JP4542545B2 - 抗フォン・ビルビラント因子切断プロテアーゼ(adamts13)抗体のための診断アッセイ - Google Patents

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Description

(発明の分野)
本発明は、抗vWF−cp抗体を含むことが疑われるサンプル内で、抗フォン・ビルビラント因子切断プロテアーゼ(ADAMTS13)抗体(「抗vWF−cp抗体」)を定量するためのアッセイシステムにおいて使用されるキットに関連する。このキットは、患者内の抗vWF−cp抗体の存在に関連する障害を診断するための方法において、そして、血栓性微小血管症の異なる形態間を識別するために使用され得る。
(発明の背景)
一次止血における1つの重要なタンパク質は、フォン・ビルビラント因子(vWF)である。血漿フォン・ビルビラント因子(vWF)は、脈管の損傷部位への血小板の接着を媒介する多量体タンパク質であり、特に非常に大きなvWF多量体が、止血能力が高い。vWF多量体の大きさを制御する血漿因子の存在が、長い間疑われてきた。フォン・ビルビラント因子切断プロテアーゼ(「vWF−cp」)は、人間におけるフォン・ビルビラント因子多量体のタンパク質分解切断によって、血小板性血栓症の増大を制限することに関与する(Furlanら(1996)Blood 87:4223−4234)。近年、フォン・ビルビラント因子切断プロテアーゼおよび対応する遺伝子の分子構造は記載されており(WO 02/42441;Zhengら(2001)J.Biol.Chem.276:41059−41063)、そして、ADAMTSファミリーの新しいメンバーとして同定されており、ADAMTS13と命名されている。vWFcpは、タンパク質分解切断により、vWF多量体を調節する。


大きな、そして特大のvWF多量体は、動脈血栓症において中心的な役割を果たし、それによって、vWFの異常に大きな多量体が、血栓性微小血管症の2つの類似する形態−血栓性血小板減少性紫斑病(TPP)および溶血性尿毒性症候群(HUS)−(両方共に、微小循環において汎発性の塞栓をもたらす血小板凝集の形成を生じる)において認められている。TTPを有する患者は、vWF−cpの欠乏を有し、従って、HUSを有す患者は、前立腺の正常な活性を示す。
TTPにはいくつかの型が存在する:急性特発性または散発性の形態、最終的に再発を伴う間欠性の形態、および慢性再発性の形態。慢性再発性のTTPは、vWF−cpの後天性または先天性の欠失に関連する。TTPの稀な遺伝形態は、ADAMTS−13遺伝子座の特異的な遺伝子変異に関連している。急性の特発性TTPまたは後天性TTPは通常、慢性の再発性TTPより重篤であり、これらのTTPにおいて、患者は、フォン・ビルビラント因子切断プロテアーゼを阻害する、vWF−cpに対する後天性の抗体を有する(Furlanら(1998)Blood 91:2839−2846;Furlan
ら(1998)N.Engl.J.Med.339:1578−1584)。後天性TTPはまた、妊娠中、または分娩後の期間に時折生じる。間欠性の再発性TTPはまた、vWF−cpインヒビターの再発に関連する。TTPの他の形態(例えば、チクロピジン関連のTTP)については、これらの患者が、vWF−cpに対する後天性の抗体を有することがまた観察されている(Moake,(2002)N.Eng.J.Med.347:589−600)。しかし、通常血漿中に大きなvWF多量体を有する後天性のTTPを有する幾人かの患者は、vWF−cpのレベルの深刻なレベルを欠く。
一般に、タンパク質に対する阻害抗体は、血液の損失または血栓をもたらす、例えば、凝固カスケード内の深刻な問題を生じる。
先天性および後天性のTTPは、後天性のTTPを罹患する患者の80%までの血漿中の、vWF−cpに対する阻害抗体の存在、および遺伝性TTPを有する患者の血漿中のvWF−cpの完全な欠失により識別される。従来、患者の血漿中の阻害抗体は、非生理学的条件下での平衡酵素アッセイによって定量され、そして、急性の抗体媒介性のTTPの診断を確認する。
