、集束光ビームを記録溝部に焦点が合うように照射して得られた反射光強度をIref、図2に示す光記録媒体20において同様に、集束光ビームを記録溝部に照射して得られた反射光強度をIsとするとき、Rg=Rref・(Is/Iref)として得られたものである。同様に、記録後において、記録信号振幅の、記録ピット間(スペース部)の低反射光強度ILに対応する記録溝部反射率をRL、記録ピット(マーク部)の高反射光強度IHに対応する記録溝部反射率をRHと呼ぶ。
以下では、慣用に従って、記録溝部の反射光強度変化を定量化する際には、この、記録溝部反射率を用いて表す。
一方、このような高透過率が維持されていることは、図2の構成のディスク(未記録状態)において、平坦部(鏡面部)で平面状態の反射率R0を測定し、その反射率が、記録層膜厚をゼロとした、同一構成を有するディスクの平面状態での反射率の40%以上、好ましくは、50%以上、より好ましくは70%以上あることで概ね確認できる。
ΔΦ>0なる位相変化を利用し、カバー層溝間部25にLtoH記録する場合、光学的にピット部で溝深さが変化するので、溝深さに強く依存するプッシュプル信号が、記録前後で変化しやすくなる。特に問題になるのは、プッシュプル信号の極性が反転するような位相変化である。
記録後の規格化プッシュプル信号強度IPPnormを十分な大きさに保つには、式(17)の分子であるプッシュプル信号強度IPPp−pが記録後に増加するか、少なくとも、大きな値を保つことが好ましい。つまり、|Φa|が記録後にπ/2近傍にあることが好ましい。一方、記録前にも十分なプッシュプル信号を確保するためには|Φb|は、πよりも(1/16)π程度は小さいことが望ましい。そのため、|Φb|が、経路γにおいて、π/2〜(15/16)πの範囲にあることが好ましいこととなる。
|ψb2|=|(nc−nd)・(dG−dL)−nc・dGL|
=|(nd−nc)・(dG−dL)+nc・dGL|
を、λ/8〜(15/64)・λの範囲にすることが好ましい。
その際の溝深さdGLは、dG=dL、記録再生光波長λ=350〜450nmの青色波長とした場合、式(7)より、
|ψb2|=nc・dGL (7a)
となる。同様の式は、nd≒ncでも得られる。ncを一般的な高分子材料の値、1.4〜1.6程度とすると、溝深さdGLは、通常30nm以上、好ましくは35nm以上とする。一方、溝深さdGLは、通常70nm以下、好ましくは65nm以下、より好ましくは60nm以下とする。このような深さの溝を「中間溝」と呼ぶこととする。上述の図3や図5で「深溝」を用いる場合に比べ、溝形成及びカバー層溝間部25への反射膜の被覆が格段に容易になるという利点を有する。
一般に、スピンコートで塗布法により記録層を成膜したときには、基板溝部に記録層が溜まりやすいという性質を考慮すると、自然とdG>dLとなる。さらには、塗布する色素量を少なくして、全体として記録層膜厚を薄くすると、実質上dL≒0とでき、記録層をほぼ完全に記録溝内(この場合、カバー層溝間部25)に閉じ込めることが可能になる。
この場合、式(7)は、
|ψb2|=|(nc−nd)・dG−nc・dGL|
=|(nd−nc)・dG+nc・dGL| (7b)
となり、(7a)に対する、上記、溝深さの好ましい範囲に対して、|(nc−nd)・dG|分だけ補正が必要になる。nd>ncであれば、若干浅め、nd<ncであれば、若干深めが好ましいことなる。本実施の形態において用いたような色素記録層では、概ね、(nc−nd)は−0.5〜+0.5の範囲であり、dG=30nm程度であるので、高々10nm程度の補正を考慮すればよい。逆に、nd・dGLなる溝形状が与えられれば、ndがncに比べて小さいほど|Φb2|は小さくなり、図6から、溝部の反射光強度が増加する。一方、ndがncに比べて大きいほど、溝部の反射光強度は減少する。
つまり、本実施の形態が適用される光記録媒体20では、記録層22を塗布によって形成し、dGL>dG>dLとするのが好ましい。さらに好ましくは、dL/dG≦0.5として、実際上、記録溝間上に記録層22がほとんど堆積しないようにする。一方、後述するように、dLは実質的にゼロであることが好ましいので、dL/dGの下限値は、理想的にはゼロである。
前述のようにdGLが30〜70nmである場合には、dGは、5nm以上とすることが好ましく、10nm以上とすることがより好ましい。これは、dGを5nm以上とすることによって、位相変化を大きくでき、記録ピット形成に必要な光エネルギーの吸収が可能となるからである。一方、dGは、50nm未満とすることが好ましく、45nm以下とすることがより好ましく、40nm以下とすることがさらに好ましい。位相変化を主として用い、屈折率変化による「平面状態での反射率変化」の影響を小さくするためにも、記録層22はこのように薄いことが望ましい。従来のCD−R、DVD−Rのように、未記録での屈折率が2.5〜3である高屈折率の色素主成分の記録層では、記録によってndは減少した場合、「平面状態の反射率」低下をまねくことがある。位相差変化によってLtoH記録をする場合には、逆の極性となりやすく好ましくない。
さらに、記録層22が薄いほうが、記録ピット部での変形が大きくなりすぎたり、記録溝間部へはみ出したりすることを抑制できる。
カバー層溝間部に記録ピットを形成する本発明において、前述のような「中間溝」深さを用いること、及び、dG/dL≦1として、記録層22を薄くして「中間溝」深さの記録溝内に閉じ込めることは、後述のように記録ピット部での空洞形成及びカバー層方向への膨れ変形を積極的に用いる場合には、なおさら、好ましいこととなる。この点においても、本発明は、カバー層溝部に記録を行い、空洞を形成してHtoL記録を行う場合より、クロストークを抑制する効果に優れている。
さて、ΔΦ>0なる位相変化を利用し、膜面入射記録において、カバー層溝間部25に記録を行い、LtoH記録を行うことは、高密度記録を行うにあたって重要なことであるが、さらに、良好な記録品質を得るためには、以下に述べるような事項を考慮することが望ましい。
先ず、記録信号振幅を大きくとるために全体として|ΔΦ|を大きくすることが挙げられる。次いで、マーク長変調記録において、最短マーク長から最長マーク長までの全マーク長に対して、実用的な記録パワーマ−ジンを有し、良好なジッター(Jitter)特性を実現するために、以下のことを行うことが好ましい。つまり、ΔΦに寄与する各位相変化方向と大きさを、記録パワーの変動、マーク長の変動に対しても、特定範囲内で一致させることが好ましい。少なくとも、逆方向の位相変化が、記録パワー変動やマーク長によって混じるようなことは、無視できる程度に小さくすることが好ましい。
先ず、第一の態様として、nd−nc<0となるように、ndが小さな色素を選ぶ場合について考える。Φbmp>0とするためには、dbmp<0つまり、図4で記録層22がカバー層24側に膨らむような変形が好ましい。ここで、dbmp<0とすれば、dGaも大きくなるので非常に都合がよい。つまり、δndが小さくても、dbmp<0の絶対値が大きい、つまり、記録層22のカバー層24側へのふくれ変形が大きければ、それだけで、大きな変調度を得ることもできる。このため、δndが小さい記録層、場合によっては、δndがほとんどゼロの記録層材料も使用できる。このことは、CD−RやDVD−Rのような赤外や赤色波長域で使用する場合のように2.5を超える大きなndの色素を得ることが困難な、青色波長域で利用するに当たって、特に好ましい。
記録層22内あるいは、その隣接する界面に空洞が発生する場合も、それによる膨れ変形が、記録層22のカバー層24側界面にdbmp<0なる変形を及ぼすと考えられ、空洞内のnd’が1程度まで低下することを考えると、大きな信号振幅を得るうえで、非常に好ましい。
必ずしも、厳密にnd<ncということではなく、ndがncの同等以下であれば良い。ncは、通常カバー層材料に高分子材料を用いるので、1.4〜1.6であるため、ndは、1.6以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。下限としては通常、1.0以上であることが好ましく、1.2以上あることが好ましく、1.3以上であることがより好ましい。これは、短吸収端の長波長側λSを記録再生光波長とする場合にほぼ該当する。
ΔΦ≒(4π/λ){(nd−nc)・dbmp+δnd・(dG−dbmp)}
=(4π/λ){(nd−nc−δnd)・dbmp+δnd・dG}
=(4π/λ){(nd’−nc)・dbmp+δnd・dG} (9a)
を得る。ここで、δnd・dG>0である。nd’が十分低下する、特に、空洞が形成されてnd’=1となるような場合、nd’−nc<0となるので、dbmp<0であることが好ましい。ndが、従来のCD−RやDVD−Rで用いられたように、2より大きいと、nd’>ncとなる場合も生じる。ndが、2以下とすれば、ほぼ確実に、nd’<ncとなり好ましい。より好ましいのはndが1.9以下である。、さらに、空洞(nd’=1)が形成されると、確実にnd’<ncとなり、δnd>0も大きくとれるので、非常に好ましい。
(記録モード1)
δnd>0,nd<≒nc(nd<≒ncは、ndはnc程度以下のことを意味する。)であり、dbmp<=0であること。
nc=1.4〜1.6とすると、ndは、1.6以下であることが好ましい。
記録層22内あるいは、その隣接する界面に空洞が発生することがより好ましい。
(記録モード2)
δnd>0,nd>ncであり、nd’<nc、dbmp<=0であること。
同様に、nc=1.4〜1.6とすると、ndは2以下であることが好ましい。
記録層22内あるいは、その隣接する界面に空洞が発生することがより好ましい。
記録モード1と記録モード2は、(9a)式の観点からは、nd’<ncであれば、同等であり、どちらが有利とはいえない。しかし、記録モード2は、記録後のnd’の推定が困難である場合に、δnd>0でさえあれば、nd’<nd<ncにより確実に、nd’<ncが担保されるので、dbmp<0なる変形が発生する場合には、記録モード1が好ましいのである。もし、空洞形成がないか、dbmp≒0であれば、δndが大きくできる点で、未記録のndが大きめである記録モード2が有利になる場合がある。
(記録モード3)δnd<0、nd>nc、dbmp>0あること。
δndが相対的に大きい場合には、dbmp>0による、dGaが小さくなる負の効果を相殺できる。但し、本発明者らの検討に寄れば、dbmp<0なるふくらみ変形の変形量が、dGLまたはdGの3倍近くにまで達しうる場合があるのに対し、dbmp>0なるへこみ変形が、dGの50%以上に達することはほとんどないので、このような第3の態様は、本実施の形態への適用を妨げるものではないが、必ずしも好ましいとはいえない。
