JP4547368B2 - 薬液供給装置 - Google Patents

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Description

本発明はフォトレジスト液等の薬液を定量吐出する薬液供給装置に関する。
半導体ウエハや液晶用ガラス基板等の表面には、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程により微細な回路パターンが作り込まれる。フォトリソグラフィ工程ではウエハやガラス基板の表面にフォトレジスト液等の薬液を塗布するために薬液供給装置が使用されており、容器内に収容された薬液はポンプにより吸い上げられてフィルタ等を通過してノズルからウエハ等の被塗布物に塗布される。特許文献1にはウエハフォトレジスト液を供給するための処理液供給装置が記載され、特許文献2には液晶用ガラス基板にフォトレジスト液を供給するための塗工装置が記載されている。
このような薬液供給装置においては、塗布される薬液の中にゴミ等の粒子つまりパーティクルが混在するとそれが被塗布物に付着し、パターン欠陥を引き起こして製品の歩留まりを低下させる。容器内の薬液がポンプ内に滞留すると変質し、変質した薬液がパーティクルとなる場合があるので、薬液を吐出するポンプは滞留がないことが求められる。
薬液を吐出するポンプとしては、薬液が流入するポンプ室とポンプ室を膨張収縮する駆動室とを弾性変形自在のダイヤフラムやチューブ等の仕切り膜により仕切るようにしたものが使用されている。駆動室に間接液つまり非圧縮性媒体を充填し仕切り膜を介して薬液を加圧するようにしており、非圧縮性媒体の加圧方式には、特許文献3に記載されるようにベローズタイプのものと、特許文献4に示されるようにピストンを用いたシリンジタイプとがある。
液化ガスを吐出するための往復動ポンプには、特許文献5に記載されるように、ベローズを用いてピストン内の流体を外界から封止するようにしたタイプがある。
特開2000−12449号公報 特開2004−50026号公報 特開平10−61558号公報 米国特許第5167837号公報 特開2006−144741号公報
非圧縮性媒体によりダイヤフラムやチューブを弾性変形させてポンプ動作を行うようにすると、ポンプの膨張収縮室内での薬液の滞留を防止することができ、薬液の滞留に起因したパーティクルの発生を防止できる反面、非圧縮性媒体がポンプの性能を決定する重要な役割を担うことになる。つまり、非圧縮性媒体の中に外部から空気が入り込むとマクロ的には非圧縮性媒体の非圧縮性は失われ、ベローズやピストンの移動を忠実にダイヤフラムやチューブに伝達することができなくなり、ベローズやピストンの移動ストロークと薬液の吐出量とが対応しなくなる。また、非圧縮性媒体が漏れた場合にも同様にベローズ等の移動ストロークと薬液の吐出量とが対応しなくなり、高精度に薬液を吐出することができなくなる。
上述した特許文献4に示されるシリンジタイプのポンプにおいては、通常、シリンダにピストンの外周面と接触するシール材を設け、ピストンの先端面側の駆動室内とピストン基端面側の外部との間をシールするようにしており、ピストンはシール材を境に非圧縮性媒体がある部分と外部との間を往復動することになる。このため、非圧縮性媒体がピストンの外周面に付着した状態で外部まで露出することがある。付着した非圧縮性媒体は、薄い膜状となって外周面とシール材との間に入り込むので、シール材とピストン外周面との直接接触を回避して潤滑剤としての役割を果たすことになる反面、外部に露出した非圧縮性媒体は一部が少しずつ蒸発したり、乾燥したりすることもあってピストン表面から消失し、非圧縮性媒体の量が減少することになる。また、外部に露出した非圧縮性媒体が揮発すると、ピストン外周面には潤滑剤として機能する非圧縮性媒体が消失して油膜切れ状態となるので、シール材が直接ピストン外周面に接触してシール材の摩耗が促進されることになる。
仕切り膜により仕切られた駆動室を膨張させてポンプ室の内部に容器内の薬液を吸入するためにピストンを後退移動させると、非圧縮性媒体が負圧状態となるので、外部の周囲空気がピストン外周面とシリンダの内周面との間から駆動室内の非圧縮性媒体の内部に入り込むことがある。この現象は、ピストンの外周面に摺動接触するシール材が磨耗してシール性が低下すると顕著になり、ピストンにより非圧縮性媒体に大きな負圧を印加させた場合も同様である。
これに対し、上述したベローズタイプのポンプは、摺動面に接触するシール材は使用されていないので、非圧縮性媒体が充填された駆動室や薬液を加圧するポンプ室の密閉性は高いという利点がある。しかし、ベローズタイプはシリンジタイプに比較して非圧縮性媒体に加えられる圧力は低い傾向がある。例えば、レジストをフィルタを介してノズルに吐出する場合、フィルタの流通抵抗が大きいのでポンプ室の圧力を高くする必要がある。このため、ベローズを駆動したときに駆動室内の非圧縮性媒体の圧力は高くなり、ベローズが僅かに径方向に膨張することがあり、膨張するとベローズの移動ストロークと薬液の吐出量とが高精度に対応しなくなる。
ポンプからの吐出圧を高めるには、上述したシリンジタイプのポンプが好ましいが、シール材の摩耗が進むと、駆動室内の非圧縮性媒体が外部に漏出することになる。このため、シール材を定期的に交換するようにしている。シール材を用いることなく、ピストン外周面とシリンダ内周面との隙間を狭くして駆動室内の非圧縮性媒体の漏出を防止するようにしたタイプの薬液吐出ポンプにおいても、同様に、ピストンとシリンダとの摺動面の摩耗が進むと、駆動室内の非圧縮性媒体が外部に漏出するので、ピストンやシリンダを交換する必要がある。
