JP4548002B2 - 分析チップ及び生体高分子の分析方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複数の情報が書き込み可能な分析チップ及びそれを用いた生体高分子の分析方法に関する。
近年、医療分野、農業分野等の幅広い分野で生物の遺伝子情報が利用されるようになってきているが、遺伝子の利用に際しては、DNAの構造解明が不可欠である。DNAは螺旋状によじれあった2本のポリヌクレオチド鎖を有し、それぞれのポリヌクレオチド鎖は4種の塩基(アデニン:A、グアニン:G、シトシン:C、チミン:T)が一次元的に並んだ塩基配列を有し、アデニンとチミン、グアニンとシトシンという相補性に基づいて一方のポリヌクレオチド鎖の塩基が他方のポリヌクレオチド鎖の塩基に結合している。
DNAの構造解明とは、塩基配列を特定することであり、DNAの塩基配列を特定するためにDNAマイクロアレイ及びその読取装置が開発されており(特許文献1)、DNAマイクロアレイ及びその読取装置を用いて次のようにしてサンプルDNAの塩基配列を特定する。
まず、既知の特異的結合物質であるDNAをスライドガラス等の固体担体に整列塗布させたDNAマイクロアレイを準備する。次に、検体であるDNAに蛍光物質等を結合させる。
次に、検体DNAをDNAマイクロアレイ上に添加すると、ハイブリダイゼーションによってDNAマイクロアレイ上に固定される。つまり、検体DNAが相補的なプローブDNAと結合して、二本鎖が生じる。一方、検体DNAは、相補性を有しないDNAとは結合しない。検体DNAに蛍光物質でマーキングを施しているため、励起光を照射すると、検体DNAと結合した基板上の位置で蛍光を発することになる。例えば、TCGGGAAと塩基配列を有する検体DNAは、AGCCCTTという塩基配列を有する基板上のDNAと結合し、蛍光を発する。
次いで、DNAマイクロアレイを読取装置にセッティングし、読取装置にて分析する。読取装置は、光源から発した励起光をコリメーターレンズにより収束し、DNAマイクロアレイを載せたステージを移動して、光線をDNAマイクロアレイに対して二次元走査し、光線により発した蛍光を集光レンズでフォトマルに集光させ、蛍光強度をフォトマルで計測し、二次元走査によってDNAマイクロアレイの面内の蛍光強度分布を計測するようになっている。これにより、DNAマイクロアレイ上の蛍光強度分布が二次元の画像として出力される。出力された画像内で蛍光強度が大きい部分には、検体DNAの塩基配列と相補的な塩基配列を有した既知DNAが含まれていることを表している。従って、二次元画像中のどの部分の蛍光強度が大きいかによって検体DNAの塩基配列を確定することができる。
以上のようなDNAマイクロアレイを識別するために、DNAマイクロアレイにバーコードを付すことがあり、DNAマイクロアレイといった反応器にバーコードを付す技術は例えば特許文献2に記載されている。
特開2000−131237号公報 特開2001−133464号公報
ところが、従来の分析チップの一つとしてDNAマイクロアレイを用いてDNAを分析するには、DNAマイクロアレイを励起光源に対して光線走査する機構を必要とし、読取装置全体が大きいという問題がある。更に、サンプルDNAから発する蛍光の強度が必ずしも大きくない上、フォトマルがDNAマイクロアレイから離れているため、フォトマルの感度を高くしなければならない。
また、バーコードではデータ量が限られているため、DNAマイクロアレイに対して多数の情報を担持させることができない。
そこで、本発明は、上記のような問題点を解決しようとしてなされたものであり、担持するデータ量を多くすることができる分析チップ及び生体高分子の分析方法を提供することを目的とする。
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の分析チップは、
基板と、
前記基板に搭載され、複数の光電変換素子を有した固体撮像デバイスと、
前記基板に搭載された書き込み可能な不揮発性メモリと、を備え、
前記複数の光電変換素子に光を照射せずに撮像動作を行って測定した光強度の実測値から、正常な光電変換素子に光を入射せずに撮像動作を行って測定した光強度の実測値を差し引いた補正値を前記不揮発性メモリに書き込むことを特徴とする。
また、前記複数の光電変換素子に光を照射した後、撮像動作を行って測定した光強度の実測値から前記補正値を差し引いて、複数の光電変換素子間での光感度特性のバラツキの補正を行ってもよい。
また、それぞれの個体情報に応じた特性を有している複数種のスポットが、前記固体撮像デバイスの所定の位置にそれぞれ設けられていてもよい。
また、前記スポットには、生体高分子が設けられていてもよい。
したがって、不揮発性メモリを固体撮像デバイスが設けられた基板に一体化して形成することによって多くの情報を書き込むことができ、従来バーコードのような場合、新たに情報を書き込むたびに新しいバーコードを貼付しなければならないといった煩雑さがない。
以上の課題を解決するために、請求項5に記載の生体高分子の分析方法は、
基板と、前記基板に搭載され、複数の光電変換素子を有した固体撮像デバイスと、前記基板に搭載された書き込み可能な不揮発性メモリと、を備えた分析チップを用いた生体高分子の分析方法において、
前記複数の光電変換素子に光を照射せずに撮像動作を行って測定した光強度の実測値から、正常な光電変換素子に光を入射せずに撮像動作を行って測定した光強度の実測値を差し引いた補正値を前記不揮発性メモリに書き込む書込工程を含むことを特徴とする。
また、前記複数の光電変換素子に光を照射した後、撮像動作を行って測定した光強度の実測値から前記補正値を差し引いて、複数の光電変換素子間での光感度特性のバラツキの補正を行う補正工程を更に含んでいてもよい。
本発明によれば、基板に不揮発性メモリが搭載されているから、そのデータ量が多くなる。
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
〔1〕生体高分子分析チップの全体構成
図1は、本発明を適用した実施形態における生体高分子分析チップ1の概略平面図である。