さらに、この場合、実質的にδndの変化だけに頼るので、結局、従来のCD−R,DVD−Rのように2を超えるような大きなndの色素に頼らざるを得ず、また、「平面状態での反射率変化」による反射光強度低下、すなわち、HtoL極性が混じる場合は、尚さら、好ましくないこととなる。
尚、繰り返しになるが、本実施の形態では、これらの記録モードに関する現象が、主反射面の入射光側で起きていることが重要であり、図4の層構成はそれを実現するために重要である。
図24は、図2の層構成において、記録層膜厚30nm、kd=0.4で一定、Ag反射層(複素屈折率0.09−i・2.0)、界面層膜厚20nm(屈折率2.3−i・0.0)、カバー層nc=1.5で複素屈折率の虚部0.0と仮定した場合の、平面部での反射光強度R0の記録層屈折率nd依存性の計算値を示している。ndが約2以下の場合、ndが減少すれば、反射率は増加していることが分かる。他方、ndが1未満の場合に、δnd<0、すなわちndが増加するような変化は、平面状態での反射率変化による反射光強度減少を招くとともに、(21)式のΦnの負の変化をもたらすので、むしろ、図3や図5の場合に適用して、HtoL極性の信号が得られやすいことも分かる。
記録によるkdの減少が加われば、記録後の反射光強度は、記録前に比べてさらに増加しうる。位相差が関与しない状態では、反射率変化の大きさそのものは小さいが、少なくとも位相差によるLtoH極性の記録信号極性と矛盾しない。
このような観点からも、ndが1〜2の色素において、カバー層溝間部(in−groove)を記録溝部とし、記録後にndが減少すること(δnd>0)は、良好なLtoH記録を行ううえで非常に都合が良い事が分かる。同時に、記録にkdが減少すれば、記録ピット部での吸収が減少して、やはり、平面状態での反射率は増加するので好ましいが、このようなことは、色素が分解して異常分散がなくなることでむしろ通常起こりうる現象である。つまり、記録モード1,2における局所的位相変化による反射光強度の増大は、平面状態における反射光強度の増大と相性がよく、全体として、歪みのないLtoH極性の信号を得る上で非常に都合が良い。
以下において、図2及び図4で示す層構成の具体的材料・態様について、青色波長レーザの開発が進んでいる状況を考慮して、特に、記録再生光ビーム27の波長λが405nm近傍の場合を想定して説明する。
(基板)
基板21は、膜面入射構成では、適度な加工性と剛性を有するプラスチック、金属、ガラス等を用いることができる。従来の基板入射構成と異なり、透明性や複屈折に対する制限はない。表面に案内溝を形成するのであるが、金属、ガラスでは、表面に光や熱硬化性の薄い樹脂層を設け、そこに、溝を形成する必要がある。この点、プラスチック材料を用い、射出成型によって、基板21形状、特に円盤状、と表面の案内溝を一挙に形成するほうが製造上は好ましい。
本実施の形態では、記録溝部と記録溝間部とにおけるそれぞれの反射光の位相差による干渉を利用しているから、両方が集束光スポット内に存在することが必要である。このため、記録溝幅(カバー層溝間部25の幅)は、記録再生光ビーム27の記録層22面におけるスポット径(溝横断方向の直径)より小さくするのが好ましい。記録再生光波長λ=405nm、NA(開口数)=0.85の光学系で、トラックピッチを0.32μmとする場合、0.1μm〜0.2μmの範囲とするのが好ましい。これらの範囲外では、溝または溝間部の形成が困難となる場合が多い。
案内溝の形状は、通常、矩形となる。特に、後述の塗布による記録層形成時に、色素を含む溶液の溶剤がほとんど蒸発するまでの数十秒間に、基板溝部上に、色素が選択的に溜まることが望ましい。このため、矩形溝の基板溝間の肩を丸くして色素溶液が、基板溝部に落下して溜まりやすくすることも好ましい。このような丸い肩を有する溝形状は、プラスチック基板もしくは、スタンパの表面を、プラズマやUVオゾン等に数秒から数分さらしてエッチングすることで得られる。プラズマによるエッチングでは、基板の溝部の肩(溝間部のエッジ)のようなとがった部分が選択的に削られる性質があるので、丸まった溝部の肩の形状を得るのに適している。
光反射機能を有する層(反射層23)には、記録再生光波長に対する反射率が高く、記録再生光波長に対して70%以上の反射率を有するものが好ましい。記録再生用波長として用いられる可視光、特に、青色波長域で高反射率を示すものとして、Au、Ag、Al及びこれらを主成分とする合金が挙げられる。より好ましくは、λ=405nmでの反射率が高く、吸収が小さいAgを主成分とする合金である。Agを主成分として、Au、Cu、希土類元素(特に、Nd)、Nb、Ta、V、Mo、Mn、Mg、Cr、Bi、Al、Si、Ge等を0.01原子%〜10原子%添加することで、水分、酸素、硫黄等に対する耐食性が高めることができ好ましい。この他に、誘電体層を複数積層した誘電体ミラーを用いることも可能である。
本実施の形態において使用する色素は、300nm〜800nmの可視光(及びその近傍)波長領域に、その構造に起因した顕著な吸収帯を有する有機化合物をいう。このような色素を記録層22として形成した未記録(記録前)の状態において記録再生光ビーム27の波長λに吸収を有し、記録により変質して記録層22に再生光の反射光強度の変化として検出されうる光学的変化を起こす色素を、「主成分色素」と呼ぶ。主成分色素は、複数の色素の混合物として、上記の機能を発揮するものであってもよい。
記録前の反射率Rgあるいは、記録ピット間反射率RLは、10%以上であることがより好ましい。そのためには、kdは0.6以下とするのが好ましく、0.5以下とするのがより好ましい。また、kdが0.6程度より大きければ、ndを1.7以下とするのが好ましく、1.6以下とするのがさらに好ましい。ただしkdが1.0程度より大きい場合には、ndを1.3より小さくすることが好ましい。記録層を発熱させ変質を生じさせるのに十分な光吸収が得られる。特に、10m/s以上の高線速での記録においては、記録感度を良好に保つためにも、kdが0.25以上であることが好ましい。kdが0.3以上であることがより好ましい。特に、記録ピット内部においては、kd’≦kd(つまり記録によってkdが減少する)となっていれば、kdの変化による反射光強度の増加が位相変化ΔΦによる反射光強度増加と矛盾せず、信号波形をひずませること無く、その振幅を大きくできて好ましい。kdの低下による反射光強度増加を、付加的に利用するには、kdは0.2以上であることが好ましく、さらに、0.3以上であることがより好ましい。一方、kd’は0.3以下、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下とすれば、記録後の反射光率RHをROM媒体と同様に高く保つ、概ね30%以上とする、ことができる。
記録層の膜厚dGは、記録ピットが、カバー層溝間部に閉じ込めクロストークを十分小さくできるよう、前述のようにdGLより薄いことが好ましく、dG/dGLは0.8以下とすることがより好ましく、0.7以下とすることがさらに好ましい。dGLを70nm以下とすることが好ましい、400nm近傍の波長では、dGは、70nm以下とすることが好ましいが、50nm未満とすることがより好ましい。さらに、kdが特に0.3以上なる記録層では、再生光ビームを多数回照射した場合に、再生光を吸収して記録層に変質が起きるのを防ぐために、記録層膜厚は、やはり50nm未満であることが好まく、40nm以下であることがより好ましい。
なお、再生光ビームの強度は、通常、再生光強度(mW)/再生光ビームの走査速度(m/s)が、0.2mW・s/m以下であることが好ましく、0.1mW・s/m以下であることがより好ましい。
さらに、記録層膜厚が上記好ましい値を超えて厚くなり過ぎると、式(9)ないしは(9a)において、位相変化量δnd・dGや、変形量dbmp(<0)の絶対値が大きくなり、全体としてΔΦが大きくなりすぎる場合がある。プッシュプル信号の極性が小さくなりすぎる、あるいは、極性が反転するなどしてトラッキングサーボが不安定になることがあるのでやはり好ましくない。
他方、記録層膜厚の下限は、5nm以上であり、10nm以上とすることが好ましい。
すなわち、主吸収帯ピークが、概ね300nm〜600nmの範囲にあって、その主吸収帯のピークにおけるモル吸光係数(クロロホルム中)が、20000〜150000の範囲にあるものである。モル吸光係数が、概ね100000を超える急峻なピークを有する吸収帯では、図9において長波長端λLでの屈折率が2より大きくなるので、そのような色素を用いる場合には、短波長端λSに記録再生光波長が位置すること望ましい。
他方、モル吸光係数が、通常は100000以下、より好ましくは80000以下、さらに好ましくは70000以下の、比較的ゆるやか、且つ、平坦な、例えば、図19のような吸収帯の場合は、吸収帯全域にわたって、屈折率がほぼ1以上2以下となりうる。ここで、図19は、比較的平坦な主吸収帯におけるクラマース・クローニッヒの関係を説明する図である。また、消衰係数kdも吸収帯の全波長域にわたって、0.6以下となりうる。モル吸光係数は、20000以上が好ましく、より好ましくは30000以上であると、消衰係数kdが、0.2以上、さらには、0.3以上となり好ましい。従って、記録再生光波長λが、吸収帯の中心部や、長波長端λL、短波長端λSのいずれに位置していても良い。
従来のような急峻なピークを有する色素を用いず、ndが1〜2の範囲のλS端を好適に利用する本発明は、従来、屈折率が低いために使用することが困難なこのような色素が使用できる点でも、色素選択の幅が非常に広くなる点でも、優れているといえる。ndの範囲としては、1.2〜1.9であることがより好ましく、1.2〜1.6であることがさらに好ましい。
なお、前述のようにkdの値によって、ndのさらに好ましい範囲を適宜選択することができるが、特に、ndとkdの組み合わせとして好ましい範囲は、nd=1.2〜1.9かつkd=0.28〜1であり、より好ましいのは、nd=1.3〜1.9かつkd=0.3〜1である。
さらに、色素の分解による主吸収帯の消滅だけでは、nd’が1.5以下となることは少ないので、特に、ndが1.6以下の場合には、空洞の形成が伴うことが好ましい。さらに、dbmp<0なる変形を伴い、その変形量|dbmp|がdGの2倍以上となることが好ましい。
さらに、比較的平坦な吸収帯のさらに中央部付近を用いれば、記録再生光λの変動に対して安定であるという利点も有する。