したがって、駆動室内の非圧縮性媒体のピストンとシリンダとの摺動面からの漏れを外部から検出することができれば、シール材の交換時期やピストン等の交換時期を判定することができる。
本発明の目的は、薬液を高精度で吐出することができる薬液供給装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、ピストンとシリンダとの間から非圧縮性媒体が漏出しないようにした薬液供給装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、ピストンとシリンダとの間をシールするシール材に非圧縮媒体の膜を介在させてシール材の潤滑性を向上し得る薬液供給装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、駆動室内の非圧縮性媒体のピストンとシリンダとの間からの漏れを監視することができるようにした薬液供給装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、駆動室内の非圧縮性媒体の漏れ量によって寿命を判断することができるようにした薬液供給装置を提供することにある。
本発明の薬液供給装置は、液体流入口および液体流出口に連通するポンプ室と駆動室とを仕切る弾性変形自在の仕切り膜が設けられたポンプと、前記駆動室に非圧縮性媒体を給排するピストンが往復動自在に組み付けられ、前記ピストンの摺動面が摺動する摺動面を有するシリンダと、前記ピストンを軸方向に往復動し、前記非圧縮性媒体を介して前記ポンプ室を膨張収縮する駆動手段と、前記ピストンと前記シリンダとの間に設けられ、前記ピストンの前記摺動面に連なるとともに非圧縮性媒体が封入されるシール室を形成する弾性変形自在のベローズカバーとを有し、前記ベローズカバーの平均有効径を前記ピストンの前記摺動面の外径とほぼ同一に設定することを特徴とする。
本発明の薬液供給装置は、前記ピストンに前記摺動面の外径よりも小径の小径部を形成し、前記ベローズカバーを前記シリンダの開口端部と前記ピストンの基端部との間に設け、前記ベローズカバーと前記小径部との間に前記シール室を形成することを特徴とする。
本発明の薬液供給装置は、前記シリンダの前記摺動面の内径よりも大径の大径孔を前記シリンダに形成し、前記ベローズカバーを前記ピストンの基端部と前記シリンダの開口端部との間に設け、前記ベローズカバーと前記大径孔との間に前記シール室を形成することを特徴とする。
本発明の薬液供給装置は、前記シール室の圧力を検出するシール室圧力検出手段を有することを特徴とする。
本発明の薬液供給装置は、前記駆動室の圧力を検出する駆動室圧力検出手段を有することを特徴とする。
本発明の薬液供給装置において、前記駆動室は、前記シリンダに設けられる仕切り膜と前記ピストンとにより区画形成されることを特徴とする。また、本発明の薬液供給装置において、前記駆動室は、前記ポンプに設けられるポンプ側の駆動室と、前記シリンダと前記ピストンとにより形成されるピストン側の駆動室とからなることを特徴とする。
本発明の薬液供給装置において、前記仕切り膜はダイヤフラムであることを特徴とする。また、本発明の薬液供給装置において、前記仕切り膜はチューブであることを特徴とする。
本発明によれば、非圧縮性媒体が充填される駆動室をピストンにより膨張収縮させてポンプ室を非圧縮性媒体を介して膨張収縮させるようにしたので、ベローズにより非圧縮性媒体を加圧する場合よりも非圧縮性媒体に高い圧力を加えることができる。これにより、ポンプ室の収縮時にポンプ室に高い流通抵抗が加わっても薬液を供給することができる。
ピストンとシリンダとの間に設けられたベローズカバー等の弾性変形部材により、ピストンとシリンダとの摺動面に連なるシール室が形成されており、このシール室には非圧縮性媒体が封入されている。このようにシール室を形成するための弾性変形部材は摺動部を有していないので、弾性変形部材からの非圧縮性媒体の漏出は完全に防止することができる。したがって、駆動室をピストンによって加圧することによりピストンとシリンダとの摺動部から内部の非圧縮性媒体が漏出してもその非圧縮性媒体はシール室内に流入することになるので、装置の外部には非圧縮性媒体が漏出することが防止される。
このように、ピストンとシリンダとの間の摺動部がシール室に連なっているので、ピストンとシリンダとの間をシールするシール材を境としてこれの軸方向両側に非圧縮性媒体が満たされるので、シール材とこれに接触する部分には薄膜状となった非圧縮性媒体が介在することになり、シール材の潤滑性が高められ、シール材の摩耗が防止される。これにより、シール材の耐久性を向上させることができる。
駆動室を膨張させる方向にピストンを駆動することにより駆動室の圧力が外部の圧力よりも低くなったことに起因して駆動室内にシール室内の非圧縮性媒体が駆動室内に入り込むことはあっても、駆動室内には空気等の圧縮性の流体が混入することはないので、ピストンの移動ストロークとポンプ室の変形量とを高精度に対応させることができ、ポンプからの薬液の吐出量を高精度にすることができる。
駆動室に摺動部を介して連なるシール室をベローズカバーなどの弾性変形部材により区画形成したので、ピストンとシリンダとの摺動部に設けられたシール材が経年変化により磨耗しても、駆動室内への気体の混入が防止され、シール材の交換時期やメンテナンスの時期を長く設定することができるとともに、薬液供給装置の耐久性を向上させることができる。
