JP4544077B2 - 信号処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、信号処理装置に関し、特に、人体などを通信媒体とした通信の効率をより高めることができるようにする信号処理装置に関する。
近年、無線通信の技術も進歩しており、例えば、2.4GHz帯域を用いる無線伝送方式(いわゆるBluetooth)によりパソコン、周辺機器、家電、携帯電話機など、デバイスを問わないデータ交換を実現が期待されているほか、人体など通常の通信媒体とはことなる導体を用いて送信機と受信機による通信を行う技術も提案されている(例えば、特許文献1または特許文献2参照。)。
特表平11−509380号公報 特開10−229357号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、送信器、人体、受信器、アースグラウンドと結合された閉回路が構成され、信号が伝達されるというものであるため、送信器および受信器の人体から遠い方の電極とアースグラウンドとの結合はきわめて希薄で、実質的には閉回路を構成しにくい。また、特許文献2の技術では、送信器、人体、受信器、大気と結合された閉回路が構成され、信号を伝達するというものであるため、大気を介して結合するには、送信器と受信器がかなり近くに配置されなければならない。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、人体などを通信媒体とした通信の効率をより高めることができるようにするものである。
本発明の一側面は、人体を含む誘電体を通信媒体として通信し、かつ、前記通信媒体に装着された他の信号処理装置と通信する通信装置において、空間に向けられ、信号の送受信のための基準電位を与える基準電極と、前記通信媒体に接するように設けられ、通信媒体を介して伝送させる信号を送信または受信するための信号電極と、前記基準電極と、前記信号電極との間の電位差を変化させることで、前記他の信号処理装置の前記基準電極と、前記信号電極との間の電位差を変化させて前記電位差に対応する信号の送信または受信を制御する通信制御手段とを含む信号処理装置であって、前記基準電極が複数の電極で構成され、それぞれの前記電極と空間との間の静電容量が互いに並列になるように前記送受信制御手段に接続される信号処理装置である。
前記複数の電極は、それぞれ円形の導体板で構成されるようにすることができる。
前記複数の電極は、それぞれ正方形の導体板で構成されるようにすることができる。
前記複数の電極は、同一平面内においてそれぞれ所定の間隔だけ離れた位置に配置されるようにすることができる。
前記複数の電極は、積層されて配置されるようにすることができる。
本発明の一側面においては、空間に向けられ、信号の送受信のための基準電位を与える基準電極と、通信媒体に接するように設けられ、通信媒体を介して伝送させる信号を送信または受信するための信号電極と、基準電極と、信号電極との間の電位差を変化させることで、他の信号処理装置の基準電極と、信号電極との間の電位差を変化させて電位差に対応する信号の送信または受信を制御する通信制御手段とを含む信号処理装置の、基準電極が複数の電極で構成され、それぞれの電極と空間との間の静電容量が互いに並列になるように前記通信制御手段に接続される。
本発明の一側面によれば、人体など通信媒体とした通信の効率をより高めることができる。
以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、発明の詳細な説明に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、発明の詳細な説明に記載されていることを確認するためのものである。従って、発明の詳細な説明中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
本発明の一側面は、人体を含む誘電体を通信媒体として通信し、かつ、前記通信媒体に装着された他の信号処理装置と通信する通信装置において、空間に向けられ、信号の送受信のための基準電位を与える基準電極(例えば、図15の基準電極1102)と、前記通信媒体に接するように設けられ、通信媒体を介して伝送させる信号を送信または受信するための信号電極(例えば、図15の信号電極1101)と、前記基準電極と、前記信号電極との間の電位差を変化させることで、前記他の信号処理装置の前記基準電極と、前記信号電極との間の電位差を変化させて前記電位差に対応する信号の送信または受信を制御する通信制御手段とを含む信号処理装置であって、前記基準電極が複数の電極で構成され、それぞれの前記電極と空間との間の静電容量が互いに並列になるように前記送受信制御手段に接続される信号処理装置である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。最初に本発明において利用する無線通信について図1乃至図8を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明を適用した通信システムの一実施形態に係る構成例を示す図である。