この生体高分子分析チップ1は、透明基板17と、透明基板17上の一部の領域において画素としての光電変換素子を二次元アレイ状に配列してなる固体撮像デバイス3と、固体撮像デバイス3の周囲において透明基板17上に搭載されたトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76と、透明基板17上の別の一部の領域においてメモリセルを二次元アレイ状に配列してなるメモリ81と、固体撮像デバイス3の受光面上においてマトリクス状に点在したスポット60,60,…と、メモリ81の周囲において透明基板17上に搭載されたメモリ制御回路82と、を具備する。図1においては図面を理解しやすいように1つのスポット60だけに符号を付しているが、固体撮像デバイス3上にある円形状がそれぞれスポット60である。以下、生体高分子分析チップ1の各部について説明する。
〔2〕固体撮像デバイス
図2〜図3を用いて固体撮像デバイス3について詳細に説明する。ここで、図2は、固体撮像デバイス3の画素である光電変換素子の電極構造を示した平面図であり、図3は、固体撮像デバイス3の光電変換素子の断面図である。
この固体撮像デバイス3においては、光電変換素子としてダブルゲート型電界効果トランジスタ(以下、ダブルゲートトランジスタという。)20が利用されている。複数のダブルゲートトランジスタ20,20,…が透明基板17の一部の領域に二次元アレイ状特にマトリクス状に配列されている。
透明基板17は、光を透過する性質(以下、光透過性という。)を有するとともに絶縁性を有し、石英ガラス等といったガラス基板又はポリカーボネート、PMMA等といったプラスチック基板である。
ダブルゲートトランジスタ20,20,…はそれぞれ、透明基板17上に形成されたボトムゲート電極21と、ボトムゲート電極21上に形成されたボトムゲート絶縁膜22と、ボトムゲート電極21に対向するとともにボトムゲート絶縁膜22をボトムゲート電極21と挟む真性な半導体膜23と、半導体膜23の中央部上に形成されたチャネル保護膜24と、半導体膜23の両端部上に互いに離間して形成された不純物半導体膜25,26と、不純物半導体膜25上に形成されたソース電極27と、不純物半導体膜26上に形成されたドレイン電極28と、ソース電極27及びドレイン電極28上に形成されたトップゲート絶縁膜29と、半導体膜23に対向するとともにトップゲート絶縁膜29及びチャネル保護膜24を半導体膜23と挟むトップゲート電極30と、を具備する。
ボトムゲート電極21は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに透明基板17上に形成されている。また、透明基板17上には横方向に延在する複数本のボトムゲートライン41,41,…が形成されており、横方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれのボトムゲート電極21は共通のボトムゲートライン41と一体となって形成されている。ボトムゲート電極21及びボトムゲートライン41は、導電性及び遮光性を有し、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
ボトムゲート絶縁膜22は、全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成されており、ダブルゲートトランジスタ20,20,…のボトムゲート電極21及びボトムゲートライン41,41,…をまとめて被覆している。ボトムゲート絶縁膜22は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン(SiN)又は酸化シリコン(SiO2)からなる。
ボトムゲート絶縁膜22上には、半導体膜23がダブルゲートトランジスタ20ごとに形成されている。半導体膜23は、平面視して略矩形状を呈しており、受光した光量に応じた量の電子−正孔対を生成するアモルファスシリコン又はポリシリコンで形成された層である。半導体膜23上には、チャネル保護膜24が形成されている。チャネル保護膜24は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。チャネル保護膜24は、パターニングに用いられるエッチャントから半導体膜23の界面を保護するものである。半導体膜23に光が入射すると、入射した光量に従った量の電子−正孔対がチャネル保護膜24と半導体膜23との界面付近を中心に発生するようになっている。この場合、半導体膜23側にはキャリアとして正孔が発生し、チャネル保護膜24側には電子が発生する。
半導体膜23の一端部上には、不純物半導体膜25が一部チャネル保護膜24に重なるようにして形成されており、半導体膜23の他端部上には、不純物半導体膜26が一部チャネル保護膜24に重なるようにして形成されている。不純物半導体膜25,26は、ダブルゲートトランジスタ20ごとにパターニングされている。不純物半導体膜25,26は、n型の不純物イオンを含むアモルファスシリコン(n+シリコン)からなる。
不純物半導体膜25上には、ダブルゲートトランジスタ20ごとにパターニングされたソース電極27が形成されている。不純物半導体膜26上には、ダブルゲートトランジスタ20ごとにパターニングされたドレイン電極28が形成されている。また、縦方向に延在する複数本のソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…がボトムゲート絶縁膜22上に形成されている。縦方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれのソース電極27は共通のソースライン42と一体に形成されており、縦方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれのドレイン電極28は共通のドレインライン43と一体に形成されている。ソース電極27、ドレイン電極28、ソースライン42及びドレインライン43は、導電性及び遮光性を有しており、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
トップゲート絶縁膜29は、全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成されており、ダブルゲートトランジスタ20,20,…のチャネル保護膜24、ソース電極27及びドレイン電極28並びにソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…をまとめて被覆している。トップゲート絶縁膜29は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