シール材を使わずに注射器のようにピストンとシリンダの隙間を狭く設定してシール効果を持たせるようにすると、シール材特有のスティックスリップが無く、安定して薬液を吐出することができるという利点がある。一般的にはシール材を用いないと、非圧縮性媒体の漏出や駆動室内への気体の混入が発生しやすくシール性が劣るという欠点があるが、ピストンとシリンダとの間に設けられた弾性変形部材によりシール室を形成することによってその欠点を無くし、安定した薬液の吐出を維持しながら薬液供給装置の耐久性を向上させることができる。
ピストンの摺動面とシリンダ孔内周面の摺動面との間に設けられたシール材が摩耗したり、シール材をこれらの間に設けることなく両方の摺動面の間でシール性を確保するようにした場合にはこれらの摺動面が摩耗すると、シール性が劣化して駆動室からシール室に非圧縮性媒体が漏出することになる。漏出するとシール室の圧力が変化することになるので、シール室の圧力を検出することによって非圧縮性媒体の漏出量に応じたシール性の劣化度を判断することができる。シール性の劣化度によりシール材の寿命やシール材を用いていない場合にはピストン等の部品交換時期を判断することができる。
シール性が劣化すると、駆動室の圧力変化特性が変化することになるので、駆動室の圧力を検出することによってシール性の劣化度を検出することができ、同様にしてシール材の寿命等を判断することができる。
シール室の圧力と駆動室の圧力とを検出することによって、駆動室の圧力変動によるシール室の圧力変動の影響を加味してシール性の劣化度をより正確に判断することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態である薬液供給装置10aを示す断面図であり、図2は図1における2−2線断面図である。
この薬液供給装置10aはポンプ11とシリンダ12とを有している。ポンプ11はシリンダ12に対してボルト13により固定されるポンプケース14と、ポンプケース14内の円筒形状のスペース15内に取り付けられる可撓性チューブ16とを備えている。可撓性チューブ16は径方向に膨張収縮自在の弾性部材により形成されており、この可撓性チューブ16によりその内側のポンプ室17と外側のポンプ側の駆動室18とにスペース15は仕切られており、可撓性チューブ16は仕切り膜を構成している。
可撓性チューブ16の両端部にはアダプタ部21,22が取り付けられており、一方のアダプタ部21にはポンプ室17に連通する液体流入口23が形成されるとともに供給側流路24が接続され、他方のアダプタ部22にはポンプ室17に連通する液体流出口25が形成されるとともに吐出側流路26が接続されている。供給側流路24はレジスト液等の薬液を収容する薬液タンク27に接続され、吐出側流路26はフィルタ28を介して塗布ノズル29に接続されている。
可撓性チューブ16はフッ素樹脂であるテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)により形成されており、アダプタ部21,22も同様にPFAにより形成されている。PFAにより形成されたこれらの部材はフォトレジスト液と反応しない。ただし、薬液の種類によっては、PFAに限られず、弾性変形する材料であれば、他の樹脂材料やゴム材料等の可撓性材料を可撓性チューブ16の素材として用いるようにしても良い。アダプタ部21,22も同様に他の樹脂材料や金属材料を素材として用いるようにしても良い。
供給側流路24にはこの流路を開閉するための供給側開閉弁31が設けられ、吐出側流路26にはこの流路を開閉するための吐出側開閉弁32が設けられている。それぞれの開閉弁31,32としては、電気信号により作動するソレノイドバルブや、モータ駆動バルブ、空気圧により作動するエアオペレートバルブが用いられる。さらには、逆止弁つまりチェッキ弁を用いるようにしても良い。
シリンダ12に形成された底付のシリンダ孔33にはピストン34が軸方向に往復動自在に組み付けられ、ピストン34の先端面とシリンダ孔33の底面35との間にピストン側の駆動室36が形成されており、シリンダ12に形成された連通孔37によりピストン側の駆動室36はポンプ側の駆動室18に連通している。両方の駆動室18,36には液体が駆動用の非圧縮性媒体38として封入されており、駆動室18,36内の非圧縮性媒体38は連通孔37を介して連通している。したがって、ピストン34を底面35に向けて前進移動させると、ピストン側の駆動室36が収縮して駆動室36内の非圧縮性媒体38はポンプ側の駆動室18内に流入し、可撓性チューブ16の内側のポンプ室17は収縮する。一方、ピストン34を後退方向に移動させると、ピストン側の駆動室36が膨張してポンプ側の駆動室18内の非圧縮性媒体38は駆動室36内に流入し、ポンプ室17は膨張する。
可撓性チューブ16とポンプケース14とを有するポンプ11は、シリンダ12内のピストン34が往復動すると、両方の駆動室18,36内に封入された非圧縮性媒体38の移動によりポンプ室17が膨張収縮し、ポンプ室17の膨張収縮に連動させて供給側開閉弁31と吐出側開閉弁32とを開閉作動することによって薬液タンク27内の薬液は塗布ノズル29に供給される。
ポンプ11を構成するポンプケース14はシリンダ12に取り付けられており、ポンプケース14とシリンダ12との間からの非圧縮性媒体38の漏れを防止するために、シール材が設けられたシール駒39がポンプケース14とシリンダ12との間に組み込まれている。ただし、ポンプケース14とシリンダ12とを一体の部材により形成するようにしても良い。また、ポンプケース14をシリンダ12から分離させ、連通孔を有するホースやチューブによりポンプケース14とシリンダ12とを連結するようにしても良い。
