以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。それぞれの図面においては、共通の機能を有する部材に同一の符号が付されている。
図1は本発明の一実施の形態である薬液供給装置10aを示す断面図であり、この薬液供給装置10aはポンプケース11の部分とシリンダ12の部分とが一体となった合体部材13を有しており、ポンプケース11とシリンダ12は相互に平行となっている。ポンプケース11の円筒形状のスペース14内には、弾性材料により形成されて径方向に膨張収縮自在の可撓性チューブ15がポンプ部材として取り付けられており、ポンプケース11と可撓性チューブ15はポンプ20を構成している。この可撓性チューブ15によりその内側のポンプ室16と外側のポンプ側の駆動室17とにスペース14は仕切られており、可撓性チューブ15は仕切り膜を構成している。
可撓性チューブ15の両端部にはアダプタ部18,19が取り付けられており、一方のアダプタ部18にはポンプ室16に連通する液体流入口21が形成されるとともに供給側流路23が接続され、他方のアダプタ部19にはポンプ室16に連通する液体流出口22が形成されるとともに吐出側流路24が接続されている。供給側流路23はレジスト液等の薬液を収容する薬液タンク25に接続され、吐出側流路24はフィルタ26を介して塗布ノズル27に接続されている。
可撓性チューブ15はフッ素樹脂であるテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)により形成されており、アダプタ部18,19も同様にPFAにより形成されている。PFAにより形成されたこれらの部材はフォトレジスト液と反応しない。ただし、薬液の種類によっては、PFAに限られず、弾性変形する材料であれば、他の樹脂材料やゴム材料等の可撓性材料を可撓性チューブ15の素材として用いるようにしても良い。アダプタ部18,19も同様に他の樹脂材料や金属材料を素材として用いるようにしても良い。
供給側流路23にはこの流路を開閉するための供給側開閉弁28が設けられ、吐出側流路24にはこの流路を開閉するための吐出側開閉弁29が設けられている。それぞれの開閉弁28,29としては、電気信号により作動するソレノイドバルブや、空気圧により作動するエアオペレートバルブが用いられる。さらには、逆止弁つまりチェッキ弁を用いるようにしても良い。
シリンダ12に形成された底付のシリンダ孔30にはピストン31が軸方向に往復動自在に組み付けられ、ピストン31の先端面とシリンダ孔30の底面32との間にピストン側の駆動室33が形成されており、合体部材13に形成された連通孔34によりピストン側の駆動室33はポンプ側の駆動室17に連通している。両方の駆動室17,33には液体が非圧縮性媒体35として封入されており、駆動室17,33内の非圧縮性媒体35は連通孔34を介して連通している。したがって、ピストン31を底面32に向けて前進移動させると、ピストン側の駆動室33が収縮して駆動室33内の非圧縮性媒体35はポンプ側の駆動室17内に流入し、可撓性チューブ15の内側のポンプ室16は収縮する。一方、ピストン31を後退方向に移動させると、ピストン側の駆動室33が膨張してポンプ側の駆動室17内の非圧縮性媒体35は駆動室33内に流入し、ポンプ室16は膨張する。
可撓性チューブ15とポンプケース11とを有するポンプ20は、シリンダ12内のピストン31が往復動すると、両方の駆動室17,33内に封入された非圧縮性媒体35の移動によりポンプ室16が膨張収縮し、ポンプ室16の膨張収縮に連動させて供給側開閉弁28と吐出側開閉弁29とを開閉作動することによって薬液タンク25内の薬液は塗布ノズル27に供給される。ポンプ20を構成するポンプケース11はシリンダ12と一体となってシリンダ12に隣接して設けられ、連通孔34はポンプケース11とシリンダ12とが一体となった合体部材13に形成されているので、薬液供給装置の小型化が達成される。ただし、ポンプケース11とシリンダ12とを別々の部材により形成し、連通孔を有するホースやチューブによりこれらを連結するようにしても良い。
図2は図1における2−2線断面図であり、ポンプ部材としての可撓性チューブ15はアダプタ部18,19に嵌合する部分を除いて横断面は長円形となっており、平坦部と円弧状部とを有している。図1に示されるようにピストン31がほぼ前進限位置となると可撓性チューブ15は図2において実線で示すように平坦部が相互に接近するように収縮変形し、ピストン31が後退限位置となると図2において二点鎖線で示すように平坦部が相互に平行となった長円形となる。ただし、可撓性チューブ15の横断面形状は長円形に限られず他の形状であっても良い。
ピストン31を直線往復動するためにシリンダ12には、一端に支持板41が取り付けられ他端に支持板42が取り付けられた駆動ボックス40がスペーサ43を介して取り付けられている。支持板41の内側に軸受ホルダー44により固定された軸受45には、ボールねじ軸46がその基端部で回転自在に支持されており、ボールねじ軸46は支持板41の外側にスペーサ48を介して固定された駆動手段としてのモータ49の主軸に連結されており、モータ49により正逆両方向にボールねじ軸46は回転駆動される。