先天性および後天性のTTPの診断のためのvWF−cpの種々のアッセイが記載されている。vWF−cpの活性およびvWF−cpのインヒビターの存在は、患者の血漿サンプルと共に精製したvWF多量体をインキュベーションし、その後、抗vWF抗体で変性vWF基質を免疫ブロッティングし、そして多量体分析することによって定量される(Furlanら(2002)Sem.Thromb.Haemost.28:167−172)。この方法は、プロテアーゼ活性の低い範囲において非常に感度がよい;しかし、この精度は、正常以下または正常な範囲のプロテアーゼ活性においては中程度でしかない。vWF−cp活性およびvWF−cpインヒビターを定量するための、Gerritsenら[(1999)Thromb.Haemost.82:1386−1389]により記載されるコラーゲン結合アッセイは、6時間以内で完了し得るが、この方法は、変性したvWF多量体の免疫ブロッティングと比較して、プロテアーゼ活性の非常に低い範囲において感度が悪い(Furlanら.2002前出)。しかし、先行技術において記載されるアッセイは、非常に厄介であり、時間がかかり、そして、この技術に精通した研究室の専門家を必要とする。さらに、公知の先行技術のアッセイは、vWF−cpの触媒機能を損ねるvWF−cpインヒビターの検出を可能にするのみである。触媒活性以外のvWF−cp機能(例えば、内皮細胞結合)を損ね得る阻害抗体は、これらのアッセイによっては検出され得ない。
従って、酵素触媒性のプロテアーゼ活性以外のvWF−cp機能を損ねる、患者の血漿中の抗vWF−cp抗体を検出および定量することを可能にする試験システムに対する必要性が存在する。
(発明の要旨)
本発明の目的は、サンプル内で抗vWF−cp抗体を定量するためのキットを提供することである。このキットは、vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントの生物学的特性を実質的に損ねることなく、固相上に固定化されたvWF−cpおよび/または1つ以上のvWF−cpフラグメントを含む。さらに、本発明のキットはまた、抗原/抗体アッセイ(例えば、ELISA、EIA、RIAなど)を実施するために、当該分野で公知の任意の補助剤(例えば、緩衝塩、緩衝顕示溶液、ブロッキング剤、顕示剤など)を含み得る。開示されるキットは、種々の様式(例えば、1つ以上の容器またはマイクロタイター
プレートの形態)で提供され得る。
驚くべきことに、本発明者らは、固相上に固定化されたvWF−cpまたはvWF−cpフラグメントが、サンプル内で抗vWF−cp抗体の存在を定量するための、単純で、効率的で、迅速かつ再現性のあるアッセイシステムを提供することを見出した。本発明のシステムを用いると、先行技術のシステムにおいては検出されなかったvWF−cpインヒビターが定量された。本発明のキットは、先行技術のアッセイよりも現在のアッセイにおいて感度が良くなり、そして、公知のシステムの検出限界を下回り得るvWF抗体の量を検出するために使用され得る。本発明のキットを用いて実施されるアッセイは、異なる特異性を有し、vWF−cpの異なる生物学的機能の欠陥に基づく、抗vWF−cp抗体間を識別することを可能にする。本発明のキットを用いて実施されるアッセイはさらに、TTPおよびvWF−cpインヒビターに関連する他の障害の迅速な診断、ならびに種々の形態の血栓性微小血管症(TM)の区別を可能にする。
(発明の詳細な説明)
本発明の1つの局面は、サンプル内で抗vWF−cp抗体を定量するためのキットに関し、このキットは、vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントの生物学的特性を実質的に損ねることなく、固相上に固定化されたvWF−cpおよび/またはvWF−cpフラグメントを含む。vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントは、サンプル内に存在する抗vWF−cp抗体に結合し得る抗原定量部位を提供する診断剤として、キットにおいて使用され得る。
用語「定量」とは、本明細書中で使用される場合、サンプル内での抗vWF−cp抗体のvWF−cp抗原結合領域の検出、定量およびマッピングを含むことを意味する。「定量」は、検出システム(例えば、色素アッセイ)での、抗体/vWF−cpまたは抗体/vWF−cpフラグメントの複合体の形成を示す少なくとも1つの陽性反応を意味する。任意の抗vWF抗体を含まないことが知られているサンプル(例えば、正常ヒト血漿)が、ネガティブコントロールとして使用される。「定量」は、代表的に、抗vWF−cp抗体を含むことが疑われるサンプルの規定された希釈物を、固定化されたvWF−cpまたはvWF−cpフラグメントと接触すること、そして、この検出システムにより得られる反応の強度を、公知の規定された量の抗vWF抗体を含むサンプルの規定された希釈物(標準として使用される)で得られる反応強度と比較することを意味する。抗vWF−cp抗体のvWF−cp抗原結合部位の「マッピング」は、抗vWF−cp抗体を含むことが疑われるサンプルを、完全なvWF−cp、およびvWF−cp分子の異なる領域に由来するvWF−cpフラグメントと接触することによって実施される。これにより、サンプル中に存在し得る抗vWF−cp抗体の完全なスペクトルが、捕捉され得、vWF−cpの領域/ドメイン内に特異的な結合活性を有する抗vWF−cp抗体が同定され得る。