図2は図1における2−2線断面図であり、ポンプ部材としての可撓性チューブ16はアダプタ部21,22に嵌合する部分を除いて横断面は長円形となっており、平坦部と円弧状部とを有している。図1に示されるようにピストン34がほぼ前進限位置となると可撓性チューブ16は図2において実線で示すように平坦部が相互に接近するように収縮変形し、ピストン34が後退限位置となると図2において二点鎖線で示すように平坦部が相互に平行となった長円形となる。ただし、可撓性チューブ16の横断面形状は長円形に限られず、円形等の他の形状であっても良い。
シリンダ12は駆動ボックス41に取り付けられており、駆動ボックス41は断面四角形のボックス本体42を有し、これの両端には端壁43,44が固定されている。端壁44の内面には軸受ホルダー45により軸受46が固定され、軸受46にはボールねじ軸47がその基端部で回転自在に支持されている。ボールねじ軸47は端壁44の外側に固定された駆動手段としてのモータ48の主軸に連結されており、モータ48により正逆両方向にボールねじ軸47は回転駆動される。
ピストン34の後端には駆動スリーブ51が連結されており、駆動スリーブ51は雄ねじ部52が一体に設けられた端壁部51aとこれと一体となった円筒部51bを有している。雄ねじ部52はピストン34の端部に形成されたねじ孔にねじ結合され、円筒部51bは駆動ボックス41内の支持板53に固定されたガイド筒54により軸方向に移動自在に支持されている。ボールねじ軸47は駆動スリーブ51の内部に同軸状に組み込まれており、駆動スリーブ51の開口端部には、ボールねじ軸47にねじ結合するナット55が固定されている。ナット55は駆動スリーブ51内に嵌合されるねじ部55aとこれと一体となったフランジ部55bとを有し、フランジ部55bは図示しないねじ部材により駆動スリーブ51に締結されている。したがって、モータ48によりボールねじ軸47を回転駆動すると、ナット55を介して駆動スリーブ51がガイド筒54に案内されて軸方向に直線往復動する。ボールねじ軸47の回転駆動時にボールねじ軸47が傾斜しないようにボールねじ軸47の先端部にはガイドリング56が装着され、このガイドリング56は駆動スリーブ51の内周面に嵌合している。
駆動スリーブ51の軸方向移動を案内するためのガイド筒54の内周面と駆動スリーブ51の外周面にスプラインを形成し、両方のスプラインの間にボールを介在させるようにすると、モータ48により駆動スリーブ51を介してピストン34を駆動するときにおける駆動スリーブ51の摺動抵抗を小さくすることができ、さらに駆動スリーブ51の回転を規制する機能を有している。
ピストン34は先端部側の大径部58と基端部側の小径部59とを有し、大径部58の外周面は、シリンダ孔33の内周面である摺動面61に摺動接触する摺動面62となっている。ピストン34とシリンダ12との間には、これらの間でピストン34の摺動面62に連なるシール室63を形成するためのベローズカバー64が弾性変形部材として設けられている。ベローズカバー64は、シリンダ12の開口端部に形成された大径孔65に固定される環状部66と、ピストン34の突出部つまり基端部に固定される環状部67と、これらの間のベローズ部68とを有しており、PTFE等の樹脂材料により形成されている。ただし、ゴム材料や金属材料により形成するようにしても良い。ベローズカバー64はピストン34の基端部側の外周面を覆うように設けられており、摺動面61,62に連なるシール室63がベローズカバー64とピストン34の小径部59の外周面との間に形成され、シール室63内にはシール用の非圧縮性媒体38aが封入されている。なお、弾性変形部材としてベローズカバー64に代えてダイヤフラムを用いるようにしても良い。
シール室63内に封入される非圧縮性媒体38aとしては、それぞれの駆動室18,36に封入される非圧縮性媒体38と同種のものが使用されているが、非圧縮性媒体38aと非圧縮性媒体38とを異種のものとしても良い。
シリンダ12の摺動面61とピストン34の摺動面62との間をシールするために、シリンダ12に形成された環状溝にはシール材69が装着されており、往復動するピストン34の摺動面62はシール材69に摺動接触する。ただし、ピストン34の外周面に環状溝を形成し、その環状溝にシール材69を装着するようにしても良く、その場合にはシール材69はピストン34の往復動時にシリンダ孔33の摺動面61に摺動接触する。
ベローズカバー64のベローズ部68は、円錐形の部分が連なって形成されているので、軸方向の位置によって内径が相違している。ベローズ部68の軸方向全体の平均有効径をD1とすると、この平均有効径D1はピストン34の摺動面62の外径D2とほぼ同一(D1=D2)に設定されている。したがって、ベローズ部68の平均有効面積とピストン34の断面積はほぼ同一に設定されており、ピストン34が軸方向に往復動されて、ベローズカバー64のベローズ部68が軸方向に弾性変形するときには、シール室63内の容積は変化しない。これにより、ピストン34の往復動時にはベローズカバー64のベローズ部68は軸方向のみに変形し、径方向には変形しない。
平均有効径D1の外径D2に対するほぼ同一径には、ピストン34の軸方向往復動時にベローズ部68が径方向に僅かに変形してもベローズカバー64の耐久性を損なわない程度であれば許容誤差が含まれる。ピストン34の摺動面62とシリンダ孔33の摺動面61との間の隙間は、例えば0.5mmあるいはこれ以下の僅かな隙間に設定されており、ベローズ部68の平均有効径D1をシリンダ33の内径と同一に設定しても、ピストン34の往復動時にはベローズ部68は径方向には殆ど変形することなく、ベローズカバー64の耐久性を維持することができる。したがって、外径D2の許容誤差には、シリンダ孔33の内径の寸法も含まれることになる。