図1において、通信システム100は、送信装置110、受信装置120、および通信媒体130により構成され、送信装置110と受信装置120が通信媒体130を介して信号を送受信するシステムである。つまり、通信システム100において、送信装置110より送信された信号は、通信媒体130を介して伝送され、受信装置120により受信される。
送信装置110は、送信信号電極111、送信基準電極112、および送信部113を有している。送信信号電極111は、通信媒体130を介して伝送させる信号を送信するための電極であり、信号の高低差を判定するための基準点を得るための電極である送信基準電極112よりも通信媒体130に対して静電結合が強くなるように設けられる。送信部113は、送信信号電極111と送信基準電極112との間に設けられ、これらの電極間に受信装置120へ伝達したい電気信号(電位差)を与える。
受信装置120は、受信信号電極121、受信基準電極122、および受信部123を有している。受信信号電極121は、通信媒体130を介して伝送される信号を受信するための電極であり、信号の高低差を判定するための基準点を得るための電極である受信基準電極122よりも通信媒体130に対して静電結合が強くなるように設けられる。受信部123は、受信信号電極121と受信基準電極122との間に設けられ、これらの電極間に生じた電気信号(電位差)を所望の電気信号に変換し、送信装置110の送信部113で生成された電気信号を復元する。
通信媒体130は、電気信号を伝達可能な物理的特性を有する物質、例えば、導電体や誘電体等により構成される。例えば、通信媒体130は、金属に代表される導電体(例えば、銅、鉄、またはアルミ等)により構成される。また例えば、通信媒体130は、純水、ゴム、ガラス、若しくは食塩水等の電解液、または、これらの複合体である生体等の誘電体により構成される。この通信媒体130はどのような形状であってもよく、例えば、線状、板状、球状、角柱、または円柱等、任意の形状であってもよい。
このような通信システム100において、最初に、各電極と、通信媒体または装置周辺空間との関係について説明する。なお、以下において、説明の便宜上、通信媒体130が完全導体であるものとする。また、送信信号電極111と通信媒体130との間、および、受信信号電極121と通信媒体130との間には空間が存在し、電気的な結合はないものとする。すなわち、送信信号電極111または受信信号電極121と、通信媒体130との間には、それぞれ、静電容量が形成される。
また、送信基準電極112は送信装置110周辺の空間に向くように設けられており、受信基準電極122は受信装置120周辺の空間に向くように設けられている。一般的に、導体が空間に存在する場合、その導体の表面近傍の空間に静電容量が形成される。例えば、導体の形状を半径r[m]の球としたとき、その静電容量Cは、以下の式(1)のように求められる。
Figure 0004544077
式(1)において、πは円周率を示す。また、εは、導体を取り囲む媒質の誘電率を示し、以下の式(2)のように求められる。
Figure 0004544077
ただし、式(2)において、ε0は、真空中の誘電率を示し、8.854×10−12[F/m]である。また、εrは比誘電率を示し、真空の誘電率ε0に対する比率を示す。
上述した式(1)に示されるように半径rが大きい程、静電容量Cは大きくなる。なお、球以外の複雑な形状の導体の静電容量Cの大きさは、上述した式(1)のように、簡単に表現することはできないが、その導体の表面積の大きさに応じて変化することは明らかである。
以上のように、送信基準電極112は、送信装置110周辺の空間に対して静電容量を形成し、受信基準電極122は、受信装置120周辺の空間に対して静電容量を形成する。すなわち、送信装置110および受信装置120の外部の仮想無限遠点からみたとき、送信基準電極112や受信基準電極122の電位は固定的であり、変動しにくいことを示している。
次に、通信システム100における通信の仕組みの原理について説明する。なお、以下において、説明の便宜上、または前後関係等から、コンデンサを単に静電容量と表現する場合もあるが、これらは同意である。
また、以下において、図1の送信装置110と受信装置120は、装置間が十分な距離を保つように配置されており、相互の影響を無視できるものとする。また、送信装置110において、送信信号電極111は通信媒体130とのみ静電結合し、送信基準電極112は送信信号電極111に対して十分な距離が置かれ、相互の影響は無視できる(静電結合しない)ものとする。同様に、受信装置120において、受信信号電極121は通信媒体130とのみ静電結合し、受信基準電極122は受信信号電極121に対して十分な距離が置かれ、相互の影響は無視できる(静電結合しない)ものとする。さらに、実際には、送信信号電極111、受信信号電極121、および通信媒体130も、空間内に配置されている以上、それぞれ空間に対する静電容量を有することになるが、ここでは、説明の便宜上、それらを無視できるものとする。
