JP4549840B2 - セグメントのコーナー部止水構造 - Google Patents

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本発明は、シールドトンネル工法におけるセグメントのコーナー部止水構造及びセグメント装着用シール材に関する。
シールドトンネル工法では、図5に示すように、ユニット化された多数の被シール部材としてのセグメント1を、坑道の周壁の方向aと、坑道の長さ方向bとの両方向に接合するが、それぞれの接合面には帯状のシール材3が介装され、漏水防止の機能を発揮させている。
すなわち、各セグメント1の板面の4周縁には、シールドトンネルの軸方向(坑道の長さ方向a)に直角な方向(坑道の周壁の方向b)のリング面5と、シールドトンネルの軸方向に略平行となる方向のピース面7からなる接合面が形成されており、隣接するセグメント1は、互いに、その接合面5,7において、結合ボルト(ボルト孔9)によって接合されるが、これらセグメント1の組立に際しては、地山からの湧水の、トンネル内への漏洩を防止するために、各接合面にシール材3が装着される。
シール材3をセグメント1の接合面5,7に装着する方法については、帯状のシール材3をそのまま接合面5,7に形成されたの溝に接着剤で貼り付けていく廻し貼りと呼ばれる方法、あるいは、予め長さをセグメント1の周長に合わせた定尺のシール材3を環状に加工し、これをセグメント1に嵌め込んで接合面5,7に装着する方法などがある。
シール材3の厚さが比較的小さい場合は、コーナー部を加工しなくても問題ないが、シール材3の厚さが増すほど、シール材3の弾力性に起因してシール材3をセグメント1のコーナーに密着させることが困難になり、また、シール材3のコーナー部における外隅のRが大きくなる結果、コーナー部でシール材3のボリュームが不足する。
このようなシール材3の厚さが比較的大きい場合の問題点を解消するため、古くは、セグメント1の外周に沿った直線部分とL字状コーナー部とを接合する方法が用いられ、また、近年には、シール材3のコーナー部を加工する方法が提案され、実用化されている(特許文献1及び2参照。)。
特許文献1には、帯状のシール材の所定箇所に入れた切れ目を外側として直角に折り曲げ、この折り曲げ箇所に角柱状の未加硫のゴム材料を充填し、加硫プレス成形によりコーナー部を形成することが開示され、特許文献2には、切れ目を入れる代わりにV字状にカットし、上記と同様の成形方法で傾斜面を有する一部減肉したコーナー部を形成することが開示されている。
特許第2524308号公報 特開2001−132394号公報
しかしながら、従来のコーナー加工を施したセグメント用シール材は、コーナー部のボリューム不足は解消されるものの、却ってボリューム過多になり、セグメント1のピース面7同士の連結によりセグメント用シール材3同士が圧縮されると、コーナー部がリング面5側に一部はみ出し、セグメント1をシールドトンネルの軸方向bに連結する際、はみ出し部分が隣接する相手側セグメントを押圧し、その圧縮反力が相手側セグメントのクラック発生要因となったり、シール性能を著しく低下させるなどの問題が生じた。
また、コーナー加工にはそれに要する労力と費用が発生するので、その削減についても要望されている。
本発明は、上記状況に鑑み、クラック発生要因の除去、シール性能低下の防止及びコーナー加工に要する労力と費用の削減を図ることを目的としてなされたものであって、シール材コーナー部のボリュームに過不足のないセグメントのコーナー部止水構造及びセグメント装着用シール材を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、セグメントに装着したシール材の相対するコーナー部の一方のみを角形に加工することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は、矩形、台形又は六角形の多角形湾曲板状に形成されたセグメントを多数接続して形成されるシールドトンネルにおいて採用される、前記セグメントの接合面に装着される環状加工された厚さが3〜8mmの水膨張性シール材からなるセグメント装着用シール材を用いた、接合される一対のセグメントの相対するコーナー部間の止水構造であって、前記セグメント装着用シール材は、前記セグメントの対角をなす一対のコーナーに対応する一対のコーナー部のみが角形に加工されており、前記相対するコーナー部の一方に前記セグメント装着用シール材の角形コーナー部が配置され、対面する他方のコーナー部には、角形に加工されていない部分が湾曲したR形状を呈して配置されているセグメントのコーナー部止水構造にある。