この薬液供給装置10aはピストン側の駆動室36の非圧縮性媒体38をピストン34により加圧して非圧縮性媒体38をピストン側の駆動室36からポンプ側の駆動室18に供給するようにしたので、ポンプ側の駆動室18の圧力を高めることができる。ピストン側の駆動室36内の非圧縮性媒体38はシール材69によりシールされるが、ピストン34により駆動室36を加圧すると、ピストン34の外周面つまり摺動面62に付着した非圧縮性媒体38が駆動室36の圧力によりそのままシール材69と摺動面62のごく僅かな隙間を通過してシリンダ12の開口端よりも外方に案内されて漏出するおそれがある。しかし、ピストン34の外周面に付着して外部に漏れた非圧縮性媒体38は、シール室63内の非圧縮性媒体38aに取り込まれることになり、装置の外部に漏出することはない。ベローズカバー64は摺動部を有していないので、両方の摺動面61,62の間から漏れた非圧縮性媒体38がシール室63から外部へ漏出したり飛散することが防止される。
ピストン34を後退移動させてピストン側の駆動室36の容積を大きくする際に両方の駆動室18,36内の非圧縮性媒体38が負圧状態となっても、ピストン34の突出端部はベローズカバー64により外部から遮蔽されており、シール室63内に封入された非圧縮性媒体38aが駆動室36内に逆流して入り込んだとしても、外部の空気が駆動室18,36内に混入することはない。
しかも、気体に比べて液体等の非圧縮性媒体38,38aは分子量が大きいので、シール材69と両方の摺動面61,62の間の微細な隙間を通り難く、シール室63から駆動室36へ入り込む非圧縮性媒体38aの量は少なくなる。このように、液体等の非圧縮性媒体38aをシール室63内に封入することにより、ポンプ11からの薬液の吐出精度を長期間にわたり高精度に維持することができる。
さらに、ピストン34の摺動面62とシリンダ孔33の摺動面61との間をシールするシール材69を境としてこれの軸方向両側に非圧縮性媒体38,38aが満たされているので、シール材69とピストン34の外周面には薄膜状となった非圧縮性媒体38,38aが介在することになり、シール材69の潤滑性が高められ、シール材69の摩耗が防止される。これにより、シール材69の耐久性が向上し、装置の寿命を長くすることができる。
また、シール材69が長期使用により磨耗してシール性が低下しても、駆動室18,36内に空気が混入することを防止することができ、ピストン34の往復動ストロークと可撓性チューブ16内からの薬液の吐出量とを高精度に対応させることができる。したがって、液晶用ガラス基板にフォトレジスト液を塗布する場合には、一定量のフォトレジスト液を高い精度で塗布ノズル29から吐出することができる。
シリンダ12にはシール室63内の非圧縮性媒体38aの圧力を検出するためにシール室圧力センサ71がシール室圧力検出手段として取り付けられ、駆動室36内の非圧縮性媒体38の圧力を検出するために駆動室圧力センサ72が駆動室圧力検出手段として取り付けられており、それぞれのセンサ71,72は圧力に応じた電気信号を出力する。
図3はピストン34を底面35に向けて前進移動させ、ポンプ室17を収縮させる薬液吐出させるポンプ吐出工程開始時のポンプ室17における薬液の圧力変化を示すグラフであり、この圧力変化は駆動室18,36内の非圧縮性媒体の圧力変化にほぼ対応することになる。
図3において波形Aはシール材69が所望のシール効果を発揮しているときのポンプ室17の圧力変化特性であり、吐出開始時にはポンプ室17の圧力は急峻に立ち上がるように変化することになり、その圧力は駆動室圧力センサ72で検出される。このような急峻な変化は、ベローズに代えてピストン34により駆動室を形成することによって達成することができる。しかし、シール材69が摩耗したり、ピストン34の摺動面62、シリンダ孔33の摺動面61が摩耗したりして摺動面61,62の間のシール性が劣化すると、駆動室36からシール室63へ漏出する非圧縮性媒体38の量が増加して、波形Aで示す特性が維持できなくなり、シール性の劣化進行に伴って、波形Bから波形Cのようになだらかな立ち上がり変化となる。
つまり、シール性が劣化すると、薬液の吐出時には駆動室36からシール室63への非圧縮性媒体38の移動抵抗が小さくなって駆動室36に漏出する媒体量が増加するので、ピストン34の推力が駆動室18,36の圧力に正確には伝わらなくなり、図3において波形B,Cに示すようになだらかな立ち上がりとなる。立ち上がり特性が許容値を超えた状態は、駆動室36の圧力を駆動室圧力センサ72により検出することができ、立ち上がり特性が分かれば、シール性の劣化が許容範囲を超えたことに起因するシール材69の交換時期を判断できる。
ピストン34を後退移動させてポンプ室17内に薬液を吸入するときにはポンプ室17内の圧力が急峻に変化する必要は少ないが、シール性が劣化すると、ポンプ吸入工程ではシール室63から駆動室36へ移動する非圧縮性媒体38aの量が増加するので、吸入時における駆動室36の圧力変化によってもシール材69の交換時期を判断することができる。
したがって、シール室63内の圧力を検出するシール室圧力センサ71からの出力信号や、駆動室36内の圧力を検出するために駆動室圧力センサ72からの出力信号によってシール性の劣化度、つまり非圧縮性媒体38,38aの漏出度を検出することができる。