トップゲート絶縁膜29上には、ダブルゲートトランジスタ20ごとにパターニングされたトップゲート電極30が形成されている。また、トップゲート絶縁膜29上には横方向に延在する複数本のトップゲートライン44,44,…が形成されており、横方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれのトップゲート電極30は共通のトップゲートライン44と一体に形成されている。トップゲート電極30及びトップゲートライン44は、導電性及び光透過性を有し、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛若しくは酸化スズ又はこれらのうちの少なくとも一つを含む混合物(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム)で形成されている。
ダブルゲートトランジスタ20,20,…のトップゲート電極30及びトップゲートライン44,44,…は保護絶縁膜31によってまとめて被覆されている。保護絶縁膜31は、絶縁性及び光透過性を有し、窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
以上のように構成された固体撮像デバイス3は、保護絶縁膜31の表面を受光面としており、それぞれのダブルゲートトランジスタ20の半導体膜23において受光した光量を電気信号に変換するように設けられている。
固体撮像デバイス3の受光面上には、すなわち保護絶縁膜31上には、励起光遮蔽層34が成膜されている。励起光遮蔽層34はTiO2からなり、励起光として特に紫外線を遮蔽する性質を有し、可視光を透過する性質を有する。
また、励起光遮蔽層34上には、導電体層32が成膜されている。導電体層32は、サンプルDNAを電気泳動させてオーバーコート層33上に近づけるための電極であり、導電性及び光透過性を有し、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛若しくは酸化スズ又はこれらのうちの少なくとも1つを含む混合物で形成されている。
導電体層32上には、光透過性を有したオーバーコート層33が形成されている。このオーバーコート層33は、導電体層32を保護したり、スポット60,60,…を固体撮像デバイス3の受光面に固定したりするものである。
〔3〕駆動回路
次に、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76について説明する。トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76は、協同して固体撮像デバイス3を駆動するものである。
図1に示すように、トップゲートドライバ74の各端子は固体撮像デバイス3のトップゲートライン44,44,…にそれぞれ接続されており、ボトムゲートドライバ75の各端子は固体撮像デバイス3のボトムゲートライン41,41,…にそれぞれ接続されており、ドレインドライバ76の各端子は固体撮像デバイス3のドレインライン43,43,…にそれぞれ接続されている。また、固体撮像デバイス3のソースライン42,42,…は例えば接地のように一定電圧に維持されている。
トップゲートドライバ74は、シフトレジスタである。つまり、図4に示すように、トップゲートドライバ74はトップゲートライン44,44,…にリセットパルスを順次出力するようになっている。リセットパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルである。一方、トップゲートドライバ74は、リセットパルスを出力しない時にローレベルの−20〔V〕の電位をそれぞれのトップゲートライン44に印加するようになっている。
ボトムゲートドライバ75は、シフトレジスタである。つまり、図4に示すように、ボトムゲートライン41,41,…にリードパルスを順次出力するようになっている。リードパルスのレベルは+10〔V〕のハイレベルであり、リードパルスが出力されていない時のレベルは±0〔V〕のローレベルである。
トップゲートドライバ74が何れかの行のトップゲートライン44にリセットパルスを出力した後にキャリア蓄積期間を経てボトムゲートドライバ75が同じ行のボトムゲートライン41にリードパルスを出力するように、トップゲートドライバ74及びボトムゲートドライバ75は出力信号をシフトするようになっている。つまり、各行では、リードパルスが出力されるタイミングは、リセットパルスが出力されるタイミングより遅れている。また、何れかの行のトップゲートライン44へのリセットパルスの入力が開始してから、同じ行のボトムゲートライン41へのリードパルスの入力が終了するまでの期間は、その行の選択期間である。リセットパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルであり、リセットパルスが出力されていない時のレベルは−20〔V〕のローレベルである。
図4に示すように、ドレインドライバ76は、それぞれの行の選択期間において、リセットパルスが出力されてからリードパルスが出力されるまでの間に、全てのドレインライン43,43,…にプリチャージパルスを出力するようになっている。プリチャージパルスのレベルは+10〔V〕のハイレベルであり、プリチャージパルスが出力されていない時のレベルは±0〔V〕のローレベルである。また、ドレインドライバ76は、プリチャージパルスの出力後にドレインライン43,43,…の電圧を増幅して出力するようになっている。
〔4〕スポット
次に、スポット60について説明する。図1及び図3に示すように、複数種のスポット60,60,…が互いに離間して、マトリクス状となってオーバーコート層33上に配列されている。1つのスポット60は一本鎖プローブDNA61が多数集まった群集であり、1つのスポット60に含まれる多数の一本鎖プローブDNA61は同じ塩基配列(ヌクレオチド配列)を有する。また、スポット60ごとに一本鎖プローブDNA61の塩基配列が異なる配列となっている。DNAを構成するポリヌクレオチド核酸のような塩基は、相補的な塩基配列のみの高分子としか螺旋結合つまりハイブリダイゼーションしないので、各スポット60毎の一本鎖プローブDNA61は、それぞれ個体情報に応じたハイブリダイゼーション特性を有している。何れのスポット60も、塩基配列が既知のものである。
1つのスポット60につき1つのダブルゲートトランジスタ20が重なるように、スポット60,60,…が配列されている。
なお、1つのスポット60につき隣り合う幾つかのダブルゲートトランジスタ20,20,…が重なっても良いが、この場合には何れのスポット60でも重なったダブルゲートトランジスタ20の数が同じである。