ピストン31の後端には駆動スリーブ51が連結されており、駆動スリーブ51は雄ねじ部52が一体に設けられた端壁部とこれと一体となった円筒部を有し、雄ねじ部52はピストン31にねじ結合されている。ボールねじ軸46は駆動スリーブ51の内部に同軸状に組み込まれており、駆動スリーブ51の開口端部には、ボールねじ軸46にねじ結合するナット53がナットホルダー54により固定されている。ナット53はナットホルダー54にねじ止めされるフランジ55を有し、ナット53はフランジ55によりナットホルダー54に固定されている。したがって、モータ49によりボールねじ軸46を回転駆動すると、ナット53を介して駆動スリーブ51が支持板42に形成された貫通孔に案内されて軸方向に直線往復動する。ボールねじ軸46の回転駆動時にボールねじ軸46が傾斜しないようにボールねじ軸46の先端部にはガイドリング56が装着され、このガイドリング56は駆動スリーブ51の内周面に嵌合している。モータ49により駆動スリーブ51を介してピストン31を駆動するときに、駆動スリーブ51の軸方向移動を案内するため、駆動ボックス40内に取り付けられたガイドレール57に沿って摺動するスライドブロック58がナットホルダー54に設けられている。
ピストン31とシリンダ12とが接触する部分は摺動部36となっており、摺動部36におけるピストン31とシリンダ12との間をシールするために、シリンダ12に形成された環状溝にはシール材59が装着されており、往復動するピストン31の外周面はシール材59に摺動接触する。ピストン31の突出端とシリンダ12との間には、ピストン31の外周面を隙間を介して覆うように軸方向に弾性変形自在のベローズカバー61が設けられており、ベローズカバー61の平均有効断面積はピストン31の断面積よりも大きくなっている。
ベローズカバー61は、シリンダ12の開口端部に形成された大径孔62に固定される環状部63と、ピストン31の突出部つまり基端部側の小径部に固定される環状部64と、これらの間のベローズ部65とを有しており、PTFE等の樹脂材料により形成されている。ただし、ゴム材料や金属材料により形成するようにしても良い。ベローズカバー61はピストン31の基端部側の外周面を覆うように設けられており、摺動部36に連なる第1のシール室66aがベローズカバー61とピストン31の外周面との間に形成され、このシール室66a内にはシール用の非圧縮性媒体35aが封入されている。
シリンダ12の側面には凹部67が形成され、この凹部67は連通孔68によりベローズカバー61とピストン31との間のシール室66aに連通しており、凹部67はシール室66aを介してピストン31とシリンダ12との間の摺動部36に連通している。凹部67にはゴム等からなる弾性変形自在のダイヤフラム69が取り付けられ、凹部67とダイヤフラム69とにより容積可変の第2のシール室66bが形成されている。このシール室66bの内部には非圧縮性媒体35aが封入されており、シリンダ12のうち凹部67が形成された部分は媒体給排部71となっている。ダイヤフラム69はシリンダ12に固定される蓋部材72により媒体給排部71に取り付けられ、蓋部材72の内側の空間内でダイヤフラム69は弾性変形自在となっており、蓋部材72には息付き孔72aが形成されている。
シリンダ12の側面には凹部67が形成され、この凹部67は連通孔68によりベローズカバー61とピストン31との間のシール室66aに連通しており、凹部67はシール室66aを介してピストン31とシリンダ12との間の摺動部36に連通している。凹部67にはゴム等からなる弾性変形自在のダイヤフラム69が弾性変形部材として取り付けられ、凹部67とダイヤフラム69とにより容積可変の第2のシール室66bが形成されている。このシール室66bの内部には非圧縮性媒体35aが封入されており、シリンダ12のうち凹部67が形成された部分は媒体給排部71となっている。ダイヤフラム69はシリンダ12に固定される蓋部材72により媒体給排部71に取り付けられ、蓋部材72の内側の空間内でダイヤフラム69は弾性変形自在となっており、蓋部材72には息付き孔72aが形成されている。尚、弾性変形部材としては、第2のシール室66bの膨張収縮の容積変化を吸収するものであれば、ダイヤフラム69に限られることなく、ベローズを用いても良い。
ピストン31が往復動するとその往復動によってシール室66aの容積が変化し、その容積変化に追従してダイヤフラム69が弾性変形しシール室66b内の容積が変化する。つまり、ピストン31が図1に示す位置よりも図において下方に移動すると、第1のシール室66aの容積が大きくなるので、その容積増加分に追従するように第2のシール室66bから非圧縮性媒体35aが第1のシール室66a内に流入して補充される。これにより第2のシール室66bは収縮する。一方、ピストン31が逆方向に移動して第1のシール室66aの容積が小さくなると、第1のシール室66a内の非圧縮性媒体35aが第2のシール室66bに排出されて第2のシール室66bは膨張する。なお、媒体給排部71をシリンダ12から離して設けるようにしても良く、その場合には連通孔68を有するホースやパイプ等によりシリンダ12の部分と媒体給排部71の部分とが連結されることになる。
この薬液供給装置10aはピストン側の駆動室33をピストン31により加圧して非圧縮性媒体35を駆動室33からポンプ側の駆動室17に供給するようにしたので、ポンプ側の駆動室17の圧力を高めることができる。ピストン側の駆動室33内の非圧縮性媒体35はシール材59により外部からシールされるが、ピストン31により駆動室33を加圧すると、ピストン31の外周面に付着した非圧縮性媒体35が駆動室33の圧力によりそのままシール材59を通過してシリンダ12の開口端よりも外方に案内されて漏出するおそれがある。しかし、ピストン31の外周面に付着して外部に漏れた非圧縮性媒体35は、シール室66a内の非圧縮性媒体35aに取り込まれることになり、装置の外部に漏出することはない。ベローズカバー61およびダイヤフラム69は摺動部を有していないので、摺動部36から漏れた非圧縮性媒体35がシール室66aから外部へ漏出したり飛散することが防止される。