用語「サンプル」は、本明細書中で使用される場合、患者の血液、血漿または組織のような、生物学的流体を指すことを意味する。サンプルは、特に、抗vWF−cp抗体の存在に関連する障害を有することが疑われるヒト患者から得られ得る。
用語「固相」は、任意の特定の制限は意味せず、例えば、有機ポリマー(例えば、ポリアミド、またはビニルポリマー(例えば、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレンおよびポリビニルアルコール、またはこれらの誘導体))、天然ポリマー(例えば、セルロース、デキストラン、アガロース、キチンおよびポリアミノ酸)、または無機ポリマー(例えば、ガラスまたはメタロヒドロキシド)であり得る、不溶性のポリマー材料を指す。固相は、微小キャリア、粒子、膜、ストリップ、紙、フィルム、真珠またはプレート(例えば、マイクロタイタープレート)の形態であり得る。vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントは、共有結合によって固相に直接固定化され得るか、または、キャリア(例え
ば、リンカー分子または固相に固定化された抗体)を介して固相に固定化され得る。
用語「生物学的特性」は、本明細書中で使用される場合、少なくとも1つの抗vWF−cp抗体に結合し得る、vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントの機能的に活性なエピトープ、または抗原定量基として意味される。固相上へのvWF−cpまたはvWF−cpフラグメントの固定化は、免疫学的特性(特に、vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントの機能的エピトープまたは抗原定量基の構造)が保存され、サンプル内に存在する少なくとも1つの抗vWF−cp抗体によって認識されるように有効に提示される様式で実施される。
vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントは、全体として、または部分的に、組換え技術によって生成され得、そして、原核生物または真核生物の宿主系で発現することによって調製され得る。原核生物宿主は、E.coliまたはB.subtilisのような細菌細胞であり得る。真核生物細胞は、酵母細胞(例えば、Pichia株);昆虫細胞(例えば、Sf9、Sf21、High Five、S2);および哺乳動物細胞(例えば、MRC5、CHO、COS、3T3、HEK 293、BHK、SK−Hep、HepG2およびHela)からなる群より選択され得る。
広範な種々のベクターが、vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントの調製のために使用され得、そして、原核生物および真核生物の発現ベクターから選択され得る。原核生物発現のためのベクターの例としては、pRSET、pET、pBADなどのようなプラスミドが挙げられ、ここで、真核生物発現ベクターにおいて用いられるプロモーターとしては、lac、trc、trp、recA、araBADなどが挙げられる。真核生物発現のためのベクターの例としては、(i)酵母における発現については、AOX、GAP、GAL1AUG1などのプロモーターを使用する、pAO、pPIC、pYES、pMETなどのベクター;(ii)昆虫細胞における発現については、PH、p10、MT、Ac5、OpIE2、gp64、polhなどのプロモーターを使用する、pMT、pAc5、plB、pMIB、pBACなどのベクター;そして(iii)哺乳動物細胞における発現については、CMV、SV40、EF−1a、UbC、RSV、ADV、BPVおよびβ−アクチンのようなプロモーターを使用する、pSVL、pCMV、pRc/RSV、pcDNA3、pBPVなどのようなベクター、および、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、レトロウイルスなどのウイルス系に由来するベクターが挙げられる。
vWF−cpフラグメントは、配列番号1〜6からなる群より選択され得る。
vWF−cpフラグメントは、vWF−cpに含まれるアミノ酸配列を示し、好ましくは少なくとも6アミノ酸、より好ましくは、約6〜約50アミノ酸を有する、ペプチドであり得る。上記ペプチドを本発明における診断試薬として使用する1つの利点は、抗vWF−cp抗体の特異性の選択的な定量である。このペプチドは、標準的なペプチド合成技術によって生成され得る。
