JP4546655B2 - Cvjブーツ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、等速ジョイントのように作動角(交差角)をもって回転する2軸に蛇腹部両端の大径装着部と小径装着部によって装着されてグリース保持および防塵などのために使用されるブーツ(本明細書においてはこのようなブーツを総称してCVJブーツという)に関する。更に、詳述すると、本発明はCVJブーツの蛇腹部の屈曲に伴う不具合を緩和させる構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、CVJブーツ101は、図5に示すように、等速ジョイント102の外輪部102aに装着される大径の装着部103と、回転軸部102bに装着される小径の装着部104とを蛇腹部105の両端に備えてなる。このCVJブーツ101は、従来主流であったゴム製の場合には2〜4山の蛇腹部を有しているが、近年普及している樹脂製の場合には、ゴムほど柔軟性がないので山の数をゴム製の場合よりも多くすることによって変形し易いように設けられている。例えば、従来の樹脂製CVJブーツ101としては、図5に示すような6山形状のほぼ円錐形状のものが公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、CVJブーツ101は中空であり、蛇腹部105の変形は、大径装着部103寄りの部分では大径装着部103と平行に、小径装着部104寄りの部分では回転軸部102bと平行にそれぞれ変形しようとする。このため、CVJブーツ101は蛇腹部105の中央で大きく曲がろうとする傾向がある。また、等速ジョイント102の作動角の中心Pと大径装着部103の取り付け中心Oとのずれに起因して、いわゆるS字屈曲しようとする。つまり、蛇腹部105の圧縮側であっても小径装着部104寄りの部分は伸長し、これに伴って大径装着部103寄りの部分がより多く潰されることになる。また、蛇腹部105の伸長側であっても小径装着部104寄りの部分は潰れることになり、これに伴って大径装着部103寄りの部分がより多く伸長することになる。これらのため、湾曲時の蛇腹部105の伸縮バランスが悪化し、伸長側に大きく湾曲した形状の変形となる。
【0004】
特にコンパクト化されたCVJブーツ101では蛇腹部105の展開長を余裕をもって確保することが困難である。このため、湾曲時に蛇腹部105の伸縮バランスが悪化すると、蛇腹部105の谷部や山部に応力が集中することになり、繰り返し屈曲に対する耐疲労性が悪化することになる。また、湾曲時に蛇腹部105の中央部分が伸長側に大きく張り出すので、その分だけ圧縮側の谷部が回転軸部102bに近づくことになり、等速ジョイント102の作動角が大きくなった場合等には圧縮側の谷部が回転軸部102bに強く接触し易くなり、摩耗を促進させてしまう。これらのため、ブーツ寿命が短くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、湾曲時の蛇腹部の伸縮バランスを良好なものにしてブーツ寿命を長くすることができるCVJブーツを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために請求項1記載の発明は、6山以上の連続した山谷からなる蛇腹部と、この蛇腹部の一端に設けられた大径装着部と、蛇腹部の他端に設けられた小径装着部とを備えたCVJブーツにおいて、蛇腹部は大径装着部寄り部分と小径装着部寄り部分とこれらの間の中央部分よりなり、これらの部分の剛性の大小関係を、中央部分>大径装着部寄り部分>小径装着部寄り部分としたものである。
【0007】
蛇腹部の中央部分は小径装着部寄り部分よりも剛性が大であり、蛇腹部が湾曲した場合にその圧縮側では小径装着部寄り部分の伸長が抑制される。また、大径装着部寄り部分は小径装着部寄り部分よりも剛性が大であり、蛇腹部が湾曲した場合にその圧縮側で大径装着部寄り部分が小径装着部寄り部分の伸長によって必要以上に潰されることもない。これらのため、湾曲時の蛇腹部の伸縮バランスが改善される。さらに、中央部分の剛性が最も大であり、湾曲時の中央部分の伸長側への大きな張り出しも抑えられる。
【0008】