図4はポンプ吐出工程とポンプ吸入工程の1サイクルにおける駆動室圧力の変化と、シール室圧力の変化とを示すグラフである。
ピストン34を前進させるポンプ吐出工程と後退移動させるポンプ吸入工程においては、駆動室18,36の圧力は時間とともに図4における駆動室圧力のグラフのように変化する。これに対し、シール室63の圧力は、シール材69が所望のシール性を発揮していれば、摺動面61,62からのシール室63への非圧縮性媒体38の漏れがないので、ピストン34の往復動によるポンプ吐出工程およびポンプ吸入工程においても、変化することなく初期値Eを維持することになる。初期値Eはシール室63内に非圧縮性媒体38aが封入されていることから、ゲージ圧ゼロよりもやや高くなっているが、この初期値はゼロとしても良く、負圧等の任意の値に設定することができる。
シール性の劣化が進むと、ポンプ吐出工程時には駆動室36からシール室63に漏出する非圧縮性媒体38の量が増加してシール室63の圧力が初期値Eよりも高くなる。これに対し、ポンプ吸入工程時にはシール室63から駆動室36に漏入する非圧縮性媒体38aの量が増加してシール室63の圧力が初期値よりも低くなり、ゲージ圧ゼロに対して負圧値が大きくなる。したがって、シール室63の圧力を検出することによってシール性の劣化に起因する漏出度を判断することができる。なお、駆動室18,36の圧力変化に比べてシール室63の圧力変化は低くなるが、図4においては理解し易くするためにシール室63の圧力変化は駆動室の圧力変化よりも拡大して示されている。
図4のシール室圧力に示すように、吐出時におけるシール性の劣化度を判定する圧力値として、しきい値をP1,P2の2種類設定しておくと、しきい値P1を越えたときにはある程度シール性の劣化が進行したことをシール室圧力センサ71からの検出信号によって判断することができ、しきい値P2を越えたときにはシール材69を交換しなければならない程度までシール性が劣化したことを判断することができる。一方、ポンプ吸入工程時における劣化判定圧力値として、しきい値S1,S2の2種類設定しておくと、同様にして劣化度を判断することができる。
シール性の劣化度が同じであっても、薬液粘度や吐出側流路26の流通抵抗等による駆動室18,36の圧力に応じて、シール室63の圧力変化は相違することになる。そこで、駆動室18,36の圧力に応じて、シール性劣化の判断を行うしきい値を変更するようにすることができる。
図4における特性線F,Gは、シール材69の摩耗が始まってシール性が少し劣化した場合のシール室63の圧力変化を示す。特性線Fは、薬液粘度が低い場合やポンプ11の吐出側流路26の流通抵抗が小さい場合のようにポンプ吐出工程における駆動室18,36の圧力が高くならない場合におけるシール室63の圧力変化を示し、駆動室18,36の圧力が高くならないので、ポンプ吸入工程ではゲージ圧ゼロよりも低い圧力となる。
これに対し、シール性の劣化程度が特性線Fで示す場合と同じでも、薬液粘度が高い場合や吐出側流路にフィルタが設けられていた場合のようにポンプ吐出工程におけるポンプ室17の圧力が上述した場合よりも高くなる場合には、シール室63の圧力は特性線Fよりも高くなるとともに、ポンプ停止時における圧力も初期値より高くなる。また、ポンプ室17の圧力が高い場合には、ポンプ停止時のシール室63の圧力は初期値Eから徐々に上昇することになる。ただし、停止時の圧力はポンプ運転条件の変化により初期状態に戻る場合もある。例えば、ポンプを長期間停止させていたり、吸入時の流速を上げて駆動室18,36が負の圧力となるような条件の場合である。
ポンプ吐出工程における駆動室18,36の圧力が特性線Fに対応した場合と同じであっても、シール性の劣化が進行すると、非圧縮性媒体38,38aの漏出度が高まって、ポンプ吐出工程時におけるシール室63の圧力はしきい値P1を越えることになるので、シール室63の圧力をシール室圧力センサ71により検出することによって、シール性の劣化を判断することができる。さらに、媒体漏出量が増加すると、シール室63の圧力はしきい値P2を越えることになる。
図5はポンプの作動回数の増加にともなうポンプ吐出工程におけるシール室63の圧力ピーク値変化の一例を概略的に示すグラフである。図4に示したしきい値P2をシール材の交換時期つまりシール材の寿命とし、しきい値P1を超えてからしきい値P2に到達するまでのポンプの作動回数が予め分かっていれば、しきい値P1を超えた時点でシール材69の寿命を予測することができる。また、作動回数とシール室圧力との関係が予め分かっていれば、任意の検出圧力からシール材の寿命を予測することができる。なお、ポンプ吸入工程における図4に示したしきい値S1,S2に基づいてシール材の寿命を予測することができる。
図6はポンプ吐出工程における駆動室18,36の圧力とシール室63の圧力の関係を示すグラフである。図6に示すように、駆動室18,36の圧力が高くなると、シール室63への媒体漏出量が増加するとともにシール性の劣化が進行すると媒体漏出量が増加し、シール室63の圧力も高くなる傾向がある。したがって、ポンプの運転が同一条件の下で行われて薬液吐出時のポンプ圧が一定であれば、シール室63の圧力変化によってシール材69の寿命を判断することができるが、吐出側流路26に設けられたフィルタ28の目詰まりが進行するに伴って吐出時のポンプ室17の圧力が上昇すると、シール材69が寿命に至っていなくとも、シール室63の圧力がしきい値を超えることがあり得る。