尚、λSを利用する場合の利点として、色素の吸収帯が、波長400nm以下の紫外光波長域にはほとんど伸びていないので、紫外光を吸収して劣化する心配がないことが挙げられる。このことは、単なる経時安定性の問題だけでなく、カバー層形成に紫外線硬化樹脂のスピンコート法を用いることができるという利点もある。できるだけ塗布型プロセスで統一することが、装置コストも抑制できて好ましいのである。
通常の紫外線硬化樹脂硬化用の紫外線照射装置である水銀ランプ等では、概ね350nm以下の波長域の光を重合開始剤の励起用に使用するようになっている。特に、350nm以下の波長域での消衰係数kdが、0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましい。ゼロであってもかまわない。
アゾ系色素としては、より具体的には、6−ヒドロキシ−2−ピリドン構造からなるカップラー成分と、イソキサゾールトリアゾール、ピラゾールから選ばれるいずれか1種のジアゾ成分とを有する化合物と、該有機色素化合物が配位する金属イオンとから構成される金属錯体化合物が挙げられる。特に、下記一般式[I]〜[II]を有する含金属ピリドンアゾ化合物が好ましい。
また、下記一般式[IV]または[V]で示される環状β−ジケトンアゾ化合物と金属イオンからなる含金属環状β−ジケトンアゾ化合物が好ましい。
下記、一般式[VI]で示される化合物と金属からなる含金族アゾ化合物もまた好ましい。
さらに、下記一般式[VII]で表される含金族アゾ化合物も挙げられる。
これらのアゾ系色素は、従来CD−RやDVD−Rで用いられたアゾ系色素より、さらに、短波長よりの主吸収帯を有しており、400nm近傍での消衰係数kdが、0.3〜1程度の大きな値となるので好ましい。金属イオンとしては、Ni,Co,Cu、Zn、Fe,Mnの2価の金属イオンが上げられるが、特に、Ni,Coを含有する場合が、耐光性、耐高温高湿環境性に優れており、好ましい。なお、式[VIII]で表される含金アゾ系色素は、長波長化して後述の化合物Yとしても用いることができる。
ピロン系色素としては、より具体的には、下記一般式[VIII]又は[IX]を有する化合物が好ましい。
色素Xは、nd>nc、特に、nd>2、であって、主吸収帯が記録再生光波長の長波長側(図9のλLの帯域)で、高屈折率を有する色素である。このような色素としては、主吸収帯のピークが300nm〜400nmにあるもので、屈折率ndが2〜3の範囲にあるものが好ましい。
より具体的には、特開平6−65514号公報において開示される一般式[X]で示される含金族アゾ化合物が挙げられる。
あるいは、特開2002−114922で開示される一般式[XI]で示される含金族アゾ化合物も好ましい。
本実施の形態においては、特に、記録層22とカバー層24の間に界面層を設けることで、記録層22のカバー層24側への膨れ、dbmp<0、を有効に利用することができる。カバー層24の厚みは、1nm〜50nmであることがより好ましい。さらに好ましくは、上限は30nmとすることである。また、下限は5nm以上とすることが好ましい。界面層における反射は、できるだけ小さいことが望ましい。主反射面である反射層23からの反射光の位相変化を選択的に利用するためである。界面層に主反射面があることは、本実施の形態においては好ましいことではない。このため、界面層と記録層22、あるいは界面層とカバー層24の屈折率の差が小さいことが望ましい。その差は、いずれも、1以下が好ましく、より好ましくは、0.7以下、さらに好ましくは0.5以下である。
カバー層24は、記録再生光ビーム27に対して透明で複屈折の少ない材料が選ばれ、通常は、プラスチック板(シートと呼ぶ)を接着剤で貼り合せるか、塗布後、光、放射線、または熱等で硬化して形成する。カバー層24は、記録再生光ビーム27の波長λに対して透過率70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
前記粘着剤としては、透明性、耐久性の観点から、アクリル系、メタクリレート系のポリマー粘着剤が好ましい。より具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−オクチルアクリレートなどを主成分モノマーとし、これらの主成分モノマーを、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド誘導体、マレイン酸、ヒドロキシルエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等の極性モノマーを共重合させる。主成分モノマーの分子量調整、その短鎖成分の混合、アクリル酸による架橋点密度の調整により、ガラス転移温度Tg、タック性能(低い圧力で接触させたときに直ちに形成される接着力)、剥離強度、せん断保持力等の物性を制御することができる(非特許文献11、第9章)。アクリル系ポリマーの溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等が用いられる。上記粘着剤は、さらに、ポリイソシアネート系架橋剤を含有することが好ましい。
また、粘着剤は、前述のような材料を用いるが、カバー層シート材の記録層側に接する表面に所定量を均一に塗布し、溶剤を乾燥させた後、記録層側表面(界面層を有する場合はその表面)に貼り合わせローラー等により圧力をかけて硬化させる。該粘着剤を塗布されたカバー層シート材を記録層を形成した記録媒体表面に接着する際には、空気を巻き込んで泡を形成しないように、真空中で貼り合せるのが好ましい。
また、離型フィルム上に上記粘着剤を塗布して溶剤を乾燥した後、カバー層シートを貼り合わせ、さらに離型フィルムを剥離してカバー層シートと粘着剤層を一体化した後、記録媒体と貼りあわせても良い。
このように、カバー層の記録層(界面層)側に粘着剤、接着剤、保護コート剤等からなる変形促進層を形成する場合、一定の柔軟性を付与するため、ガラス転移温度Tgが25℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、−10℃以下であることがさらに好ましい。ここでいうガラス転移温度Tgは、粘着剤、接着剤、保護コート剤等の硬化後において測定した値とする。Tgの簡便な測定方法は、示差走査熱分析(DSC)である。また、動的粘弾性率測定装置により、貯蔵弾性率の温度依存性を測定しても得られる(非特許文献11、第5章)。
dbmp<0なる変形を促進することは、LtoHの信号振幅を大きくできるのみならず、記録に必要な記録パワーを小さくできる利点もある。他方、変形が大きすぎるとクロストークが大きくなったり、プッシュプル信号が小さくなりすぎたりするので、変形促進層はガラス転移温度以上においても適度な粘弾性を保持していることが好ましい。
なお、変形促進層を設ける場合のように、カバー層の記録層側に屈折率の異なる層を設けた場合、本発明におけるカバー層屈折率ncとしては、記録層側の層の値を参照する。
本実施の形態においては、前述の記録層22とカバー層24との界面の他に、基板21、反射層23、記録層22、のそれぞれの界面に、相互の層の接触・拡散防止や、位相差及び反射率の調整のために界面層を挿入することができる。
(1)多層記録用半透明記録媒体
本実施の形態が適用される光記録媒体20において、反射層23の膜厚を薄くし、記録再生光の略50%以上が反射層23を透過するような薄さにすると、いわゆる多層記録媒体が可能になる。即ち、基板21上に、複数の情報層を設けた記録媒体である。
図10は、2層の情報層を設けた光記録媒体100を説明する図である。記録再生光ビーム107が入射する側の情報層をL1層、奥側にある情報層をL0層と呼ぶ。L1層は、透過率50%以上であることが好ましい。L1層の半透明反射層113が、例えば、Ag合金であれば、Ag合金の膜厚を1nm〜50nmが好ましく、より好ましくは、5nm〜30nm、さらに好ましくは、5nm〜20nmとすることが好ましい。このような透過性の高い反射層は半透明反射層113と呼ばれる。L0層とL1層との間には、それぞれの信号の混信を防止するために、透明な中間層114が設けられる。尚、図10におけるL0層における反射層103には、前述の反射層23(図2)と同様の材料が使用できる。但し、この場合にも、主反射面は、L1層においては半透明反射層113と記録層112との界面にあり、L0層においては反射層103と記録層102との界面にあることが、本実施の形態においては重要である。
本実施の形態が適用される光記録媒体20において、記録層22での再生光の吸収が比較的小さい。このため、鏡面部における反射膜自体からの反射光強度は、記録層22においてほとんど減衰することが無い。その結果、記録層膜厚をゼロとした場合の反射光強度の50%以上の値を維持できる。一方、記録溝部が基板溝部であって、その深さが、「中間溝」であるので、未記録状態のRgは、3%〜30%と低くできる。通常、ROMのピット深さは、変調度とプッシュプル信号強度を考慮して、図6において、位相差Φがπ/2〜πの範囲に設定されるので、ROMのピットの深さと本発明の中間溝の深さはほぼ同じになる。つまり、ROMのピット周辺部の反射光の位相から該ピット部の反射光の位相を引いた値、Φp、が、式(2)で定義されたΦbとほぼ同じにできる。このため、記録溝を部分的に断続的に形成した記録ピットを配置すれば、通常のROMのように、位相による反射光強度変化を用いて、予め基板上に情報を記録しておくことができる。さらに、記録溝を部分的に断絶した部分と、連続的な溝部を形成すれば、パーシャルROMが容易に実現できる。これが、図6の「浅溝」や「深溝」であれば、ROM部での信号振幅がとりにくいか、ピットの転写が困難となる。従来のCD−R,DVD−Rでは、「深溝」であったので、ピット深さを別途大きく異なる深さの「中間溝」の範囲とする必要があり、あらかじめ、基板上にパーシャルROMを形成するのは非常な困難が伴っていた。
しかし、本発明によれば溝の断続や連続は、スタンパー形成時のガラスマスター上のフォトレジスト厚みが一定であってもよく、露光用レーザー光のオン・オフで容易に実現できる。通常はフォトレジストの露光される部分が基板の溝もしくはピット部になる。このようにして形成したスタンパーを用い、基板上の少なくとも一部に、記録溝と同じ深さのピット列からなる再生専用データ領域を設けた基板が形成できる。この基板上に、ROM部、記録溝部ともに、図2と同一の層構成、すなわち、少なくとも、光反射機能を有する層23と、未記録状態において記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分として含有する記録層22と、前記記録層に対して記録再生光が入射するカバー層24と、を形成することにより、パーシャルROM媒体が形成される。本発明光記録媒体においては、色素主成分記録層22での記録再生光の吸収は小さく、透過率を70%以上とできるので、ROM部においては、色素主成分記録層のないROM媒体とほぼ同等の反射率と変調度が得られる。また、記録溝部に記録ピットを形成した後には、若干低めてはあるものの記録後反射率RHは、ROM部のマーク間(スペース)反射率に近い反射率が得られるので、同一のサーボゲインを保ったままのサーボが可能となる。記録溝部では、ROM媒体のトラッキングサーボに用いられる、DPD(Differential Phase Detection)法によるトラッキングが、ROM部と同様に可能となるという利点もある。DPD信号は、(記録)ピット(マーク)部の位相差の寄与が大きいので、位相変化を主とする記録ピット部を有する本発明記録媒体では、ROM部同等の大きなDPD信号を確保できるのである。