また、請求項2記載のCVJブーツは、蛇腹部の谷部および山部の少なくともどちらか一方の肉厚の大小関係を、中央部分>大径装着部寄り部分>小径装着部寄り部分としたものである。肉厚を大にすることで剛性が大きくなり、肉厚を小にすることで剛性が小さくなる。したがって、蛇腹部の剛性の大小関係が、中央部分>大径装着部寄り部分>小径装着部寄り部分になる。
【0009】
さらに、請求項3記載のCVJブーツは、蛇腹部の谷部および山部の少なくともどちらか一方の肉厚の大小関係を、中央部分≧大径装着部寄り部分>小径装着部寄り部分とし、且つ中央部分の谷部の曲率半径を他の谷部の曲率半径に比べて大きくしたものである。肉厚を大にすることで剛性が大きくなり、肉厚を小にすることで剛性が小さくなる。また、谷部の曲率半径が大きければ剛性が大きくなり、谷部の曲率半径が小さければ剛性が小さくなる。したがって、蛇腹部の剛性の大小関係が、中央部分>大径装着部寄り部分>小径装着部寄り部分になる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1および図2に、本発明を適用したCVJブーツの実施形態の一例を示す。
このCVJブーツ1は、6山以上の連続した山谷からなる蛇腹部2と、この蛇腹部2の一端に設けられた大径装着部3と、蛇腹部2の他端に設けられた小径装着部4とを備えたもので、蛇腹部2は大径装着部寄り部分Aと小径装着部寄り部分Bとこれらの間の中央部分Cよりなり、これらの部分A〜Cの剛性の大小関係は、中央部分C>大径装着部寄り部分A>小径装着部寄り部分Bである。
【0012】
本実施形態のCVJブーツ1は、例えば6山の連続した山谷からなる蛇腹部2を有している。そして、小径装着部4から数えて1番目と2番目の谷部2aが小径装着部寄り部分Bの谷部、3番目と4番目の谷部2aが中央部分Cの谷部、5番目と6番目の谷部が大径装着部寄り部分Aの谷部となっている。また同様に、小径装着部4から数えて1番目と2番目の山部2bが小径装着部寄り部分Bの山部、3番目と4番目の山部2bが中央部分Cの山部、5番目と6番目の山部2bが大径装着部寄り部分Aの山部となっている。
【0013】
蛇腹部2の谷部2aおよび山部2bの少なくともどちらか一方の肉厚の大小関係は、中央部分C>大径装着部寄り部分A>小径装着部寄り部分Bとなっている。即ち、中央部分Cの谷部2aの肉厚Tc1>大径装着部寄り部分Aの谷部2aの肉厚Ta1>小径装着部寄り部分Bの谷部2aの肉厚Tb1とし、中央部分Cの山部2bの肉厚Tc2>大径装着部寄り部分Aの山部2bの肉厚Ta2>小径装着部寄り部分Bの山部2bの肉厚Tb2とすることで、中央部分Cの剛性が最も大きく、小径装着部寄り部分Bの剛性が最も小さくしている。なお、図1の実施形態では、谷部2aと山部2bの両方の肉厚を変化させて各部分A〜Cの剛性を変化させているが、谷部2aのみ、又は山部2bのみの肉厚を変化させることで各部分A〜Cの剛性を変化させるようにしても良い。
【0014】
CVJブーツ1の大径装着部3は等速ジョイント5の外輪部5aに嵌合されている。また、小径装着部4は等速ジョイント5の回転軸部5bに嵌合されている。大径装着部3および小径装着部4は、それぞれ固定具6,7により等速ジョイント5側に締め付けられて固定されている。なお、CVJブーツ1を構成する樹脂には、一般に熱可塑性樹脂が用いられている。
【0015】
このCVJブーツ1は、例えばブロー成形によって製造される。したがって、パリソンの肉厚を部分的に変えておくことで、蛇腹部2の谷部2aおよび山部2bの肉厚を各部分A〜C毎に変化させることができる。つまり、成形後に肉厚を大にする部位に対応するパリソンの部位を厚くしておき、成形後に肉厚を小にする部位に対応するパリソンの部位を薄くしておくことで、蛇腹部2をブロー成形した場合に谷部2aや山部2bの肉厚を各部分A〜C毎に変化させることができる。
【0016】
以上のように構成されたCVJブーツ1によると、等速ジョイント5に大きな作動角がつけられたときには次のように変形する。なお、図2中、蛇腹部2における回転軸部5bの上側部分は伸長側であり、下側部分は圧縮側となる。また、比較のために、各部分A〜Cの剛性が等しい蛇腹部2’の変形の様子を二点鎖線で示す。
【0017】