ピストン31を後退移動させてピストン側の駆動室33の容積を大きくする際に両方の駆動室17,33内の非圧縮性媒体35が負圧状態となっても、ピストン31の突出端部はベローズカバー61により外部から遮蔽されており、両方のシール室66a,66b内に封入された非圧縮性媒体35aが駆動室33内に逆流して入り込んだとしても、外部の空気が駆動室17,33内に混入することはない。
しかも、気体に比べて液体等の非圧縮性媒体35,35aは分子量が大きいので、シール材59とピストン表面との間の微細な隙間を通り難く、シール室66aから駆動室33へ入り込む非圧縮性媒体35aの量は少なくなる。このように、液体等の非圧縮性媒体35aをシール室66a,66b内に封入することにより、ポンプ20からの薬液の吐出精度を長期間にわたり高精度に維持することができる。
さらに、ピストン31とシリンダ12との間をシールするシール材59を境としてこれの軸方向両側に非圧縮性媒体35,35aが満たされているので、シール材59とピストン31の外周面には薄膜状となった非圧縮性媒体35,35aが介在することになり、シール材59の潤滑性が高められ、シール材59の摩耗が防止される。これにより、シール材59の耐久性が向上し、装置の寿命を長くすることができる。
また、シール材59が長期使用により磨耗してシール性が低下しても、駆動室17,33内に空気が混入することを防止することができ、ピストン31の往復動ストロークと可撓性チューブ15内からの薬液の吐出量とを高精度に対応させることができる。したがって、半導体ウエハにフォトレジスト液を塗布する場合には、一定量のフォトレジスト液を高い精度で塗布ノズル27から吐出することができる。
図3は本発明の他の実施の形態である薬液供給装置を示す断面図である。この薬液供給装置10bはポンプケースがシリンダ12と一体となった第1のポンプケース11とこれに取り付けられる第2のポンプケース73とにより形成されており、第1と第2のポンプケース11,73の間にダイヤフラム74がポンプ部材として挟み付けられている。両方のポンプケース11,73により形成されるスペース14は、ダイヤフラム74によりポンプ側の駆動室17とポンプ室16とにより仕切られており、ダイヤフラム74は仕切り膜となっている。ポンプケース73およびダイヤフラム74はフッ素樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)により形成されているが、薬液の種類によっては他の樹脂を使用するようにしても良く、ポンプケース73を金属としても良く、ダイヤフラム74をゴム製や金属製としても良い。図3に示されるポンプ20の液体流入口21と液体流出口22はポンプケース73にそれぞれ形成されており、ポンプ20には図1に示したアダプタ部18,19は設けられていない。
図3に示すように、ピストン31は図1に示す場合よりも大径となっており、ピストン31にはベローズカバー61が一体に設けられている。ベローズカバー61は、ピストン31の後端から後方に向けて突出するとともにシリンダ孔30の内部に配置されており、ベローズカバー61の中に駆動スリーブ51が組み込まれている。これにより、薬液供給装置10bの軸方向寸法は、図1に示す薬液供給装置10aよりも短くなっている。
ベローズカバー61はピストン31の後端に一体となったベローズ部65と、シリンダ12に形成された大径孔62に固定される環状部64とを有しており、シリンダ12の開口端部とピストン31の後端部つまり開口端部との間にシリンダ孔30と対向するように設けられ、ピストン31の断面積はベローズ61の平均有効断面積よりも大きくなっている。したがって、ベローズカバー61の外側とシリンダ孔30の内側との間でシール室66aが形成されており、このシール室66aはシリンダ12に形成された連通孔68を介してシール室66bに連通されている。図3に示すピストン31にはベローズカバー61が一体となっているが、これらを別々に成形し接着や溶接等によりピストン31とベローズカバー61とを接合するようにしても良い。
図4は本発明の他の実施の形態である薬液供給装置を示す断面図である。この薬液供給装置10cにおいては、シリンダ12の端面にポンプケース37がピストン31の端面に対向して取り付けられている。ポンプケース37はPFAにより形成されており、ポンプケース37には供給側流路23と吐出側流路24とが一体に設けられている。ただし、供給側流路23と吐出側流路24とをポンプケース37とは別体としてそれぞれをポンプケース37に取り付けるようにしても良い。図3に示す薬液供給装置10bにおいてもダイヤフラム74が仕切り部材として用いられており、ポンプケース73には供給側流路23と吐出側流路24とが一体に設けられているが、供給側流路23と吐出側流路24とをポンプケース73とは別体としても良い。
ポンプケース37とシリンダ12との間には、PTFE等の樹脂材料やゴム等の弾性材料により形成されたダイヤフラム38がポンプ部材として取り付けられており、ポンプケース37とダイヤフラム38とによりポンプ20が構成されている。このダイヤフラム38によりポンプ室16と駆動室39とにポンプケース37とシリンダ12との間のスペースが仕切られており、ダイヤフラム38は仕切り膜を構成している。