そこで、駆動室36の圧力を駆動室圧力センサ72により検出することによって、例えば駆動室36の圧力とシール室63の圧力との差によってシール性の劣化を判断したり、駆動室36の圧力に応じてシール室63の圧力のしきい値を変更したりすると、フィルタの目詰まりなどによる吐出側流路26の圧力変化に左右されず、シール材69の寿命をより正確に判断することができる。
図7は薬液供給装置の制御回路を示すブロック図であり、シール室圧力センサ71と駆動室圧力センサ72の検出信号はコントローラ73に送られ、コントローラ73からはモニター74に信号が送られて、モニター74にはシール性が表示される。コントローラ73は、制御プログラム、寿命の演算式、しきい値のテーブルデータ等が格納されるROMと、検出信号に基づいてシール性の劣化度を演算するマイクロプロセッサ等を有している。したがって、図4に示すようにシール室63の圧力、駆動室36の圧力、あるいはシール室63の圧力と駆動室36の圧力とによりシール性の劣化度を判定し、モニター74には劣化度を表示したり、シール材69が寿命に至ったことを表示したり、シール材69が寿命に至る時期の予測を表示することになる。モニター74に加えて、シール材69が寿命に至ったときには、警報を発するようにしたり警告灯を点灯するようにしても良い。
図8および図9はそれぞれ本発明の他の実施の形態である薬液供給装置を示す断面図であり、これらの図においては、図1に示す薬液供給装置における部材と共通する部材に同一の符号が付されている。
図8に示す薬液供給装置10bのピストン34は軸方向全体が同一径となっている。シリンダ12のシリンダ孔33は、ピストン34の外周面つまり摺動面61に摺動接触する摺動面62と、この摺動面62の内径よりも大径の大径孔76とを有し、ベローズカバー64はピストン34の基端部とシリンダ12の開口端部との間に設けられており、ベローズカバー64と大径孔76との間にシール室63が形成されている。ベローズカバー64は、シリンダ12の開口端部に形成された大径孔76に固定される環状部66と、ピストン34の突出部つまり基端部に固定される環状部67と、これらの間のベローズ部68とを有しており、シール室63内にはシール用の非圧縮性媒体38aが封入されている。
ベローズカバー64のベローズ部68の平均有効径D1はピストン34の摺動面61の外径D2とほぼ同一に設定されている。したがって、図1に示す場合と同様に、ピストン34が軸方向に往復動されて、ベローズカバー64のベローズ部68が軸方向に弾性変形するときには、シール室63内の容積は変化しない。図8に示す薬液供給装置10bにおいても、平均有効径D1の外径D2に対するほぼ同一径には、ベローズカバー64の耐久性を損なわない程度であれば許容誤差が含まれ、外径D2の許容誤差には、平均有効径D1をシリンダ孔33の内径に設定することも含まれることになる。
図8に示す薬液供給装置10bにおいては、シリンダ孔33の摺動面61とピストン34の摺動面62との間をシールするためのシール材69がピストン34の外周面に形成された環状溝に設けられている。
図9に示す薬液供給装置10cにおいては、シリンダ12のうちピストン34の先端面前方の部分に対応する部分が開口されており、開口されたシリンダ12の先端面にはポンプケース77がピストン34の先端面に対向して取り付けられている。ポンプケース77はPFAにより形成されており、ポンプケース77には供給側流路24と吐出側流路26とが一体に設けられている。ただし、供給側流路24と吐出側流路26とをポンプケース77とは別体としてそれぞれをポンプケース77に取り付けるようにしても良い。
ポンプケース77とシリンダ12との間には、PTFE等の樹脂材料やゴム等の弾性材料により形成されたダイヤフラム78がポンプ部材として取り付けられており、ポンプケース77とダイヤフラム78とによりポンプ11が構成されている。このダイヤフラム78によりポンプ室17と駆動室79とにポンプケース77とシリンダ12との間のスペースが仕切られており、ダイヤフラム78は仕切り膜を構成している。
図9に示す薬液供給装置10cにおいては、ダイヤフラム78により仕切られる駆動室79が上述した実施の形態におけるポンプ側の駆動室18とピストン側の駆動室36とを兼ねており、薬液供給装置10cは上述した薬液供給装置10a,10bよりも幅方向の寸法を小型化することが可能となる。
図9に示す薬液供給装置10cにおいては、シリンダ孔33の摺動面61とピストン34の摺動面62との間をシールするためのシール材69は設けられておらず、両方の摺動面61,62の間の隙間を図1に示す場合よりも狭く設定することによって、シール材69を設けることなく駆動室79とシール室63との間における非圧縮性媒体の漏れを防止している。このようにシール材69を使わずに注射器のようにピストン34の摺動面62とシリンダ孔33の摺動面61との間の隙間を狭く設定してシール効果を持たせるようにした薬液供給装置においては、シール材特有のスティックスリップが無く、安定して薬液を吐出することができるという利点がある。シール材を用いないと、一般的には非圧縮性媒体の漏出や駆動室79内への気体の混入が発生しやすくシール性が劣るという欠点があるが、ピストン34とシリンダ12との間に設けられたベローズカバー64によりシール室63を形成することによってその欠点を無くし、安定した薬液の吐出を維持しながら薬液供給装置10cの耐久性を向上させることができる。
なお、上述した薬液供給装置10a,10bにおいても、隙間を狭く設定すれば、シール材69を用いないようにすることができる。また、シール材69を用いる場合においてもこれに加えてピストン34とシリンダ12との間の軸受としてウエアリングを装着するようにしても良く、シール材69に代えてウエアリングを装着するようにしても良い。