また、本発明の要旨は、上記セグメントのコーナー部止水構造に用いるセグメント装着用シール材であって、前記セグメントの接合面に装着される環状加工された厚さが3〜8mmの水膨張性シール材からなり、前記セグメントの対角をなす一対のコーナーに対応する一対のコーナー部のみが角形に加工されているセグメント装着用シール材にある。
本発明によれば、セグメントに装着されるシール材のコーナー部のボリューム不足を補うために、対向するコーナー部の一方が角形に加工されているので、セグメント同士の締結時、角形コーナー部が未加工のコーナー部側に突出し、未加工のコーナー部がR形状を呈するために発生する空隙をボリュームの過不足なく充填することができる。したがって、ボリュームの過多によるセグメントのクラック発生やボリュームの不足によるシール性能の低下を有効に防止することができる。また、セグメントのコーナーのうち2箇所に対応するコーナー部のみを加工すればよいので、コーナー部の加工に要する労力と費用を大幅に削減することができる。
以下、本発明に係るセグメントのコーナー部止水構造及びセグメント装着用シール材の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1はセグメントに装着される前の本発明に係るシール材の全体を示す図、図2は同シール材のコーナー部を示す図、図3はセグメントに装着された同シール材の全体を示す図、図4はセグメント同士が連結された際の同シール材のコーナー部を示す図である。
セグメント用シール材が装着されるセグメント1は、例えば、矩形状に形成されるとともに板面が湾曲して形成され(図5参照)、対辺位置となるシールドトンネルの軸方向(坑道の長さ方向b)に直角な方向(坑道の周壁の方向a)の一対のリング面5と、このリング面5に隣り合いシールドトンネルの軸方向に略平行となる方向のピース面7からなる接合面が形成されている。
本実施の形態によるセグメント装着用シール材(以下、単に「シール材」と称す)21は、セグメント1の外周に沿った無端環状に形成され、セグメント1の対角をなす一対のコーナーに対応する一対の角形コーナー部23を有している。角形コーナー部23は、セグメント外周部の出隅部1cを挟んで直交する二方向の接合面であるリング面5,ピース面7に亘って貼り付けられる。
接合面5,7にはシール材装着用溝11が形成され、シール材21は溝11に装着される。
この角形コーナー部23は、内外隅が角形に形成されており、他方、角形コーナー部23に対面する隣接セグメント側のコーナー部は角形に加工されていないので湾曲したR形状を呈している。そのために相対するコーナー部間では空隙が生じるが、図4に示すように、セグメントCに相対するセグメントAとセグメントBが締結されると、セグメントAに装着されたシール材の角形コーナー部23が隣接セグメントB側に突出してR形状によって生ずる空隙が埋められる。
したがって、本発明に係るシールドトンネルの止水構造においては、シール材のコーナー部におけるボリューム不足を解消するとともに、セグメントの締結時における角形コーナー部23の突出量を調節することによりボリューム過多になるのを防ぐことが可能である。
本発明に係るシールドトンネルの止水構造に用いるシール材21は、図1及び図3に示すように、セグメント1の対角をなす一対のコーナーに対応する一対のコーナー部を上記のとおり角形コーナー部23とし、他の一対のコーナー部は未加工のままにしておけばよい。
角形コーナー部23は、セグメント1が矩形の場合、内外隅とも略直角のL字状を呈するように加工されるが、セグメント1のピース面7に対応する側(未加工のコーナー部に相対する側)を若干増肉もしくは減肉して、セグメントの締結時における角形コーナー部23の突出量を調節することができる。
シール材21の厚さが比較的小さい場合、角形コーナー部23は、図2(a)に示すとおり、略直角に加工すればよいが、シール材21の厚さが比較的大きい場合、図2(b)に示すとおり、角形コーナー部23の相接する廻し貼りされた未加工のコーナー部の円弧状外面に相対する面に断面略三角形の小突起23aを形成し、若干増肉するのが望ましい。
本発明に係るシール材21は、3〜8mmの厚さを有するものが適しており、セグメント1が矩形の場合は、3〜7mm程度である。厚さが3mmより小さいものは、それほど高い止水圧を要求されないので、コーナー部を加工する必要がなく、また、厚さが8mmより大きいものは、コーナー部が加工されていないと、セグメント1への装着時、コーナー部近傍において、セグメント1に密着せず浮き上がるため、過大なセグメント締結力を要し好ましくない。
シール材21は、ゴム物質と水膨張性樹脂とを主成分とする水膨張性シール材からなる。ゴム物質としては、天然ゴム、クロロプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、EPDMゴム等が用いられる。水膨張性樹脂としては、ポリアクリル酸系、イソブチレン・無水マレイン酸系、ポリウレタン系、ポリビニルアルコール系等が用いられる。これらゴム物質と水膨張性樹脂に加硫剤、加硫促進剤、無機質充填剤、着色剤、軟化剤等の適宜な添加剤を混合して得ることができる。