図4に示す薬液供給装置10cにおいては、ダイヤフラム38により仕切られる駆動室39が上述した実施の形態におけるポンプ側の駆動室17とピストン側の駆動室33とを兼ねており、薬液供給装置10cは上述した薬液供給装置10a,10bよりも小型化することが可能となる。
図4に示す薬液供給装置10cにおいては、上述した薬液供給装置10a,10bにおけるピストン31とシリンダ12との間の隙間をシールするためのシール材59が設けられておらず、ピストン31の外周面とシリンダ12のシリンダ孔30との間の隙間は上述した装置よりも狭く設定されている。このようにシール材59を使わずに注射器のようにピストン31とシリンダ12の隙間を狭く設定してシール効果を持たせるようにした薬液供給装置においては、シール材特有のスティックスリップが無く、安定して薬液を吐出することができるという利点がある。シール材を用いないと、一般的には非圧縮性媒体の漏出や駆動室39内への気体の混入が発生しやすくシール性が劣るという欠点があるが、ピストン31とシリンダ12との間に設けられたベローズカバー61によりシール室66aを形成することによってその欠点を無くし、安定した薬液の吐出を維持しながら薬液供給装置10cの耐久性を向上させることができる。なお、上述した薬液供給装置10a,10bにおいても、隙間を狭く設定すれば、シール材59を用いないようにすることができる。
図5は本発明の他の実施の形態である薬液供給装置を示す断面図である。この薬液供給装置10dはポンプ部材が図1に示された薬液供給装置10aと同様に可撓性チューブ15により形成されており、シリンダ12およびピストン31は図3に示した薬液供給装置10bと同様の構造となっている。
上述したそれぞれの薬液供給装置10b〜10dにおいても、上述した薬液供給装置10aと同様に、ピストン31の外周面に付着して外部に漏れた非圧縮性媒体35は、シール室66a内の非圧縮性媒体35aに取り込まれることになり、装置の外部に漏出することはない。ベローズカバー61およびダイヤフラム69は摺動部を有していないので、摺動部36から漏れた非圧縮性媒体35がシール室66aから外部へ漏出することが防止される。
ピストン31を後退移動させて駆動室17,33,39内の非圧縮性媒体35が負圧状態となっても、摺動部36に連なるシール室66aはベローズカバー61により外部から遮蔽されており、両方のシール室66a,66b内に封入された非圧縮性媒体35aが駆動室33内に逆流して入り込んだとしても、外部の空気が駆動室17,33,39内に混入することはない。
しかも、気体に比べて液体等の非圧縮性媒体は分子量が大きいので、シリンダ12とピストン31との間の微細な隙間を通り難く、シール室66aから駆動室33へ入り込む非圧縮性媒体35aの量は少なくなる。このように、液体等の非圧縮性媒体35aをシール室66a,66b内に封入することにより、ポンプ20からの薬液の吐出精度を長期間にわたり高精度に維持することができる。
さらに、薬液供給装置10b,10dにおいては、ピストン31とシリンダ12との間をシールするシール材59を境としてこれの軸方向両側に非圧縮性媒体35,35aが満たされているので、シール材59とピストン31の外周面には薄膜状となった非圧縮性媒体35,35aが介在することになり、シール材59の潤滑性が高められ、シール材59の摩耗が防止される。これにより、シール材59の耐久性が向上し、装置の寿命を長くすることができる。
また、シール材59が長期使用により磨耗してシール性が低下しても、駆動室17,33内に外部から空気が混入することを防止することができ、ピストン31の往復動ストロークと可撓性チューブ15内からの薬液の吐出量とを高精度に対応させることができる。
図6は本発明の他の実施の形態である薬液供給装置を示す断面図であり、この薬液供給装置10eは、ポンプケース11が一体となったシリンダ12が駆動ボックス40内に組み込まれている。ポンプ20は図1および図5に示した場合と同様に、可撓性チューブ15により構成されている。シリンダ12はポンプケース11の軸方向の中央部にこれに平行に隣り合って一体に設けられており、ポンプケース11の一端部は駆動ボックス40の支持板41aに固定され、他端部は駆動ボックス40の支持板42aに固定されている。シリンダ12の軸方向一端部側には大径のシリンダ孔30aが形成され、他端部側にはシリンダ孔30aよりも小径のシリンダ孔30bが形成されており、これらの内径が相違する2つのシリンダ孔30a,30bからなるシリンダ孔30がシリンダ12を貫通して設けられている。
シリンダ12内にはこれに対して軸方向に移動自在にピストン31が組み付けられている。ピストン31は大径のシリンダ孔30a内に軸方向に移動自在に嵌合する大径ピストン部31aと、小径のシリンダ孔30b内に軸方向に移動自在に嵌合する小径ピストン部31bとを有する段付きのロッドにより形成されている。大径のシリンダ孔30aに形成された環状溝にはシール材59aが装着され、小径のシリンダ孔30bに形成された環状溝にはシール材59bが装着されている。大径のシリンダ孔30aと小径のシリンダ孔30bとの間に形成された径方向面75と、ピストン31の大径ピストン部31aと小径ピストン部31bとの間に形成されて径方向面75と対向する径方向面76とによりピストン側の駆動室33が区画形成されている。このように、ピストン31とシリンダ12とにより形成されるピストン側の駆動室33は、合体部材13に形成された連通孔34によりポンプ側の駆動室17に連通している。