なお、上記のようなパーシャルROMの製造法において、ROM部ピット深さと記録溝の深さdGLSは同じとなるが、厳密に同じである必要は無い。たとえば、露光用のレーザー光のオン・オフという、レーザー光パワーの2値変調ではなく、ピット部と記録溝部でのオンまたはオフ時のパワーを異なるものにすれば、ピット深さと、記録溝の深さを異なるものとできる。このように、本発明において記録ピットと記録溝の深さが同じであるとは、|Φp−Φb|がπ/2未満であることをいう。ただし、通常は、π/3以下であることが好ましく、π/4以下であることがより好ましい。
また、記録層22に用いる色素を特定条件で、もしくは、経時的に腐食しやすいものにすれば、初期は再生可能で、所定期間後に再生不可となるROM媒体が実現できる。たとえば、レンタルビデオ店で、所定の貸し出し期間後、再生不能となれば、返却不能で、不当に利用されるおそれの少ないデジタル・ビデオ・ディスクとして利用できる。
他方、記録層22に用いる色素を、初期は不透明でありながら特定条件下で、もしくは、経時的に透明化するようなものにすれば、配布時には再生不可能ながら、ユーザーの手元に渡って後に、再生可能となるようなROM媒体も実現できる。
さらに、ROMピット部に、記録光ビームを照射して、本実施の形態において説明した記録方法であるLtoH記録を行うと、ピット部の反射率が上昇して、ROM信号の再生を不可能にするような使用法も可能であり、記録媒体上の情報の機密保護に利用できる。
図1に示した従来構成の光記録媒体10では、塗布法で記録層12を形成するので、dG>dLとなる。このため、記録層12の上に形成される反射基準面での溝段差dGLは、基板11上の溝段差dGLSより浅くなる。すなわち、dGL<dGLSである。従って、図1の構成の光記録媒体10では、dGLSを、図6において説明した「深溝」の深さとしても、反射基準面では、「浅溝」〜「中間溝」程度の段差となりうる。また、未記録の反射率RgがROM互換性確保のために、通常50%〜80%程度と高くなるように設計されている。このため、規格化プッシュプル信号強度IPPnormは、DVDでは、通常0.2〜0.4程度である。光記録装置では、このような規格化プッシュプル信号強度値に合わせて設計されており、次世代の青色レーザ対応の記録装置でも、媒体側が同様の値を実現することが想定の上、設計が進んでいる。
主として、図4に示す記録ピット部25pでの位相変化ΔΦによって、LtoH記録が行われているかどうかは、以下のようにして検証できる。尚、図3における記録ピット部16p、図5における記録ピット部26pでの位相変化の寄与についても同様にして検証できる。本実施の形態では、記録層22の記録前後における平面状態の反射率変化による反射光強度変化が記録の主たる要素ではない。従って、反射層23、記録層22、カバー層24等の層構成を、平面上に設けて記録を行ったときに、案内溝深さが「中間溝」である場合と比べて、LtoH極性で、遜色のない信号振幅が得られれば、位相変化による反射光強度変化ではなく、平面状態での反射率変化による反射光強度が主であると考えられる。
あるいは、鏡面部(平面状態にある部分)に記録を行った場合に、なんらかの信号振幅が観測されたとしても、その信号振幅が所定の「中間溝」深さでLtoH記録を行った場合の信号振幅の半分以下であれば、主たる信号振幅の要因は位相の変化であると考えられる。
本実施の形態における記録層22の屈折率は、以下の方法で測定した値を用いる。光学定数(複素屈折率nd *=nd−i・kd)はエリプソメトリー(偏光解析)によって測定した。以下にその測定及び算出方法について述べる。
エリプソメトリーではp偏光、s偏光を試料に照射し、光反射による偏光状態の違いから、光学定数や薄膜の膜厚などを測定する手法である。測定値としてはp偏光、s偏光の振幅反射係数rp、振幅反射係数rsの比として次式で定義される位相差Δ及び振幅比Ψが得られ、この値から数値計算(最小二乗法)によるフィッティング等により光学定数や薄膜膜厚を算出する。
一方で媒質(空気)/薄膜(色素)/基板(ポリカーボネート)と形成されたサンプルに空気側から波長λの光を入射角θ0で入射した際のρ=tanΨ・exp(iΔ)は媒質、薄膜、基板の複素屈折率をそれぞれN0、N1,N2=nd *、また薄膜の膜厚をdとしたとき次式(23)で表されることが一般に知られている(非特許文献10)。
尚、ここで空気の屈折率N0、及びポリカーボネートの屈折率N1は文献値等によりN0=1.0、N1=1.58使用した。
但し、ここでの最小二乗近似では複数のnd、kd、dの組み合わせが求まるのみで一意に求めることはできない。但し、nd、kd、dどれか一つの値が求められれば他の二つの値を決定することは可能である。
本測定の目的はnd、kdを求めることであるからdを別途求める必要がある。そこで、本実施の形態では、nd,kdは波長に依存する量であるが、dは波長に依存しない量であることを利用した。すなわち、色素の吸収スペクトルの波長依存性において、吸収がない、すなわち、kdがゼロとみなせる波長λ0で、先ず、nd,dを求め、次いで、このdを用いて、所定の波長λ(記録再生光波長)における、nd,kdを求めるのである。
先ず、直径120mmの円盤状の案内溝を有しない平坦な表面のポリカーボネート基板に、その中心付近に色素A2を0.75wt%含有するオクタフルオロペンタノール(OFP)溶液0.8gを滴下し、20秒間で4200rpmまで回転数を上昇し3秒間回転維持することで色素A2を含有するOFP溶液を延伸した。その後100℃で1時間保持することで溶媒であるOFPを揮発させ色素A2の薄膜を形成した。
(本発明に係る記録方法及び光記録装置について)
本発明は、また、案内溝が形成された基板上に、少なくとも、光反射機能を有する層と、未記録時に記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分とする記録層と、カバー層24とが順次積層された構造を有する光記録媒体において、記録再生光ビーム27が前記カバー層に入射する面から遠い側の案内溝部25を記録溝部として、前記カバー層側から前記記録再生光を入射して、前記記録溝部に形成した記録ピット部の反射光強度が当該記録溝部の未記録時の反射光強度より高くすることを特徴とする光記録方法を提示する。本記録方法は、いわゆる膜面入射型記録媒体に対する記録方法であって、特に、波長350〜450nmの青紫色レーザーダイオードを記録再生光源としてもちい、NA=0.6〜1の高NAの集束ビームを用いる高密度記録に適している。
本発明に用いる記録装置の基本構造は、従来の光記録装置と同じものを用いることができる。例えば、そのフォーカスサーボ方式や、トラッキングサーボ方式は、従来公知の方式を適用できる。集束ビームの焦点位置のスポットが、カバー層溝間部に照射され、トラッキングサーボによって、該カバー層溝間部を追従するようになっていればよい。より具体的には、図7を用いて説明したようなプッシュプル信号を利用する方法が好ましいし、通常は、プッシュプル信号が利用されている。
本発明では、前述のように記録ピットとその周辺部の位相の異なる反射光の2次元的干渉を考慮した「位相差によって生じる(局所的)反射光強度変化」を検出するので、集束された記録再生光ビーム27のスポットの記録溝部横断方向の直径は通常、記録ピットの幅より大きくする。本発明における記録ピットの幅は、記録溝部の溝幅に制限されるので、記録ビームスポット径D(ガウシアンビームの1/e2の強度で定義する)は、記録溝幅(カバー層溝間部の幅)Wgより広いことが好ましい。ただし、あまりに広すぎては、隣接記録溝部とのクロストークが増大するので、通常は、Wg<D≦2TP、(TPは、記録溝のトラックピッチ)とすることが好ましく、D≦1.5TP、であることがより好ましい。
カバー層溝間部に記録を行う場合、集束された記録再生光ビーム27は、記録層主成分色素を昇温・発熱せしめて、変質(膨張、分解、昇華、溶融等)を起こさせる。マーク長変調記録を行う場合、記録再生光ビームのパワー(記録パワー)をマーク長に従って、強弱変調させる。なお、マーク長変調方式は、特に制限は無く、通常用いられるRun−Length−Limited符号である、EFM変調(CD)、EFM+変調(DVD)、1−7PP変調(ブルーレイ)等を適用できる。
ただし、HtoL極性信号を前提とした記録再生系においては、LtoH記録に当たって、マークとスペースでの記録信号極性が逆になるように記録データ信号の極性を予め反転させておくことがある。こうすれば、記録後の信号は、見かけ上、HtoL極性の信号と同等にできる。
通常は、マーク部で記録パワーを高レベルPwとし、マーク間(スペース)で低レベルPsとする。Ps/Pwは、通常0.5以下とする。Psは一回だけの照射では、記録層に上記変質を生じさせないようなパワーであり、Pwに先行して記録層を予熱したりするために利用される。公知の記録パルスストラテジーは、本発明記録方法及び記録装置においても適宜使用される。例えば、記録マーク部に対応する記録パワーPw照射時間はさらに、短い時間で断続的に照射されたり、複数のパワーレベルに変調したり、Pw照射後、Psに移行するまでの一定時間Psよりもさらに低いパワーレベルPbを照射する、等の記録ストラテジーが使用できる。
以下の実施例、比較例においては、同様な手順によって各色素のnd *を求めている。
(試料の作成方法及び評価方法)
トラックピッチ0.32μmで溝幅約0.18μm〜0.2μm、溝深さ約25nmから65nmまで条件を振って案内溝を形成したポリカーボネート樹脂(波長405nmでの屈折率は1.58である。以下、屈折率は、同様に波長405nmでの値である。)の溝深さステップ基板上に、Ag97.4Nd0.7Cu0.9Au1.0,Ag98.1Nd1.0Cu0.9、もしくはAg99.45Bi0.35Nd0.2合金ターゲット、組成はいずれも原子%、をスパッタして厚さ約65nmの反射層を形成した。その複素屈折率は、実部の屈折率が0.09、虚部の消衰係数が2である。記録特性はこの両者の反射層によって大差は無かった。その上に、主成分色素をオクタフルオロペンタノール(OFP)で希釈後、スピンコート法で成膜した。