このようなタイプの薬液供給装置10cにおいては、両方の摺動面61,62が摩耗してこれらの間における非圧縮性媒体の漏出度が所定値以上となると、装置自体の寿命と判断されて、ピストン34、シリンダ12等の交換や保守が行われる。
図8および図9に示す薬液供給装置10b,10cにおいても、図7に示す制御回路によってシール性の劣化に起因した寿命を判断することができる。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。たとえば、ピストン34をモータ48により駆動するようにしているが、駆動手段としてはモータ48に限らず、空気圧シリンダ等の他の駆動手段を使用するようにしても良い。また、シール室圧力検出手段および駆動室圧力検出手段としては、圧力に応じて電気信号を送るセンサに限られず、それぞれの圧力が所定値以上となるとオン信号を発するスイッチや、圧力に応じて移動する部材により圧力を外部に表示するようにしても良い。
本発明の一実施の形態である薬液供給装置を示す断面図である。 図1における2−2線に沿う断面図である。 薬液を吐出させるポンプ吐出工程開始時のポンプ室における薬液の圧力変化を示すグラフである。 ポンプ吐出工程とポンプ吸入工程の1サイクルにおける駆動室圧力の変化と、シール室圧力の変化とを示すグラフである。 ポンプの作動回数の増加にともなうポンプ吐出工程におけるシール室63の圧力ピーク値変化の一例を概略的に示すグラフである。 ポンプ吐出工程における駆動室の圧力とシール室の圧力の関係を示すグラフである。 薬液供給装置の制御回路を示すブロック図である。 本発明の他の実施の形態である薬液供給装置を示す断面図である。 本発明の他の実施の形態である薬液供給装置を示す断面図である。
符号の説明
10a〜10c 薬液供給装置
11 ポンプ
12 シリンダ
16 可撓性チューブ(仕切り膜)
17 ポンプ室
18 駆動室(ポンプ側の駆動室)
33 シリンダ孔
34 ピストン
36 駆動室(ピストン側の駆動室)
38 非圧縮性媒体(駆動用)
38a 非圧縮性媒体(シール用)
48 モータ(駆動手段)
61 摺動面
62 摺動面
63 シール室
64 ベローズカバー
68 ベローズ部
69 シール材
71 シール室圧力センサ(シール室圧力検出手段)
72 駆動室圧力センサ(駆動室圧力検出手段)
77 ポンプケース
78 ダイヤフラム(仕切り膜)
79 駆動室

Claims (9)

  1. 液体流入口および液体流出口に連通するポンプ室と駆動室とを仕切る弾性変形自在の仕切り膜が設けられたポンプと、
    前記駆動室に非圧縮性媒体を給排するピストンが往復動自在に組み付けられ、前記ピストンの摺動面が摺動する摺動面を有するシリンダと、
    前記ピストンを軸方向に往復動し、前記非圧縮性媒体を介して前記ポンプ室を膨張収縮する駆動手段と、
    前記ピストンと前記シリンダとの間に設けられ、前記ピストンの前記摺動面に連なるとともに非圧縮性媒体が封入されるシール室を形成する弾性変形自在のベローズカバーとを有し、
    前記ベローズカバーの平均有効径を前記ピストンの前記摺動面の外径とほぼ同一に設定することを特徴とする薬液供給装置。
  2. 請求項記載の薬液供給装置において、前記ピストンに前記摺動面の外径よりも小径の小径部を形成し、前記ベローズカバーを前記シリンダの開口端部と前記ピストンの基端部との間に設け、前記ベローズカバーと前記小径部との間に前記シール室を形成することを特徴とする薬液供給装置。
  3. 請求項記載の薬液供給装置において、前記シリンダの前記摺動面の内径よりも大径の大径孔を前記シリンダに形成し、前記ベローズカバーを前記ピストンの基端部と前記シリンダの開口端部との間に設け、前記ベローズカバーと前記大径孔との間に前記シール室を形成することを特徴とする薬液供給装置。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の薬液供給装置において、前記シール室の圧力を検出するシール室圧力検出手段を有することを特徴とする薬液供給装置。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の薬液供給装置において、前記駆動室の圧力を検出する駆動室圧力検出手段を有することを特徴とする薬液供給装置。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の薬液供給装置において、前記駆動室は、前記シリンダに設けられる仕切り膜と前記ピストンとにより区画形成されることを特徴とする薬液供給装置。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の薬液供給装置において、前記駆動室は、前記ポンプに設けられるポンプ側の駆動室と、前記シリンダと前記ピストンとにより形成されるピストン側の駆動室とからなることを特徴とする薬液供給装置。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の薬液供給装置において、前記仕切り膜はダイヤフラムであることを特徴とする薬液供給装置。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載の薬液供給装置において、前記仕切り膜はチューブであることを特徴とする薬液供給装置。
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