図2は、図1の通信システム100を等価回路で表した図である。通信システム200は、通信システム100を等価回路で表したものであり、実質的に通信システム100と等価である。
すなわち、通信システム200は、送信装置210、受信装置220、および接続線2230を有しているが、この送信装置210は図1に示される通信システム100の送信装置110に対応し、受信装置220は図1に示される通信システム100の受信装置120に対応し、接続線230は図1に示される通信システム100の通信媒体130に対応する。
図2の送信装置210において、信号源213−1および接地点213−2は、図1の送信部113に対応する。信号源213−1は、送信用の信号として、特定周期ω×t[rad]の正弦波を生成する。ここで、t[s]は時間を示す。また、ω[rad/s]は角周波数を示し、以下の式(3)のように表すことができる。
Figure 0004544077
式(3)において、πは円周率、f[Hz]は信号源213−1が生成する信号の周波数を示す。接地点213−2は、送信装置210内における回路のグランドに接続される点である。つまり信号源213の端子の一方は、送信装置210内における回路の、所定の基準電位に設定される。
Cte214は、コンデンサであり、図1の送信信号電極111と通信媒体130との間の静電容量を表すものである。つまり、Cte214は、信号源213−1の接地点213−2と反対側の端子と、接続線230との間に設けられている。また、Ctg215は、コンデンサであり、図1の送信基準電極112の空間に対する静電容量を表すものである。Ctg215は、信号源213−1の設置点213−2側の端子と、空間上の、送信装置110を基準とした無限遠点(仮想点)を示す接地点216との間に設けられている。
図2の受信装置220において、Rr223−1、検出器223−2、および接地点223−3は、図1の受信部123に対応する。Rr223−1は、受信信号を取り出すための負荷抵抗(受信負荷)であり、増幅器により構成される検出器223−2は、このRr223−1の両側の端子間の電位差を検出して増幅する。接地点223−3は、受信装置220内における回路のグランドに接続される点である。つまりRr223−1の端子の一方(検出器223−2の入力端子の一方)は、受信装置220内における回路の、所定の基準電位に設定される。
なお、検出器223−2が、さらに、例えば、検出した変調信号を復調したり、検出された信号に含まれる符号化された情報を復号したりする等、その他の機能を備えるようにしてもよい。
Cre224は、コンデンサであり、図1の受信信号電極121と通信媒体130との間の静電容量を表すものである。つまり、Cre224は、Rr223−1の接地点223−3と反対側の端子と、接続線230との間に設けられている。また、Crg225は、コンデンサであり、図1の受信基準電極122の空間に対する静電容量を表すものである。Crg225は、Rr223−1の設置点223−3側の端子と、空間上の、受信装置120を基準とした無限遠点(仮想点)を示す接地点226との間に設けられている。
接続線230は、完全導体である通信媒体130を表している。なお、図2の通信システム200において、Ctg215とCrg225は、等価回路上、接地点216と接地点226を介して、互いに電気的に接続されているように表現されているが、実際には、これらは互いに電気的に接続されている必要はなく、それぞれが、送信装置210または受信装置220周辺の空間に対して静電容量を形成していればよい。つまり、接地点216と接地点226が電気的に接続されている必要はなく、互いに独立であってもよい。
なお、導体があれば、周囲の空間に対して、必ずその表面積の大きさに比例した静電容量が形成される。つまり、例えば、送信装置210と受信装置220は、互いにどんなに離れていてもよい。例えば、図1の通信媒体130が完全導体である場合、接続線230の導電率は無限大とみなせるので、接続線230の長さは通信に影響しない。なお、通信媒体130が導電率の十分な導体であれば、実用上、送信装置と受信装置間との距離は通信の安定性に影響しない。
通信システム200において、信号源213−1、Rr223−1、Cte214、Ctg215、Creコンデンサ224、およびCrg225から成る回路が形成されている。直列接続された4つのコンデンサ(Cte214、Ctg215、Creコンデンサ224、およびCrg225)の合成容量Cxは以下の式(4)で表すことができる。
Figure 0004544077
また、信号源213−1が生成する正弦波vt(t)を、以下の式(5)のように表す。
Figure 0004544077
ここで、Vm[V]は信号源電圧の最大振幅電圧を表しており、θ[rad]は初期位相角を表している。つまり、信号源213−1による電圧の実効値Vtrms[V]は以下の式(6)のように求めることができる。
Figure 0004544077
回路全体での合成インピーダンスZは、次の式(7)のように求めることができる。