スピンコート法の条件は、以下の通りである。即ち、各色素を、特に断りの無い限り、0.6重量%〜0.8重量%の濃度でOFPに溶解させた溶液を、ディスク中央付近に1.5g環状に塗布し、ディスクを1200rpmで7秒間回転させ色素を延伸し、その後、9200rpmで3秒間回転させ色素を振り切ることにより塗布を行った。尚、塗布後にはディスクを100℃の環境下に1時間保持することで溶媒であるOFPを蒸発除去した。
また、基板の溝深さ及び溝幅は原子間力顕微鏡(AFM:Digital Instruments社製 NanoScopeIIIa)を用いて測定した。
ポリカーボネート樹脂基板上に塗布された、記録層単独の塗膜状態での吸収スペクトルは、分光光度計(日立製作所製、U3300)を用いて測定した。また、TG−DTAによる重量減少開始温度の測定は、3mg〜4mgの色素粉末を乳鉢で均一になるようにすりつぶし、粉末サンプルをセイコーインスツルメンツ社製TG−DTA装置(TG/TDA6200)を用いて、300℃から600℃まで、10℃/minの昇温速度で行った。フローガスは窒素を用いた。オプティカル・デンシティ(OD)値、モル吸光係数(ε)は、色素をクロロホルム中に溶解(色素濃度5mg/l)し、同様に、上記分光光度計で測定した。主吸収帯の最も強い吸収を示す波長(ピーク)における値である。
ディスクは、線速度5.3m/s(記録条件1)又は4.9m/s(記録条件2)を1倍速とし、1倍速またはその2倍速となるよう回転させた。記録条件2のほうが記録条件1より線密度が高い。
記録パワーは5mWから9mWの範囲で変化させ、再生は、1倍速のみで行った。再生光パワーは0.35mWとした。
記録には、(1、7)RLL−NRZI変調されたマーク長変調信号(17PP)を用いた。1倍速での基準クロック周期Tは、15.15nsec.(チャネルクロック周波数66MHz)とし、2倍速では7.58nsec.(チャネルクロック周波数132MHz)とした。
再生時の反射光強度は、再生ディテクターの電圧出力に比例し、前述のような既知の反射率Rrefで規格化した反射率としている。変調度mは、前述のRH,RLを測定して、
m=(RH−RL)/RH
によって計算される。
記録信号評価においては、先ず、主として位相変化によるLtoH記録ができていること、プッシュプル信号の極性が反転していないこと、よって、0<|Φa|<|Φb|<πであることを確認した後、記録再生信号から、変調度の大きさや波形のひずみ状態を読み取り、LtoH記録の信号品質の良否を大まかに観察した。概ね、40%以上の変調度がとれており、全マーク長でLtoHの極性の信号が得られていることを最低条件とした。
さらに、ジッター(Jitter)値の記録パワー依存性を測定し、最小のジッター(Jitter)値となる記録パワーPwoを最適記録パワーとする。Pwoは、通常、記録条件1の2倍速記録で最も大きくなり、また、記録層色素の特性差が出やすい。このようにして、LtoH記録におけるより好ましい態様を明らかにした。
図12は、記録層の材料として用いた含金アゾ系色素(色素A)単独の塗膜状態での吸収スペクトルである。尚、含金アゾ系色素(色素A)の化学式を以下に示す。
未記録での薄膜状態の記録層の複素屈折率はnd=1.38、kd=0.15であった。また溶媒を乾燥蒸発させた後の記録層は、ごく微量の残留溶媒を別とすれば色素Aが100%とみなせる。
上記記録媒体をディスク1とし、基板の溝深さを50nm、25nmとした他はディスク1と全く同じ構成をもつディスク2、ディスク3作成した。これらのディスク1〜ディスク3は、その面内に上記案内溝からなる記録領域の他、案内溝のない鏡面領域を有する。
ディスク1〜ディスク3に対し記録領域の記録再生光ビーム入射面から見て遠い案内溝部に沿ってレーザビームの照射により、それぞれ長さ0.64μmのマーク(記録ピット部)とスペース(マーク間、未記録部)からなる単一信号を記録した。次いでマーク、スペースそれぞれの反射率を測定した。また未記録の鏡面領域の反射光強度を反射率に換算して測定した。それぞれの反射率を表2に示す。尚、鏡面領域反射率は、前述した図6のR0に相当する。
尚、反射基準面からの記録後の空洞の高さは約80nmであり、dbmp=50nmである。また、反射層/基板界面に変質、変形は見られないので、dpit≒dmix≒0となっていることも確認できた。さて、これらの値及びnd=1.38、nc=1.5、δnd=1.38−1=0.38(但し、空洞内の屈折率を1とした)、λ=406nm、dG≒30nm、dL≒0nm、dGL≒55nmを用いて、本実施の形態における各位相の値を見積もると、以下のとおりである。
式(7)におけるΦb2は、
Φb2=(4π/406)×(0.12×30−1.5×55)≒−0.78π
故に、|Φb2|<πである。
式(9)におけるΔΦは、
ΔΦ=(4π/406)×(0.12×50+0.38×80)≒0.36π
となり、ΔΦは、通常、(π/2)以下となるという想定を満足している。
また、式(8)におけるΦa2は、
Φa2≒(−0.78+0.36)π=−0.42π
となり、|Φb2|>|Φa2|も満足していることが確認できた。
図14は、ディスク2の記録条件1における1倍速記録時の記録特性を示す図である。また、図15は、ディスク2の2倍速記録時の記録特性を示す図である。図14及び図15において、(a)、(b)、(c)は、それぞれジッター(Jitter)、記録部・未記録部の反射率及び変調度の記録パワー依存性を示す。記録に用いた分割記録パルスのパラメーターは、1倍速では表3に示す通りであり、2倍速では表4に示す通りである。表3に示す1倍速では、Pb1=0.3mW、Pb2/Pw=0.35とした。表4に示す2倍速では、Pb1=0.3mW、Pb2/Pw=0.45とした。尚、いずれも、Pr(再生光パワー)=0.35mWとした。
実施例1のディスク2の構成において、以下の点を変更した。
つまり、記録層の材料を、下記の構造を有するカルボスチリル系色素(色素B)(但し、Phはフェニル基である。)と、含金アゾ系色素(色素C)と、を70:30重量%比となるように混合した。そして、この混合物を主成分色素として、オクタフルオロペンタノールに0.6wt.%混合した。そして、塗布を行った。その他の条件はディスク2と同じ構成のディスク4を作成した。dGは約30nmで、dLは、ほぼゼロであった。
溶媒を乾燥蒸発させた後の記録層は、ごく微量の残留溶媒を別とすれば、カルボスチリル系色素(色素B)と含金アゾ系色素(色素C)とを合わせて100%とみなせる。
図17は、ディスク4の記録条件1における1倍速記録時のジッター(Jitter)(図17(a))、記録部・未記録部の反射率(図17(b))、変調度の記録パワー依存性(図17(c))を示す図である。記録に用いた分割記録パルスのパラメーターは表5に示す通りである。Pb1=0.3mW、Pb2/Pw=0.48、Pr=0.35mWとした。
実施例1のディスク2から反射層の膜厚をおおよそ15nmとした他はディスク2と同じ構成を持つディスク5を作成した。反射層を15nmとすることで半透明となり約50%前後の透過率が得られるよう作成した。Rgは約7%であった。この場合にも、主反射面は、反射層のいずれかの界面にある。このような半透明な構成は多層記録媒体への適用が可能となる。実施例1と同様の検証を行ったところ、信号振幅は低下した。また、プッシュプル信号の極性は変化しなかったので、0<|Φa|<|Φb|<π、ΔΦ>0、なる位相変化によるLtoH記録となっている。
実施例1において記録層色素として使用した含金アゾ系色素(色素A)に加えて、表7〜表9に示される色素の中から、20種類のアゾ系色素(色素A2〜色素A21)を用いて、実施例1と同様の層構成でディスクを作成した。尚、表7〜表9には、前述したアゾ系色素である色素A及び色素Cと、色素A2〜色素A21とについて、屈折率、熱特性等をまとめている。また、表7〜表9には、それぞれの記録条件2における記録特性を示す。膜状態でのλmaxは、主吸収帯のピーク波長である。いずれの場合も、λmaxは、300nm〜600nmの範囲にあるので、記録再生は、主吸収帯の何れかの波長で行われている。
尚、クロロホルム液中のλmaxと膜状態でのλmaxは、通常±10nm程度の範囲で一致する。
溝形状は、溝幅は約180nm(0.18μm)、溝深さは約50nm、トラックピッチは0.32μmとした、色素溶液の濃度は0.6重量%として、同様の塗布条件で塗布を行ったところ、いずれの場合も、dGは約30nmの値が得られた。この塗布条件では、dLは実質的にゼロとみなせるほど薄い。
記録パルスは、個々の色素及び1倍速、2倍速において、図11の記録パルスパラメーターをジッター(Jitter)値が良好になるように適宜最適化して用いている。最適記録パワーは,Multi Trackでのジッター(Jitter)が最小となるパワーである。記録線速度は、記録条件2である。Single TrackとMulti Trackのジッター(Jitter)の差は、いずれの場合も約0.5%以下であり、クロストークが非常に少ない良好な記録ができた。
また、溝深さ約55nm、溝幅約0.15μmとすると、いずれの場合も、未記録状態の規格化プッシュプル信号強度は0.7〜0.8であり、Multi Track記録における最適記録パワーでの記録後の規格化プッシュプル信号強度は0.4〜0.5となった。
表7〜9の結果から、特に2倍速において、kd及び重量減少開始温度Tdの影響が明瞭であることが分かる。すなわち、kdが0.2以上かつTdが280℃以下であれば、2倍速での最適記録パワーで評価される記録感度が、概ね8.5mW以下となり好ましいことがわかる。記録感度についてはkdが特に重要で、kdが0.25以上であれば、本実施例内であればTdにかかわらず、記録感度は8.5mW以下となることがわかる。また、kdが0.3以上、Tdが300℃以下の場合には、2倍速でのジッター値が8.5%以下とでき、Tdが280℃以下であれば8%以下とできることがわかる。kdが0.3以上となる色素においては、λmaxが370〜450nmにあった。これら、2倍速で良好な記録特性を示すものは、さらに高線速度での記録も可能である。例えば、色素A17に対して、いわゆる2T記録ストラテジー(n/2ストラテジーともいう、特許文献42)を適用して、4倍速記録を試みたところジッター7.2%を得た。