本発明の1つの実施形態によれば、vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントは、異種性の配列に融合される。この異種性の配列は、異種性のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチド、特に機能的ペプチドであり得る。この異種性の配列は、固相への結合特性を有する配列であり得る(例えば、この固相は、異種性の配列への共有結合を可能にするか、またはキャリアに対する親和性を有する、反応性部位を有し得る)。
この異種性のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドは、β−ガラクトシダーゼ、c−myc産物、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、FLAG−タグおよびこれらの誘
導体からなる群より選択され得る。この異種性の配列はまた、一連のいくつかの同じアミノ酸または一連のいくつかの異なるアミノ酸を含み得る。好ましくは、この異種性の配列は、固相と共有結合を形成し得るペプチド、または、特に特異的な抗ポリ−ヒスチジン抗体に高い親和性を有するポリヒスチジンである。この異種性の配列は、そのN末端またはC末端において、vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントに融合され得る。この異種性の配列は、代表的にはvWF−cpのC末端に融合される。vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントは、vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントの生物学的特性が負に影響を受けないように、この異種性の配列に融合される。vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントのエピトープの提示を立体的に競合しないように、短いペプチドスペーサーが、この異種性の配列とvWF−cpまたはvWF−cpフラグメントとの間に挿入され得る。
1つの実施形態によれば、vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントは、機能的な親和性ペプチド、特に、いくつかのヒスチジン残基(ある場合には、3〜20のヒスチジン残基、そして別の場合には、6〜15のヒスチジン残基)を有するペプチドに、融合される。タンパク質の精製のために、タンパク質のC末端に融合されたポリ−ヒスチジン(いわゆる「Hisタグ」)の形態で親和性ペプチドを使用することは、EP 0 282
042に記載されている。
固相への固定化は、固相および異種性の配列の反応基を介して、または、異種性の配列に対して親和性を有するキャリアを介して、達成(例えば、直接、または共有結合により)され得る。
本発明の1つの好ましい実施形態において、異種性の配列は、キャリアに対して高い親和性を有し、そして、vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントが、キャリアに対するその異種性部分の結合を介して固相に固定化される。従って、異種性の配列は、特異的な結合特性、または、キャリアに対して高い親和性を有する。本発明の1つの実施形態によれば、このキャリアは、vWF−cp融合タンパク質の異種性部分に対して親和性を有する抗体である。
本発明の1つの実施形態において、vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントは、異種性の配列としてポリヒスチジンタグに融合され、抗his−タグ抗体が、vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントを固相上に固定化するためのキャリアとして使用される。他の異種性の親和性ペプチドおよび、当業者に公知のそれぞれの抗親和性ペプチド抗体がまた、vWF−cpまたはvWF−cpフラグメント融合タンパク質を固定化するために使用され得る。