次に、このシール材21の製造方法、特に、角形コーナー部23の成形方法について説明する。
シール材21は、先ず、水膨張性シール材を押し出し成形して帯状のシール材本体25を成形する。なお、この水膨張性シール材は、非水膨張性ゴムを組み合わせた複合型が好ましい。
次いで、シール材本体25を加硫した後、セグメント1の周長、すなわち、セグメント1の4つの接合面の合計長さに切断し、得られた定尺のシール材本体25をセグメント1に装着したとき、セグメント1の対角をなす一対のコーナーに対応する2箇所に、シール材本体25の全幅に亘って厚み方向に切れ目又は略V字状のカット部を設けて薄肉ヒンジ部をそれぞれ形成する。
次に、このヒンジ部が内隅側になるようにシール材本体25を直角に折り曲げ、切れ目又はカット部が開いて形成された開き箇所に角柱状の未加硫ゴムを充填する。
その後、未加硫ゴムの充填部を加熱プレス機でプレスし、プレス状態で一定時間加熱して加硫することにより、角形コーナー部23を成形することができる。
角形コーナー部23を2箇所形成したシール材21の両端部25aを対向させ、ゴム系硬化型接着剤を塗布して接合する。
なお、ゴム系硬化型接着剤としては、塩素化天然ゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリブタジエンゴム等のゴム成分と、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等の低温硬化剤、フェノール樹脂、レゾール樹脂、ポリイソシアネート等の硬化剤成分からなる2液の溶剤タイプのものを挙げることができる。
その後、接着部分を加熱して硬化させ、図1に示すように角形コーナー部23を2箇所有する環状のシール材21を得ることができる。
なお、上述した実施の形態では、押出成形にて得られる帯状のシール材本体25をセグメント1の各接合面の合計長さに切断して、セグメント1の対角の各隅部に相当する2箇所を角形にコーナー加工し、シール材本体25の各端部25aを接合して無端環状にシール材21を形成させる例について述べたが、環状に形成しない帯状のシール材21をセグメント1の接合面に装着してもよく、また、シール材本体25の1箇所を角形にコーナー加工したものを2つ接合してもよい。
本発明に係るシール材の全体を示す正面図である。 本発明に係るシール材のコーナー部を示す部分図である。 本発明に係るシール材のセグメントに装着された状態を示す正面図である。 セグメント同士が連結された際のシール材のコーナー部を示す説明図である。 シールドトンネルにおけるシール材を装着したセグメントの組立構造を示す説明図である。
符号の説明
1・・・セグメント
5・・・リング面
7・・・ピース面
11・・・シール材装着用溝
21・・・セグメント装着用シール材
23・・・角形コーナー部
25・・・シール材本体

Claims (4)

  1. 矩形、台形又は六角形の多角形湾曲板状に形成されたセグメントを多数接続して形成されるシールドトンネルにおいて採用される、前記セグメントの接合面に装着される環状加工された厚さが3〜8mmの水膨張性シール材からなるセグメント装着用シール材を用いた、接合される一対のセグメントの相対するコーナー部間の止水構造であって、
    前記セグメント装着用シール材は、前記セグメントの対角をなす一対のコーナーに対応する一対のコーナー部のみが角形に加工されており、前記相対するコーナー部の一方に前記セグメント装着用シール材の角形コーナー部が配置され、対面する他方のコーナー部には、角形に加工されていない部分が湾曲したR形状を呈して配置されているセグメントのコーナー部止水構造
  2. 前記セグメントは、矩形状に形成されるとともに板面が湾曲して形成され、シールドトンネルの軸方向に直角な方向の一対のリング面と、このリング面に隣り合いシールドトンネルの軸方向に略平行となる方向のピース面からなる接合面が形成されている請求項1記載のセグメントのコーナー部止水構造
  3. 前記角形コーナー部における、未加工の前記湾曲したR形状を呈する部分と相対する面に断面略三角形の小突起が形成されている請求項1又は2に記載のセグメントのコーナー部止水構造
  4. 請求項1に記載のセグメントのコーナー部止水構造に用いるセグメント装着用シール材であって、
    前記セグメントの接合面に装着される環状加工された厚さが3〜8mmの水膨張性シール材からなり、前記セグメントの対角をなす一対のコーナーに対応する一対のコーナー部のみが角形に加工されているセグメント装着用シール材
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