スポット60,60,…を固体撮像デバイス3の受光面に固定する方法としては、予め調製した一本鎖プローブDNAを、ポリ陽イオン(ポリ−L−リシン、ポリエチレンイミン等)で表面処理したオーバーコート層33に分注装置を用いて点着して固定化させる方法がある。
その他の固定方法として、アミノ基、アルデヒド基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤を用いる方法も利用されている。この場合には、アミノ基、アルデヒド基等は、共有結合によりオーバーコート層33に導入される。
その他の固定方法として、反応活性基を導入したオリゴヌクレオチドを合成し、表面処理したオーバーコート層33に該オリゴヌクレオチドを点着し、共有結合させる方法もある。
なお、スポット60,60,…をオーバーコート層33に固定する際に、導電体層32に直流電圧を印加すると、一本鎖プローブDNA61がオーバーコート層33に静電結合するので、スポット60,60,…の固定が容易になる。
〔5〕メモリ
次に、メモリ81について説明する。メモリ81は、フラッシュメモリ、EEPROM、強誘電体メモリ、磁気抵抗メモリといった電気的に書き込み可能な不揮発性メモリである。メモリ制御回路82は、メモリ81に対して読み書きするための回路である。
メモリ81に格納されたデータは、各生体高分子分析チップ1固有のデータである。生体高分子分析チップ1固有のデータとして、生体高分子分析チップ1を他のデバイスや他の生体高分子分析チップ1と識別するための識別情報、生体高分子分析チップ1の製造時期に関する情報、生体高分子分析チップ1の製造場所に関する情報、生体高分子分析チップ1の種類に関する情報がある。
具体的には、図5(a)に示すように、メモリ81に格納されるデータは、生体高分子分析チップ1を識別するために生体高分子分析チップ1固有のチップID101と、生体高分子分析チップ1の製造年データ102、製造月データ103、製造日データ104、製造時データ105、製造分データ106及び製造秒データ107と、生体高分子分析チップ1を製造したチップ製造装置固有のマシン番号108と、生体高分子分析チップ1を製造した場所を表す場所コード109と、生体高分子分析チップ1を分析に使用したか否かを表すフラグ110(例えば、値”0”が使用していない旨を表し、値”1”が使用した旨を表す)と、生体高分子分析チップ1の種類に関する情報として各スポット60の情報である検出用固定DNA情報111と、を含む。
図5(b)に示すように、検出用固定DNA情報111は、検出用固定DNA情報111全体のデータ長(バイト数)を表すデータ112を含む。また、検出用固定DNA情報111は、スポット60を識別するための簡易的なコード113と、スポット60の一本鎖プローブDNA61を構成する塩基数を表す(後述のデータ115のデータ長を表す)データ114と、スポット60の一本鎖プローブDNA61の塩基配列を表すデータ115と、をスポット60ごとに含む。データ115において、塩基の種類(アデニン、グアニン、シトシン、チミン)は、2ビットで表されている。図5において、括弧書きで表された数値はバイト数を表し、データ115のバイト数は塩基数に応じて可変長である。
〔6〕生体高分子分析チップの製造方法及びチップ製造装置
次に、生体高分子分析チップ1の製造方法について説明する。
まず、透明基板17上に固体撮像デバイス3を半導体製造技術により形成する。すなわち、気相成長法(例えば、PVD法、CVD法、スパッタリング法等)といった成膜工程、フォトリソグラフィー法、メタルマスク法といったマスク工程、エッチングといった形状加工工程を適宜行うことにより固体撮像デバイス3を透明基板17上にパターニングする。
トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76は予めLSIとして製造されており、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76を固体撮像デバイス3の周囲に実装する。
メモリ81及びメモリ制御回路82も予めLSIとして製造されており、メモリ81及びメモリ制御回路82を透明基板17上に実装する。
そして、ホストコンピュータ、分注装置等から構成されたチップ製造装置を用いて、スポット60,60,…を固体撮像デバイス3上に点着する。ここで、固体撮像デバイス3、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75、ドレインドライバ76、メモリ制御回路82及びメモリ81を搭載した透明基板17(まだスポット60,60,…は点着されていない)をチップ製造装置の分注装置にセッティングすると、ホストコンピュータのインターフェースがメモリ制御回路82に接続され、チップ製造装置のホストコンピュータにとってメモリ81の読み書きが可能になる。
チップ製造装置は次のように動作する。
固体撮像デバイス3、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75、ドレインドライバ76、メモリ制御回路82及びメモリ81を搭載した透明基板17を分注装置にセッティングすると、ホストコンピュータが製造年データ102、製造月データ103、製造日データ104、製造時データ105、製造分データ106及び製造秒データ107をメモリ81に書き込む(ステップS1)。次に、ホストコンピュータが自身固有のマシン番号108をメモリ81に書き込む(ステップS2)。次に、ホストコンピュータが製造工場や製造ライン等の製造場所コード109をメモリ81に書き込む(ステップS3)。次に、ホストコンピュータがスポット60が固定される位置であるスポット固定位置を初期化して、分注装置が最初に点着すべき位置に透明基板17を移動させる(ステップS4)。そして、分注装置が一本鎖プローブDNA61をスポット60として固体撮像デバイス3上に所定のアドレス位置に点着したら、ホストコンピュータがその点着したスポット60の一本鎖プローブDNA61の種類を特定する名称やアドレス位置等の識別コード113をメモリ81に記憶する(ステップS5)。次に、ホストコンピュータがその点着したスポット60の一本鎖プローブDNA61の塩基配列データ115をメモリ81に書き込む。次に、ホストコンピュータがその点着したスポット60の一本鎖プローブDNA61の塩基数データ114をメモリ81に書き込む(ステップS7)。
以後、全てのスポット60の点着が終了していない場合には(ステップS8:No)、分注装置が次に点着すべき位置に透明基板17を移動させ(ステップS9)、分注装置がスポット60を点着するたびに、ホストコンピュータが上記ステップS5〜S7の処理を繰り返す。