vWF−cpおよび/もしくはvWF−cpフラグメントまたはその融合タンパク質は、異なるスポット(例えば、マイクロタイタープレートの異なるウェルの中)に別個に、固相上に固定化され、この場所で、代表的には、vWF−cpまたは特異的vWFフラグメントのような1つの規定された抗原が、1つのスポット内に含まれる。このアッセイシステムを用いると、抗vWF−cp抗体の完全なスペクトルが捕捉され得、vWF−cpの領域/ドメイン内の特異的な結合活性を有する抗vWF−cp抗体が同定される。vWF−cp抗体の特異性の定量、およびvWF−cp分子内の抗原結合部位の定量により、それぞれ、抗体の全範囲が同定され得、そして抗vWF−cp抗体に関連する障害を有する患者の特異的な処置が適合され得るので、このことは、非常に重要である。例えば、抗vWF−cp抗体は、患者の血漿を、本明細書中に記載されるような、アッセイにおいて使用され、かつ、抗体に対して親和性を有するvWF−cpフラグメントを特異的な吸着剤として使用する、親和性クロマトグラフィーに供することによって、特異的な抗vWF−cp抗体を有すると同定された患者の血漿から選択的に除去され得る。このことは、先
行技術の方法と比較して、抗vWF−cp抗体に関連する障害を有する患者の改善された処置を可能にする。
本発明の1つの実施形態によれば、上記のキットはさらに、診断剤として、固相に固定化された抗vWF−cp抗体を含む。この抗vWF−cp抗体は、ポリクローナル抗体、従来のハイブリドーマ技術により得られるモノクローナル抗体、または、組換え技術(例えば、ファージディスプレイまたはリボソームディスプレイ)により得られる抗体もしくは抗体フラグメントであり得る。このような本発明のキットにおけるセットアップは、血栓性微小血管障害の差示的な診断を可能にする。特に、固相上に固定化されたvWF−cp、vWF−cpフラグメントおよび抗vWF−cp抗体を含むキットを提供することによって、サンプル内の抗vWF抗体の存在/非存在およびvWF−cpの存在/非存在が、1つの単純な試験システムを用いて定量され得る。
代替的な実施形態において、本発明は、vWF−cpまたはそのフラグメントを定量するためのアッセイシステムにおいて使用されるキットに関し、このキットは、上で規定される抗vWF−cp抗体を含み、この抗体は、本明細書中で規定されるように固相に固定化されている。
本発明はまた、サンプル内で抗vWF−cp抗体を定量するための方法に関し、この方法は、vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントの生物学的特性を実質的に損ねることなく固相上に固定化されたvWF−cpおよび/または1つ以上のvWF−cpフラグメントを提供する工程、抗vWF−cp抗体の存在に関連する障害を有することが疑われる患者の生物学的サンプルを固定化されたvWF−cpおよび/または1つ以上のvWF−cpフラグメントに接触させる工程、ならびに抗vWF−cp抗体/vWF−cpおよび/または抗vWF−cp抗体/vWF−cpフラグメントの複合体を検出する工程を包含する。
抗vWF−cp抗体/vWF−cpまたは抗vWF−cp抗体/vWF−cpフラグメントの複合体は、当該分野で周知の方法によって(例えば、標識抗体を用いる検出によって)検出され得る。この検出方法は、酵素アッセイ、色素形成アッセイ、発光アッセイ(lumino assay)、蛍光発生アッセイおよび放射免疫アッセイからなる群より選択され得る。抗体/抗原−/複合体形成の検出を実施するための反応条件は、選択される検出方法に依存する。使用されるそれぞれの検出系に最適なパラメーター(例えば、緩衝系、温度およびpH)を選択することは、当業者の知識の範囲内である。
本発明はまた、上記のキットを用いて、血栓性微小血管障害を差示的に診断するための方法に関し、ここで、このキットは、固相上に固定化された、vWF−cpおよび/もしくは1つ以上のvWFフラグメント、またはvWF−cpおよび/もしくはvWFフラグメント、ならびに抗vWF−cp抗体のいずれかを診断剤として含む。この診断剤は、好ましくは、各々が、固相上で別個のスポット(例えば、マイクタイタープレートの別個のウェル)に配置される。このことは、1つのアッセイシステムによって、vWF−cpもしくは抗vWF−cp抗体のいずれかまたはこの両方を含むサンプルの間を区別し、そして、血栓性微小血管障害(例えば、TTPまたはHUSの異なる形態)の間を区別することを可能にする。
本発明のキットおよび方法は、抗vWF−cp抗体の存在に関連する障害の診断に使用され得る。
本発明のキットおよび方法はまた、血栓性微小血管症の異なる形態または異なる障害の診断のために使用され得る。血栓性微小血管(TM)障害は、血栓性血小板減少性紫斑病
(TPP)、新生児血小板減少症、ヘーノホ(ヘノッホ)−シェーンライン紫斑病、子癇前症(preclampsia)、または溶血性尿毒性症候群(HUS)、HELLP症候群、ARDS、末梢指虚血症候群、非塞栓性腸間膜虚血、急性膵炎、急性肝炎、リウマチ性紫斑病、医薬関連形成性血小板減少症、術後TM、癌関連TM、播種性血管内凝固(DIC)、全身性エリテマトーデス、肝硬変、尿毒症、または急性炎症性障害であり得る。