Figure 0004544077
つまり、Rr223−1の両端に生じる電圧の実効値Vrrmsは式(8)のように求めることができる。
Figure 0004544077
従って、式(8)に示されるように、Rr223−1の抵抗値が大きい程、また、静電容量Cxが大きく、信号源213−1の周波数f[Hz]が高い程、1/((2×π×f×Cx)2)の項が小さくなり、Rr223−1の両端に、より大きな信号を生じさせることができる。
例えば、送信装置210の信号源213−1による電圧の実効値Vtrmsを2[V]に固定し、信号源213−1が生成する信号の周波数fを1[MHz]、10[MHz]、または100[MHz]とし、Rr223−1の抵抗値を10K[Ω]、100K[Ω]、または1M[Ω]とし、回路全体の静電容量Cxを0.1[pF]、1[pF]、または10[pF]としたときの、Rr223−1の両端に生じる電圧の実効値Vrrmsの計算結果は図3に示される表250のようになる。
表250に示されるように、実効値Vrrmsの計算結果は、その他の条件が同じ場合、周波数fが1[MHz]のときよりも10[MHz]のときの方が大きくなり、受信負荷であるRr223−1の抵抗値が10K[Ω]のときよりも1M[Ω]の時のほうが大きくなり、静電容量Cxが0.1[pF]のときよりも10[pF]の時のほうが大きな値をとる。すなわち、周波数fの値、Rr223−1の抵抗値、および静電容量Cxが大きいほど、大きな実効値Vrrms得られる。
また、表250より、ピコファラド以下の静電容量でも、Rr223−1には電気信号が発生することが分かる。すなわち、伝送される信号の信号レベルが微小な場合、受信装置220の検出器223−2によって検出した信号を増幅する等すれば、通信が可能となる。
以上の結果から、基本原理として、空間と成す静電容量を利用することによって、送信装置から受信装置への信号の受け渡しが可能である。
以上において説明した送信基準電極や受信基準電極の空間に対する静電容量は、各電極の位置に空間が存在すれば形成可能である。従って、上述した送信装置および受信装置は、通信媒体によって送信信号電極と受信信号電極が結合されていれば、互いの距離に依存せずに通信の安定性を得ることができる。
次に、送信装置と受信装置の間の距離の大きさによる通信への影響について説明する。上述したように、本発明の原理によれば、送信基準電極と受信基準電極の空間に十分な静電容量を形成できていれば、送受信装置間近辺の大地による経路や、その他の電気的な経路を必要とせず、送信信号電極と受信信号電極の距離に依存しない。従って、例えば、図4に示される通信システム700のように、送信装置710と受信装置720を遠距離におき、十分な導電性あるいは誘電性を持った通信媒体730により送信信号電極711、受信信号電極721を静電的に結合することによって通信が可能である。このとき、送信基準電極712は送信装置710の外部の空間と静電結合し、受信基準電極722は受信装置720の外部の空間と静電結合する。従って、送信基準電極712と受信基準電極722は、互いに静電結合する必要がない。但し、通信媒体730がより長く、大きくなることによって空間に対する静電容量も増加するため、各パラメータを決定する際にこれらについて考慮する必要がある。
なお、図4の通信システム700は、図1の通信システム100に対応するシステムであり、送信装置710は送信装置110に対応し、受信装置720は受信装置120に対応し、通信媒体730は通信媒体130に対応する。
送信装置710において、送信信号電極711、送信基準電極712、および信号源713−1は、それぞれ、送信信号電極111、送信基準電極112、および送信部113(またはその一部)に対応する。同様に、受信装置720において、受信信号電極721、受信基準電極722、およびRr723−1は、それぞれ、受信信号電極121、受信基準電極122、および受信部123(またはその一部)に対応する。
従って、これらの各部についての説明は省略する。
以上のように通信システム700は、物理的な基準点経路を不要とし、通信信号伝達経路のみによる通信を実現することができる。
なお、以上においては、送信信号電極および受信信号電極が通信媒体と非接触であるように説明したが、これに限らず、送信基準電極および受信基準電極がそれぞれの装置周辺空間との間で十分な静電容量が得られるのであれば、送信信号電極と受信信号電極の間を、導電性を有する通信媒体で接続するようにしてもよい。
次に、以上のような通信システムの具体的な適用例について説明する。例えば、以上のような通信システムは、生体を通信媒体とすることもできる。図5は、人体を介して通信を行う場合の通信システムの例を示す模式図である。図5において、通信システム750は、人体の腕部に取り付けられた送信装置760から音楽データを送信し、人体の頭部に取り付けられた受信装置770によってその音楽データを受信して音声に変換し、出力してユーザに視聴させるシステムである。この通信システム750は、上述した通信システム(例えば、通信システム100)に対応したシステムであり、送信装置760や受信装置770は、それぞれ、送信装置110や受信装置120に対応する。また、通信システム750において人体780は、通信媒体であり、図1の通信媒体130に対応する。