一方、全てのスポット60の点着が終了した場合には(ステップS8:Yes)、ホストコンピュータがバイト数データ112をメモリ81に書き込み、生体高分子分析チップ1が完成する。
なお、ホストコンピュータは、プログラムに従って上記のようなステップ順に実行する。
〔7〕DNA分析方法及び分析支援装置
次に、生体高分子分析チップ1を用いてDNAの塩基配列を分析する方法について説明する。
生体高分子分析チップ1を分析支援装置にセッティングして生体高分子分析チップ1を用いるので、まず分析支援装置について説明する。
分析支援装置は、生体高分子分析チップ1をセッティングするための分析台と、固体撮像デバイス3の受光面上から受光面に向けて励起光を照射する励起光照射装置と、生体高分子分析チップ1を制御するコンピュータと、コンピュータから出力された信号により出力(表示又はプリント)を行う出力装置と、から構成されている。
分析台は生体高分子分析チップ1を着脱可能とするよう設けられ、生体高分子分析チップ1が分析台にセッティングされた場合には、コンピュータのインターフェースがトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76に接続されるとともに、コンピュータの別のインターフェースがメモリ制御回路82に接続される。従って、生体高分子分析チップ1が分析台にセッティングされた場合には、コンピュータはインターフェースを介してトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76を制御可能となり、ドレインドライバ76及びインターフェースを介して入力した電気信号をA/D変換することで、固体撮像デバイス3の受光面に沿った光強度分布を二次元の画像データとして取得可能となる。
また、生体高分子分析チップ1が分析台にセッティングされた場合には、励起光照射照射装置の励起光出射部が固体撮像デバイス3の受光面に対向するようになっている。
生体高分子分析チップ1及び分析支援装置の動作並びにDNAの分析方法(同定方法)について説明する。
まず、作業者が検体からDNAを採取して、採取した二本鎖DNAを一本鎖DNAに変性してから場合によってPCR増幅を行い、得られた一本鎖DNAに蛍光物質又は光共鳴散乱物質を結合させ、一本鎖DNAを蛍光物質又は光共鳴散乱物質で標識する。蛍光物質又は光共鳴散乱物質は、分析支援装置の励起光照射装置から出射される励起光で励起されるものを選択するが、蛍光物質としては、例えばCyDyeのCy2(アマシャム社製)がある。得られた一本鎖DNAは、溶液中に含まれている。以下では、この一本鎖DNAをサンプルDNAという。
次いで、作業者が、サンプルDNAを含有した溶液を固体撮像デバイス3の受光面に塗布する。ここで、固体撮像デバイス3の受光面にサンプルDNAを分布させるために、分析支援装置で発生させる電界又は導電体層32での電界によって溶液中でサンプルDNAを電気泳動させても良い。このとき、一本鎖が二本鎖とならないようにサンプルDNAを含有した溶液は加熱されている。
その後、サンプルDNAのハイブリダイゼーションを引き起こすために、生体高分子分析チップ1を所定の温度に冷却する。これにより、スポット60,60,…のなかにサンプルDNAと相補的なものがあれば、サンプルDNAが相補的なスポット60のプローブDNA61とハイブリダイゼーションにより結合する。一方、スポット60,60,…のなかにサンプルDNAと相補的なものがなければ、サンプルDNAはどのスポット60,60,…にも結合しない。
その後、固体撮像デバイス3の受光面に塗布したサンプルDNAのうちハイブリダイゼーションしなかったものは洗い流す際に除去され、ハイブリダイゼーションしたものは、固体撮像デバイス3上に残存する。
次いで、作業者が固体撮像デバイス3を分析支援装置にセッティングすると、メモリ制御回路82、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76が分析支援装置のコンピュータに接続される。
その後、分析支援装置のコンピュータを起動すると、コンピュータがプログラムに従って図7のように動作する。すなわち、まずコンピュータがメモリ81から製造年データ102、製造月データ103、製造日データ104、製造時データ105、製造分データ106及び製造秒データ107を読み出す(ステップS11)。次に、コンピュータは、生体高分子分析チップ1の使用期限と製造年データ102、製造月データ103、製造日データ104、製造時データ105、製造分データ106及び製造秒データ107とを比較し、製造年月日時分秒が使用期限内であるか判定する(ステップS12)。製造年月日時分秒が使用期限を越えている場合には、コンピュータの処理がステップS22に移行し、製造年月日時分秒が使用期限内である場合には、コンピュータの処理がステップS13に移行する。
ステップS13においては、コンピュータがメモリ81からマシン番号108を読み出す。そして、コンピュータは、マシン番号108と予め登録されている基準番号を比較することにより、マシン番号108が基準番号と一致するか(マシン番号108が正しいか)否かを判定する(ステップS14)。マシン番号108が正しくない場合には、コンピュータの処理がステップS22に移行し、マシン番号108が正しくない場合には、コンピュータの処理がステップS15に移行する。
ステップS15においては、コンピュータがメモリ81から製造場所コード109を読み出す。そして、コンピュータは、製造場所コード109と予め登録されている基準コードを比較することにより、製造場所コード109が基準コードと一致するか(製造場所コード109が正しいか)否かを判定する(ステップS16)。製造場所コード109が正しくない場合には、コンピュータの処理がステップS22に移行し、製造場所コード109が正しくない場合には、コンピュータの処理がステップS17に移行する。
ステップS17においては、コンピュータがメモリ81から識別コード113及び塩基配列データ115を読み出す。そして、コンピュータは、識別コード113及び塩基配列データ115が今回の分析に適しているか否かを判定する(ステップS18)。識別コード113及び塩基配列データ115が不適である場合には、コンピュータの処理がステップS22に移行し、識別コード113及び塩基配列データ115が適当である場合には、コンピュータの処理がステップS19に移行する。