本明細書において提供される例は、明らかに、後天性のTTP患者における抗vWF−cp抗体の存在(標準的なvWF−cp活性アッセイにおいては中和されないが、基質切断活性を単にブロッキングすることとは異なる機構によってvWF−cp活性を損なう傾向が多い)が、本発明のキットおよび方法を使用して定量され得ることを示す。このことは、TTPの迅速かつ感度のよい診断、ならびに、緊急に必要とされる、命を救う臨床的インターベンション(すなわち、血漿処置)を可能にする。本発明のキットおよび方法は、TTPの種々の形態の差示的な診断に使用され得る。
本発明のキットおよび方法を用いると、全てのIgGクラスならびにIgMの抗体が検出され得るが、先行技術の方法は、IgGクラスの抗vWF−cp抗体の検出を可能にするのみである。
本発明はさらに、以下の実施例に例示されるが、これらに限定されない。
(実施例1:vWF−cpおよびvWF−cpフラグメント/His(6×)−タグの構築)
vWF−cpタンパク質の発現について、WO 02/42442に記載されるvWF−cp cDNAクローンを使用する。
vWF−cp his−タグ融合物を構築するために、2つの連続PCRを実施して、3つのグリシンコドン、6つのヒスチジンコドン、終止コドンおよびXhoI制限部位を追加する。
(PCR1)
WO 02/42441に記載される野生型の全長pcDNA3.1.(+)/vWF−cp(ADAMTS13)を、鋳型として使用する。プライマー7189(5’ GTG ATG GTG ATG GTG TCC ACC TCC GGT TCC TTC CTT TCC CTT CCA 3’)およびプライマー6526(5’ CTG
CCT CGC CCG GAA CCC CA 3’)を用いて、pcDNA3.1.(+)/vWF−cpからのC末端SgrAI/XhoIフラグメントを含む1.3kbフラグメントを増幅する。このフラグメント、ならびにプライマー7190(5’ CCC TCT AGA CTC GAG TCA ATG GTG ATG GTG ATG GTG TCC ACC 3’)およびプライマー6526を使用して、2回目のPCRを実施する。得られる産物を精製し、SgrAIおよびXhoIで消化し、pcDNA3.1.(+)/vWF−cp野生型構築物内の対応するSgrAI/XhoIフラグメントを置き換えるために使用する。
WO 02/42442に開示される全長vWF−cp cDNAクローンを鋳型として使用し、以下のプライマーの組み合わせを使用するPCRによって、成熟なタンパク質の遺伝子の異なるフラグメントを含むvWF−cpフラグメント構築物を作製する(また、表4のプライマーおよびそれぞれのvWF−cpドメイン配列も参照のこと)。
(E.coli発現系:pBAD/Topo Thiofusion(Invitrog
en))
融合:チオレドキシン(N末端)、6×Hisテイル(C末端)
Figure 0004542545
このPCRフラグメントを、適切な制限酵素で切断し、pRSET(図1)のようなベクター内にクローニングし、そして、同じ酵素で切断して、所望のプラスミド生じる。
vWF−cpフラグメント−hisタグ融合物の構築のために、vWF−cpフラグメントを、上記のvWF−cp/his−タグの構築に従って改変する。この構築物を、合成オリゴヌクレオチドであるo.pRET−FPdHIS(1)−6929およびo.pRSET−FPdHIS(2)−6930(図1)によりNdeI−XhoIフラグメントを置き換えることによって、HIS−6タグを用いてクローニングする。
F−cp、vF−cpフラグメントまたはこのそれぞれのhisタグ融合物を、E.coli JM109内で組換え的に発現させ、精製して、以下に記載されるように、固相上への固定化に使用する。
(vWF−cp/C−Hisを安定に発現するHEK 293細胞クローン)
HEK 293(ATCC)細胞を、リン酸カルシウム沈降を使用して、pcDNA3.1.(+)/vWF−cp/C−Hisおよびハイグロマイシンカセットを有する選択プラスミドと同時にトランスフェクトする。初代クローンおよびその後のサブクローンを、100μg/mlのハイグロマイシンおよび800μg/mlのG418(pcDNA上にコードされたネオマイシンホスホトランスフェラーゼ)を補充した培養培地内で選択する。組換え的に発現されたvWF−cp/hisタグを精製して、以下に記載されるように、固相上への固定化に使用する。
(実施例2:キャリア上へのvWF−cpおよび/またはvWF−cpフラグメントのカップリング)