つまり、送信装置760は、送信信号電極761、送信基準電極762、および送信部763を有しており、それぞれ、図1の送信信号電極111、送信基準電極112、および送信部113に対応する。また、受信装置770は、受信信号電極771、受信基準電極772、および受信部773を有しており、それぞれ、図1の受信信号電極121、受信基準電極122、および受信部123に対応する。
従って、通信媒体である人体780に、送信信号電極761および受信信号電極771が接触または近接されるように、送信装置760および受信装置770が設置される。送信基準電極762および受信基準電極772は、空間に対して静電容量を持てばよいので、周辺に大地との結合や、送受信装置(または電極)同士の結合も不要である。
図6は、通信システム750を実現する他の例について説明する図である。図6において、受信装置770は、人体780に対して足裏部において接触(または近接)し、人体780の腕部に取り付けられた送信装置760との間で通信を行う。この場合も、通信媒体である人体780に接触(または近接)されるように、送信信号電極761と受信信号電極771が設けられ、空間に向けて送信基準電極762と受信基準電極772が設けられている。特に、大地を通信経路の1つとしていた従来技術では実現不可能な応用例である。
このように、本発明によれば、人体などを通信媒体として、ケーブルなどの有線設備を設けることなく、無線通信を行うことが可能となる。
以上のような通信システムにおいて、通信媒体に流す信号の変調方式としては、送信装置と受信装置の両方において対応可能であれば、特に制限はなく、通信システム全体の系の特性を踏まえた上で、最適な方式を選択することが出来る。具体的に変調方式としては、ベースバンド、または振幅変調、または周波数変調されたアナログ信号か、ベースバンド、または振幅変調、または周波数変調、または位相変調されたデジタル信号のうちのいずれか1つ、または複数の混合であってもよい。
さらに、以上のような通信システムにおいて、1つの通信媒体を利用して、複数の通信が成立させ、全二重通信や、単一の通信媒体による複数の装置同士による通信等を実行することができるようにしてもよい。
このような多重通信を実現する方法の例を説明する。1つ目は、スペクトラム拡散方式を適用させる方法である。この場合、送信装置と受信装置の間で互いに周波数帯域幅と特定の時系列コードを取り決めておく。そして送信装置は、この周波数帯域幅の中で、もとの信号を時系列コードによって周波数的に変化させ、周波数帯域全体に拡散させてから送信する。受信装置は、この拡散した成分を受信した後、その受信した信号を積分することで受信信号を復号する。
周波数の拡散によって得られる効果を説明する。シャノンとハートレーのチャネル容量の定理によれば、次の式が成り立つ。
Figure 0004544077
ここで、C[bps]はチャネル容量を示し、通信路に流すことの出来る理論上の最大データレートを示す。B[Hz]はチャネル帯域幅を示す。S/Nは信号対ノイズ電力比(SN比)を示す。さらに、上式をマクローリン展開し、S/Nが低いものとすると、上述した式(9)は、次の式(10)のように近似することができる。
Figure 0004544077
これにより、例えばS/Nがノイズフロア以下のレベルであったとすると、S/N<<1となるが、チャネル帯域幅Bを広げることで、チャネル容量Cを所望のレベルに引き上げることが出来る。
時系列コードを通信路毎に異なるようし、周波数拡散の動きを異なるようにすれば、相互に干渉することなく周波数が拡散し、相互の混信がなくなることで、同時に複数の通信を行うことができる。
2つ目は、送信装置と受信装置の間で互いに周波数帯域幅を決め、それをさらに複数の領域に分割する周波数分割方式を適用させる方法である。この場合、送信装置(または受信装置)は、特定の周波数帯域割り振りの規則に従うか、通信開始時に空いている周波数帯域を検出し、その検出結果に基づいて周波数帯域の割り振りを行う。
つまり、通信経路毎に異なる周波数帯域を利用することにより、相互の混信を抑制し、1つの通信媒体において、同時に複数の通信を行うことができる。また、周波数分割方式を用いることにより、多対一通信や、多対多通信も行うことができる。
3つ目は、送信装置と受信装置の間で互いに通信時間を複数に分割する時分割方式を適用させる方法である。この場合、送信装置(または受信装置)は、特定の時間分割規則に従うか、通信開始時に空いている時間領域を検出し、その検出結果に基づいて通信時間の分割を行う。
つまり、通信経路毎に異なる時間帯域において通信を行うことにより、相互の混信を抑制し、1つの通信媒体において、同時に複数の通信を行うことができる。また、時分割方式を用いることにより、多対一通信や、多対多通信も行うことができる。