これらとは別にkdが0.1〜0.3の範囲であって、重量減少開始温度が200℃以下の場合も、2倍速で8%未満のジッターが得られ好ましいことがわかる。
なお、色素A9は、kdが0.3未満であるが、むしろ、ndが1.3未満と小さいことがジッターに悪影響を与えている可能性がある。つまり、δndが小さくなり、Φnが小さくなっているため、変調度が他の例に比べて相対的に低くなり、2倍速でのジッターを若干悪化させている可能性もある。この観点から、ndは、1.3以上であることがより好ましいことがわかる。
これら2倍速記録特性が相対的に劣る色素記録層であっても、300℃以下の低温で分解して空洞を形成する、つまり、dbmp<0なる変形の形成につながる添加剤を加える、あるいはkdを大きくできる添加剤を加えるなどすれば、記録特性を改善することは可能である。色素単体での記録特性や保存安定性等を改善するために、このような添加剤を記録層に添加することは本発明においても適宜可能である。また、色素単体のkdが0.5以上と大きく、記録によって大きく減少すれば、位相の変化に加えて、補助的にkdの減少による反射光強度増加の効果も合わせ用いることで、記録特性が改善できる場合がある。さらに、記録層膜厚を若干厚めにすることで、最適記録パワーは低減できる。
なお、図25〜図27に、表7〜表9の色素のうち、600nmより長波長側に主吸収帯ピークがある例として色素C,主吸収帯ピークが記録再生光波長より短波長側にある例として色素A17、主吸収帯ピークが記録再生光波長に近い場合の例として色素A20の薄膜状態での吸光スペクトルを示す。主吸収帯のピーク位置を“→”で示している。いずれも、明瞭な吸収帯が可視広域にあることが分かる。
さらに、図28〜図31に表7〜表9の色素のうち代表例として色素A2,A8、A17、A20のTG−DTAスペクトル(のうちの重量減少スペクトル)を示した。図中“→”で示された温度が、重量減少開始温度である。バックグラウンドのラインL−L’と最初の急峻な凡そ500μg以上の重量減少部の接線K−K’との交点を、重量減少開始温度としている。これは、窒素雰囲気中のスペクトルであるが、大気雰囲気中での測定でも、重量減少開始温度については、±5℃程度の範囲で一致している。
実施例1において、記録層色素を非アゾ系色素B1、D1〜D6に置き換えて同様の層構成でディスクを作成した。また、これら色素を主成分とし、さらに、色素Cを30重量%加えて記録層としたディスクも作成した。表10には、非アゾ系色素である、色素Bと色素B1,D1〜D6とについて、屈折率、熱特性、記録特性等をまとめている。膜状態でのλmaxは、主吸収帯のピーク波長である。いずれの場合も、λmaxは、300〜600nmの範囲にあり、記録再生は主吸収帯の何れかの波長で行われている。色素BとB1はカルボスチリル系色素、D1〜D6はピロン系色素である。
いずれの場合も、ディスク鏡面部での未記録状態での反射率R0は、記録層膜厚をゼロとした場合の鏡面部反射率の70%以上が得られている。また、溝深さを約25nmとした浅溝の場合は、溝深さ50nmの場合と比べて、記録前反射率(スペース部反射率)が増加し、信号振幅及び変調度が低下しており、主として、位相変化ΔΦの寄与によるLtoH記録であることが確認できた。
これら、非アゾ系色素では、アゾ系色素に比べてジッターとしては若干劣るものが多かったので、若干記録条件の緩い記録条件1を適用した。
記録パルスは、個々の色素及び1倍速、2倍速において、図11の記録パルスストラテジーのパラメータをジッター値が良好になるように適宜最適化して用いている。最適記録パワーは、Multi Trackでのジッターが最小となるパワーである。色素B(nd=2.18)、色素B1(nd=2.07)、色素D1(nd=2.03),色素D2(nd=2.09)では単独で記録層とした場合は、明瞭なLtoH記録信号は得られなかった。おそらく、ndが2以上であるため、nd’が、nc以下に十分低下していないのではないかと考えられる。nd=1.93の色素D3は、ジッターが11%程度で比較的悪かったが、LtoH極性の信号は得られた。
しかし、いずれの場合も、色素C(nd=1.50)を混合した場合は、Single TrackとMulti Trackのジッターの差は、約0.5%以下であり、非常にクロストークの少ない良好な記録ができた。
色素D4は、単独でも良好な記録特性が得られているので、記録条件2での評価も行なった。いずれの場合も、単独でも1倍速では9%以下のジッターが得られたが、記録条件2の2倍速ではジッターが10%以上となった。これは、重量減少開始温度が250℃より高いことと関連があるものと考えられる。
なお、実施例5のうち単独でも良好なジッター値が得られる色素D4の吸収スペクトルを図32に示す。色素D4のように双峰性の場合でも、各ピークは近接して一つの連続的な吸収帯を形成している。この場合は、吸光度の大きいほうのピークを主吸収帯のピークとしている。さらに、色素D4の重量減少スペクトルを、図33に示した。
尚、色素D5と色素D6については、単独では結晶化しやすい傾向が見られたため、単独で記録層とした場合の記録特性の評価は行わず、色素Cを混合して記録層として記録特性の評価を行った。
実施例1〜4と同じ(1,7)RLL−NRZIマーク長変調データが、凹形状ピット列として記録されたROM信号を含む基板を用意した。ピット及び基板溝部深さは、約50nmである。基板溝部形状は、実施例4と同等である。該基板上に実施例4、色素A17の媒体と同じ層構成の記録媒体を形成した。記録ピット列が存在する領域をROM部、記録溝部が存在する領域を追記領域と称する。
図34は、パーシャルROMのROM領域と記録済み追記領域の再生信号波形を示す図である。図34(a),(b)に、それぞれROM領域及び記録済みの追記領域への再生信号波形(Isum信号、いわゆるアイパターン)を示す。追記領域への記録は、実施例4と同様に行っている。
図34(a)においてROM領域のRHは約40%、変調度は約65%、ジッターは、7.2%であった。ジッター値が少し高めで、アシンメトリーも少しずれているように見えるが、これは、元のスタンパ製造上の問題であり、記録層を設けたためではない。スタンパ製造工程の改善により7%未満とすることは可能である。また、図34(b)において、追記領域のRHは、約35%、変調度は約69%、ジッター値は、約5.5%であった。2つの領域の信号はきわめて類似しており、区別無く再生できるレベルである。さらに、スタンパ製造時のピット形成条件等を最適化すれば、より均一な再生信号を得ることも可能である。
図35は、ROM領域に本発明記録方法により上書きを行った場合の再生信号波形を示す図である。すなわち、図35は、図34(a)のROM部の記録層に実施例4と同様の記録信号を記録した場合の信号波形である。色素記録層記録部の反射率が上昇するため、特に、ROM信号のピット部での信号が乱され、ROM信号が再生不能となった。このように、本発明記録媒体を適用すれば、ROM部データのコピー防止,security上の観点から、一部のROMデータを、意図的、かつ、選択的に再生不可能とする使用方法が可能となる。
この場合、記録されたピット(マーク)位置は、基板上の凹部として形成されたピット列と同期しないので、全くランダムに上書きされている。凹部ピットのスペース部は、つまり、基板表面であり、ここに上書きされた場合は、位相差の寄与が無いので、反射率変化は小さい。もちろん、ピット部スペース部とも上書きされなければ反射率変化は生じない。凹部に上書きされなければ反射率は低いままである。他方、ピット凹部底面は、基板溝部とほぼ同じ深さであり、ここに、上書きされれば、通常の溝部への記録と同様に、位相差ΔΦ>0の寄与により、反射率は増加する。主として、このピット部への上書きにより、記録再生波形は大きく乱され、図35のような波形になっていると考えられる。
以下においては、本発明において、カバー層溝間部(in−groove)に位相変化を主とするLtoH記録を行うことが、カバー層溝部(on−groove)に記録を行うことより優れていることを明らかにするため以下の実験を行った。
実施例4の色素A2のディスクにおいて記録層膜厚のみを変化させて、カバー層溝間部とカバー層溝部にそれぞれ記録を行った。記録層膜厚は、本実験に用いた範囲では塗布に用いる溶液中の色素濃度に比例することがわかっているので、溶液濃度0.6重量%(dG≒30nm)、1.2重量%(dG≒60nm)の各ディスクを用意した。
図36は、他の実施例と同じ評価機で、記録線速度5.3m/s(記録条件1)において、8Tマーク長とスペース長を交互に発生して記録を行った場合の、記録信号のCN比(キャリアー対ノイズ比)、クロストーク、記録信号の上端の反射率(R8H),下端の反射率(R8L)の記録パワー依存性を示す。
CN及びクロストークの測定は、記録ストラテジーとしては、図11において、dTtop=(10/16)T、Ttop=16/16T、Tmp=10/16T、dTe=0T,Pb1=Pb2=0.3mW,Pr=0.35mWで、8Tマークとスペースの繰り返し信号を記録し、再生信号(Isum信号)をADVANTEST社製、スペクトラムアナライザーTR4171、resolution band width=30kHz,video band width=100Hz、を用いて測定した。
ここでクロストークは、カバー層溝間部に記録した場合は、未記録の隣接カバー層溝部において、記録されたカバー層溝間部からの漏れ信号強度(両隣で測定したキャリアレベル値の平均値)を測定し、カバー層溝間部での記録信号のキャリアレベル値を引いたものである。他方、カバー層溝部に記録した場合は、未記録の隣接カバー層溝間部において、記録されたカバー層溝部からの漏れ信号強度(両隣で測定したキャリアレベル値の平均値)を測定し、カバー層溝部での記録信号のキャリアレベル値を引いたものである。クロストークは、通常、負の値をとり、絶対値が大きい方が、クロストークが小さい。
まず、色素濃度0.6重量%(dG≒30nm)の場合に注目する。本発明態様に相当するカバー層溝間部に記録した場合(図36(a))、R8Lは未記録の反射率と同じで13%程度で一定であるが、5mW程度からLtoH極性の信号が記録され、R8Hレベルが記録パワーとともに増大し、CN比は約7mWで最大値60dBをとる。クロストークは常に−40dB以下である。