ステップS19においては、コンピュータが励起光照射装置を制御して励起光照射装置を点灯させると、励起光照射装置から固体撮像デバイス3の受光面に向けて励起光が出射する。
これによって、スポット60,60,…のうちサンプルDNAとハイブリダイゼーションしたスポット60では、サンプルDNAの蛍光体から蛍光(主に可視光)が発し、サンプルDNAと結合しなかったスポット60では、蛍光が発しない。そのため、サンプルDNAと結合したスポット60に対応したダブルゲートトランジスタ20には高強度の蛍光が入射し、サンプルDNAと結合していないスポット60に対応したダブルゲートトランジスタ20には殆ど蛍光が入射しない。固体撮像デバイス3の受光面にスポット60,60,…が固定されているため、サンプルDNAと結合したスポット60から発した蛍光はあまり減衰せずに、そのスポット60に対応したダブルゲートトランジスタ20に入射して電子−正孔対を発生させる。従って、ダブルゲートトランジスタ20,20,…の感度が低くても、十分に強度を検知することができる。
そして、コンピュータがトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76を制御することにより、固体撮像デバイス3に撮像動作を行わせる(ステップS20)。これにより、固体撮像デバイス3がダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれで光強度又は光量を検知し、受光面に沿った光強度階調を8bitのデジタルデータである画像データとして個々のスポット60での輝度階調データを取得する。コンピュータは、固体撮像デバイス3で取得された画像データを入力し、その画像データを出力装置に出力し、生体高分子分析チップ1を使用した旨のフラグをメモリ81に書き込む(ステップS21)。そして、コンピュータの処理が終了する。
作業者は、出力装置により出力された画像データからハイブリダイゼーションの有無を確認し、ハイブリダイゼーションが起きていればサンプルDNAの塩基配列を特定する。即ち、サンプルDNAの塩基配列は、画像の中でハイブリダイゼーションによって蛍光を発した画素に重なったスポット60と相補的な配列であるので、出力された画像データ中のどの部分が蛍光を発したかによってサンプルDNAの塩基配列を特定することができる。
コンピュータの処理がステップS22に移行した場合には、コンピュータがエラーの旨の出力を出力装置から出力する。
ここで、上記ステップS20における固体撮像デバイス3の動作について説明する。
トップゲートドライバ74が1行目のトップゲートライン44から最終行目のトップゲートライン44へと順次リセットパルスを出力し、ボトムゲートドライバ75がボトムゲートライン41,41,41,…に順次リードパルスを出力する。その際、ドレインドライバ76が各行でリセットパルスが出力されているリセット期間と各行でリードパルスが出力されている期間との間に、プリチャージパルスを全てのドレインライン43,43,…に出力する。
i行目の各ダブルゲートトランジスタ20の動作について詳細に説明する。図4に示すように、トップゲートドライバ74がi行目のトップゲートライン44にリセットパルスを出力すると、i行目のトップゲートライン44がハイレベルになる。i行目のトップゲートライン44がハイレベルになっている間(この期間をリセット期間という。)、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20では、半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積されたキャリア(ここでは、正孔である。)が、トップゲート電極30の電圧により反発して吐出される。
次に、トップゲートドライバ74がi行目のトップゲートライン44にリセットパルスを出力することを終了する。i行目のトップゲートライン44のリセットパルスが終了してから、i行目のボトムゲートライン41にリードパルスが出力されるまでの間(この期間をキャリア蓄積期間という。)、光量に従った量の電子−正孔対が半導体膜23内で生成されるが、そのうちの正孔がトップゲート電極30の電界により半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積される。
次に、キャリア蓄積期間中に、ドレインドライバ76が全てのドレインライン43,43,…にプリチャージパルスを出力する。プリチャージパルスが出力されている間(プリチャージ期間という。)では、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20においては、トップゲート電極30に印加されている電位が−20〔V〕であり、ボトムゲート電極21に印加されている電位が±0〔V〕であるため、たとえ半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積された正孔の電荷だけではゲート−ソース間電位が低いので半導体膜23にはチャネルが形成されず、ドレイン電極28とソース電極27との間に電流は流れない。プリチャージ期間において、ドレイン電極28とソース電極27との間に電流が流れないため、ドレインライン43,43,…に出力されたプリチャージパルスによってi行目の各ダブルゲートトランジスタ20のドレイン電極28に電荷がチャージされる。
次に、ドレインドライバ76がプリチャージパルスの出力を終了するとともに、ボトムゲートドライバ75がi行目のボトムゲートライン41にリードパルスを出力する。ボトムゲートドライバ75がi行目のボトムゲートライン41にリードパルスを出力している間(この期間を、リード期間という。)では、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20のボトムゲート電極21に+10〔V〕の電位が印加されているため、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20がオン状態になる。
リード期間においては、キャリア蓄積期間において蓄積されたキャリアがトップゲート電極30の負電界を緩和するように働くため、ボトムゲート電極21の正電界により半導体膜23にnチャネルが形成されて、ドレイン電極28からソース電極27に電流が流れるようになる。従って、リード期間では、ドレインライン43,43,…の電圧は、ドレイン−ソース間電流によって時間の経過とともに徐々に低下する傾向を示す。