さらに、上述した以外の方法として、1つ目から3つ目までの通信方式のうちの2つ以上を組み合わせるようにしてもよい。
送信装置および受信装置が、同時に複数の他の装置と通信を行うことができるということは、特定のアプリケーションにおいては、特に重要になる。例えば、交通機関のチケットへの応用を想定すると、定期券の情報を有する装置Aと電子マネー機能を有する装置Bの両方を所持した利用者が、自動改札機を利用する際、上記のような方式を使用することで、装置A及び装置Bと同時に通信することで、例えば、利用区間が定期券外の区間も含まれていた場合に、不足金額分を装置Bの電子マネーから差し引くといった便利な用途に利用することが出来る。
以上のような送信装置と受信装置との間の通信において実行される通信処理の流れについて、図1の通信システム100の送信装置110と受信装置120との通信の場合を例に、図7のフローチャートを参照して説明する。
送信装置110の送信部113は、ステップS11において、送信対象となる信号を発生し、ステップS12において、その発生した信号を、送信信号電極111を介して、通信媒体130上に送信する。信号を送信すると送信装置の送信部113は、通信処理を終了する。送信装置110より送信された信号は、通信媒体130を介して受信装置120に供給される。受信装置120の受信部123は、ステップS21において、受信信号電極121を介して、その信号を受信し、ステップS22において、その受信した信号を出力する。受信した信号を出力した受信部123は、通信処理を終了する。
以上のように、送信装置110および受信装置120は、通信媒体130を介して、複雑な処理を必要とせずに、単純な処理により、基本的な通信を行うことができる。つまり、送信装置110および受信装置120は、基準電極を用いて閉回路を構築する必要がないため、信号電極を介して送受信するのみで、環境に影響されずに安定した通信処理を容易に行うことができる。これにより送信装置110および受信装置120(通信システム100)は、環境に影響されずに安定した通信を行うための通信処理の負荷を軽減し、製造コストを削減することもできる。また、通信処理の構造が単純化されることにより、通信システム100は、変調、符号化、暗号化、または多重化など、多様な通信方式を容易に併用することができる。
なお、以上の通信システムにおいては、送信装置と受信装置を別体として構成するように説明したが、これに限らず、上述した送信装置と受信装置の両方の機能を有する送受信装置を用いて通信システムを構築するようにしてもよい。
図8は、本発明を適用した通信システムの他の構成例を示す図である。
図8において、通信システム950は、送受信装置961、送受信装置962、および通信媒体130を有する。通信システム950は、送受信装置961と送受信装置962が通信媒体130を介して双方向に信号を送受信するシステムである。
送受信装置961は、図1の送信装置110と同様の送信部110と、受信装置120と同様の受信部120の両方の構成を有している。すなわち、送受信装置961は、送信信号電極111、送信基準電極112、送信部113、受信信号電極121、受信基準電極122、および受信部123を有している。
つまり送受信装置961は、送信部110を用いて通信媒体130を介して信号を送信し、受信部120を用いて通信媒体130を介して供給される信号を受信する。このとき、送受信装置961は、送信部110による通信と、受信部120による通信とが混信しないように構成されている。
送受信装置962は、送受信装置961と同様の構成を有し、同様に動作するのでその説明を省略する。つまり送受信装置961と送受信装置962は、互いに同様の方法で、通信媒体130を介して、双方向に通信を行う。
このようにすることにより、通信システム950(送受信装置961および送受信装置962)は、ケーブルなどの有線設備を設けることなく、双方向の無線通信を容易に実現することができる。
なお、図8の例では、送受信で異なる電極を用いているが、信号電極、および基準電極を一組だけ設け、送受信を切り替えるようにしてもよい。
ところで、図1乃至図8を参照して上述した無線通信においては、図2と図3を参照して説明したように、周波数fの値、およびRr223−1の抵抗値が同じであれば、静電容量Cxが大きいほど、大きな実効値Vrrms得られることが分かっている。
ここで、実効値Vrrmsは、図2の受信装置220のRr223−1の両端に生じる電圧の実効値であり、静電容量Cxは、直列接続された4つのコンデンサ(Cte214、Ctg215、Creコンデンサ224、およびCrg225)の合成容量である。
したがって、送信装置210と受信装置220とで構成される通信システム200の全体の静電容量Cxの値を大きくすることで、受信装置220により検出される信号の振幅をより大きくし、より正確に信号を受信することが可能となる。換言すれば、全体の静電容量Cxの値が大きいほど、通信システム200の通信能力(信号を確実に伝送する能力)が高いといえる。