大径ピストン部31aはシリンダ12の一端部から軸方向に突出するようになっており、小径ピストン部31bはシリンダ12の他端部から突出するようになっている。小径ピストン部31bからは連結部材77が突出しており、この連結部材77は小径ピストン部31bよりも小径となっている。
シリンダ12の一端部側には大径ピストン部31aを覆うように第1のベローズカバー61aが装着され、他端部側には小径ピストン部31bを覆うように第2のベローズカバー61bが装着されている。第1のベローズカバー61aはシリンダ12の一端部に固定される環状部63aと、大径ピストン部31aの端面に当接する端板部78aと、これらの間に一体に設けられる大径ベローズ部65aとを有しており、摺動部36に連なる第1のシール室66aを形成する。第2のベローズカバー61bはシリンダ12の他端部に固定される環状部63bと、小径ピストン部31bに連結部材77を介して当接する端板部78bと、これらの間に一体に設けられる小径ベローズ部65bとを有しており、摺動部36に連なる第2のシール室66bを形成する。
両方の端板部78a,78bは連結部材79により相互に連結され、連結部材79にはボールねじ軸46にねじ結合されるナット53が設けられたナットホルダー54aが取り付けられており、このナットホルダー54aにはガイドレール57を摺動するスライドブロック58が固定されている。したがって、モータ49によりナットホルダー54aをボールねじ軸46の軸方向に駆動すると、ピストン31が図6において上下方向に連結部材79を介して駆動される。ピストン31を図6において下方の収縮方向に駆動すると、ピストン側の駆動室33は収縮してその内部の非圧縮性媒体35は連通孔34を介してポンプ側の駆動室17内に流入し、可撓性チューブ15の内側のポンプ室16は収縮する。これに対し、ピストン31を図6において上方の膨張方向に駆動すると、ピストン側の駆動室33が膨張してポンプ側の駆動室17内の非圧縮性媒体35はピストン側の駆動室33内に流入し、ポンプ室16は膨張する。
図6に示す薬液供給装置10eにおいては、ポンプ20とシリンダ12とボールねじ軸46が相互に平行となって配置されており、図6における上下方向の寸法は、図1〜図5に示すように、ピストン31と直列にボールねじ軸46を配置した場合よりも短くなる。これに対し、ピストン31とボールねじ軸46とを直列に配置すると、上下方向の寸法は長くなるが幅方向の寸法は平行に配置した場合よりも短くなる。
大径ベローズ部65aの内側の第1のシール室66aと、小径ベローズ部65bの内側の第2のシール室66bとを連通させる連通孔68がピストン31に形成されており、それぞれのシール室66a,66b内に予め封入された非圧縮性媒体35aは連通孔68を介して連通している。したがって、駆動室33を収縮させる方向にピストン31を駆動すると、第1のシール室66aはその容積が小さくなるように収縮し、第2のシール室66bはその容積が大きくなるように膨張するので、第1のシール室66a内の非圧縮性媒体35は連通孔68を介して排出されて第2のシール室66b内に供給される。一方、駆動室33を膨張させる方向にピストン31を駆動すると、第1のシール室66aの容積は膨張し、第2のシール室66bの容積は収縮するので、第2のシール室66a内の非圧縮性媒体35aは連通孔68を介して排出されて第1のシール室66b内に供給される。
このように、ピストン31の往復動時におけるそれぞれのシール室66a,66b内の非圧縮性媒体35aの排出量と供給量とが釣り合うようになっている。つまり、第1のベローズカバー61aのベローズ部65aの平均有効断面積をAとし、大径ピストン部31aの断面積をBとし、第2のベローズカバー61bのベローズ部65bの平均有効断面積をCとし、小径ピストン部31bの断面積をDとすると、A−B=C−Dとなるように、それぞれのベローズ部65a,65bの平均有効断面積と大径ピストン部31aおよび小径ピストン部31bの断面積とが設定されている。これにより、駆動室33を膨張収縮させるときにおけるそれぞれのシール室66a,66bのピストン31の単位ストローク当たりの容積減少量と容積増加量とが相互にほぼ同一となる。
図6に示すように、ベローズカバー61はシリンダ12の両端に設けられた第1と第2の2つのベローズカバー61a,61bを有しており、大径ピストン部31aの外周面とシリンダ孔30aの内周面との間から非圧縮性媒体35が漏れ、小径ピストン部31bの外周面とシリンダ孔30bの内周面との間から非圧縮性媒体35が漏れたとしても、漏れた非圧縮性媒体35は、ベローズカバー61の内側のシール室66a,66bに入り込み、ベローズカバー61により覆われたシール室66a,66bから外部へ非圧縮性媒体の漏出が防止される。
例えば、駆動室33を収縮させる方向にピストン31を駆動したときに、両方のシール材59a,59bの少なくとも一方を介して2つのシール室66a,66bの少なくとも一方に非圧縮性媒体35が漏出した場合には、連通孔68を介して両方のシール室66a,66bは連通しており相互に同一圧となる。同様に、駆動室33を膨張させる方向にピストン31を駆動したときに、両方のシール材59a,59bの少なくとも一方を介して2つのシール室66a,66bの少なくとも一方から非圧縮性媒体35が駆動室33内に流入する。シール室66a,66b内には空気が混入されないので、駆動室33内への空気の流入が防止される。