例えば、CVJブーツ1が図2に示すように等速ジョイント5の作動角のために曲がった場合、等速ジョイント5の作動角の中心と大径装着部3の取り付け中心とがずれていることから、S字屈曲を起こす。しかしながら、蛇腹部2の中央部分Cは小径装着部寄り部分Bよりも剛性が大であり、圧縮側の小径装着部寄り部分Bの伸長が抑制される。また、大径装着部寄り部分Aは小径装着部寄り部分Bよりも剛性が大であり、圧縮側の大径装着部寄り部分Aが小径装着部寄り部分Bの伸長によって無理に潰されることもない。したがって、S字屈曲が発生してもS字屈曲のカーブを緩やかにすることができる。即ち、S字屈曲を抑制して湾曲時の蛇腹部2の伸縮バランスが改善され、谷部2aや山部2bへの応力の集中を抑制することができる。このため、繰り返し屈曲に対する耐疲労性を向上させることができる。
【0018】
また、蛇腹部2の剛性をその中央部分Cで最も大きくしているので、中央部分Cが外側に大きく張り出すように湾曲するのを抑えることができる。即ち、上述の通りS字屈曲を抑制できることと相俟って、湾曲時に中央部分Cが伸長側に大きく張り出してしまうのを抑えることができる。このため、等速ジョイント5の作動角が大きくなった場合にも、蛇腹部2の圧縮側の谷部2aが回転軸部5bに強く接触するのを防止することができ、蛇腹部2の摩耗防止を図ることができる。即ち、耐疲労性を向上させると共に蛇腹部2の摩耗を防止して、ブーツ寿命を長くすることができる。
【0019】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の説明では、蛇腹部2の各部分A〜Cの剛性の大小関係を上述のものとするために、蛇腹部2の谷部2aおよび山部2bの少なくともどちらか一方の肉厚の大小関係を中央部分C>大径装着部寄り部分A>小径装着部寄り部分Bとしていたが、これに限るものではない。例えば、蛇腹部2の谷部2aおよび山部2bの少なくともどちらか一方の肉厚の大小関係を、中央部分C≧大径装着部寄り部分A>小径装着部寄り部分Bとし、且つ中央部分Cの谷部2aの曲率半径を他の谷部2aの曲率半径に比べて大きくしても良い。例えば、図3に示すように、蛇腹部2の山部2bの肉厚の大小関係を、Tc2≧Ta2>Tb2とし、中央部分Cの谷部2aの曲率半径を大径装着部寄り部分A及び小径装着部寄り部分Bの谷部2aの曲率半径に比べて大きく、即ち、中央部分Cの谷部2aの開き角θcを大径装着部寄り部分A及び小径装着部寄り部分Bの谷部2aの開き角θa,θbに比べて大きくするようにしても良い。この場合にも、各部分A〜Cの剛性の大小関係を中央部分C>大径装着部寄り部分A>小径装着部寄り部分Bとすることができる。
【0020】
また、谷部2aや山部2bの肉厚を変化させたり、谷部2aの曲率半径を変化させることで、蛇腹部2の剛性を部分毎に変化させることに代えて、例えば図4に示すように、剛性を大きくしたい部分の谷部2aにゴムリング等の補強部材8を設けたり、その補強部材8の締付力の強さを変化させることで、蛇腹部2の剛性を各部分A〜C毎に変化させるようにしても良い。
【0021】
さらに、上述の説明では谷部2a及び山部2bの個数が6個の蛇腹部2を例にしていたが、谷部2a及び山部2bの個数は6個に限るものではなく、7個以上であっても良いことは勿論である。
【0022】
【実施例】
蛇腹部2の山部2bと谷部2aの肉厚、谷部2aの曲率半径を、表1又は表2に示す寸法にしたCVJブーツ1を製作した。表1のCVJブーツ1では、谷部2aの肉厚が大径装着部寄り部分Aと小径装着部寄り部分Bとで等しくなっているが、山部2bの肉厚を相違させることで、各部分A〜Cの剛性の大小関係を中央部分C>大径装着部寄り部分A>小径装着部寄り部分Bとしている。また、表2のCVJブーツ1では、山部2bおよび谷部2aの肉厚がともに大径装着部寄り部分Aと中央部分Cとで等しくなっているが、中央部分Cの曲率半径を大径装着部寄り部分A及び小径装着部寄り部分Bの曲率半径よりも大きくすることで、各部分A〜Cの剛性の大小関係を中央部分C>大径装着部寄り部分A>小径装着部寄り部分Bとしている。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
なお、山部2bと谷部2aの肉厚について寸法の許容誤差を考慮すると、各部分A〜Cの肉厚の大小関係が逆転又は等しくなることも考えられるが、ここでの許容誤差は大小関係の逆転までも含めたものではない。つまり、各部分A〜Cの肉厚の大小関係が上述の関係を維持した状態で許容される誤差を設定したものである。
【0026】