例えば、図2の通信システム200において、送信装置210が小型の携帯端末などで構成され、受信装置220が専用のリーダライタなどで構成され、図6の場合のように接続線230に代えて携帯端末を所有する(携帯する)ユーザの人体が通信媒体となり信号が伝送される場合について考えると、図2のCtg215は、携帯端末の基準電極と空間上の無限遠点との間の静電容量に対応し、Crg225は、リーダライタの基準電極と空間上の無限遠点との間の静電容量に対応する。また、Cte214またはCre224は、それぞれ携帯端末の信号電極、またはリーダライタの信号電極と人体との間に形成される静電容量に対応する。
ここで、通信システム200の通信能力を高くするためには、上述したように全体の静電容量を大きくする必要がある。導体と空間の間に形成される静電容量は、上述したように導体の表面積の大きさに応じて変化するので、通信システム200の全体の静電容量を大きくするためには、導体である信号電極または基準電極の表面積を大きくすることが効果的である。
しかしながら、この場合人体に接するように設けられる信号電極の表面積の大きさは、人体との接触面積に限られるため、人体の形状や機能を考慮すると、信号電極の大きさはおのずと限られたものになり、Cte214とCre224の静電容量を大きくすることには限界がある。
一方、基準電極は、空間に向くように設けられるので、基準電極の表面積を大きくし、Ctg215とCrg225の静電容量を大きくすることには、大いに改善の余地が残されている。しかし、充分な設置スペースをとれるリーダライタの基準電極の表面積を大きくし、Crg225の静電容量を大きくすることはたやすいが、例えばユーザが自由に持ち運びできるように構成される小型の携帯端末においては、基準電極の表面積を大きくしてCtg215の静電容量を大きくすることは、携帯端末の大きさを考慮すれば、容易なことではない。
そこで、基準電極の表面積を代えずに、Ctg215の静電容量を大きくする方法について考える。
例えば、基準電極を円形の導体板として構成する場合、円形導体板の空間に対する静電容量は8εr(rは円の半径)で求められることが知られている。一方、円形導体板に電荷を注入すると、電荷が存在するのは導体板(円)の外周部に偏ることが知られている。つまり、電荷は円周の周りに集まり、円周が大きくなれば電荷が存在できる領域が広がることになる。このため、静電容量は半径rに比例するものと考えられる。
従って、1枚の大きな円形導体板を基準電極として用いるよりも、複数の小さい円形導体板を用いる方が、同じ表面積でも静電容量がより大きくなる可能性がある。
今、図9に示されるように、半径2rの円形導体板1枚を基準電極として用いることを考えると、その静電容量(Ctg215の静電容量に対応する)は16εr(=8ε×2r)と計算される。
一方、図10に示されるように、半径rの円形導体板を4つ並列に接続して基準電極として用いる場合、全体の表面積(4つの円形導体板の合計表面積)は、図9の場合と代わっていないが、その合計静電容量は32εr(=8εr×4)となり、図9の場合よりも静電容量が増えることになる。
すなわち、1枚の大きな円形導体板を基準電極として用いる代わりに、複数の小さな円形導体板を基準電極として用いることにより、より効率的に通信システムの通信能力を高くすることができる。さらに、大きな導体板は扱いにくいが、例えば、大きさが数分の1程度の小さい導体板であれば、装置(例えば携帯端末)の中によりコンパクトに収納することができ、その結果装置の構成をより簡単にすることができる。
なお、図10の例のように4枚の導体板を並列に接続して基準電極として用いる場合、それぞれの導体板が同極となり反発しあうため、各導体板同士の距離をある程度離す必要がある。
また、基準電極を円形以外の導体板とする場合であっても同様のことが言える。例えば、正方形の導体板を基準電極として用いる場合、この導体板において電荷が集まるところは正方形の4つの角及び外周部である。
例えば、図11に示されるように、一辺の長さが2Lの1枚の正方形の導体板を用いて基準電極を構成するよりも、図12に示されるように一辺の長さがLの4枚の正方形の導体板を用いて基準電極を構成する方が、全体の表面積は同じであっても、角の数が4倍になる上に、外周部も増えるため、得られる静電容量は大きくなる。
あるいはまた、図13に示されるように、基準電極として用いられる導体板の数をさらに増やしてもよい(いまの場合、一辺の長さがL/2の8枚の正方形の導体板)。
このように、やはり1つの大きな正方形の導体板を基準電極として用いる代わりに、複数の小さな正方形の導体板を基準電極として用いることにより、より効率的に通信システムの通信能力を高くすることができる(ただし、円形導体板の場合と同様に、各導体板同士をある程度離す必要がある。)。
以上においては、円形または正方形の複数の小さい導体板により基準電極を構成する例について説明したが、例えば、図14に示されるように1枚の大きな正方形(一辺の長さが2Lの正方形)の導体板に代えて、横方向の長さが2Lであって縦方向の長さがL/2の4枚の長方形の導体板を基準電極として用いるようにしてもよい。あるいはまた、楕円形や三角形など導体板の形状を必要に応じて変更してもよい。