他方、カバー層溝部に記録を試みた場合(図36(b))、そもそも、dL≒0となっているので、10mW未満では、全く記録信号が観測されない。10mW以上で非常に小さな歪んだ記録信号(約45dB以下)が観測されるが、これは、非常に高記録パワーであるため、カバー層溝部反射層のいずれかの界面において微小な変形が生じている可能性もあるのに加えて、両隣のカバー層溝間部に熱が伝わって、カバー層溝間部においてもわずかながら記録層の変質が生じたためと考えられる。つまり、実質的に、カバー層溝部への記録は困難である。クロストーク値は、−20dBと大きな値となっている。カバー層溝部への記録信号の漏れ信号というよりも、むしろ、カバー層溝間部の一部(カバー層溝部よりの溝壁など)に記録された弱い信号を観測しているものと考えられる。
ついで、色素濃度1.2重量%(dG≒60nm)の場合に注目する。dLは、断面観察から、30nm以下の薄い値となっていることがわかった。カバー層溝間部に記録した場合(図36(c))、R8Lは未記録の反射率と同じで約9%程度で一定であり、図36(a)の場合より低い。3mW程度からLtoH極性の信号が記録され、R8Hレベルが記録パワーとともに増大し、約24%に達する。全体に反射率が低いのは、記録層の厚膜化により、記録層で光が吸収されてしまうからであり、逆に、記録感度は良くなる。CN比は約6mWで最大値約60dBをとる。クロストークは6mW以下では−40dB以下である。6mW程度より高パワーでは、クロストークが大きくなる傾向が見られた。しかし、6mW以上では、プッシュプル信号が非常に小さくなり、規格化プッシュプル信号が0.1未満となったため、記録中又は記録直後にトラッキングサーボ維持できず測定ができなかった。このようにdGがdGL(≒dGLS)を超えると、記録パワーが高い場合(おそらく、記録ピットでの変形dbmp<0が大きい場合)、トラッキングサーボが不安定になることがある。
他方、カバー層溝部に記録を試みた場合(図36(d))、7mW以下では、非常に微小な歪んだ信号が観測されたが、これはやはり、隣接するカバー層溝間部の一部への記録によるものと考えられる。7mW以上(図中の丸で囲まれた領域)で、R8Lが低下しているが、これは、カバー層溝部にHtoL極性の信号が記録されたためである。つまり図36(d)図において、未記録状態反射率は約9%で一定であるが、7mW以下ではそれがR8Lに対応し、7mW以上ではR8Hに対応する。7mW以上では、カバー層溝部において、空洞が形成され記録層がカバー層側に膨らむ変形が起きていると考えられるが、これは、式(12)でΔΦ>0なる位相変化が生じた場合に相当する。7mW以上のHtoL記録ではCN比は60dBに達せず、クロストーク値は、HtoL信号が隣接カバー層溝間部に漏れこんで−5dBまで増加した。
さらに0.6重量%と1.2重量%のディスクでカバー層溝間部に、記録条件2の2倍速記録を行った場合のジッター値の記録パワー依存性を評価した。記録ストラテジーは、図11の記録ストラテジーをそれぞれに最適化して用いている。1.2重量%の場合は、ジッター値最小となる記録パワーは約5.5mWで、0.6重量%の場合の約8mWにくらべて低下しているものの、最小ジッター値は、1.2重量%の場合の約9%に対して、0.6重量%のディスクの方が約6.6%と低くなっている。記録層が厚い場合、記録感度は良くなるが、おそらく、記録溝部に沿った方向での、隣素記録ピット間の熱干渉が増大して、低いジッター値が得にくい傾向があると考えられるので、記録層膜厚は、溝深さより薄い方が好ましいことが分かる。
ついで、記録条件2の1倍速において最適記録パワーで記録された領域を、1倍速で繰り返し再生して再生光耐久性を調べた。再生光パワー3.5mW(高周波重畳あり)で、同一部分を繰り返し再生したところ、0.6重量%のディスクでは、初期ジッター値が5.2%で少なくとも100万回まで全くジッター値の増加が見られなかった。1.2重量%のディスクでは、初期ジッター値が6.4%で、数万回でジッターの顕著な増加が見られた。
参考例2と同様の検討を、溝深さ約20nmの非常に浅い基板を用いて行った。8Tマーク/スペース信号を、5.3m/s(記録条件1)で記録した場合の記録信号のCN比(キャリアー対ノイズ比)、クロストーク、記録信号の上端の反射率(R8H),下端の反射率(R8L)の記録パワー依存性を図37に示す。
色素濃度0.6重量%(dG≒30nm)の場合、カバー層溝間部に記録した場合(図37(a))、R8Lは未記録の反射率と同じで32%程度で一定である。5mW程度からLtoH極性の信号が記録されるが、R8Lが高いため位相変化ΔΦが小さく、信号振幅は非常に小さい。6.5mW以上では、トラッキングサーボが不安定で測定不可能であった。おそらく、記録ピットでの変形dbmp<0が浅いdGLを超えて非常に大きくなったため、規格化プッシュプル信号が非常に小さくなるか、その極性が反転してしまったためではないかと考えられる。
他方、カバー層溝部に記録を試みた場合(図37(b))、浅溝であるためカバー層溝部にも20nm弱の色素層が形成されるが、8mW未満では、ほとんど記録されない。8mW以上では、やはりトラッキングサーボが不安定になってしまった。
ついで、色素濃度1.2重量%(dG≒60nm、dL≒30nm)の場合に注目する。色素記録層は、溝横断方向に関して途切れることなくつながっている様に観測される。つまり、カバー層溝部(基板溝間部)にも、色素層が形成されている。
カバー層溝間部に記録した場合(図37(c))、R8Lは未記録の反射率で約21%程度で一定であり、図37(a)の場合より低い。3mW程度からLtoH極性の信号が記録され、R8Hレベルが記録パワーとともに増大し約28%に達するが、5mW以上では、プッシュプル信号が非常に小さくなり、記録中又は記録直後にトラッキングサーボ維持できず測定ができなかった。カバー層溝部に記録を試みた場合(図37(d))、6mW未満では隣接カバー層溝間部の一部に変質が生じた考えられる非常に小さなLtoH信号が観測された。約6mW以上では、HtoL記録になると予想されたが、やはり、記録中又は記録直後にトラッキングサーボ維持できず測定ができなかった。
参考例2の浅溝の場合は、カバー層溝間部においてLtoH記録自体は可能であるものの信号振幅、トラッキングサーボの観点からは、必ずしも良好な特性は得がたいことが分かる。この場合も、参考例1のように、溝深さを本発明で好ましい「中間溝」深さとすれば、特性は改善される。
実施例4の色素A2を用いた場合において、カバー層の材料を種々変更して検討を行った。すなわち、カバー層の厚み100μmのうち界面層に接する10μmを表11に示した各種紫外線硬化型樹脂とし、残りの90μmを紫外線硬化型の樹脂F1とした。
図38は、他の実施例と同じ評価機で、記録線速度5.3m/sにおいて、8Tマーク長とスペース長を交互に発生して記録を行った場合の、記録信号のCN比(キャリアー対ノイズ比)の記録パワー依存性を示す。比較のために実施例4の色素A2のディスクでも同様の評価を行った(これを実施例4−A2と示す)。すなわち、ガラス転移温度−21℃の粘着剤F0が25μmとポリカーボネート樹脂75μmのシートからなるカバー層である。本シートカバー層の貼り合せ自体には、紫外線照射を必要としないが、念のため、カバー層F1形成と同様に紫外光を照射しても、特性に変化が無いことを確認している。これは、本発明において、図19のような平坦な吸収特性で、かつ、紫外領域にほとんど吸収を有しない色素を用いることのプロセス上の利点、すなわち、特別な保護処置をしなくても、紫外線硬化樹脂をカバー層として用いることができること、を示している。
図38から、実施例4の色素A2及び樹脂F4〜F6の変形促進層を用いた媒体が、高いCN比が得られ、且つ、低い記録パワーでCN比が40dBを越え、記録感度の点で、良好な特性が得られていることが分かる。
参考例F1〜F3では、若干の波形の歪みは見られるものの、少なくともCN比が50dBを超える点では、マーク長全体にわたってLtoH記録となっていた。色素A2においては、空洞形成、dbmp<0なる記録層側からカバー層への膨れ変形が信号振幅に寄与しており、高硬度のカバー層(少なくとも記録層側)においては、変形が抑制されて記録感度が悪化するものと考えられる。
記録条件1または2の1倍速でマーク長変調記録を行って、ジッター10%以下が得られたのは、実施例A2と樹脂F4〜F6の場合であった。F4、F5、F6とTgが低い方が低いジッターが得られ、F6では記録条件2でも、5.4%という低いジッターが得られた。上記ジッターの測定結果は、主として、2Tマークの形成の良好さによって差が生じたと考えられ、本発明において積極的に膨れ変形dbmp<0を利用する場合には、ガラス転移点が室温(25℃)以下の粘着剤並みの柔らかい変形促進層が、少なくとも記録層側には形成されていることが好ましいことが分かる。
本発明においては、記録層膜厚dG≦dGLとして色素記録層を記録溝部に閉じ込めることで、このようにdbmp<0なる変形を積極的に用いてもクロストークの非常に小さな記録が可能となっている。
なお、色素A2では、特に、ndが1.38と本発明実施例のなかでは、小さい部類なので、δndも相対的に小さい部類と考えられる。したがって。dbmp<0なる変形を積極的に活用する必要性が高いと考えられる。ここで、色素記録層をよりδndが大きなものに変更する、例えば、ndを1.8〜1.9にする、などすれば、変形量|dbmp|が小さくても、記録信号特性を改善することは可能である。また、ガラス転移温度Tgが0℃程度より高くでも、Tg以上での貯蔵弾性率が小さい材料を用いて改善することは可能である。
Claims (44)
- 案内溝が形成された基板と、
前記基板上に、少なくとも、光反射機能を有する層と、
未記録状態において記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分として含有する記録層と、
前記記録層に対して記録再生光が入射するカバー層と、をこの順に具え、
前記記録再生光を集束して得られる記録再生光ビームが前記カバー層に入射する面から遠い側の案内溝部を記録溝部とするとき、
前記記録溝部に形成された記録ピット部の反射光強度が、当該記録溝部における未記録時の反射光強度より高くなり、
前記記録溝部の未記録時における記録層膜厚d G が5nm以上50nm未満である
ことを特徴とする光記録媒体。 - 前記記録ピット部の反射光強度が、当該記録ピット部における反射光の位相変化により増加することを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記光反射機能を有する層の前記記録層側の界面を反射基準面とし、
前記記録溝部における前記反射基準面までの往復光路長と前記記録ピット部を形成しない案内溝部である記録溝間部における前記反射基準面までの往復光路長との差によって生じる位相差Φbが、0<|Φb|<πであり、
前記記録溝部に前記記録ピット部が存在する場合の位相差Φaが、0<|Φa|<πであり、