表1のCVJブーツ1について、各部分A〜Cの剛性の大小関係を確認するために実験を行った。実験は、CVJブーツ1に荷重をかけて軸方向に20mmだけ潰し、そのときの谷部2aの開き角を測定する方法で行った。各部分A〜Cを代表する谷部2aとして、小径装着部4側から数えて2番目の谷部2a(小径装着部寄り部分B)、4番目の谷部2a(中央部分C)、6番目の谷部2a(大径装着部寄り部分A)を選択した。比較のために、蛇腹部2の全ての谷部2aの肉厚が等しく且つ全ての山部2bの肉厚が等しいCVJブーツを製作して同じ実験を行った。なお、CVJブーツ1に荷重をかける前のフリーの状態でそれぞれの谷部2aの開き角を測定したところ、60度であった。実験の結果を表3に示す。
【0027】
【表3】
【0028】
大きく潰れるほど谷部2aの開き角が小さくなるので、小径装着部寄り部分B、大径装着部寄り部分A、中央部分Cの順番に大きく潰れていることが判る。そして、剛性が大きければ潰れにくいので、蛇腹部2の剛性は中央部分C>大径装着部寄り部分A>小径装着部寄り部分Bであることが判った。また、この結果から、表2のCVJブーツ1についても蛇腹部2の剛性が中央部分C>大径装着部寄り部分A>小径装着部寄り部分Bであることが容易に推測される。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1記載のCVJブーツでは、蛇腹部が大径装着部寄り部分と小径装着部寄り部分とこれらの間の中央部分よりなり、これらの部分の剛性の大小関係を、中央部分>大径装着部寄り部分>小径装着部寄り部分としているので、湾曲時のS字屈曲を抑制して蛇腹部をバランス良く伸縮させることができる。このため、繰り返し屈曲に対する耐疲労性を向上させることができる。
また、湾曲時における蛇腹部の中央部分の伸長側への大きな張り出しが抑えられるので、蛇腹部が等速ジョイントの回転軸部に接触し難くなり、蛇腹部の摩耗を抑えてブーツ寿命を長くすることができる。
【0030】
また、請求項2記載のCVJブーツでは、蛇腹部の谷部および山部の少なくともどちらか一方の肉厚の大小関係を、中央部分>大径装着部寄り部分>小径装着部寄り部分としているので、蛇腹部の剛性の大小関係を中央部分>大径装着部寄り部分>小径装着部寄り部分にすることができる。
【0031】
さらに、請求項3記載のCVJブーツでは、蛇腹部の谷部および山部の少なくともどちらか一方の肉厚の大小関係を、中央部分≧大径装着部寄り部分>小径装着部寄り部分とし、且つ中央部分の谷部の曲率半径を他の谷部の曲率半径に比べて大きくしているので、蛇腹部の剛性の大小関係を中央部分>大径装着部寄り部分>小径装着部寄り部分にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したCVJブーツの実施形態の一例を示す断面図である。
【図2】同CVJブーツの湾曲時の様子を示す断面図である。
【図3】本発明を適用したCVJブーツの他の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明を適用したCVJブーツの更に他の実施形態を示す断面図である。
【図5】従来のCVJブーツの断面図である。
【符号の説明】
1 CVJブーツ
2 蛇腹部
2a 谷部
2b 山部
3 大径装着部
4 小径装着部
A 大径装着部寄り部分
B 小径装着部寄り部分
C 中央部分
Claims (3)
- 6山以上の連続した山谷からなる蛇腹部と、この蛇腹部の一端に設けられた大径装着部と、前記蛇腹部の他端に設けられた小径装着部とを備えたCVJブーツにおいて、前記蛇腹部は大径装着部寄り部分と小径装着部寄り部分とこれらの間の中央部分よりなり、これらの部分の剛性の大小関係は、中央部分>大径装着部寄り部分>小径装着部寄り部分であることを特徴とするCVJブーツ。
- 前記蛇腹部の谷部および山部の少なくともどちらか一方の肉厚の大小関係が、中央部分>大径装着部寄り部分>小径装着部寄り部分であることを特徴とする請求項1記載のCVJブーツ。
- 前記蛇腹部の谷部および山部の少なくともどちらか一方の肉厚の大小関係が、中央部分≧大径装着部寄り部分>小径装着部寄り部分であり、且つ前記中央部分の谷部の曲率半径が他の谷部の曲率半径に比べて大きいことを特徴とする請求項1記載のCVJブーツ。
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