図6に示す薬液供給装置10eにおいては、シリンダ12に2つのベローズカバー61a,61bが接着や溶接等により固定されているが、大径の端板部78aを別部材として、ベローズカバー61を構成する他の部材をシリンダ12と一体に形成するようにしても良い。また、2つのシール室66a,66bを連通させるための連通孔68はピストン31に形成されているが、シリンダ12に連通孔68を形成するようにしても良い。
図7は本発明の他の実施の形態である薬液供給装置を示す断面図であり、この薬液供給装置10fは円筒部材80を有し、この円筒部材80はポンプケース11とシリンダ12とを兼ねる合体部材となっている。シリンダ12は大径外周面81aを有する大径部82aとこれよりも小径の小径外周面81bを有する小径部82bとを有し、小径部82bの端面からは小径部82bよりも小径の連結部82cが軸方向に突出している。シリンダ12の大径部82aは端板部83aと筒部84aとを有する固定筒体85aに固定され、この固定筒体85aは駆動ボックス40の支持板42bに固定されており、端板部83aは筒部84aに対して接着ないし溶接により固定されている。シリンダ12の連結部82cは端板部83bと筒部84bとが一体となった固定筒体85bに固定され、この固定筒体85bは駆動ボックス40の支持板41bに固定されている。
円筒部材80の内周面はストレートとなっており、内側には可撓性チューブ15が配置されている。この可撓性チューブ15によりその内側のポンプ室16と外側のポンプ側の駆動室17とに仕切られている。
シリンダ12の外側には、大径外周面81aに摺動自在に嵌合される大径ピストン部86aと、小径外周面81bに摺動自在に嵌合する小径ピストン部86bとを有する中空のピストン31が軸方向に往復動自在に組み付けられている。円筒部材80からなるシリンダ12の大径部82aと小径部82bとの間に形成された径方向面87と、中空のピストン31の大径ピストン部86aと小径ピストン部86bとの間に形成されて径方向面87と対向する径方向面88とによりピストン側の駆動室33が区画形成されている。このように、ピストン31とシリンダ12とにより形成されるピストン側の駆動室33は、シリンダ12に形成された連通孔34によりポンプ側の駆動室17に連通しており、これらの駆動室33,17内には非圧縮性媒体35が封入されている。
ピストン31の大径ピストン部86aと固定筒体85aの筒部84aとの間には、シリンダ12の大径外周面81aとの間で摺動部36に連なる第1のシール室66aを形成する大径ベローズ部65aが設けられており、この大径ベローズ部65aと筒部84aとにより第1のベローズカバー61aが形成されている。ピストン31の小径ピストン部86bと固定筒体85bの筒部84bとの間には、シリンダ12の小径外周面81bとの間で摺動部36に連なる第2のシール室66bを形成する小径ベローズ部65bが設けられており、この小径ベローズ部65bと筒部84bとにより第2のベローズカバー61bが形成されている。固定筒体85aの筒部84a、大径ベローズ部65a、ピストン31、小径ベローズ部65bおよび固定筒体85bは、樹脂材料や金属材料により一体に形成されている。ただし、これらを別々の部材とし、各部材を溶接や接着により接合するようにしても良い。
薬液供給装置10fのピストン31は中空となってシリンダ12の外側に配置されており、ピストン31はナットホルダー54aに直接固定され、モータ49によりシリンダ12の外側に嵌合された状態となって直線方向つまり軸方向に往復動される。このように、シリンダ12とボールねじ軸46は、相互に平行となって配置されている。
薬液供給装置10fは、第1のベローズカバー61aの内側の第1のシール室66aと、第2のベローズカバー61bの内側の第2のシール室66bとを連通させる連通孔68がシリンダ12に形成されており、それぞれのシール室66a,66b内に予め封入された非圧縮性媒体35aは連通孔68を介して連通している。したがって、駆動室33を収縮させる方向に中空のピストン31を駆動すると、第1のシール室66aはその容積が小さくなるように収縮し、第2のシール室66bはその容積が大きくなるように膨張するので、第1のシール室66a内の非圧縮性媒体35aは連通孔68を介して排出されて第2のシール室66b内に供給される。一方、駆動室33を膨張させる方向にピストン31を駆動すると、第1のシール室66aの容積は膨張し、第2のシール室66bの容積は収縮するので、第2のシール室66b内の非圧縮性媒体35aは連通孔68を介して排出されて第1のシール室66a内に供給される。
図6に示した場合と同様に、駆動室33を膨張収縮させるときにおけるそれぞれのシール室66a,66bのピストン31の単位ストローク当たりの容積減少量と容積増加量とが相互にほぼ同一となるように、それぞれのベローズ部65a,65bの平均有効断面積A,Cとピストンの大径ピストン部86aおよび小径ピストン部86bの断面積B,Dとが設定されている。
図7に示す薬液供給装置10fにおいては、シリンダ12はポンプケース11を兼ねており、シリンダ12の内側がポンプ20となっており、外側には同軸状に中空のピストン31が軸方向に往復動自在に配置されている。このような構造によって、薬液供給装置10fは、図6に示された薬液供給装置10eよりも小型化される。なお、図7の薬液供給装置10fにおいては、2つのシール室66a,66bを連通させるための連通孔68がシリンダ12に形成されているが、シリンダ12の外側に軸方向に往復動自在となったピストン31に連通孔68を形成するようにしても良い。