且つ、|Φb|>|Φa|であることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。 - 前記反射基準面で規定される前記記録溝部と前記記録溝間部との段差dGLと、
前記記録層の未記録時の記録再生光波長λにおける屈折率ndと、
前記カバー層の前記記録再生光波長λにおける屈折率ncと、
前記記録溝部の未記録時における記録層膜厚dGと、
前記記録溝間部の未記録時における記録層膜厚dLと、の関係が、
(λ/8)≦|(nd−nc)・(dG−dL)+nc・dGL|≦(15/64)・λであることを特徴とする請求項3記載の光記録媒体。 - 前記記録ピット部での位相変化が、前記光反射層の入射光側における屈折率ndより低い屈折率部の形成によるものであることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
- 前記記録ピット部での位相変化が、前記記録層の前記記録再生光波長での屈折率が未記録状態に比べて減少することによるものであることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
- 前記記録後の減少した屈折率nd’が、カバー層屈折率ncよりも小さいことを特徴とする請求項6記載の光記録媒体。
- 前記記録ピット部での位相変化が、前記記録層の内部または当該記録層に隣接する層との界面に空洞を形成することによるものであることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
- 前記記録層が前記カバー層側へ膨らむ形状変化を伴うことを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
- 前記記録層の未記録状態での屈折率ndが前記カバー層の屈折率ncと同等以下であることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
- 前記記録ピット部に反射層/記録層、及び、反射層/基板界面のいずれにも変形及び混合が生じていないことを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
- 前記記録再生光の波長λが350nm〜450nmであることを特徴とする請求項1又は2記載の光記録媒体。
- 前記記録溝部の未記録時における記録層膜厚dGが5nm以上40nm未満であることを特徴とする請求項12記載の光記録媒体。
- 前記光反射機能を有する層の前記記録層側の界面を反射基準面とし、
前記反射基準面で規定される前記記録溝部と前記記録溝間部との段差dGLが、30nm〜70nmであることを特徴とする請求項12記載の光記録媒体。 - 前記記録溝部の未記録時における記録層膜厚dGと、
前記光反射機能を有する層の前記記録層側の界面を反射基準面とし、前記反射基準面で規定される前記記録溝部と前記記録溝間部との段差dGLと、
前記記録溝間部の未記録時における記録層膜厚dLと、が、
dG<dGL、且つ、dL/dG≦0.2であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。 - 前記記録溝間部の未記録時における記録層膜厚dLが、0nm〜10nmであることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記記録層と前記カバー層との間に、当該記録層の材料と当該カバー層の材料との混合を防止する界面層をさらに設けたことを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記記録層と前記カバー層との間に、当該記録層の材料と当該カバー層の材料との混合を防止する界面層をさらに設け、前記界面層の厚みが、1nm〜50nmであることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記記録再生光ビームを前記記録溝部に照射した場合の反射率が、未記録時においては3%〜30%であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記カバー層の前記記録再生光波長λにおける屈折率ncが、1.4〜1.6であり、前記記録層の未記録時の記録再生光波長λにおける屈折率ndが、1〜2であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記記録層の屈折率ndが1.2〜1.9であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記記録層の未記録状態での、前記記録再生光波長λにおける消衰係数が0.1〜1であることを特徴とする請求項20記載の光記録媒体。
- 前記記録層の未記録状態での、前記記録再生光波長λにおける消衰係数が0.3以上であることを特徴とする請求項20記載の光記録媒体。
- 前記記録層として重量減少開始温度が300℃以下であり、かつ、未記録状態の消衰係数kdが0.3以上である色素を用いることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記屈折率ndが、1.6以下であることを特徴とする請求項21記載の光記録媒体。
- 記録再生光波長λにおける前記光記録媒体の鏡面部での反射率が、記録層膜厚をゼロとした場合の鏡面部反射率の50%以上であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記記録層の記録後の記録再生光波長λにおける消衰係数が、記録前に比べて減少することを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記記録層の主成分となる色素の主吸収帯のピークにおけるクロロホルム溶液中でのモル吸光係数が、20000〜100000であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記記録層の主成分となる色素が、nd=1.3〜1.9、kd=0.3〜1、熱重量分析で測定した重量減少開始温度が150〜300℃にある色素であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記記録溝部の未記録状態における規格化プッシュプル信号強度が、0.5以上0.8以下であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記記録溝部の記録後における規格化プッシュプル信号強度が、0.2以上0.5以下であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記記録層が、前記案内溝を有する基板上へ、該色素を溶解した溶液の塗布により形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記カバー層の記録層側界面に、変形促進層を設けたことを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記変形促進層が、ガラス転移温度が0℃以下の粘着層であることを特徴とする請求項33記載の光記録媒体。
- 前記記録層の主成分となる色素の熱重量分析で測定した重量減少開始温度が、150℃〜250℃であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記基板上の少なくとも一部に、前記記録溝と同じ深さのピット列からなる再生専用データ領域を設けたことを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 案内溝が形成された基板上に、少なくとも、光反射機能を有する層と、未記録時に記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分とする記録層と、カバー層とが順次積層された構造を有する光記録媒体に、前記カバー層側から記録再生光を入射して記録再生を行う光記録媒体の光記録方法であって、
前記記録再生光を集束して得られる記録再生光ビームが前記カバー層に入射する面から遠い側の案内溝部を記録溝部とするとき、前記記録溝部に形成した記録ピット部の反射光強度が当該記録溝部の未記録時の反射光強度より高くなり、
前記記録溝部の未記録時における記録層膜厚d G が5nm以上50nm未満である
ことを特徴とする光記録媒体の光記録方法。 - 前記記録ピット部の反射光強度が、当該記録ピット部における反射光の位相変化により増加することを特徴とする請求項37記載の光記録媒体の光記録方法。
- 前記光反射機能を有する層の前記記録層側の界面を反射基準面とし、
前記記録溝部における前記反射基準面までの往復光路長と前記記録ピット部を形成しない案内溝部である記録溝間部における前記反射基準面までの往復光路長との差によって生じる位相差Φbが、0<|Φb|<πであり、
前記記録溝部に前記記録ピット部が存在する場合の位相差Φaが、0<|Φa|<πであり、
且つ、|Φb|>|Φa|であることを特徴とする請求項38記載の光記録媒体の光記録方法。 - 前記記録ピット部での位相変化が、前記光反射層の入射光側における前記記録層の未記録時の記録再生光波長λにおける屈折率ndより低い屈折率部の形成によるものであることを特徴とする請求項38記載の光記録媒体の光記録方法。
- 前記記録ピット部での位相変化が、前記記録層の前記記録再生光波長での屈折率が未記録状態に比べて減少することによるものであることを特徴とする請求項38記載の光記録媒体の光記録方法。
- 前記記録ピット部での位相変化が、前記記録層の内部または当該記録層に隣接する層との界面に空洞を形成することによるものであることを特徴とする請求項38記載の光記録媒体の光記録方法。
- 前記記録層が前記カバー層側へ膨らむ形状変化を伴うことを特徴とする請求項38記載の光記録媒体の光記録方法。
- 案内溝が形成された基板上に、少なくとも、光反射機能を有する層と、未記録時に記録再生光波長に対して光吸収機能を有する色素を主成分とする記録層と、カバー層とが順次積層された構造を有する光記録媒体に、前記カバー層側から記録再生光を入射して記録再生を行う光記録媒体に対する光記録装置であって、
前記記録再生光を集束して得られる記録再生光ビームを前記カバー層に入射する面から遠い側の案内溝部である記録溝部に照射し、前記記録溝部に未記録時よりも反射光強度が増加した記録ピット部を形成し、
前記記録溝部の未記録時における記録層膜厚d G が5nm以上50nm未満である
ことを特徴とする光記録装置。
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