ここで、キャリア蓄積期間において半導体膜23に入射した光量が多くなるにつれて、蓄積されるキャリアも多くなり、蓄積されるキャリアが多くなるにつれて、リード期間においてドレイン電極28からソース電極27に流れる電流のレベルも大きくなる。従って、リード期間におけるドレインライン43,43,…の電圧の変化傾向は、キャリア蓄積期間で半導体膜23に入射した光量に深く関連する。そして、i行目のリード期間から次の(i+1)行目のプリチャージ期間までの間に、ドレインドライバ76を介して、リード期間が開始してから所定の時間経過後のドレインライン43,43,…の電圧を検出してA/D変換する。これにより、光の強度に換算される。なお、i行目のリード期間から次の(i+1)行目のプリチャージ期間までの間に、ドレインドライバ76を介して、所定の閾値電圧に至るまでの時間を検出しても良い。この場合でも、光の強度に換算される。また、図4では、トップゲートドライバ74の(i+1)行目のリセットパルスの立ち上がり時期は、ボトムゲートドライバ75のi行目のリードパルスが立ち下がってからであるが、これに限らず、トップゲートドライバ74の(i+1)行目のリセットパルスの立ち上がり時期は、トップゲートドライバ74のi行目のリセットパルスの立ち下がり直後からボトムゲートドライバ75のi行目のリードパルスの立ち下がりまでの間であってもよい。ただし、(i+1)行目のダブルゲートトランジスタ20のためにドレインライン43,43,…に出力されたプリチャージパルスの出力は、ボトムゲートドライバ75のi行目のリードパルスの立ち下がり以降になるように設定されている。
上述した一連の画像読み取り動作を1サイクルとして、全ての行の各ダブルゲートトランジスタ20にも同等の処理手順を繰り返すことにより、生体高分子分析チップ1上の光の強度分布が画像として取得される。そして、光強度分布を表した画像は、コンピュータに入力される。
以上のように、本実施形態によれば、固体撮像デバイス3の受光面にスポット60,60,…が点在しているから、走査を行わずとも固体撮像デバイス3で撮像を行うだけで二次元の画像が得られる。更に、分析支援装置にレンズを設けなくとも、固体撮像デバイス3で鮮明な像を得ることができるので、分析支援装置の小型化を図ることができる。更に、スポット60から発した光が殆ど減衰せずに固体撮像デバイス3の受光面に入射するので、固体撮像デバイス3の感度が高くなくても済む。
また、生体高分子分析チップ1にメモリ81が搭載されているから、生体高分子分析チップ1に担持させるデータ量を多くすることができる。また、メモリ81が電気的に書き込み可能な不揮発性メモリであるため、生体高分子分析チップ1の製造時、使用時にメモリ81にデータの書き込みを行うことができる。
また、生体高分子分析チップ1にメモリ81が搭載されているから、生体高分子分析チップ1固有の情報を生体高分子分析チップ1に担持させることができる。そのため、常に正しい情報を得ることができる。
また、生体高分子分析チップ1の製造時において、製造年月日時分秒、製造場所に関するデータがメモリ81に格納されるから、データの確実性が極めて高く、適切な処理が可能となる。
また、生体高分子分析チップ1の使用時にフラグ110がメモリ81に書き込まれるから、生体高分子分析チップ1が使用済みか否かが明らかになり、使用済み生体高分子分析チップ1を誤って再び使用することを防止することができる。
〔変形例1〕
メモリ81に格納されるデータは、図8に示すように、図5のようなデータ構成(チップID101、製造年データ102、製造月データ103、製造日データ104、製造時データ105、製造分データ106、製造秒データ107、マシン番号108、場所コード109、フラグ110、検出用固定DNA情報111)に加えて、センサー値補正用データ116を含んでも良い。
センサー値補正用データ116とは、ダブルゲートトランジスタ20,20,…ごとに対応付けされた補正値であって、「A−B」で表されるデータである。ここで、「A」は、対応したダブルゲートトランジスタ20に光を照射しない場合に、そのダブルゲートトランジスタ20で検知した光強度の実測値(1バイト(256階調))である。「B」は、正常なダブルゲートトランジスタに光を入射しない場合に、そのダブルゲートトランジスタで検知した光強度の実測値(1バイト)である。
生体高分子分析チップ1を製造する時に、センサー値補正用データ116をメモリ81に書き込むため、生体高分子分析チップ1(まだ、スポット60,60,…が点着されていない状態)をチップ製造装置の分注装置にセッティングすると、ホストコンピュータのインターフェースがドライバ74〜76に接続され、チップ製造装置のホストコンピュータにとって固体撮像デバイス3の駆動が可能になる。この場合においても、チップ製造装置のホストコンピュータは図6に示した場合と同様の処理を行う。
但し、上記ステップS3とステップS4との間において、ホストコンピュータがトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76を制御することにより、暗所にある固体撮像デバイス3に蛍光標識や励起光の照射なしに撮像動作を行わせる。これにより、固体撮像デバイス3がダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれで暗時での光強度を検知して、ダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれの実測光強度がホストコンピュータに出力される。そして、ホストコンピュータは、ダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれの実測光強度から上記「B」の値を差し引いた補正値をセンサー値補正用データ116としてメモリ81に書き込む。その後、ホストコンピュータがステップS4以降の処理を行うことで、生体高分子分析チップ1が完成する。
また、センサー値補正用データ116がメモリ81に書き込まれている場合に、分析支援装置のコンピュータは図6に示した場合と同様の処理を行う。但し、上記ステップS20において、コンピュータが固体撮像デバイス3に撮像動作を行わせ、固体撮像デバイス3で取得された画像データ(それぞれのダブルゲートトランジスタ20,20,…で検知された光強度の集まり)がコンピュータに入力された場合、コンピュータはメモリ81からセンサー値補正用データ116を読み込み、それぞれのダブルゲートトランジスタ20,20,…で検知された光強度からセンサー値補正用データ116を差し引くことで画像データの補正を行い、補正した画像を出力装置に出力する。その後、コンピュータはステップS21の処理を行う。このようにすることで複数の画素の間での光感度特性のバラツキが補正され、固体撮像デバイス3が面内の特性を均一にして正常なハイブリダイゼーションによる塩基配列の同定を行うことができる。