図8は本発明の他の実施の形態である薬液供給装置を示す断面図であり、この薬液供給装置10gはポンプケース11とシリンダ12とが別部材により形成されており、ポンプケース11はボルト90によりシリンダ12に平行となって固定されている。ポンプケース11とシリンダ12との突き当て面から外部に非圧縮性媒体35が漏れるのを防止するために、両方の駆動室17,33を連通させるための連通孔34の一部を形成するシール駒91がポンプケース11とシリンダ12との間に挟み込まれており、シール駒91の外周面に形成された環状溝にはシール材が装着されている。
ピストン31は大径ピストン部31aと小径ピストン部31bとを有し、大径ピストン部31aが大径のシリンダ孔30aに嵌合し、小径ピストン部31bが小径のシリンダ孔30bに嵌合し、ピストン31はシリンダ12に軸方向に往復動自在に組み込まれている。ピストン31とシリンダ12との間には、図1に示した薬液供給装置10aと同様にピストン31の基端部側の外周面、つまり大径ピストン部31aを覆うように軸方向に弾性変形自在のベローズカバー61aが第1のベローズカバーとして設けられており、このベローズカバー61aにより第1のシール室66aが閉塞されている。
ピストン31の後端に連結された駆動スリーブ51は、上述した駆動スリーブ51とは相違し、支持板42に固定されたスプラインナット92に軸方向に移動自在に支持されている。スプラインナット92の内周面にはそれぞれ軸方向に延びてスプライン歯とスプライン溝とが複数形成されている。駆動スリーブ51の外周面には、スプラインナット92のスプライン溝に噛み合うスプライン歯と、スプラインナット92のスプライン歯に噛み合うスプライン溝とが複数形成され、両方のスプライン歯の間にはボールが設けられており、スプラインナット92はボールスプラインとなっている。これにより、駆動スリーブ51が取り付けられたナットホルダー54を上述したようにガイドレール57により支持する場合よりも駆動スリーブ51の摺動抵抗を小さくすることができる。なお、上述した薬液供給装置10a〜10dにおいてもピストン31とボールねじ軸46とが直列に配置されるので、駆動スリーブ51を図8に示す場合と同様にボールスプラインにより支持するようにしても良い。
シリンダ12にはピストン側の駆動室33に隣り合わせて収容孔93が形成されており、この収容孔93内にはピストン31の小径ピストン部31bが突出して収容されている。収容孔93はシリンダ12に形成された連通孔68によりシール室66aに連通している。収容孔93内には第2のベローズカバー61bが弾性変形部材として組み込まれており、このベローズカバー61bはシリンダ12の開口端に形成された段部に突き当てられて固定されるフランジ部94aと、小径ピストン部31bに連結される連結端部94bと、これらの間のベローズ部94cとを有している。これらのフランジ部94aと連結端部94bとベローズ部94cは一体となっており、弾性変形部材としてのベローズカバー61bは、小径ピストン部31bの突出端部つまり収容孔93内に突出した端部とシリンダ12の開口端部との間に設けられ、小径ピストン部31bの外側と収容孔93の内周面との間にシール室66bが形成されている。このように、ベローズカバー61bによって収容孔93は閉塞されてベローズカバー61bの外側であって小径ピストン部31bの外側と収容孔93との間に、シール室66aに連通するシール室66bが形成されている。
シリンダ12の端面には取付板95がボルト96により取り付けられており、この取付板95によってベローズカバー61bのフランジ部94aがシリンダ12に固定されている。取付板95にはベローズカバー61bの内部空間を外部に連通させる息付き孔95aが形成されている。
ピストン31の小径ピストン部31bは、駆動室33とシール室66bとの仕切り部を貫通してシール室66b内に突出し、ベローズカバー61bの連結端部94bに連結されている。小径ピストン部31bの先端には連結端部94bにねじ結合される雄ねじ98が設けられている。このようにピストン31の軸方向両側には第1のシール室66aと第2のシール室66bが設けられており、それぞれはベローズカバー61a,61bにより閉塞されている。
図8におけるベローズカバー61aは、大径ピストン部31aの外側との間でシール室66aを形成しているが、図3〜図5に示すベローズカバー61と同様に、ベローズカバー61aを大径ピストン部31aの端部とシリンダ12の開口端部との間に設けることにより、シリンダ12の内側、つまりシリンダ孔30aとベローズカバー61aとの間にシール室66aを形成するようにしても良い。その場合には、大径ピストン部31aの断面積はベローズカバー61aの平均有効断面積よりも大きくなる。
図8におけるベローズカバー61bは、シリンダ12の内側つまり収容孔93の内周面との間にシール室66bを形成しているが、図1に示すベローズカバー61と同様に、ベローズカバー61bを小径ピストン部31bの突出部とシリンダ12の開口端部との間に設けることにより、小径ピストン部31bの外側にシール室66aを形成するようにしても良い。その場合には、図8における第2のベローズカバー61bの上下を逆転させ、フランジ部94aを収容孔93の底面に固定し、連結端部94bをシリンダ12の上端面側に配置することになり、ベローズカバー61bの内側に小径ピストン部31bが入り込むことになる。