図15は、複数の小さい導体板により基準電極を構成する場合の送信装置(例えば、携帯端末)の構成例を示すブロック図である。この例では、送信機1151に信号電極1101と4枚の小さい基準電極1102−1乃至1102−4が接続されており、例えば、信号電極1101がユーザの人体に接するように設けられ、基準電極1102−1乃至1102−4が空間に向くように設けられる。そして、ユーザの人体を通信媒体として図示せぬ受信装置との間で、図1乃至図8を参照して上述したように信号の送受信が行われることになる。
ここで、基準電極1102−1乃至1102−4は、装置の中で平面状に並べられるように設けられてもよいし、異なる高さの位置に重ねられて(積層されるように)設けられてもよい。通常、基準電極1102−1乃至1102−4は、充分に薄い導体板として構成されるので、積層するように設けられることにより、より装置を小型化することが可能となる。
図16は、図15を等価回路として表した図である。同図において、図15の送信機1151は、信号源1251に置き換えられており、信号源1251は、例えば、所定の周波数の信号を発生する。Cte1201は、コンデンサであり、図15の信号電極1101と通信媒体(いまの場合人体)との間の静電容量を表すものである。また、Ctg1202−1乃至1202−4は、それぞれ並列に接続されたコンデンサであり、図15の基準電極1102―1乃至1102−4の空間に対する静電容量を表すものである。
Ctg1201−1乃至1201−4のコンデンサの合成容量は4Ctgとなる。例えば、図9及び図10で説明したように、Ctg=8εr(図10の小さい導体板の静電容量)とすれば、一枚の大きな導体板(図9)では合成容量が16εrにしかならないが、並列に接続された小さい4枚の導体板の合成容量は4Ctg=32εrとなり、明らかに静電容量が増すことになる。これにより、上述したように通信能力を高めることができる。
本明細書において上述した一連の処理を実行するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
本発明を適用した通信システムの一実施形態に係る構成例を示す図である。 理想状態における、図1の通信システムの等価回路の例を示す図である。 図2のモデルにおいて、受信負荷抵抗の両端に生じる電圧の実効値の計算結果の例を示す図である。 図1の通信システムの配置例を示す図である。 本発明を適用した通信システムの一実施形態に係る実際の利用例を示す図である。 本発明を適用した通信システムの一実施形態に係る他の利用例を示す図である。 通信処理の流れの例を示すフローチャートである。 本発明を適用した通信システムの、さらに他の構成例を示す図である。 基準電極が円形の導体板により構成される場合の例を示す図である。 基準電極が複数の円形の導体板により構成される場合の例を示す図である。 基準電極が正方形の導体板により構成される場合の例を示す図である。 基準電極が複数の正方形の導体板により構成される場合の例を示す図である。 基準電極が複数の正方形の導体板により構成される場合の別の例を示す図である。 基準電極が複数の長方形の導体板により構成される場合の例を示す図である。 基準電極が複数の導体板により構成される場合の送信装置の構成例を示すブロック図である。 図15の送信装置の等価回路の例を示す図である。
符号の説明
100 通信システム, 110 送信装置, 111 送信信号電極, 112 送信基準電極, 113 送信部, 120 受信装置, 121 受信信号電極, 122 受信基準電極, 123 受信部, 130 通信媒体, 961および962 送受信装置, 1101 信号電極, 1102−1乃至1102−4 基準電極, 1151 送信機

Claims (4)

  1. 人体を含む誘電体を通信媒体として通信し、かつ、前記通信媒体に装着された他の信号処理装置と通信する通信装置において、
    空間に向けられ、信号の送受信のための基準電位を与える基準電極と、
    前記通信媒体に接するように設けられ、通信媒体を介して伝送させる信号を送信または受信するための信号電極と、
    前記基準電極と、前記信号電極との間の電位差を変化させることで、前記他の信号処理装置の前記基準電極と、前記信号電極との間の電位差を変化させて前記電位差に対応する信号の送信または受信を制御する通信制御手段とを含む信号処理装置であって、
    前記基準電極が複数の電極で構成され、それぞれの前記電極と空間との間の静電容量が互いに並列になるように前記通信制御手段に接続される
    信号処理装置。
  2. 前記複数の電極は、それぞれ円形の導体板で構成される
    請求項1に記載の信号処理装置。
  3. 前記複数の電極は、それぞれ正方形の導体板で構成される
    請求項1に記載の信号処理装置。
  4. 前記複数の電極は、積層されて配置される
    請求項1に記載の信号処理装置。
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