〔変形例2〕
上記生体高分子分析チップ1では、光電変換素子としてダブルゲートトランジスタ20,20,…を画素として用いた固体撮像デバイス3を用いているが、別の種類の光電変換素子を画素として用いた固体撮像デバイスを生体高分子分析チップに用いても良い。例えば、フォトダイオードを画素として用いたCCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等といった固体撮像デバイスを用いても良い。CCDイメージセンサにおいては、フォトダイオードが基板上にマトリクス状となって配列されており、それぞれのフォトダイオードの周囲には、フォトダイオードで光電変換された電気信号を転送するための垂直CCD、水平CCDが形成されている。CMOSイメージセンサにおいては、フォトダイオードが基板上にマトリクス状となって配列されており、それぞれのフォトダイオードの周囲にはフォトダイオードで光電変換された電気信号を増幅するためのCMOS回路が設けられている。
〔変形例3〕
上記分析支援装置では、励起光照射装置が固体撮像デバイス3の受光面の上から固体撮像デバイス3に向けて励起光を照射しているが、ボトムゲート電極21が励起光を遮光する材質であれば、透明基板17の裏面(固体撮像デバイス3が形成された面と反対の面)に配置して固体撮像デバイス3に向けて励起光を照射しても良い。このようなレイアウトでは、照射された励起光が直接半導体膜23に入射されることを防止できるとともにダブルゲートトランジスタ20、20の間から進行する励起光がプローブDNA61側に入射するので、励起光によって蛍光受光感度特性が低下することを防止し且つハイブリダイゼーションによる蛍光を受光できるため正常に蛍光検知することができる。なお、この場合には、生体高分子分析チップ1には、励起光遮蔽層34を成膜しなくてもよい。
〔変形例4〕
上記生体高分子分析チップ1では、スポット60が既知の塩基配列の一本鎖DNAからなるものであるが、その他の既知の生体高分子、例えば、既知のアミノ酸配列やペプチド配列のタンパク質、既知の細胞等からなるものでも良い。したがって、生体高分子分析チップ1によってタンパク質のアミノ酸配列やペプチド配列を分析することが可能となる。
〔変形例5〕
また、上記実施形態では、励起光照射装置から発する励起光を紫外線とし、励起光によってサンプルDNAから発する光を蛍光(可視光)としたが、光の波長域に限定されない。但し、励起光照射装置から発する励起光がサンプルDNAに結合させた標識物質を励起させる波長域の光であること、励起光によって標識物質から発した光の波長域が励起光の波長域と異なることが必要である。また、固体撮像デバイス3が標識物質から発した光に対して感度を示すことが必要である。
〔変形例6〕
また、上記分析支援装置では、コンピュータが固体撮像デバイス3から入力した画像データに従った画像を出力装置に出力し、作業者が出力された画像からサンプルDNAの配列を特定したが、コンピュータがサンプルDNAの配列を特定しても良い。すなわち、コンピュータが、特徴抽出処理によって画像データ中のどの部分が蛍光を発しているかを特定し、蛍光を発している部分に対応するスポット60を特定し、その特定したスポット60の識別コード113及び塩基配列データ115をメモリ81から読み出し、その識別コード113及び塩基配列データ115を出力装置から出力する。
本発明の実施の形態における生体高分子分析チップ1の概略平面図である。 固体撮像デバイス3の1つの画素の平面図である。 固体撮像デバイス3の1つの画素の断面図である。 ドライバによって固体撮像デバイス3に出力される電気信号のレベルの推移を示したタイミングチャートである。 メモリ81に格納されるデータの構成図である。 チップ製造装置のホストコンピュータがプログラムに従って実行する処理の流れを示したフローチャートである。 分析支援装置のコンピュータがプログラムに従って実行する処理の流れを示したフローチャートである。 メモリ81に格納される別のデータの構成図である。
符号の説明
1 … 生体高分子分析チップ
3 … 固体撮像デバイス
17 … 透明基板
60 … スポット
61 … 一本鎖プローブDNA
81 … メモリ(不揮発性メモリ)

Claims (6)

  1. 基板と、
    前記基板に搭載され、複数の光電変換素子を有した固体撮像デバイスと、
    前記基板に搭載された書き込み可能な不揮発性メモリと、を備え、
    前記複数の光電変換素子に光を照射せずに撮像動作を行って測定した光強度の実測値から、正常な光電変換素子に光を入射せずに撮像動作を行って測定した光強度の実測値を差し引いた補正値を前記不揮発性メモリに書き込むことを特徴とする分析チップ。
  2. 前記複数の光電変換素子に光を照射した後、撮像動作を行って測定した光強度の実測値から前記補正値を差し引いて、複数の光電変換素子間での光感度特性のバラツキの補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の分析チップ。
  3. それぞれの個体情報に応じた特性を有している複数種のスポットが、前記固体撮像デバイスの所定の位置にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の分析チップ。
  4. 前記スポットには、生体高分子が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の分析チップ。
  5. 基板と、前記基板に搭載され、複数の光電変換素子を有した固体撮像デバイスと、前記基板に搭載された書き込み可能な不揮発性メモリと、を備えた分析チップを用いた生体高分子の分析方法において、
    前記複数の光電変換素子に光を照射せずに撮像動作を行って測定した光強度の実測値から、正常な光電変換素子に光を入射せずに撮像動作を行って測定した光強度の実測値を差し引いた補正値を前記不揮発性メモリに書き込む書込工程を含むことを特徴とする生体高分子の分析方法。
  6. 前記複数の光電変換素子に光を照射した後、撮像動作を行って測定した光強度の実測値から前記補正値を差し引いて、複数の光電変換素子間での光感度特性のバラツキの補正を行う補正工程を更に含むことを特徴とした請求項5に記載の生体高分子の分析方法。
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