組換え型のvWF−cp、vWF−cpフラグメントを、固相上に直接か、または、キャリアとしてモノクローナル抗vWF−cp抗体を介してのいずれかで結合させる。vWF−cp−His−タグまたはvWF−cpフラグメント−Hisタグを、抗Hisタグ抗体を介して、ELISAプレートの表面上に固定化する。患者の血漿と共にインキュベートした後、vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントに結合した抗vWF−cp抗体を、ヒト抗体の定常領域を認識する、二次抗体ホスファターゼ結合体により検出する。ホスファターゼは、適切な基質と反応し、色素形成反応を生じ、黄色を呈する。色の強度を測定し、サンプル内の抗体の量を、既知の量の抗vWF抗体を含む標準曲線と比較することによって定量する。
(ELISAのセットアップ)
市販の、BSAを含まない、抗Hisタグ抗体(「キャリア抗体」;Qiagen,Germany)を、PBS(pH7.4)中2μg/mLの最終濃度まで希釈する。1ウ
ェルあたり100μlを96ウェルマイクロタイタープレート内で、室温にて4時間インキュベートする。PBST pH7.4(0.1%(v/v)Tween 20を含むPBS緩衝液)を用いる3回の洗浄工程の後、PBS pH7.4および2%(w/v)ウシ血清アルブミンを含む250μlのブロッキング溶液を添加し、4℃にて一晩インキュベートして、全てのフリーな結合部位をブロッキングする。この溶液を、100μlの組換え型vWF−cp−Hisタグ標識化調製物で置き換え、vWF−cp濃度は、10U/mLのプロテアーゼ活性に対応する1.5μg/mLである。vWF−cpサンプルを、PBS 2% BSA中で最終濃度まで希釈する。コーティングされた抗His抗体に起因して、組換え型vWFcp/hisタグが捕捉され、そして、キャリア抗体を介して固定化される。室温にて2時間後、10回の洗浄工程が続く。この洗浄緩衝液は、PBS
pH7.4および0.1%(v/v) Tween 20を含む。患者の血漿サンプルを、2%
BSAを含むPBS pH7.4中1:20、1:50、1:100、1:200、1:300、1:400、1:600、1:800および1:1200に希釈し、各希釈の100μlを、組換え型vWF−cpを含有するウェルにて、室温で3時間インキュベートする。抑制性の抗体を固定化されたvWF−cpの表面に結合させ、未結合の抗体をPBST pH7.4を使用する10回の洗浄工程により洗浄する。ヒト抗体の検出を、マウス抗ヒトIgG Fc特異的抗体またはマウス抗ヒトIgM抗体(アルカリホスファターゼ結合体化)を用いて実施する。抗体を、PBS 2% BSA中1:60000で最終作業溶液まで希釈し、室温にて2時間インキュベートし(100μl/ウェル)、次いで、PBST pH7.4を用いて10回洗浄する。アルカリホスファターゼ基質(pNPP)の添加により黄色が生じ、これにより、色素強度が、結合抗体(抗体/vWF−cp)の量を反映する。色素強度を、ELISAリーダーで測定し、血漿サンプル内の抗体の量を、段階希釈によるNPの標準曲線を参照して算出する。ネガティブコントロールとして、正常なヒト血漿(NHP)の希釈物をそれ相応に処理する。結果を図2Aおよび2Bに示す。この結果は、患者内のヒト抗vWF−cp抗体が、少なくとも1:600の血漿希釈において明らかに検出され得ることを示す。
正常なヒト血漿をコントロールとして使用し、標準偏差(SD)をいくつかの血漿ロットについて計算した。正常なヒト血漿の抗体力価+2SDを超える抗体力価を、陽性と評価する。
(TTP患者のサンプルの分析)
TTPを有する患者からのサンプルおよび正常な血漿サンプルを、固定化されたvWF−cpを含むELISAに供する。結果を表1に示す。患者1は、1:600の力価と、1:400のIgM力価を有する。患者2のIgG力価は、かなり高い(1:2000)が、IgM力価は、1:100のみである。患者1は、急性のTTPに罹患しており、その一方で、患者2は、TTP後の寛解状態にある。患者1は、抑制性力価を示さないが、患者2は、約60U/mLの抑制性力価を有する。正常なヒト血漿は反応を示さない。
Figure 0004542545
TTPを有する患者のサンプルおよび正常な血漿サンプルを、vWF−cpの異なる領域に由来する固定化されたvWF−cpフラグメントを含むELISAに供する。結果を表2に示す。患者#1(抑制性力価なし)のIgGおよびIgMは、ドメイントロンボスポンジン2〜8およびCubドメイン上に抗体の結合を示す。患者#2のIgGおよびIgMは、触媒性ドメイン上に結合を示し、これは、抑制性力価と一致する。正常なヒト血漿は、いずれのドメインとも反応しない。患者の血漿を、2連で、2つの異なる血漿希釈(1:50および1:100)で試験する。