図8に示す薬液供給装置10gにおいては、上述した薬液供給装置10e,10fと同様に、駆動室33を収縮させる方向にピストン31を駆動すると、第1のシール室66aはその容積が小さくなるように収縮し、第2のシール室66bはその容積が大きくなるように膨張するので、第1のシール室66a内の非圧縮性媒体35aは連通孔68を介して排出されて第2のシール室66b内に供給される。一方、駆動室33を膨張させる方向にピストン31を駆動すると、第1のシール室66aの容積は膨張し、第2のシール室66bの容積は収縮するので、第2のシール室66b内の非圧縮性媒体35aは連通孔68を介して排出されて第1のシール室66a内に供給される。
このようなピストン31の往復動時においては、それぞれのシール室66a,66b内の非圧縮性媒体35aの排出量と供給量とが釣り合うようになっている。つまり、図6および図7に示す薬液供給装置10e,10fと同様に、駆動室33を膨張収縮させるときにおけるそれぞれのシール室66a,66bのピストン31の単位ストローク当たりの容積減少量と容積増加量とが相互にほぼ同一となるように、それぞれのベローズ部65,94cの平均有効断面積A,Cと大径ピストン部31aおよび小径ピストン部31bの断面積B,Dとが設定されている。なお、シリンダ12を収容孔93が形成された部分と他の部分との2つの部材により形成するようにしても良い。
図6〜図8に示す薬液供給装置10e〜10gにおいても、他の薬液供給装置10a〜10dと同様に、ピストン側の駆動室33をピストン31により加圧して非圧縮性媒体35を駆動室33からポンプ側の駆動室17に供給するようにしたので、ポンプ側の駆動室17の圧力を高めることができる。ピストン側の駆動室33内の非圧縮性媒体35はシール材59a,59bにより外部からシールされるが、ピストン31により駆動室33を加圧すると、ピストン31の外周面に付着した非圧縮性媒体35が駆動室33の圧力によりそのままシール材59a,59bを通過してシリンダ12の外方に案内されて漏出するおそれがある。しかし、ピストン31とシリンダ12との間の隙間から外部に漏れた非圧縮性媒体35は、シール室66a,66b内の非圧縮性媒体35aに取り込まれることになり、装置の外部に漏出することはない。ベローズカバー61a,61bは摺動部を有していないので、摺動部36から漏れた非圧縮性媒体35がシール室66a,66bから外部へ飛散することが防止される。
ピストン31を後退移動させてピストン側の駆動室33の容積を大きくする際に両方の駆動室17,33内の非圧縮性媒体35が負圧状態となっても、ピストン31とシリンダ12との間はベローズカバー61a,61bにより外部から遮蔽されており、両方のシール室66a,66b内に封入された非圧縮性媒体35aが駆動室33内に逆流して入り込んだとしても、外部の空気が駆動室17,33内に混入することはない。
しかも、気体に比べて液体等の非圧縮性媒体は分子量が大きいので、シール材59a,59bとピストン31とシリンダ12と間の微細な隙間を通り難く、シール室66a,66bから駆動室33へ入り込む非圧縮性媒体35aの量は少なくなる。このように、液体等の非圧縮性媒体35aをシール室66a,66b内に封入することにより、ポンプ20からの薬液の吐出精度を長期間にわたり高精度に維持することができる。
さらに、ピストン31とシリンダ12との間をシールするシール材59a,59bを境としてこれの軸方向両側に非圧縮性媒体35,35aが満たされているので、シール材59a,59bとピストン31の外周面には薄膜状となった非圧縮性媒体35,35aが介在することになり、シール材59a,59bの潤滑性が高められ、シール材59a,59bの摩耗が防止される。これにより、シール材59a,59bの耐久性が向上し、装置の寿命を長くすることができる。
また、シール材59a,59bが長期使用により磨耗してシール性が低下しても、駆動室17,33内に空気が混入することを防止することができ、ピストン31の往復動ストロークと可撓性チューブ15内からの薬液の吐出量とを高精度に対応させることができる。
図8の薬液供給装置10gにおけるピストン31の形状を図5に示した薬液供給装置10dのピストン31と同様の構造としても良く、その場合にはシール室66aがベローズカバー61aとシリンダ12のシリンダ孔30との間に形成される。また、第1のシール室66aと第2のシール室66bとを連通させる連通孔68はシリンダ12に形成されているが、ピストン31に連通孔68を形成するようにしても良い。さらに、図8の薬液供給装置10gにおいては、第2のベローズカバー61bに代えてダイヤフラムを弾性変形部材として用いるようにしても良い。
図6に示す薬液供給装置10eおよび図8に示す薬液供給装置10gにおいては、可撓性チューブ15によりポンプ室16とポンプ側の駆動室17とを形成するようにしているが、図3に示す薬液供給装置10bと同様に、ダイヤフラム74を仕切り膜としてポンプ室16とポンプ側の駆動室17とを形成するようにしても良い。それぞれの薬液供給装置10a〜10gにおいては、ポンプ20とシリンダ12とを分離してホースやチューブで連結するようにしても良い。また、薬液供給装置10a,10b,10d〜10gにおいても、ピストン31とシリンダ12との間の隙間を狭く設定することにより、薬液供給装置10cと同様にシール材59,59a,59bを用いないようにすることができる。
図3〜図8に示した薬液供給装置においては、薬液タンク25および塗布ノズル27等は省略されているが、それぞれの薬液供給装置は薬液を半導体ウエハ等の被塗布物に塗布することができる。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。たとえば、ピストン31をモータ49により駆動するようにしているが、駆動手段としてはモータ49に限らず、空気圧シリンダ等の他の駆動手段を使用するようにしても良い。