Figure 0004542545
TTPを有する患者および正常な血漿からのサンプルを、固定化された抗vWF−cp抗体を含むELISAに供する。結果を表3に示す。
患者#1および#2のADAMTS−13レベルは、明確に検出され得る;正常なヒト血漿が同じレベルを示す。患者#3は、片側の対立遺伝子に遺伝的欠損を有し、活性の50%減少を生じることを特徴とする。タンパク質量の50%の減少はまた、本発明者らのアッセイシステムにおいても認められ得る。患者#4は、異種性のナンセンス変異に起因して、ADAMTS−13タンパク質を完全に欠損することを特徴とする。従って、タンパク質は検出され得ない。
Figure 0004542545
本明細書中に記載される実施例および実施形態は、例示的な目的のみのためのものであり、これらを踏まえて、種々の改変または変更が当業者に示唆され、そして、本出願の精神および範囲、ならびに添付の特許請求の範囲内に包含されるべきことが理解される。本明細書中に引用された全ての刊行物、特許および特許出願は、各個々の刊行物、特許または特許出願が、個々に、参考として援用されると示される程度と同程度に、あらゆる目的のために、その全体が参考として本明細書により援用される。
Figure 0004542545
Figure 0004542545
Figure 0004542545
図1は、組換え型のvWF−cp、vWF−cpフラグメント、またはhis−タグ異種性の配列に融合されたvWF−cpもしくはvWF−cpフラグメントの発現のために使用され得るプラスミドの例を示す。 図2Aおよび2Bは、患者血漿対ヒト正常血漿の血漿サンプルにおけるIgG抗体(図2A)およびIgM抗体(図2B)の定量を示す。エラーバーは、いくつかの血漿のロットから計算した正常ヒト血漿+2倍標準偏差を示す。

Claims (14)

  1. 血栓性微小血管症の種々の形態を区別するためのキットであって、該キットは、
    (a)固相上に固定化されたvWF−cpおよび/または1つ以上のvWF−cpフラグメントであって、ここで、該固定化されたvWF−cpまたはvWF−cpフラグメントの生物学的特性はなわれていない、vWF−cpおよび/または1つ以上のvWF−cpフラグメント、ならびに
    (b)該固相上に固定化された抗vWF−cp抗体
    を含み、ここで、該vWF−cp、vWF−cpフラグメントおよび抗vWF−cp抗体が、各々、該固相上の異なるスポットに別個に配置される、キット。
  2. 前記vWF−cpフラグメントが、配列番号1〜6からなる群より選択される、請求項1に記載のキット。
  3. 前記vWF−cpフラグメントが、少なくとも6アミノ酸長を有する、請求項1に記載のキット。
  4. 前記vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントが、異種性の配列に融合されている、請求項1に記載のキット。
  5. 前記異種性の配列が、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドからなる群より選択される、請求項4に記載のキット。
  6. 前記ペプチドが、3〜20の連続するヒスチジン残基を含む、請求項5に記載のキット。
  7. 前記vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントが、前記固相上に直接固定化される、請求項1に記載のキット。
  8. 前記vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントが、キャリアを介して前記固相上に固定化される、請求項1に記載のキット。
  9. 前記キャリアが抗体である、請求項8に記載のキット。
  10. 前記vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントが、キャリアを介して前記固相上に固定化される、請求項4に記載のキット。
  11. 前記キャリアが抗体である、請求項10に記載のキット。
  12. 前記抗体は、前記vWF−cpまたはvWF−cpフラグメントに融合された前記異種性配列に指向されている、請求項11に記載のキット。
  13. 前記固相が、プレート、膜、紙、フィルム、ストリップおよび真珠からなる群より選択される、請求項1に記載のキット。
  14. 前記vWF−cpおよびvWF−cpフラグメントが、各々、前記固相上の異なるスポットに別個に配置される、請求項1に記載のキット。
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